説明

珪素含有高分子化合物及びその製造方法並びに耐熱性樹脂組成物及び耐熱性皮膜

本発明のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物は、下記の式で表され、重量平均分子量が500〜500,000である。


式中、Aは水酸基を有するか若しくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、mは0又は1、Rは炭素数1〜4のアルキル基、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1 且つ 0<u/s≦5 である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素含有高分子化合物及びその製造方法並びに耐熱性樹脂組成物及び耐熱性皮膜に関し、更に詳しくは、アルカリ性溶液に可溶であり且つ新規な珪素含有高分子化合物及びその製造方法、並びに、他の新規な珪素含有高分子化合物及びこれを用いて得られるヒドロシリル化重合体を含有する耐熱性樹脂組成物、珪素含有高分子化合物の熱ヒドロシリル化反応により形成される耐熱性皮膜に関する。
本発明のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物は、アルカリ現像レジスト材料等に有用である。
他の本発明の珪素含有高分子化合物は、エレクトロニクス分野、光機能材料分野等に有用である。
また、本発明の耐熱性樹脂組成物及び耐熱性皮膜は、その極めて高い耐熱性から、航空・宇宙材料、半導体用材料等として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ可溶性珪素含有高分子化合物として、特許文献1に開示されたポリオルガノシルセスキオキサン、特許文献2に開示されたオルガノポリシロキサン等が知られている。
また、珪素含有化合物用いた耐熱性樹脂組成物として、特許文献3に開示された水素化オクタシルセスキオキサン−ビニル基含有化合物共重合体、特許文献4に開示された含珪素硬化性組成物、特許文献5に開示された含シルセスキオキサンポリマー等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−96526号公報
【特許文献2】特開平1−292036号公報
【特許文献3】特開2000−265065号公報
【特許文献4】特開2001−89662号公報
【特許文献5】特開平9−296044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1及び2に開示されたアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物は、分子量の大きい化合物が得られにくいという問題があった。
一方、特許文献3及び4に開示された耐熱性樹脂組成物は、窒素雰囲気下、1,000℃における重量損失率が5%以下となる耐熱性にまでは至っていない。また、特許文献3及び5に開示された耐熱性樹脂組成物は、単離が難しく極めて高価な水素化オクタシルセスキオキサンを原料として用いているため実用的でなく、また、加熱重合時に不飽和基を有する単量体が気化してアウトガスとなり、作業環境を汚染するといった問題があった。
【0005】
本発明は、分子量の大きい、新規なアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、他の本発明は、高価な原料を用いることなく簡便な方法で、極めて高い耐熱性を有する硬化物が得られ、加熱しても作業環境を汚染するようなガスを発生しない新規な珪素含有高分子化合物、そのヒドロシリル化重合体を含有する耐熱性樹脂組成物及び耐熱性皮膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が500〜500,000であるアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物。
【化1】

〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、mは0又は1、Rは炭素数1〜4のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。〕
2.上記一般式(1)において、0≦t/(s+u)≦0.2且つ0.2≦u/s≦5であり、室温において固体である上記1記載のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物。
3.上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される加水分解性基含有オルガノシランsモル、下記一般式(3)で表される加水分解性基含有オルガノシランtモル及び下記一般式(4)で表される加水分解性基含有珪素化合物uモル〔但し、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。〕を、加水分解共縮合反応させることを特徴とするアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法。
(RSiM (2)
〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Mは加水分解性基、mは0又は1である。〕
【化2】

〔式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Mは加水分解性基である。〕
SiM (4)
〔式中、Mは加水分解性基である。〕
4.下記一般式(5)で表され、重量平均分子量が500〜500,000である珪素含有高分子化合物。
【化3】

〔式中、Aは炭素−炭素不飽和基を有する炭素数2〜10の有機基、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族基もしくは炭素数3〜20の2価の脂環式基、nは0又は1、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、x,yは正の数であり、w,zは0又は正の数であって、0≦z/(w+x+y)≦2且つ0.01≦y/(w+x)≦5である。〕
5.上記4記載の珪素含有高分子化合物におけるSi原子に結合するH原子と、上記4記載の珪素含有高分子化合物の他の化合物における炭素−炭素不飽和基との反応によるヒドロシリル化重合体を含有する耐熱性樹脂組成物。
6.窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率が5%以下である上記5記載の耐熱性樹脂組成物。
7.上記4記載の珪素含有高分子化合物の有機溶媒溶液を基材上に展開してなる被膜を熱ヒドロシリル化反応により硬化させた耐熱性皮膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物は、特定の構造を有し、分子量が大きくても、アルカリ可溶性に優れる。また、特定の単位を所定量含有させることで、軟化点を広範囲にとることができ、レジスト材料等の用途において好適である。
本発明のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法は、特定の原料成分を用いることで、分子量の大きな化合物を容易に製造することができる。
【0008】
他の本発明の珪素含有高分子化合物は、特定の構造を有し、高い耐熱性を有し、加熱しても作業環境を汚染するようなガスを発生しない硬化物を得ることができる。
本発明の耐熱性樹脂組成物によると、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率を5%以下とすることができる。
本発明の耐熱性皮膜は、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率を5%以下とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.アルカリ可溶性珪素含有高分子化合物
本発明のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物(以下、「高分子化合物(I)」ともいう。)は、下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が500〜500,000である。
【化4】

〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、mは0又は1、Rは炭素数1〜4のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。〕
【0010】
本発明の珪素含有高分子化合物(I)は、上記一般式(1)で表されるように、下記一般式(6)で表される3官能性シロキサン単位と、下記一般式(7)で表される1官能性シロキサン単位と、下記式(8)で表される4官能性シロキサン単位とを含む。これらの単位は、各々、同一又は異なる如何なるシロキサン単位と結合していてもよい。
【0011】
[A−(R−Si−O3/2] (6)
〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、mは0又は1である。〕
【化5】

