説明

燃焼ガスシステム、特に商船用燃焼ガスシステム

本発明は、輸送手段の、特に船のタンク(1)内で低温液状ガスを貯留するための方法において、貯留タンクから液状ガスを取り出すステップと、取り出した液状ガスを加熱するステップと、輸送手段のタンク(1)内へ液状ガスをポンプで給送することにより、輸送手段のタンク(1)を加熱した液状ガスで充填するステップとを含んでいる。本発明は、さらに、この方法を実施することのできるシステムおよびこのようなシステムを備えた船に関わる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液状ガスを、特にLNGを、輸送手段の、特に船の駆動のために設けられている輸送手段タンク内で貯留するための方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排ガス規制値が厳しくなり、特に商船航行による有害ガスの放出、特にここではSO、CO、NOの放出を低減する努力のため、最近では、天然ガスをベースとした商船の駆動を、天然ガスおよび重油および/またはディーゼル油を択一的に燃焼させるいわゆるデュアルフュエルエンジンで、或いは、ガスを燃料として利用する他の装置で可能にするシステムが開発される。
【0003】
ガス作動の前提は、適当量のガスを船内で貯蔵できるということである。この場合、必要量は船のタイプおよび船の使用目的に依存している。燃焼ガスのガス圧、ガス温度、ガス質に対し課せられる条件はそれぞれ使用する消費装置に依存している。
【0004】
天然ガスのエネルギー密度が小さいため、燃焼ガスの有利な貯留形態として液化天然ガス、いわゆるLNGが考えられる。液化天然ガス、いわゆるLNGは、比較的小さな圧力と低温で貯留体積内での比較的高いエネルギー密度を可能にし、船内の制限されたスペース状況の下で必要なエネルギー量を船の使用可能な容積の範囲内で蓄積することができる。
【0005】
船上でLNGから成るガスを供給するためのシステムは、通常以下のような構成部を有している。
−チャージシステム(燃料庫接続部)
−LNG貯留部(貯留容積部に境を接している船の部分が船構造用鋼の使用を断念させるような極めて低い温度に曝される危険がないように実施される)
−燃料搬送部または消費装置の圧力へ増圧させる増圧部
−燃料調製部(温度および場合によっては品質の適合)
−安全装置
【0006】
技術水準によれば、貯留容器として主に、比較的小さな真空絶縁される筒状タンクが使用される。燃料調製は、タンク内に設置したポンプによって蒸発したLNGをガス状に引き出してコンプレッサ内で圧縮することによって行われるか、或いは、タンクの底部排出部を必要とする自然循環蒸発器で増圧することによって行われる。
【0007】
チャージはたとえばいわゆる蒸気回収により行われる。すなわち、空の船タンク内に含まれているガス相を順次充填されるLNGによって排出し、燃料庫接続管以外の第2の管により充填中の船または貯留タンクへ回収する。
【0008】
タンクに管を接続するため、通常タンクは管にフランジ結合される接続部材を備えている。安全上の理由から、管をタンクに溶接するのが好適である。しかしながら、通常使用されているタンクの場合、実際にはこれを規定どおりに実現することはできない。さらに、安全上の理由から、管をタンク底部またはタンクの側壁を貫通しないように案内するのが有利である。他方、タンク領域内に管があると、対応的に漏れが発生して、タンク内の液体が重力で排出される。
【0009】
特許文献1から、ガスタンク船をディスチャージするためのシステムおよび方法が知られている。このシステムは、チャージタンクと、浸漬式ポンプを設けていないチャージタンクとを一緒に含んでいる。チャージタンクは2つの管を介して互いに接続され、その際一方の管はコンプレッサを備えている。コンプレッサにより、浸漬式ポンプを備えたチャージタンクからガス相が浸漬式ポンプを設けていないチャージタンクへ給送される。このようにして生じた、浸漬式ポンプを設けていないチャージタンク内での圧力上昇により、液体は浸漬式ポンプを設けていないチャージタンクから他方の管を介してチャージポンプを備えたタンクへ到達する。浸漬式ポンプにより液状ガスは付属のタンクから放出管を介して陸上設備へ搬送される。このシステムは適当な温度調整を可能にする。
【0010】
タンクを充填するための他の公知の方法では、たとえば液化天然ガスが第1の管を介してタンク内に充填される。タンク内に発生するいわゆるボイルオフガスは、第2の管を介して低温液体をガス相に噴射することで凝縮される。それ故、タンク内に発生するボイルオフガスをタンクから取り出す必要がない。必要な場合には、第3の管を介して液状ガスがタンクから取り出される。特許文献2は、このような方法を実施するタンク設備を示している。
【0011】
