説明

物理量検出装置および電子機器

【課題】物理量の入力に対して、高い線形性をもって容量素子の構造体が変位する物理量検出装置を提供すること。
【解決手段】物理量検出装置は、物理量に応じて変位する構造体を有し、前記構造体の変位に応じて静電容量が変化する物理量検出素子と、前記物理量検出素子に一定の電荷を供給する電荷供給回路と、前記電荷供給回路により電荷が供給された後で、前記物理量検出素子の静電容量に応じた信号を出力する出力回路とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型の物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度、圧力などの物理量を、これらの物理量に応じて変形する構造体(例えば、可動
電極と固定電極を含む容量素子)の静電容量の変化として検出する、静電容量型の物理量
検出装置が知られている。特許文献1は、シングルエンド型で離散時間的な動作をする静
電容量検出回路を開示している。特許文献2は、全差動型の静電容量検出回路を開示して
いる。特許文献3は、加速度によって錘に働く慣性力を、静電容量の変化で検出する加速
度センサーであって、錘の変位を常にゼロにするようなフィードバックループを有する、
クローズループ型の静電容量検出回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−91535号公報
【特許文献2】特開2007−171171号公報
【特許文献3】米国特許明細書第6386032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2においては、容量素子に一定の電圧を印加することにより溜まった
電荷が計測された。しかし、これらの技術によっては、物理量の入力に対し構造体の変位
が線形にならないという問題があった。特許文献3においては、構造体の変位が常にゼロ
になるように制御が行われるが、この制御を行うには複雑な回路が必要であるという問題
があった。また、特許文献3においては、フィードバックの最大値を超える加速度入力が
与えられるとフィードバックループの安定性が失われる可能性があるという問題があった

これに対し本発明は、物理量の入力に対して、高い線形性をもって容量素子の構造体が
変位する物理量検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、物理量に応じて変位する構造体を有し、前記構造体の変位に応じて静電容量
が変化する物理量検出素子と、前記物理量検出素子に一定量の電荷を供給する電荷供給回
路と、前記電荷供給回路により前記一定量の電荷が供給された後で、前記物理量検出素子
の静電容量に応じた信号を出力する出力回路とを有する物理量検出装置を提供する。
この物理量検出装置によれば、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出す
る構成と比較して、より高い線形性をもって、物理量の入力に対して構造体を変位させる
ことができる。
【0006】
好ましい態様において、前記電荷供給回路は、2つの入力端子および出力端子を有する
演算増幅器と、一定電圧の供給に用いられる電源線と、前記電源線に接続された第1端子
および前記演算増幅器の前記2つの入力端子のうち一方の入力端子に接続された第2端子
を有し、前記物理量検出素子に供給される電荷を蓄積する第1容量素子とを有し、前記物
理量検出素子は、前記演算増幅器に対して帰還回路を形成する位置に接続されていてもよ
い。
この物理量検出装置によれば、演算増幅器を用いた回路において、物理量検出素子に一
定電圧を印加して静電容量を検出する構成と比較して、より高い線形性をもって、物理量
の入力に対して構造体を変位させることができる。
【0007】
別の好ましい態様において、前記電荷供給回路は、前記電源線と前記第1容量素子の前
記第1端子との間に接続された第1スイッチと、前記第1容量素子の前記第1端子と接地
電位線との間に接続された第2スイッチと、前記物理量検出素子に対して並列に接続され
た第3スイッチとを有し、前記演算増幅器の他方の入力端子は前記接地電位線に接続され
ており、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは排他的に閉じられ、前記第2スイッ
チおよび前記第3スイッチは排他的に閉じられてもよい。
この物理量検出装置によれば、スイッチで切り替える容量素子と演算増幅器を用いた回
路において、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出する構成と比較して、
より高い線形性をもって、物理量の入力に対して構造体を変位させることができる。
【0008】
さらに別の好ましい態様において、前記出力回路は、前記演算増幅器の出力端子から出
力される電圧により示される値の逆数を演算する逆数演算回路を有してもよい。
この物理量検出装置によれば、容量変化に対して線形な出力を得ることができる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記電荷供給回路は、2つの入力端子および出力端
子を有する演算増幅器と、一定の実効電圧を有する交流電圧を出力する交流電圧源と、前
記交流電圧源に接続された第1端子および前記演算増幅器の前記2つの入力端子のうち一
方の入力端子に接続された第2端子を有し、前記物理量検出素子に供給される電荷を蓄積
する第1容量素子と、前記物理量検出素子に対して並列に接続された抵抗素子とを有し、
前記物理量検出素子は、前記演算増幅器に対して帰還回路を形成する位置に接続され、前
記演算増幅器の他方の入力端子は接地電位線に接続されていてもよい。
この物理量検出装置によれば、交流電圧源を用いた回路において、物理量検出素子に一
定電圧を印加して静電容量を検出する構成と比較して、より高い線形性をもって、物理量
の入力に対して構造体を変位させることができる。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、前記物理量検出素子は、物理量の変化に対してある
向きに静電容量が変化する第1容量と、前記物理量の変化に対して前記第1容量と逆向き
に静電容量が変化する第2容量とを有し、前記電荷供給回路は、2つの入力端子および2
つの出力端子を有する全差動演算増幅器と、一定電圧の供給に用いられる電源線と、接地
電位の供給に用いられる接地電位線と、前記電源線および前記接地電位線のうち一方に排
他的に接続するスイッチ回路と、前記スイッチ回路に接続された第1端子および前記全差
動演算増幅器の前記2つの入力端子のうち一方の入力端子に接続された第2端子を有し、
前記物理量検出素子に供給される電荷を蓄積する第1容量素子と、前記スイッチ回路に接
続された第1端子および前記全差動演算増幅器の前記2つの入力端子のうち他方の入力端
子に接続された第2端子を有し、前記物理量検出素子に供給される電荷を蓄積する第2容
量素子と、前記第1容量に対して並列に接続された第1スイッチと、前記第2容量に対し
て並列に接続された第2スイッチと、前記全差動演算増幅器の前記2つの入力端子のコモ