〔式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。〕
[Si−O4/2] (8)
【0012】
上記一般式(1)及び(6)において、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基であるが、このフェニル基に結合した水酸基もしくはアルコキシ基は、各々、1種単独であるいは2種以上を含んでよい。
の好ましい例として、オルトヒドロキシフェニル基、メタヒドロキシフェニル基、パラヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、3,5−ジヒドロキシフェニル基、オルトメトキシフェニル基、メタメトキシフェニル基、パラメトキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、オルトエトキシフェニル基、メタエトキシフェニル基、パラエトキシフェニル基、2,3−ジエトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、3,4−ジエトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、オルトイソプロポキシフェニル基、メタイソプロポキシフェニル基、パライソプロポキシフェニル基、2,3−ジ−イソプロポキシフェニル基、2,4−ジ−イソプロポキシフェニル基、3,4−ジ−イソプロポキシフェニル基、3,5−ジ−イソプロポキシフェニル基、オルト−tert−ブトキシフェニル基、メタ−tert−ブトキシフェニル基、パラ−tert−ブトキシフェニル基、2,3−ジ−tert−ブトキシフェニル基、2,4−ジ−tert−ブトキシフェニル基、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル基、3,5−ジ−tert−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−3−ヒドロキシフェニル基、2−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−メトキシ−5−ヒドロキシフェニル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基、2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル基、3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル基、3−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル基、2−エトキシ−3−ヒドロキシフェニル基、2−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−エトキシ−5−ヒドロキシフェニル基、2−ヒドロキシ−3−エトキシフェニル基、2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル基、3−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル基、3−ヒドロキシ−5−エトキシフェニル基等が挙げられる。
本発明の高分子化合物(I)において、s≧2の場合、1分子中のAは同種であってもよく、また、2種以上の異種の組み合わせであってもよい。
【0013】
上記一般式(1)及び(6)において、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。Rの好ましい例として、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基等が挙げられる。
mは0又は1である。
【0014】
上記一般式(1)及び(7)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。Rの好ましい例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等が挙げられる。
本発明の高分子化合物(I)に含まれるRは同種であってもよく、また、2種以上の異種の組み合わせであってよい。
【0015】
上記一般式(1)において、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。これらの範囲を外れると、合成し難くなったり、本発明の高分子化合物(I)がアルカリ可溶性とならない。尚、s、t及びuが、0≦t/(s+u)≦0.2且つ0.2≦u/s≦5を満たす場合には、本発明の珪素含有高分子化合物(I)は室温(25℃)において固体となり、取り扱いが容易となる。
【0016】
尚、本発明の高分子化合物(I)は、製造過程で残存する若干の水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を含んでもよい。
【0017】
本発明の珪素含有高分子化合物(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)による、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜500,000である。この範囲を外れると合成し難くなる。
【0018】
本発明の珪素含有高分子化合物は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液のようなアルカリ性水溶液に可溶であり、また炭化水素溶媒、芳香族系炭化水素溶媒、塩素化炭化水素溶媒、アルコール溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、セロソルブ溶媒のような各種有機溶媒に可溶である。したがって、LSI製造時における微細加工に用いるアルカリ現像レジスト材料等へ応用できる。
【0019】
2.アルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法
本発明のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法は、上記一般式(1)で表される高分子化合物(I)の製造方法であり、下記一般式(2)で表される加水分解性基含有オルガノシランsモル、下記一般式(3)で表される加水分解性基含有オルガノシランtモル及び下記一般式(4)で表される加水分解性基含有珪素化合物uモル〔但し、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。〕を、加水分解共縮合反応させるものである。
【0020】
(RSiM (2)
〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Mは加水分解性基、mは0又は1である。〕
【化6】

〔式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Mは加水分解性基である。〕
SiM (4)
〔式中、Mは加水分解性基である。〕
【0021】
上記一般式(2)、(3)及び(4)における加水分解性基M、M及びMは、各々、同一であってよいし、異なるものであってよい。これらの加水分解性基としては、加水分解性を有するものであれば特に限定されず、例えば、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、トリメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(2)で表される化合物としては、3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−メトキシ−3−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、2−p−(tert−ブトキシ)フェニルエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記一般式(3)で表される化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。
また、上記一般式(4)で表される化合物としては、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0023】
尚、上記一般式(2)で表される加水分解性基含有オルガノシラン、上記一般式(3)で表される加水分解性基含有オルガノシラン及び上記一般式(4)で表される加水分解性基含有珪素化合物の各モル数は、上記一般式(1)における条件、即ち、s及びuが正の数であり、tが0又は正の数であり、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5を満足する条件とする。この条件を満足させながら、各モル比を変化させることにより、分子量、軟化点、水酸基又はアルコキシ基を有するフェニル基の量、アルカリ可溶性の度合等を自由に制御することができる。
【0024】
上記3種の珪素化合物を用いた加水分解共縮合反応の方法は、公知の方法を適用することができ、通常、触媒を用いて行われる。その触媒としては、酸性触媒、塩基性触媒、金属キレート化合物等が挙げられる。
酸性触媒としては、無機酸及び有機酸を、各々、単独であるいは組み合わせて用いることができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0025】
塩基性触媒としては、無機塩基及び有機塩基を、各々、単独であるいは組み合わせて用いることができる。無機塩基としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。有機塩基としては、例えば、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
金属キレート化合物としては、例えば、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
本発明の高分子化合物(I)の製造方法においては、酸性触媒を用いることが好ましく、揮発性の高い塩酸、硝酸等が特に好ましい。
【0026】
上記加水分解共縮合反応は、40〜80℃の範囲の温度で行うことが好ましい。40℃より低い温度では、加水分解速度が低下し、未反応のアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンが生成する場合がある。また、反応時間も長くなり生産性が低下する傾向にある。尚、この加水分解縮合反応において、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エステル類、エーテル類、塩素化炭化水素類等の有機溶剤を併用することができ、その場合には、反応は、有機溶剤を加熱還流させながら行うのが好ましい。反応時間は、上記3種のオルガノシランの種類、反応温度等の条件により異なるが、通常、1〜10時間である。
【0027】
尚、本発明の高分子化合物(I)は、上記一般式(2)で表される加水分解性基含有オルガノシランにおいて、Aがヒドロキシフェニル基である場合、その水酸基を、メチル基、エトキシエチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基等の炭素数1〜4のアシル基、あるいは、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等の炭素数1〜4のアルキル基がSi原子に結合したトリアルキルシリル基で保護されている化合物を、上記一般式(2)のオルガノシランに代えて用い、加水分解共縮合反応させた後、脱保護することによって得ることもできる。
トリアルキルシリル基で保護した場合には、このトリアルキルシリル基が加水分解して、上記一般式(7)で表される1官能性シロキサン単位として本発明の珪素含有高分子化合物中に取り込まれ得る。
【0028】
3.珪素含有高分子化合物
他の本発明の珪素含有高分子化合物(以下、「高分子化合物(II)」ともいう。)は、下記一般式(5)で表され、重量平均分子量が500〜500,000である。
【化7】

