説明

燃料電池システム

【課題】水自立及び熱自立を促進させるとともに、総合効率及び負荷追従性の向上を図ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10は、燃料電池モジュール12、凝縮装置14及び制御装置16を備える。制御装置16は、少なくとも予め設定される2次電池60の電池温度と実際の電池温度との比較結果、予め設定される前記2次電池60の電池電力量と実際の電池電力量との比較結果、又は、需要電力と燃料電池モジュール12の供給電力との比較結果のいずれかに基づいて、前記2次電池60を充放電可能な状態に温度維持するために、少なくとも空冷凝縮器44に供給される排ガス、水冷凝縮器46に供給される前記排ガス、前記2次電池60からの放電量、又は、前記2次電池60への充電量のいずれかを調整する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールから排出される排ガスと冷媒体との熱交換により、前記排ガス中の水蒸気を凝縮して回収するとともに、凝縮水を前記燃料電池モジュールに供給する凝縮装置とを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、固体電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いている。この固体電解質の両側に、アノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体は、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持されている。この燃料電池は、通常、電解質・電極接合体とセパレータとが所定の数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池に供給される燃料ガスは、通常、改質装置によって炭化水素系の原燃料から生成される水素ガスが使用されている。改質装置では、一般的に、メタンやLNG等の化石燃料等の炭化水素系の原燃料から改質原料ガスを得た後、この改質原料ガスに、例えば、水蒸気改質を施すことにより、改質ガス(燃料ガス)が生成されている。
【0004】
この燃料電池では、運転温度が比較的高温であり、発電反応に使用された燃料ガス及び酸化剤ガスを含む排ガスも高温になっている。この種の排ガスは、無駄に廃棄される場合が多く、熱エネルギの有効利用を図ることが望まれている。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている電力貯蔵型熱電併給システムが知られている。このシステムは、図6に示すように、熱供給系として排熱ボイラ1aの吸水加熱系、Na−S電池(ナトリウム硫黄電池)2aの加熱系、ボイラ3aによる熱供給系、さらに電力供給系として発電機4a、Na−S電池2a及び商用系統5aを備えている。
【0006】
ここで、熱供給系の一つである吸水加熱系の構成は、ガスタービン6a等の軸受冷却水を冷却する水−水熱交換器7a、Na−S電池2aを一定温度に保持する恒温槽8aの排気系に設置したガス−水熱交換器9aにより構成されている。
【0007】
吸水は、水−水熱交換器7a、ガス−水熱交換器9aにより加熱され、排熱ボイラ1aに供給されている。Na−S電池2aの加熱系は、ガスタービン6a等の内燃機関の高温排ガスを出口部分で分岐し、断熱配管で恒温槽8aに導いてNa−S電池2aを加熱することにより、一定温度に保持している。
【0008】
これにより、発電電力の有効利用を図るべく余剰電力を充電し、必要に応じて放電する電力貯蔵設備を設置したため、高温状態を維持する必要がある高温作動型電池(Na−S電池等)の熱源として、既に存在する高温排ガスを使用するため、従来使用していた加熱用電気ヒータ等の設備費並びにヒータ電力の倹約になる、としている。
【0009】
また、特許文献2に開示されている負荷追従型燃料電池発電システムでは、図7に示すように、燃料処理装置である脱硫器1bに燃料電池スタック2bが接続され、前記燃料電池スタック2bにインバータ3bが接続されている。燃料電池スタック2bとインバータ3bとの間には、双方向コンバータ4bを介してナトリウム硫黄電池5bが接続されている。
【0010】
燃料電池スタック2bには、冷却水管により接続された熱交換器6bが設けられるとともに、ナトリウム硫黄電池5bを加熱するヒータ7bが設けられている。ヒータ7bは、熱伝達用媒体管により熱交換器6bに接続され、前記熱交換器6bには、熱伝達用媒体管により接続された給湯器8bが設けられている。
【0011】
従って、ナトリウム硫黄電池の放電、充電により、負荷追従型燃料電池発電システムの出力電力を負荷電力に追従して変化することができるから、負荷電力の速い変動に対して追従することができ、また電力を使用してナトリウム硫黄電池を加熱する必要がないから、電力損失が生ずることがない、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−176792号公報
【特許文献2】特開2002−334710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記の特許文献1において、Na−S電池では、充電時が吸熱反応であるため、排ガスの熱が供給されることにより、エネルギの有効利用が図られる。しかしながら、Na−S電池は、放電時が発熱反応であるため、前記Na−S電池が昇温し過ぎるおそれがある。これにより、Na−S電池を、常に作動状態に維持することが困難になるという問題がある。
【0014】
また、上記の特許文献2では、熱需要が多い時で且つナトリウム硫黄電池5bが充電時(吸熱反応)では、燃料電池スタック2bからの排熱だけでは補うことができず、前記ナトリウム硫黄電池5bが熱不足になるおそれがある。しかも、ナトリウム硫黄電池5bの放電時(発熱反応)には、前記ナトリウム硫黄電池5bを降温させる手段がない。このため、ナトリウム硫黄電池5bを、常に作動状態に維持することが困難になるという問題がある。
【0015】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、水自立及び熱自立を促進させるとともに、発電効率、熱効率及び負荷追従性の向上を図ることが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールから排出される排ガスと冷媒体との熱交換により、前記排ガス中の水蒸気を凝縮して回収するとともに、凝縮水を前記燃料電池モジュールに供給する凝縮装置と、制御装置とを備える燃料電池システムに関するものである。
【0017】
この燃料電池システムでは、凝縮装置は、冷媒体として酸化剤ガスが使用される空冷凝縮機構と、前記冷媒体として貯湯部に貯えられる貯湯水が使用される水冷凝縮機構とを備えるとともに、前記空冷凝縮機構は、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池を設けている。
【0018】
そして、燃料電池システムは、少なくとも予め設定される2次電池の電池温度と実際の電池温度との比較結果、予め設定される前記2次電池の電池電力量と実際の電池電力量との比較結果、又は、需要電力と燃料電池モジュールの供給電力との比較結果のいずれかに基づいて、前記2次電池を充放電可能な状態に温度維持するために、少なくとも空冷凝縮機構に供給される排ガス、水冷凝縮機構に供給される前記排ガス、前記2次電池からの放電量、又は、前記2次電池への充電量のいずれかを調整する制御装置を備えている。
【0019】
