説明

燃料電池の電極触媒用ナノ構造金属‐カーボン複合体及びその製造方法

【課題】燃料電池の電極触媒に用いられるのに非常に適した特性を示す金属-カーボン複合体を提供する。
【解決手段】本発明は、ナノ構造を有する金属-カーボン複合体及びそれの応用に関するものであり、より具体的にナノ枠に転移金属前駆体及びカーボン前駆体を連続的に担持させ、高温反応させることにより製造されるナノ構造を有する金属-カーボン複合体に関するものである。本発明による金属-カーボン複合体は、多孔性ナノ構造のメゾポーラスカーボン内で金属が1ナノメーター以下の大きさで非常に規則的に多分散されており、金属と炭素が化学的に結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極触媒に用いることができる金属-カーボン複合体及びその製造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は燃料電池の電極材料として電気化学触媒的特性の優れたナノ構造の金属-カーボン複合体に関するもので、ナノ枠に金属前駆体とカーボン前駆体を連続的に担持させた後、反応させて得られる金属‐カーボン複合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は電気化学反応により燃料が有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる発電装置であり、ディゼル発電、蒸気ガスタービン装置等の他の発電装置に比べ発電効率が高く、騒音及び有害排気ガス等による問題点が少ない長所を有している。このような燃料電池の使用は気候協約のような国際的な環境規制に積極対処することができる方案であり、韓国のように資源が足りない国では代替動力源として期待されている。
【0003】
一般に、白金或いは白金を主成分とする合金が無定形のカーボンに担持された触媒が燃料電池用電極材料として広く用いられる。しかし、このような電極材料は担持される金属の量が増加するほど金属の結晶の大きさが増加するとの短所がある。
一方、白金のような貴金属の利用率を向上させることができる方法として、より高い比表面積を有するカーボンを製造した後、ここに多様な金属を導入する方法がある。その一例に、シリカーナノ枠を利用して製造されたメゾポーラス(mesoporous)カーボンに白金を担持させる場合、メゾポーラスカーボンが1000m2/gの高い比表面積を有するため、これに担持された白金は商業的に広く用いられるVulcan-XCカーボンに担持された場合より遥かに小さい結晶の大きさを有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、製造されたメゾポーラスカーボンに存在する1ナノメーター以下の大きさのマイクロ気孔には通常の方法で白金を担持させることができず、このような微細気孔により水素陽イオンの表面伝達特性が著しく低下する短所も現れる。さらに、電極の厚さが厚くなり内部抵抗が増加する短所もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多孔性ナノ構造のメゾポーラスカーボン内で、カーボンと金属が化学的に結合している燃料電池電極触媒用金属‐カーボン複合体を提供する。
本発明は、さらに上記の金属-カーボン複合体を製造する方法を提供するが、上記製造方法は次のような段階で構成される:
(a)ナノ枠を準備する段階と、
(b)金属前駆体溶液に上記ナノ枠を添加し、ナノ枠に金属を含浸・乾燥させる段階と、
(c)上記金属が含浸されたナノ枠をカーボン前駆体溶液に入れて均一に混合する段階と、
(d)上記混合物を高温で反応させる段階と、
(e)上記結果物を炭化させる段階と、
(f)上記炭化段階を経た混合物から上記ナノ枠を除去する段階。
【0006】
上記(a)段階で用いられるナノ枠の材料にはシリカ酸化物、アルミナ酸化物またはこれらの混合物が用いられることができ、シリカ酸化物であることが好ましい。
上記(a)段階はナノ枠を製造して焼成させる段階を含む。