ンモード電圧を接地電位にする入力コモンフィードバック回路とを有し、前記第1容量お
よび前記第2容量は、前記全差動演算増幅器に対してそれぞれ異なる帰還回路を形成する
位置に接続され、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは、前記スイッチ回路と関連
して制御されてもよい。
この物理量検出装置によれば、全差動演算増幅器を用いた回路において、物理量検出素
子に一定電圧を印加して静電容量を検出する構成と比較して、より高い線形性をもって、
物理量の入力に対して構造体を変位させることができる。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、前記電荷供給回路は、定電流供給回路と、前記物理
量検出素子に並列に接続された第1スイッチと、一端が前記物理量検出素子に接続され、
他端が前記定電流供給回路に接続された第2スイッチと、前記第1スイッチの開閉を制御
する第1タイミング信号および前記第2スイッチの開閉を制御する第2タイミング信号を
出力するタイミング発生回路とを有し、前記第1タイミング信号は、第1時間、前記第1
スイッチを閉じさせる信号であり、前記第2タイミング信号は、前記第1スイッチが開い
た後で、第2時間、前記第2スイッチを閉じさせる信号であってもよい。
この物理量検出装置によれば、定電流供給回路を用いた回路において、物理量検出素子
に一定電圧を印加して静電容量を検出する構成と比較して、より高い線形性をもって、物
理量の入力に対して構造体を変位させることができる。
【0012】
さらに別の好ましい態様において、前記電荷供給回路は、第1電流端子および第2電流
端子を有するカレントミラー回路と、前記物理量検出素子に並列に接続された第1スイッ
チと、一端が前記物理量検出素子に接続され、他端が前記第1電流端子に接続された第2
スイッチと、一端が前記第2電流端子に接続された容量素子と、前記容量素子に並列に接
続された第3スイッチと、一定電圧が入力される第1入力端子、前記容量素子の一端の電
圧が入力される第2入力端子、および前記第2入力端子から入力される電圧が前記第1入
力端子から入力される電圧より低いときは第1レベルの信号を出力し、前記第2入力端子
から入力される電圧が前記第1入力端子から入力される電圧に達したときは第2レベルの
信号を出力する出力端子を有する比較器とを有し、前記第1スイッチおよび前記第3スイ
ッチは、第1タイミング信号により開閉を制御され、前記第2スイッチは、第2タイミン
グ信号により開閉を制御され、前記比較器から出力される信号が前記第2タイミング信号
として用いられ、前記第1信号は、一定時間前記第1スイッチを閉じさせる信号であって
もよい。
この物理量検出装置によれば、カレントミラー回路を用いた回路において、物理量検出
素子に一定電圧を印加して静電容量を検出する構成と比較して、より高い線形性をもって
、物理量の入力に対して構造体を変位させることができる。
【0013】
さらに別の好ましい態様において、前記物理量は、加速度であってもよい。
この物理量検出装置によれば、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出す
る構成と比較して、より高い線形性をもって、加速度の入力に対して構造体を変位させる
ことができる。
【0014】
さらに別の好ましい態様において、前記物理量は、圧力であってもよい。
この物理量検出装置によれば、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出す
る構成と比較して、より高い線形性をもって、圧力の入力に対して構造体を変位させるこ
とができる。
【0015】
さらに別の好ましい態様において、前記物理量は、力であってもよい。
この物理量検出装置によれば、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出す
る構成と比較して、より高い線形性をもって、力の入力に対して構造体を変位させること
ができる。
【0016】
さらに別の好ましい態様において、前記物理量は、角速度であってもよい。
この物理量検出装置によれば、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出す
る構成と比較して、より高い線形性をもって、角速度の入力に対して構造体を変位させる
ことができる。
【0017】
また、本発明は、上記いずれかの物理量検出装置を有する電子機器を提供する。
この電子機器によれば、物理量検出素子に一定電圧を印加して静電容量を検出する構成
と比較して、より高い線形性をもって、物理量の入力に対して構造体を変位させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】加速度検出素子11の構造を例示する図。
【図2】加速度検出素子11の等価回路を示す図。
【図3】静電容量検出回路を例示する図。
【図4】容量113の力学的構成を示す模式図。
【図5】本発明に係る物理量検出装置10の構成を示す図。
【図6】第1実施形態に係る静電容量検出回路1の構成を示す図。
【図7】クロック信号Φ1およびΦ2を例示する図。
【図8】逆数演算回路の構成を例示する図。
【図9】第2実施形態に係る静電容量検出回路2の構成を示す図。
【図10】第3実施形態に係る静電容量検出回路3の構成を示す図。
【図11】第4実施形態に係る静電容量検出回路4の構成を示す図。
【図12】タイミング信号Φ3およびΦ4を例示する図。
【図13】変形例1に係る静電容量検出回路5の構成を示す図。
【図14】変形例2に係る静電容量検出回路6の構成を示す図。
【図15】タイミング信号Φ3およびΦ4を例示するタイミングチャート。
【図16】変形例3に係る逆数演算回路の構成を示す図。
【図17】変形例4に係る力検出素子71の構成を示す図。
【図18】変形例5に係る圧力検出素子72の構成を示す図。
【図19】電子機器1000の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
0.静電容量型物理量検出装置の概要
図1は、加速度検出素子11の構造を例示する図である。加速度検出素子11は、静電
容量型の物理量検出素子の一例である。加速度検出素子11は、物理量として加速度を検
出する。換言すると、加速度検出素子11は、外力(この例では特に、加速度に起因する
慣性力)を受けて変位する構造体を有し、この構造体の変位に応じて静電容量が変化する
素子である。図1(A)は、加速度がゼロの状態を、図1(B)は、図中右向き(y軸方
向)に加速度a(>0)が加えられた状態を示している。加速度検出素子11は、固定部
111と、可動部112とを有する。固定部111は、加速度検出素子11に加えられる
加速度によらずに基板(図示略)に対して固定されている部材である。可動部112は、
加速度に応じて変位する構造体の一例であり、錘部1121と、ばね部1122とを有す
る。ばね部1122の一端は基板に固定されており、他端は錘部1121に接続されてい
る。錘部1121は、ばね部1122により支持されている。錘部1121は、質量mを
有する。加速度検出素子11に加速度aが加えられると、錘部1121には、F=maの
