説明

特定の金属酵素を刺激する組成物

【課題】アルコール及びアセトアルデヒドの代謝を促進して人体への負荷を軽減することができ、それによって暴飲、悪酔い及び二日酔いを防止するのに有効な飲料として好ましくは製造される組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、体内のアルコール及びアセトアルデヒドの分解を促進する安定な組成物、好ましくは清涼飲料水であり、カフェイン、ハーブ及びフルクトースの相乗的組合せを含み、好ましい実施形態は、カフェイン、ガラナ・カフェイン、マテ茶、エレウテロコックス、チョウセンニンジン、ショウガ、グルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)、フルクトース及び追加の成分(糖、香味料、着色剤、ビタミン、安定剤、全果粉末など)及び必要に応じてイチョウを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール及びアセトアルデヒドの代謝を促進して人体への負荷を軽減することができ、それによって暴飲、悪酔い及び二日酔いを防止するのに有効な飲料として好ましくは製造される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールの消費によってアセトアルデヒドが蓄積し、それに伴って頭痛、悪心、震え及びめまいに襲われることがある。これは通常二日酔いと呼ばれる。服用すると二日酔いの症状を軽減できる製品がいくつか当分野では知られている。このような製品の例は、フルクトース−カフェイン−ビタミンC混合物やフルクトース−カフェイン混合物である。このような製品は、一般に、粉末又は錠剤の形態をしており、水を加えて再水和品として飲むようになっている。これらの製品は、常に、パラセタモールやアスピリンなどの鎮痛薬を含み、痛みを軽減する。ジルテック(Zyrtec)のような抗ヒスタミン薬を含む製品も、二日酔いの症状を軽減するのに使用されることが多い。しかし、鎮痛薬や抗ヒスタミン薬をこのように使用することが望ましくないこともある。例えば、消化管出血などアルコール消費に伴う諸問題を悪化させることがある。
【0003】
国際公開第9961038号は、このような製品の一例であり、本発明で使用する成分のいくつかを含有している。国際公開第9961038号に記載されている組成物は、栄養上有益な代用物(substituent)及び短期又は長期の精神的フィードバック(psychological feedback)を刺激する代用物を含むこと、並びに栄養上有益な代用物をレシピエントに送達するビヒクル又は装置を特許請求している。この組成物は、アルコール代謝を促進するようには処方されておらず、アルコール代謝酵素を強く阻害することがすでに示されている成分もいくつか含有する。特に、システイン、アセチルシステイン、グルタチオン及びメチオニンのようなチオール化合物がこれに該当し[1]、これらは肝臓のアルコール脱水素酵素(LADH)の活性を阻害する(μM〜mMのKi)。この組成物中のいくつかの複素環試薬にもこれはあてはまる[2、3]。
【0004】
より重要なことは、国際公開第9961038号に記載の組成物が、本発明のアルコール代謝促進作用に最も重要な少なくとも3つの成分を欠いてもいることである。これらは、マテ茶(Yerba Mate)、エレウテロコックス(Eleutherococcus senticocus)、グルキルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)である。これらは、アルコール及びアセトアルデヒドの代謝酵素に刺激をもたらす相乗的組合せに必須の成分である。これら各成分を欠くと相乗効果及び全体的効果がそれぞれ30〜50%及び15〜25%低下することが実験で示された。マテ茶は、単に天然カフェインを含有するためだけでなく、表1に列挙する他の活性となり得る成分をいくつか含有するために添加されることも述べておく。
【0005】
国際公開第98/32434号は、肝臓毒性の軽減及び二日酔いの解消を目的とした新しいアセトアミノフェン鎮痛組成物を記載しており、この組成物は、アルコール代謝を促進するアスパラギン酸及びアセトアミノフェンの肝臓毒性を緩和するメチオニンを含んでいる。
【0006】
