説明

片手操作式手押し車

【課題】 片手操作が可能な手押し車を提供する。
【解決手段】 手押し車10は、左右対称形のフレーム12の左右対称位置に、左右対称形のパッド14と、車輪18、20、22とが取り付けられ、左右対称形をなしている。使用者は、必要に応じ、左右どちらの手によっても、手押し車10を操作することが可能となる。使用者は、立位姿勢において、左右何れかの、肘または二の腕の少なくとも一方を、パッド14に密着させて体重をパッド14に預ける。また、手指でグリップ16、17を把持することによって、片手操作でフレーム12に操作力を伝える。そして、フレーム12に取付けられた車輪18、20、22によって、使用者の意図する方向へと手押し車10を移動させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片手操作が可能な手押し車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、脳血管障害等により片麻痺者となった者の、麻痺の無い側の半身(本説明では「健側」という。)の機能低下を防ぎ、かつ、麻痺がある側の半身の機能回復を促すために、手摺りや杖を用いたリハビリテーションプログラムが組まれている。しかしながら、手摺りや杖による歩行が可能な程度に回復する以前の段階では、健側によって操作可能な、歩行器を用いることがより好ましい。そこで、歩行障害者のリハビリテーション後期において、歩行を補助するために用いられるリハビリテーション用手押し車が発明されている(例えば、特許文献1。)。
また、手押し車は、リハビリテーション用のみならず、例えば、スーパーマーケット等の比較的売り場面積の広い店舗において、買い物客の利便性を高めるために、買い物用手押し車として広く普及している。さらに、買い物用手押し車は、自宅から近隣への買い物用に用いられるショッピングバギー等も存在する。
【0003】
【特許文献1】特開昭55−21964号公報(〔請求項1〕、〔図1〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、従来のリハビリテーション用手押し車は、手指で体を支える構造となっている。このため、相当程度半身が回復した患者でなければ、自分の意図する方向へと確実に歩行をすることが困難であり、歩行訓練の比較的初期段階から実用に耐える片手操作式の手押し車とはいえないものであった。また、従来の片手操作式の手押し車は、操作性を高めるために、右手操作用、左手操作用で夫々専用構造を採用するものであることから、医療施設、介護保険施設、福祉施設等においては、両方の手押し車を用意する必要が生じる等、歩行器の購入費用や収納スペースの確保が問題となってしまう。
【0005】
一方、買い物用手押し車についても、従来は両手操作が基本となっており、手押し車を操作しながら陳列棚の商品に手を伸ばすといったことが困難である等、買い物用手押し車の使い勝手の向上が望まれていたところである。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、片手操作が可能で実用に耐えるリハビリテーション用手押し車を提供し、片麻痺者の機能回復に寄与することにある。また、買い物用手押し車の操作性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の請求項1に係る片手操作式手押し車は、立位姿勢の使用者が片側の肘または二の腕の少なくとも一方を密着させて体重の一部を預ける左右対称形のパッドと、使用者の前後三ヶ所以上でかつ使用者の足が干渉しない位置に配置される車輪とが、左右対称形のフレームの左右対称位置に取付けられてなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、左右対称形のフレームの左右対称位置に、左右対称形のパッドと車輪とが取り付けられ、手押し車は左右対称形をなしていることから、使用者は、必要に応じ、左右どちらの手によっても、本発明に係る手押し車を操作することが可能となる。例えば、右手によって手押し車を操作する場合には、手押し車の前後方向中心線が、使用者の右側方に位置するようにして使用される。一方、左手によって手押し車を操作する場合には、手押し車の前後方向中心線が、使用者の左側方に位置するようにして使用される。
また、フレームには、使用者の前後三ヶ所以上に車輪が取付けられていることから、フレームは車輪を介して床面や路面に接地し、停止時、移動時を問わず、安定して自立する。そして、使用者は、立位姿勢において、左右何れかの、肘または二の腕の少なくとも一方を、パッドに密着させて体重をパッドに預けることにより、片手操作でフレームに操作力を伝え、フレームに取付けられた車輪によって、使用者の意図する方向へと手押し車を移動させることが可能となる。