力が働く。この力により、ばね部1122は変形し、錘部1121は固定部111に対し
て相対的に変位する。錘部1121は、可動電極1123および可動電極1124を有す
る。固定部111は、より詳細には、固定電極1111、固定電極1112、固定電極1
113、および固定電極1114を有する。固定電極1111および固定電極1112は
対向しており、両者に対向する位置に可動電極1123が設けられている。同様に、固定
電極1113および固定電極1114は対向しており、両者に対向する位置に可動電極1
124が設けられている。加速度検出素子11は、例えば、Si(シリコン)等の半導体
材料と、半導体加工技術を用いて形成される。
【0020】
図2は、加速度検出素子11の等価回路を示す図である。加速度検出素子11は、直列
に接続された2つの容量、容量113および容量114を有する。容量113の一端には
入力端子115が接続されている。容量114の一端には入力端子116が接続されてい
る。容量113および容量114の他端同士は接続されており、入力端子117が接続さ
れている。容量113は、可動電極1123および固定電極1111、並びに可動電極1
124および固定電極1113による容量である。容量114は、可動電極1123およ
び固定電極1112、並びに可動電極1124および固定電極1114による容量である
。図1(B)に例示したように、図中右向きの加速度aが加えられると、可動電極112
3と固定電極1112および可動電極1124と固定電極1114との距離は短くなり、
可動電極1123と固定電極1111および可動電極1124と固定電極1113との距
離は長くなる。すなわち、容量113および容量114は、入力された加速度に応じて互
いに逆向きの容量変化を起こす、いわゆる差動型の構成を有している。静電容量の変化を
検出することにより、錘部1121に加えられている加速度を検出することができる。な
お、図2では差動型の検出素子の例を示したが、シングルエンド型の検出素子が用いられ
てもよい。
【0021】
図3は、従来技術に係る静電容量検出回路を例示する図である。容量113および容量
114における静電容量の変化を検出するには、これらの容量に電圧を印加する必要があ
る。この静電容量検出回路は、オペアンプ(演算増幅器)12と、容量素子93と、抵抗
素子94とを有する。オペアンプ12は、非反転入力端子(プラス入力端子)121、反
転入力端子(マイナス入力端子)122、および出力端子123を有する。反転入力端子
122は、入力端子117に接続されている。非反転入力端子121には、電圧VDD/
2が印加される。オペアンプ12のバーチャルショートにより、反転入力端子122は非
反転入力端子121と同電位となるので、入力端子117には電圧VDD/2が印加され
る。入力端子115には、電圧VDDから接地電位GNDに周期的に変化する電圧信号が
入力される。入力端子116には、電圧VDDから接地電位GNDに周期的に変化し、入
力端子115に入力される信号とは逆の位相の電圧信号が入力される。すなわち、容量1
13および容量114には、周期的に極性が反転し、絶対値がVDD/2の電圧が印加さ
れる。
【0022】
出力端子123から出力される電圧Voは、次式で表される。
Vo=(Cs1−Cs2)Vcs/Cf …(1)
ここで、Cs1およびCs2は、容量113および容量114の容量を示す。Vcsは、
入力端子115と入力端子116との間の電圧を示す。Cfは、容量素子93の静電容量
を示す。すなわち、図3の静電容量検出回路は、加速度検出素子11のセンシング容量C
s(容量113および容量114)に一定の電圧Vref(上記の例ではVref=VD
D/2)を加え、センシング容量に溜まった電荷Q=Cs・Vrefを計測する構成とな
っている。
【0023】
図4は、容量113の力学的構成を示す模式図である。ここでは説明を簡単にするため
、固定電極1111および可動電極1123により形成される容量だけを考える。両電極
間に電圧を印加すると、電極間には静電力Fesが働く。静電力Fesは、次式で表され
る。
【数1】

ここで、Aは固定電極1111および可動電極1123の面積を、ε0は真空の誘電率を
、εrは電極間にある媒質の比誘電率を、Vは電極間の電圧を、xは、電極間の初期間隔
x0を基準とした電極の変位を、それぞれ表す。式(2)によれば、静電力Fesは、電
極の変位xに単純に比例する形では変化しないことがわかる。
【0024】
式(2)が加速度検出素子11に及ぼす影響について考える。加速度aが加えられると
、錘部1121は変位する。加速度aによる効果だけを考えると、この変位は加速度aに
対して線形である。錘部1121が変位すると、式(2)により、電極間に働く静電力が
非線形に変化する。この静電力は、可動電極1123すなわち錘部1121の変位を引き
起こすので、全体として、錘部1121の変位は加速度aに対して線形になっていない。
加速度aに対する錘部1121の変位の線形性(すなわち、容量変化の線形性)は検出素
子(センサー)の重要な性能指標の一つであり、より線形性を向上させることが求められ
ている。
【0025】
図3の静電容量検出回路における測定原理は、センシング容量Csに一定の電圧を加え
て静電容量を検出するものであった。しかし、この測定原理によると、式(2)からわか
るように、錘部1121の変位が加速度aに対して線形にならないという問題がある。そ
こで、本実施形態においては、センシング容量Csに一定の電荷Qを蓄えることにより静
電容量が検出される。センシング容量Csに蓄えられる電荷Qが一定の場合、電極間に働
く静電力Fesは、次式で表される。
【数2】

式(3)から明らかなように、電荷Qを一定とした場合、電極間に働く静電力は変位xに
よらずに一定である。
【0026】
式(3)が加速度検出素子11に及ぼす影響について考える。式(3)によれば、錘部
1121の変位に一定の静電力による効果、すなわち一定のオフセットが与えられること
になるが、加速度aに対する変位の線形性には影響がない。したがって、センシング容量
Csに一定の電荷を与えてセンシング容量Csの静電容量を検出することにより、センシ
ング容量Csに一定の電圧を加える場合と比較して、より線形性を向上させることができ
る。
【0027】
図5は、本発明に係る物理量検出装置10の構成を示す図である。物理量検出装置10
は、電荷供給回路100と、出力回路200とを有する。電荷供給回路は、センシング容
量Csに一定量の電荷を供給するための回路である。ここで、「一定量の電荷」とは、あ
る決まった量になるように制御された電荷をいい、必ずしも完全に正確に同一量である電
荷を意味するものではない。また、本稿における「一定量の電荷」とは、直流の場合にお
ける時間的に変動しないある決まった量の電荷に加え、交流の場合における実効値が一定
の電荷を含む概念である。出力回路200は、電荷供給回路100によりセンシング容量
Csに一定量の電荷が供給された後で、センシング容量Csの静電容量に応じた信号(例
えば、センシング容量Csの端子電圧)を取り出すための回路である。本稿における「一
定量の電荷が供給された後」とは、直流の場合におけるある決まった量の電荷がセンシン