タンク内にあるガスを、液状ガスで充填している間に凝縮させて、タンク内の過圧を回避する場合、これはタンクを液状ガスで充填できる速度を制限する。
【0012】
上述した種類の慣用のタンクは、管を接続するために通常8個ないし10個の接続部材を備えている。たとえば前記特許文献2に図示されたタンクはすでに6個の管を有しており、これらの管は実用上の理由から接続部材によってタンクに接続される。前記特許文献2から公知のタンクでは、実際には、図示されなかった他の管がさらに必要である。
【0013】
輸送手段のタンク、特に船のタンクでは、実際には、次のような管または管をタンクに接続するための接続部材が必要である。
【0014】
第1の接続部材またはこれに接続される管は、輸送手段タンクを充填するために必要である。他の管用の第2の接続部材は、輸送手段タンク内に浸漬式ポンプがある場合に輸送手段タンクを空にするために必要である。噴射管用の第3の接続部材は、タンクを適宜温度調整するため、および、ボイルオフガスを凝縮させるために必要である。第4の接続部材は、ガス相をタンクから排出するために使用する。他の接続部材は安全弁用に設けられ、および圧力、温度、充填レベルのようなパラメータを測定するために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1353113A2号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/063127A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、輸送手段の、特に船のタンクで低温液状ガスを貯留するための方法およびシステムを改善することである。なお、「貯留する」という概念には、「取り入れる」、すなわち「充填する」という意味と、「取り出す」、すなわち「排出する」という意味の双方を含むものであり、さらに「保存する」または「収容する」という概念をも含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決するため、輸送手段のタンクは、LNGのような液状ガスを加熱し、加熱後にタンク内へポンプで給送することにより液状ガスで充填される。
【0018】
「加熱する」ということは、貯留されている液状ガスを単に貯留タンクから輸送手段タンクへポンプで給送するものではないことを意味している。その代わり、貯留タンクからの液状ガスは能動的に加熱され、加熱された状態で輸送手段タンクに到達する。本発明の意味での能動的加熱とは、貯留タンクから来る液状ガスに熱を供給制御し、このためにたとえばボイルオフガスを液状ガスと混合させ、或いは、貯留タンクから来る液状ガスを熱交換器で加熱して該熱交換器から輸送手段タンク内へ到達させる。
【0019】
本発明は、対応的に、輸送手段の、特に船のタンク内で低温液状ガスを貯留するための方法に関し、貯留タンクから、特に据え置きの貯留タンクから、液状ガスを取り出すステップと、取り出した液状ガスを加熱するステップと、輸送手段のタンク内へ液状ガスをポンプで給送することにより、輸送手段のタンクを加熱した液状ガスで充填するステップとを含んでいる。
【0020】
典型的には、たとえばLNGを貯留タンク内で−161℃以下の温度で貯留して、LNGを標準圧で貯留できるようにする。同じ理由から、船タンク内でのLNGの貯留温度は通常のように同様に−161℃以下である。本発明によれば、加熱することにより、著しく熱い液状ガスが船タンク内に到達する。加熱されたLNGの温度は、たとえば加熱後は−163℃の代わりにわずか−140℃ないし−150℃にすぎない。
【0021】
上記方法を実施するため、特に、船のタンクをLNGで充填および/または空にするためのシステムが提供され、このシステムはたとえばLNGを貯留するためのタンクを備え、その構成圧(設計圧ともいう)は少なくとも5bar g(bar gauge;大気圧に対する相対圧力)、好ましくは少なくとも10bar gであり、この場合タンクは低温液状ガスのための吸込み部とタンクを空にするための排出部とを備え、吸込み部はLNGを加熱するための手段を含んでいる。
【0022】
すなわち本発明は、輸送手段用の、特に船用の低温液状ガスを貯留するためのシステムにも関わり、液状ガスを貯留するための輸送手段タンクと、液状ガスから貯留タンクから、特に据え置きの貯留タンクから取り出すための吸込み装置と、取り出した液状ガスを加熱するための手段と、加熱した液状ガスを輸送手段のタンクに給送するためのポンプを用いて輸送手段のタンクを充填するための充填装置とを備えている。また本発明は、このようなシステムを備えた輸送手段、特に船にも関わる。
【0023】
輸送手段タンク内では、たとえば船タンク内では、加熱が行われないにもかかわらず液相が存在するので、充填後の輸送手段タンク内には過圧が支配する。本発明によれば、この過圧を得るべく努める。というのは、この過圧を用いると、ポンプを使用する必要なしに燃料をタンクから取り出すことができるからである。輸送手段タンク内にある液状ガスの温度は、好ましくは標準圧での液状ガスの沸騰温度よりも上である。
