説明

物体測定システム及びその方法

【課題】レーザセンサを用いて、測定領域内に存在する物体の測距データを取得し、物体の移動に関する推量をして物体の3次元立体形状を表示する。
【解決手段】アクチュエータ等の駆動手段にレーザセンサを固定し、測定領域を所定の振れ角θにてレーザ光を照射し、得られた測距データに基づいて物体の立体形状を算出してDBに記憶する。
対象物体に固有IDを付与し、測距データ(時間、駆動手段の移動方向、距離データ等)をDBに記憶し、固有IDに紐付けられた物体の存在位置と、DBの対象物体のID毎の時間と駆動手段の移動方向を照合して、物体の移動に関する推量から物体の立体形状を作成して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体測定システム及びその方法に係り、特に、レーザセンサを固定したアクチュエータ等の駆動手段を所定方向に駆動しながらレーザセンサを所定の範囲で走査することで、領域内の物体を三次元的に検知し、物体の存在位置や物体の移動方向を推量する物体の測定システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザセンサを用いて物体を三次元的に検知し、その物体の形状や位置を測定する、測距技術が実用化されている。例えば、特許文献1には、物体の形状を測定する技術として、地面と平行な方向と、測定領域内を斜め方向のレーザセンサの測距データに基づいて物体の三次元形状を測定する技術が開示されている。この技術は、斜め方向の測定では物体の移動に伴って得られたデータを用いて物体の形状を算出し、地面と平行な方向の測定では物体の位置および速度を算出し、時間経過に伴う物体の形状に関するデータを用いて物体の表面形状を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−186375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、特許文献1には、物体の移動に伴って得られたデータから算出される物体の形状と、物体の位置および速度を以て物体の三次元形状や表面形状を表示する旨は記載されているが、経時的に物体が三次元形状を以て移動する様子、いわゆる軌跡に関する技術までは言及していない。
【0005】
本発明の目的は、レーザセンサを固定した駆動手段を所定の振れ角θで駆動しながらレーザセンサよりレーザ照射して、測定領域内に存在する物体の三次元形状データを容易に取得することにある。より具体的には、本発明は、検知された物体の位置情報に基づいて、物体が移動する存在位置をそれまでの測距における物体の移動する方向を推量することができる物体測定システム及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による物体測定システムは、好ましくは、レーザセンサを用いて測定領域内に存在する物体を測定する物体測定システムであって、
レーザセンサを固定した駆動手段を所定の振れ角θを以て移動させながらレーザセンサからレーザ光を照射して測定領域内の物体の存在位置、時間データ、駆動手段の移動方向データ、立体形状に関するデータを含む測距データを取得するデータ取得部と、データ取得部の測距データから物体を検知する物体検知部と、検知された測距データから物体の三次元形状を算出する立体形状算出手段と、該立体形状算出手段によって算出された物体の三次元形状のデータを記憶する記憶手段と、該物体検知部により検知された物体について該記憶手段を参照して該物体の三次元形状を照合して同じ物体であるかを判断し、同じ物体の場合該物体の固有IDに対応つけて該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶し、該判断の結果同じの物体でない場合には新たな固有IDを該物体に付与して、該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶する処理を行う処理手段と、該処理手段により処理された物体の三次元形状データから、該物体検知部で取得された物体の存在位置にて物体の立体形状を作成して表示する表示部と、有することを特徴とする物体測定システムとして構成される。
【0007】
