説明

状態推定装置、サスペンション制御装置及びサスペンションシステム

【課題】車両の運動状態の推定を精度高く行なうことができる状態推定装置、サスペンション制御装置及びサスペンションシステムを提供する。
【解決手段】車両2からのばね上速度(観測出力)と実車両モデル状態量推定用オブザーバ23の車両近似モデルからの推定ばね上速度(推定観測出力)との差に相当する出力偏差から、実減衰力推定用オブザーバ21の第1オブザーバゲインが動特性補償信号を算出し、実車両モデル状態量推定用オブザーバ23の第2オブザーバゲインが車両モデル補償信号を算出する。動特性補償信号は、実車両モデル状態量推定用オブザーバ23の動特性付与手段に入力され、動特性付与手段の設定内容の調整に用いられる。このため、制御上の時間遅れを発生が抑制され、良好な精度をもって振動抑制を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の振動制御に用いられる状態推定装置、サスペンション制御装置及びサスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の振動制御に用いられるサスペンション制御装置及びサスペンションシステムなどに、車両の運動状態推定などのためにオブザーバを用いることがある。そして、このように、オブザーバにより車両の運動状態を推定するためには、一般に、車両の線形近似モデルを作成する必要がある。また、このモデルは可検出である必要があり、さらに、車両近似モデルに入力する推定制御力が実際の車両に入力する実制御力と同一である必要がある。これらの条件を満たさない場合、推定精度が低下、もしくは、推定不能となる場合もある。
特に、サスペンション制御装置及びサスペンションシステムなどに用いられるセミアクティブダンパやアクティブサスペンションなどの制御力が可変の制御サスペンションは、非線形特性を有するため、推定制御力を実制御力と同一にすることは難しい。
【0003】
この解決策として、特許文献1に示される装置がある。特許文献1に示される装置は、予め制御サスペンションの制御力〔例えばセミアクティブダンパが発生する減衰力及びアクティブサスペンションが発生する力(抵抗力に相当する減衰力に比して言わば能動的な力と称せられる力)など〕の非線形特性を実験により把握し、実験データに基づいて推定制御力を算出するマップ、もしくは、近似関数を作成して、これを制御力推定手段として用いて推定制御力を実制御力に近づけることで、車両の運動状態を推定している。この特許文献1に示される装置では、制御力推定手段は、静的システムである。
【特許文献1】特開2001−287528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御サスペンションは静的システムではなく、動的システムである。このため、制御力推定手段が静的システムである前記特許文献1に示される装置においては、実制御力は時間遅れを生じる。そして、このように時間遅れが生じる分、推定制御力は実制御力と異なり、その影響で、車両の運動状態の推定精度は低下し、所望の制御効果を発揮することが難しい。
制御効果を向上するためには、車両の運動状態の推定精度を向上する必要がある。そのためには、制御サスペンションの非線形特性だけでなく、動特性(時間遅れ)も考慮して実制御力を推定する必要がある。
【0005】
本発明は、車両の運動状態の推定を精度高く行なうことができる状態推定装置、サスペンション制御装置及びサスペンションシステムを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ばね上とばね下との間に制御力を発生する制御サスペンションを有して第1運動状態量を出力する車両に用いられ、前記車両の第2運動状態量を推定する状態推定装置であって、前記制御サスペンションの静特性に基づいて推定静的制御力を算出する制御力推定手段と、前記推定静的制御力を入力変数とするオブザーバとからなり、前記オブザーバは、前記推定静的制御力から推定動的制御力を算出する動特性付与手段と、前記推定動的制御力から、前記車両の推定第1運動状態量及び推定第2運動状態量を算出する車両モデルと、前記車両からの前記第1運動状態量と前記車両モデルからの前記推定第1運動状態量との差に相当する出力偏差から動特性補償信号を算出する動特性ゲイン手段と、前記出力偏差から車両モデル補償信号を算出する車両モデルゲイン手段とを有し、前記動特性補償信号を前記動特性付与手段に、前記車両モデル補償信号を車両モデルに、それぞれフィードバックすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動的システムを有する車両の運動状態の推定を精度高く行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施の形態に係るセミアクティブサスペンションシステム(サスペンションシステム)を図面に基づいて説明する。
