説明

爆発溶接で形成される中間片を備えた材料複合体

【課題】 特に強度、耐熱疲労性および耐食性に関して、十分な機能を持つ材料複合体を提供する。
【解決手段】 本発明は、鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる部分と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる部分とを備えた材料複合体を製造するプロセスに関し、材料複合体の両部分が、中間片を介して継ぎ合わされる。その中間片も、同様に爆発溶接によって互いに接合された、鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる領域と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる領域とを有する。材料複合体のそれら両部分は、融接プロセス又は拡散溶接プロセスによって、いずれの場合においても、同じタイプの中間片領域に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる部分と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる部分とを有する材料複合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅又はアルミニウムをベースにした材料を、融接プロセスを用いて、鋼鉄又はチタンをベースにした材料に直接接合することは不可能である。以下の文において、用語「ベースにした材料」は、全ての場合において、ベース金属の含有量が、重量比で50%を超える合金を意味する。用語「鋼鉄」は、鋼鉄材料の全ての系統を含む。
【0003】
鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる部分と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる部分とを有する複合体材料の1つの重要な応用分野は、冷却部品である。銅とアルミニウムは、それらの高熱伝導率の故に用いられる。十分な構造強度を実現すべく、銅又はアルミニウムの部分が、構造材料(通常鋼鉄又はチタン)に接合される。
【0004】
鋼鉄/銅材料複合体は、例えば核融合炉の第一壁部品の一部に用いられる。第一壁部品の開発、特に、例えばダイバータ、バッフルおよびリミッタの領域等の、非常に高いエネルギー密度の領域におけるそれらの開発は、核融合研究の技術的実現のためのキー部品であることを表わしている。大規模な開発プログラムが、これら材料の密着接合に向けて行われている。
【0005】
例えば以下の解決法が、鋼鉄/銅材料複合体に対して具体的に知られている。
銅をベースとした材料と鋼鉄の間のNiアダプタ内での溶接
電気めっきによって付着される層による遷移域の封止
拡散溶接
はんだ付け
【0006】
はんだ付け接合部は、耐食性と強度に関し欠点を持つ。拡散溶接で製造した接合部の強度も、多くの場合に不十分である。更に要求されるプロセスの一貫性を確立するのが極めて難しい。更に接合部は、非常に様々で、かつ低い強度特性を持つ。銅をベースとした材料と鋼鉄の間のNiアダプタ内での溶接も、熱負荷試験が実証するように不都合である。例えばその遷移域は、Niアダプタ領域内の局所的な非破壊的変形の影響を受け易い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、特に強度、耐熱疲労性および耐食性に関し、十分な機能を持つ材料複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の方法によって達成される。
最初に、爆発溶接で接合した、鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる領域と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる領域とを有する中間片を製造する。これは対象とする材料からなる金属シート/プレートを用いて、単純に実施できる。銅およびアルミニウムは、鋼鉄およびチタンよりも展性が高く、かつより低い降伏強度を持つ故、銅又はアルミニウムのシート/プレートを、鋼鉄又はチタンのシート/プレートの上に置く方が、より好都合である。次に、火薬を、銅又はアルミニウムのシート/プレートに張り付ける。爆発溶接で形成した接合部に特有な、高い強度を持つ波状のぎざぎざのある継ぎ目ゾーンが生ずる。このようにして製造した複合体から、機械的プロセス又はビームプロセスによる機械加工により、適切な形状の中間片を作製できる。
【0009】
その後、複合体材料の前記の両部分を、融接プロセス又は拡散溶接プロセスにより、中間片の対応する領域に接合する。ここで「対応する」とは、材料複合体の部分と、それに継ぎ合わされる中間片領域が、同じタイプの材料からなることを意味する。また「同じタイプの」とは、それらが同じ母材、即ち例えば銅をベースにした材料どうし、又は鋼鉄からなる部分どうしからなることを意味する。
【0010】