〔式中、Aは炭素−炭素不飽和基を有する炭素数2〜10の有機基、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族基もしくは炭素数3〜20の2価の脂環式基、nは0又は1、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、x,yは正の数であり、w,zは0又は正の数であって、0≦z/(w+x+y)≦2且つ0.01≦y/(w+x)≦5である。〕
【0029】
本発明の珪素含有高分子化合物(II)は、上記一般式(5)で表されるように、下記式(9)で表される4官能性シロキサン単位と、下記式(10)で表される3官能性シロキサン単位と、下記式(11)で表される3官能性シロキサン単位と、下記式(12)で表される1官能性シロキサン単位と、を含む。これらの単位は、各々、同一又は異なる如何なるシロキサン単位と結合していてもよい。尚、本発明の珪素含有高分子化合物(II)は、下記式(9)で表される4官能性シロキサン単位、及び、下記一般式(12)で表される1官能性シロキサン単位は、含まれなくてもよい。
[Si−O4/2] (9)
[H−Si−O3/2] (10)
[A−(R−Si−O3/2] (11)
〔式中、Aは炭素−炭素不飽和基を有する炭素数2〜10の有機基、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族基もしくは炭素数3〜20の2価の脂環式基、nは0又は1である。〕
【化8】

〔式中、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基である。〕
【0030】
上記一般式(5)において、Aは炭素−炭素不飽和基を有する炭素数2〜10の有機基であり、炭素−炭素の二重結合又は三重結合を持つ官能基が好ましい。
の好ましい例として、ビニル基、オルトスチリル基、メタスチリル基、パラスチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、フェニルエテニル基、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、3−メチル−1−ブチニル基、フェニルブチニル基等が挙げられる。
上記一般式(5)において、y≧2の場合、1分子中のAは同種であってもよく、また、2種以上の異種の組み合わせであってもよい。
【0031】
上記一般式(5)及び(11)において、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族基もしくは炭素数3〜20の2価の脂環式基である。
炭素数1〜20のアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基等である。
炭素数6〜20の2価の芳香族基としては、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
炭素数3〜20の2価の脂環式基としては、好ましくは、ノルボルネン骨格、トリシクロデカン骨格、アダマンタン骨格等を有する2価の炭化水素基等である。
nは0又は1である。
【0032】
上記一般式(5)及び(12)において、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基である。Rの好ましい例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等が挙げられる。
本発明の高分子化合物(II)に含まれるRは同種であってもよく、また、2種以上の異種の組み合わせであってよい。
【0033】
上記一般式(5)において、x,yは正の数であり、w,zは、各々、0又は正の数であって、0≦z/(w+x+y)≦2且つ0.01≦y/(w+x)≦5である。尚、w=0の場合、好ましくは0.2≦y/x≦5であり、w≧1の場合、好ましくは0.01≦y/(w+x)≦2である。これらの範囲を外れると、合成し難くなったり、高い耐熱性をもつ硬化物とならない。
【0034】
本発明の高分子化合物(II)は、製造過程で残存する若干の水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を含んでもよい。
【0035】
本発明の珪素含有高分子化合物(II)は、GPCによる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜500,000である。この範囲を外れると合成し難くなる。
【0036】
本発明の珪素含有高分子化合物(II)は、下記一般式(13)で表される加水分解性基含有珪素化合物wモル、下記一般式(14)で表される加水分解性基含有珪素化合物xモル、下記一般式(15)で表される加水分解性基含有オルガノシランyモル及び下記一般式(16)で表される加水分解性基含有オルガノシランzモルを、加水分解共縮合反応させることにより得られる。
【0037】
SiM (13)
〔式中、Mは加水分解性基である。〕
HSiM (14)
〔式中、Mは加水分解性基である。〕
(RSiM (15)
〔式中、Aは炭素−炭素不飽和基を有する炭素数2〜10の有機基、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族基もしくは炭素数3〜20の2価の脂環式基、Mは加水分解性基である。〕
【化9】