図1〜図5において、本発明の第1実施の形態に係るセミアクティブサスペンションシステム1は、路面外乱及び実減衰力(実制御力)の入力を受ける車両(以下、実車両モデルともいう。)2に搭載して用いられている。セミアクティブサスペンションシステム1は、車両2の車体3(ばね上)と車輪4(ばね下)との間に介装されて減衰力(制御力)を発生する減衰力(制御力)可変のセミアクティブダンパ5(制御サスペンション)と、セミアクティブダンパ5に指令信号を送るサスペンション制御装置6と、から大略構成されている。本実施形態では、車両2は、サスペンション制御装置6の構成要素の一部を成し第1運動状態量検出手段の一例であるばね上加速度センサ7を有し、ばね上加速度センサ7が検出する当該車両2の上下方向の加速度を積分してばね上速度(車両2の第1運動状態量)を出力する。また、本実施形態では、セミアクティブダンパ5は、図5に示すように、その本体(ダンパ本体)8内部にピストン9が収納され、ピストン9に連結したピストンロッド10が車体3に保持され、セミアクティブダンパ5が車輪4側に保持されている。
【0009】
サスペンション制御装置6は、前記ピストン9の速度(以下、ピストン速度ともいう。車両の第2運動状態量)を推定して推定ピストン速度を得る状態推定装置12(第2運動状態量推定手段)と、ばね上速度(第1運動状態量)及びピストン速度(第2運動状態量)から前記指令信号を算出する車両振動制御器13と、から大略構成されている。
車両振動制御器13は、フィードバック制御器14及び指令信号算出手段15からなっている。
【0010】
状態推定装置12は、セミアクティブダンパ5(制御サスペンション)の静特性に基づいて推定静的減衰力を算出する推定静的減衰力算出用変換マップ〔減衰力(制御力)推定手段〕17を含むセミアクティブダンパモデル静的システム18と、推定静的減衰力算出用変換マップ17からの推定静的減衰力を入力変数とするオブザーバ20と、から大略構成されている。
【0011】
前記オブザーバ20は、図1〜図4に示すように、前記推定静的減衰力から推定動的制御力を算出する実減衰力推定用オブザーバ21と、前記推定動的制御力から、推定ばね上速度(車両2の推定第1運動状態量)及び推定ピストン速度(推定第2運動状態量)を算出する車両モデル(以下、車両近似モデルともいう。)22を含むオブザーバ(以下、実車両モデル状態量推定用オブザーバという。)23と、
前記ばね上加速度センサ7(車両2)からのばね上速度(第1運動状態量)と前記実車両モデル状態量推定用オブザーバ23の車両近似モデル22からの推定ばね上速度(推定観測出力とも言う。車両2の推定第1運動状態量)との差に相当する出力偏差から動特性補償信号L1を算出するオブザーバゲイン(以下、第1オブザーバゲインという。)25と、前記出力偏差から車両モデル補償信号L2を算出するオブザーバゲイン(以下、第2オブザーバゲインという。)26と、出力偏差の入力を受けて路面外乱を推定して推定外乱として出力する外乱推定手段27と、を有している。
本実施形態では、第1オブザーバゲイン25が動特性ゲイン手段を構成し、第2オブザーバゲイン26が車両モデルゲイン手段を構成している。
動特性補償信号L1は、後述する動特性付与手段30に入力され、その設定内容の調整に用いられる。車両モデル補償信号L2は、車両近似モデル22にフィードバックしてその設定内容の調整に用いられるようになっている。
【0012】
実車両モデルから出力される観測出力(ばね上速度ひいては減衰力)はフィードバック制御器14に入力され、観測出力(ばね上速度ひいては減衰力)の入力を受けたフィードバック制御器14は、目標減衰力を出力する。ここで、フィードバック制御器14としては、スカイフック制御もしくはH制御等の制御を行える、振動制御に適した制御器を用いている。
指令信号算出手段15は、フィードバック制御器14からの目標減衰力と実車両モデル状態量推定用オブザーバ23(車両近似モデル22)により得られる推定ピストン速度(推定第2運動状態量)とから指令信号を算出し、これをセミアクティブダンパ5及び減衰力推定手段に出力する。
【0013】
セミアクティブダンパ5は、実ピストン速度と指令信号とを入力としてこれらに依存した実減衰力を出力し、それを実車両モデルに伝える。
推定ピストン速度は、推定静的減衰力算出用変換マップ17(制御力推定手段)が算出する推定静的減衰力と前記出力偏差とを基にして、オブザーバ20(実車両モデル状態量推定用オブザーバ23)により算出される。
【0014】
実減衰力推定用オブザーバ21は、図2に示すように、前記動特性付与手段30と、実減衰力推定用オブザーバゲインLsを有する前記第1オブザーバゲイン25と、からなっている。
動特性付与手段30は、減衰力の動特性(時間遅れ)の実験データを基に一次遅れ系や二次遅れ系などで近似される動的システムとなっている。動特性付与手段30では、出力偏差が生じる場合、実減衰力推定用オブザーバゲインLs(第1オブザーバゲイン25)により推定減衰力は修正される。
実車両モデル状態量推定用オブザーバ23は、図1及び図3に示すように、車両近似モデル22を含んで構成されており、実減衰力推定用オブザーバ21で算出された推定動的減衰力、出力偏差及び推定外乱を基に、車両近似モデル22を介して、推定観測出力と推定ピストン速度を算出する。
【0015】
前記オブザーバ20(実減衰力推定用オブザーバ21、実車両モデル状態量推定用オブザーバ23)は、本実施形態では、以下に述べるように設計されている。本実施形態では、図5に示す単輪モデルに対してオブザーバ20を4輪分設計し、車両2の運動状態推定に用いる。
図5の単輪モデルから運動方程式を導出し、車両近似モデル22の状態空間表現を次のように表す。
ここで、mはばね上質量、mはばね下質量、cはばね上質量とばね下質量の間の不変減衰係数、cは可変減衰係数、zは路面変位、zはばね下質量変位、zはばね上質量変位、kはタイヤのばね定数、kはサスペンションスプリングのばね定数である。