英国特許第2308810号は、脱水状態の患者に水を補給したり、脱水症を予防したりするための、フルクトースを含有し鎮痛薬を含まない組成物を記載している。脱水状態を予防することによって、脱水により起こる二日酔い、体力消耗(physical exertion)、又は下痢を治療するためにもこの組成物は特許請求されている。
【0007】
日本国特許第0601474号は、活性成分としてケルセチン(quercetin)のグルコシド、2価の金属イオン及びカンゾウ(liquorice)エキスを含有し、アルコール代謝を促進可能な製品を記載している。
【0008】
従来技術に対する本発明の新規性は、上述のように、相乗的に働く特定の成分を組み合わせることにある。特に、マテ茶、チョウセンニンジン(Panax ginseng)、イチョウ(ginkgo biloba)、エレウテロコックス、ショウガ及びグルキルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)(カンゾウ(Liquorice Root))の組合せがそうである。これらの成分のいくつかは、上述の従来技術に見出せるが、有意な相乗効果を得るために必要な組合せにはなっていない。本発明の新規な組合せは、多数の含有/非含有実験を通して見出されたものである。これらの実験の結果、驚くべきことに、二日酔いを予防する(かつ活力(energy level)を高める)のに特に有効な組合せはマテ茶、チョウセンニンジン及びイチョウであり、その相乗効果は単なる相加効果よりも極めて大きいことが判明した。別の新規な組合せはエレウテロコックス、ショウガ及びグルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)であり、これらはアルコール代謝酵素の活性を有意に増大させることが判明した。
【0009】
上述の製品及び既存のフルクトース−ビタミンC混合物やフルクトース−カフェイン混合物のどれよりもアルコール及びアセトアルデヒドを極めて速く分解する高度に特異的な組成物が提供される。この組成物は、製品の安定性を損なう酵素やNADH/NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)を含まず、健康に有害な化合物も含まない。カフェインの変種、ハーブ及びフルクトースは相乗効果を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、アルコール及びアセトアルデヒドの代謝を促進して、アルコールに関係する障害や二日酔いの症状を予防し軽減するのに適した組成物を提供することによって、上記障害を未然に取り除きかつ/又は軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、体内のアルコール及びアセトアルデヒドの分解を促進する安定な組成物、好ましくは清涼飲料水であり、カフェイン、ハーブ及びフルクトースの相乗的組合せを含み、好ましい実施形態は、カフェイン、ガラナ・カフェイン、マテ茶、エレウテロコックス、チョウセンニンジン、ショウガ、グルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)、フルクトース及び追加の成分(糖、香味料、着色剤、ビタミン、安定剤、全果粉末(whole fruit powder)など)及び必要に応じてイチョウを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、体内のアルコール及びアセトアルデヒドの分解を促進する安定な組成物、好ましくは清涼飲料水であり、カフェイン、ハーブ及びフルクトースの相乗的組合せを含む。
【0013】
本発明は、例えば、個人の二日酔いに伴う諸症状の発生を軽減し防止するのに使用される。アルコール消費の翌日に本発明の組成物を服用してアルコールの血中濃度を低下させることもできる。この組成物は、脱水症状も部分的に軽減し防止する。二日酔いに伴う諸症状の発生を防止する場合、この組成物をアルコール消費後速やかに服用することができる。アルコール代謝の鍵酵素の働きを促進することによって、アルコール及びアセトアルデヒドの分解が促進され、過剰のアルコール消費による有害作用(例えば、頭痛、循環器障害、口渇、悪心、震え、めまい、疲労及び協調障害(coordination difficulties))が抑制される。