上記金属-カーボン複合体を構成する金属は特に制限されず、例えばPt、Ru、Cu、Ni、Mn、Co、W、Fe、Ir、Rh、Ag、Au、Os、Cr、Mo、V、Pd、Ti、Zr、Zn、B、Al、Ga、Sn、Pb、Sb、Se、Te、Cs、Rb、Mg、Sr、Ce、Pr、Nd、Sm、Reまたは、これらの複合成分を用いることができ、これら金属の前駆体に(NH3)4Pt(NO3)2、(NH3)6RuCl3、CuCl2、Ni(NO3)2、MnCl2、CoCl2、(NH4)6W12O39、FeCl2、(NH4)3IrCl6、(NH4)3RhCl6、AgCl、NH4AuCl4、NH4OsCl6、CrCl2、MoCl5、VCl3、Pd(NO3)2、TiCl4、ZrCl4、ZnCl2、BCl3、AlCl3、Ga2Cl4、SnCl4、PbCl2、SbCl3、SeCl4、TeCl4、CsCl、RbCl、MgCl2、SrCl2,CeCl3、PrCl3、NdCl3、SmCl3、ReCl3等を用いることができる。
【0007】
この際、金属-カーボン複合体を構成する金属は一つの金属が単独で含まれることもあり、二つ以上の金属が含まれることも可能である。二つ以上の金属が含まれる場合は、反応条件を調節して合金の形態で含浸させることもでき、別々に混合された形態で含浸させることもできる。例えば、白金とルテニウムの前駆体で(NH3)4Pt(NO3)2と(NH3)6RuCl3を用いナノ枠に白金またはルテニウムを別々に含浸させることも可能で、白金-ルテニウム(Pt-Ru)合金で含浸させることも可能である。
【0008】
一方、前述したように上記に列挙した金属等は単独で含浸されることも可能であり、二つ以上の複合成分が含浸されることも可能であるが、複合成分の場合白金が共に含まれるのが好ましい。
上記含浸段階は、ナノ枠を金属前駆体が入っている溶液に一定時間浸漬した後、これを真空乾燥することにより、金属前駆体がナノ枠の中に均一に入るよう誘導する工程である。
【0009】
上記(c)段階では、金属前駆体が含浸されたナノ枠にカーボン前駆体を添加して混合する。このとき、カーボン前駆体としてはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)、グルコースまたはスクロースを用いるのが好ましく、より優れたカーボンナノアレイを得るためには、スクロースを用いるのがより好ましい。
さらに、上記カーボン前駆体は上記化合物以外にフェノールのようなフェニル環を含むアルコール化合物、アクリロニトリルのようなオレフィングループを含む極性化合物、プロピレンのようなアルファオレフィン化合物を用いることもできる。
【0010】
上記(d)段階及び(e)段階は、ナノ枠に含浸された金属とカーボン前駆体を反応させた後、真空加熱する炭化過程を連続的に行うことにより、1ナノメーター大きさ以下の金属がカーボンと結合された新しい複合体が得られる過程である。
この際、上記(d)段階は60〜350℃の温度で行われ、上記(e)段階は800〜1000℃の温度の真空雰囲気で行われるのが好ましい。
【0011】
次に、(f)段階では弗酸水溶液等を利用してナノ枠を溶解して除去した後、洗滌して本発明のナノ構造を有する金属-カーボン複合体を製造することになる。
上記のような過程を経て製造された金属-カーボン複合体内には、金属-カーボン複合体重量に対し1〜95重量%の金属と、5〜99重量%のカーボンが含まれ、好ましくは4〜36重量%の金属と、64〜96重量%のカーボンが含まれる。
【0012】
一方、本発明の金属-カーボン複合体に用いられた金属が、白金を第1成分とし、その他金属を第2成分でなる場合、第2成分金属には、Ru、Cu、Ni、Mn、Co、W、Fe、Ir、Rh、Ag、Au、Os、Cr、Mo、V、Pd、Ti、Zr、Zn、B、Al、Ga、Sn、Pb、Sb、Se、Te、Cs、Rb、Mg、Sr、Ce、Pr、Nd、Sm、Reまたはこれらの混合成分を用いることができ、このとき第2成分金属:Ptの原子比が4:96〜75:25であるのが好ましい。二つ以上の金属が上記のような原子比で構成される場合、燃料電池の触媒としての特性がさらに優れていくことを確認することができた。
【0013】