【0016】
【数1】

ここで、
【数2】

は状態ベクトルで、A,Bmu,Bmz,C
【数3】

は観測出力、Fは実減衰力、
【数4】

は路面速度外乱である。
【0017】
次に、セミアクティブダンパ5のモデル(セミアクティブダンパモデル)の動的システムを
【数5】

で表す。ここで、fは減衰力の状態ベクトル、Fは静的減衰力である。
【0018】
実施形態では、時定数Tの一次遅れ系で近似すると、式(3)のA、B、Cは、
=−1/T、B=1/T、C=1 (4)
となり、実施形態では、f=Fとなる。ここで、式(1)と式(2)から、拡大系を構築すると
【数6】

となる。ここで、
【数7】

とすると、
【数8】

となる。
【0019】
式(6)より、この系のオブザーバ20は、
【数9】

として構成される。
ここで、はオブザーバゲインであり、実施形態では、定常カルマンフィルタによる方法を用いて求める。
ここで、オブザーバゲインは、
【数10】

である。
【数11】


【数12】

としたときの推定値である。今、誤差を
【数13】

とし、
【数14】

とすると、
【数15】

となる。まず、オブザーバゲインを定常カルマンフィルタによる方法を用いて求める。いま、外乱を無視した系〔式(4)〕がガウス性白色雑音w(t)、v(t)を受けるとすると、
【数16】

となる。また、w(t)、v(t)の平均値と共分散行列Q、Rを
E〔w(t)〕=0、
E〔w(t)w(t)〕=Qδ(t−τ) (11)

E〔v(t)〕=0、
E〔v(t)v(t)〕=Rδ(t−τ) (12)
とする。ここで、E〔・〕は期待値であり、δはデルタ関数である。
オブザーバゲインはリカッチ方程式
AP+PA−PC−1CP+Q=0 (13)
の非負定対象行列解Pより、
L=PC−1 (14)
と決定される。ここで、yは車体3の上下速度で、加速度センサ7によって得られた値を積分して得る。
【0020】
次に、ある小さな値αを用いて、
【数17】