【0008】
また、本発明において、前記パッドの位置が調整可能であることとすれば、使用者の体形を問わず、本発明に係る手押し車の操作性を高めることが可能となる。
【0009】
また、本発明において、前記車輪のうち、使用者の前後一方に位置する車輪が、前記フレームの前後方向中心線に対する角度を変更自在、かつ、その角度を前記中心線と平行に固定可能に前記フレームに軸着され、その他の車輪の前記中心線に対する角度が、前記中心線に対し常時平行に固定されていることが望ましい。
この構成によれば、フレームの前後方向中心線に対する角度を変更自在な車輪を、その角度を変更可能な状態で使用することにより、本発明に係る手押し車は、使用者の意図する方向へと自由に進行方向を変えることが可能となる。一方、当該車輪の角度を、フレームの前後方向中心線と平行に固定して使用することとすれば、その他の車輪の前記中心線に対する角度が、常時平行に固定されていることと合わせて、本発明に係る手押し車はフレームの前後方向中心線と平行な方向へと、その移動方向が規制されるものとなる。
【0010】
また、本発明において、立位姿勢の使用者が、前記パッドに肘または二の腕を密着させた状態で、肘または二の腕と同側の手指により把持するグリップが、前記フレームに取付けられていることが望ましい。
この構成によれば、パッドに肘または二の腕を密着させることにより、使用者からの操作力を本発明に係る手押し車に伝え、若しくは、使用者の体をパッドにより支え、なおかつ、手指でグリップを把持することによって、グリップを介して操作力を手押し車に伝えることができる。また、手指によりグリップを把持することで、使用者と手押し車との一体感を高めることができる。
【0011】
なお、本発明においても、前記グリップの位置が調整可能であることとすれば、使用者の体形を問わず、本発明に係る手押し車の操作性を高めることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明において、少なくとも前記中心線に対する角度が常時固定された車輪にブレーキが設けられ、該ブレーキの操作レバーが、前記グリップまたは前記フレームの任意の位置に着脱自在に設けられていることが望ましい。
この構成によれば、使用者はブレーキの操作レバーを把持することによってブレーキを作動させ、本発明に係る手押し車の移動速度を任意に調整し、また、容易に停止させることが可能となる。しかも、パッドの位置、グリップの位置が調整可能である場合には、それらの位置に応じて、ブレーキの操作レバーも、グリップまたはフレームの任意の位置に取付けることで、ブレーキの操作性を高めることが可能となる。なお、中心線に対する角度が常時固定された車輪に、ブレーキが設けられることで、ブレーキの取り付け構造や、ブレーキと操作レバーとをつなぐワイヤの取り回しを、簡単にすることができる。
【0013】
また、本発明において、前記車輪は、使用者の前後一方に二輪、他方に一輪が位置するように前記フレームに設けられており、一輪側の車輪は前記フレームの前後方向中心線上に配置され、前記一輪側の車輪から左右方向に所定距離だけ離間した位置に、前記中心線の車輪に対する左右位置を交換可能に、補助輪が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、フレームは車輪を介して三点で床面に接地することにより、停止時、移動時を問わず、安定して自立することが可能となる。しかも、前記一輪側の車輪に対する左右位置を交換可能に設けられた補助輪を、手押し車の前後方向中心線を挟んで操作者とは反対側の側方に、一輪側の車輪から所定距離だけ離間させて配置することで、使用者の体重が過剰に手押し車に加わる等により、手押し車の重心バランスが崩れるような場合であっても、手押し車の側方への転倒をより確実に防止することができる。なお、補助輪は、一輪側の車輪に対する左右位置を交換可能に設けられていることから、手押し車が左右一方の手による操作用に限定されることはなく、補助輪によって使用者の歩行が邪魔されることもない。
【0014】
また、前記フレームには、腰掛けプレートが出し入れ自在に設けられていることとすれば、使用者が腰掛けプレートを出して、それに腰掛けることにより、任意の場所で休憩することが可能となる。
【0015】