グ容量Csに蓄積されている状態に加え、交流の場合における実効値が一定の電荷がセン
シング容量Csに供給されている状態を含む概念である。以下、これらの回路の具体例を
いくつか説明する。以下、回路の説明においては、加速度検出素子11の代わりに、「セ
ンシング容量Cs」を用いる。また、説明を簡単にするため、特段の説明のない限り、セ
ンシング容量Csはシングルエンド構造を有する。
【0028】
1.第1実施形態
図6は、第1実施形態に係る静電容量検出回路1の構成を示す図である。静電容量検出
回路1は、スイッチトキャパシターを用いたシングルエンド構成を有した、物理量検出装
置10の一例である。電荷供給回路100は、スイッチ15と、スイッチ16と、スイッ
チ17と、オペアンプ12と、容量素子13とを有する。出力回路200は、スイッチ1
8と、容量素子14とを有する。センシング容量Csは、オペアンプ12に対して帰還回
路を形成する位置に接続されている。オペアンプ12の非反転入力端子121は接地電位
線に接続されている(以下単に「接地されている」という)。なお、接地の電位は回路の
構成に応じて任意に設定してよい。この実施例では、接地電位GNDを0Vとして説明を
進める。反転入力端子122には、容量素子13が接続されている。容量素子13は、セ
ンシング容量Csに供給するための一定量の電荷を蓄積する素子である。容量素子13は
、入力端子131および出力端子132を有する。出力端子132は、反転入力端子12
2に接続されている。入力端子131は、スイッチ15の一端およびスイッチ16の一端
に接続されている。スイッチ15の他端は、電源線に接続されている。この電源線には、
一定の電圧Vrefが印加されている。スイッチ16の他端は接地されている。スイッチ
17は、センシング容量Csに並列に接続されている。スイッチ17は、センシング容量
Csに溜まった電荷を放電するためのスイッチである。オペアンプ12の出力端子123
は、スイッチ18の一端に接続されている。スイッチ18は、容量素子14に電圧をサン
プリングするためのスイッチである。スイッチ18の他端は、容量素子14に接続されて
いる。容量素子14は負荷容量である。スイッチ18と容量素子14は、オペアンプ12
の出力をサンプリングする機能を提供しているが、出力回路200としてサンプリング機
能が必要なければ、これらの素子は必須では無い。この場合、オペアンプ12が出力回路
も兼ねていることになる。以下で説明するように、スイッチ15およびスイッチ16、並
びにスイッチ16およびスイッチ17は、それぞれ排他的に閉じられる。
【0029】
図7は、クロック信号Φ1およびΦ2を例示する図である。クロック信号Φ1はスイッ
チ15およびスイッチ17の開閉を制御する信号であり、クロック信号Φ2はスイッチ1
6およびスイッチ18の開閉を制御する信号である。スイッチ15〜18は例えばnチャ
ネルのMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスターであり、ゲートにH(High
)レベルの信号(電圧)が入力されるとソースとドレインが導通し(スイッチが閉じ)、
ゲートにL(Low)レベルの信号が入力されるとソースとドレインが絶縁する(スイッチ
が開く)。この例で、クロック信号Φ1およびΦ2は、同時にHレベルになることがない
、ノン・オーバーラッピングクロックである。すなわち、スイッチ15およびスイッチ1
6は、容量素子13の入力端子131の電位を、VrefまたはGNDに排他的に切り替
えるスイッチ回路を構成しているといえる。
【0030】
まず、クロック信号Φ1がHレベルであり、クロック信号Φ2がLレベルである場合を
考える。容量素子13の出力端子132の電位は、オペアンプ12のバーチャルショート
により、接地電位GNDである。容量素子13の入力端子131には、一定の電圧Vre
fが印加される。したがって、容量素子13には、出力端子132をプラス側として、次
式で表される電荷Qが蓄積される。
Q=−Cc・Vref …(4)
ここで、Ccは容量素子13の静電容量である。また、このときスイッチ17が閉じてい
るので、センシング容量Csに溜まった電荷は放電され、ゼロになる。
【0031】
次に、クロック信号Φ1がLレベルであり、クロック信号Φ2がHレベルである場合を
考える。容量素子13の入力端子131の電位は、接地電位GNDになる。オペアンプ1
2のバーチャルショートにより、容量素子13の出力端子132の電位も接地電位GND
である。したがって、クロック信号Φ1がHレベルの期間に容量素子13に蓄積された電
荷Qは、すべてセンシング容量Csに流れ込む。すなわち、クロック信号Φ2がHレベル
の期間において、センシング容量Csには一定の電荷Q=−Cc・Vrefが与えられる
。このとき、オペアンプ12の出力電圧Voは、次式で表される。
Vo=Q/Cs=−(Cc/Cs)・Vref …(5)
出力電圧Voは、スイッチ18を介して容量素子14に保持(サンプリング)される。
【0032】
センシング容量Csの初期値(加速度がゼロのときの容量)をCs0、加速度a(>0
)が入力されたときの変化分をΔCsとすると、センシング容量Csは次式で表される。
Cs=Cs0+ΔCs …(6)
式(6)を式(5)に代入すると、オペアンプ12の出力電圧Voは、次式で表される。
Vo=−(Cc・Vref)/(Cs0+ΔCs) …(7)
出力電圧Voの逆数をとれば、容量変化ΔCsを得ることができる。すなわち、加速度a
の入力に対し線形な出力ΔCsを得ることができる。
【0033】
図8は、逆数演算回路の構成を例示する図である。静電容量検出回路1において、出力
回路200は、この逆数演算回路を有する。この回路により、容量素子14に保持された
出力電圧Voから容量変化ΔCsを得ることができる。この回路は、ADC(Analog to
Digital Converter、アナログ/デジタル変換器)21と、逆数演算回路82とを有する
。ADC81は、アナログ入力端子811と、基準電圧入力端子812と、デジタル出力
端子813とを有する。ADC81は、アナログ入力端子811から入力されたアナログ
電圧を、基準電圧入力端子812から入力された電圧を基準として量子化し、nビットの
デジタル信号(デジタルコード)として出力する。逆数演算回路82は、入力端子821
および出力端子822を有する。逆数演算回路82は、入力端子821から入力されたデ
ジタル信号により示される値の逆数を演算して出力端子822から出力する回路である。
この例では、容量素子14に保持されている電圧Voの極性が反転されてアナログ入力端
子811に入力されている。これは、信号の極性を整合させるためであるが、回路の接地
電位GNDの選び方によっては反転させなくてもよい。また、図8の例では基準電圧とし
て2Vrefが用いられたが、基準電圧はこれに限定されない。
【0034】
以上で説明したように、静電容量検出回路1によれば、センシング容量Csに一定の電
圧を加える場合と比較して、錘部1121の変位(すなわち検出される容量変化)の加速
度aに対する線形性を向上させることができる。
【0035】
2.第2実施形態
図9は、第2実施形態に係る静電容量検出回路2の構成を示す図である。静電容量検出