本発明でのように、ナノ枠にカーボン前駆体と金属前駆体を同時に導入して高温真空雰囲気で熱処理すれば、カーボン前駆体が炭化されると共に金属が還元され、1ナノメーター以下の金属を微細気孔に容易に位置させることができるだけでなく、金属とカーボンが化学的に共有結合を生成させることができるため、吸着された水素のスピルオバー(spill-over)特性を誘導することができる。水素のスピルオバーの特性は燃料電池の電極反応速度を増加させるのに非常に重要なので、本発明の金属-カーボン複合体を用いれば、燃料電池の電極反応速度を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る金属-カーボン複合体は多様な金属をカーボンと化学的に結合させることができるだけでなく、白金を含んだ2種以上の金属前駆体を導入して複合体を製造することになれば、非常に多様な特性の合金または金属混合物を得ることになる。これを介し白金の量を低減させながら、燃料電池の電極触媒活性を増加させる合金-カーボン複合体、または金属混合物-カーボン複合体を製造することができる。
【0015】
前述した本発明の金属-カーボン複合体は燃料電池の電極、特に還元極触媒として有用に用いられ得る。本発明の金属-カーボン複合体が燃料電池の電極反応において優れた触媒活性を現すとの点は後述する実施例で確認することができる。
本発明の金属-カーボン複合体は、水素または炭化水素を燃料に用いる如何なる燃料電池の電極触媒にも用いることができるが、特に直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell)の還元極触媒として有用である。
【0016】
直接メタノール燃料電池の性能を低減させる主な原因のうち一つは、メタノールが電解質を透過して還元極から脱極現象を引き起こすメタノールクロスオバー(cross-over)である。従って、還元極の電極材料は優れた酸素の還元反応特性だけでなく、メタノールに対しては酸化反応特性が小さくなければならない。本発明の金属-カーボン複合体は既存に知られた如何なる電極触媒よりも上記の特性が大きく向上されたことが確認された。
【実施例】
【0017】
実施例1
A.ナノ枠(SBA-15)の製造
先ず、予め加熱して準備した1.6M塩酸溶液380mlと、界面活性剤であるBASF社のPluronic P123 10gを常温で攪拌及び混合した。次に、上記製造された混合液にテトラエチルオルトシリケート(tetraethylorthosilicate;TEOS)22gを添加した後、攪拌した。以後80℃温度で重合した後、界面活性剤を除去してSBA-15を製造し、これをナノ枠に用いた。
【0018】
B.ナノ枠を利用したナノ構造を有する白金-カーボン複合体の製造
上記A.の製造方法に従い製造されたナノ枠(SBA-15)を300℃で焼成させた後、ナノ枠1g基準に30wt%のPtが含浸されるよう、Pt前駆体溶液をナノ枠に添加し、これを真空乾燥器を利用して40℃温度で乾燥してナノ枠にPtが含浸されるようにした。この際、Ptの前駆体には(NH3)4Pt(NO3)2を用いた。このような含浸工程は、白金前駆体溶液にナノ枠を入れた後、これを真空乾燥することにより均一に白金前駆体がナノ枠内に入るよう誘導する工程である。次いで、Pt含浸ナノ枠にスクロース0.7g、硫酸0.08g及び水5gを添加して均一に混合した。このとき硫酸はカーボン前駆体を長く連結する、即ち重合する触媒の役割を行い、水はカーボン前駆体がナノ枠内によく入ることができるよう助ける媒介体の役割を行う。その後100℃及び160℃で各々6時間のあいだ反応させた後、900℃の真空雰囲気で炭化させた。以後、希釈された弗酸水溶液を利用してナノ枠を溶解して除去した後、洗滌し、ナノ構造を有する本発明の白金-カーボン複合体を製造した(Pt:C=32wt%:68wt%)。
【0019】
実施例2.
A.ナノ枠(SBA-15)の製造
ナノ枠は上記実施例1と同一の方法で製造した。
B.ナノ枠を利用したナノ構造を有する白金-カーボン複合体の製造
ナノ枠1g基準に18wt%のPtが含浸されるようにすることを除いては、上記実施例1と同一の方法で本発明の白金-カーボン複合体を製造した(Pt:C=24wt%:76wt%)。
【0020】
実施例3.
A.ナノ枠(SBA-15)の製造
ナノ枠は上記実施例1と同一の方法で製造した。
B.ナノ枠を利用したナノ構造を有する白金-カーボン複合体の製造
ナノ枠1g基準に6wt%のPtが含浸されるようにすることを除いては、上記実施例1と同一の方法で本発明の白金-カーボン複合体を製造した(Pt:C=12wt%:88wt%)。
【0021】
実施例4.
