説明

特定のトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル及び該化合物を含有するエポキシ樹脂組成物

【課題】
工業的に満足のいく方法で得られる低粘度で全塩素含有量の少ないトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを提供すること、及び該化合物を配合し硬化した際、高いガラス転移温度を持つ硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
トリメチロールプロパンの水酸基1当量に対し、エピクロルヒドリンを2〜15モル、アルカリ金属水酸化物及び4級塩の相間移動触媒の存在下に常圧で反応させて得られるグリシジルエーテルであって、25℃での粘度が300mPa・s以下、全塩素の含有量が0.7重量%以下、エポキシ当量が140g/eq以下であるトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル、及び該化合物と他のエポキシ樹脂、硬化剤を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリメチロールプロパンとエピクロルヒドリンを特定の条件下で反応させて得られる低粘度で全塩素含有量の少ないトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルおよび該化合物を配合し硬化した際、高いガラス転移温度と優れた機械物性を持つ硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂はその硬化物の強度や弾性率が大きいこと、接着強度が大きいこと、耐熱性に優れていること、耐薬品性に優れていることなどにより、封止剤や注型剤、接着剤、塗料、複合材など幅広い分野において利用されている。その中でも、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂が物性的にも、経済的にも優れ、最も多く使用されている。しかし、このエポキシ樹脂は粘度が25℃で13000mPa・sと高いため、通常希釈剤を用い、粘度を下げハンドリング性を良くして使用するのが一般的であるが、近年は、環境面や安全衛生面、物性面から非反応性の溶剤ではなく、反応性希釈剤と呼ばれる低粘度のエポキシ樹脂が用いられている。反応性希釈剤の代表的なものとしては、各種のモノエポキシ化合物やグリコール類、多価アルコールのグリシジルエーテル化合物がある。この内、硬化物物性の面から二官能以上のグリシジルエーテルが好ましく、その中でも、多官能で比較的低粘度であるトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルが、樹脂の物性を大きく落とさずに樹脂組成物の粘度を下げられる希釈剤として用いられている。特に、二官能の反応性希釈剤と比べ、樹脂組成物を硬化した際に得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)を下げない特長があるため、耐熱性が必要な用途に最適な反応性希釈剤である。
【0003】
耐熱性が必要な代表的な用途として、電気・電子部品用の封止剤としての用途がある。電気・電子部品の分野では、従来から封止材や電気絶縁材料を中心としてエポキシ樹脂は多く使用されているが、これらの用途へはエポキシ樹脂中に含まれる不純物である全塩素成分が、金属に対する腐食の原因となりうるため、全塩素の含有量が少ないものが望まれている。しかしながら、従来から用いられているトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルは、樹脂組成物中に配合し硬化した際、Tgの高い硬化物が得られるものの、全塩素含有量が6〜7重量%程度であることから、このものを配合したエポキシ樹脂組成物の全塩素含有量も多くなるため、電気・電子部品の分野への使用は困難であった。
【0004】
これに対し、全塩素含有量を0.1重量%以下に低減したトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが提案されている(特許文献1参照)。これは、上記した全塩素含有量が多いものを分子蒸留するなどして得られるものであるが、この場合、通常の製品をさらに精製するため、収率が悪く、工程数も多くなる事からコストが高くなり、工業的に満足のいくものではなかった。
【0005】
また、全塩素含有量を0.01重量%以下に低減したトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルも提案されている(特許文献2参照)。これは、トリメチロールプロパンにアリルクロライドを反応させアリルエーテル化合物を得た後、末端の二重結合を酸化剤でエポキシ化しグリシジルエーテルを得るものである。この方法の場合、全塩素含有量は極端に低い製品が得られるものの、沸点が45℃と低いアリルクロライドを使用するため、低沸点物を扱える製造設備が必要となることと、末端の二重結合の酸化の際、過酸化物を使用するため、使用時の量と温度の制御を慎重に行う必要がある事から、安全性などの面も含め、工業的に満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−106766号公報(第3頁、[0017])
【特許文献2】特開2004−231787号公報(第8頁、合成例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、工業的に満足のいく方法で得られる低粘度で全塩素含有量の少ないトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを提供すること、及び該化合物を配合し硬化した際、高いガラス転移温度と優れた機械物性を持つ硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トリメチロールプロパンの水酸基1当量に対し、エピクロルヒドリンを2〜15モル、4級塩の相間移動触媒及びアルカリ金属水酸化物の存在下に常圧で反応させて得られるグリシジルエーテルであって、25℃での粘度が300mPa・s以下、全塩素の含有量が0.7重量%以下、エポキシ当量が140g/eq以下であるトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル、及び該化合物と他のエポキシ樹脂、硬化剤を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物により上記課題を解決するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルは、多官能でありながら低粘度で、エポキシ当量も低いため、該化合物を配合したエポキシ樹脂組成物は低粘度で作業性が優れると共に、硬化した際に機械的物性に優れ、高いガラス転移温度を持つ耐熱性に優れた硬化物が得られる。また、全塩素含有量も少ないため、電気・電子部品用封止剤を主に広範な用途での使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、トリメチロールプロパンとエピクロルヒドリンを特定の条件下で反応させて得られる低粘度で全塩素含有量の少ないトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルおよび該化合物を配合し硬化した際、高いガラス転移温度を持つ硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物に関するものであるが、トリメチロールプロパンとエピクロルヒドリンの反応条件や硬化物の樹脂組成物について、以下に説明する。