回路1はスイッチを使った離散時間回路を用いた例であった。静電容量検出回路2は時連
続回路を用いた、物理量検出装置10の一例である。静電容量検出回路2において、電荷
供給回路100は、オペアンプ12と、容量素子13と、交流電圧源21と、抵抗素子2
2とを有する。センシング容量Csは、オペアンプ12に対して帰還回路を形成する位置
に接続されている。オペアンプ12の非反転入力端子121は接地されている。反転入力
端子122には、容量素子13が接続されている。出力端子132は、反転入力端子12
2に接続されている。入力端子131は、交流電圧源21に接続されている。交流電圧源
21は、実効値が一定の交流電圧Viを出力する。すなわち、入力端子131には、交流
電圧Viが印加される。抵抗素子22は、センシング容量Csに並列に接続されている。
抵抗素子22は帰還抵抗である。
【0036】
静電容量検出回路2の伝達関数H(jω)は、次式で表される。
【数3】

ここで、「||」は並列インピーダンスを表している。1/Rf≪ωCsの場合(すなわち
、ω≪1/(RfCs)の場合)、伝達関数H(jω)は、次式のように近似される。
【数4】

式(7)の伝達関数によれば、入力電圧Viに対する出力電圧Voは、次式で表される。
【数5】

式(10)からわかるように、出力電圧Voから、センシング容量Csの容量変化ΔCs
を得ることができる。なお、出力回路200についての図示および説明は省略したが、静
電容量検出回路1と同様である(以下、他の実施形態についても同様)。
【0037】
静電容量検出回路2において、オペアンプ12の反転入力端子122は、バーチャルシ
ョートにより、入力電圧Viによらず仮想接地状態となっている。容量素子13には、接
地電位GNDと入力電圧Viとの差に応じた電圧が印加される。すなわち、容量素子13
には、次式で表される電荷Q(t)が蓄積される。
Q(t)=Cc・Vi(t) …(11)
ここでは、電荷Qが交流電荷であり入力電圧Viが交流電圧であることを強調するため、
Q(t)およびVi(t)と表している。容量素子13には、最大でQmax=Cc・V
imaxの電荷が蓄積される(Vimaxは入力電圧Vi(t)の最大値)。例えば入力
電圧Vi(t)が接地電位GNDと等しい場合、容量素子13に蓄積される電荷はゼロに
なる。それ以前に容量素子13に溜められていた電荷は、センシング容量Csにすべて転
送される。すなわち、センシング容量Csには、式(11)で表されるQ(t)が蓄積さ
れる(実際には容量素子に蓄積される電荷とセンシング容量の蓄積される電荷とは位相が
反転している)。入力電圧Vi(t)は振幅一定の交流電流であるので、センシング容量
Csに蓄積される電荷も、振幅一定の交流電荷、すなわち、実効値が一定の交流電荷であ
る。このとき電極間には式(3)で表される静電力Fesが働く。電荷Q(t)の実効値
は一定であるので、静電力Fesの実効値は一定となる。すなわち、加速度aの入力に対
し線形な出力ΔCsを得ることができる。
【0038】
3.第3実施形態
図10は、第3実施形態に係る静電容量検出回路3の構成を示す図である。静電容量検
出回路1はシングルエンド型回路の例であったが、静電容量検出回路3は差動型回路の、
物理量検出装置10の一例である。すなわち、静電容量検出回路3において、センシング
容量Csは差動型の構成を有する。センシング容量Csは、センシング容量Cs1(11
3)およびセンシング容量Cs2(114)を有する。センシング容量Cs1およびセン
シング容量Cs2は、入力される加速度の変化に対してそれぞれ逆向きに静電容量が変化
する。例えば、センシング容量Cs1の静電容量が増加すると、センシング容量Cs2の
静電容量は減少する。静電容量検出回路3において、電荷供給回路100は、全差動オペ
アンプ32と、容量素子331と、容量素子332と、容量素子341と、容量素子34
2と、ICMFB(Input Common Mode FeedBack、入力コモンフィードバック回路)35
と、スイッチ35と、スイッチ36と、スイッチ371と、スイッチ372とを有する。
全差動オペアンプ32は、非反転入力端子321と、反転入力端子322と、反転出力端
子323と、非反転出力端子324とを有する。静電容量検出回路3においては、センシ
ング容量Csは、センシング容量Cs1とセンシング容量Cs2とが区別して示されてい
る。
【0039】
センシング容量Cs1およびセンシング容量Cs2は、それぞれ、全差動オペアンプ3
2に対して異なる帰還回路を形成する位置に接続されている。非反転入力端子321およ
び反転入力端子322には、電圧Vi+および電圧Vi-が入力される。反転出力端子323
および非反転出力端子324からは、電圧Vo-および電圧Vo+が出力される。全差動オペ
アンプ32の入力コモンモード電圧Vicm=(Vi++Vi-)/2は、ICMFB38によ
り、Vicm=GNDとなるように制御されている。また、全差動オペアンプ32の出力コ
モンモード電圧Vocm=(Vo++Vo-)/2は、出力コモンフィードバック回路(図示略
)により、Vocm=GNDとなるように制御されている。さらに、全差動オペアンプ32
のバーチャルショートにより、Vi+=Vi-であるから、非反転入力端子321および反転
入力端子322は仮想接地状態である。
【0040】
スイッチ35、スイッチ36、スイッチ371、およびスイッチ372は、例えばnチ
ャネルのMOSトランジスターである。スイッチ35、スイッチ371、およびスイッチ
372は、クロック信号Φ1(図7)により駆動される。スイッチ36は、クロック信号
Φ2により駆動される。すなわち、スイッチ35およびスイッチ36は、電源線Vref
または接地電位線GNDに排他的に接続するスイッチ回路を構成している。静電容量検出
回路3は、基本的には静電容量検出回路1と同様に動作する。クロック信号Φ1がHレベ
ルの期間において、容量素子331および容量素子332には、一定の電荷Qが蓄積され
る。クロック信号Φ2がHレベルの期間において、電荷Qはセンシング容量Cs1および
センシング容量Cs2に転送される。センシング容量Cs1およびセンシング容量Cs2
に蓄積される電荷Qが一定であるので、電極間に働く静電力が一定となる。したがって、
加速度aの入力に対し線形な出力ΔCsを得ることができる。なお、スイッチ35とスイ
ッチ36に与えるクロック信号Φ1、Φ2を入れ替えてもよい。この場合、センシング容
量Cs1、Cs2の電荷がリセットされる期間において、同様に容量素子331、332
の電荷もゼロとなる。スイッチ371、372が開放され、スイッチ35がオンになると
、容量素子331、332には一定の電荷が流れ込み、その電流は全てセンシング容量C
s1、Cs2に流れ込む。このようにして、センシング容量Cs1、Cs2には一定の電
荷が供給される。
【0041】
4.第4実施形態
図11は、第4実施形態に係る静電容量検出回路4の構成を示す図である。第1〜第3
実施形態においては、電圧源と容量素子とを用いて一定の電荷をセンシング容量Csに転
送する回路の例を説明した。静電容量検出回路4は、定電流供給回路を用いた、物理量検
出装置10の一例である。静電容量検出回路4において、電荷供給回路100は、定電流
