説明

物体をタイヤ壁に取り付けるための装備付きのタイヤ及びその製造方法

本発明のタイヤは、キャビティ(25)を構成すると共に2部品構成型ファスナ(10)、特に自己連結型ファスナを用いて機能物体(27)、例えば電子回路を受け入れるよう構成されたエンベロープを有し、2部品構成型ファスナは、エンベロープ(22)の壁に連結された第1の部分と、エンベロープに取り付けられている物体を使用位置に位置した状態に維持するために第1の部分に接触すると第1の部分に結合できる第2の部分とを有する。ファスナ(10)の第1の部分は、タイヤ壁に一体的に形成された結合部材(13)を有する。好ましくは、結合部材は、物体に向かうタイヤの壁に悪影響を及ぼす応力の伝達を制限する相互離脱能力をこれら部分に与える。一実施形態では、結合部材は、タイヤの製造中、タイヤの壁内に組み込まれるコイル状フィルムのターンの端部により形成された柔軟性ワイヤのループから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ホイール用のタイヤに関する。本発明は、特に、関連の機能物体のタイヤへの取付けに関する。かかる物体は、タイヤの周りの環境と通信してその作動及びその物理的特性の変化をモニタし又は警告を与えることができるセンサ、識別回路及び/又はユニットであるのが良く、これらは全て、所謂スマート型タイヤを市場に提供するよう設計された多かれ少なかれ精巧な機能である。
【背景技術】
【0002】
解決されるべき大きな問題のうちの1つは、車両が走行中である場合と休止状態である場合の両方において、装備がなされたタイヤにつき非常に高い応力を受ける環境においてタイヤ及び物体の物理的及び機能的健全性を維持し、物体を時には非常に長い期間(かかる期間は、タイヤの耐用寿命全体にわたる場合さえある)にわたり、タイヤ内の定位置にどのように取り付けるかということにある。
【0003】
国際公開第03/070496号パンフレットは、別の方式を提供しており、この方式では、タイヤの内壁を硬化前に表面がループを備えた材料のストリップで覆い、かかるループは、フック・アンド・ループ(hook-and-loop)型(フック・アンド・ループ型ファスナは、面ファスナと呼ばれる場合がある)のタッチクローズ式ファスナの一方の部分品を形成し、なお、このファスナの他方の部分品は、タイヤを硬化させた後であってこれをホイールリムに取り付ける前に、2つの部分品を互いに結合したときに第1の部分品のループに係合し又は引っ掛かることができるフックを備えている。タイヤキャビティ内に取り付けられるべき物体をこの第2の部分品のフックが設けられていない面に取り付ける。上述の特許文献に記載された発明の変形例では、物体をこれが内壁上の選択された位置に位置したままであるようにするためにこれら2つの部分品のループ及びフックで覆われた面相互間でサンドイッチするのが良い。
【0004】
タイヤへの物体の取外し可能な取付けとして例えば米国特許第3,260,294号明細書から長年にわたって知られている技術を用いたこの取付け法は、かかる物体を交換し又はタイヤの寿命の終わりにこれを再使用し、或いは、この物体と関連した或る特定のデータを使用するために、タイヤをホイールから取り外したときにはいつでも物体を取り外すことができるという利点を有する。しかしながら、このやり方は、タイヤに直接組み込まれた物体の欠点を免れない。というのは、タイヤの壁に設けられたタッチクローズ式取付け具の第1の取付け部分品は、タイヤの製造がケーシングのシェーピングを含む1つ又は2つ以上のステップを有する場合、タイヤの製造中と、当然のことながらタイヤの壁が、ホイールの回転の度毎に周期的に変形し、さらに、タイヤが障害物、例えば穴ぼこ、石、縁石等が撒き散らされたようにこれらが存在する場合のあるでこぼこの路面上を走行する際の荷重及び場合によっては衝撃の全てをタイヤが吸収する際に追加の変形を生じる場合の両方において、タイヤの受ける応力にさらされた場合にタイヤが変形する仕方を妨害するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/070496号パンフレット
【特許文献2】米国特許第3,260,294号明細書
【発明の概要】
【0006】
これら問題に鑑みて、本発明は、物体をタッチクローズ式取付け具を用いてタイヤの内部に、物体を受け入れるべきタイヤ又はタイヤに取り付けられるべき物体の動作をそれほど邪魔しないで単純な仕方で取り付ける仕方を提供することを目的としている。
【0007】