【0024】
過圧はすぐに使用可能であるので、たとえば液状ガスを充填した後すぐに、すなわちたとえば船のタンクを補給した後すぐに、液状ガスを取り出して、駆動部に燃焼ガスを供給することができる。それ故たとえば船は、燃料供給のためにポンプを使用する必要なしに、補給後すぐに航行することができる。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、液状ガスを少なくとも10℃だけ加熱して、所望の貯留圧に到達させる。このような温度差は、通常、作動目的で輸送手段タンク内に十分高い貯留圧をすぐに得るために必要である。少なくとも15℃の加熱も必要な場合がある。
【0026】
十分な量の燃料をたとえば船タンクから充填直後に取り出して、船を駆動することができるようにするため、船タンク内での貯留圧は好ましくは少なくとも3bar絶対圧である。5bar絶対圧以上または8bar絶対圧以上の圧力が必要な場合もある。それ故、従来では液状ガスを対応的に高い温度へ加熱していた。
【0027】
液状ガスを加熱するため、たとえば船タンク内にあるガスを、充填中に、船タンク内に導入される液状ガスに添加する。これにより液状ガスが加熱されるばかりでなく、船タンク内にあるガスが同時に凝縮されるので有利である。ガスの供給は、好ましくは、液状ガスを船タンク内へポンプで給送するための供給管で行う。供給は有利には船タンクの外側で行われ、特にプロセス室内で行われる。すなわちガスは船タンクから第2の管を介して吸い出され、液状ガスを船タンクにポンプで給送するための管に圧入される。船タンクから来るガスは、特にたとえば静的混合器を用いて液状ガスと混合する。この混合器も有利にはプロセス室内にある。
【0028】
たとえば船タンク内にあるガスを用いて液状ガスを場合によっては約0.5℃ないし1℃しか加熱せず、この0.5℃ないし1℃の加熱は場合によっては十分なものではないので、1つの有利な実施態様では、補助的に液状ガスを熱交換器内で加熱する。コスト上の理由から、好ましくは、熱交換器も同様に船タンクの外側にあり、特にプロセス室内にある。液状ガスが船タンク内にポンプで給送されると、液状ガスはまず熱交換器に達し、熱交換器から船タンク内に達する。
【0029】
輸送手段タンク内に過圧を生じさせる必要があるので、液状ガスをポンプを用いて輸送手段タンク内へ給送し、より厳密には、タンク内の貯留圧よりも高い圧力で給送する。すなわちタンク内での貯留圧が3bar絶対圧であれば、液状ガスは3bar絶対圧以上の圧力でタンク内へ給送し、たとえば4bar絶対圧の圧力で給送する。輸送手段タンク内へポンプで給送される液状ガスに、輸送手段タンクから来るガスを添加すると、このガスは、加熱すべき液状ガスの液圧よりも高い圧力で液状ガスに圧入される。このガス圧は、加熱すべき液状ガスの液圧が4bar絶対圧であれば、たとえば5bar絶対圧(bar a)である。
【0030】
特に船タンクを特別迅速に液状ガスで充填できるようにするため、船タンクは有利には1本の供給管のみを介して充填される。液状ガスをタンクに入れる場合、1本の管(タンク管)のみを接続すればよく、タンク充填後に除去すればよく、このことはタンク充填のために必要な時間コストを低減させる。輸送手段タンクを液状ガスで充填することのできる速度は、タンク管の横断面積と、液状ガスをタンク内にポンプで給送する圧力とによってのみ制限される。それ故、液状ガスを高速度でタンク内へ給送することが可能であり、その結果輸送手段を迅速に充填することができる。
【0031】
加熱した液状ガスを輸送手段タンクから、特に船タンクから液状ガスを取り出すため、好ましくは、取り出し管の弁を開く。このとき輸送手段タンクの過圧は、液体を取り出し管を通じてタンクから押し出してたとえば船の駆動部に供給できる用を成す。たとえば船の場合、取り出し管は船タンク上面を貫通して船タンクの底部に達している。従って、管をタンクの上面を貫通させてタンク内へ挿入すると、タンク内容物が完全に排出される漏れのリスクが少なくなる。従って取り出し管が船タンクの底部に達していると、タンク内容物を実際に完全に取り出し管を通じて押し出すことができることが達成される。
【0032】