なお、前記補助輪を、前記フレームの前後方向中心軸に対する左右位置を交換可能に、前記フレームに固定するための補助輪フレームを備え、該補助輪フレームが前記腰掛けプレートの台座を兼ねることにより、本発明に係る手押し車の構成部品を有効活用して、手押し車の転倒防止対策と腰掛けプレートの安定保持対策とを行うことが可能となる。
さらに、前記フレームは、折畳み機構を備えることとすれば、本発明の手押し車の収納が容易となる。また、本発明に係る手押し車の、車やバス等の移動手段への搭載も容易となる。
なお、前記フレームの、使用者の前方に位置する車輪を軸支する部分に、かごが設けられていることとしてもよい。
【0016】
また、本発明において、前記フレームの、使用者の前方に位置する車輪を軸支する部分に、キャスター角が与えられていることにより、使用者の前方に位置する車輪の位置が使用者から遠ざかり、歩行時に使用者の足が車輪に当たることがより少なくなる。
上記特徴部分は、リハビリテーション用片手操作式手押し車、買い物用片手操作式手押し車の何れにも適用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのように構成したので、片手操作が可能で実用に耐えるリハビリテーション用手押し車を提供することが可能となり、片麻痺者の機能回復に寄与することができる。また、買い物用手押し車の操作性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係る、リハビリテーション用片手操作式手押し車10(以下、単に「手押し車」という。)は、図1から図3に示すように、パイプ等、所定の強度を有する部材によって構成されたフレーム12に、パッド14、グリップ16、17、車輪18、20、22を取付けて構成されたものである。
フレーム12は、パイプを組み合わせて必要な強度を確保したものであり、図示の例では10°程度のキャスター角が与えられたフロントフレーム12aの上端部と、鉛直方向に延びるリヤフレーム12cの上端部を、水平に延びるミドルフレーム12bで連結し、リヤフレーム12cの下端部とフロントフレーム12aの下端部近傍とを、上方に突出するように湾曲するアンダーフレーム12dで連結した構造となっている。アンダーフレーム12dの湾曲形状は、使用者の歩行時において、足との干渉を可能な限り防ぐために与えられている。
【0019】
また、フロントフレーム12aの上端部近傍から、平面視斜め前方へとV字状に(図2参照)、前輪フレーム12e、12fが左右対称に延びている。この前輪フレーム12e、12fについても、リヤフレーム12cに対し10°程度のキャスター角が与えられている。そして、前輪フレーム12eに対し車輪18が、前輪フレーム12fに対し車輪20が、夫々、フレーム12の前後方向中心線C(図2)に対する角度を変更自在、かつ、その角度を中心線Cと平行に固定可能に軸着されている。車輪18、20の角度を変更可能かつ任意に固定する構造例としては、いわゆる自在キャスターを車輪18、20に採用することで前輪フレーム12e、12fの先端に軸着し、かつ、自在キャスターの旋回軸を、ナットやクランプによって旋回不能に固定可能とするものが挙げられる。
一方、リヤフレーム12cの下端部には、車輪22が、中心線Cに対し常時平行に固定されている。なお、車輪18、20、22は、何れも、手押し車10を使用する使用者の足が干渉しない位置に配置されている。
【0020】
また、フロントフレーム12aの上端部からは、フロントスリーブ12gが出没自在に突出し、リヤフレーム12cの上端部からは、リヤスリーブ12hが出没自在に突出している。そして、フロントスリーブ12gに一端部が軸着されたアッパースリーブ12jが、リヤスリーブ12hに固定され水平方向に延びるアッパーフレーム12kの、内筒部に対して出没自在に嵌合している。ここで、フロントスリーブ12gはフロントフレーム12aに対して無段階に出没するものであり、フロントフレーム12aに対するフロントスリーブ12gの突出量は、フロントフレーム12aに設けられたクランプ24(図3参照)を締め込むことによって固定される。一方、リヤスリーブ12hは、ラッチによってリヤフレーム12cに対し一定のピッチ(例えば2cmピッチ)で突出量が定まるように構成されている。
【0021】
以上のごとく、各フレームおよび各スリーブによって構成されたフレーム12は、前輪フレーム12e、12fを除き、各部材がフレーム12の前後方向中心線C上に整列した、幅方向に薄いフレーム構造を有し、かつ、中心線Cに対して左右対称形をなしている。
また、図示の例では、フレーム12は鉄製の丸パイプをジョイントで着脱自在に連結し、または溶接することによって構成されているが、軽量化を促進するために、一部又は全部にアルミ素材や、カーボンファイバー等を使用することも可能である。また、可能な範囲内でフレームを一体成形することとしても良い。