〔式中、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基(本単位中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、Mは加水分解性基である。〕
【0038】
上記一般式(13)、(14)、(15)及び(16)における加水分解性基M、M、M及びMは、各々、同一であってよいし、異なるものであってよい。これらの加水分解性基としては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、トリメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(13)で表される加水分解性基含有珪素化合物、上記一般式(14)で表される加水分解性基含有珪素化合物、上記一般式(15)で表される加水分解性基含有オルガノシラン及び上記一般式(16)で表される加水分解性基含有オルガノシランを用いる際の各モル数は、上記一般式(5)における条件、即ち、x,yは正の数であり、w,zは0又は正の数であって、0≦z/(w+x+y)≦2且つ0.01≦y/(w+x)≦5を満足する条件とすることが好ましい。尚、w=0の場合、好ましくは0.2≦y/x≦5であり、w≧1の場合、好ましくは0.01≦y/(w+x)≦2である。この条件を満足させながら、各モル比を変化させることにより、分子量、樹脂粘度、耐熱性等を自由に制御することができる。
【0040】
尚、上記の各化合物を用いた加水分解共縮合反応において、上記一般式(16)で表される加水分解性基含有オルガノシランzモルを用いる代わりに、下記一般式(17)で表される加水分解性オルガノシラン0.5×zモルを用いることもできる。
【0041】
【化10】

〔式中、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)である。〕
【0042】
上記の各化合物を用いた加水分解共縮合反応は、公知の方法を適用することができ、上記の珪素含有高分子化合物(I)の製造方法として記載した方法によることができる。
【0043】
4.耐熱性樹脂組成物
本発明の耐熱性樹脂組成物は、上記の珪素含有高分子化合物(II)におけるSi原子に結合するH原子と、上記の珪素含有高分子化合物(II)の他の化合物における炭素−炭素不飽和基との反応によるヒドロシリル化重合体を含有することを特徴とする。
【0044】
上記ヒドロシリル化重合体とする反応は、「ヒドロシリル化反応」と呼ばれ、触媒を使用してもしなくてもよい。
触媒を用いる場合は、白金含有触媒を用いることが好ましい。
白金含有触媒としては、従来、ヒドロシリル化反応に使用されているものを用いることができ、白金ジビニルシロキサン、白金環状ビニルメチルシロキサン、トリス(ジベンジリデンアセトン)二白金、塩化白金酸、ビス(エチレン)テトラクロロ二白金、シクロオクタジエンジクロロ白金、ビス(シクロオクタジエン)白金、ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ジクロロ白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、白金カーボン等が挙げられる。
【0045】
ヒドロシリル化反応は、溶媒の存在下及び不存在下の何れにおける反応系でも進行する。溶媒を用いる場合は、従来、使用されている種々の溶媒を用いることができ、炭化水素類、芳香族系炭化水素類、塩素化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、アミド類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類等の有機溶媒が挙げられる。
【0046】
ヒドロシリル化反応は、種々の温度で実施できるが、特に、40℃以上200℃未満で行うことが好ましい。
【0047】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、塊状、膜状等いずれの形態とした場合でも、耐熱性に優れるため、高温、例えば、300〜1,000℃という範囲の温度においても分解、変質等を起こすことなく、元の形態を維持することができる。特に、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率を好ましくは5%以下とすることができる。また、酸素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率を好ましくは8%以下とすることができる。
【0048】
5.耐熱性皮膜
本発明の耐熱性皮膜は、上記珪素含有高分子化合物(II)の有機溶媒溶液を基材上に展開してなる被膜を熱ヒドロシリル化反応により硬化させたものである。
【0049】
上記有機溶媒溶液とするために用いる有機溶媒としては、上記珪素含有高分子化合物(II)を溶解し得るものであれば、何ら制限なく使用可能であり、炭化水素類、芳香族系炭化水素類、塩素化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、アミド類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類等の有機溶媒が挙げられる。
【0050】
上記基材は、塗工等により被膜を形成できる材料、例えば、無機材料、有機材料、あるいは、これらの組み合わせによる材料からなるものであれば特に限定されない。好ましい材料としては、金属、合金、セラミックス、木材、プラスチック等が挙げられる。
上記基材の形状としては、シート、板、角、管、円、球等が挙げられ、これらの複合体であってもよい。
従って、上記基材の具体例としては、板状ガラス、シリコンウエハ、各種形状のプラスチック成形体、建材、金属板等が挙げられる。
【0051】
上記の珪素含有高分子化合物の有機溶媒溶液を基材に塗布する方法としては、キャスト法、スピンコート法、バーコート法、スプレー法等が挙げられる。
尚、皮膜の形成に際しては、通常、大気中又は窒素ガス等の不活性ガス中において、上記有機溶媒溶液を基材の表面に塗布等によって展開し、被膜とした後、適宜の時間、即ち、1分〜10時間、好ましくは1分から1時間にわたり、加熱処理される。この加熱によって、有機溶媒を乾燥除去され、皮膜が形成される。上記加熱処理の温度は、通常、40℃以上300℃未満の範囲であるが、好ましくは50〜200℃の範囲である。尚、上記加熱処理は、この範囲の温度において、同じ温度で行ってもよいし、昇温、降温等を組み合わせて行ってもよい。
【0052】
また、得られた皮膜を、窒素ガス等の不活性ガス中、100〜1,500℃の範囲の高温で、1分間以上にわたって熱処理することにより、耐熱性の硬化皮膜とすることができる。上記範囲の温度で熱処理することで、皮膜においてSi−HとC=C(もしくはC≡C)のあいだの熱ヒドロシリル化反応による硬化を進めることができる。好ましい温度は150〜1,000℃、更に好ましくは300〜1,000℃の範囲である。
【0053】
本発明の耐熱性皮膜は、シルセスキオキサン系ポリマーの有する耐熱性、耐水性、耐薬品性、安定性、電気絶縁性、耐擦傷性等の機械的強度等において良好な諸特性を有する。従って、エレクトロニクス分野、光機能材料分野等をはじめとする広範な分野における物品、部品等の皮膜、層等として用いることができる。例えば、パッシベーション膜、レジスト膜、層間絶縁膜等の半導体用材料、航空・宇宙材料等に用いることができ、また、各種の保護膜として使用できるものである。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を、実施例により具体的に説明する。尚、「Me」は、メチル基を意味する。
1.アルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造
参考例1〔3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシランの合成〕
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロペン164g(1.0モル)と、塩化白金酸の2質量%イソプロパノール溶液を白金量換算で100ppmとを加え、50〜60℃で加熱撹拌しながら、滴下ロートよりトリエトキシシラン164g(1.0モル)を5時間かけて滴下し、反応させた。反応終了後、減圧蒸留して目的物〔3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン〕を289g(0.88モル)得た。収率は88%であった。
反応生成物の物性を以下に示す。
沸点:130℃/2mmHg
H−NMR δ(ppm):
0.6〜0.8(m,2H),1.1〜1.3(m,9H),1.6〜1.9(m,2H),2.4〜2.6(m,2H),3.5〜4.1(m,9H),5.48(s,1H),6.5〜6.7(m,2H),6.7〜7.0(m,1H)
【0055】
実施例1−1
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、参考例1で得られた3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン65.7g(0.2モル)、テトラエトキシシラン33.3g(0.16モル)、ヘキサメチルジシロキサン3.2g(0.02モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。
滴下終了後、75℃で4時間還流を続けた。次いで、反応系に水150gを加え、静置することで2層に分離させた。高分子成分を含む下層を分取し、上層をトルエン100gにより抽出した。次いで、トルエン抽出物と上記高分子成分とを合わせ、水分定量受器を装着したフラスコに戻し、共沸によって水及びエタノールを留出させた。冷却後、ろ過、濃縮により、珪素含有高分子化合物47.8gを得た。収率は85%であった。
【0056】
上記珪素含有高分子化合物の物性は、次の通りであり、下記式(18)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化11】