たとえば船の場合に、タンクの上面を通じてタンクから出ている取り出し管に漏れが発生すると、タンク内で支配的な過圧のために燃料が流出して船を損傷させることがある。しかしながら、漏れの場合、タンク内で支配的な圧力を、ガスの排出によって比較的迅速に弛緩させることができ、その結果いかなる場合も、底部に排出部を備えたタンクに比べると、緊急時に非常に少量しか流出しないという利点がある。このように、漏れ発生時に船の素材が損傷することを非常に確実に回避できる。本発明の1つの実施態様では、取り出し管を開閉させるための前記弁は、圧力容器内に収納されている。これらの弁は標準的には輸送手段タンクに隣接している。タンクから見て前記弁の後方に漏れが発生すると、弁はすぐに閉じられる。その後に更なる液状ガスがタンクからシステムの管に達して漏れを発生させることはない。これに対して、タンクに隣接するように配置されて取り出し管を開閉させる弁において漏れが発生すると、取り出し管を閉じて液状ガスの更なる流出を阻止することができない。この困難性は、このような弁を外部に対し遮蔽している補助的な圧力容器によって解消される。このような弁において漏れが発生すると、取り出し管を閉じることはできないが、流出する液状ガスは圧力容器内へ侵入し、このとき圧力容器は液状ガスがたとえば船をそれ以上損傷させないような用を成す。
【0033】
取り出し管の弁は、有利には輸送手段タンクの外側、特に船タンクの外側にあり、特にプロセス室内にある。
【0034】
取り出し管は、有利には、輸送手段タンクを充填する管に比べて相対的により薄い横断面を有している。タンクを充填する管の大きな横断面は、船の迅速な燃料補給を可能にするので有利である。取り出しはかなり緩速に行われるので、比較的適正価格の取り出し管に対しては薄い横断面で十分である。
【0035】
本発明の1つの実施態様では、取り出し管は、たとえば船タンクに液状ガスをポンプで給送するための管の内側に配置されている。これによって、互いに分離してタンク内に挿入されている管の数量が減少する。従って、漏れの危険がさらに減少する。ただし、このようにして提供される二重管は、有利には、タンクの上面までしか達していない。タンクの底部には取り出し管のみが達している。
【0036】
本発明の1つの実施態様では、たとえば船タンクは、ガスをこれから取り出すことのできる管を備えている。それ故この管は、有利には、上方から船タンクに開口しており、それ以上タンク内には達していない。この管は有利には熱交換器および圧縮機にも結合されて、ガスを加熱および圧縮するようになっており、その結果ガスを船の駆動のために使用することができる。それ故この管は、基本的には、たとえばボイルオフガスを駆動のために使用できるようにするための駆動用のものである。
【0037】
ボイルオフガスを駆動用に使用する場合、まず充填中に加温することによって圧力が設定される。この圧力は、必要な場合には、システムの圧縮機からの熱いガスを再循環することにより、或いは、燃焼用のガスを吸い出すことにより、調整される。
【0038】
前記プロセス室は、輸送手段タンクの外側に、特に船タンクの外側に配置されている。プロセス室は、特に、有利には特殊鋼から成っている槽を有している。好ましくはプロセス室内に配置されている前記装置は、槽の内部または槽の上方にある。前記装置に漏れが発生すると、これら装置を介して流出する液状ガスは槽によって捕捉され、有害な作用をすることはほとんどない。さらに、プロセス室は開口していても完全に閉鎖されていてもよい。
【0039】
本発明の1つの実施態様では、輸送手段タンクはこれと結合されている2つの管しか含んでいない。これは漏れが発生する危険を減少させる。有利には、管はタンクに溶接されており、このことは管の数量が少ないために実際的にコントロール可能である。これによって安全性が向上する。
【0040】
加えて、本発明の1つの実施態様では、液体管の、輸送手段タンクの次に位置している弁は、捕集容器によって取り囲まれ、その設計圧はそれぞれのタンクの設計圧よりも高い。これにより、プロセス室内の液体が漏れる可能性は著しく減少する。このような弁は基本的には遠隔操作可能である。
【0041】
本発明の1つの実施態様では、輸送手段タンクと結合されている管はそれぞれカプセリングされた遮断部品を備えており、たとえば捕集容器を備えた前記遠隔操作可能な弁を備えている。これらの管は接続部とともに好ましくは完全に溶接して実施されている。すなわち、管を接続するための接続部材は設けられていない。従ってシステムの安全性がさらに改善される。
【0042】
わかりやすくするため、以下に本発明の有利な特徴をもう一度項分けしてまとめておく。
【0043】
1.液状ガスを加熱し、加熱した液状ガスを船タンクにポンプで給送することにより、船のタンクを液状ガスで充填するため、および/または、液状ガスをタンクから取り出すための方法。
【0044】
2.液状ガスをまず標準圧で貯留し、次に標準圧で貯留している液状ガスを、標準圧での液状ガスの沸騰温度以上の温度へ加熱するようにした、実施態様1に記載の方法。
【0045】
3.液状ガスを少なくとも10℃だけ加熱する、上記実施態様のいずれか一つに記載の方法。
【0046】
4.船タンク内での液状ガスの貯留圧が少なくとも3bar絶対圧である、上記実施態様のいずれか一つに記載の方法。
【0047】
5.船タンク内にあるガスを供給することによって液状ガスを加熱する、上記実施態様のいずれか一つに記載の方法。