とすると
【数18】

はA=A−LCとして、
【数19】

のように修正される。この修正により、ある行列Sが存在し、(SC,A,B´)が強正実となるので、
【数20】

を満足する正定対称な行列G,Hが存在することになる。
【0021】
eについて正定なリアプノフ関数を
【数21】

のように選ぶ。ここでΓは正の定数であり、
【数22】

である。
Vの時間微分をとると、
【数23】

となる。ここでSは定数であり、αが十分小さいことを考慮すると、
【数24】


【数25】

のようにきめればよいが、
【数26】

の有界性を確保するためにσ修正法を用いて
【数27】

のように修正する。
以上のようにしてオブザーバ20が設計されている。
【0022】
本実施形態では、ばね上加速度センサ7(車両2)から検出した上下加速度を積分して得たばね上速度(第1運動状態量)と実車両モデル状態量推定用オブザーバ23の車両近似モデル22からの推定ばね上速度(車両の推定第1運動状態量)との差に相当する出力偏差から、第1オブザーバゲイン25(動特性ゲイン手段)が動特性補償信号L1を算出し、また、第2オブザーバゲイン26(車両モデルゲイン手段)が車両モデル補償信号L2を算出する。
そして、動特性補償信号L1は、動特性付与手段30に入力され、動特性付与手段30の設定内容の調整に用いられる。このため、制御上の時間遅れの発生が抑制され、良好な精度をもって振動抑制を行うことができる。さらに、車両モデル補償信号L2は、車両近似モデル22にフィードバックしてその設定内容の調整に用いられ、出力偏差に応じた車両近似モデル22の内容調整ができ、この分、振動抑制の精度向上を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態では、セミアクティブダンパ5の動特性(時間遅れ)モデルと車両モデルから成る拡大系に対してオブザーバ20を設計しているので,車両の運動の推定状態量(推定運動状態量)だけでなく推定動的制御力も実値に近づくように修正できる。
推定動的制御力が実値に近づくことで、車両運動の推定状態量の推定精度は従来法に比べ高くなる。
さらに、車両2の運動の推定状態量の推定精度を向上できるので、ばね上加速度の応答を低減できる。
【0024】
本実施形態では、上記のように設計したオブザーバ20を用いて、実減衰力推定用オブザーバ21を含む状態推定装置12、サスペンション制御装置6ひいてはセミアクティブサスペンションシステム1が構成されている。
本発明は、実減衰力推定用オブザーバ21が導入されているところに、その特徴があり、この特徴を有することにより、出力偏差が大きく生じても、推定減衰力の修正を適性に行い、ひいては良好な振動抑制効果を奏するようにしている。
【0025】
本願発明者等は、上記実施形態に係る装置6(実減衰力推定用オブザーバ21を備えている)が奏する上述した効果を確認するべく、実施形態に係る装置6に比して、図6に示すように、実減衰力推定用オブザーバ21を備えていない装置(以下、比較対象装置50という)を設け、実施形態に係る装置6と比較対象装置50(実減衰力推定用オブザーバ21を備えていない)とを対象にして、比較検証を行った。この比較検証では、0.5Hz〜20Hzの周波数成分を含むランダム波加振シミュレーションを行い、このシミュレーションを行ったときのばね上加速度のパワースペクトル密度(PSD)及び推定ピストン速度と実ピストン速度との誤差のPSDについて計測し、その結果、夫々図7及び図8に示す結果を得た。
【0026】
比較対象装置50では、実減衰力推定用オブザーバ21を備えておらず、推定静的減衰力がそのまま推定減衰力として実車両モデル状態量推定用オブザーバ23に入力され、出力偏差が大きく生じても、推定減衰力は、修正されないこととなり、振動抑制効果が劣るものになる。
これに対して、実施形態に係る装置6によれば、図7及び図8に示されるように、推定ピストン速度と実際のピストン速度との推定誤差を低減することで,ばね上加速度のパワースペクトル密度を低減でき、ひいては振動抑制を良好に行えることがわかる。
【0027】
上記実施形態では、制御サスペンションとしてセミアクティブダンパ5を用いた場合を例にしたが、本発明はこれに限らず、アクティブサスペンションやロール剛性可変装置(アクティブスタビライザなど)など他の制御サスペンションを用い、セミアクティブダンパ5が発生する減衰力(制御力)の制御を行うのに代えて、アクティブサスペンションやロール剛性可変装置などが発生する言わばアクティブな力(制御力)の制御を行うように構成してもよい。
例えば、アクティブサスペンションの場合であれば、制御サスペンションであるアクティブサスペンションへの入力は指令信号であり、オブザーバからの出力は推定したい任意の運動状態量(各車輪のばね上速度など)となる。また、ロール剛性可変装置の場合であれば、制御サスペンションであるロール剛性可変装置への入力は指令信号であり、オブザーバ出力は推定したい任意の運動状態量(ロールの大きさなど)となる。