また、この燃料電池システムでは、2次電池は、溶融塩電解液電池又はナトリウム硫黄電池であることが好ましい。このため、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池として良好に使用するとともに、作動温度域を燃料電池モジュールの運転温度域に対応させることができる。
【0020】
さらに、この燃料電池システムでは、制御装置は、少なくとも電池温度と予め設定された電池温度範囲とを比較する電池温度比較部と、電池電力量と予め設定された電池電力量範囲とを比較する電池電力量比較部と、供給電力と予め設定された需要電力範囲とを比較する電力比較部と、空冷凝縮機構に供給される排ガス及び水冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を調整する排ガス流量調整部と、2次電池からの放電量を調整する放電量調整部と、前記2次電池への充電量を調整する充電量調整部とを備えることが好ましい。
【0021】
従って、2次電池の温度を充放電可能な状態に確実に維持するとともに、前記2次電池の充放電が良好に遂行される。しかも、2次電池を充電する際には、排ガスを空冷凝縮機構に供給する一方、前記2次電池を放電する際には、前記排ガスを水冷凝縮機構に供給することができ、負荷追従性と発電効率及び熱効率の向上が可能になる。
【0022】
さらにまた、この燃料電池システムでは、排ガス流量調整部は、電池温度比較部により電池温度が電池温度範囲未満であることが検出された際、空冷凝縮機構に供給される排ガスの流量を増加させることが好ましい。これにより、2次電池を充電する際には、熱媒体として空冷凝縮機構に供給される排ガスを有効に使用することができる。このため、必要以上に電力損失が発生することがなく、2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0023】
また、この燃料電池システムでは、排ガス流量調整部は、電池電力量比較部により電池電力量が電池電力量範囲未満であることが検出された際、空冷凝縮機構に供給される排ガスの流量を増加させることが好ましい。従って、2次電池を充電する際には、熱媒体として空冷凝縮機構に供給される排ガスを有効に使用することができる。これにより、必要以上に電力損失が発生することがなく、2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0024】
さらに、この燃料電池システムでは、放電量調整部は、電池電力量比較部により電池電力量が電池電力量範囲内、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、2次電池からの放電量を増加させることが好ましい。
【0025】
このため、2次電池から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲未満である際には、2次電池の放電時の発熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0026】
さらにまた、この燃料電池システムでは、放電量調整部は、供給電力が需要電力範囲未満であることが検出された際、2次電池からの放電量を増加させることが好ましい。従って、2次電池から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲未満である際には、2次電池の放電時の発熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0027】
また、この燃料電池システムでは、排ガス流量調整部は、電池温度比較部により電池温度が電池温度範囲内であることが検出された際、空冷凝縮機構に供給される排ガスの流量を維持させることが好ましい。これにより、必要以上に電力損失が発生することがなく、2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0028】
さらに、この燃料電池システムでは、充電量調整部は、電池電力量比較部により電池電力量が電池電力量範囲未満、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲内であることが検出された際、2次電池への充電量を増加させることが好ましい。
【0029】
このため、2次電池に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲内である際には、2次電池の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0030】
さらにまた、この燃料電池システムでは、充電量調整部は、供給電力が需要電力範囲超過であることが検出された際、2次電池への充電量を増加させることが好ましい。従って、2次電池に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲内である際には、2次電池の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0031】
また、この燃料電池システムでは、放電量調整部は、電池電力量比較部により電池電力量が電池電力量範囲内、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、2次電池からの放電量を増加させることが好ましい。
【0032】
これにより、2次電池から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲内である際には、2次電池の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0033】
さらに、この燃料電池システムでは、放電量調整部は、供給電力が需要電力範囲未満であることが検出された際、2次電池からの放電量を増加させることが好ましい。
【0034】
このため、2次電池から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲内である際には、2次電池の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0035】
さらにまた、この燃料電池システムでは、排ガス流量調整部は、電池温度比較部により電池温度が電池温度範囲超過であることが検出された際、空冷凝縮機構に供給される排ガスの流量を減少させることが好ましい。従って、2次電池から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0036】
また、この燃料電池システムでは、排ガス流量調整部は、電池電力量比較部により電池電力量が電池電力量範囲超過であることが検出された際、空冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を減少させることが好ましい。
【0037】
これにより、2次電池から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲超過である際には、2次電池の充電時の吸熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0038】
さらに、この燃料電池システムでは、充電量調整部は、電池電力量比較部により電池電力量が電池電力量範囲未満、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲内であることが検出された際、2次電池への充電量を増加させることが好ましい。
【0039】
このため、2次電池に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲超過である際には、2次電池の充電時の吸熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0040】