【0014】
したがって、本発明は、
−二日酔いに伴う諸症状の発生を軽減し防止すること、
−アルコールの分解を促進すること、及び
−脱水症状を軽減し防止することに使用するのに適切な組成物を提供する。
【0015】
本発明の組成物は、運動や病気による体力消耗後に個人の活力を増大させるために服用することもできる。長距離飛行などで長時間移動する個人も、特にアルコール消費のため体力を使い脱水症状になることがあり、したがってやはりこの組成物を服用することによって薬効を得ることができる。
【0016】
また、本発明の組成物を以下のいくつかの医療用途に使用することもできる。
−急性アルコール中毒の治療。
−アルコール(及び可能であればアセトアルデヒド)の分解速度を高めることができるので、これらの高反応性物質が起こす細胞及び組織への損傷を抑制するためにも使用することができる。
−この組成物は、エタノールの中毒作用を軽減し得ることから、アルコール中毒者のアルコール依存を抑制するのにも適している。
−アルコール分解促進がアセトアルデヒド分解促進を上回る場合、本発明をジスルフィラムなどの薬物の効果を高めるのに使用することもできる。さらに、必要な薬物の用量を削減することによって、副作用及び薬物毒性を抑制し取り除くことができる。
【0017】
本発明の組成物は、緑茶、追加の糖、香味料、着色剤、ビタミン、安定剤、全果粉末などの追加の成分をいくつか含有することもできる。この組成物に鎮痛薬を添加することもできる。
【0018】
好ましくは、水又は他の適切な液体に溶解したこの組成物を、典型的には例えば二酸化炭素を用いて炭酸化することによって発泡性とすることができる。この組成物を、乾燥粉末、混合物、シロップ、顆粒、錠剤及びサシェ(sachet)の形で処方することもできる。また、本発明の組成物を、薬剤に処方することもできる。適切であれば、この薬剤はさらに、薬剤として適合する担体を含む。適切な担体及びそのような薬剤の処方は、当業者には既知である。
【0019】
組成
本発明の組成物の各成分量は、この組成物を使用する個々の用途に応じて個別に選択される。本発明の好ましい実施形態では、この組成物は、カフェイン(0.001〜0.1%、好ましくは0.01%)、ガラナ・カフェイン(0.001〜0.1%、好ましくは0.01%)、マテ茶(0.001〜0.1%、好ましくは0.01%)、エレウテロコックス(0.05〜2.0%、好ましくは0.2%)、チョウセンニンジン(0.002〜0.2%、好ましくは0.02%)、ショウガ(0.3〜30%、好ましくは3.0%)、グルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)(0.02〜2.0%、好ましくは0.2%)、イチョウ(0.00〜0.2%、好ましくは0.02%)及び必要に応じてフルクトース(0〜99%、好ましくは75%)、追加の成分(糖、香味料、着色剤、ビタミン、安定剤、全果粉末など)(0.1〜89.5%、好ましくは21.5%)を含む。上記の百分率はすべて組成物の乾燥重量当たりの百分率である。
【0020】
この組成物を水又は他の適切な液体に溶解して水性組成物として提供することが好ましい。好ましくは、水/適切な液体10部に対して組成物1部、より好ましくは水/適切な液体5部に対して組成物1部の比率でこの組成物を溶解する。通常、この水性組成物の個人に対する好ましい量は250〜750ml、より好ましくは400〜500mlである。この水性組成物のpHは約3〜7.5、より好ましくは3〜5.5である。
【0021】
本発明の組成物を製造するための方法を提供する。本発明の方法は、
a)フルクトースと水に可溶な乾燥成分(すなわち、カフェイン、エレウテロコックス及びグルキルリザ・グラブラ(カンゾウ))を混合すること、
b)a)の乾燥混合物に水を1:2(乾燥混合物:水)の比で添加すること、
c)この混合物を全成分が溶解するまで撹拌すること、
d)諸成分(ガラナ、マテ茶、ショウガ、チョウセンニンジン及び必要に応じてイチョウ)を添加すること、
e)この混合物を均一な混合物が得られるまで撹拌すること、
f)芳香剤、香味料及び/又は安定剤を添加すること、
g)任意の量が得られるまで(必要に応じて)水でこの混合物を希釈すること及び、必要に応じて、