また、上記実施形態では、オブザーバ20からの出力をばね上速度とピストン速度とし、ばね上速度を実測値と比較したが、車高センサなどを活用することによりピストン速度を実測できる場合は、ピストン速度を実測値と比較してもよい。また、オブザーバ20からの出力についてもこれらの値に限られるものではなく、推定したい任意の運動状態量とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るサスペンションシステムを模式的に示すブロック図である。
【図2】図1の実減衰力推定用オブザーバを模式的に示すブロック図である。
【図3】図1の実車両モデル状態量推定用オブザーバを模式的に示すブロック図である。
【図4】図1の外乱推定手段を模式的に示すブロック図である。
【図5】車両の単輪モデルを示す図である。
【図6】比較対象装置を模式的に示すブロック図である。
【図7】実施形態及び比較対象装置による比較検証により得た、ばね上加速度のパワースペクトル密度(PSD)を示す図である。
【図8】実施形態及び比較対象装置による比較検証により得た、ピストン速度推定誤差のパワースペクトル密度(PSD)を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1…セミアクティブサスペンションシステム(スペンションシステム)、5…セミアクティブダンパ(制御サスペンション)、6…サスペンション制御装置、12…状態推定装置(第2運動状態量推定手段)、17…推定静的減衰力算出用変換マップ〔制御力推定手段〕、20…オブザーバ、21…実減衰力推定用オブザーバ、22…車両近似モデル(車両モデル)、23…実車両モデル状態量推定用オブザーバ、25…第1オブザーバゲイン(動特性ゲイン手段)、26…第2オブザーバゲイン(車両モデルゲイン手段)、30…動特性付与手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね上とばね下との間に制御力を発生する制御サスペンションを有して第1運動状態量を出力する車両に用いられ、前記車両の第2運動状態量を推定する状態推定装置であって、
前記制御サスペンションへの入力から前記制御サスペンションの静特性に基づいて推定静的制御力を算出する制御力推定手段と、
前記推定静的制御力を入力とするオブザーバとからなり、
前記オブザーバは、
前記推定静的制御力から推定動的制御力を算出する動特性付与手段と、
前記推定動的制御力から前記車両の推定第1運動状態量及び推定第2運動状態量を算出する車両モデルと、
前記車両からの前記第1運動状態量と前記車両モデルからの前記推定第1運動状態量との差に相当する出力偏差から動特性補償信号を算出する動特性ゲイン手段と、
前記出力偏差から車両モデル補償信号を算出する車両モデルゲイン手段とを有し、
前記動特性補償信号を前記動特性付与手段に、前記車両モデル補償信号を車両モデルに、それぞれフィードバックすることを特徴とする状態推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状態推定装置において、制御サスペンションが、セミアクティブダンパであることを特徴とする状態推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の状態推定装置において、制御力は減衰力であり、制御力推定手段は、指令信号及び推定ピストン速度を入力信号として受けることにより推定静的制御力に相当する推定静的減衰力を算出することを特徴とする状態推定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の状態推定装置において、第1運動状態量が、ばね上速度及びばね上・ばね下相対速度のうち一方であり、第2運動状態量が他方であることを特徴とする状態推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の状態推定装置において、制御サスペンションが、アクティブサスペンションであることを特徴とする状態推定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の状態推定装置において、制御サスペンションが、ロール剛性可変装置であることを特徴とする状態推定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の状態推定装置において、動特性をn次遅れ系で構成したことを特徴とする状態推定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の状態推定装置において、n次遅れ系は1次遅れ系であることを特徴とする状態推定装置。
【請求項9】
制御力が可変の制御サスペンションに指令信号を送るサスペンション制御装置であって、
車両が出力する当該車両の運動状態量に相当する第1運動状態量以外の当該車両の第2運動状態量を少なくとも1つ推定する第2運動状態量推定手段と、
前記第1運動状態量および第2運動状態量から前記指令信号を算出する車両振動制御器とからなり、