源41ならびにカレントミラー回路42からなる定電流供給回路と、タイミング発生回路
43と、スイッチ44と、スイッチ45とを有する。カレントミラー回路42は、第1電
流端子421および第2電流端子422を有する。カレントミラー回路42は、第1電流
端子421から出力される電流I1と同じ電流I2を第2電流端子422から出力する回路
である(I1=I2)。第1電流端子421には、定電流源41が接続されている。第2電
流端子422には、スイッチ45を介してセンシング容量Csが接続されている。スイッ
チ44は、センシング容量Csに並列に接続されている。タイミング発生回路43は、ス
イッチ44およびスイッチ45の開閉のタイミングを制御する信号を出力する回路である
。タイミング発生回路43は、信号出力端子431および信号出力端子432を有する。
信号出力端子431は、スイッチ44を制御するためのタイミング信号Φ3を出力する端
子である。信号出力端子432は、スイッチ45を制御するためのタイミング信号Φ4を
出力する端子である。スイッチ44およびスイッチ45は、例えばnチャネルのMOSト
ランジスターである。スイッチ45のドレインおよびソースは、第2電流端子422およ
びセンシング容量Csの一端に接続されている。スイッチ44のドレインおよびソースは
、センシング容量Csの一端および他端に接続されている。スイッチ44およびスイッチ
45のゲートは、信号出力端子431および信号出力端子432に接続されている。セン
シング容量Csの一端には、電圧出力端子Voが設けられている。
【0042】
図12は、タイミング信号Φ3およびΦ4を例示する図である。タイミング信号Φ3が
Hレベルである期間T1(このとき、タイミング信号Φ4はLレベルである)において、
センシング容量Csの両電極はショートされ、それまで溜められていた電荷は放電される
。すなわち、センシング容量Csはリセットされる。タイミング信号Φ4がHレベルであ
る期間T2(このとき、タイミング信号Φ3はLレベルである)において、センシング容
量Csは定電流Iにより充電される。タイミング信号Φ4は、一定の期間Tintegが
経過するとLレベルになる。期間Tintegの間にセンシング容量Csに蓄積された電
荷Qは、次式で表される。
Q=I・Tinteg …(12)
図12には、電荷Qの経時変化もあわせて図示されている。期間T2が終了した後におい
て、センシング容量Csの静電容量は次式により計算される。
Cs=Cs0+ΔCs=Q/Vo …(13)
【0043】
5.他の実施形態
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以
下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち、2つ以上のものが組み合わせて用
いられてもよい。
【0044】
5−1.変形例1
図13は、変形例1に係る静電容量検出回路5の構成を示す図である。静電容量検出回
路5は、静電容量検出回路1(図6)の変形例である。静電容量検出回路5は、静電容量
検出回路1の構成に加え、スイッチ51およびスイッチ52を有している。スイッチ51
は、一端が出力端子132に接続され、他端が接地されている。スイッチ52は、一端が
出力端子132に接続され、他端が反転入力端子122に接続されている。スイッチ51
はクロック信号Φ1により駆動され、スイッチ52はクロック信号Φ2により駆動される
。静電容量検出回路5によれば、容量素子13を充電する際、出力端子132の電位とし
て、オペアンプ12のバーチャルショートによる仮想接地電位ではなく、スイッチ51を
介した接地電位を与えることができる。
【0045】
なお、スイッチの構成は、図6および図13で例示したものに限定されない。センシン
グ容量Csに一定の電荷を供給できるものであれば、どのような構成のスイッチが用いら
れてもよい。また、スイッチの構成は、所望される出力信号の極性、または出力信号のタ
イミングに応じて設計されてもよい。
【0046】
5−2.変形例2
図14は、変形例2に係る静電容量検出回路6の構成を示す図である。静電容量検出回
路6は、静電容量検出回路4(図11)の変形例である。静電容量検出回路4においては
、定電流源41から出力される定電流Iを用いてセンシング容量Csを一定時間Tint
egの間充電することにより、センシング容量Csに一定電荷を蓄積させた。静電容量検
出回路6においては、センシング容量Csに蓄積された電荷が計測される。センシング容
量Csに蓄積された電荷が一定値に達した場合、センシング容量Csへの電流の供給が停
止される。
【0047】
静電容量検出回路6は、カレントミラー回路42と、スイッチ44と、スイッチ45と
、容量素子61と、スイッチ62と、コンパレーター63と、抵抗素子64とを有する。
カレントミラー回路42の第1電流端子421には、抵抗素子64およびスイッチ45を
介して、センシング容量Csが接続されている。スイッチ44は、センシング容量Csに
並列に接続されている。抵抗素子64は負荷抵抗である。カレントミラー回路42の第2
電流端子422には、容量素子61が接続されている。容量素子61は、センシング容量
Csに蓄積された電荷を計測するための容量である。容量素子61の他端は接地されてい
る。スイッチ62は、容量素子61に並列に接続されている。スイッチ62は、容量素子
61に蓄積された電荷を放電させるためのスイッチである。コンパレーター63は、第1
入力端子631と、第2入力端子632と、出力端子633とを有する。コンパレーター
63は、第2入力端子632から入力された電圧が、第1入力端子631から入力された
電圧を下回っているときはHレベルの電圧を出力し、第2入力端子632から入力された
電圧が、第1入力端子631から入力された電圧に達したときはLレベルの電圧を出力す
る。第1入力端子631には、所定の電圧Vrefが入力される。第2入力端子632は
容量素子61の一端に接続されており、容量素子61に蓄積されている電荷に応じた電圧
Vintが第2入力端子632に入力される。すなわち、コンパレーター63は、電圧V
intが所定の電圧Vrefに達するとLレベルの電圧を出力する。コンパレーター63
の出力信号は、スイッチ45の開閉を制御するタイミング信号Φ3として用いられる。
【0048】
図15は、変形例2に係るタイミング信号Φ3およびΦ4を例示するタイミングチャー
トである。タイミング信号Φ3がHレベルになると、スイッチ44およびスイッチ62が
閉じ、センシング容量Csおよび容量素子61に蓄積されていた電荷が放電される(セン
シング容量Csおよび容量素子61がリセットされる)。容量素子61に蓄積されていた
電荷が放電されると、Vint<Vrefとなるので、タイミング信号Φ4はHレベルと
なる。タイミング信号Φ4がHレベルになると、スイッチ45が閉じ、センシング容量C
sに電流Iが供給される。このとき、カレントミラー回路42により、容量素子61にも
電流Iが供給される。ただしこの間、スイッチ44およびスイッチ62によりセンシング
容量Csおよび容量素子61の両電極はそれぞれショートしているので、これらの容量に
電荷は蓄積されない。図15には、容量素子61の端子電圧Vintおよび出力電圧Vo