h)a)〜e)で得た混合物に着色成分を添加すること、及び/又は、
i)a)〜e)で得た混合物に発泡性を付与するためにガス、好ましくは二酸化炭素を添加することを含む。
【0022】
作用機序
エタノール代謝の基本経路[4]を図1に示す。エタノール分解刺激及び二日酔い防止に対する上記組成物の効果を表2に示す。本発明(表2A)とフルクトース−カフェイン−ビタミンC飲料(表2B)との比較も表2に示す。検討した各症例におけるこの組成物の効果は、アルコール分解が40〜90%促進されたこと及び二日酔い症状が有意に軽減したことであった。アルコール分解が促進されることは、おそらく、カフェイン変種及び/又はハーブによって形成される酵素−NADH−活性化剤(ERA)の3元複合体が、一般的な律速段階である酵素−NADH(ER)の解離よりも不安定であるためである。考えられる機序は、2,2’−及び4,4’−ジピリジルに対する既報の機序[5]とほぼ同じである。アルコール分解が促進されることは、1つには、やはりアルコール代謝に関与するカタラーゼ及び/又はCYP2E1が刺激されるためでもある[6]。
【0023】
アセトアルデヒドの蓄積が二日酔い症状の主因であるので[7、8]、二日酔いに対するこの組成物の効果は、アルデヒド脱水素酵素活性が刺激されたことも示している。アセトアルデヒド分解を促進させるには、1つには、やはりアルデヒドを酸化できるLADHを刺激することによっても実施することができる[9]。
【0024】
エタノール代謝に対するフルクトースの効果は、数十年来議論されてきた。この効果に関する結論が異なるのは、実験計画の違いによるのかもしれない[10]。フルクトースは単体でエタノール分解を刺激できることが数々の研究によって示されているが、上記組成の効果は、糖と他の活性化剤との相乗効果のためである。これは表2の結果によっても示されており、フルクトース−カフェイン−ビタミンCの効果は、本発明の効果よりもかなり小さい。フルクトースの効果は、おそらく、ATPの代謝回転を速めてNADHの再酸化に利用可能なADPをより多く作り出す能力に起因する(図3)。NADHはLADHの強力な阻害剤(Ki=56μM)であるので[6]、NADHの再酸化を促進することは、LADH活性の阻害を弱める結果となり得る。
【0025】
従来技術に対する本発明の新規性は、相乗的に働く諸成分の組合せにある。マテ茶、チョウセンニンジン、イチョウ、エレウテロコックス、ショウガ及びグルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)の場合が特にそうである。これら諸成分のいくつかは従来技術にも見出すことができるが、それらを組み合わせて有意な相乗効果を得るようにはなされていない。本発明の新規な組合せは、多数の含有/非含有実験を通して見出された。これらの実験の結果、驚くべきことに、二日酔いを予防する(かつ活力を高める)のに特に有効な組合せはマテ茶、チョウセンニンジン及びイチョウであり、その相乗効果は単なる累加効果よりも極めて大きいことが判明した。別の新規な組合せはエレウテロコックス、ショウガ及びグルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)であり、これらはアルコール代謝酵素の活性を有意に増大させることが判明した。
【0026】
実施例及び表2の実験結果から、フルクトース−カフェイン−ビタミンC飲料はある程度アルコール代謝を促進し、二日酔い症状を軽減することができるが、本発明の効果はすべての事項でそれよりも極めて大きいことが示されている。
【実施例】
【0027】
本発明を具体化する鎮痛薬無添加組成物の特に好ましい製剤は、カフェイン35mg、ガラナ・カフェイン28mg、マテ茶27mg、エレウテロコックス360mg、チョウセンニンジン70mg、グルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)360mg、ショウガ1g及びフルクトース90gを含む。次いで、天然オレンジの香味料を添加し、この組成物を水で全量500mlに希釈する。次いで、この溶液を炭酸化して最終組成物とする。この組成物をアルコール消費から30〜60分後に服用すると、アルコール分解が促進され、二日酔いに伴う症状を予防し軽減するのに特に有効であることが判明した。
【0028】