この目的を考慮に入れて、本発明の一観点によるタイヤは、ケーシングを有し、ケーシングの壁が、ケーシングを車両のホイールに取り付けた後、使用圧力に耐えるのに適しており、タイヤが、壁に固定された第1の部分を有するタッチクローズ式取付け具を更に有し、取付け具の第2の部分が、第1の部分に当てられると、物体をタイヤ内部の使用位置に保つために連結要素によって第1の部分に機械的に結合するのに適しており、このタイヤは、連結要素のうちの少なくとも幾つかは、タイヤの壁の一体部分であることを特徴とする。
【0008】
一実施形態では、第1の部分の連結要素は、タイヤの壁の中に直接植え込まれ又は埋め込まれた部分及びこの壁から例えばタイヤキャビティ内に突き出た別の部分又は端部を有する融通性の細長い要素である。これら連結要素は、関連の物体を第1の部分に取り付けるために第2の取付け具部分を第1の部分に当てたときに第2の取付け具部分に設けられている対応の連結要素と結合するよう形作られている。
【0009】
上述の柔軟性の細長い要素は、第1の取付け具部分の場所でタイヤの壁の中に部分的に埋め込まれた柔軟性細線を用いて製作できる。一実施形態では、幾つかの連結要素が、単一の細線要素から製作でき、かかる細線要素の幾つかのセクタは、この壁の表面から突き出たセクタにより分離された状態でタイヤの壁の中に埋め込まれる。
【0010】
第1の部分の柔軟性の細長い要素は、壁の外部に位置する一端部寄りに、ヘッド、例えばフック、棘又はキノコ状体を備えた締結細線又はピンであるのが良く、かかるヘッドは、第2の取付け具部分に設けられている対応の要素を把持するのに適している。
【0011】
変形例として、第1の取付け具部分の細長い要素は、有利には、端部がタイヤの壁の材料内に埋め込まれたループの形態をしてタイヤ壁から突き出た柔軟性割り線により形成される。これらループは、フックの形態の湾曲した柔軟性割り線に接合されるのに適しており、フックは、かくして、第2の取付け具部分に設けられる連結要素を構成する。有利な一実施形態では、これらループは各々、製造中、タイヤの壁に組み込まれた柔軟性割り線のコイルの一部をなすターンの突出部分から成る。
【0012】
最後に、ループ以外の雌型連結要素を本発明に従ってタイヤ壁の中に組み込むことができ、例えば、第2の取付け具部分の連結要素を形成する雄型要素に接合されるのに適した受け口をタイヤ壁に形成するのが良い。
【0013】
これら手段により、物体をこの目的のために設計されると共に製作された壁の内部又は外部の場所に取外し可能に又は取外し不能に取り付けることが可能である。
【0014】
提案される取付けシステムは、タイヤの通常の構成にとって異質の構成要素が少ないので構成が非常に簡単である。この取付けシステムは、物体が取り付けられたケーシングの壁のセクタを保持し、特に、ケーシングの壁が疲労又は過度の応力を生じることなくその通常の動作モードで変形することができるようにする。これは、取付け具の第1の部分が作動中、タイヤ壁の変形に対して抵抗をもたらさないからである。というのは、タイヤ壁に組み込まれた連結要素は、互いに対して自由に動くことができ、かくして、壁がさらされる応力を受けると、壁の変形に追従することができる。
【0015】
連結要素は、好ましくは、第1の取付け具部分と第2の取付け具部分との間に隙間を生じさせ、それにより、第1及び第2の取付け具部分は、タイヤを作動させたときに第1の取付け具部分に悪影響を及ぼす変形の物体への伝達を制限することができる。
【0016】
この目的のため、連結要素を構成する細長い要素、ピン又は柔軟性細線の長さ、これらが接合された取付け部分の表面に対するこれらの角度並びにこれらの分布及び密度は、タイヤが転動しているときにタイヤの延伸、剪断及び捩りにより引き起こされる、取付け具の第1の部分に悪影響を及ぼす変形の取付け物体への伝達を阻止し又は減少させるような仕方で上述の面相互間の接線方向及び/又は半径方向運動の自由度を取付け具に与えるよう決定される。第1の取付け具部分の連結要素がケーシングの壁の表面から半径方向に突き出たループである有利な一実施形態では、所要の隙間は、これらループの長さを調節することにより作られる。
【0017】
この構成は、物体の取付け強度に悪影響を及ぼさない。第1の取付け具部分の変形は、本質的には、2つの部分相互間に作られる連結部の柔軟性によって吸収される。連結要素相互間の結合部の品質は、その使用全体を通じて維持され、従って、物体それ自体は、少なくとも大部分に関し、用途により必要とされる耐久性条件をできるだけ良好に満足させるように転動中のタイヤの応力の高い環境内において、物体が取り付けられている壁に悪影響を及ぼす機械的応力から保護される。
【0018】