もあわせて図示されている。出力電圧Voの破線は、センシング容量の変化に応じた電圧
変化を示している。
【0049】
一定時間T1が経過すると、タイミング信号Φ3はLレベルになる。タイミング信号Φ
3がLレベルになると、スイッチ44およびスイッチ62が開き、センシング容量Csお
よび容量素子61に電荷が蓄積されはじめる。カレントミラー回路42により同じ量の電
流Iが供給されているので、容量素子61には、センシング容量Csに蓄積されている電
荷に応じた量の電荷が蓄積される。すなわち、容量素子61に蓄積されている電荷を観測
することは、センシング容量Csに蓄積されている電荷を観測することと同等である。容
量素子61に蓄積されている電荷の変化は、電圧Vintに表れる。電圧Vintが所定
の電圧Vrefに達したということは、センシング容量Csに蓄積されている電荷が所定
の量に達したということと同等である。電圧Vintが所定の電圧Vrefに達すると、
タイミング信号Φ4はLレベルになる。センシング容量Csには一定の電荷が保持される
。この状態で、センシング容量Csの静電容量は、次式により得られる。
Cs=Cs0+ΔCs=Q/Vo …(14)
ここで、
Q=Cint・Vref …(15)
である。Cintは容量素子61の静電容量である。
【0050】
5−3.変形例3
図16は、変形例3に係る逆数演算回路の構成を示す図である。出力電圧Voから容量
変化を演算する回路の構成は、図8で例示したものに限定されない。変形例3の回路は、
ADC81を有する。アナログ入力端子811には、基準電圧Vref/2が入力される
。基準電圧入力端子812には、極性反転された出力電圧−Voが入力される。出力端子
822から出力されるデジタルコードは、(Vref/2)/(−Vo)に対応するもの
である。出力電圧Voは、
Vo=−(Cc・Vref)/(Cs0+ΔCs) …(16)
であるから、出力されるデジタルコードは、
(Vref/2)/(−Vo)=(Cs0+ΔCs)/(2Cc) …(17)
に対応するものである。ADC81から出力されるデジタルコードにおいて、容量変化Δ
Csが分母に含まれている。すなわち、ADC81から出力されるデジタルコードは、容
量変化ΔCsに対して線形に変化する。
【0051】
5−4.変形例4
図17は、変形例4に係る力検出素子71の構成を示す図である。物理量検出素子は、
加速度検出素子11に限定されない。また、物理量検出素子により検出される物理量は、
加速度に限定されない。力検出素子71は物理量検出素子の一例であり、物理量として力
を検出する。力検出素子71は、固定部711と、可動部712とを有する。固定部71
1は、力検出素子71に加えられる力によらずに基板(図示略)に対してほぼ固定されて
いる部材である。可動部712は、錘部7121と、ばね部7122と、力検出部712
5とを有する。ばね部7122の一端は基板に固定されており、他端は錘部7121に接
続されている。錘部7121は、ばね部7122により支持されている。力検出部712
5に力Fが加えられると、ばね部7122は変形し、錘部7121は固定部711に対し
て相対的に変位する。錘部7121は、可動電極7123および可動電極7124を有す
る。固定部711は、より詳細には、固定電極7111および固定電極7112を有する
。固定電極7111および固定電極7112は、それぞれ、可動電極7123および可動
電極7124に対向しており、センシング容量Csを形成している。なお図17の力検出
素子71はシングルエンドの構成を有しているが、図1の加速度検出素子11と同様に差
動型の構成を有していてもよい。
【0052】
5−5.変形例5
図18は、変形例5に係る圧力検出素子72の構成を示す図である。図18(A)は圧
力検出素子72の上面図を、図18(B)は圧力検出素子72のA−A断面図を示してい
る。圧力検出素子72は物理量検出素子の一例であり、物理量として圧力を検出する。圧
力検出素子72は、ダイアフラム721と、基部722とを有する。ダイアフラム721
および基部722により、密閉された空間723が形成されている。ダイアフラム721
は、外部の圧力に応じて変形する。空間723において、ダイアフラム721には可動電
極724が、基部722のうちダイアフラム721と対向する面(底面)には固定電極7
25が、それぞれ設けられている。可動電極724および固定電極725は、センシング
容量Csを形成している。外部の圧力変化によりダイアフラム721が変形すると、可動
電極724が固定電極725に対して相対的に変位し、静電容量が変化する。
【0053】
5−6.変形例6
物理量検出素子が検出する物理量は、角速度であってもよい。すなわち、物理量検出素
子はジャイロセンサーであってもよい。ジャイロセンサーの構造は、例えば図1に例示し
た加速度センサーの構造と同様である。ジャイロセンサーの場合、固定部111および可
動部112は、x軸方向に振動させられる。振動した状態で、ジャイロセンサーがz軸の
回りで回転すると、y軸方向にコリオリ力が働く。コリオリ力により錘部1121が変位
し、センシング容量Csの静電容量が変化する。
【0054】
5−7.他の変形例
図19は、上記の物理量検出装置10を用いた電子機器1000の構成を示す図である
。電子機器1000は、例えば、携帯電話機、ゲーム機、デジタルカメラ、カーナビゲー
ション装置、自動車、またはロボットである。電子機器1000は、物理量検出装置10
と、制御装置1010とを有する。制御装置1010は、CPU(Central Processing U
nit)およびメモリーを有するコンピューターである。制御装置1010は、物理量検出
装置10から出力される信号を用いて、他の構成要素を制御する。
【符号の説明】
【0055】
1…静電容量検出回路、2…静電容量検出回路、3…静電容量検出回路、4…静電容量検
出回路、5…静電容量検出回路、6…静電容量検出回路、10…物理量検出装置、11…
加速度検出素子、12…オペアンプ、13…容量素子、14…容量素子、15…スイッチ
、16…スイッチ、17…スイッチ、18…スイッチ、21…交流電圧源、22…抵抗素
子、32…全差動オペアンプ、35…スイッチ、36…スイッチ、38…ICMFB、4
1…定電流源、42…カレントミラー回路、43…タイミング発生回路、44…スイッチ
、45…スイッチ、51…スイッチ、52…スイッチ、61…容量素子、62…スイッチ
、63…コンパレーター、64…抵抗素子、71…力検出素子、72…圧力検出素子、8
1…ADC、82…逆数演算回路、93…容量素子、94…抵抗素子、100…電荷供給
回路、111…固定部、112…可動部、113…容量、114…容量、115…入力端
子、116…入力端子、117…入力端子、121…非反転入力端子、122…反転入力
端子、123…出力端子、131…入力端子、132…出力端子、200…出力回路、3
21…非反転入力端子、322…反転入力端子、323…反転出力端子、324…非反転
出力端子、331…容量素子、332…容量素子、341…容量素子、342…容量素子
、371…スイッチ、372…スイッチ、421…第1電流端子、422…第2電流端子
、431…信号出力端子、432…信号出力端子、631…第1入力端子、632…第2