【0022】
パッド14は、アッパーフレーム12kに対し、前後方向の位置を変更可能に取り付けられている。したがって、フロントスリーブ12gおよびリヤスリーブ12hを伸縮させ、かつ、アッパーフレーム12kに対するパッド14の前後位置を調整することで、パッド14の、前後上下位置の調整が可能となっている。また、パッド14は、後述のように、立位姿勢の使用者が片側の肘または二の腕の少なくとも一方を密着させて体重の一部を預けるものであることから、パッド14はクッション性を備える素材で構成されていることが望ましい。なお、パッド14は、左右対称形となっている。
【0023】
グリップ16、17は、フロントスリーブ12gに対し、回転可能に取付けられたハンドルバー26の、中間部と先端部とに設けられている。ハンドルバー26は、図示のごとく略C字状に湾曲していることから、ハンドルバー26をフロントスリーブ12gに対して回転させて、その姿勢を変化させることで、グリップ16、17の位置を様々に変化させることができる。
図1、図2は、ハンドルバー26の角度を、グリップ16、17が垂直方向を向くように固定した例を示している。一方、図3は、グリップ16、17が水平方向を向くように、ハンドルバー26の角度を固定した例を示している。また、フロントスリーブ12gに対するハンドルバー26の角度を、任意の角度で固定することで、グリップ16、17の角度を様々に変更することが可能となる。さらに、グリップ16、17の角度調整と共に、フロントスリーブ12gおよびリヤスリーブ12hを伸縮させることで、フロントスリーブ12gに軸着されたハンドルバー26の上下位置を、パッド14と共に調整することが可能となる。
【0024】
なお、パッド14に、二の腕を固定するベルト(ベルクロ等)を設けたり、パット14の形状を、使用者の二の腕を確実に保持することが可能な凹状に形成し、または、使用者の二の腕を通す筒状に形成する等によって、パッド14のみで使用者と手押し車10との一体性を確保することが可能であれば、ハンドルバー26およびグリップ16、17を省略することも可能である。
【0025】
手押し車10の、中心線Cに対する角度が常時固定された後方の車輪22には、ブレーキ27が設けられている。そして、ブレーキ27の操作レバー28が、グリップ16、17、ハンドルバー26、またはフレーム12の任意の位置に、着脱自在に設けられている。図1の例では、操作レバー28は、使用者がグリップ16を握って手押し車10を操作する際の操作性を考慮して、グリップ16の近傍に取り付けられているが、使用者がグリップ17を握って操作する場合には、操作レバー28をグリップ17の近傍に付け替えることができる。また、図3に示すように、グリップ16、17が水平方向を向くようにハンドルバー26の角度を固定した場合にも、操作レバー28の操作を最もし易い位置に、操作レバー28を固定することができる。
なお、前述のごとく、ハンドルバー26およびグリップ16、17を省略する場合には、操作レバー28をフレーム12の適切な位置に取付ける。また、例えば、操作者の手首の動きに応じてブレーキ27の制動力を調整するような操作レバーを、操作者の手首またはその近傍に取付けることとしてもよい。
【0026】
また、リヤフレーム12cには、補助輪フレーム29を介して補助輪30が固定されている。補助輪フレーム29は、L字状に形成され、先端部に補助輪30が軸着されている。補助輪フレーム29の基端部は、リヤフレーム12cに対し回転自在かつ、後方の車輪22の左右側方で固定可能に、リヤフレーム12cに取付けられている。
補助輪30は、後方の車輪22から左右方向に所定距離だけ離間した位置に配置されることによって、手押し車10の転倒を確実に防止するためのものであり、補助輪フレーム29のサスペンション32を介して、床面または路面に接触している。なお、補助輪30は、荷重を常時受けることを主目的としていないことから、前後の各車輪18、20、22に対し小径となっている。また、サスペンション32によって、床面や路面の凹凸を吸収し、かつ、手押し車10が使用者の体重を受けて若干傾くような場合であっても、その傾きをサスペンション32により吸収することができる。さらに、補助輪フレーム29は、後述のごとく腰掛けプレート34の台座を兼ねるものである。
【0027】
