説明

物体検知装置

【課題】 簡単な構成で二つの方向を同時に検知することが可能な物体検知装置を提供する。
【解決手段】 レーダ送受信部12から送信された電磁波Poutは、半透過板13で一部が透過されて透過波Ptとなり、残りが反射されて反射波Prとなる。透過波Ptまたは反射波Prが物体により反射されると、反射された電磁波は半透過板13を介してレーダ送受信部12で受信される。物体検知部11は、この受信した電磁波Pinと送信された電磁波Poutとに信号処理を行い、透過波Ptまたは反射波Prを反射した物体までの相対距離あるいは相対速度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体からの電磁波の反射を検出することで物体の検知を行う物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車載用の物体検知装置として使用されるレーダ装置は、車両の進行方向前方に存在する先行車の検知を目的としている。車両の進行方向前方だけでなく、車両の側方に存在する物体を検知する方法としては、上述のレーダ装置と車両の側方を監視するテレビジョンカメラとを組み合わせ、双方の検知結果を合わせて信号処理する方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−212800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の検知方法では、車両の進行方向前方および側方を同時に監視するために複数の検知手段(レーダ装置とテレビジョンカメラ)を設置する必要があり、構成が複雑になるという課題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で二つの方向を同時に検知することが可能な物体検知装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の物体検知装置は、電磁波を送信するとともに物体(例えば、実施の形態における先行車Q)により反射された該電磁波を受信する送受信手段(例えば、実施の形態におけるレーダ送受信部12)と、前記受信した電磁波に基づいて物体を検知する物体検知手段(例えば、実施の形態における物体検知部11)とを備えた物体検知装置において、前記送受信手段の電磁波の送信方向に設置され送信した電磁波の一部を透過するとともに残りの電磁波を反射する半透過手段(例えば、実施の形態における半透過板13)を備え、前記物体検知手段は、前記半透過手段を透過した電磁波および前記半透過手段により反射された電磁波に基づいて、電磁波透過方向及び電磁波反射方向に存在する物体を検知することを特徴とする物体検知装置である。
【0005】
上記構成の物体検知装置によれば、送信する電磁波を半透過手段による透過波と該半透過手段による反射波の2つの方向に分離することで、一つの物体検知手段によって2つの方向の何れかに存在する物体の検知が可能である。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1に記載の物体検知装置において、前記半透過手段により反射された電磁波の反射方向は前記送受信手段による電磁波の送信方向に対して所定の角度(例えば、実施の形態における角度θ2)となるよう設定されることを特徴としている。
【0007】
上記構成の物体検知装置によれば、電磁波の送信方向と電磁波の反射方向とのなす角度、すなわち電磁波の透過方向と反射方向とのなす角度を設定可能である。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1または請求項2に記載の物体検知装置において、前記半透過手段により反射された電磁波の反射方向は、前記送受信手段による電磁波の送信方向と前記半透過手段とにより形成される角度(例えば、実施の形態における角度θ1)により設定されることを特徴としている。
【0009】
上記構成の物体検知装置によれば、半透過手段の向きを変えることで電磁波の反射方向のみが変化する。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の物体検知装置において、前記物体検知装置は、検知された物体が電磁波透過方向または電磁波反射方向の何れに存在する物体であるか判定する検知方向判定手段をさらに備え、前記物体検知手段は検知方向判定手段の出力に基づいて電磁波透過方向または電磁波反射方向に存在する物体の位置を特定することを特徴としている。