さらにまた、この燃料電池システムでは、充電量調整部は、供給電力が需要電力範囲超過であることが検出された際、2次電池への充電量を増加させることが好ましい。従って、2次電池に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度が電池温度範囲超過である際には、2次電池の充電時の吸熱により、前記2次電池の作動温度を維持することができる。
【0041】
また、この燃料電池システムでは、燃料電池モジュールは、少なくとも電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体とセパレータとが積層される燃料電池を設け、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックと、酸化剤ガスを前記燃料電池スタックに供給する前に加熱する熱交換器と、炭化水素を主体とする原燃料と水蒸気との混合燃料を生成するために、水を蒸発させる蒸発器と、前記混合燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器とを備えることが好ましい。
【0042】
これにより、特に水蒸気改質を行う燃料電池モジュールに最適に適用することができ、良好な効果が得られる。
【0043】
さらに、この燃料電池システムでは、燃料電池モジュールは、固体酸化物形燃料電池モジュールであることが好ましい。このため、高温型燃料電池システムに最適に用いることが可能になり、良好な効果が得られる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、空冷凝縮機構は、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池を設けている。このため、2次電池の充放電により、燃料電池システムの出力電力を負荷電力に追従して変化させることができ、前記負荷電力の急激な変動に容易に追従することが可能になる。
【0045】
しかも、2次電池の充電時には、熱媒体として排ガスが使用される一方、前記2次電池の放電時には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができる。従って、必要以上に電力損失が発生することがなく、電力損失の抑制と熱の有効利用とが図られることから、発電効率及び熱効率、すなわち、総合効率の向上を図ることが可能になる。
【0046】
さらに、2次電池を充電する際には、排ガスを空冷凝縮機構に供給する一方、前記2次電池を放電する際には、前記排ガスを水冷凝縮機構に供給することができる。これにより、負荷追従性と発電効率及び熱効率の向上が可能になる。
【0047】
その上、排ガス温度が低減されるとともに、排ガス中の水蒸気を凝縮して回収することが可能になり、廃熱の抑制と水自立の促進が図られる。さらに、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が容易に遂行可能になる。
【0048】
ここで、水自立とは、燃料電池システムの運転に必要な水の全量を外部から供給することなく、前記燃料電池システム内で賄うことをいう。また、熱自立とは、燃料電池システムの運転に必要な熱の全量を外部から加えることなく、自ら発生する熱のみで前記燃料電池システムの動作温度を維持することをいう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図2】前記燃料電池システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【図3】前記制御方法の制御マップの説明図である。
【図4】前記制御マップの詳細説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図6】特許文献1の電力貯蔵型熱電併給システムの説明図である。
【図7】特許文献2の負荷追従型燃料電池発電システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム10は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。
【0051】
燃料電池システム10は、図1に概略的に示すように、燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(空気)との電気化学反応により発電する燃料電池モジュール12と、前記燃料電池モジュール12から排出される排ガスと冷媒体との熱交換により、前記排ガス中の水蒸気を凝縮して回収するとともに、凝縮水を前記燃料電池モジュール12に供給する凝縮装置14と、制御装置16と、前記冷媒体として貯留水が貯えられる貯湯タンク(貯留部)18とを備える。
【0052】
燃料電池モジュール12には、前記燃料電池モジュール12に原燃料(例えば、都市ガス)を供給する燃料ガス供給装置(燃料ガスポンプを含む)20と、前記燃料電池モジュール12に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置(エアポンプを含む)22と、前記燃料電池モジュール12に水を供給する水供給装置(水ポンプを含む)24とが接続される。
【0053】
燃料電池モジュール12は、図示しないが、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される固体電解質(固体酸化物)をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体26とセパレータ28とが積層される固体酸化物形の燃料電池30を設けるとともに、複数の前記燃料電池30が鉛直方向(又は水平方向)に積層される固体酸化物形の燃料電池スタック32を備える。
【0054】
燃料電池スタック32の積層方向下端側(又は上端側)には、酸化剤ガスを前記燃料電池スタック32に供給する前に加熱する熱交換器34と、炭化水素を主体とする原燃料と水蒸気との混合燃料を生成するために、前記水を蒸発させる蒸発器36と、前記混合燃料を改質して燃料ガス(改質ガス)を生成する改質器38とが配設される。
【0055】
改質器38は、都市ガス(燃料ガス)中に含まれるエタン(C)、プロパン(C)及びブタン(C10)等の高級炭化水素(C2+)を、主としてメタン(CH)を含む燃料ガスに水蒸気改質するための予備改質器であり、数百℃の作動温度に設定される。
【0056】
燃料電池30は、作動温度が数百℃と高温であり、電解質・電極接合体26では、燃料ガス中のメタンが改質されて水素が得られ、この水素がアノード電極に供給される。
【0057】
熱交換器34は、燃料電池スタック32から排出される使用済み反応ガス(以下、排ガス又は燃焼排ガスともいう)と、被加熱流体である空気とを、互いに対向流に流して熱交換を行う。熱交換後の排ガスは、排気管40に排出される一方、熱交換後の空気は、酸化剤ガスとして燃料電池スタック32に供給される。
【0058】
蒸発器36の出口は、改質器38の入口に連結されるとともに、前記改質器38の出口は、燃料電池スタック32の燃料ガス供給連通孔(図示せず)に連通する。蒸発器36に供給された排ガスを排出するために、主排気管42が設けられる。主排気管42は、排気管40に一体化される。
【0059】
凝縮装置14は、冷媒体として酸化剤ガスが使用される空冷凝縮器(空冷凝縮機構)44と、前記冷媒体として貯湯タンク18に貯えられる貯湯水が使用される水冷凝縮器(水冷凝縮機構)46とを備える。
【0060】
燃料電池モジュール12から延在する排気管40には、調整弁48が配設され、前記調整弁48の出口側には、排ガス通路50a、50bが分岐する。排ガス通路50aには、空冷凝縮器44が接続される一方、排ガス通路50bには、水冷凝縮器46が接続される。