表2及び3に示す試験には、10人の個人(24〜57歳の6人の男性と4人の女性)が参加した。
−第1の試験(表2A)では、スプライト(The Coca Cola Company)6dlで割った8オンス(約2.4dl)のウォッカを治験者に与えた。このアルコールを1時間以内に消費した。アルコール消費から45分後、各人が水500mlを飲んだ。次いで、アルコール濃度を下記のようにして測定した。1週間後、同一治験者にこれと同じ量のスプライト割りウォッカを与えた。アルコール消費から45分後、各人が本発明の組成物500mlを飲んだ。次いで、アルコール濃度を下記のようにして測定した。
−本発明の組成物の代わりにフルクトース90g、カフェイン90mg及びビタミンC500mgを含有する溶液500mlを治験者に与えた以外は表2Aの試験で記載したのと同じようにして、第2の試験の両方(表2B)を実施した。アルコール濃度を下記のようにして再測定した。
【0029】
CA 2000 Digital Alcohol Detectorを用いて各実験で30分毎に(°/ooで測定した)アルコール濃度を測定した。各値は4回の並行測定の平均値である。二日酔いに対する効果の評価を、1〜10のスケールで段階づけした(10が最もスコアが高い)。
【0030】
結果
第1の試験の結果を表2Aに示す。各ケースにおいて、本発明の組成物500mlを服用すると、アルコール分解が著しく促進された。この増分は、67〜92%であり、平均83%であった。(二日酔い症状の10〜100%軽減に相当する)1〜10のスケールで段階づけた二日酔い症状も著しく(80〜100%)軽減された。
【0031】
比較検討(表2B)の結果、フルクトース−カフェイン−ビタミンC飲料を服用した後では、アルコール分解及び二日酔い症状の軽減の増分はそれよりも極めて緩やかであった。アルコール分解の増分は29〜56%であり、平均45%であった。二日酔い症状の軽減は50〜70%であった。
【0032】
本発明の組成物が、二日酔いを予防する(及び活力を高める)特に有効な組合せであることが上記結果から明白である。この効果は相乗的に働き、単なる累加効果よりも極めて大きかった。
【0033】
上記実施例を変形して、抗菌剤、ビタミン、着色剤などを含めることは容易である。天然の発泡性湧水を用いて処方して、この組成物の炭酸化を不要にすることもできる。上記組成物は、アルコール分解を促進し二日酔いを軽減するオレンジ飲料として提供される。柑橘系飲料、レモン飲料及びライム飲料用の別の処方は、先と同じ主要成分をほぼ等量含み、異なる香味料/着色剤を含む。
【0034】
本発明をその具体的実施形態に関連して記述したが、組成の様々な変形及び/又は別の応用例が考えられることは当業者には自明なはずである。
【0035】
フルクトース無添加組成物を用いた実験
実施例の項に記載した組成物の量は比較的多い。これはフルクトース含量のためである。したがって、必要な組成物量を最小限に抑えるために、新たに一組の実験を実施した。
【0036】
先の実験(及び表2)で記載したのと同じ条件を用いて、同一治験者に、カフェイン5mg、ガラナ・カフェイン85mg、マテ茶10mg、エレウテロコックス360mg、チョウセンニンジン70mg、グルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)360mg、イチョウ100mg及びショウガ1gを含む組成物2センチリットルを与えた。
【0037】
この組成物は、アルコール消費から30分後に服用すると、表3に示すようにアルコール分解を平均60%促進することが判明した。この結果から、アルコール分解促進に対するフルクトースの寄与率は約20〜25%であることがわかる。これは既報の結果[10]とよく一致する。
【0038】
この新しい組成物は、アルコール分解に対する全体的効果がやや減少するものの、フルクトース含有組成物と比較して以下のいくつかの利点を有する。すなわち、
−量がかなり減少したことで、服用が極めて容易になる。これは、急性アルコール中毒の場合に特に重要になり得る。
−高用量のフルクトースを消費することによって起こる悪影響がない。
−肝臓に対して長期にわたり起こり得るフルクトースの悪影響がない。
−フルクトースを受けつけない患者もこの組成物を使用して薬効を得ることができる。
【0039】