【0011】
上記構成の物体検知装置によれば、検知された物体が電磁波の透過方向または反射方向の何れの方向に存在するかを判定可能である。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の物体検知装置において、前記物体検知装置は、検知領域が重なる複数の物体検知手段と、前記複数の物体検知手段により検知された物体が同一の物体であるか否か判定する物体判定手段(例えば、実施の形態における物体判定部20)とを備え、前記複数の物体検知手段の検知領域は、一方の物体検知手段により検知される電磁波透過方向の検知領域または電磁波反射方向の検知領域が他方の物体検知手段により検知される電磁波透過方向の検知領域または電磁波反射方向の検知領域の何れか一つと重なるように設定され、前記物体判定手段は、前記複数の物体検知手段により検知された物体の位置および相対速度に基づいて該物体が重なった検知領域に存在する同一の物体であるか否か判定することを特徴としている。
【0013】
上記構成の物体検知装置によれば、物体の検知領域が重なった複数の物体検知手段を用いることにより、双方の物体検知手段で検知された物体は重なった検知領域に存在する物体であると判断し、また片方の物体検知手段でのみ検知された物体は重なった領域ではない残りの検知方向に存在する物体であると判断することで、物体の存在する向きを判定可能である。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の物体検知装置において、前記物体検知手段は、前記送受信手段により送信される電磁波を走査することにより、前記半透過手段を透過した電磁波による物体の検知領域または前記半透過手段により反射された電磁波による物体の検知領域を走査することを特徴としている。
【0015】
上記構成の物体検知装置によれば、前記送受信手段により送信される電磁波を走査することで、電磁波の透過方向と反射方向とを同時に変えることが可能である。
【0016】
さらに、請求項7に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の物体検知装置において、前記半透過手段は回転軸(例えば、実施の形態における回転軸133)を中心にして回転可能に支持され、前記物体検知手段は前記半透過手段を回動することにより前記反射された電磁波を検知領域内で走査することを特徴としている。
【0017】
上記構成の物体検知装置によれば、半透過手段を回動可能に設置することにより、電磁波の透過方向を固定した状態で電磁波の反射方向のみを走査することが可能である。
【0018】
さらに、請求項8に記載の本発明の物体検知装置は、請求項5から請求項7の何れか1項に記載の物体検知装置において、前記物体検知装置は車両に搭載され、前記複数の物体検知手段の検知領域は車両進行方向にて重なることを特徴としている。
【0019】
上記構成の物体検知装置によれば、複数の物体検知手段を備える物体検知装置を車両に搭載し、複数の物体検知手段の検知範囲が車両進行方向で重なるように設定することで、請求項5に記載の物体検知装置と同様の方法で、物体が車両の進行方向に存在するのか車両の左右方向に存在するのかを判定可能である。
【0020】
さらに、請求項9に記載の本発明の物体検知装置は、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の物体検知装置において、前記物体検知装置は車両に搭載され、前記半透過手段の反射率または透過率は、電磁波透過方向の検知可能距離と電磁波反射方向の検知可能距離との比に基づいて設定されることを特徴としている。
【0021】
上記構成の物体検知装置によれば、半透過手段の反射特性あるいは透過特性を調整することで反射率または透過率を設定し、電磁波透過方向の検知可能距離と電磁波反射方向の検知可能距離との比を調整することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の本発明の物体検知装置によれば、送信する電磁波を半透過手段による透過波と該半透過手段による反射波の2つの方向に分離することで、一つの物体検知手段によって2つの方向の何れかに存在する物体の検知が可能であり、複雑な構成を用いることなく異なる2つの方向を検知することができる。
【0023】
さらに、請求項2に記載の本発明の物体検知装置によれば、電磁波の送信方向と電磁波の反射方向との角度、すなわち電磁波の透過方向と反射方向との角度を設定可能であり、物体検知を行う必要性の高い領域を集中的に検知するように電磁波の透過方向と反射方向とを効果的に設定できる。