本発明による物体測定方法は、好ましくは、レーザセンサを用いて測定領域内に存在する物体を測定する物体測定方法であって、レーザセンサを固定した駆動手段を所定の振れ角θを以て移動させながらレーザセンサからレーザ光を照射して測定領域内の物体の存在位置、時間データ、駆動手段の移動方向データ、立体形状に関するデータを含む測距データを取得するステップと、取得された測距データから物体を検知するステップと、検知された測距データから物体の三次元形状を算出する立体形状算出ステップと、該立体形状算出ステップによって算出された物体の三次元形状のデータを記憶手段に記憶するステップと、該物体ステップにより検知された物体について該記憶手段を参照して該物体の三次元形状を照合して同じ物体であるかを判断し、同じ物体の場合該物体の固有IDに対応つけて該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶し、該判断の結果同じの物体でない場合には新たな固有IDを該物体に付与して、該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶する処理を行う処理ステップと、該処理ステップにより処理された物体の三次元形状データから、該物体検知ステップで検知された物体の存在位置にて物体の立体形状を作成して表示手段に表示するステップと、有することを特徴とする物体測定方法として構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動手段によりレーザセンサを所定の振れ角θで移動させながらレーザセンサよりレーザ光を照射して測定領域内に存在する物体の情報を取得し、検知された物体の測距データ、駆動手段の移動方向データ、測距して取得した物体の立体形状に関する情報を用いて物体が移動する方向を推量して、その物体の三次元の立体形状を算出して表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施例における物体測定システムの構成例を示す図。
【図2】駆動手段が振り角θで駆動する場合のレーザセンサの測距を示す図。
【図3】測定領域における駆動手段の分解能とレーザセンサの照射分解能を説明する図。
【図4】他の例による3次元形状データの取得動作を示す図。
【図5】測距した物体の存在位置を記憶する測距データDBの構成例を示す図。
【図6】固有IDを付与した物体の三次元形状データを記憶する三次元物体形状データDBの構成例を示す図。
【図7】物体検知における三次元立体形状の算出処理を示すフローチャート。
【図8】レーザセンサによる測定領域の人物の三次元立体形状データ取得を示す図。
【図9】人の移動に際してレーザセンサが得られる三次元形状データの取得例を示す図。
【図10】測定領域での駆動手段の振出し方向による検知条件の違いを示す図。
【図11】駆動手段の振出し方向による検知の特徴点を概念的に示した図。
【図12】固有IDの確認から測距データ保存に関する処理動作を示すフローチャート。
【図13】物体の移動方向の推量に関する処理動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施例における物体測定システムの構成例を示す。
物体測定システムは、レーザ光を発するレーザセンサ1、レーザセンサ1を固定したモータやアクチュエータ等の駆動手段2、駆動手段2及びレーザセンサ1を制御すると共にレーザセンサ1から取得されたデータを処理するパーソナルコンピュータ(PC)3を有して構成される。PC3はよく知られているように、処理装置(CPU)31、データベース(DB)32を保持する記憶装置、表示装置33、入力装置34を有する。
【0011】
駆動手段2は、測定領域xにおいて共通座標系w(0,0,0)を基点とし、x軸(xw)、y軸(yw)、z軸(zw)の座標(xa,ya,za)に取り付けられ、振り角θの範囲を、連続的に0.36°刻みに一方向(例えばz軸を回転させる方向)に移動し、振り角の+θ(最大)から−θ(最小)の範囲を繰り返し移動する。
レーザセンサ1は駆動手段2に固定された状態で、0.25°毎にレーザ光を照射して、受信したデータ(測距データ)を経時的にPC3へ送る。
【0012】
DB32は測距データ、駆動手段2の移動方向データや物体の立体形状に関連する情報、及び時間データを記憶する。より詳しく言えば、DB32には、測距(立体形状を含む)データDB321(図5)、データDB323,324(図6)が格納される。
CPU31は、レーザセンサ1及び駆動手段2にレーザ制御信号5及び駆動制御信号6を送ってこれらを制御する。また、レーザセンサ1から経時的に取得した測距データ7を用いて測定領域内に存在する物体の存在位置を算出し、更に先に記憶した立体形状に関連する情報に基づいて、算出された領域内の物体の立体形状を計算し、物体が検知された位置及びその物体が移動する予想位置に、計算した物体の立体形状の図形を表示装置33に表示するように制御する。
【0013】
図2は、駆動手段が振り角θで駆動する場合のレーザセンサの測距の様子を示す。