腰掛けプレート34は、表裏同一形状をなし、フロントフレーム12a、ミドルフレーム12b、リヤフレーム12c、アンダーフレーム12dに囲まれた部分に垂直に立てられるようにして収納されている。また、腰掛けプレート34の、リヤフレーム12cに対向する後端面の比較的下部が、手押し車10の中心線Cと平行な回転軸を備えるジョイント36(図3参照)によって、リヤフレーム12cに対し回転自在に軸着されている。そして、腰掛けプレート34のリヤフレーム12cに対向する後端面の比較的上部が、ストッパー37によってリヤフレーム12cに固定されることで、腰掛けプレート34は垂直に立った状態で、フロントフレーム12a、ミドルフレーム12b、リヤフレーム12c、アンダーフレーム12dに囲まれた部分に格納される。ストッパー37は、必要に応じ腰掛けプレート34を挟み込むことが可能な、クリップ等が用いられている。また、腰掛けプレート34の前端部が、チェーン38(図3参照)によってアンダーフレーム12dに連結されていることで、腰掛けプレート34に無理な力が加わるような場合であっても、リヤフレーム12cからの腰掛けプレート34の脱落を防ぐことができる。
また、補助輪フレーム29には、腰掛けプレート34の下面が当接するストッパ40(図3参照)が設けられている。そして、実際の使用時には、図1、図2に示すように、手押し車10の中心線Cに対し直交する方向に固定される補助フレーム29のストッパ40に、腰掛けプレート34の下面が当接することで、使用者が腰掛けプレート34に着座する際の、腰掛けプレート34の安定性を確保している。なお、ストッパ40は、必要な荷重を受けることができるものであれば、板材によって構成したものでも棒材を湾曲させて構成したものでも良い。
【0028】
なお、前輪フレーム12e、12fを、フロントフレーム12aに固定するジョイント42、44が、フロントフレーム12aに対し回転可能かつ任意の位置で固定可能とすれば、手押し車10の未使用時等に、フロントフレーム12aを中心として、前輪フレーム12e、12fを左右に振ることで、手押し車10の幅方向の寸法を抑えることが可能となる。
また、前輪フレーム12e、12fを、それぞれ独立してフロントフレーム12aに対し回転可能に取付けることとすれば、前輪フレーム12e、12fの双方を、フロントフレーム12aを中心に回転させて後方へと折畳むことにより、フレーム12を、前後方向にも左右方向にもコンパクトに折畳むことが可能となる。後者の折畳み機構を備える場合には、前輪フレーム12e、12fをつなぐ補強フレーム12mを、前輪フレーム12e、12fに対し着脱自在とするか、若しくは、前輪フレーム12e、12f自体に十分な強度を持たせて、補強フレーム12mを廃止する。
【0029】
さらに、図3に示すように、前輪フレーム12e、12fに対し、かご48を着脱自在に設けることも可能である。前述のごとく、フロントフレーム12aおよび前輪フレーム12e、12fには、10°程度のキャスター角が与えられているが、かご48も前輪フレーム12e、12fの傾斜に沿ってその下端部を前方へと遠ざけるように固定されることが、使用者の足との干渉を防ぐ上で望ましい。
なお、図4には、使用者が、右側の二の腕をパッド14に乗せ、右手でグリップ16を握ることによって手押し車10を操作し、歩行訓練を行っている様子を例示している。
【0030】
上記構成を有する本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。まず、本発明の実施の形態によれば、左右対称形のフレーム12の左右対称位置に、左右対称形のパッド14と車輪18、20、22とが取り付けられることによって、手押し車10は、左右対称形をなしている。よって、使用者は、必要に応じ、左右どちらの手によっても、手押し車10を操作することが可能となる。例えば、右手によって手押し車10を操作する場合には、手押し車の前後方向中心線Cが、使用者の右側方に位置するようにして使用される。一方、左手によって手押し車10を操作する場合には、手押し車の前後方向中心線Cが、使用者の左側方に位置するようにして使用される。
しかも、フレーム12は幅方向(進行方向と直交する方向)に薄いフレーム構造を有していることから、手押し車10が使用者の側方に位置する状態で、手押し車10を使用する使用者が移動するための、幅方向に大きなスペースを取ることもない。
【0031】
また、フレーム12には、使用者の前後三ヶ所に位置するように車輪18、20、22が取付けられていることから、フレーム12は車輪18、20、22を介して床面や路面に接地し、停止時、移動時を問わず、安定して自立する。そして、使用者は、立位姿勢において、左右何れかの、肘または二の腕の少なくとも一方を、パッド14に密着させて体重をパッド14に預けることにより、片手操作でフレーム12に操作力を伝え、フレーム12に取付けられた車輪18、20、22によって、使用者の意図する方向へと手押し車10を移動させることが可能となる。しかも、車輪18、20、22は使用者の足が干渉しない位置に配置されていることから、移動の際に、使用者の歩行が妨げられることもない。