従って、例えば鋼鉄と銅をベースにした材料を含む材料複合体を製造するには、まず鋼鉄と銅をベースにした材料からなる中間片を、爆発溶接により製造する。その後、融接プロセス又は拡散溶接プロセスで、鋼鉄部分を中間片の鋼鉄領域、また銅をベースにした材料からなる部分を、銅をベースにした材料からなる中間片領域に接合する。中間片の鋼鉄は、残りの材料複合体の鋼鉄と異なる構造および/又は組成、又は好ましくは同じ構造および/又は組成を持ってもよい。同様のことが、銅をベースにした材料にも当てはまる。
【0011】
同様にして、以下の材料を含む複合体も製造できる。
鋼鉄/アルミニウムをベースにした材料
チタンをベースにした材料/銅をベースにした材料
チタンをベースにした材料/アルミニウムをベースにした材料
ここで、中間片の各領域と材料複合体の各部分が、同一又は類似の組成を持てば、全ての場合に有利である。特にミクロ組織が広範な鋼鉄の場合には、更に類似のミクロ組織が有利である。
【0012】
材料複合体のため、例えば粒子硬化処理を施した銅合金(例えばCu−Cr−Zr)や合金鋼(例えば316L等のオーステナイト鋼)等の、加工硬化処理を施した材料を用いるとよい。その結果、中間片の各材料領域(例えばCu−Cr−Zr/316L)は十分に高い非破壊的変形限界を示す。従って、局所的な非破壊的変形の故に失敗となる低強度の遷移域が生じない。従って、変形作用の結果生じる伸縮を、より大きな領域上で吸収して緩和でき、又は材料複合体の両部分で対処できる。更に爆発溶接は、材料の全ての組み合わせにおいて、コスト効率が良く、かつ確立されたプロセスである。爆発溶接で形成した接合部に非破壊検査を行い得る。中間片の両領域と、材料複合体の両部分との間の接合部が何れの場合にも同タイプの材料からなることから、融接プロセス又は拡散溶接プロセスが使用できる。使用可能な融接プロセスの特別の例として、TIG溶接、レーザ溶接および電子ビーム溶接が含まれる。
【0013】
第一壁としての応用においては、ニッケルの使用を回避した結果、比透磁率をできるだけ低くするという要求が満たされる更なる利点がある。
【0014】
冷却部品として使用する際は、中間片を管切片として設計し、複合体材料の両部分を管形状に設計するとよい。管切片として設計した中間片は、この場合にも、爆発溶接により製造した複合体プレートを機械加工し、その管切片の軸長を複合体プレートの厚さに合せて作れる。鋼鉄/銅をベースにした材料からなる材料複合体で、特に有利な結果が得られた。広範囲の鋼鉄グレードの中で、オーステナイト鋼又は半オーステナイト鋼が特に有効である。例えば析出硬化処理を施した銅合金Cu−Cr−Zr等の、粒子硬化処理を施した銅合金が、銅をベースにする材料として適切である。本発明のプロセスは、核融合炉の第一壁部品又は第一壁部品の一部を製造するために用いると特に有効である。
【0015】
以下本発明を、鋼鉄/銅をベースにした材料で構成した材料複合体に基づき説明する。しかし、本発明に従い、他の材料複合体を製造することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施例
管状の材料複合体1を、Cu−Cr−Zr/316L(オーステナイト鋼)から製造した。この複合体材料は、核融合炉のダイバータにおける熱交換器として用いられる。この目的のため、溶体化焼きなましし、水冷した状態のCu−Cr−Zrから作ったプレートを、爆発溶接により、316Lから作ったプレートに接合した。該2つのプレートは、何れの場合も500×500mm2の表面積と15mmの厚さを持っていた。爆発溶接時、Cu−Cr−Zrプレートを、「フライヤ」として用いた。この目的のためCu−Cr−Zrプレートの上面に火薬を置き、点火し、もって継ぎ目ゾーン7を形成した。
【0017】
溶接の後、プレート複合体の超音波検査を行った。その結果、結合領域と非結合領域が見付かった。その後スラグ(短い丸棒状の核燃料)の形状をした中間片4を、スラグ軸が爆発溶接で形成された接合面7に直交するよう、水ジェット切断にて結合領域のプレートから切り出した。該スラグ4は、15mmの直径と30mmの高さを持っていた。鋼鉄領域5とCu−Cr−Zr領域6の厚さは、いずれの場合にも、15mmであった。爆発溶接部7は、この接合プロセスに特有な波状の形状を示した。
【0018】
このスラグ4の両端に、5mmの深さと12mmの直径を持つ段差を形成すべく、旋盤による機械加工を施した。Cu−Cr−Zr領域6における段差は、φ15×1.5mmの管形状に設計した材料複合体のCu−Cr−Zr部分3の、その後の組み立て中に、電子ビーム溶接のための心出し手段として働く。同じ原理を、316L側領域5におけるステップで実行した。
【0019】
