説明

現像剤担持体の製造方法、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置

【課題】耐久性の向上を図るとともに、優れた現像特性を有する現像剤担持体を製造することができる現像剤担持体の製造方法、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】円筒状または円柱状をなし、その外周面に現像剤を担持する凹凸部を有する現像剤担持体を製造する方法であって、現像剤担持体となるべき円筒状または円柱状の基材300Aを用意する工程と、基材300Aの外周面に凹凸部の形成のための型を押圧することにより、凹凸部を形成する工程とを有し、凹凸部を形成する工程は、型を用いて、基材300Aの外周面に複数の溝(第1の凹部)21Aを形成する第1の工程と、この型と同一または異なる型を用いて、基材300Aの外周面の溝(第1の凹部)21Aに部分的に重なるように溝(第2の凹部)21Bを形成することにより、凹凸部を形成する第2の工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤担持体の製造方法、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置は、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程などの一連の画像形成プロセスによって、紙などの記録媒体上に、トナーからなる画像を形成する。
このような画像形成装置には、静電的な潜像を担持する感光体に対向して配設され、トナーを担持する現像ローラ(現像剤担持体)を有する現像装置が備えられている。かかる現像装置は、現像工程にて、現像ローラから感光体へトナーを付与することにより、前記潜像をトナー像として可視化する。
【0003】
従来、かかる現像装置に備えられる現像ローラとしては、その外周面をブラスト処理により粗面化して、凹凸を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、現像ローラ上にトナーを確実に担持させることができる。
しかしながら、特許文献1にかかる現像ローラは、前述したような凹凸をブラスト処理により形成するため、形成された凹凸の形状、大きさ、配置が不均一なものとなり、現像特性の低下を招く場合がある。
【0004】
例えば、現像ローラの外周面に担持されるトナー量の分布が不均一となったり、現像ローラの外周面でのトナー粒子の転動性(転がりやすさ)が不均一になったりする。そのため、現像ローラ上のトナーを規制ブレードにより摩擦帯電する際に、局所的にトナーの帯電不良や搬送不良などを生じる場合がある。その結果、いわゆるカブリなどの現像不良が生じてしまう。
【0005】
また、ブラスト処理により得られた凹凸は、その凸部の先端の形状が比較的鋭利なものとなるため、例えば、前述した規制ブレードなどとの接触により磨耗しやすく、特許文献1にかかる現像ローラは、耐久性が低いものとなってしまう。
また、現像ローラの外周面の凹凸の形状を所望のものに任意に設定することができる方法が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−263018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐久性の向上を図るとともに、優れた現像特性を有する現像剤担持体を製造することができる現像剤担持体の製造方法、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の現像剤担持体の製造方法は、円筒状または円柱状をなし、その外周面に現像剤を担持する凹凸部を有する現像剤担持体を製造する方法であって、
前記現像剤担持体となるべき円筒状または円柱状の基材を用意する工程と、
前記基材の外周面に前記凹凸部の形成のための型を押圧することにより、前記凹凸部を形成する工程とを有し、
前記凹凸を形成する工程は、型を用いて、前記基材の外周面に複数の第1の凹部を形成する第1の工程と、前記型と同一または異なる型を用いて、前記第1の凹部に部分的に重なるように、前記基材の外周面に第2の凹部を形成する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
これにより、現像剤担持体の外周面に規則的かつ均一な凹凸部を形成することができる。そのため、得られる現像剤担持体は、その外周面に均一かつ最適な量の現像剤を担持させることができ、また、現像剤担持体の外周面での現像剤の転動性(転がりやすさ)も均一なものとすることができる。その結果、現像剤の局所的な帯電不良や搬送不良を防止して、優れた現像特性を発揮させることができる。
【0010】
また、型を用いて凹凸部を形成するため、ブラスト処理により得られたものと異なり、得られる凹凸部の凸部の先端の幅を比較的太くすることができる。このような凹凸部は、優れた機械的強度を有する。特に、型により押圧された部位は機械的強度が向上するので、得られる凹凸部は、切削加工のような処理で得られたものと比しても、優れた機械的強度を有する。このような凹凸部を有する現像剤担持体は、優れた耐久性を発揮することができる。また、凹凸部の凸部の先端の幅が比較的太いと、磨耗しても形状変化が少ないので、現像特性が急激に低下することも防止して、長期にわたり優れた現像特性を発揮することができる。
特に、第1の凹部に部分的に重なるように第2の凹部を形成して凹凸部を形成するので、複雑な形状の型を用いなくても、第1の凹部および第2の凹部のそれぞれの形状、大きさ、深さや、第1の凹部と第2の凹部との重なり量などを適宜設定することで、得られる凹凸部の形状を任意に設定して、所望の特性を有する凹凸部を得ることができる。
【0011】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の凹部の深さと前記第2の凹部の深さが異なることが好ましい。
これにより、段差(複数段溝構造)を有する凹凸部を形成することができる。このような凹凸部は、現像剤の出入りが容易であるため、現像剤の転動性が向上する。