【0061】
調整弁48は、空冷凝縮器44に供給される排ガスの流量、及び水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量を個別に調整可能である。排ガスは、空冷凝縮器44のみに供給される場合、水冷凝縮器46のみに供給される場合、及び前記空冷凝縮器44と前記水冷凝縮器46とにそれぞれ所定の流量で供給される場合がある。
【0062】
なお、調整弁48は、排ガス通路50aと50bとに対する排ガスの分配流量を変更させることにより、前記排ガス通路50a、50bに供給される排ガス流量を調整することもできる。その際、後述する制御では、燃料電池モジュール12の出力を増減させて排ガス供給量を増減させることにより、排ガス通路50a、50bに分配される排ガス流量を増減させる必要がある。
【0063】
空冷凝縮器44及び水冷凝縮器46の出口側には、排ガスを排出するための排気ガス流路52a、52bが設けられるとともに、凝縮した凝縮水を水容器54に供給するための凝縮水流路56a、56bが設けられる。水容器54は、凝縮水を貯留するとともに、水流路58を介して水供給装置24に接続される。排気ガス流路52a、52bは、合流した後、凝縮装置14の外部に排ガスを排出自在である。
【0064】
空冷凝縮器44には、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池60が設けられる。2次電池60は、好適には、溶融塩電解液電池又はナトリウム硫黄電池等の高温型2次電池が使用される。2次電池60には、この2次電池60自体の温度を検出するために温度センサ62が装着される。温度センサ62により検出された電池温度Tは、制御装置16に送られる。
【0065】
2次電池60は、DC/DCコンバータ64を介して燃料電池モジュール12に電気的に接続され、前記燃料電池モジュール12の出力電力を負荷電力に追従して変化させることができる。燃料電池モジュール12の出力電力は、DC/DCコンバータ64により降圧されて2次電池60に充電可能である。
【0066】
空冷凝縮器44には、酸化剤ガス供給装置22を配設した空気供給管66が接続される。空気供給管66は、空冷凝縮器44内に冷媒体として酸化剤ガスを通し、排ガスと熱交換させることにより昇温された前記酸化剤ガスを燃料電池スタック32に供給する。
【0067】
水冷凝縮器46には、貯湯タンク18に接続された循環配管68が配設される。循環配管68は、水冷凝縮器46内に冷媒体として貯湯タンク18内の貯湯水を通して排ガスと熱交換させ、昇温された貯湯水を前記貯湯タンク18に戻す。
【0068】
制御装置16は、少なくとも予め設定される2次電池60の電池温度Tと実際の電池温度Tとの比較結果、予め設定される前記2次電池60の電池電力量Wと実際の電池電力量Wとの比較結果、又は、需要電力と燃料電池モジュール12の供給電力との比較結果のいずれかに基づいて、前記2次電池60を充放電可能な状態に温度維持するために、少なくとも空冷凝縮器44に供給される排ガス、水冷凝縮器46に供給される前記排ガス、前記2次電池60からの放電量、又は、前記2次電池60への充電量のいずれかを調整する機能を有する。
【0069】
制御装置16は、少なくとも2次電池60の電池温度Tと予め設定された電池温度範囲とを比較する電池温度比較部70と、前記2次電池60の電池電力量Wと予め設定された電池電力量範囲とを比較する電池電力量比較部72と、燃料電池モジュール12の供給電力(燃料電池出力)と予め設定された需要電力(要求出力)範囲とを比較する電力比較部74と、空冷凝縮器44に供給される排ガス及び水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量を調整する排ガス流量調整部76と、前記2次電池60からの放電量を調整する放電量調整部78と、前記2次電池60への充電量を調整する充電量調整部79とを備える。
【0070】
排ガス流量調整部76は、調整弁48を制御して所望の調整機能を営むものであるが、例えば、空冷凝縮器44及び水冷凝縮器46にそれぞれ配設される弁(図示せず)を個別に又は同時に制御してもよい。
【0071】
貯湯タンク18は、貯湯水水位を検出する水位計(貯湯水水位検出器)80と、貯湯水温度を検出する温度計(貯湯水温度検出器)82とを備える。水容器54は、前記水容器54内の凝縮水水位を検出する水位計(凝縮水水位検出器)84を備える。
【0072】
貯湯タンク18には、外部から市水を供給するための給水管86と、排水を行う排水管88と、所望の温度の貯湯水を給湯する給湯管90とが接続される。給水管86、排水管88及び給湯管90には、それぞれ弁92、94及び96が配設される。
【0073】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0074】
燃料ガス供給装置20の駆動作用下に、蒸発器36には、例えば、都市ガス(CH、C、C、C10を含む)等の原燃料が供給される。一方、水供給装置24の駆動作用下に、蒸発器36には、水が供給されるとともに、熱交換器34には、酸化剤ガス供給装置22を介して酸化剤ガスである、例えば、空気が空冷凝縮器44を通って供給される。
【0075】
蒸発器36では、原燃料に水蒸気が混在されて混合燃料が得られ、この混合燃料は、改質器38の入口に供給される。混合燃料は、改質器38内で水蒸気改質され、C2+の炭化水素が除去(改質)されてメタンを主成分とする燃料ガスが得られる。この燃料ガスは、改質器38の出口から燃料電池スタック32に導入される。このため、燃料ガス中のメタンが改質されて水素ガスが得られ、この水素ガスを主成分とする燃料ガスは、アノード電極(図示せず)に供給される。
【0076】
一方、熱交換器34に供給される空気は、この熱交換器34に沿って移動する際、後述する排ガスとの間で熱交換が行われ、所望の温度に予め加温されている。熱交換器34で加温された空気は、燃料電池スタック32に導入され、図示しないカソード電極に供給される。
【0077】
従って、電解質・電極接合体26では、燃料ガスと空気との電気化学反応により発電が行われる。各電解質・電極接合体26の外周部に排出される高温(数百℃)の排ガスは、熱交換器34を通って空気と熱交換を行い、この空気を所望の温度に加温して温度低下が惹起される。排ガスは、蒸発器36に供給されて水を蒸発させる。蒸発器36を通過した排ガスは、主排気管42から排気管40を介して凝縮装置14に送られる。
【0078】
次いで、凝縮装置14における制御方法について、図2に示すフローチャート、並びに、図3及び図4に示す制御マップに沿って、以下に説明する。
【0079】
先ず、2次電池60の電池温度Tの電池温度範囲として、電池温度上限値Tmaxと電池温度下限値Tminとが予め設定される。さらに、2次電池60の電池電力量Wの電池電力量範囲として、電池電力量上限値Wmaxと電池電力量下限値Wminとが予め設定される。
【0080】
図4中、空冷UPとは、空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量を増加させるモードであり、空冷DOWNとは、前記空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量を減少させるモードである。水冷UPとは、水冷凝縮器46内に供給される排ガスの流量を増加させるモードであり、水冷DOWNとは、前記水冷凝縮器46内に供給される排ガスの流量を減少させるモードである。
【0081】