〔式中、l:m:n=1:0.2:0.8である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=8.5×10
Mn=4.4×10
軟化点:95〜100℃
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.8H),0.5〜2.7(br,6H),3.4〜4.3(br,3H),6.4〜7.2(br,3H)
29Si−NMR δ(ppm):
−114〜−102(br,0.79Si),−70〜−63(br,1Si),8〜15(br,0.18Si)
【0057】
実施例1−2〜1−5
上記実施例1−1と同様にして、参考例1で得られた3−(2−メトキシ−3−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシランを、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等と表1に示す比率で仕込み、珪素含有高分子化合物を製造した。反応生成物の物性は、表1に併記した。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1−1〜1−5において得られた珪素含有高分子化合物は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、メタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン及び酢酸イソアミルには溶解したが、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、トルエン等には難溶であった。
【0060】
参考例2〔2−p−(tert−ブトキシ)フェニルエチルトリエトキシシランの合成〕
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、p−(tert−ブトキシ)スチレン176g(1.0モル)と、塩化白金酸の2質量%イソプロパノール溶液を白金量換算で100ppmとを加え、50〜60℃で加熱撹拌しながら、滴下ロートよりトリエトキシシラン164g(1.0モル)を5時間かけて滴下し、反応させた。反応終了後、減圧蒸留して目的物〔2−p−(tert−ブトキシ)フェニルエチルトリエトキシシラン〕を313g(0.92モル)得た。収率は92%であった。
反応生成物の物性を以下に示す。
沸点:115℃/3mmHg
H−NMR δ(ppm):
0.5〜0.7(m,2H),1.0〜1.5(m,18H),2.4〜2.7(m,2H)、3.5〜4.1(m,6H),6.5〜6.7(m,2H),6.7〜7.0(m,2H)
【0061】
実施例1−6
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、参考例2で得られた2−p−(tert−ブトキシ)フェニルエチルトリエトキシシラン68.1g(0.2モル)、テトラエトキシシラン33.3g(0.16モル)、ヘキサメチルジシロキサン3.2g(0.02モル)及びトルエン41.5gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例1−1と同様にして、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物51.7gを得た。収率は88%であった。
【0062】
上記珪素含有高分子化合物の物性は、次の通りであり、下記式(19)で表される珪素含有高分子化合物が得られたことを確認した。
【化12】

〔式中、l:m:n=1:0.2:0.8である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=5.6×10
Mn=3.2×10
軟化点:120〜130℃
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.8H),0.5〜2.7(br,13H),6.4〜7.2(br,4H)
29Si−NMR δ(ppm):
−113〜−101(br,0.78Si),−72〜−64(br,1Si),7〜15(br,0.15Si)
【0063】
実施例1−6において得られた珪素含有高分子化合物は、上記水酸化ナトリウム水溶液、上記水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等の無機系水溶液、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0064】
2.珪素含有高分子化合物の製造
実施例2−1
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、ビニルトリメトキシシラン22.2g(0.15モル)、ヘキサメチルジシロキサン2.4g(0.015モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。
滴下終了後、75℃で4時間還流を続けた。次いで、反応系に水150gを加え、静置することで2層に分離させた。高分子成分を含む下層を分取し、上層をトルエン100gにより抽出した。トルエン抽出物と上記高分子成分とを合わせ、水分定量受器を装着したフラスコに戻し、共沸によって水及びエタノールを留出させた。冷却後、ろ過、濃縮により、珪素含有高分子化合物(P1)19.0gを得た。収率は85%であった。
【0065】
上記珪素含有高分子化合物(P1)の物性は、次の通りであり、下記式(20)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した(表2参照)。
【化13】

〔式中、l:m:n=1:1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.0×10
Mn=1.0×10
粘度(25℃):1.2×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.8H),4.2〜5.0(br,1H),5.4〜6.2(br,3H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.99Si),8〜15(br,0.19Si)
【0066】
実施例2−2〜2−5
上記実施例2−1と同様にして、トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びヘキサメチルジシロキサンを表2に示す比率で仕込み、珪素含有高分子化合物(P2)〜(P5)を製造した。反応生成物の物性は、表2に併記した。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例2−1〜2−5において得られた珪素含有高分子化合物(P1)〜(P5)は、いずれも、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0069】
実施例2−6
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、ビニルトリメトキシシラン22.2g(0.15モル)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2.0g(0.015モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例2−1と同様の操作により、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物(P6)19.2gを得た。収率は88%であった。
【0070】
上記珪素含有高分子化合物(P6)の物性は、次の通りであり、下記式(21)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化14】