【0024】
さらに、請求項3に記載の本発明の物体検知装置によれば、半透過手段の向きを変えることで電磁波の反射方向のみが変化するため、電磁波の反射方向を容易に調整することができる。
【0025】
さらに、請求項4に記載の本発明の物体検知装置によれば、検知された物体が電磁波の透過方向または反射方向の何れの方向に存在するかを判定可能であり、物体の存在する位置を正確に特定することができる。
【0026】
さらに、請求項5に記載の本発明の物体検知装置によれば、物体の検知領域が重なった複数の物体検知手段を用いることにより、双方の物体検知手段で検知された物体は重なった検知領域に存在する物体であると判断し、また片方の物体検知手段でのみ検知された物体は重なった領域ではない残りの検知方向に存在する物体であると判断することで、物体の存在する向きを判定可能であり、物体の存在する位置を正確に特定することができる。
【0027】
さらに、請求項6に記載の本発明の物体検知装置によれば、前記送受信手段により送信される電磁波を走査することで、電磁波の透過方向と反射方向とを同時に変えることが可能であり、半透過板を透過した電磁波による物体の検知領域と半透過板で反射した電磁波による物体の検知領域の双方に対して同時に走査を行うことができる。
【0028】
さらに、請求項7に記載の本発明の物体検知装置によれば、半透過手段を回動可能に設置することにより、電磁波の透過方向を固定した状態で電磁波の反射方向のみを走査することが可能であり、半透過板で反射した電磁波による物体の検知領域のみを走査することができる。
【0029】
さらに、請求項8に記載の本発明の物体検知装置によれば、複数の物体検知手段を備える物体検知装置を車両に搭載し、複数の物体検知手段の検知範囲が車両進行方向で重なるように設定することで、請求項5に記載の物体検知装置と同様の方法で、物体が車両の進行方向に存在するのか車両の左右方向に存在するのかを判定可能であり、物体の存在する位置を正確に特定することができる。
【0030】
さらに、請求項9に記載の本発明の物体検知装置によれば、半透過手段の反射特性あるいは透過特性を調整することで反射率または透過率を設定し、電磁波透過方向の検知可能距離と電磁波反射方向の検知可能距離との比を調整することが可能であり、送信する電磁波のパワーを必要とされる検知範囲に応じて有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る物体検知装置について添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るレーダ装置(物体検知装置)の構成を示したブロック図である。図1において、レーダ送受信部12から送信された電磁波Poutは、半透過板13で一部が透過されて透過波Ptとなり、残りが反射されて反射波Prとなる。
【0032】
透過波Ptまたは反射波Prが物体により反射されると、反射された電磁波は半透過板13を介してレーダ送受信部12で受信される。物体検知部11は、この受信した電磁波Pinと送信された電磁波Poutとに信号処理を行い、透過波Ptまたは反射波Prを反射した物体までの相対距離および相対速度を算出する。
【0033】
物体検知部11では、透過波Ptの方向と反射波Prの方向の何れかに存在する物体を検知することが可能である。なお、透過波Ptの方向にある物体か、反射波Prの方向にある物体かを判別する方法に関しては後述する。
【0034】
半透過板13は、樹脂を材料とする指示部材131と、指示部材131の表面上に蒸着される金属蒸着膜132とで構成される。半透過板13へと入射される電磁波Poutが金属蒸着膜132で一部が透過される際、金属蒸着膜の膜厚に応じて透過波Ptのパワーに損失が生じる。
【0035】
また、半透過板13は、電磁波Poutの入射方向に対して所定の角度θ1だけ傾いており、この角度θ1を適切な値に設定することにより、電磁波Poutと反射波Prとの角度を調整できる。これにより、物体検知を行う必要性の高い領域を反射波Prで検知するように設定することが可能である。例えば、レーダ装置1を車両に搭載する際には、物体検知を行う必要性の高い車両前方と車両側方とを透過波Ptと反射波Prとで検知するように角度θ1を設定することができる。
【0036】