【0032】
また、パッド14は、アッパーフレーム12kに対し、前後方向の位置を変更可能に取り付けられており、フロントスリーブ12gおよびリヤスリーブ12hを伸縮させ、かつ、アッパーフレーム12kに対するパッド14の前後位置を調整することで、パッド14の位置が調整可能であることから、使用者の体形を問わず、手押し車10の操作性を高めることが可能となる。
【0033】
また、フレーム12の前後方向中心線Cに対する角度を変更自在な車輪18、20を、その角度を変更可能な状態で使用することにより、手押し車10は、使用者の意図する方向へと自由に進行方向を変えることが可能となる。一方、フレーム12の前後方向中心線Cに対する角度を変更自在な車輪18、20の角度を、フレーム12の前後方向中心線Cと平行に固定して使用することとすれば、その他の車輪22の中心線Cに対する角度が常時平行に固定されていることと合わせて、手押し車10はフレーム12の前後方向中心線Cと平行な方向へと、その移動方向が規制されることとなる。
したがって、手押し車10を利用したリハビリの初期段階では、車輪18、20の角度を固定することで、真っ直ぐに歩行する訓練を行うことできる。また、手押し車10を利用したリハビリの後期段階では、車輪18、20の角度を変更自在とすることで、使用者の意図する方向へと手押し車10を進行させることが可能となる。
【0034】
また、手押し車10のフレーム12には、立位姿勢の使用者が、パッド14に肘または二の腕を密着させた状態で、肘または二の腕と同側の手指により把持するグリップ16、17が取り付けられている。したがって、パッド14に肘または二の腕を密着させることにより、使用者からの操作力を手押し車10に伝え、若しくは、使用者の体をパッド14により支え、なおかつ、手指でグリップ16、17を把持することによって、グリップ16,17を介して、操作力を手押し車10に伝えることができる。また、手指によりグリップ16、17を把持することで、使用者と手押し車10との一体感を高めることができる。
【0035】
しかも、グリップ16、17が取付けられたハンドルバー26の角度を、フロントスリーブ12gに対し変化させ、また、フロントスリーブ12gおよびリヤスリーブ12hを伸縮させることで、ハンドルバー26の上下位置をパッド14と共に調整することによって、グリップ16、17の位置が、様々に調整可能となっているので、使用者の体形を問わず、手押し車10の操作性を高めることが可能となる。
【0036】
また、中心線Cに対する角度が常時固定された車輪22に、ブレーキ27が設けられ、ブレーキ27の操作レバー28が、グリップ16、17またはフレーム12(ハンドルバー26)の任意の位置に着脱自在に設けられていることから、使用者は操作レバー28を把持することによってブレーキ27を作動させ、手押し車10の移動速度を任意に調整し、また、容易に停止させることが可能となる。
しかも、パッドの位置やグリップの位置を調整した場合には、それらの位置に応じて、ブレーキの操作レバー28も、グリップ16、17またはフレーム12(ハンドルバー26)の任意の位置に取付けることで、ブレーキ27の操作性を高めることが可能となる。なお、図示の例のごとく、中心線Cに対する角度が常時固定された車輪22にブレーキ27が設けられることで、ブレーキ27の取り付け構造や、ブレーキ27と操作レバー28とをつなぐワイヤ46の取り回しを、簡単にすることができる。
【0037】
また、手押し車10は、車輪18、20、22が、使用者の前後一方に二輪18、20が、他方に一輪22が位置するように設けられている。よって、フレーム12は車輪18、20、22を介して三点で床面に接地することにより、停止時、移動時を問わず、安定して自立することが可能となる。
また、一輪側の車輪22はフレーム12の前後方向中心線C上に配置され、中心線Cから左右方向に所定距離だけ離間した位置に、一輪側の車輪22に対する左右位置を交換可能に、補助輪30が設けられているので、補助輪30を、手押し車10の前後方向中心線Cを挟んで操作者とは反対側の側方に、一輪側の車輪22から所定距離だけ離間させて配置することで、使用者の体重が、過剰に手押し車10に加わる等により手押し車10の重心バランスが崩れるような場合であっても、補助輪30で支え手押し車10の側方への転倒を確実に防止することができる。なお、補助輪30は、一輪側の車輪22に対する左右位置を交換可能に設けられていることから、手押し車10の用途が、右手操作用または左手操作用の一方に限定されることはない。