(A)は、駆動手段2に固定されたレーザセンサ1が、測距の最初に人物202を検知し、その人物202に固有ID(0001)を付与し、その人物の立体形状を取得する様子を示している。
(B)は、測定領域内を駆動手段2が振り角θ内でレーザセンサ1を駆動しながらレーザ光を照射する場合、人体202の当初の存在位置の検知からレーザ光の照射が一時外れた様子を示している。
(C)は、振り角θ内に居る別の人物203の存在位置の検知し、その人物203に固有ID(0002)を付与し、その人物の立体形状を取得する様子を示している。
これにより、人物202及び別の人物203の存在を検知する度に、新たな固有IDを付与して、その検知物体を個別に経時的に認識しながらその物体形状データを取得し、測定領域内を移動する物体の存在位置を検知する度に、その位置で準じ物体形状である立体形状の像を算出して表示することができる。
【0014】
図3は、測定領域における駆動手段の分解能とレーザセンサの照射分解能を示す。
例えば、上方向から測定領域における人の動きを測定する場合、物体の大きさとして人の頭部(直径サイズ)を測定対象物体のサイズとして設定し、そこから駆動手段2による振り角θと、駆動手段2に固定したレーザセンサ1のセンサ高h位置を導き出すことができる。
【0015】
(A)は、駆動手段2に固定したレーザセンサ1を高hの位置に設置し、水平を0°として駆動手段2を振り角θで動作させるに際し、エリア半径rを以て、照射長taのレーザ光が照射されることを示している。図の分解能306毎の測距距離α(cm)は、測定領域におけるレーザセンサ1のレーザ光の最短照射位置を、分解能307毎の測距距離β(cm)は、同最長照射位置を示している。
【0016】
[計算例1]
例えば、駆動手段の振り角θ=100(°)、センサの動作周波数f=40(Hz)、照射時間t=2(秒)、センサ高h=4(m)とした場合の、エリア半径r(cm)、振幅の分解能Δθ(°)、近端の分解能306毎の測距距離α(cm)、遠端の分解能307毎の測距距離β(cm)について算出する。まず、エリア半径r(cm)を求めると、
r= tan(θ/2)×h ・・・(1)
式(1)よりエリア半径r≒475(cm)となり、測定領域312は、エリア半径rの2倍相当から、測定領域312≒950(cm)となる。
【0017】
次に、センサの動作周波数fを用いてセンサの分解能Δθ(°)を求めると、
Δθ= θ/{f×(t/2)} ・・・(2)
式(2)より振り幅の分解能Δθ≒2.5(°)となる。
【0018】
次に、分解能306毎の測距距離α(cm)を求めると、
α= tanΔθ ×h ・・・(3)
式(3)より測距距離α≒17.5(cm)となる。さらに、分解能307毎の測距距離β(cm)を求めると、
β=r − tan(θ/2−Δθ)×h ・・・(4)
式(4)より測距距離β≒40.5(cm)となる。以上の様に、センサ高h=4(m)に設置の場合、測定領域312≒9.5(m)、近端の分解能306毎の測定距離α≒17.5(cm)、遠端の分解能307毎の測定距離β≒40.5(cm)として、設定に対する測距環境への目安値を算出することができる。
【0019】
(B)は、計算例1と同条件での測定距離d(m)に対するレーザセンサ1の0.25°毎の分解能305の測距距離γ(cm)との関係について示している。
図中の分解能305毎の測距距離γは、レーザ光の最長照射位置での分解能(0.25°)分の測定距離を示している。実際のレーザ光の照射としては、斜線部に示される照射距離tb(振幅角度308が含まれる)までが照射範囲となることから、図中(斜線部分)の照射分解能に示される部分を超えた広範囲の位置に存在する物体も測距、及び検知が可能となる。
【0020】
[演算例2]
例えば、センサ高h=4(m)、測定距離d≒14(m)とした場合の、分解能305毎の測距距離γ(cm)について求めると、
センサ高h位置を点A、点Aから照査面に垂直方向に下ろした位置を点C、点Cから照射長tbまでの距離dを点Bとし、点ABCで構成される直角三角形の辺AB、BC、CAとして、辺ABの最長照射位置における照射長tbを三平方の定理により求め、そこから∠Aにおけるレーザ光の最長照射位置から分解能(0.25°)分ずれた照射位置における照射長から測距距離γ(cm)を求めると、測距距離γ≒20(cm)となる。
【0021】
求められた測距距離γは、レーザセンサにより一つの物体として検知するための目安値であり、本実施例では測定物体の対象サイズを人の頭部である約20(cm)に設定して測定することができることを意味する。
以上の様に、センサ高h=4(m)に設置の場合、測距距離γ≒20(cm)と、センサを中心とする測定距離d×2倍相当、測定範囲313≒28(m)が算出される。
【0022】