本発明は又、物体が取り付けられるべき支持板及びこの支持板と一体に形成された連結要素を有する第2のタッチクローズ式取付け具部分の製造に及ぶ。一実施形態では、支持板は、物体と一緒に成形される。この場合、第2の部分の連結要素は、支持板内に植え込まれ又は支持板と一体に形成された一端部及び第1の取付け具部分の対応の連結要素を把持するのに適したヘッドを備える他端部を有する締結ピンとして製作されるのが良い。
【0019】
最後に、本発明は、上述の観点に従って装備が行われたタイヤの一又は複数の製造法を提供する。
【0020】
タッチクローズ式取付け具を用いて機能物体を使用位置で取り付けることができる壁を有するタイヤの製造方法であって、タッチクローズ式取付け具が、壁に固定された第1の部分と、第2の部分とを有し、第2の部分が、2つの部分を互いに結合したときに、物体を壁の中に位置した状態に保つために連結要素によって第1の部分に機械的に結合するのに適している、方法において、タイヤのコンポーネントの未硬化状態(生の状態)の組み立ての際、未硬化状態のケーシングの表面に対して少なくとも横方向寸法において付形されていて、成形面と接触するのに適したゴム内側ライナに取り付けられた細線を取り付け、その後、生のタイヤを硬化させ、この作業は、付形された細線が部分的に、ゴム内側ライナを貫通して細線要素が脱型後に、ゴム内側ライナの内面から突き出るようになっていると共に取付け具の第1の部分のための連結要素として働くのに適しているような性質のものであることを特徴とする方法が提供される。
【0021】
一実施形態では、コイルは、生ゴムのスキムに当てて配置され、このスキムはそれ自体、生ゴム複合体の縁部のところに配置されるのが良く、組み立ては、スキムからみて最も遠くに位置するコイルの側をゴム内側ライナと接触させることにより続行される。スキムは、コイルを次の組み立て作業中及び硬化のための準備中、定位置に保持する。生のスキムを表面処理して硬化中、コイルのターンがスキムを貫通するのを阻止する傾向のある或る程度の硬さをスキムに与えることが可能であり、利点をもたらす。好ましい実施形態では、スキムのこの処理は、照射プロセスによって実施できる。
【0022】
一実施形態では、付形された細線は、ターンがタイヤ壁の内面に締結ループを形成するようこの壁のゴム内側ライナを途中まで貫通するコイルである。補完的な実施形態では、タイヤ壁の表面上に形成されたループは、第1の取付け具部分のための連結要素としての役目を果たすフックを形成するよう切断される。
【0023】
別の特徴では、タッチクローズ式取付け具の第2の部分を製作するステップを有し、第2の部分が、第1の部分に当てられると、物体を固定するよう第1の部分に接合するのに適する連結要素を備えた支持材を有する製造方法は、硬化可能な材料の層が、支持材を構成するマウントを形成するよう金型内に配置され、連結要素は、該連結要素が硬化可能な材料の層の表面から突き出るように植え込まれ、成形作業が、第2の部分を形成するよう実施されることを特徴とする。支持材に取り付けられるべき物体を組み込むと同時に例えば物体を封入することによりかかる支持材を製造プロセス中に作製するのが有利である。
【0024】
上述の方法の一具体化例では、用いられる金型は、マウントのための成形キャビティを備えた金型本体を有し、キャビティの内面は、金型本体の内部における連結要素ピンの形成のための湾曲した又は拡大された端部を有する穴を備える。硬化可能な材料は、キャビティ内に流し込まれ又は射出され、成形材料は、湾曲した又は拡大されたヘッドを有する連結要素ピンを備えた第2の部分を生じさせるよう硬化される。
【0025】
変形実施形態では、用いられる金型は、マウントのための成形キャビティを備えた金型本体を有し、キャビティの内面は、開口部を備える。締結ヘッドを備えた柔軟性連結要素ピンが、ヘッドを先ず最初に開口部内に挿入することにより各開口部内に配置され、硬化可能な材料は、キャビティ内に注ぎ込まれ又は射出され、成形材料は、雄型連結要素を備える可動部品を生じさせるよう硬化される。
【0026】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として本発明の種々の実施形態を示した添付の図面を参照して行われる以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のタッチクローズ式取付け具を備えたタイヤの壁の一実施形態の一例を非常に概略的に示す図である。
【図2a】使用中、変形を受ける本発明のタイヤ壁の動作の機構又は仕組みを示す図である。
【図2b】使用中、変形を受ける本発明のタイヤ壁の動作の機構又は仕組みを示す図である。