【0038】
また、手押し車10のフレーム12には、腰掛けプレート34が出し入れ自在に設けられていることから、使用者が腰掛けプレート34を出して、それに腰掛けることにより、任意の場所で休憩することが可能となる。よって、使用者のペースに合わせて歩行訓練を行うことが可能となる。
また、手押し車10には、補助輪フレーム29が設けられており、この補助輪フレーム29が腰掛けプレート34の台座を兼ねることにより、手押し車10の構成部品を有効活用して、手押し車10の転倒防止対策と腰掛けプレート34の安定保持対策とを行うことが可能となる。
【0039】
さらに、フレーム12に、平面視V字状(図2参照)に斜め前方へと延びる前輪フレーム12e、12fの折畳み機構を設けることとすれば、手押し車10収納が容易となり、手押し車10の、車やバス等の移動手段への搭載も容易となる。
また、フレーム12の、使用者の前方に位置する車輪を軸支する部分である前輪フレーム12e、12fに、かご48が設けられていることから、使用者は、手荷物をかご48に載せて、歩行訓練を行うことが可能となり、例えば、病院内に開設された売店等への買い物の際にも、手押し車10を使用することが可能となる。
【0040】
また、手押し車10は、フレーム12の、使用者の前方に位置する車輪18、20を軸支する部分(フロントフレーム12a、前輪フレーム12e、12f)に、キャスター角が与えられていることにより、使用者の前方に位置する車輪18、20の位置が使用者から遠ざかり、歩行時に使用者の足が車輪18、20に当たるおそれが少なくなり、使い勝手のよい手押し車となる。
特に、フレーム12は、前輪フレーム12e、12fを除き、各部材がフレーム12の前後方向中心線C上に整列した、幅方向に薄いフレーム構造を有していることから、使用時において、手押し車10の中心線Cは、使用者の体の近傍に位置することとなる。よって、車輪18、20を可能な限り前方に配置することによる、使用者の足との干渉防止効果は大きなものとなる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態に係る手押し車10は、使用者の前方に位置する車輪が18、20の二輪で、使用者の後方に位置する車輪が22の一輪である車輪レイアウトを採用しているが、各車輪が使用者の足が干渉しない位置に配置されているものであれば、前方の車輪を一輪(または二輪)、後方の車輪を二輪としても良い。そして、後方二輪とする場合には、使用者の足との干渉防止のために、パッド14に対する後方の車輪の位置を、図示の例よりもさらに後方に配置することが望ましい。
また、図示のごとく、使用者の前方に位置する車輪が18、20の二輪で、使用者の後方に位置する車輪が22の一輪である車輪レイアウトにおいて、車輪18、20を、中心線Cに対する角度が常時固定された車輪とし、車輪22を、前後方向中心線Cに対する角度が変更自在な車輪とすることも可能である。この場合には、車輪18、20の一方若しくは双方にブレーキ27が設けられる。なお、車輪18、20の双方にブレーキ27を設けた場合には、制動力が左右の車輪18、20に均等に発生し、使用者の安心感がより高まる。
【0042】
さらに、上記説明では、本発明をリハビリテーション用片手操作式手押し車10(片麻痺者用歩行器)に採用した場合を例示して説明したが、これを買い物用手押し車(ショッピングカート、ショッピングバギー)に適用することも可能である。その場合には、例えば、買い物かごを前輪フレーム12e、12fに載置することとする。また、腰掛けプレート34が設けられた、フロントフレーム12a、ミドルフレーム12b、リヤフレーム12c、アンダーフレーム12dに囲まれた部分にも、買い物かごの載置台を設けることとしてもよい。かかる構成によって、片手操作が可能な、買い物用手押し車を提供することが可能となり、買い物用手押し車のいわゆるユニバーサル化を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係るリハビリテーション用片手操作式手押し車の斜視図である。
【図2】図1に示す手押し車の平面図である。
【図3】図1に示す手押し車の側面図であり、説明の便宜上、補助輪フレームおよび補助輪が車輪と平行な方向に示されている。