図5は、測距した物体の存在位置を記憶する測距データDB321の構成例を示す。
駆動手段2が角Δθごとに駆動される時に、レーザセンサ1を走査して得られた、レーザセンサ角度θ1〜θ6ごとの測距データ(cm)をそれぞれ記憶する。
【0023】
図6は、物体存在位置データDB323の構成例を示す。
検知された物体ごとに固有のIDを付与し、その固有IDごとに立体形状を示す三次元データ、距離、物体を検知した時間、及び駆動手段2の移動方向(角度データ)を記憶する。
【0024】
[三次元立体形状の計算処理]
次に、図7を参照して、物体検知における三次元立体形状の算出処理について説明する。
この例は、駆動手段2に固定された1つのレーザセンサによって物体を検知し、その物体の三次元形状を算出する例である。レーザセンサ1は測定領域の上部より、駆動手段2の振り角θの領域を測距することで、物体の三次元立体形状データを取得するものとする(上述の図3、計算例1及び2参照)。
【0025】
まず、初期化処理で、駆動手段2の振り角の設定、レーザセンサ1の高さ位置の設定、ここから算出される駆動手段2側の算出値として、近遠端の分解能毎の測定距離α、β、及び測定領域が、レーザセンサ1側の算出値として、測定距離γの各種設定を行う(S701)。
【0026】
次に、測距データ受信処理では、監視時間の経過後も、経時的に得られる測距データのレベルについて、認識可能レベルまでのレーザ光が反射されているかを判断し、認識可能レベルの場合は、測距データから物体の形状を、連続する点の集まりの座標値をポイントデータとして測距データDB321に順次記憶する。この場合のポイントデータは、(角度、距離)データから直行座標系データに変換されたものであり、背景データと差分を減じた、レーザセンサで検出された物体データである(S702)。なお、測定領域内を移動する物体を検知する場合、予め測定領域における背景データを取得しておき、その後に検知した測定領域のデータから背景データを差分処理して物体データを算出する処理すればよく、この技術については、前記した特許文献1に記載されている。
【0027】
クラスタ検出では、この測距データから物体の形状を連続する座標値をポイントデータとし、周辺ポイントデータをクラスタと呼ぶ纏まりとして把握する(S703)。
三次元立体物体検知では、クラスタデータから測定領域に存在する物体検知に際して、三次元立体形状データの取得できる物体を対象とする。対象物体が検知されない場合は、測距データ受信処理(S702)へ遷移し、クラスタ検出(S703)を繰り返す(S704)。三次元立体物体が検知された場合は、物体の立体形状の算出する(S705)。
【0028】
物体の三次元立体形状が算出された後、当該物体について固有IDの存否の確認処理へ移る(S706)。物体の検知では、固有IDの有無を確認して、同一物体であるか否かを確認する。その結果、既存の固有IDの確認が出来ない場合は、新たに固有IDの付与する(S707)。なお、この処理については、図12を参照して詳述する。
【0029】
固有IDが確認できた場合(S706)、三次元物体立体形状データDB323,324からの読み出された三次元立体物体データを用いて、物体の存在位置や物体の移動に関する推量をする処理を行う(S710)。既存の固有IDが確認され、その物体の移動に関する推量ができた場合、先に記憶された三次元立体物体データを三次元物体立体形状データDB323から読み出す(S711)。この処理については、図13を参照して詳述する。
【0030】
次に、三次元立体物体形状を算出して、固有IDを確認しかつ付与された三次元立体形状データについて、データ更新して、三次元物体立体形状データDB323に保存する(S708)。
三次元物体立体形状データDB323からの読み出された三次元立体物体データについて、推量された物体の存在位置、又は物体の移動位置に三次元立体物体データである物体形状を表示装置33に表示する(S709)。
最後に、検知終了を判断し、測定領域における三次元立体形状の測定を継続する場合は、測距データ受信処理へ移り(S702)、それ以外のとき測定を終了する(S712)。
【0031】
次に、図12を参照して、固有IDの確認から測距データ保存に関する処理動作について説明をする。
固有IDと測距データに関する処理(図7の処理S720)は、固有IDの有無及び新規の固有ID付与の判断の処理であり、固有ID毎に測距した時刻及び存在位置データを記憶するDB323を用いて行われる。
この処理(S1200)は、3次元立体物体が検知された場合は、物体の立体形状の算出(S705)より開始される。即ち、DB323に格納されている固有ID毎の時間データと距離データを照合して、固有IDの有無を検索し、登録の固有IDの一致/不一致を判断して、それぞれの場合において、固有IDに対応した測距データを保存までの処理をする。以下、詳述する。