【0011】
本発明の低粘度で全塩素含有量の少ないトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを得るための反応条件としては、トリメチロールプロパンの水酸基1当量に対し、エピクロルヒドリンを2〜15モルの割合で反応容器中に仕込んだ後、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩などの相間移動触媒及び水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の存在下、30〜70℃、常圧で反応させる事により、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルを含んだ反応溶液を得ることが出来る。
【0012】
次に、反応溶液から公知の方法で分離、精製することにより目的のトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルを得ることが出来る。一例としては、反応後に生成した塩を水洗分液により除去した後、反応溶媒を兼ねたエピクロルヒドリンを留去し、その後、濾過や精製を行うことで目的物が得られる。
【0013】
反応条件について、更に詳細に説明する。エピクロルヒドリンの仕込み割合については、トリメチロールプロパンの水酸基1当量に対し、エピクロルヒドリンを2〜15モル、好ましくは3〜10モルの割合で仕込む。2モル未満であると、重合物が多く生成して得られる製品の粘度が高くなり、15モルを超えると、反応速度が遅くなることや、1ロット当たりに得られる量が少なくコストアップとなるなどのデメリットが発生するため好ましくない。
【0014】
相関移動触媒については、4級塩を用いるが、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩またはそれらの混合物を用いることが好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムフルオリド(水和物)、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキサイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリドデシルメチルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムアセテート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩またはそれらの混合物、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムヒドロキサイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムヒドロキサイド、テトラブチルホスホニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド、トリブチルオクチルホスホニウムブロマイド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、トリブチルアリルホスホウニウムブロマイド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、トリブチルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド等の4級ホスホニウム塩またはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリドデシルメチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、トリブチルベンジルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムヒドロキサイド、トリオクチルエチルホスホニウムブロマイドが挙げられる。これらの塩を反応に用いる場合、水や溶媒に塩を溶解させて用いても良いし、そのまま用いても良い。
【0015】
アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いることが好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。性状については、液状の物より固形の物を用いる方が得られる製品の粘度や全塩素含有量を低く抑える事ができるので好ましい。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、トリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂及び硬化剤を必須成分とすることを特徴とする。トリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルは、25℃での粘度が300mPa・s以下、好ましくは、250mPa・s以下、全塩素の含有量が0.7重量%以下、好ましくは、0.5重量%以下、エポキシ当量が140g/eq以下、好ましくは、110〜135g/eqである。他のエポキシ樹脂及び硬化剤について以下に説明する。
【0017】
本発明で用いられる他のエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール・ビフェニレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、ハロゲン化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂や3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジル化物等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、芳香族アミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体等、環状構造を持った2官能以上のエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種あるいは2種以上を組合せて用いることができ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等様々なエポキシ樹脂とも併用することができる。
【0018】
本発明で用いられる硬化剤としては、配合後常温又は加熱により硬化が可能な酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、潜在性硬化剤や、配合後加熱又は紫外線等の光照射により硬化が可能なカチオン重合開始剤等を挙げることができる。