【0048】
6.液状ガスを熱交換器内で加熱する、上記実施態様のいずれか一つに記載の方法。
【0049】
7.取り出し管の弁を開き、次にタンク内で支配的な過圧によって液状ガスを前記取り出し管を通じて船タンクから押し出すことにより、船タンク内にある液状ガスを取り出すようにした、上記実施態様のいずれか一つに記載の方法。
【0050】
8.取り出した液状ガスを、船の駆動部に燃料を供給するために使用する、上記実施態様のいずれか一つに記載の方法。
【0051】
9.船のタンクをLNGで充填および/または空にするシステムにおいて、LNGを貯留するためのタンクを備え、その設計圧が少なくとも5bar g、好ましくは少なくとも10bar gであり、タンクが、低温液状ガスのための吸込み部と、タンクを空にするための排出部とを備え、前記吸込み部がLNGを加熱するための手段を含んでいるシステム。
【0052】
10.LNGを加熱するための前記手段が、熱交換器および/またはタンクからのガスをタンク内にポンプで給送されるLNGに添加するための手段を含んでいる、上記実施態様に記載のシステム。
【0053】
11.タンクからのガスと、タンク内へポンプで給送すべきLNGとを混合させるための混合器を備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0054】
12.LNGを加熱するための手段を内設したプロセス室を備える、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0055】
13.LNGを少なくとも4bar aの圧力で、好ましくは少なくとも6bar aの圧力でタンクへ給送するためのポンプを備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0056】
14.タンクからのガスを、少なくとも3bar aの圧力で、好ましくは少なくとも4bar aの圧力で、タンク内へポンプで給送すべきLNGに給送するためのコンプレッサを備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0057】
15.タンクの内部にポンプが設けられていない、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0058】
16.タンクの底部まで達する、排出部として用いられる取り出し管を備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0059】
17.特にプロセス室内にあって、タンクから取り出される液状ガスのための蒸発器を備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0060】
18.燃料をタンクから船駆動部へ供給するための手段を備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0061】
19.タンクに2本までの管が溶接され、2本よりも多い管をタンクと結合させるためのタンク接続部材が設けられていない、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0062】
20.少なくとも1つの取り出し管を開閉するための少なくとも1つの弁を取り囲んでいる少なくとも1つの圧力容器を備えた、上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステム。
【0063】
21.上記システム実施態様のいずれか一つに記載のシステムを備えた船。
【0064】
本発明は、前述したように船だけに適用されるものではなく、他の移動システム、すなわち輸送手段にも適用できるものであり、たとえば飛行機または陸上車両の駆動にも適用できる。この場合、船タンクの代わりにたとえば飛行機のタンクが対象である。一般的には、ここでは輸送手段タンクが対象である。
【0065】
以上の説明および以下の説明で開示する特徴は、常に断らずとも、方法およびシステムの双方に関わるものである。個々の構成要件は、基本的には、示した組み合わせでも他の組み合わせでも本発明において重要である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明によるシステムを示す図である。
【図2】本発明による他のシステムを示す図である。