まとめると、これらの利点によって、本発明のフルクトース無添加組成物は最も好ましい組成物となっている。しかし、所望の味及び/又は量に応じて、フルクトースを甘味料として、又はアルコール分解の効果を高めるために添加することができる。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
表1:マテ茶の組成。
分析により、マテ茶は以下の組成を有する:
水、セルロース、ゴム、デキストリン、粘液、グルコース、五炭糖、脂肪物質、芳香族樹脂、レグミン(legumin)、アルブミン、キサンチン、テオフィリン、トリゴネリン(caffearin)、葉酸、カフェー酸(caffeic acid)、ビリジック(viridic)酸、葉緑素、コレステリン及び精油(essence oil)。
灰分は、多量のカリウム、リチウム、葉酸、硫酸、炭素酸、塩酸及びクエン酸、さらに微量のマグネシウム、マンガン、鉄、アルミニウム及びヒ素を含有する。
キサンチン、テオフィリン及びテオブロミンは、マテ茶に含まれる3つの密接に関連するアルカロイドであり、治療上最も興味深い化合物に属する。マテ茶のキサンチンは平均1.60%と見積もられ、煎じ液中では1.10%である。
【0044】
表2:アルコール代謝及び二日酔い症状に対する本発明の組成物の効果。
スプライト(The Coca Cola Company)を混ぜたウォッカを1時間以内に飲んでアルコールを消費した。(°/ooで測定される)アルコール濃度を、CA 2000 Digital Alcohol Detectorで30分毎に測定した。各値は4回の並行測定の平均値である。二日酔いに対する効果の評価を、1〜10のスケールで段階づけした(10が最もスコアが高い)。10人の健常個人、すなわち6人の男性と4人の女性が試験に参加した。
A)アルコール消費から30〜60分後に本発明による組成物500mlを消費した。
B)アルコール消費から30〜60分後に、フルクトース90g、カフェイン90mg及びビタミンC500mgを含む溶液500mlを消費した。
【0045】
表3:アルコール代謝及び二日酔い症状に対するフルクトースを含まない組成物の効果。
アルコール消費から30分後にフルクトースを含まない組成物2clを消費した。実験操作は、表2A及びBと同じである。
【0046】
(参考文献)
1)Langeland,B.T.、Morris,D.L.及びMcKinley−McKee,J.S.(1999)Comp.Biochem.Biophys.Part B、123、155〜162.
2)Boyer、P.D.(編).酵素(The Enzymes)、XIA巻、第3版 New York and London.Academic Press;104〜190のBrandon,C.I.、Jornvall,H.、Eklund,H.、Furugren,B.(1975)アルコール脱水素酵素(Alcohol Dehydrogenases).
3)Miwa,K.、Okuda,H.、Ogura,K及びTadashi,W.(1987)Biochem.Biophys.Res.Com.142、993〜998.
4)Kennedy,N.P.及びTipton,K.F.(1990)生化学エッセイ(Essays in Biochem).25、137〜194.
5)Langeland,B.T.及びMcKinley−McKee,J.S.、(1997)Comp.Biochem.Physiol.117,56〜61.
6)Lands,W.E.M.(1998)アルコール(Alcohol).15、147〜160.
7)Kitson.T.M.(1977)アルコール研究ジャーナル(Journal of Studies on Alcohol).38、96〜113.
8)Langeland,B.T.及びMcKinley−McKee,J.S.、(1996)アルコールとアルコール中毒(Alcohol&Alcoholism).31、75〜80.
9)Henehan,G.T.M.及びOppenheimer,N.J.(1993)生化学(Biochemistry).32、735〜738.
10)Cronower,B.P等(1986)薬理学及び実験治療学ジャーナル(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics).236、574〜579.