【0019】
本発明における酸無水物系硬化剤の具体例としては、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート等が挙げられる。これらの中でも、配合樹脂組成物の取り扱いの作業性や硬化後の特性、汎用性等を考慮すると、常温で液状であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物が好ましい。
【0020】
酸無水物系硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体(本発明でいうところのトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂の総和)のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.8〜1.2当量の範囲であることがより好ましい。
【0021】
本発明におけるアミン系硬化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ポリオキシペンチレンジアミン、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミン、ポリオキシペンチレントリアミン、ジエチレントリアミン<DETA>、トリエチレンテトラミン<TETA>、テトラエチレンペンタミン<TEPA>、m−キシレンジアミン<MXDA>、トリメチルヘキサメチレンジアミン<TMD>、2−メチルペンタメチレンジアミン<2−MPMDA>、ジエチルアミノプロピルアミン<DEAPA>、イソフォロンジアミン<IPDA>、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン<1,3−BAC>、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン<PACM>、ノルボルネンジアミン<NBDA>、1,2−ジアミノシクロヘキサン<1,2−DCH>、ラロミンC−260、ジアミノジフェニルメタン<DDM>、メタフェニレンジアミン<MPDA>、ジアミノジフェニルスルフォン<DDS>、N−アミノエチルピペラジン<N−AEP>等が挙げられる。また、これらの変性物、例えばMXDA変性物、IPDA変性物等を用いても良い。
【0022】
アミン系硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体(本発明でいうところのトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂の総和)のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.8〜1.2当量の範囲であることがより好ましい。
【0023】
本発明におけるフェノール系硬化剤の具体例としては、各種フェノールを原料とするフェノールノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、テルペン骨格含有フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。上記で使用される各種フェノールとしてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ナフトール類等が挙げられる。
【0024】
フェノール系硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体(本発明でいうところのトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂の総和)のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.8〜1.2当量の範囲であることがより好ましい。
【0025】
潜在性硬化剤の具体例としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジヒドラジド化合物、アミンアダクト系潜在性硬化剤、ケチミン化合物等が挙げられる。これらの潜在性硬化剤はあらかじめエポキシ樹脂に混合した状態で長期間保存できるため、取り扱いが容易なので好ましい。
【0026】
潜在性硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体(本発明でいうところのトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂の総和)の100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると5〜20重量部の範囲であることがより好ましい。
【0027】
カチオン重合開始剤としては、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウムなどから選ばれる少なくとも1種のカチオンと、BF4−、PF6−、SbF6−から選ばれる少なくとも1種のアニオンとから構成されるオニウム塩等があげられる。このようなカチオン重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0028】
芳香族スルホニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム テトラフルオロボレート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0029】
芳香族ヨードニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0030】
芳香族ジアゾニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウム テトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0031】
芳香族アンモニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0032】
カチオン重合開始剤の含有量はエポキシ樹脂全体(本発明でいうところのトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂の総和)の100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.3〜7重量部の範囲であることがより好ましい。
【0033】
各種硬化剤については、1種単独で用いても良く、必要に応じて2種以上併用しても良い。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化物の物性を損なわない範囲において、上記の成分以外に硬化促進剤を加えることができる。硬化促進剤を加えることにより、硬化速度を早くすることができ生産性の向上につながる。
【0035】