図4中、充放電条件とあるのは、燃料電池モジュール12の供給出力に対する要求出力の関係から、2次電池60を放電させるか充電させるかを判断する条件である。要求出力>供給出力では、2次電池60が放電モードとなり、要求出力<供給出力では、前記2次電池60が充電モードとなる。
【0082】
そこで、制御装置16では、電池温度比較部70を介して、2次電池60の電池温度Tと予め設定された電池温度範囲とが比較される。電池温度Tが、電池温度上限値Tmax以下であると判断されると(ステップS1中、YES)、ステップS2に進む。
【0083】
ステップS2では、電池温度Tが、電池温度下限値Tmin以上であると判断されると(ステップS2中、YES)、ステップS3に進んで、電池電力量比較部72を介して、2次電池60の電池電力量Wと予め設定された電池電力量範囲とが比較される。電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax以下であると判断されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進む。
【0084】
ステップS4では、電池電力量Wが、電池電力量下限値Wmin以上であると判断されると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進んで、処理Eが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度範囲内であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量範囲内である。
【0085】
その際、空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が維持されるとともに(空冷維持)、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が維持される(水冷維持)。このため、2次電池60の電池温度Tが維持される一方、電池電力量Wは、充放電可能な状態にある。電力比較部74では、燃料電池モジュール12の供給電力と需要電力とを比較する。従って、要求出力>供給出力では、放電量調整部78を介して2次電池60から放電される一方、要求出力<供給出力では、充電量調整部79を介して燃料電池モジュール12から前記2次電池60に充電される。
【0086】
また、ステップS4において、電池電力量Wが、電池電力量下限値Wmin未満であると判断されると(ステップS4中、NO)、ステップS6に進んで、処理Dが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度範囲内であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量未満である。
【0087】
この処理Dでは、排ガス流量調整部76の作用下に、空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量及び水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が維持される。そして、電力比較部74において、要求出力<供給出力であると判断されると、充電量調整部79を介して燃料電池モジュール12から2次電池60に充電が行われる。
【0088】
さらにまた、ステップS3において、電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax超過であると判断されると(ステップS3中、NO)、ステップS7に進んで、処理Fが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度範囲内であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量超過である。
【0089】
この処理Fでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量及び水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が維持される。さらに、電力比較部74において、要求出力>供給出力であると判断されると、放電量調整部78を介して2次電池60から放電が行われる。
【0090】
ステップS2において、電池温度Tが、電池温度下限値Tmin未満であると判断されると(ステップS2中、NO)、ステップS8に進んで、電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax以下であるか否かが判断される。電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax以下であると判断されると(ステップS8中、YES)、ステップS9に進む。
【0091】
ステップS9では、電池電力量Wが、電池電力量下限値Wmin以上であると判断されると(ステップS9中、YES)、ステップS10に進んで、処理Bが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度未満であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量範囲内である。
【0092】
この処理Bでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が増加される一方、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が減少される。そして、電力比較部74において、要求出力>供給出力であると判断されると、放電量調整部78を介して2次電池60から放電が行われる。
【0093】
ステップS9において、電池電力量Wが、電池電力量下限値Wmin未満であると判断されると(ステップS9中、NO)、ステップS11に進んで、処理Aが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度未満であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量未満である。
【0094】
この処理Aでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が増加されるとともに、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が減少される。その際、2次電池60では、充放電が行われず、作動可能な温度域まで昇温される。
【0095】
また、ステップS8において、電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax超過であると判断されると(ステップS8中、NO)、ステップS12に進んで、処理Cが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度未満であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量超過である。
【0096】
この処理Cでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が増加される一方、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が減少される。そして、電力比較部74において、要求出力>供給出力であると判断されると、放電量調整部78を介して2次電池60から放電が行われる。
【0097】