【図3a】タイヤの内壁に直接固定されたループを備えるタッチクローズ式取付け具要素を有するタイヤ壁の製造にあたっての一ステップを示す図である。
【図3b】タイヤの内壁に直接固定されたループを備えるタッチクローズ式取付け具要素を有するタイヤ壁の製造にあたっての一ステップを示す図である。
【図4a】フックを備えた第2のタッチクローズ式取付け具部分の成形のための一変形実施形態を示す略図である。
【図4b】フックを備えた第2のタッチクローズ式取付け具部分の成形のための別の変形実施形態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1では、タッチクローズ式取付け具10が、タイヤケーシング20の壁22の内面23に一体的に形成された第1の部分を有している。チューブレスタイヤのこの例では、この壁は、インフレート可能なキャビティを画定している。この壁は、インフレーション用ガスに対してその気密性を最適化するよう設計されたゴム内側ライナ24で内張りされている。カーカスプライ28が、直接又は1つ又は2つ以上の中間ゴムプライ26を備えた状態でム内側ライナ24の後ろに被着され、カーカスプライ28の補強ケーブル29が断面で見える。
【0029】
ゴム内側ライナ24の表面中には、柔軟性アラミド、ポリアミド、ポリエステル又は第1のタッチクローズ式取付け具部分10を形成する他の柔軟性細線で作られた多数の強固な雌型締結要素、例えばループ13が固定されている。ループ13は、雄型締結要素、例えばフックが以下に説明するようにループに結合することができるようタイヤ20のキャビティ25の内部の方へ差し向けられている。
【0030】
取付け具10の第2の部分は、図1の非常に概略的な形態で示されていて、第1の部分のループ13に接合された薄手の支持体又はマウント16により形成されている。タイヤの内壁22の方へ差し向けられたマウント16の一方の面17は、マウント16の面17から外方に突き出た雄型締結要素、例えばフック18を備えている。これらフックのうちの少なくとも幾つかは、図示の接合位置では、タイヤ壁22の内面に設けられている対応のループ13に係合し又は引っ掛けられる。タイヤのキャビティ25の内部の方に差し向けられたフック形マウントの他方の面19には、機能物体、例えば、保護材料中に包封された電子回路27が固定されている。この回路は、1つ又は2つ以上のスマート型タイヤの機能、即ち、第1に、通信機能を実行することができ、この通信機能は、電気的刺激、磁気的刺激又は電磁的刺激に応答して能動的であっても良く受動的であっても良い。この回路は又、環境、例えば温度及び圧力又はタイヤに加わる応力、動的パラメータ、例えば加速度を利用するより動作上の測定値における測定機能を実行することができる。この回路は又、ここに挙げたものが全てではないが、モニタ又は警告機能を実行することができる。
【0031】
この場合、フック18は、鋼で作られ、これらフックは、マウント16を形成するアラミド布又は編物構造中に植え込まれており、これら材料は、圧力と温度の両方の観点においてタイヤキャビティの応力の高い環境に所要の仕方で耐えると共に数年間にわたる場合のある期間についてそのようにすることができる。
【0032】
ホイールが回転すると、タイヤの壁22は、そのトレッドの表面の任意の領域がタイヤと路面との接触領域に入った時点からこの領域がかかる接触領域を出る時点まで周期的に変形し、更に又、ホイール軸線回りのこの領域の円形経路の残部全体については程度としては低い状態で周期的に変形し、ついには、トレッドの対応のセクタが接触領域にもう一度入るようになる。さらに、壁22は又、ホイールが走行している路面のでこぼこにより伝えられる衝撃を受け、かかる衝撃は、特にタイヤ壁が大きな障害物、例えば隆起部、石、穴ぼこ、種々の境となる部分等に当たった場合に生じる。これら応力は全て、タイヤの壁に引張応力、剪断応力及び捩り応力を生じさせる。その結果、ループ13がタイヤ壁22の内面に植え込まれている箇所は、これらが壁22の変形に追従する際、互いに集まり又は離れる場合がある。かかる箇所は、ループとフック18との間の連結部が壁の変形を邪魔しないでかかる動作が起こることができるようにするほどルーズであることを条件として応力を生じないでこれを行うことができるということが観察されよう。
【0033】