硬化促進剤として使用することのできる化合物としては特に限定されないが、具体的には、トリフェニルベンジルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類とその第四級塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール<2E4MZ>、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール<2E4MZ−CN>、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]エチル−s−トリアジン<2MZ−A>、2−フェニルイミダゾリン<2PZL>、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール<TBZ>等のイミダゾール類、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール<DMP−30>、ベンジルジメチルアミン<BDMA>等の3級アミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7<DBU>、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5<DBN>等の超強塩基性の有機化合物、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の有機カルボン酸金属塩、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等の金属−有機キレート化合物等の公知の化合物が挙げられる。これら促進剤は硬化に要する時間やポットライフなど樹脂組成物に対する要求に対して適切に選択される。
【0036】
硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂全体(本発明でいうところのトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂の総和)の100重量部に対して、0〜6重量部配合することが好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、レベリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、樹脂粒子、濡れ性改良剤、消泡剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤;炭酸カルシウム、タルク、シリカ、硫酸バリウム等の無機フィラー等を併用することができる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は加熱によって硬化する事ができるが、硬化剤にカチオン重合開始剤を用いる場合、活性エネルギー線を照射して硬化させる事もできる。活性エネルギー線とは、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線若しくは電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置として多くの種類があるが、任意に選択できる。また、低波長領域側の可視光等エネルギーとして、青色LEDを用いることも可能である。
【0039】
本発明でいう硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を、加熱、或いは、活性エネルギー線を照射することにより得られるが、DSCで測定されるガラス転移温度が、120℃以上であることが好ましい。
【0040】
以下、本発明の詳細を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例】
【0041】
<合成例1>
撹拌機、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応器に、トリメチロールプロパン(TMP(三菱ガス化学(株)製)水酸基当量44.7g/eq)を45g(1.0当量)、エピクロルヒドリンを648g(7.0mol)仕込み、さらに相間移動触媒としてベンジルトリブチルアンモニウムクロライドを6.0g添加した。次に、内温50℃で水酸化ナトリウム60g(1.5mol)を1時間掛けて添加し、同温で2時間反応させた。反応後、生成した食塩、及び未反応の水酸化ナトリウム、触媒を水洗によって除去した後、減圧下、エピクロルヒドリンを留去し、トルエン200gを追加した。その後、水洗分液を数回繰り返した後、トルエンを減圧留去し、85gの液状生成物(以下、A−1と略す)を得た。このもののエポキシ当量は122g/eq、粘度は130mPa・s(25℃)、全塩素含有量は0.33%であった。
【0042】
ここで、合成した液状エポキシ化合物のエポキシ当量、粘度、全塩素は、以下の方法に従い測定し算出した。
エポキシ当量:JIS K7236に準じて測定し算出した。
25℃での粘度:JIS K7233の毛細管粘度計法に準じて測定し算出した。
全塩素含有量:JIS K7243−3に準じて測定し算出した。
【0043】
<合成例2>
エピクロルヒドリンを278g(3.0mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、合成例1と同様の反応を行い、80gの液状生成物(以下、A−2と略す)を得た。このもののエポキシ当量は132g/eq、粘度は240mPa・s(25℃)、全塩素含有量は0.48%であった。
【0044】
<比較合成例1>
エピクロルヒドリンを139g(1.5mol)に変更した以外は合成例1と同様の反応を行い、65gの液状生成物(以下、A−3と略す)が得られた。このもののエポキシ当量は170g/eq、粘度は2500mPa・s(25℃)、全塩素含有量は0.59%であった。
【0045】
<比較合成例2>
撹拌機、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応器に、トリメチロールプロパン(TMP(三菱ガス化学(株)製)水酸基当量44.7g/eq)を45g(1.0当量)、トルエンを80g、三フッ化ホウ素エーテル錯塩を2g仕込み、内温を70℃に保ちながらエピクロルヒドリン93g(1.0mol)を3時間かけて滴下し付加反応を行った。反応後、48%水酸化ナトリウム125g(1.5mol)を添加して閉環反応を行い、数回水洗分液を繰り返すことによって生成した食塩、及び未反応の水酸化ナトリウム、触媒を除去した後、減圧下、トルエンを留去し、95gの液状生成物(以下、A−4と略す)が得られた。このもののエポキシ当量は137g/eq、粘度は125mPa・s(25℃)、全塩素含有量は7.0%であった。
【0046】
<合成例3>
撹拌機、温度計、コンデンサー、窒素導入管を備えた反応器に、トリメチロールプロパン(TMP(三菱ガス化学(株)製)水酸基当量44.7g/eq)を45g(1.0当量)、エピクロルヒドリンを833g(9.0mol)仕込み、さらに相間移動触媒としてトリオクチルメチルアンモニウムクロライドを8.4g添加した。次に、内温50℃で水酸化ナトリウム64g(1.6mol)を0.5時間掛けて添加し、同温で1.5時間反応させた。 反応後、生成した食塩、及び未反応の水酸化ナトリウム、触媒を水洗によって除去した後、減圧下、エピクロルヒドリンを留去し、トルエン200gを追加した。その後、水洗分液を数回繰り返した後、トルエンを減圧留去し、86gの液状生成物(以下、A−5と略す)を得た。このもののエポキシ当量は120g/eq、粘度は100mPa・s(25℃)、全塩素含有量は0.64%であった。