【0032】
物体の測距において当該物体は既に3次元形状データ(3次元データ、距離データ、時間データ、駆動手段2の移動方向データ)を有している。それらのデータの内、当該物体の時間データと距離データについて、DB323に格納されている。
固有IDに紐付けされた3次元データ、距離データ、時間データ、駆動手段2の移動方向データの内から、固有ID毎の時間データと距離データを照合する。この照合の結果、時間データと距離データが一致した場合(レーザセンサの例えば4cm程度の誤差を含んだ、一定の誤差の範囲で一致した場合を含む)、検知対象の物体が同一の物体と認識する(S1201)。
【0033】
そして、検知対象の物体が特定された以降に、固有IDの一致について確認する。固有IDが一致した場合は、次のステップS1203に遷移し、不一致の場合は、(新規)固有IDを付与するステップ(S1204)に遷移する(S1202)。即ち、固有IDが一致した場合は、該当する固有IDの対応する場所に測距データを追加保存する(S1203)。一方、固有IDが不一致の場合は、当該物体に新規の固有IDを付与(S1204)して、経時的に取得される測距データの内、新規IDに対応した測距データを保存する(S1205)。
【0034】
以上の固有IDの場所に測距データを追加保存するステップ(S1203)、及び新規IDに対応した測距データを保存するステップ(S1205)を経て、当該物体の固有IDに対応して算出された3次元データ、距離データ、時間データ、駆動手段の移動方向データがDB323に保存される(S708)。
【0035】
次に、図13を参照して、物体の移動に関する推量処理について説明する。
物体の移動に関する推量(図7の処理S710)は、物体の存在位置と移動方向を以て、物体の移動に関する推量から立体形状を表示するため、固有ID毎の測距データ(時間、距離、駆動手段の移動方向)を記憶するDB323を用いて行う。
まず、DB323に格納された、固有IDに対応して測距データ(時間、距離、駆動手段の移動方向)の内、固有ID毎の時間における距離データ、駆動手段の移動方向データを照合する(S1301)。
【0036】
次に、物体の移動に関する推量処理において、固有ID毎の測距時間に対する駆動手段の移動方向データから物体の移動に関する推量をする。例えば、物体の移動した方向(傾き)をθとした場合の推量としては、右方向への移動は−90θ、左方向への移動は+90θ、上方向、前方向(若しくは引き返し)への移動は±0θ、下方向、後方向(若しくは引き返し)への移動は−180θ、として、物体の移動に関する推量をするものである。
又、障害物による死角の発生により、測距データが途切れる可能性が考えられるので、物体の移動に関する推量が出来ない場合は、物体検出を経時的に監視するステップ(S1304)へ遷移して、これを繰り返す。
【0037】
物体の移動に関する推量が可能な場合は、当該物体におけるDB323を読み出すステップ(S1303)へ遷移する(S1302)。
本ステップ(S1302)にて物体の移動に関する推量が可能な場合は、当該物体における3次元の測距(立体形状を含む)データDB321より、当該物体の3次元立体形状データを読み出す(S1303)。
本ステップ(S1303)にて測距において障害物などにより死角となる場合、測距データが途切れ、物体の移動に関する推量が不可能な場合は、物体の検出を経時的に監視して、継続的に物体が検出される場合は、本推量処理の当初のステップ(S1301)へ遷移し、継続的に物体が検出されない場合は、本推量処理を終了する(S1304)。
【0038】
本発明における測定の物体検知手法として、駆動手段2の振り(スイング)速度t、振り角θ、駆動手段を固定したセンサ高hなどの諸条件を鑑みることで、物体の大きさや、物体の移動の速さなどに対応した設定をすることが可能である。
例えば、前述の例において、小さな物体[20(cm)以下の]検知は、駆動手段2の振り速度tを[往復2(秒)以上に]遅くする。早く[1(m/s)以上で]移動する物体検知では、駆動手段2の振り速度tを[往復2(秒)以下に]早くし、振り角θを[100(°)以下の]鋭角に絞ることで、物体の大きさや、物体の移動の速さなどへ対応した物体検知への測定をすることができる。
【0039】
図8は、レーザセンサによる測定領域の人物の三次元立体形状データ取得を示す。
この例は、レーザセンサによる測定領域の人物の立体表面形状に関する複数の三次元座標データを取得する様子を概要的に示している。