A.ナノ枠(SBA-15)の製造
ナノ枠は上記実施例1と同一の方法で製造した。
B.ナノ枠を利用したナノ構造を有する白金-カーボン複合体の製造
ナノ枠1g基準に3wt%のPtが含浸されるようにすることを除いては、上記実施例1と同一の方法で、本発明の白金-カーボン複合体を製造した(Pt:C=6wt%:94wt%)。
【0022】
実施例5.
A.ナノ枠(SBA-15)の製造
ナノ枠は上記実施例1と同一の方法で製造した。
B.ナノ枠を利用したナノ構造を有する白金-ルテニウム-カーボン複合体の製造
上記A.の製造方法に従い製造されたナノ枠(SBA-15)を300℃で焼成させた後、ナノ枠1g基準に18wt%のPtとRuが含浸されるよう、PtとRuの前駆体をナノ枠に添加し、これを真空乾燥器を利用して乾燥し、ナノ枠にPtとRuが含浸されるようにした。この際、Ptの前駆体には(NH3)4Pt(NO3)2を使用し、Ruの前駆体には(NH3)6RuCl3を使用しており、Ru:Ptの原子比は1:4.3になるようにした。次いで、スクロース2.5g、硫酸0.28g及び水10gを添加して均一に混合した。その後、100℃及び160℃で各々6時間のあいだ反応させた後、900℃の真空雰囲気で炭化させた。以後、希釈された弗酸水溶液を利用してナノ枠を溶解して除去した後、洗滌し、ナノ構造を有する本発明の白金-ルテニウム-カーボン複合体を製造した(Pt-Ru:C=24wt%:76wt%)。
【0023】
実施例6〜75.
A.ナノ枠(SBA-15)の製造
ナノ枠は上記実施例1と同一の方法で製造した。
B.ナノ枠を利用したナノ構造を有する金属-カーボン複合体の製造
金属の種類及び含量、各金属の原子比等を異にしたことを除いては、上記実施例5の方法と同一の過程により本発明の金属-カーボン複合体を製造した。実施例6〜75に用いられた金属の種類、含量、原子比等を下記表1(表1-1および表1-2)に表した。
【0024】
【表1−1】

【0025】
【表1−2】

【0026】
上記実施例等のうちナノ枠を利用して製造されたナノ構造を有する金属-カーボン複合体に対する構造を調べるため、次のように分析実験を行いました。
実験例1.構造分析
上記実施例で製造されたナノ構造を有する金属-カーボン複合体の構造を分析するため、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)、X-線回折分析器(X-ray diffractometer;XRD)、気孔分析器(pore analyzer)及びEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)を利用した。
【0027】
図1は、実施例2に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体の粉末をTEMで観察した結果であり、これから分かるように本発明によるナノ構造を有する金属-カーボン複合体は3次元構造で観察された。
図2は、実施例2に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体のXRD分析結果であり、本発明によるナノ構造を有する金属-カーボン複合体のXRD分析結果がSBA-15のXRD分析と同一なので、本複合体はナノ枠の形状通り製造された逆相構造(replica)になっていることが分かり、図1に示されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体が3次元構造であることを裏付ける。
【0028】
図3は、実施例2に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体の気孔構造を観察した結果であり、直径1ナノメーター以下の微細マイクロ気孔とメゾポア気孔でなる非常に多い微細気孔でなっており、吸着ISOTHERMで計算した結果、そのBET表面積がほぼ1700m2/gに達することを確認することができた。
図4は、実施例2に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体と従来の方法で製造された白金-カーボン複合体のEXAFS分析結果であり、曲線(A)及び(D)は本発明により製造された白金-カーボン複合体の結果であり、曲線(B)及び(C)は従来の方法で製造された複合体の結果である。
【0029】
具体的に図4の曲線(A)は、本発明の実施例2で得た白金-カーボン複合体の分析結果であり、曲線(D)は本発明の実施例2で得た白金-カーボン複合体をブロム混合液で処理(Microporous and Mesoporous Mat.31,23-31(1999))し、1ナノメーター以下の微細気孔にのみ白金が存在するよう処理した試料を利用した分析結果である。
さらに、曲線(B)は、商業用Vulcanカーボンを薄いH2PtCl6溶液に分散させた後、蒸発乾燥器を利用して乾燥し、以後310℃の水素雰囲気で還元して得られた白金-カーボン複合体を利用して得られた結果である。曲線(C)は(B)の過程と同一であるが、カーボン前駆体だけをナノ枠で炭化させて得たメゾポーラスカーボン(J. Am. Chem.Soc.122、10712-10713(2000))をVulcanカーボンの代わりに用いた白金-カーボン複合体を利用して得られた結果である。