〔式中、l:m:n=1:1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.2×10
Mn=1.2×10
粘度(25℃):1.1×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.2H),4.2〜5.0(br,1.2H),5.4〜6.2(br,3H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.98Si),−12〜−5(br,0.2Si)
【0071】
実施例2−6において得られた珪素含有高分子化合物(P6)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0072】
実施例2−7
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、パラスチリルトリメトキシシラン33.7g(0.15モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例2−1と同様の操作により、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物(P7)27.8gを得た。収率は89%であった。
【0073】
上記珪素含有高分子化合物(P7)の物性は、次の通りであり、下記式(22)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化15】

〔式中、l:m=1:1である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=6.2×10
Mn=3.2×10
粘度(25℃):5.2×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
4.2〜5.0(br,1H),5.3〜6.8(br,3H),7.1〜7.8(br,4H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.99Si)
【0074】
実施例2−7において得られた珪素含有高分子化合物(P7)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0075】
実施例2−8
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、パラスチリルトリメトキシシラン33.7g(0.15モル)、ヘキサメチルジシロキサン2.4g(0.015モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例2−1と同様の操作により、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物(P8)28.3gを得た。収率は84%であった。
【0076】
上記珪素含有高分子化合物(P8)の物性は、次の通りであり、下記式(23)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化16】

〔式中、l:m:n=1:1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.3×10
Mn=1.4×10
粘度(25℃):3.8×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.8H),4.2〜5.0(br,1H),5.3〜6.8(br,3H),7.1〜7.8(br,4H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,1Si),8〜15(br,0.2Si)
【0077】
実施例2−8において得られた珪素含有高分子化合物(P8)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0078】
実施例2−9
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、パラスチリルトリメトキシシラン33.7g(0.15モル)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2.0g(0.015モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例2−1と同様の操作により、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物(P9)27.6gを得た。収率は83%であった。
【0079】
上記珪素含有高分子化合物(P9)の物性は、次の通りであり、下記式(24)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化17】

〔式中、l:m:n=1:1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.2×10
Mn=1.2×10
粘度(25℃):4.1×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.2H),4.2〜5.0(br,1.2H),5.3〜6.8(br,3H),7.1〜7.8(br,4H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.99Si),−12〜−5(br,0.19Si)
【0080】
実施例2−9において得られた珪素含有高分子化合物(P9)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0081】
実施例2−10
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン37.7g(0.15モル)、ヘキサメチルジシロキサン2.4g(0.015モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例1と同様の操作により、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物(P10)34.3gを得た。収率は92%であった。
【0082】
上記珪素含有高分子化合物(P10)の物性は、次の通りであり、下記式(25)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化18】

〔式中、l:m:n=1:1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.4×10
Mn=1.5×10
粘度(25℃):3.2×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.8H),0.5〜1.0(br,2H),1.5〜2.5(br,5H),3.6〜4.2(br,2H),4.3〜5.0(br,1H),5.7〜7.1(br,2H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.99Si),8〜15(br,0.2Si)
【0083】
実施例2−10において得られた珪素含有高分子化合物(P10)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミルには溶解したが、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、トルエン等には難溶であった。
【0084】
実施例2−11
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン24.7g(0.15モル)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン35.2g(0.15モル)、ヘキサメチルジシロキサン2.4g(0.015モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例1と同様の操作により、分離、濃縮により珪素含有高分子化合物(P11)31.7gを得た。収率は90%であった。
【0085】
上記珪素含有高分子化合物(P11)の物性は、次の通りであり、下記式(26)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化19】