レーザセンサ1は、駆動手段2が振り角θを移動することにより、物体の存在位置を検知し、三次元立体表面形状に関する複数の三次元座標データを取得する方法とその立体表面形状に関する複数の三次元座標データを取得する。
【0040】
例えば、人物における三次元立体形状データの取得としては、駆動手段2の振り角θにより、頭から足下方向、若しくは足下から頭方向へ、人物の立体表面形状に関する複数の三次元座標データを取得することが考えられる。いずれも、物体の存在位置及び物体を1回以上認識すれば、固有IDを以て物体を管理することから、経時的に駆動手段で移動しながらレーザセンサで測距することで、その固有IDに認識される(紐ついている)三次元立体形状データが増えていくと、より実物に近い立体形状を以て、人物の移動した方向(ベクトル)や向きを求めて表示することが可能になる。
【0041】
人物の存在位置検知により三次元立体表面形状に関する複数の三次元座標データを取得する方法として、人物を足下から頭方向(C1〜C6)方向へレーザ光が当たり、立体表面形状に関する複数の三次元座標データを取得している様子を示している(図8(A))。
レーザ光のスキャンタイミングをt1〜t6とすると、その時の三次元立体表面形状に関する複数の三次元座標データとして、立体表面形状データC1〜C6を得ることができる(図8(B))。
このように収集した三次元立体表面形状に関する複数の三次元座標データを処理することで、測距された人物の三次元立体形状を表示することができる(図8(C))。
【0042】
図9は、人の移動に際して、レーザセンサが得られる三次元形状データの取得例を示す。
この例は、駆動手段2の振り角θ内でレーザセンサが1回のスキャンによって得られる三次元形状データの取得例である。
レーザ光を人物に対して照射するためのセンサ高hについては、前述した様に、レーザセンサと対象物体の大きさや移動速度に応じて可変させることができる。人物がレーザセンサに対し遠方にいる時は、低い位置にレーザ光が照射されることになり、人物がレーザセンサに対して近づくにつれて、高い位置にレーザ光が照射されることになる。
【0043】
[他の実施例]
次に、複数のレーザセンサを用いて測定領域内にある物体を測定する三次元物体測定について説明する。
図4は、その他の一実施例における3次元形状データ取得動作を示す図である。
例えば、隣接する測定領域1から測定領域2に物体が移動するに際して、駆動手段12,22に接続されたレーザセンサ11、21にて測距する場合、駆動手段12、22を、独立に各々振れ角θ1<100°、θ2<60°、測定(駆動手段による周期)時間をt1=2秒、t2=4秒の設定を以て、各レーザセンサからレーザ光を照射し測距データを取得する場合を想定する。この場合、図6(a)DB323は、レーザセンサ11によるデータ、図6(b)DB324は、レーザセンサ21によるデータである。
レーザセンサ11にて振れ角θ1<100°、t1=2秒の範囲で測距され、固有ID=0001として認識された物体Aは、図6(b)ではレーザセンサ21にて振れ角θ2<60°、t2=4秒の範囲で測距されると、固有ID−Noは「0001−001」、「0001−002」、「0002−001」として、測距される。
【0044】
これは、測定領域1のレーザセンサ11で検知された物体A(固有ID=0001)の測距データが、測定領域2のレーザセンサ21で検知された物体A(No=001)の測距データが、固有ID−No「0001−001」、「0001−002」として測距される。
同様に、物体B(固有ID=0002)の測距データは、固有ID−No「0002−001」となる。
この固有ID−Noに紐ついた物体A、及び物体Bの測距データが図6(b)に記憶されることを意味する。
【0045】
ここで、図6(b)のレーザセンサ21にて測距された固有ID下のNo=001,002として更新されるのは、駆動手段12、22、及び測定(駆動手段12,22による周期)時間を、独立設定に起因する物体検知の分解能である。
固有ID−No「0001−001」,「0001−002」、「0002−001」の記憶は、レーザセンサ11の分解能において粗い設定で測距され検知した物体Aは、レーザセンサ21で細かく測距され検知されることで、物体A(=物体a、物体bを含む)検知され、記憶されることを意味する。
【0046】
初期化処理では、駆動手段振り角θの設定、センサ高さhの位置設定、ここから駆動手段側として近遠端の分解能毎の測定距離α、βの算出と、レーザセンサ側として測定距離γの算出による対象物体に対する検知への設定環境(目安値)が確認できる。