前記第2運動状態量推定手段は、
前記制御サスペンションの静特性に基づいて推定静的制御力を算出する制御力推定手段と、
前記推定静的制御力を入力変数とするオブザーバとからなり、
前記オブザーバは、
前記推定静的制御力から推定動的制御力を算出する動特性付与手段と、
前記推定動的制御力から前記車両の推定第1運動状態量及び推定第2運動状態量を算出する車両モデルと、
前記車両からの前記第1運動状態量と前記車両モデルからの前記推定第1運動状態量との差に相当する出力偏差から動特性補償信号を算出する動特性ゲイン手段と、
前記出力偏差から車両モデル補償信号を算出する車両モデルゲイン手段とを有し、
前記動特性補償信号を前記動特性付与手段に、前記車両モデル補償信号を車両モデルに、それぞれフィードバックすることを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のサスペンション制御装置において、車両振動制御器がスカイフック制御器又はH制御器であることを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載のサスペンション制御装置において、制御サスペンションが、セミアクティブダンパであることを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載のサスペンション制御装置において、制御サスペンションが、アクティブサスペンションであることを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項13】
請求項9に記載のサスペンション制御装置において、制御サスペンションが、ロール剛性可変装置あることを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項14】
請求項9に記載のサスペンション制御装置において、動特性をn次遅れ系で構成した特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項15】
制御力が可変の制御サスペンションと、
前記制御サスペンションに指令信号を送るサスペンション制御装置とからなるサスペンションシステムであって、
前記サスペンション制御装置は、車両が出力する当該車両の運動状態量に相当する第1運動状態量以外の当該車両の第2運動状態量を少なくとも1つ推定する第2運動状態量推定手段と、
前記第1運動状態量および第2運動状態量から前記指令信号を算出する車両振動制御器とからなり、
前記第2運動状態量推定手段は、
前記制御サスペンションの静特性に基づいて推定静的制御力を算出する制御力推定手段と、
前記推定静的制御力を入力変数とするオブザーバとからなり、
前記オブザーバは、
前記推定静的制御力から推定動的制御力を算出する動特性付与手段と、
前記推定動的制御力から、前記車両の推定第1運動状態量及び推定第2運動状態量を算出する車両モデルと、
前記車両からの前記第1運動状態量と前記車両モデルからの前記推定第1運動状態量との差に相当する出力偏差から動特性補償信号を算出する動特性ゲイン手段と、
前記出力偏差から車両モデル補償信号を算出する車両モデルゲイン手段とを有し、
前記動特性補償信号を前記動特性付与手段に、前記車両モデル補償信号を車両モデルに、それぞれフィードバックすることを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のサスペンションシステムにおいて、車両振動制御器がスカイフック制御器又はH∞制御器であることを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のサスペンションシステムにおいて、制御サスペンションが、セミアクティブダンパであることを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項18】
請求項15に記載のサスペンションシステムにおいて、制御サスペンションが、アクティブサスペンションであることを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項19】
請求項15に記載のサスペンションシステムにおいて、制御サスペンションが、ロール剛性可変装置あることを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項20】
請求項15に記載のサスペンションシステムにおいて、動特性をn次遅れ系で構成した特徴とするサスペンションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58541(P2010−58541A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223489(P2008−223489)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】