かくして、第1のタッチクローズ式取付け具部分が構造体中に組み込まれたタイヤケーシングが製造段階を出ると、タイヤを製造現場から出荷する前かタイヤをホイールリムに取り付けた時点かのいずれかにおいて、タイヤが意図されている用途に応じて、所望の機能物体をタイヤに取り付けることは、簡単なことである。組み立ては、回路27を備えた第2の取付け具部分10のマウント16を第1の部分に直接当てて押し、それにより第2の部分のフック又は棘18が壁から突き出た第1の部分のループ13に係合し又は引っ掛かるようにすることによって実施される。この目的のため、ループ13は、これらに或る特定の剛性を与える柔軟性細線で作られており、それにより、ループは、或る1つの位置では壁22の表面から突き出ることができ、この位置から遠ざけられた後においてはその位置に戻ることができ、従って、第2の部分を壁に接触させると、ループを高い確率で第2の部分のフックのうちの1つに係合させることができるようになっている。この最後の作業は、特に、後者の場合、大きな押し当て圧力及び/又は適当に制御された圧力がこの目的に必要な場合、例えば、比較的剛性の高い締結要素を用いる場合、手作業で又は機械的に実施できる。判明したこととして、2つの取付け具部分を互いに接合すると、これら取付け具部分は、物体を分離させる傾向のある最高10N/cm2又はそれ以上の力に耐えることができるということが望ましい。この基準は、取付け具が取り付けられるタイヤの壁上の場所に応じて、タイヤの壁に対して直角に又は剪断状態で物体及びタッチクローズ式取付け具の第2の部分により動作中に受ける分離力(特に、遠心力に起因している)に対して良好な安全マージンを提供する。
【0034】
この点に関し、本明細書において説明している取付け具は、トレッドの下でタイヤの壁のクラウン内に直接作ることができ、この場合、遠心力は、圧縮的に働き、取付け具10の2つの部分が互いに近づけられる。剪断又は分離の際に大きい場合のある他の応力は、タイヤの転動中タイヤのクラウンに及ぼされる周期的な荷重並びに上述したような路面のでこぼこにより伝達される応力及び障害物との衝撃に起因して生じる。物体27は又、タイヤの側壁内に外部で又はより頻繁には内側で取り付けられるのが良い。この位置では、取付け具は、タイヤの壁に生じる遠心力及び他の応力に起因した剪断力に耐えなければならない。最後に、物体は、ビード領域内又はその近くに配置可能である。
【0035】
通常の工業用タッチクローズ式取付け具は、非常に効果的にグリップし、取付け具の2つの部分相互間に生じる機械的遊びはほぼゼロである。それ故、ケーシングに悪影響を及ぼす荷重は、ほぼ減少せずにで物体に伝達される。予防措置が取られなければ、物体の剛性は、取付け具の第1の部分が変形するのを阻止する場合があり、その結果、物体が取り付けられているケーシング壁の変形を妨害し、これは、上述した目的とは相反する。しかしながら、物体それ自体は、壁により取付け具とのインタフェースに伝達される場合によっては大きな剪断力に耐えるべきであり、物体の構成及び包封処理は、これらを計算に入れるべきである。本発明の有利な一特徴によれば、これらの危険を回避し、取付け具の第1の部分と第2の部分との間の連結要素の或る特定の特徴、例えばこれらの長さ、これらの柔軟性、2つの部分相互間のインタフェースに対するこれらの角度又はこれらの可撓性若しくは場合によってはこれらの固有の弾性を変化させることにより取付け具の第1の部分と第2の部分との間の或る特定の機械的な遊びの自由度を生じさせることができるということが判明した。このように、インタフェース周りのケーシングの壁に関して所与の程度の保護が与えられ、物体は、この壁内に生じた荷重から保護される。
【0036】
図2a及び図2bは、ケーシングの壁の主変形方向に平行な平面内におけるケーシングの壁の断面によりこの機構又は原理を示している。取付け具10のループ13の端部は、壁22中に捕捉されている。他の方向では、これらループは、マウント16に取り付けられたフック18に係合し又は引っ掛けられ、マウント16は、物体27を支持し、上述した主変形方向におけるこの物体の長さは、Lで示されている。図2aでは、ゴム内側ライナ24で被覆されたタイヤの壁22は、所与の時点においてインフレーション圧力とタイヤケーシングの構造に起因して生じる反力の静的平衡状態にある。ループ13は、壁22とマウント16との間に、図2aにおいて故意に誇張して示されている目に見えるほどの遊びを生じさせる高さHを有している。
【0037】