【図3】本発明による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1には、船の3つのタンク1が断面で示されている。これらのタンクは燃料を受容するためのもので、適宜設置され、適宜なサイズに選定されている。タンク1は、−163℃ないし45℃の温度に耐えうるような性質を有している。タンク1の設計圧は約またはほぼ10bar gである。各タンク1の上面には管2が開口しているが、タンク内には達していない。さらに、各タンク1は管3を備え、この管はそれぞれのタンク上面を貫通してそれぞれのタンク底部まで達している。各管3は付属のタンク1を液状ガスで充填するために用いる。さらに、タンク内で支配的なたとえば3.5または9bar絶対圧の過圧のためにこの管を通じて液状ガスがタンクから押し出され、船の駆動用に転送され、すなわちたとえば船のエンジンまたはタービンへ転送される。管3は部分的に二重管として実施されていてよい。二重管の内側管を介して液状ガスがタンクから取り出される。二重管の外側管を介して液状ガスがそれぞれのタンク内へポンプで給送される。
【0068】
図1に図示したシステムは接続部4を有し、該接続部を介して、船に燃料を補給する場合に、加熱すべき液状ガスがシステム内へ導入される。接続部4を介してシステム内へ到達する液状ガスは、熱交換器5内で加熱される。液状ガスは混合器6を通過するようにも誘導され、ここで、タンク1から来るガスと混合される。次に、このようにして加熱された液状ガスは管3を介してタンク1内へポンプで給送される。
【0069】
タンク内にあるボイルオフガスは、とりわけタンク補給中に、管2を介してタンクから取り出される。取り出されたガスは、該ガスを必要な時に加熱することができるようにするために、熱交換器7を通過するよう誘導される。次に、ガスは、該ガスを所望の態様で圧縮することができる2つのコンプレッサ8内へ導入される。適正価格のオイル潤滑式コンプレッサ8を使用する場合、次にオイルセパレータ9を通過するようにガスが誘導される。ここで分離させたオイルはコンプレッサ8に戻してよい。冗長性の理由から、1つのコンプレッサが故障した場合に他方のコンプレッサを作動させることができるようにするため、2つのコンプレッサが設けられる。
【0070】
次に、ガスを冷却器10を通過させてバッファボリューム11内へ誘導する。冷却器は、必要な場合に、消費装置にとって必要な温度へガスを冷却する。バッファボリューム11は、短時間で十分な燃料(液状ガスまたはボイルオフガス)をタンク1から取り出すことができない場合に一時的な補助手段の用を成す。
【0071】
バッファボリューム11からガスは管12を介して消費装置へさらに誘導されるか、或いは、管13を介して混合器6内へ誘導される。
【0072】
管13は、加熱すべき液状ガスに導入すべきガスを前もってクリーニングするために、活性炭フィルタ14を通過するように案内してよい。
【0073】
システムは管3に接続されているポンプ15を含んでおり、該ポンプを用いて緊急時にタンク1を空にすべく汲み上げることができる。
【0074】
管16を介して緊急時にガスをシステムから排出することができる。
【0075】
液状ガスをタンクから押し出すと、液状ガスはまず蒸発器17内へ導入され、ここで蒸発する。ガスを消費装置に供給できるようにするため、ガスは蒸発器17からたとえば熱交換器7内へ導入される。
【0076】
個々の装置への管の貫流を前述のように制御できるようにするため、管は多数の弁18を備えている。
【0077】
図1に図示したシステムは負荷制御バイパス19を備え、該負荷制御バイパスによりガスはコンプレッサ8の後方において取り出され、ガスをコンプレッサに供給する管に戻される。この負荷制御バイパスにより望ましくない圧力変動と急速な圧力交代とを補償することができる。
【0078】
システムの、図1に示した個々の装置は、下側に特殊鋼から成る捕集槽を備えているプロセス室20の内部にある。
【0079】
タンクの外側でプロセス室を貫通するように案内される各管は、セキュリティリスクである。図1に示した実施形態の場合、2つの溶接結合部と、各船タンクからプロセス室20内へ通じている2つの管しか設けられていない。
【0080】
ボイルオフガスと蒸発したガスとの混合により、燃焼ガスを望ましいように調製することができ、このようにしてたとえばアンチノック性を得る。
【0081】
図1に示したシステムは、システム内の圧力を適宜調整することができるようにするため、1個または複数個の圧力監視器(PIC)および/または圧力制御弁(PCV)を含んでいてよい。温度監視器(TIC)を用いてシステム内の温度を監視および/または制御することができる。温度監視は特にタンクの充填時に行われる。
【0082】
タンク内に挿入される測定管は既存の管を介してタンク内に到達し、特にタンクを空にするために設けられている管3を介してタンク内に到達している。このようにして非常に高い安全基準が得られる。安全処置は適当に節減してよい。
【0083】
タンクを冷却できるようにするための噴射管は省略できる。冷却しなくとも、タンクは規定に従って常時低温液状ガスで充填されている。燃料がなければ船を動かすことができないからである。さらに、比較的熱い液状ガスが充填され、このことは熱的問題を低減させる。このようにして、約−140℃または−145℃あるいは−150℃の温度でLNGが船タンク内で貯留され、通常のように−160℃以下の温度で貯留されない。