駆動手段制御処理では、初期化処理の後に、駆動手段について、振り角θでの同一方向への振り動作を同期させることで、センサ高さhの位置設定とは、複数のレーザセンサからの測距データを1つの測距データとして重ね合わせ統合するに際し、測定領域を1枚の絵に描写にレーザセンサのキャリブレーションをすることであり、測定領域に対して各駆動手段に固定されたレーザセンサの位置を登録することを意味する。
【0047】
例えば、測定領域における検知対象物を予め登録しておくことで、これとの比較により、大きさから物体を容易に特定することも、物体の立体形状を表示することも可能である。
さらに、物体が移動する場合でも、経時的な測距により一度でも物体の立体形状に関するデータを得ることができれば、固有IDを付与してDBに記憶するので、連続動作する物体に対して、固有IDを以て、正確に存在位置と先に取得した立体形状を表示することができる。
【0048】
次に、測定領域に対する駆動手段に固定したレーザセンサの振り方向による、測定の特徴について説明する。
図10は、測定領域での駆動手段振り出し方向による検知条件の違いを示す。
本発明によれば、長方形の細長い測定領域を想定し、測定領域を縦方向に人が移動し、その測定領域に対して駆動手段によるレーザセンサの振り出す方向によって、特徴的な測定をすることが可能である。
例えば、図10(a)では、駆動手段の動作方向A1001(によりレーザセンサ)が振り出す全ての方向において、その始点から終点に至るまで、レーザセンサは経時的に測距することができるため、丸印に示す測定領域における人の移動した軌跡1003を途切れることなく検知することが可能となる。
【0049】
一方、図10(b)では、駆動手段の動作方向B1002(によりレーザセンサ)が振り出す始点から終点方向の動きと、丸印に示す人の移動する動きや速さが近い動きとなる場合は、経時的に測距をしているにも関わらず、測定領域における人の移動した軌跡1004は途切れることになる、若しくは未検知となる場合が考えられる。
本発明の実施に際しては、駆動手段によりレーザセンサを振り出す方向と振り出し角度、接続されたレーサセンサによるレーザ光の照射距離、及びその設置高を考慮することで、物体が移動するさまを測距し、物体の立体形状を表示できることが分かる。
【0050】
図11は、駆動手段の振出し方向による検知の特徴点を概念的に示す。
測定領域に対する駆動手段の振り出し方向については2台のレーザセンサを用いることにより、測定領域を縦×横に駆動手段に固定したレーザセンサが測距することで、未検知となることを回避する実施例について説明する。
図11の例では、移動体Aは道路上の通行車両として、移動体Bは道路を横断する人を想定し、各移動体A1102、及び移動体B1103の動きは、各々レーザセンサを駆動手段に固定し、駆動手段の振り出し方向により、測定領域を縦×横にレーザセンサが測距する。
【0051】
本実施例が示す検知の特徴点の概念としては、測定領域1101に、移動体A1102と移動体B1103が存在し、各々が移動体Aの動線方向1104と移動体Bの動線方向1105への流動が発生している状態であり、駆動手段の縦振り方向1106は、移動体A1102(車両)を測距するための駆動手段振り方向を示し、横振り方向1107は、移動体B1103(人)を測距する駆動手段の振り方向を示す。
縦振り方向1106と横振り方向1107に交差した位置にて、駆動手段に固定したレーザセンサにて測距することで、2台のレーザセンサにて測定領域を漏れなく測距することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:レーザセンサ:駆動手段、3:PC、31:CPU、32:DB、33:表示装置、34:入力装置、θ:振れ角、5:駆動制御信号、6:レーザセンサ制御信号、7:測距データ、
321:測距データDB、322:立体形状データDB、323:三次元物体形状データDB、324:三次元物体形状データDB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザセンサを用いて測定領域内に存在する物体を測定する物体測定システムであって、
レーザセンサを固定した駆動手段を所定の振れ角θを以て移動させながらレーザセンサからレーザ光を照射して測定領域内の物体の存在位置、時間データ、駆動手段の移動方向データ、立体形状に関するデータを含む測距データを取得するデータ取得部と、
データ取得部の測距データから物体を検知する物体検知部と、
検知された測距データから物体の三次元形状を算出する立体形状算出手段と、
該立体形状算出手段によって算出された物体の三次元形状のデータを記憶する記憶手段と、