さらにまた、ステップS1において、電池温度Tが、電池温度上限値Tmax超過であると判断されると(ステップS1中、NO)、ステップS13に進む。このステップS13では、電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax以下であると判断されると(ステップS13中、YES)、ステップS14に進む。
【0098】
ステップS14では、電池電力量Wが、電池電力量下限値Wmin以上であると判断されると(ステップS14中、YES)、ステップS15に進んで、処理Hが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度超過であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量範囲内である。
【0099】
この処理Hでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が減少される一方、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が増加される。そして、電力比較部74において、要求出力<供給出力であると判断されると、充電量調整部79を介して燃料電池モジュール12から2次電池60に充電が行われる。
【0100】
ステップS14において、電池電力量Wが、電池電力量下限値Wmin未満であると判断されると(ステップS14中、NO)、ステップS16に進んで、処理Gが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度超過であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量未満である。
【0101】
この処理Gでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が減少される一方、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が増加される。さらに、電力比較部74において、要求出力<供給出力であると判断されると、充電量調整部79を介して燃料電池モジュール12から2次電池60に充電が行われる。
【0102】
また、ステップS13において、電池電力量Wが、電池電力量上限値Wmax超過であると判断されると(ステップS13中、NO)、ステップS17に進んで、処理Iが行われる。この状態は、図3及び図4に示すように、2次電池60の電池温度Tが、電池温度超過であり、且つ、前記2次電池60の電池電力量Wが、電池電力量超過である。
【0103】
この処理Iでは、排ガス流量調整部76を介して空冷凝縮器44内に供給される排ガスの流量が減少される一方、水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量が増加される。その際、2次電池60では、充放電が行われず、作動可能な温度域まで降温される。
【0104】
この場合、第1の実施形態では、凝縮装置14は、冷媒体として酸化剤ガスが使用される空冷凝縮器44を備えるとともに、前記空冷凝縮器44は、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池60を備えている。
【0105】
このため、2次電池60の充放電により、燃料電池モジュール12の出力電力を負荷電力に追従して変化させることができ、前記負荷電力の急激な変動に容易に追従することが可能になるという効果が得られる。
【0106】
しかも、2次電池60の充電時には、熱媒体として排ガスが使用される一方、前記2次電池60の放電時には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができる。従って、必要以上に電力損失が発生することがなく、電力損失の抑制と熱の有効利用とが図られることから、発電効率及び熱効率、すなわち、総合効率の向上を図ることが可能になる。
【0107】
さらに、2次電池60を充電する際には、排ガスを空冷凝縮器44に供給する一方、前記2次電池60を放電する際には、前記排ガスを水冷凝縮器46に供給することができる、これにより、負荷追従性と発電効率及び熱効率の向上が可能になる。
【0108】
その上、排ガス温度が低減されるとともに、排ガス中の水蒸気を凝縮して回収することが可能になり、廃熱の抑制と水自立の促進が図られる。さらに、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が容易に遂行可能になる。
【0109】
ここで、水自立とは、燃料電池システム10の運転に必要な水の全量を外部から供給することなく、前記燃料電池システム10内で賄うことをいう。また、熱自立とは、燃料電池システム10の運転に必要な熱の全量を外部から加えることなく、自ら発生する熱のみで前記燃料電池システム10の動作温度を維持することをいう。
【0110】
また、2次電池60は、好適には、溶融塩電解液電池又はナトリウム硫黄電池が使用されている。従って、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池60として良好に使用するとともに、作動温度域を燃料電池モジュール12の運転温度域に対応させることが可能になる。
【0111】
さらに、制御装置16は、2次電池60の電池温度Tと予め設定された電池温度範囲とを比較する電池温度比較部70と、前記2次電池60の電池電力量Wと予め設定された電池電力量範囲とを比較する電池電力量比較部72と、燃料電池モジュール12の供給電力と予め設定された需要電力範囲とを比較する電力比較部74と、空冷凝縮器44に供給される排ガス及び水冷凝縮器46に供給される前記排ガスの流量を調整する排ガス流量調整部76と、前記2次電池60からの放電量を調整する放電量調整部78と、前記2次電池60への充電量を調整する充電量調整部79とを備えている。
【0112】
従って、2次電池60の温度を充放電可能な状態に確実に維持するとともに、前記2次電池60の充放電が良好に遂行される。しかも、2次電池60を充電する際には、排ガスを空冷凝縮器44に供給する一方、前記2次電池60を放電する際には、前記排ガスを水冷凝縮器46に供給することができ、負荷追従性と発電効率及び熱効率の向上が可能になる。
【0113】
さらにまた、排ガス流量調整部76は、電池温度比較部70により電池温度Tが電池温度範囲未満であることが検出された際、空冷凝縮器44に供給される排ガスの流量を増加させている。これにより、2次電池60を充電する際には、熱媒体として空冷凝縮器44に供給される排ガスを有効に使用することができる。このため、必要以上に電力損失が発生することがなく、2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0114】
また、排ガス流量調整部76は、電池電力量比較部72により電池電力量Wが電池電力量範囲未満であることが検出された際、空冷凝縮器44に供給される排ガスの流量を増加させている。従って、2次電池60を充電する際には、熱媒体として空冷凝縮器44に供給される排ガスを有効に使用することができる。これにより、必要以上に電力損失が発生することがなく、2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0115】
さらに、放電量調整部78は、電池電力量比較部72により電池電力量Wが電池電力量範囲内、又は、前記電池電力量Wが前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、2次電池60からの放電量を増加させている。
【0116】
このため、2次電池60から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲未満である際には、2次電池60の放電時の発熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0117】