【0030】
表2は、図4の分析結果によるEXAFSのグラフシミュレーション結果を示したものである。
【0031】
【表2】

【0032】
表2から分かるように、本発明の実施例により製造されたナノ構造の白金-カーボン複合体ら[各々図4の分析結果である曲線(A)及び(D)に該当]は、Pt-C結合数及び長さが決定されるが、従来の方法で製造された白金/カーボン複合体ら[各々図4の分析結果である曲線(B)及び(C)に該当]は、Pt-C結合数及び長さが決定されないことが分かる。
このような結果から従来の方法で製造された複合体は、金属とカーボンが単に混ざっているが、本発明に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体は金属とカーボンが単に混ざっているものではなく、1nm以下の白金がカーボンと化学的結合をなしており、1nm以下の微細マイクロ気孔でも化学的結合をなしている新しい構造でなる複合体であることを明らかに分かる。このように金属が非常に安定したカーボンと化学的結合をなしていることは、本発明に係るナノ構造を有する白金-カーボン複合体の新規の特徴的な構造を示すものである。
【0033】
上記のような分析結果から、本発明により製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体はナノ大きさを有する3次元構造を有し、白金が微細気孔内に1nm以下の大きさに2次元または3次元で規則的にカーボンと化学的結合をなし、多分散されていることが分かった。
上記実施例1ないし実施例75で製造したナノ枠を利用して製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体の燃料電池の触媒としての活性を評価して見るため、電気化学及び電極-電解質接合体性能の確認実験を行った。
【0034】
実験例2.片方電池実験
電極触媒で、本発明の実施例3で製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体(4mg)と結合剤(5%Nafion solution 80μL)を水(4mL)に均等に分散した後、分散液60μLをカーボン基材に滴下して80℃オーブンで加熱し電極触媒がコーティングされた電極を製造した。各々異なる幾種類の電解液内で基準電極(Ag/AgCl)に対する電位差を変更しながら電流密度を測定した。
【0035】
図5は上記実験過程により、本発明の実施例3で製造された白金-カーボン複合体に対し酸素還元反応をメタノールの濃度変化に伴い行った片方電池の実験結果を示したグラフであり、グラフの実線(―)は1M HClO4電解液にメタノールが入っていない場合を示し、長い点線(- - -)は0.5Mメタノール、そして短い点線(・・・・)は2Mメタノールが電解液に含まれた場合を意味する。
【0036】
一方、上記実施例3の金属-カーボン複合体だけでなく、実施例1〜2及び実施例4〜75で製造された金属-カーボン複合体に対しても上記のような片方電池実験を行い、図5のx軸上の850mV電位でのy軸値、即ち酸素還元反応活性を上記表1に示した。
比較実験例1.片方電池実験
電極触媒であって、本発明の白金-カーボン複合体の代わりに商業用20wt%Pt/C(Electrochem社)を用いることを除いては、上記実験例2と同一の実験を行った。
【0037】
図6は、上記実験過程により商業用白金-カーボン複合体に対し酸素還元反応をメタノールの濃度変化に伴い行った片方電池実験結果を示したグラフであり、グラフの実線(―)は1M HClO4電解液にメタノールが入っていない場合を示し、長い点線(- - -)は0.5Mメタノール、そして短い点線(・・・・)は2Mメタノールが電解液に含まれた場合を意味する。
【0038】
上記図5、及び図6の片方電池実験結果で分かるように、本発明による白金-カーボン複合体は優れた酸素電気還元反応特性だけでなく、メタノールに対しては活性が非常に少ない特異な性質があることが分かる。
実験例3.電極電解質接合体の性能実験
本発明の実施例2で製造された触媒を炭素紙を利用した気体拡散層にコーティングして直接メタノール燃料電池の還元極を製造し、商業用PtRu粉末を炭素紙を利用した気体拡散層にコーティングして酸化極を製造し、ナフィオン電解質膜(Nafion 117)をイオン交換膜にする電解質-電極接合体(アセンブリ)を製造した。酸化極の触媒コーティング層にはナフィオン電解質(Nafion 117)15%を添加しており、還元極の触媒コーティング層にはナフィオン電解質(Nafion 117)7%を添加した。ナフィオン電解質膜を間に設けて、二つの酸化/還元極を120℃で2分間熱圧着してアセンブリを製造し、得られたアセンブリの温度による電圧-電流を測定し、その結果を図7及び図8に示した。このとき、酸化極の条件は5mgPtRu/sq.cm、2Mまたは4Mメタノール2ml/min、Opsigであり、還元極の条件は0.6mg白金/sq.cm、酸素500ml/min、Opsigであり、使用電解質はナフィオン117(Nafion 117)であった。
【0039】
比較実験例2.電極電解質接合体の性能実験