316Lからなる鋼管2を領域5の中央に置き、かつCu−Cr−Zr管3を領域6の中央に置いた。かくして得たアセンブリを、次に電子ビーム溶接により、周溶接線9がCu−Cr−Zr内にあり、かつ更なる周溶接線8が316L内にあるようにして密着接合した。溶接した複合体に、その後475℃/3時間の時効硬化処理を施し、次いで15mmの外径と1.5mmの肉厚を持つ複合体管1を形成すべく機械加工を施した。ヘリウム漏れ試験、染料浸透試験およびX線検査等の、その後に行った試験は、継ぎ目範囲が完全であることを明らかにした。引張試験時、Cu−Cr−Zr管に破損が生じた。これは、爆発溶接部および更に電子ビーム溶接部が、Cu−Cr−Zr自体より高い強度を持つことを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】管状形状の材料複合体の切断面を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 材料複合体、2、3 部分、4 中間片、5、6 領域、7、8、9 継ぎ目ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる第1の部分(2)と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる第2の部分(3)とを備えてなる材料複合体(1)を製造する方法であって、爆発溶接によって互いに接合されて第1の継ぎ目ゾーン(7)を形成する、鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる第1の領域(5)と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる第2の領域(6)とを含む中間片(4)を形成し、そして融接プロセス又は拡散溶接プロセスによって、前記第1の部分(2)を、前記第1の領域(5)に接合して第2の継ぎ目ゾーン(8)を形成し、前記第2の部分(3)を、前記第2の領域(6)に接合して第3の継ぎ目ゾーン(9)を形成し、前記第1の部分(2)と前記第1の領域(5)とは、同じベース金属を含有する材料から成り、かつ前記第2の部分(3)と前記第2の領域(6)とが、同じベース金属を含有する材料からなる方法。
【請求項2】
前記第1の部分(2)と第1の領域(5)が、同じ材料からなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の部分(3)と第2の領域(6)が、同じ材料からなる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる金属シートを、爆発溶接によって鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる金属シートに接合して複合体を作り、そして該複合体から機械加工によって中間片(4)を作る請求項1から3の1つに記載の方法。
【請求項5】
TIG溶接、レーザ溶接又は電子ビーム溶接により前記第1の部分(2)を前記第1の領域(5)に接合し、そして前記第2の部分(3)を前記第2の領域(6)に接合させる請求項1から4の1つに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の領域(5)が鋼鉄からなり、そして前記第2の領域(6)が銅をベースにした材料からなる請求項1から5の1つに記載の方法。
【請求項7】
前記鋼鉄が、少なくとも部分的に、オーステナイトミクロ組織を持つ請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記銅をベースにした材料に、粒子硬化処理を施す請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記銅をベースにした材料が、Cu−Cr−Zrである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記中間片(4)を管切片、そして前記第1および第2の部分(2,3)を管形状に設計した請求項1から9の1つに記載の方法。
【請求項11】
前記材料複合体(1)が、核融合炉の第一壁部品又は第一壁部品の一部として用いられる請求項1から10の1つに記載の方法。
【請求項12】
鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる第1の部分(2)と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる第2の部分(3)とを備えた材料複合体(1)であって、該材料複合体の第1および第2の部分(2,3)が中間片(4)を介して接合されており、前記中間片(4)が、爆発溶接により互いに密着接合されて、第1の継ぎ目ゾーン(7)を形成する、鋼鉄又はチタンをベースにした材料からなる第1の領域(5)と、銅又はアルミニウムをベースにした材料からなる第2の領域(6)とを含み、そして、
前記第1の部分(2)が、前記第1の領域(5)に密着接合されて、第2の継ぎ目ゾーン(8)を形成し、そして前記第2の部分(3)が、前記第2の領域(6)に密着接合されて、第3の継ぎ目ゾーン(9)を形成しており、更に、
前記第1の部分(2)と前記第1の領域(5)とが、同じベース金属を含有する材料からなり、そして前記第2の部分(3)と前記第2の領域(6)とが、同じベース金属を含有する材料からなる材料複合体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−75895(P2007−75895A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243745(P2006−243745)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(390040486)プランゼー エスエー (25)
【Fターム(参考)】