図2は、金属蒸着膜の膜厚と透過波Ptの透過損失との関係を示したグラフであり、金属蒸着膜の膜厚を厚くするほど、透過損失が大きくなる。すなわち、透過波Ptと反射波Prとのパワーの比を所定の比率αのレーダ装置を設定する場合には、金属蒸着膜の膜厚により透過損失を調整することで上記所定の比率を実現することが可能である。
【0037】
次に、図3および図4を参照し、レーダ装置1から送信する電磁波の走査方法について説明する。図3に示すように、レーダ送受信部12から送信する電磁波Poutの方向を変化させることにより、電磁波Poutと反射波Prとのなす角度θ2が変化する。この方法で走査を行う場合は、透過波Ptおよび反射波Prの方向を同時に変化させることが可能である。
【0038】
なお、電磁波Poutと反射波Prとのなす角度θ2を変えることで、透過波Ptと反射波Prとのなす角度、すなわち物体検知を行う2つの方向のなす角度が変わることになる。このため、物体検知を行う必要性の高い2つの領域間のなす角度に応じて、角度θ2を設定することが可能である。
【0039】
一方、図4に示すように、半透過板13に回転軸133を設け、回転軸133を中心に半透過板13を回転させることにより走査を行う場合は、透過波Ptの方向は変化させずに反射波Prの方向だけを変化させることが可能である。
【0040】
このため、検知精度を高くするために走査する必要のある領域に対しては反射波Prで検知し、検知精度が要求されず走査する必要のない領域に対しては透過波Ptで検知することができる。例えばレーダ装置1を車両に搭載した場合には、検知精度を必要とする車両進行方向の領域を反射波Prの検知エリアとし、検知精度を必要としない車両側方方向の領域を透過波Ptの検知エリアとする。
【0041】
なお、半透過板13を回転させる方法では、反射波Prの方向だけが変化することを利用し、半透過板13の回転動作時に物体検知部11での検知結果が変化する場合は反射波Prの方向に存在する物体であると判断し、変化しない場合は透過波Ptの方向に存在する物体であると判断する(請求項4に記載の検知方向判定手段)ことが可能である。
【0042】
本発明の実施形態に係る図1のレーダ装置は、従来のレーダ装置に半透過板13を追加することで実現可能であり、簡単な構成で異なる2つの方向を検知することができる。
【0043】
続いて、図1のレーダ装置1を車両に2台搭載し、物体検知を行う方法に関して説明する。図5はレーダ装置を2台搭載した物体検知装置(請求項5に記載の物体検知装置)の構成を示すブロック図であり、図6は2台のレーダ装置1a、1bの搭載位置の一例を示す図である。
【0044】
図5において、レーダ装置1aは車両の前方および右側側方を検知し、レーダ装置1bは車両の前方および左側側方を検知する。さらに、レーダ装置1a、1bの前方方向の検知範囲は、その一部が重なるようにする。なお、レーダ装置1a、1bの構成は図1と同じであり、詳細の説明は省略する。物体判定部20は、物体検知部11a、11bの検知結果を入力し、電磁波を反射した物体が車両の前方あるいは車両の側方の何れに存在するかを判定するものである(判定方法の詳細は後述する)。
【0045】
レーダ装置1a、1bは前述の通り、車両前方および車両側方が検知範囲となるように半透過板13の向きを予め設定するが、半透過板13の配置によって、図7(a)に示すように、車両前方を反射波Prで検出し車両側方を透過波Ptで検出する方法(以下、方法1と呼ぶ)と、図7(b)に示すように、車両前方を透過波Ptで検出し車両側方を反射波Prで検出する方法(以下、方法2と呼ぶ)とが考えられる。
【0046】
レーダ装置1a、1bに上記の方法1、2のどちらを採用するかは任意である。すなわち、レーダ装置1a、1bともに方法1を用いる場合と、レーダ装置1aに方法1を、レーダ装置1bに方法2を用いる場合と、レーダ装置1aに方法2を、レーダ装置1bに方法1を用いる場合と、レーダ装置1a、1bともに方法2を用いる場合の何れでも可能である。以下では、レーダ装置1a、1bともに方法1を用いる場合を例に挙げて説明する。
【0047】
図8は、レーダ装置1a、1bの検知範囲を示したものであり、検知範囲Aはレーダ装置1aの反射波Prによる検知範囲である。検知範囲Bはレーダ装置1bの反射波Prによる検知範囲であり、検知範囲Cは検知範囲Aと検知範囲Bとがオーバラップする領域である。すなわち、検知範囲C内の物体はレーダ装置1a、1bの双方で検出される。検知範囲Sは、レーダ装置1bの透過波Ptによる検知範囲である。レーダ1aの透過波Ptは車両Pの右側を検知範囲(図示せず)とする。
【0048】