還元極触媒であって、本発明の白金-カーボン複合体の代わりに商業用20wt%Pt/C(Electrochem社)を用いることを除いては、上記実験例3と同一の条件及び過程で実験を行い、その結果を図7及び図8に示した。
図7は2Mメタノール燃料が用いられた場合の電極-電解質接合体の直接メタノール燃料電池の実験結果であり、図8は4Mメタノール燃料が用いられた場合の電極-電解質接合体の直接メタノール燃料電池の実験結果であり、図7と図8は各々2Mメタノール及び4Mメタノールを酸化極燃料で用い、酸素を還元極燃料に用いた電極電解質接合体の性能曲線である。
【0040】
図7及び図8の性能結果から分かるように、本発明による白金-カーボン複合体を用いた電極電解質接合体は全ての反応温度で優れた性能と高い開回路電圧(open circuit voltage)値を示すことが確認でき、特に高温でその効果が優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上で検討したように、本発明に係るナノ構造を有する金属-カーボン複合体及びその製造方法によれば、従来の金属-カーボン複合体を製造することより製造方法が遥かに簡単で経済的であるだけでなく、燃料電池の性能をさらに向上させることができる等の効果がある。これにより、清浄エネルギーである水素及び炭化水素を利用して電気を生成する燃料電池分野に用いることができるようにすることにより、特に現在研究が活発に進行中である化石燃料の使用によるエネルギー資源の枯渇及び公害問題を画期的に解決することができる。
【0042】
さらに、本発明に係るナノ構造を有する金属-カーボン複合体及びその製造方法によれば、ナノ枠に金属前駆体及びカーボン前駆体を共に担持することにより、別途の装置の変更なく製造することができるので、より経済的な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例2に係り製造されたナノ構造を有する金属-カーボン複合体をTEMで観察した結果。
【図2】本発明の実施例2に係り製造されたナノ構造を有する金属-カーボン複合体のXRD分析結果。
【図3】本発明の実施例2に係り製造されたナノ構造を有する金属-カーボン複合体の気孔構造分析結果。
【図4】本発明の実施例2に係り製造されたナノ構造を有する金属-カーボン複合体のEXAFS分析結果。
【図5】本発明の実施例3に係り製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体の酸素還元反応特性結果。
【図6】商業用燃料電池触媒(Electrochem社、20wt%Pt/C)の酸素還元反応特性結果。
【図7】本発明の実施例2に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体、及び商業用燃料電池触媒(Electrochem社、20wt%Pt/C)を利用した電極-電解質接合体の直接メタノール燃料電池の性能比較評価の結果(2Mメタノール燃料使用)。
【図8】本発明の実施例2に従い製造されたナノ構造を有する白金-カーボン複合体及び商業用燃料電池触媒(Electrochem社、20wt%Pt/C)を利用した電極-電解質接合体の直接メタノール燃料電池の性能比較評価の結果(4Mメタノール燃料使用)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属がカーボンと化学的結合を介しメゾポーラスカーボン内に担持されたことを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項2】
第1項において、
上記金属は、1ナノメーター以下の間隔で上記メゾポーラスカーボン内に2次元または3次元構造で規則的に多分散されていることを特徴とする燃料電池の電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項3】
第1項において、
上記金属は、Pt、Ru、Cu、Ni、Mn、Co、W、Fe、Ir、Rh、Ag、Au、Os、Cr、Mo、V、Pd、Ti、Zr、Zn、B、Al、Ga、Sn、Pb、Sb、Se、Te、Cs、Rb、Mg、Sr、Ce、Pr、Nd、Sm、Re及びこれらの混合でなる群から選択されたことを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項4】
第1項において、
上記金属は、上記金属-カーボン複合体重量に対し1〜95重量%の量が含まれ、上記カーボンは、上記金属-カーボン複合体重量に対し5〜99重量%の量が含まれることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項5】
第4項において、
上記一つの金属は、上記金属-カーボン複合体重量に対し4〜36重量%の量が含まれ、上記カーボンは、上記金属-カーボン複合体重量に対し64〜96重量%の量が含まれることを特徴とする燃料電池の電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項6】
第1項ないし第3項のうちいずれか1項において、
上記金属は純粋のPtであることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項7】
第1項ないし第3項のうちいずれか1項において、