図2bは、タイヤが転動し、壁22が上述した理由のうちの1つにより生じた応力を受け、それにより矢印Fで示されている接線方向伸びが生じている状況を示している。概略的に図示されているように、この場所に植え込まれているループは、互いに引き離される。ループは十分な高さのものなので、ループの延伸は、これらループが寄り掛かると同時に壁22とマウント16との間の距離を減少させることによってこれらの角度を変えるということによって補償される。このプロセスでは、タイヤの壁22悪影響を及ぼす引張力は、フック18を介してマウント16又は物体27に伝達されることがないようになっている。したがって、上述した目的は、物体27を支持したマウント16の長さに合うようループの高さ(フックの長さも又同様に調節できる)を調節することにより達成できる。例えば、マウントの長さLが50ミリメートルに等しく、ループ高さHが5ミリメートルである場合、タイヤの壁は、最も端に位置するループ13の傾斜が30°の場合にマウント16が悪影響を受けることなく10%の伸び率を呈する。
【0038】
タッチクローズ式取付け具の相互締結は、その構造の形式に応じて、逆にすることができる。これにより、機能物体を取り付け後であって、例えば、物体がサイドウォールの外部に取り付けられている場合、機能物体内に記録されているデータを用いる目的で比較的短い動作期間後か、物体が内部に取り付けられている場合、必要ならば分析目的で又は再使用のためにタイヤの取外し時又はタイヤの寿命の終わりかのいずれかに回収することができる。また、物体がいったんタイヤの中に取り付けられると、物体の取付けを取外し不能にすることが可能である。この目的で、逆にすることができない取付け具を含むタッチクローズ式取付け具、即ち、雌型要素内への雄型要素、例えば釣り針状フックの嵌まり込みが構成上逆にできないタッチクローズ式取付け具を使用することができる。考えられる別の手段は、取付け後に物理的性質が変わる合成細線を用いてループ又はフックが作られている取付け具を用いることである。後者の場合、取付け具は、例えばフックの温度を上昇させるのに十分な熱を局所的に加えてフックが引っ込むようにし、取付け具を破壊しなければもはやフックをループから離脱させることができないようになるまでは、取外し可能のままである。
【0039】
図3a及び図3bは、本発明を実施する目的で、タッチクローズ式取付け具の第1の部分の締結要素がタイヤの壁の中に組み込まれているタイヤを製造する方法を示している。タイヤコンポーネントの未硬化組み立て中(図3a)、先ず最初に、密封ゴム層202を従来の仕方で組み立て用支持体200に被着させる。真鍮めっき鋼の螺旋ワイヤのコイル204を層202上に配置し、かかるコイルのターンは、以下の説明で与えられる指標に基づいて適当な寸法及び機械的性質を備えている。コイル204をゴム206のスキム又は薄い層で覆い、かかるゴム層は、ゴム内側ライナ202と同一種類のものであるのが良く、かかるゴムは、この場合、ブチルゴムである。次に、カーカスプライ208をスキムに被着させ、このカーカスプライの補強ケーブル210がカレンダードゴム内に埋め込まれた状態で断面で見える。組み立てを通常の仕方で完了させ、生タイヤの調製を続けて圧力が最高50バールまでであり温度が最高200℃までであるのが良い硬化用金型内で生タイヤを硬化させる。図3bは、いまや硬化済みのタイヤの壁の概略断面図であり、螺旋ワイヤのコイル204を示している。理解できるように、コイル204のターンは、ゴム内側ライナ202を途中まで貫通し、ループ213の形態でタイヤキャビティ220の内部に現れている。これら要素は、好都合にはタイヤ壁の内部に設けられ、上述した形式のタッチクローズ式連結のための雌型取付け具としての役目を果たすことができる。有利には、スキムには、例えば、適当な照射によって硬化処理が与えられるのが良く、それにより、ワイヤコイル204が硬化作業中に侵入する傾向を阻止する。指摘されるべきこととして、このセットアップにより、結果として得られる締結要素が、独立した固定手段を必要とせず、従って、生の状態であっても硬化済みの状態であってもタイヤ壁の変形を邪魔することはなく又は全体の有効寿命を損なうことはない。さらに、コイル204のターンの使用は、結果的に得られるループ(又はフック)の長さを調節して問題の目的のために所望の遊びを得ることができるということを意味している。
【0040】
変形実施形態(図示せず)では、硬化後にゴム内側ライナ表面上に露出したターンの部分を切断して当初取外し可能なタッチクローズ式取付け具部分の雌型要素に接合されるのに適した雄型締結要素、又はフックを形成する。
【0041】