【0084】
図2には、本発明の他の実施形態が示されている。図1の実施形態と異なるのは、遠隔操作可能な弁が耐圧性容器21によって取り囲まれている点である。遠隔操作可能な弁を用いてタンクの取り出し管を閉鎖させることができ、これらの弁はそれぞれのタンクに隣接するように配置されている。これらの弁に漏れが発生すると、液状ガスは耐圧性容器内に到達し、その結果更なる損傷が回避される。管22を介して液状ガスは耐圧性容器21からシステム内の管に転送することができる。それ故、図2に示した実施形態は格別安全である。
【0085】
図2に示した実施形態は、さらに、充填レベル測定器23を含んでいる。この場合、タンク内に挿入される第3の接続部が設けられるが、この第3の接続部は外部の管と結合されていないので問題はなく、システムの構成をあまり阻害しない。充填レベル測定器の充填レベル表示部はプロセス室内にある。しかし、充填レベル表示部を別個の容器内に収納してもよい。対応することは、プロセス室20内に配置されている他の装置に対しても適用される。
【0086】
本発明により、船タンク1内の圧力が減少することによって、ガスの液状化のためにタンク内に過圧が必要とされるときにすぐさま所望のガス量を供給することができる。
【0087】
船タンク内の貯留圧が消費装置の必要とする圧力を上回っていれば、消費装置のために必要とするガス圧を供給するために圧縮機は必要ない。このような場合、必要な時にガス圧を適宜降下させることができる減圧弁があれば十分である。たとえばタンク内の貯留圧が6bar aであり、消費装置が5bar aのガス圧を必要とすると、タンク圧内のガス圧を減少させるために十分大きな圧力差が提供され、このようにして迅速に十分なガスが提供される。他方、ガスを消費装置に必要な圧力に圧縮するために補助的なコンプレッサまたは圧縮機を必要としない。
【0088】
船タンク1は絶縁材または真空によって絶縁されていてよい。タンク内にあるポンプは、必要ないので使用しない。
【0089】
本発明によるシステムは堅牢であり、故障が少ない。摩耗部品はタンクの外側にあり、それ故タンクを巡回せずとも、アクセスしやすい。
【0090】
図3は、本発明による方法の主要なステップのフローチャートを示している。まず、LNGを陸にある据え置きの貯留タンクから取り出す 31。取り出した後、液状ガスを船のタンク内へポンプで給送する前に、液状ガスを熱交換器を用いて加熱する 32。加熱後、液状ガスを船のタンク内へポンプで給送して、駆動用燃料として供給する 33。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送手段の、特に船のタンク(1)内で低温液状ガスを貯留するための方法において、
貯留タンクから、特に据え置きの貯留タンクから、液状ガスを取り出すステップと、
取り出した液状ガスを加熱するステップと、
輸送手段のタンク(1)内へ液状ガスをポンプで給送することにより、輸送手段のタンク(1)を加熱した液状ガスで充填するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
液状ガスをまず貯留タンク内で標準圧で貯留し、次に標準圧で貯留している液状ガスを、輸送手段のタンク(1)に充填する前に、標準圧での液状ガスの沸騰温度以上の温度へ加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液状ガスを少なくとも10℃だけ加熱する、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項4】
輸送手段のタンク(1)内での液状ガスの貯留圧が少なくとも3bar絶対圧である、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
輸送手段のタンク(1)に充填すべき液状ガスに、輸送手段のタンク(1)からガスを供給し、その結果輸送手段のタンク(1)に充填すべき液状ガスを供給したガスによって加熱するステップを含んだ、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
液状ガスを熱交換器(5,7)内で加熱する、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
輸送手段タンク(1)内に過圧が支配しており、取り出し管(3)の弁を開き、次に輸送手段タンク(1)内で支配的な過圧によって液状ガスを前記取り出し管(3)を通じて輸送手段タンク(1)から押し出すことにより、輸送手段タンク(1)内にある液状ガスを取り出すようにした、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