〔式中、l:m:n=1:1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.3×10
Mn=1.1×10
粘度(25℃):3.2×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,1.8H),0.5〜1.0(br,2H),1.9〜2.5(br,2H),3.6〜4.2(br,2H),4.3〜5.0(br,1H),5.7〜7.1(br,3H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.98Si),8〜15(br,0.2Si)
【0086】
実施例2−11において得られた珪素含有高分子化合物(P11)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミルには溶解したが、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、トルエン等には難溶であった。
【0087】
3.耐熱性樹脂組成物の調製及び評価
実施例2−12
実施例2−1で得られた珪素含有高分子化合物(P1)10gと塩化白金酸1mgとを、室温で5分間攪拌した後、120℃で1時間加熱した。これにより、不溶不融の樹脂組成物が得られた。この加熱の際、不飽和基を有する化合物が気化することはなかった。
この樹脂組成物の熱重量測定を行ったところ、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から加熱したとき、625℃において、重量損失率は5.0%であった。また、同条件で、空気雰囲気下で加熱したときは、84.3%が残存し、Td5(加熱前の質量を基準として、重量損失の割合が5質量%となった温度)は405℃であった(表3参照)。また、示差走査熱量計(DSC)によると、500℃までの温度範囲において、ガラス転移点と見られる挙動は、はっきりとは確認されなかった。
【0088】
実施例2−13〜2−16
実施例2−2〜2−5で得られた珪素含有高分子化合物(P2)〜(P5)を用い、実施例2−12と同様にして樹脂組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例2−17
実施例2−6で得られた珪素含有高分子化合物(P6)10gと塩化白金酸1mgとを、室温で5分間攪拌した後、120℃で1時間加熱した。これにより、不溶不融の樹脂組成物が得られた。この加熱の際、不飽和基を有する化合物が気化することはなかった。
この樹脂組成物の熱重量測定を行ったところ、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から加熱したとき、1065℃において、重量損失率は5.0%であった。また、同条件で、空気雰囲気下で加熱したときは、90.2%が残存し、Td5は620℃であった(表4参照)。また、500℃までの温度範囲において、ガラス転移点と見られる挙動は、はっきりとは確認されなかった。
【0091】
実施例2−18〜2−22
実施例2−7〜2−11で得られた珪素含有高分子化合物(P7)〜(P11)を用い、実施例2−17と同様にして樹脂組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
4.耐熱性皮膜の製造及び評価
実施例2−23
実施例2−1で得られた珪素含有高分子化合物(P1)0.1gにテトラヒドロフラン0.9gを加え、樹脂溶液を調製した。
その後、この樹脂溶液を、直径3インチのシリコンウエハ上に、回転数1,000rpmで30秒間スピンコートした。次いで、直ちに110℃で10分間加熱し、膜厚0.5μmの皮膜を得た。この皮膜はクラックのない平滑な膜であった。また、得られた皮膜を、400℃×30分及び700℃×30分の各条件で加熱したところ、クラックは発生しなかった(表5参照)。尚、表5の皮膜の状態を示す欄において、クラックが発生しなかった場合に「○」、クラックが発生した場合に「×」と表示した。
【0094】
実施例2−24〜2−27
実施例2−2〜2−5で得られた珪素含有高分子化合物(P2)〜(P5)を用い、実施例2−23と同様にしてシリコンウエハ上に、皮膜を形成させ、同様の評価を行った。その結果を表5に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
実施例2−28
実施例2−6で得られた珪素含有高分子化合物(P6)0.1gにテトラヒドロフラン0.9gを加え、樹脂溶液を調製した。
その後、この樹脂溶液を、直径3インチのシリコンウエハ上に、回転数1,000rpmで30秒間スピンコートした。次いで、直ちに110℃で10分間加熱して膜厚0.6μmからなる皮膜を得た。この皮膜はクラックのない平滑な膜であった。また、得られた皮膜を、400℃×30分及び700℃×30分の各条件で加熱したところ、クラックは発生しなかった(表6参照)。
【0097】
実施例2−29〜2−31
実施例2−7〜2−9で得られた珪素含有高分子化合物(P7)〜(P9)を用い、実施例2−28と同様にしてシリコンウエハ上に、皮膜を形成させ、同様の評価を行った。その結果を表6に示す。
【0098】
【表6】

【0099】
5.珪素含有高分子化合物の製造
実施例3−1
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン44.4g(0.27モル)、ビニルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。
滴下終了後、75℃で4時間還流を続けた。次いで、反応系に水150gを加え、静置することで2層に分離させた。高分子成分を含む下層を分取し、上層をトルエン100gにより抽出した。トルエン抽出物と上記高分子成分とを合わせ、水分定量受器を装着したフラスコに戻し、共沸によって水及びエタノールを留出させた。冷却後、ろ過、濃縮により、珪素含有高分子化合物(Q1)14.5gを得た。収率は87%であった。
【0100】
上記珪素含有高分子化合物(Q1)の物性は、次の通りであり、下記式(27)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
[H−Si−O3/2[CH=CH−Si−O3/2 (27)
〔式中、l:m=0.9:0.1である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=4.5×10
Mn=3−1×10
粘度(25℃):4.3×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
4.2〜4.7(br,3H),5.4〜6.2(br,1H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.11Si)
【0101】
実施例3−1において得られた珪素含有高分子化合物(Q1)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0102】
実施例3−2
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン44.4g(0.27モル)、パラスチリルトリメトキシシラン6.7g(0.03モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例3−1と同様にして、分離、濃縮により、珪素含有高分子化合物(Q2)16.9gを得た。収率は89%であった。
【0103】
上記珪素含有高分子化合物(Q2)の物性は、次の通りであり、下記式(28)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化20】

〔式中、l:m=0.9:0.1である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=7.4×10
Mn=3.8×10
粘度(25℃):8.3×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
4.2〜5.0(br,3H),5.4〜6.2(br,1H),7.1〜7.8(br,1.3H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.11Si)
【0104】
実施例3−2において得られた珪素含有高分子化合物(Q2)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0105】
実施例3−3
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、トリエトキシシラン34.5g(03−1モル)、ビニルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン4.0g(0.03モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例3−1と同様にして、分離、濃縮により、珪素含有高分子化合物(Q3)16.7gを得た。収率は88%であった。
【0106】
上記珪素含有高分子化合物(Q3)の物性は、次の通りであり、下記式(29)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化21】

〔式中、l:m:n=0.7:0.1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=2.2×10
Mn=1.2×10
粘度(25℃):1.1×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,4H),4.2〜4.7(br,3H),5.4〜6.2(br,1H)
29Si−NMR δ(ppm):
−89〜−82(br,1Si),−70〜−63(br,0.15Si),−12〜−5(br,0.29Si)
【0107】
実施例3−3において得られた珪素含有高分子化合物(Q3)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0108】
実施例3−4
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、テトラエトキシシラン25.0g(0.12モル)、トリエトキシシラン14.8g(0.09モル)、ビニルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン4.0g(0.03モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例3−1と同様にして、分離、濃縮により、珪素含有高分子化合物(Q4)16.9gを得た。収率は92%であった。
【0109】
上記珪素含有高分子化合物(Q4)の物性は、次の通りであり、下記式(30)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化22】

〔式中、k:l:m:n=0.4:0.3:0.1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=5.8×10
Mn=2.2×10
粘度(25℃):1.2×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,4H),4.2〜4.7(br,1.6H),5.4〜6.2(br,1H)
29Si−NMR δ(ppm):
−112〜−105(br,1Si),−89〜−82(br,0.75Si),−70〜−63(br,0.25Si),−12〜−5(br,0.49Si)
【0110】
実施例3−4において得られた珪素含有高分子化合物(Q4)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0111】
実施例3−5
撹拌機、還流管、滴下ロート及び温度計を備えた四つ口フラスコに、テトラエトキシシラン37.5g(0.18モル)、トリエトキシシラン4.9g(0.03モル)、ビニルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン4.0g(0.03モル)及びトルエン37.0gを加え、70℃で加熱撹拌しながら、水20g、濃塩酸0.5g及びエタノール10gの混合物を約1時間かけて滴下し、反応させた。その後、実施例3−1と同様にして、分離、濃縮により、珪素含有高分子化合物(Q5)17.7gを得た。収率は94%であった。
【0112】
上記珪素含有高分子化合物(Q5)の物性は、次の通りであり、下記式(31)で表される珪素含有高分子化合物であることを確認した。
【化23】