一般的に、電磁波の反射を利用して検知する場合には、電磁波による最大検知距離の4乗が電磁波のパワーに比例することが知られている。例えば、レーダ装置1bにおいて、検知範囲Bにおける前方方向の最大検知距離をLb、検知範囲Sにおける側方方向の最大検知距離をLsとおくと、前方方向に送信する電磁波(反射波Pr)のパワーEbと側方方向に送信する電磁波(透過波Pt)のパワーEsのパワー比R=Eb/Esは、
R=β・Lb/Ls (βは比例定数)
で表される。
【0049】
図2を参照して上述したとおり、レーダ装置1bは金属蒸着膜132の膜厚を変えることで透過波PtのパワーEs、すなわちパワー比Rを変化させることが可能である。したがって、金属蒸着膜132の膜厚を適切な値にすることで、レーダ装置1bの検知結果を使用するシステムで要求される最大検知距離に合わせることができる。
【0050】
このように、本実施形態の物体検知装置は、システムに合わせて反射波Prと透過波Ptとのパワー比Rを設定することが可能であるため、当該システムで不要となる領域を検知しないようにフィルタリングすることができ、また、送信する電磁波のパワーを有効に利用することができる。
【0051】
図8に戻って、レーダ装置1a、1bにより車両の前方(検知範囲A、B)と同時に車両の側方(検知範囲S)を検知することができ、前方の先行車Qが物体検知部11aおよび物体検知部11bで、側方の車両Rが物体検知部11bで検知される。
【0052】
このとき、レーダ装置1aから先行車Qまでの距離をd1、レーダ装置1bから先行車Qまでの距離をd2、レーダ装置1bから車両Rまでの距離をd3とおくと、物体検知部11aは距離d1のところに電磁波を反射した物体があることを検知し、物体検知部11bは距離d2および距離d3のところに計2つの物体があることを検知する。
【0053】
続いて、物体検知部11a、11bの検知結果に基づいて、物体判定部20で電磁波を反射した物体が先行車Q、車両Rの何れかを判定する方法を説明する。
まず初めに、物体検知部11a、11bの検知結果のデータから前方の検知範囲(検知範囲A、B)内の領域であり、かつオーバラップする領域(検知範囲C)の範囲外であるデータを削除する。
【0054】
本実施形態では、レーダ装置1a、1bの検知範囲をオーバラップさせ、そのオーバラップした領域(検知範囲C)を先行車Qの検知範囲とするため、前方の検知範囲内であっても検知範囲Cの範囲外の物体に関しては検知対象とはしない。
【0055】
続いて、物体検知部11a、11bの双方で検知されており、検知範囲C内の物体であると想定されるデータに対して、物体検知部11a、11bの双方で検出した該物体の位置(あるいは自車両Pとの相対速度等)を比較する。物体検知部11a、11bの双方で検出した位置(すなわち、距離d1と距離d2)が一致した場合は、前方の物体(すなわち、先行車Q)であると判定する。このとき、双方で検出した相対速度も同時に比較し、位置と相対速度がともに一致したときに前方の物体であると判定してもよい。
【0056】
先行車Qが判定された後に、その先行車Qに関する検知結果のデータを削除する。この時点で、前方の検知範囲A、B内の物体に起因するデータは全て削除され、残ったデータは側方の検知範囲のデータとなる。例えば、物体検知部11bで検知されたデータが残っていれば、検知範囲S内の物体(すなわち、車両R)のデータであると判定する。
【0057】
本実施形態では、2台のレーダ装置により車両の前方および左右両方向を検知することが可能であり、さらに、2台のレーダ装置の前方検知範囲を重ねることで車両の検知方向を特定することが可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電磁波の反射を検出することで物体の検知を行う物体検知装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態にかかるレーダ装置の構成を示す構成図である。
【図2】図1の金属蒸着膜132の膜厚と金属蒸着膜132における透過光Ptの透過損失との関係を示すグラフである。
【図3】図1のレーダ装置1において、レーダ送受信部12から送信する電磁波の方向を変えることにより走査する方法を示した図である。
【図4】図1のレーダ装置1において、半透過板13の方向を変えることにより走査する方法を示す図である。
【図5】2台のレーダ装置を搭載した物体検知装置の構成を示す構成図である。
【図6】2台のレーダ装置1a、1bを車両に搭載したときの搭載位置を示すイメージ図である。
【図7】図1の半透過板13と電磁波の入射方向の関係を示す図である。