図4a及び図4bは、最初からタイヤの壁には組み込まれていない図1に示された取付け具10に類似したタッチクローズ式取付け具の第2の部分又は可動部分の2つの実施形態を示している。フックを備えたマウント316を形成する金型300は、マウント316の全体形状をした金型キャビティ302を有している。キャビティ302の主要面のうちの1つは、金型カバー332で閉鎖されており、かかる金型カバーには、硬化可能な成形材料を射出する開口部333が設けられている。キャビティ302のフロア306は、多数の穴307によって中断されている。製造中、湾曲したヘッドを備える1本のワイヤから成る1つの締結要素317をヘッドを先にして各穴307内に挿入する。次に、封入されるべき物体308を図示していない手段によりキャビティ302内に挿入してフック317の上方の定位置に保持する。金型を閉じ、硬化可能な材料を射出開口部333から導入して成形反応後に物体308を有すると共にその主要面のうちの一方に問題のタッチクローズ式取付け具の第1の部分の雌型要素内に挿入するのに適したフック317の床を備えたマウント316を形成する。明らかなこととして、この具体化により、とりわけ上述した弛みの必要性を念頭において、取付けの設計者の意図に合うようフックの長さ及び他の性質を変えることが可能である。
【0042】
図4bは、図4aの代替方法を示しており、この代替方法は、金型300に類似した金型300‐bを用いており、違いは、キャビティ302‐bが金型穴307‐b(適切に通気が行われる)により中断された床306‐bを有し、金型の壁内に位置する金型穴の端部311が湾曲しているということにある。タッチクローズ式取付け具のマウント316‐bの本体を形成するようキャビティ302‐b内に射出された硬化可能なプラスチック材料も又、金型穴311を満たして硬化後にマウント316‐bの表面上に穴311と同様な形のフックを形成し、かかるフックは、これらを脱型して別の取付け具部分(図示せず)のループに結合できるのに適当な柔軟性を備える。この方法は、当然のことながら、マウント316‐bの表面から突き出たキノコ状ヘッドを備えた締結ピンの製造に合わせて改造可能である。
【0043】
明らかなこととして、本発明は、説明すると共に図示した例には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、かかる例に対して種々の改造を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを有するタイヤであって、前記ケーシングの壁が、前記ケーシングを車両のホイールに取り付けた後、使用圧力に耐えるのに適しており、前記タイヤが、前記壁に固定された第1の部分を有するタッチクローズ式取付け具を更に有し、前記取付け具の第2の部分が、前記第1の部分に当てられると、物体を前記タイヤ内部の使用位置に保つために連結要素によって前記第1の部分に機械的に結合するのに適している、タイヤにおいて、前記連結要素(13)のうちの少なくとも幾つかは、前記タイヤの前記壁(22)の一体部分である、タイヤ。
【請求項2】
前記第1の部分の前記連結要素(13)は、前記第2の取付け具部分(16)に固定された雄型連結要素(18)により把持されるのに適した雌型要素である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1の部分の前記連結要素は、柔軟性細線のループ(13)である、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記柔軟性細線のループの長さ及び/又は角度は、前記第1の取付け具部分と前記第2の取付け具部分との間の幾分かの遊びの実現を可能にするようなものである、請求項3記載のタイヤ。
【請求項5】
前記柔軟性細線のループは、前記壁の材料中に部分的に埋め込まれ、その表面から突き出たコイル状細線(204)のターンの部分である、請求項3又は4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記雌型要素は、前記タイヤの前記壁の表面に形成され、前記第2の取付け具部分の雄型要素を受け入れるのに適した受け口である、請求項2記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1の部分の前記連結要素は、一端部が前記タイヤの前記壁内に植え込まれ、他端部が前記第2の取付け具部分の対応の連結要素を把持するのに適したヘッドを備える締結ピンである、請求項1記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1の部分の前記連結要素は、前記タイヤの前記壁の中に植え込まれた柔軟性細線であり、前記連結要素は、前記壁から前記タイヤキャビティ内に突き出ている、請求項1〜5及び請求項7のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項9】