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】エタノール代謝の基本経路。 アルコールは、アルコール脱水素酵素、カタラーゼ及びCYP 2E1の3つの酵素によりアセトアルデヒドに転化される。 アセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素によってアセテートに転化される。
【図2】アルコール及び/又はアセトアルデヒド分解の刺激についての推奨される機序。 通常の律速である酵素−NADH産物の解離よりも不安定な酵素−NADH−活性化剤の3元複合体を形成する活性化剤による刺激。 E=酵素;肝臓のアルコール脱水素酵素又はアルデヒド脱水素酵素 O=NAD(補酵素の酸化された形) S=基質;アルコール又はアセトアルデヒド P=産物;アセトアルデヒド又はアセテート R=NADH(補酵素の還元された形) A=活性化剤;カフェインの変種及び/又はハーブ k=律速段階
【図3】LADHによるエタノール代謝とミトコンドリア呼吸との相互作用。 エタノールは、LADH(a)によってアセトアルデヒドに酸化され、同時にNADはNADHに還元される。次いで、NADHは、電子伝達鎖(d)によってミトコンドリア(c)中でNADに再酸化され、酸素が消費される(g)。ATPからADPが形成される(f)のと同時にリン酸化される基質は、呼吸鎖(e)を通して電子の流れを増大させ、続いて酸素消費及びNADHの再酸化速度が増大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェイン、ガラナ・カフェイン、マテ茶、エレウテロコックス、チョウセンニンジン、ショウガ、グルキルリザ・グラブラ、イチョウ及びフルクトースを含むヒト摂取用組成物。
【請求項2】
鎮痛薬を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、乾燥重量に対する百分率で、カフェイン(0.001〜0.1%、好ましくは0.01%)、ガラナ・カフェイン(0.001〜0.1%、好ましくは0.01%)、マテ茶(0.001〜0.1%、好ましくは0.01%)、エレウテロコックス(0.05〜2.0%、好ましくは0.2%)、チョウセンニンジン(0.002〜0.2%、好ましくは0.02%)、ショウガ(0.3〜30%、好ましくは3.0%)、グルキルリザ・グラブラ(カンゾウ)(0.02〜2.0%、好ましくは0.2%)、イチョウ(0.00〜0.2%、好ましくは0.02%)及び必要に応じてフルクトース(0〜99%、好ましくは75%)を含み、請求項1から請求項2までに含まれない成分でアルコール及び/又はアセトアルデヒド代謝酵素の活性を阻害しない追加成分(糖、香味料、着色剤、ビタミン、安定剤、全果粉末など)(0.1〜89.5%、好ましくは21.5%)を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
緑茶を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アルコール及びアセトアルデヒドの分解を促進する請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項6】
組成物が飲料、シロップ、乾燥粉末、錠剤、顆粒又はサシェとして処方できる請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
化合物を添加して製品を発泡性にする請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性製品。
【請求項8】
炭酸化により製品を発泡性にする請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性製品。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項10】
a)フルクトースと水に可溶な乾燥成分(すなわち、カフェイン、エレウテロコックス及びグルキルリザ・グラブラ(カンゾウ))を混合すること、
b)a)の乾燥混合物に水を1:2(乾燥混合物:水)の比で添加すること、
c)混合物を全成分が溶解するまで撹拌すること、
d)諸成分(ガラナ、マテ茶、ショウガ、チョウセンニンジン及び必要に応じてイチョウ)を添加すること、
e)混合物を均一な混合物が得られるまで撹拌すること、
f)芳香剤、香味料及び/又は安定剤を添加すること、
g)任意の量が得られるまで(必要に応じて)水で混合物を希釈すること及び、必要に応じて、
h)a)〜e)で得た混合物に着色成分を添加すること、及び/又は、
i)a)〜e)で得た混合物に発泡性を付与するためにガス、好ましくは二酸化炭素を添加すること
を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性製品を製造する方法。
【請求項11】
過剰のアルコール消費による有害作用(例えば、頭痛、循環器障害、口渇、悪心、震え、めまい、疲労及び協調障害)を抑制するためにアルコール及びアセトアルデヒドの分解を促進し、二日酔いに伴う症状の発生を予防する製品の製造における請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−328079(P2006−328079A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203297(P2006−203297)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【分割の表示】特願2003−305434(P2003−305434)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(503312549)
【Fターム(参考)】