【図4】図1に示す手押し車を用い、使用者が、歩行訓練を行っている様子を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10:リハビリテーション用片手操作式手押し車、12:フレーム、 12e、12f:前輪フレーム、14:パッド、 16、17:グリップ、 18、20、22:車輪、26:ハンドルバー、27:ブレーキ、28:操作レバー、29:補助輪フレーム、30:補助輪、34:腰掛けプレート、48:かご


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位姿勢の使用者が片側の肘または二の腕の少なくとも一方を密着させて体重の一部を預ける左右対称形のパッドと、使用者の前後三ヶ所以上でかつ使用者の足が干渉しない位置に配置される車輪とが、左右対称形のフレームの左右対称位置に取付けられてなることを特徴とする片手操作式手押し車。
【請求項2】
前記パッドの位置が調整可能であることを特徴とする請求項1記載の片手操作式手押し車。
【請求項3】
前記車輪のうち、使用者の前後一方に位置する車輪が、前記フレームの前後方向中心線に対する角度を変更自在、かつ、その角度を前記中心線と平行に固定可能に前記フレームに軸着され、その他の車輪の前記中心線に対する角度が、前記中心線に対し常時平行に固定されていることを特徴とする請求項1または2記載の片手操作式手押し車。
【請求項4】
立位姿勢の使用者が、前記パッドに肘または二の腕を密着させた状態で、肘または二の腕と同側の手指により把持するグリップが、前記フレームに取付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の片手操作式手押し車。
【請求項5】
前記グリップの位置が調整可能であることを特徴とする請求項4記載の片手操作式手押し車。
【請求項6】
少なくとも前記中心線に対する角度が常時固定された車輪にブレーキが設けられ、該ブレーキの操作レバーが、前記グリップまたは前記フレームの任意の位置に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項4または5記載の片手操作式手押し車。
【請求項7】
前記車輪は、使用者の前後一方に二輪、他方に一輪が位置するように前記フレームに設けられており、一輪側の車輪は前記フレームの前後方向中心線上に配置され、前記一輪側の車輪から左右方向に所定距離だけ離間した位置に、前記中心線に対する左右位置を交換可能に、補助輪が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の片手操作式手押し車。
【請求項8】
前記フレームには、腰掛けプレートが出し入れ自在に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の片手操作式手押し車。
【請求項9】
前記補助輪を、前記フレームの前後方向中心軸に対する左右位置を交換可能に、前記フレームに固定するための補助輪フレームを備え、該補助輪フレームが前記腰掛けプレートの台座を兼ねることを特徴とする請求項8記載の片手操作式手押し車。
【請求項10】
前記フレームは、折畳み機構を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の片手操作式手押し車。
【請求項11】
前記フレームの、使用者の前方に位置する車輪を軸支する部分に、かごが設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の片手操作式手押し車。
【請求項12】
前記フレームの、使用者の前方に位置する車輪を軸支する部分に、キャスター角が与えられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の片手操作式手押し車。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項記載のリハビリテーション用片手操作式手押し車。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項記載の買い物用片手操作式手押し車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−288867(P2006−288867A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115606(P2005−115606)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(391011700)宮崎県 (63)
【出願人】(500077177)社団法人八日会 (1)
【Fターム(参考)】