上記金属は第1金属及び第2金属の合金または混合であり、上記第1金属は白金であることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項8】
第7項において、
上記第2金属は、Ru、Cu、Ni、Mn、Co、W、Fe、Ir、Rh、Ag、Au、Os、Cr、Mo、V、Pd、Ti、Zr、Zn、B、Al、Ga、Sn、Pb、Sb、Se、Te、Cs、Rb、Mg、Sr、Ce、Pr、Nd、Sm、Re、これらの混合または合金であることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項9】
第7項において、
上記第2金属:第1金属の原子比は、4:96〜75:25であることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。
【請求項10】
第1項記載の触媒がコーティングされた電極を還元電極に採用することを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
第10項において、
上記燃料電池は水素または炭化水素を燃料に用いることを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
第10項において、
上記燃料電池は直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell)であることを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
第10項において、
還元電極は基材が炭素紙を利用した気体拡散層であり、電極触媒に第1項の触媒を用い、
酸化電極は基材が炭素紙を利用した気体拡散層であり、電極触媒に白金を主にした合金触媒を用いて、
イオン交換膜には陽イオン伝導性電解質を用いることを特徴とする燃料電池。
【請求項14】
(a)ナノ枠を準備する段階と、
(b)金属前駆体溶液に上記ナノ枠を添加し、ナノ枠に金属を含浸・乾燥させる段階と、
(c)上記金属が含浸されたナノ枠をカーボン前駆体溶液に入れて均一に混合する段階と、
(d)上記混合物を高温で反応させる段階と、
(e)上記結果物を炭化させる段階と、
(f)上記炭化段階を経た混合物から上記ナノ枠を除去する段階を含むことを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項15】
第14項において、
上記ナノ枠は、シリカ、アルミナまたはこれらの混合物の形態であることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項16】
第15項において、
上記ナノ枠はシリカ形態であることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項17】
第14項において、
上記(d)段階は60〜350℃の温度で行われ、上記(e)段階は800〜1000℃の温度で行われることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項18】
第14項において、
上記カーボン前駆体はフルフリルアルコール(furfuryl aclcohol)、グルコース及びスクロースでなる群から選択されることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項19】
第18項において、
上記カーボン前駆体はスクロースであることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項20】
第14項において、
上記カーボン前駆体はフェニル環を含むアルコール化合物、オレフィングループを含む極性化合物及びアルファオレフィン化合物でなる群から選択されることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項21】
第20項において、
上記カーボン前駆体はフェノール、アクリロニトリル及びプロピレンでなる群から選択されることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体の製造方法。
【請求項22】
第14項記載の方法により製造されることを特徴とする燃料電池電極触媒用ナノ構造金属-カーボン複合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−519165(P2007−519165A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504400(P2005−504400)
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/KR2003/001407
【国際公開番号】WO2005/008813
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(505387200)キュンウォン エンタープライズ コ.エルティーディー. (2)
【出願人】(504441831)コリア アドバンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (15)
【Fターム(参考)】