入力端子、633…出力端子、711…固定部、712…可動部、721…ダイアフラム
、722…基部、723…空間、724…可動電極、725…固定電極、811…アナロ
グ入力端子、812…基準電圧入力端子、813…デジタル出力端子、821…入力端子
、822…出力端子、1000…電子機器、1111…固定電極、1112…固定電極、
1113…固定電極、1114…固定電極、1121…錘部、1122…ばね部、112
3…可動電極、1124…可動電極、7121…錘部、7122…ばね部、7123…可
動電極、7124…可動電極、7125…力検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量に応じて変位する構造体を有し、前記構造体の変位に応じて静電容量が変化する
物理量検出素子と、
前記物理量検出素子に一定量の電荷を供給する電荷供給回路と、
前記電荷供給回路により前記一定量の電荷が供給された後で、前記物理量検出素子の静
電容量に応じた信号を出力する出力回路と
を有する物理量検出装置。
【請求項2】
前記電荷供給回路は、
2つの入力端子および出力端子を有する演算増幅器と、
一定電圧の供給に用いられる電源線と、
前記電源線に接続された第1端子および前記演算増幅器の前記2つの入力端子のうち一
方の入力端子に接続された第2端子を有し、前記物理量検出素子に供給される電荷を蓄積
する第1容量素子と
を有し、
前記物理量検出素子は、前記演算増幅器に対して帰還回路を形成する位置に接続されて
いる
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項3】
前記電荷供給回路は、
前記電源線と前記第1容量素子の前記第1端子との間に接続された第1スイッチと、
前記第1容量素子の前記第1端子と接地電位線との間に接続された第2スイッチと、
前記物理量検出素子に対して並列に接続された第3スイッチと
を有し、
前記演算増幅器の他方の入力端子は前記接地電位線に接続されており、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは排他的に閉じられ、
前記第2スイッチおよび前記第3スイッチは排他的に閉じられる
ことを特徴とする請求項2に記載の物理量検出装置。
【請求項4】
前記出力回路は、前記演算増幅器の出力端子から出力される電圧により示される値の逆
数を演算する逆数演算回路を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の物理量検出装置。
【請求項5】
前記電荷供給回路は、
2つの入力端子および出力端子を有する演算増幅器と、
一定の実効電圧を有する交流電圧を出力する交流電圧源と、
前記交流電圧源に接続された第1端子および前記演算増幅器の前記2つの入力端子のう
ち一方の入力端子に接続された第2端子を有し、前記物理量検出素子に供給される電荷を
蓄積する第1容量素子と、
前記物理量検出素子に対して並列に接続された抵抗素子と
を有し、
前記物理量検出素子は、前記演算増幅器に対して帰還回路を形成する位置に接続され、
前記演算増幅器の他方の入力端子は接地電位線に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項6】
前記物理量検出素子は、物理量の変化に対してある向きに静電容量が変化する第1容量
と、前記物理量の変化に対して前記第1容量と逆向きに静電容量が変化する第2容量とを
有し、
前記電荷供給回路は、
2つの入力端子および2つの出力端子を有する全差動演算増幅器と、
一定電圧の供給に用いられる電源線と、
接地電位の供給に用いられる接地電位線と、
前記電源線および前記接地電位線のうち一方に排他的に接続するスイッチ回路と、
前記スイッチ回路に接続された第1端子および前記全差動演算増幅器の前記2つの入力
端子のうち一方の入力端子に接続された第2端子を有し、前記物理量検出素子に供給され
る電荷を蓄積する第1容量素子と、
前記スイッチ回路に接続された第1端子および前記全差動演算増幅器の前記2つの入力
端子のうち他方の入力端子に接続された第2端子を有し、前記物理量検出素子に供給され
る電荷を蓄積する第2容量素子と、
前記第1容量に対して並列に接続された第1スイッチと、
前記第2容量に対して並列に接続された第2スイッチと、
前記全差動演算増幅器の前記2つの入力端子のコモンモード電圧を接地電位にする入力
コモンフィードバック回路と
を有し、
前記第1容量および前記第2容量は、前記全差動演算増幅器に対してそれぞれ異なる帰
還回路を形成する位置に接続され、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチは、前記スイッチ回路と関連して制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項7】
前記電荷供給回路は、
定電流供給回路と、
前記物理量検出素子に並列に接続された第1スイッチと、
一端が前記物理量検出素子に接続され、他端が定電流供給回路に接続された第2スイッ
チと、
前記第1スイッチの開閉を制御する第1タイミング信号および前記第2スイッチの開閉
を制御する第2タイミング信号を出力するタイミング発生回路と
を有し、
前記第1タイミング信号は、第1時間、前記第1スイッチを閉じさせる信号であり、
前記第2タイミング信号は、前記第1スイッチが開いた後で、第2時間、前記第2スイ
ッチを閉じさせる信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項8】
前記電荷供給回路は、
第1電流端子および第2電流端子を有するカレントミラー回路と、
前記物理量検出素子に並列に接続された第1スイッチと、
一端が前記物理量検出素子に接続され、他端が前記第1電流端子に接続された第2スイ
ッチと、
一端が前記第2電流端子に接続された容量素子と、
前記容量素子に並列に接続された第3スイッチと、
一定電圧が入力される第1入力端子、前記容量素子の一端の電圧が入力される第2入力
端子、および前記第2入力端子から入力される電圧が前記第1入力端子から入力される電
圧より低いときは第1レベルの信号を出力し、前記第2入力端子から入力される電圧が前
記第1入力端子から入力される電圧に達したときは第2レベルの信号を出力する出力端子
を有する比較器と
を有し、
前記第1スイッチおよび前記第3スイッチは、第1タイミング信号により開閉を制御さ
れ、
前記第2スイッチは、第2タイミング信号により開閉を制御され、
前記比較器から出力される信号が前記第2タイミング信号として用いられ、
前記第1信号は、一定時間前記第1スイッチを閉じさせる信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の物理量検出装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−233730(P2012−233730A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100840(P2011−100840)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】