【0047】
<比較合成例3>
トリメチロールプロパンを1,6−ヘキサンジオール59g(1.0当量)に変更した以外は合成例3と同様の反応を行い、103gの液状生成物(以下、A−6と略す)が得られた。このもののエポキシ当量は125g/eq、粘度は12mPa・s(25℃)、全塩素含有量は0.39%であった。
【0048】
<実施例1>
表1に示す処方配合に従って、エポキシ樹脂成分として合成例1で得られたA−1(エポキシ当量:123g/eq)を20部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:186g/eq)を80部、硬化剤成分としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量:166g/eq)を88部(エポキシ基1当量に対し0.9当量)、硬化促進剤成分としてトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを1.0部、均一に撹拌混合することで本発明にかかる樹脂組成物を得た。さらに当該組成物を120℃×5時間+150℃×15時間かけて加熱し、硬化物を作成し、物性評価を行なった。その結果を表1に示した。
【0049】
<実施例2,比較例1〜2>
表1に示す処方配合に従って、各構成成分を撹拌混合したこと以外は実施例1と同様にして硬化物を作成し、物性評価を行った。その結果を表1に示した。
【0050】
<実施例3>
表1に示す処方配合に従って、エポキシ樹脂成分として合成例1で得られたA−1(エポキシ当量:123g/eq)を15部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:186g/eq)を85部、硬化剤成分として芳香族スルホニウム塩主成分のカチオン重合開始剤を2部(エポキシ樹脂成分100重量部に対し2部)、均一に撹拌混合することで本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を得た。さらに当該組成物を120℃×1時間+180℃×1時間かけて加熱し、硬化物を作成し、物性評価を行なった。その結果を表1に示した。
【0051】
以下に、実施例1〜3と比較例1〜2における評価方法を説明する。
<ガラス転移温度>
得られた硬化物をJIS K 7121に準じて評価した。
<曲げ強度、曲げたわみ率>
得られた硬化物をJIS K 7171に準じて評価した。
<煮沸吸水率>
得られた硬化物をJIS K 7110のB法に準じて評価した。但し、煮沸時間を3時間とした。
【0052】
【表1】

【0053】
<実施例4,比較例3〜5>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:186g/eq,粘度13000mPa・s(25℃))に合成例や比較合成例などのエポキシ樹脂を、粘度が2500mPa・s(25℃)になるよう表2に示す割合で配合した。このエポキシ樹脂成分100部に対し、硬化剤成分としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量:166g/eq)をエポキシ基1当量に対し0.9当量になるよう表2に示す割合で配合した後、硬化促進剤成分としてトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを1.0部加え、均一に撹拌混合することで本発明にかかる樹脂組成物を得た。さらに当該組成物を120℃×5時間+150℃×15時間かけて加熱し、硬化物を作成し、物性評価を行なった。その結果を表2に示した。
【0054】
<比較例6>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:186g/eq,粘度13000mPa・s(25℃))に合成例や比較合成例などのエポキシ樹脂を配合せずにエポキシ樹脂成分100部とした以外は実施例4と同様にして硬化物を作成し、物性評価を行った。その結果を表2に示した。
【0055】
以下に、実施例4と比較例3〜6における評価方法を説明する。
<ガラス転移温度>
得られた硬化物をJIS K 7121に準じて評価した。
<引張強度、引張伸び率>
得られた硬化物をJIS K 7113に準じて評価した。
<曲げ強度、曲げたわみ率>
得られた硬化物をJIS K 7171に準じて評価した。
【0056】
【表2】

【0057】
表1及び表2に示したように、実施例で示した本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化した際、高いガラス転移温度を持ち機械物性が良好な硬化物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルは、多官能でありながら低粘度で、エポキシ当量も低いため、該化合物を配合したエポキシ樹脂組成物は低粘度で作業性が優れると共に、硬化した際に機械的物性に優れ、高いガラス転移温度を持つ耐熱性に優れた硬化物が得られる。また、全塩素含有量も少ないため、電気・電子部品用の封止材、積層板用樹脂、注型材料、電気絶縁材料、接着剤等への応用が可能であり、産業上における利用価値が極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチロールプロパンの水酸基1当量に対し、エピクロルヒドリンを2〜15モル、4級塩の相間移動触媒及びアルカリ金属水酸化物の存在下に常圧で反応させて得られるグリシジルエーテルであって、25℃での粘度が300mPa・s以下、全塩素の含有量が0.7重量%以下、エポキシ当量が140g/eq以下であるトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル。
【請求項2】
請求項1記載のトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテルと他のエポキシ樹脂及び硬化剤を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤が酸無水物系硬化剤またはカチオン重合開始剤である請求項2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
硬化物のDSCで測定されるガラス転移温度が、120℃以上である事を特徴とする請求項2または3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有する事を特徴とする電気・電子部品用材料。

【公開番号】特開2011−178816(P2011−178816A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39061(P2010−39061)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】