さらにまた、放電量調整部78は、供給電力が需要電力範囲未満であることが検出された際、2次電池60からの放電量を増加させている。従って、2次電池60から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲未満である際には、2次電池60の放電時の発熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0118】
また、排ガス流量調整部76は、電池温度比較部70により電池温度Tが電池温度範囲内であることが検出された際、空冷凝縮器44に供給される排ガスの流量を維持させている。これにより、必要以上に電力損失が発生することがなく、2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0119】
さらに、充電量調整部79は、電池電力量比較部72により電池電力量Wが電池電力量範囲未満、又は、前記電池電力量Wが前記電池電力量範囲内であることが検出された際、2次電池60への充電量を増加させている。
【0120】
このため、2次電池60に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲内である際には、2次電池60の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0121】
さらにまた、充電量調整部79は、供給電力が需要電力範囲超過であることが検出された際、2次電池60への充電量を増加させている。従って、2次電池60に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲内である際には、2次電池60の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0122】
また、放電量調整部78は、電池電力量比較部72により電池電力量Wが電池電力量範囲内、又は、前記電池電力量Wが前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、2次電池60からの放電量を増加させている。
【0123】
これにより、2次電池60から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲内である際には、2次電池60の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0124】
さらに、放電量調整部78は、供給電力が需要電力範囲未満であることが検出された際、2次電池60からの放電量を増加させている。
【0125】
このため、2次電池60から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲内である際には、2次電池の充電時の吸熱や放電時の発熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0126】
さらにまた、排ガス流量調整部76は、電池温度比較部70により電池温度Tが電池温度範囲超過であることが検出された際、空冷凝縮器44に供給される排ガスの流量を減少させている。従って、2次電池60から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。
【0127】
また、排ガス流量調整部76は、電池電力量比較部に72より電池電力量Wが電池電力量範囲超過であることが検出された際、空冷凝縮器44に供給される前記排ガスの流量を減少させている。
【0128】
これにより、2次電池60から放電する際には、冷媒体として酸化剤ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲超過である際には、2次電池60の充電時の吸熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0129】
さらに、充電量調整部79は、電池電力量比較部72により電池電力量Wが電池電力量範囲未満、又は、前記電池電力量Wが前記電池電力量範囲内であることが検出された際、2次電池60への充電量を増加させている。
【0130】
このため、2次電池60に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲超過である際には、2次電池60の充電時の吸熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0131】
さらにまた、充電量調整部79は、供給電力が需要電力範囲超過であることが検出された際、2次電池60への充電量を増加させている。従って、2次電池60に充電する際には、熱媒体として排ガスを使用することができ、必要以上に電力損失が発生することがなく、前記2次電池60の作動温度を良好に維持することが可能になる。しかも、電池温度Tが電池温度範囲超過である際には、2次電池60の充電時の吸熱により、前記2次電池60の作動温度を維持することができる。
【0132】
また、燃料電池モジュール12は、燃料電池スタック32と、熱交換器34と、蒸発器36と、改質器38とを備えている。これにより、特に水蒸気改質を行う燃料電池モジュール12に最適に適用することができ、良好な効果が得られる。
【0133】
さらに、燃料電池モジュール12は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)モジュールにより構成されている。このため、高温型燃料電池システムに最適に用いることが可能になり、良好な効果が得られる。
【0134】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム100の概略構成説明図である。
【0135】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0136】
燃料電池システム100は、空冷凝縮器44に空冷ファン102を装着して構成される。従って、空冷凝縮器44では、空冷ファン102から強制的に供給される外気(酸化剤ガス)が、燃料電池スタック32から排出される排ガスを冷却するとともに、2次電池60の放電時に冷媒体として使用される。
【0137】
これにより、第2の実施形態では、水自立及び熱自立を促進させるとともに、総合効率及び負荷追従性の向上を図ることが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0138】
10、100…燃料電池システム 12…燃料電池モジュール
14…凝縮装置 16…制御装置
18…貯湯タンク 20…燃料ガス供給装置
22…酸化剤ガス供給装置 24…水供給装置
26…電解質・電極接合体 28…セパレータ
30…燃料電池 32…燃料電池スタック
34…熱交換器 36…蒸発器
38…改質器 40…排気管
44…空冷凝縮器 46…水冷凝縮器
48…調整弁 52a、52b…排気ガス流路
54…水容器 56a、56b…凝縮水流路
60…2次電池 62…温度センサ
64…DC/DCコンバータ 66…空気供給管
70…電池温度比較部 72…電池電力量比較部
74…電力比較部 76…排ガス流量調整部
78…放電量調整部 79…充電量調整部
80、84…水位計 82…温度計
102…空冷ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールから排出される排ガスと冷媒体との熱交換により、前記排ガス中の水蒸気を凝縮して回収するとともに、凝縮水を前記燃料電池モジュールに供給する凝縮装置と、
を備える燃料電池システムであって、