該物体検知部により検知された物体について該記憶手段を参照して該物体の三次元形状を照合して同じ物体であるかを判断し、同じ物体の場合該物体の固有IDに対応つけて該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶し、該判断の結果同じの物体でない場合には新たな固有IDを該物体に付与して、該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶する処理を行う処理手段と、
該処理手段により処理された物体の三次元形状データから、該物体検知部で取得された物体の存在位置にて物体の立体形状を作成して表示する表示部と、
有することを特徴とする物体測定システム。
【請求項2】
請求項1の物体測定システムにおいて、
前記データ取得部は、該レーザセンサから得られた測距データに関する三次元形状データ処理をする手段を含み、
前記物体検知部は、前記データ取得部の測距データ、時間データ、駆動手段の移動方向データから物体の検知と物体の移動方向の推量処理する手段を含み、
前記記憶手段は、前記処理手段によって処理された物体の固有IDに対応して、物体を検知した時間、距離データ、駆動手段の移動方向データ、を記憶する第1記憶部と、該処理手段によって処理された物体の立体形状データと、駆動手段の移動方向データから推量された物体の移動方向を記憶する第2記憶部を含むことを特徴とする物体測定システム。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかの項記載の物体測定システムにおいて、
測定領域を異なる状態にて複数のレーザセンサを用いて、測定領域内に存在する物体を測定するものであり、該駆動手段をそれぞれ独立に振れ角θ1°、θ2°、及び振れ角への設定時間をt1秒、t2秒を以てレーザセンサからレーザ光を照射して測距データを取得することを特徴とする物体測定システム。
【請求項4】
レーザセンサを用いて測定領域内に存在する物体を測定する物体測定方法であって、
レーザセンサを固定した駆動手段を所定の振れ角θを以て移動させながらレーザセンサからレーザ光を照射して測定領域内の物体の存在位置、時間データ、駆動手段の移動方向データ、立体形状に関するデータを含む測距データを取得するステップと、
取得された測距データから物体を検知するステップと、
検知された測距データから物体の三次元形状を算出する立体形状算出ステップと、
該立体形状算出ステップによって算出された物体の三次元形状のデータを記憶手段に記憶するステップと、
該物体ステップにより検知された物体について該記憶手段を参照して該物体の三次元形状を照合して同じ物体であるかを判断し、同じ物体の場合該物体の固有IDに対応つけて該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶し、該判断の結果同じの物体でない場合には新たな固有IDを該物体に付与して、該物体の三次元形状データを該記憶手段に記憶する処理を行う処理ステップと、
該処理ステップにより処理された物体の三次元形状データから、該物体検知ステップで検知された物体の存在位置にて物体の立体形状を作成して表示手段に表示するステップと、有することを特徴とする物体測定方法。
【請求項5】
請求項4の物体測定方法において、
測距データを取得するステップは、該レーザセンサから得られた測距データに関する三次元形状データ処理をするステップを含み、
前記物体検知ステップは、取得された測距データ、時間データ、駆動手段の移動方向データから物体の検知と物体の移動方向の推量処理するステップを含み、
前記記憶ステップは、前記処理ステップによって処理された物体の固有IDに対応して、物体を検知した時間、距離データ、駆動手段の移動方向データを第1記憶部に記憶するステップと、該処理ステップによって処理された物体の立体形状データと、駆動手段の移動方向データから推量された物体の移動方向を第2記憶部に記憶するステップを含むことを特徴とする物体測定方法。
【請求項6】
請求項4又は5のいずれかの項記載の物体測定方法において、
測定領域を異なる状態にて複数のレーザセンサを用いて、測定領域内に存在する物体を測定するものであり、該駆動手段をそれぞれ独立に振れ角θ1°、θ2°、及び振れ角への設定時間をt1秒、t2秒を以てレーザセンサからレーザ光を照射して測距データを取得することを特徴とする物体測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−106820(P2011−106820A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258870(P2009−258870)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】