取り付けられるべき前記物体は、前記第2の取付け具部分に固定され、前記第2の取付け具部分は、前記物体のための支持板と、前記支持板と一体に形成された連結要素とを含む、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記支持板は、前記物体と共に成形されている、請求項9記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第2の部分の前記連結要素は、前記支持板内に植え込まれた一端部及び前記第1の取付け具部分に属する対応の連結要素を把持するのに適したヘッドを備えた他端部を有する締結ピンである、請求項9又は10記載のタイヤ。
【請求項12】
タッチクローズ式取付け具を用いて機能物体を使用位置で取り付けることができる壁を有するタイヤの製造方法であって、前記タッチクローズ式取付け具が、前記壁に固定された第1の部分と、第2の部分とを有し、前記第2の部分が、前記2つの部分を互いに結合したときに、前記物体を前記壁の中に位置した状態に保つために連結要素によって前記第1の部分に機械的に結合するのに適している、方法において、前記タイヤのコンポーネントの未硬化状態の組み立ての際、未硬化状態のケーシングの表面に前記表面に対して少なくとも横方向寸法において付形されていて、成形面と接触するのに適したゴム内側ライナに取り付けられた細線を取り付け、その後、生のタイヤを硬化させ、この作業は、前記付形された細線が部分的に、前記ゴム内側ライナを貫通して細線要素が脱型後に、前記ゴム内側ライナの内面から突き出るようになっていると共に前記取付け具の前記第1の部分のための連結要素として働くのに適しているような性質のものである、方法。
【請求項13】
前記付形された細線は、前記壁の前記ゴム内側ライナの貫通後、前記壁の前記表面上に取付けループを形成する柔軟性ターンを有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記タイヤ壁の前記表面上に形成された前記ループは、前記第1の取付け具部分上の連結要素のためのフックを形成するよう切断される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記タッチクローズ式取付け具の第2の部分を製作するステップを有し、前記第2の部分は、前記第1の部分に当てられると、前記物体を固定するよう前記第1の部分に接合するのに適する連結要素を備えた支持材を有し、硬化可能な材料の層が、前記支持材を構成するマウントを形成するよう金型内に配置され、前記連結要素は、該連結要素が前記硬化可能な材料の層の表面から突き出るように植え込まれ、成形作業が、前記第2の部分を形成するよう実施される、請求項12〜14のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項16】
用いられる金型は、前記マウントのための成形キャビティを備えた金型本体を有し、前記キャビティの内面は、前記金型本体の内部における連結要素ピンの形成のための湾曲した又は拡大された端部を有する穴を備え、前記硬化可能な材料は、前記キャビティ内に流し込まれ又は射出され、前記成形材料は、湾曲した又は拡大されたヘッドを有する連結要素ピンを備えた前記第2の部分を生じさせるよう硬化される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
用いられる前記金型は、前記マウントのための成形キャビティを備えた金型本体を有し、前記キャビティの内面は、開口部を備え、締結ヘッドを備えた柔軟性連結要素ピンが、前記ヘッドを先ず最初に前記開口部内に挿入することにより各開口部内に配置され、前記硬化可能な材料は、前記キャビティ内に注ぎ込まれ又は射出され、前記成形材料は、雄型連結要素を備える可動部品を生じさせるよう硬化される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記物体は、前記金型内で前記マウントと共に成形される、請求項15〜17のうちいずれか一に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2010−534161(P2010−534161A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517383(P2010−517383)
【出願日】平成20年7月21日(2008.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059527
【国際公開番号】WO2009/013269
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】