前記凝縮装置は、前記冷媒体として前記酸化剤ガスが使用される空冷凝縮機構と、
前記冷媒体として貯湯部に貯えられる貯湯水が使用される水冷凝縮機構と、
を備えるとともに、
前記空冷凝縮機構は、充電時に吸熱反応を行う一方、放電時に発熱反応を行う2次電池を設け、
前記燃料電池システムは、少なくとも予め設定される前記2次電池の電池温度と実際の電池温度との比較結果、予め設定される前記2次電池の電池電力量と実際の電池電力量との比較結果、又は、需要電力と前記燃料電池モジュールの供給電力との比較結果のいずれかに基づいて、前記2次電池を充放電可能な状態に温度維持するために、少なくとも前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガス、前記水冷凝縮機構に供給される前記排ガス、前記2次電池からの放電量、又は、前記2次電池への充電量のいずれかを調整する制御装置を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記2次電池は、溶融塩電解液電池又はナトリウム硫黄電池であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、少なくとも前記電池温度と予め設定された電池温度範囲とを比較する電池温度比較部と、
前記電池電力量と予め設定された電池電力量範囲とを比較する電池電力量比較部と、
前記供給電力と予め設定された需要電力範囲とを比較する電力比較部と、
前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガス及び前記水冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を調整する排ガス流量調整部と、
前記2次電池からの放電量を調整する放電量調整部と、
前記2次電池への充電量を調整する充電量調整部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流量調整部は、前記電池温度比較部により前記電池温度が前記電池温度範囲未満であることが検出された際、前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流量調整部は、前記電池電力量比較部により前記電池電力量が前記電池電力量範囲未満であることが検出された際、前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記放電量調整部は、前記電池電力量比較部により前記電池電力量が前記電池電力量範囲内、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、前記2次電池からの放電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池システムにおいて、前記放電量調整部は、前記供給電力が前記需要電力範囲未満であることが検出された際、前記2次電池からの放電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項3記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流量調整部は、前記電池温度比較部により前記電池温度が前記電池温度範囲内であることが検出された際、前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を維持させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8記載の燃料電池システムにおいて、前記充電量調整部は、前記電池電力量比較部により前記電池電力量が前記電池電力量範囲未満、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲内であることが検出された際、前記2次電池への充電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項9記載の燃料電池システムにおいて、前記充電量調整部は、前記供給電力が前記需要電力範囲超過であることが検出された際、前記2次電池への充電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項8記載の燃料電池システムにおいて、前記放電量調整部は、前記電池電力量比較部により前記電池電力量が前記電池電力量範囲内、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、前記2次電池からの放電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11記載の燃料電池システムにおいて、前記放電量調整部は、前記供給電力が前記需要電力範囲未満であることが検出された際、前記2次電池からの放電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項13】
請求項3記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流量調整部は、前記電池温度比較部により前記電池温度が前記電池温度範囲超過であることが検出された際、前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を減少させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項14】
請求項13記載の燃料電池システムにおいて、前記排ガス流量調整部は、前記電池電力量比較部により前記電池電力量が前記電池電力量範囲超過であることが検出された際、前記空冷凝縮機構に供給される前記排ガスの流量を減少させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項15】
請求項13記載の燃料電池システムにおいて、前記充電量調整部は、前記電池電力量比較部により前記電池電力量が前記電池電力量範囲未満、又は、前記電池電力量が前記電池電力量範囲内であることが検出された際、前記2次電池への充電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項16】
請求項15記載の燃料電池システムにおいて、前記充電量調整部は、前記供給電力が前記需要電力範囲超過であることが検出された際、前記2次電池への充電量を増加させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池モジュールは、少なくとも電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体とセパレータとが積層される燃料電池を設け、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックと、
前記酸化剤ガスを前記燃料電池スタックに供給する前に加熱する熱交換器と、
炭化水素を主体とする原燃料と水蒸気との混合燃料を生成するために、前記水を蒸発させる蒸発器と、
前記混合燃料を改質して前記燃料ガスを生成する改質器と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池モジュールは、固体酸化物形燃料電池モジュールであることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62217(P2013−62217A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201632(P2011−201632)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】