輸送手段タンク(1)から取り出した液状ガスを、輸送手段の駆動部に燃料を供給するために使用する、上記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
輸送手段用の、特に船用の低温液状ガスを貯留するためのシステムにおいて、
液状ガスを貯留するための輸送手段タンク(1)と、
液状ガスから貯留タンクから、特に据え置きの貯留タンクから取り出すための吸込み装置(4)と、
取り出した液状ガスを加熱するための手段(5,6,7)と、
加熱した液状ガスを輸送手段のタンク(1)に給送するためのポンプを用いて輸送手段のタンク(1)を充填するための充填装置と、
を備えたシステム。
【請求項10】
輸送手段タンク(1)が、少なくとも5bar gの、好ましくは少なくとも10bar gの設計圧を有し、且つ輸送手段タンク(1)を充填するための液状ガスのための吸込み部(4)と、輸送手段タンク(1)を空にするための排出部とを有し、前記吸込み部(4)が液状ガスを加熱するための手段(5,6)を有している、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
液状ガスを加熱するための前記手段(5,6)が、熱交換器(5)および/または輸送手段タンク(1)からのガスをタンク内にポンプで給送される液状ガスに添加するための手段(6)を有している、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
輸送手段タンク(1)からのガスと、輸送手段タンク(1)内へポンプで給送すべき液状ガスとを混合させるための混合器(6)を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項13】
液状ガスを加熱するための手段(5,6,7)を内設したプロセス室(20)を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項14】
液状ガスを少なくとも4bar aの圧力で、好ましくは少なくとも6bar aの圧力で輸送手段タンク(1)へ給送するためのポンプを備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項15】
輸送手段タンク(1)からのガスを、少なくとも3bar aの圧力で、好ましくは少なくとも4bar aの圧力で、輸送手段タンク(1)内へポンプで給送すべき液状ガスに給送するためのコンプレッサ(8)を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項16】
輸送手段タンク(1)の内部にポンプ手段が設けられていない、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項17】
タンク(1)の底部まで達する、排出部として用いられる取り出し管(3)を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項18】
輸送手段タンク(1)からの液状ガスのための蒸発器(17)を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項19】
燃料を輸送手段タンク(1)から船駆動部へ供給するための手段を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項20】
輸送手段タンク(1)に2本までの管(2,3)が溶接され、2本よりも多い管(2,3)をタンク(1)と結合させるためのタンク接続部材が設けられていない、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項21】
少なくとも1つの取り出し管(3)を開閉するための少なくとも1つの弁(18)を取り囲んでいる少なくとも1つの圧力容器(21)を備えた、上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項22】
上記システム請求項のいずれか一つに記載のシステムを備えた船。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−500192(P2013−500192A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522027(P2012−522027)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004652
【国際公開番号】WO2011/012307
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508161827)テーゲーエー、マリン、ガス、エンジニヤリング、ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】