〔式中、k:l:m:n=0.6:0.1:0.1:0.2である。〕
分子量(GPC,テトラヒドロフラン溶媒,標準ポリスチレン換算):
Mw=8.2×10
Mn=3.2×10
粘度(25℃):2.3×10Pa・s
H−NMR δ(ppm):
−0.4〜0.4(br,4H),4.2〜4.7(br,1H),5.4〜6.2(br,1H)
29Si−NMR δ(ppm):
−112〜−105(br,1Si),−89〜−82(br,0.17Si),−70〜−63(br,0.16Si),−12〜−5(br,0.50Si)
【0113】
実施例3−5において得られた珪素含有高分子化合物(Q5)は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ヘキサン、四塩化炭素等の有機溶媒に溶解した。
【0114】
6.耐熱性樹脂組成物の調製及び評価
実施例3−6
実施例3−1で得られた珪素含有高分子化合物(Q1)10gと塩化白金酸1mgとを、室温で5分間攪拌した後、120℃で1時間加熱した。これにより、樹脂組成物が得られた。この樹脂組成物の溶解性を、低級アルコール、ケトン等により調べたところ、不溶であった。
また、この樹脂組成物の熱重量測定を行ったところ、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率は、1.2%であった。空気雰囲気下、同条件で加熱したときの重量損失率は、2.3%であった(表7参照)。
更に、DSCによると、500℃まで温度範囲において、ガラス転移点と見られる挙動は、はっきりとは確認されなかった。
尚、表7における「不溶不融」は、有機溶媒に不溶であり、加熱しても溶融しない性質であることを意味する。
【0115】
実施例3−7〜3−10
実施例3−2〜3−5で得られた珪素含有高分子化合物(Q2)〜(Q5)について、実施例3−6と同様にして樹脂組成物を調製し、同様の評価を行った。その結果を表7に示す。
【0116】
【表7】

【0117】
7.耐熱性皮膜の製造及び評価
実施例3−11
実施例3−1で得られた珪素含有高分子化合物(Q1)0.1gにテトラヒドロフラン0.9gを加え、樹脂溶液を調製した。
その後、この樹脂溶液を、直径3インチのシリコンウエハ上に、回転数1,000rpmで30秒間スピンコートした。次いで、直ちに110℃で10分間加熱し、膜厚0.5μmの皮膜を得た。この皮膜はクラックのない平滑な膜であった。また、得られた皮膜を、400℃×30分及び700℃×30分の各条件で加熱したところ、クラックは発生しなかった(表8参照)。尚、表8の皮膜の状態を示す欄において、クラックが発生しなかった場合に「○」、クラックが発生した場合に「×」と表示した。
【0118】
実施例3−12〜3−15
実施例3−2〜3−5で得られた珪素含有高分子化合物(Q2)〜(Q5)について、実施例3−11と同様にしてシリコンウエハ上に、皮膜を形成させ、同様の評価を行った。その結果を表8に示す。
【0119】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が500〜500,000であるアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物。
【化1】

〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、mは0又は1、Rは炭素数1〜4のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。〕
【請求項2】
上記一般式(1)において、0≦t/(s+u)≦0.2且つ0.2≦u/s≦5であり、室温において固体である請求項1記載のアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物。
【請求項3】
上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される加水分解性基含有オルガノシランsモル、下記一般式(3)で表される加水分解性基含有オルガノシランtモル及び下記一般式(4)で表される加水分解性基含有珪素化合物uモル〔但し、s及びuは正の数であり、tは0又は正の数であって、0≦t/(s+u)≦1且つ0<u/s≦5である。〕を、加水分解共縮合反応させることを特徴とするアルカリ可溶性珪素含有高分子化合物の製造方法。
(RSiM (2)
〔式中、Aは水酸基を有するかもしくはアルコキシ基を有するフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Mは加水分解性基、mは0又は1である。〕
【化2】

〔式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Mは加水分解性基である。〕
SiM (4)
〔式中、Mは加水分解性基である。〕
【請求項4】
下記一般式(5)で表され、重量平均分子量が500〜500,000であるケイ素含有高分子化合物。
【化3】

〔式中、Aは炭素−炭素不飽和基を有する炭素数2〜10の有機基、Rは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族基もしくは炭素数3〜20の2価の脂環式基、nは0又は1、RはH原子もしくは炭素数1〜10のアルキル基(1分子中のRは同種でも2種以上の異種の組み合わせあってもよい。)、x,yは正の数であり、w,zは0又は正の数であって、0≦z/(w+x+y)≦2且つ0.01≦y/(w+x)≦5である。〕
【請求項5】
請求項4記載のケイ素含有高分子化合物におけるSi原子に結合するH原子と、請求項4記載のケイ素含有高分子化合物の他の化合物における炭素−炭素不飽和基との反応によるヒドロシリル化重合体を含有する耐熱性樹脂組成物。
【請求項6】
窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25℃から1,000℃まで加熱したときの重量損失率が5%以下である請求項5記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4記載のケイ素含有高分子化合物の有機溶媒溶液を基材上に展開してなる被膜を熱ヒドロシリル化反応により硬化させた耐熱性皮膜。

【国際公開番号】WO2005/010077
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512082(P2005−512082)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010853
【国際出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】