【図8】図7のレーダ装置1a、1bによる検知範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 … レーダ装置(物体検知装置)
11 … 物体検知部(物体検知手段)
12 … レーダ送受信部(送受信手段)
13 … 半透過板(半透過手段)
20 … 物体判定部(物体判定手段)
131 … 指示部材
132 … 金属蒸着膜
133 … 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信するとともに物体により反射された該電磁波を受信する送受信手段と、
前記受信した電磁波に基づいて物体を検知する物体検知手段と
を備えた物体検知装置において、
前記送受信手段の電磁波の送信方向に設置され送信した電磁波の一部を透過するとともに残りの電磁波を反射する半透過手段を備え、
前記物体検知手段は、
前記半透過手段を透過した電磁波および前記半透過手段により反射された電磁波に基づいて、
電磁波透過方向及び電磁波反射方向に存在する物体を検知することを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記半透過手段により反射された電磁波の反射方向は前記送受信手段による電磁波の送信方向に対して所定の角度となるよう設定されることを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記半透過手段により反射された電磁波の反射方向は、
前記送受信手段による電磁波の送信方向と前記半透過手段とにより形成される角度により設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記物体検知装置は、検知された物体が電磁波透過方向または電磁波反射方向の何れに存在する物体であるか判定する検知方向判定手段をさらに備え、
前記物体検知手段は検知方向判定手段の出力に基づいて電磁波透過方向または電磁波反射方向に存在する物体の位置を特定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記物体検知装置は、
検知領域が重なる複数の物体検知手段と、
前記複数の物体検知手段により検知された物体が同一の物体であるか否か判定する物体判定手段とを備え、
前記複数の物体検知手段の検知領域は、
一方の物体検知手段により検知される電磁波透過方向の検知領域または電磁波反射方向の検知領域が
他方の物体検知手段により検知される電磁波透過方向の検知領域または電磁波反射方向の検知領域の何れか一つと重なるように設定され、
前記物体判定手段は、
前記複数の物体検知手段により検知された物体の位置および相対速度に基づいて該物体が重なった検知領域に存在する同一の物体であるか否か判定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記物体検知手段は、
前記送受信手段により送信される電磁波を走査することにより、
前記半透過手段を透過した電磁波による物体の検知領域または前記半透過手段により反射された電磁波による物体の検知領域を走査することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記半透過手段は回転軸を中心にして回転可能に支持され、
前記物体検知手段は前記半透過手段を回動することにより前記反射された電磁波を検知領域内で走査することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記物体検知装置は車両に搭載され、
前記複数の物体検知手段の検知領域は車両進行方向にて重なることを特徴とする請求項5から請求項7の何れか1項に記載の物体検知装置。
【請求項9】
前記物体検知装置は車両に搭載され、
前記半透過手段の反射率または透過率は、電磁波透過方向の検知可能距離と電磁波反射方向の検知可能距離との比に基づいて設定されることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の物体検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−57406(P2007−57406A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243667(P2005−243667)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】