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記凹凸を形成する工程では、前記第1の凹部を形成した後に、前記第2の凹部を形成し、前記第2の凹部の深さが前記第1の凹部の深さよりも浅いことが好ましい。
これにより、第2の工程時での押圧力を低減して、凹凸部の形成を容易にすることができる。
【0012】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記現像剤担持体は、その軸線方向に回転可能に配設されて用いられるものであり、前記第2の凹部は、前記現像剤担持体の回転方向にて前記第1の凹部の下流側の一部に重なるように形成することが好ましい。
これにより、凹凸部内の現像剤がより出やすくなるので、現像剤の転動性がより確実に向上する。特に、現像剤担持体の回転方向における凹凸部の下流側のみに段差を形成し、上流側には段差を形成しない構成とすることができる。
【0013】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の凹部の形成に用いる型と、前記第2の凹部の形成に用いる型とが同一であることが好ましい。
これにより、型にかかるコストを低減することができる。
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の凹部の形成に用いる型と、前記第2の凹部の形成に用いる型とが異なり、前記第1の凹部の形成に用いる型には、第1のピッチで前記第1の凹部のための凸部が形成され、前記第2の凹部の形成に用いる型には、前記第1のピッチのn倍または1/n倍の第2のピッチで前記第2の凹部の形成のための凸部が形成されていることが好ましい(ただし、nは自然数である。)。
これにより、第1の凹部の形成のための型の形状と第2の凹部の形成のための型の形状とを適宜組み合わせることにより、所望の形状をなす凹凸部を形成することができ、得られる凹凸部の設計自由度を大きくすることができる。
【0014】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第2のピッチは、前記第1のピッチと等しいことが好ましい。
これにより、凹凸部の各凹部および各凸部の形状をより確実に均一なものとすることができる。
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第2の型の凸部の高さは、前記第1の型の凸部の高さよりも小さいことが好ましい。
これにより、段差(2段溝構造)を有する凹凸部を簡単に形成することができる。また、第2の工程にて、第2の凹部の形成に用いる型の凹部により、凹凸部の凸部が押圧されるので、凹凸部の凸部の機械的強度の向上を図ることができる。その結果、得られる現像剤担持体の耐久性が向上する。
【0015】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記凹凸部は、互いに平行に形成された多数の第1の溝と、該第1の溝に交差するとともに、互いに平行に形成された多数の第2の溝とで構成されていることが好ましい。
これにより、比較的単純な形状の型を用いて、規則的かつ均一な凹凸部を簡単に形成することができる。
【0016】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の溝の形成と前記第2の溝の形成とは、別々の型を用いて行うことが好ましい。
これにより、それぞれの型に互いに平行な複数の凸条を設けるだけですみ、型の形状を簡単なものとすることができる。
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の溝同士間および/または前記第2の溝同士間のピッチをpとしたとき、pは、用いられる解像度のピッチよりも小さいことが好ましい。
これにより、得られる現像剤担持体は、現像によって得られるトナー像のムラを防止することができる。
【0017】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の溝および/または前記第2の溝の深さをDとし、前記現像剤の平均粒径をdとしたとき、D/dは、0.5〜2であることが好ましい。
これにより、得られる現像剤担持体は、その凹凸部に現像剤を均一かつ最適な量で担持することができる。
【0018】
本発明の現像剤担持体の製造方法では、前記第1の溝および/または前記第2の溝の幅をWとし、前記現像剤の平均粒径をdとしたとき、W/dは、2〜20であることが好ましい。
これにより、得られる現像剤担持体は、その凹凸部に現像剤を均一かつ最適な量で担持することができる。
【0019】
本発明の現像剤担持体は、本発明の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、現像特性および耐久性に優れた現像剤担持体を提供することができる。
本発明の現像装置は、本発明の現像剤担持体を備え、該現像剤担持体は、潜像を担持する潜像担持体に接触または近接して対向しており、前記現像剤担持体から前記潜像担持体へ現像剤を付与することにより、前記潜像を現像剤像として可視化することを特徴とする。
これにより、現像特性および耐久性に優れた現像装置を提供することができる。
本発明の画像形成装置は、帯電・露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスにより、画像を記録媒体に形成する画像形成装置であって、
本発明の現像装置を備えることを特徴とする。
これにより、現像特性および耐久性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の現像剤担持体の製造方法、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<画像形成装置>
まず、本発明の画像形成装置、すなわち本発明の現像装置を備える画像形成装置を簡単に説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる画像形成装置の1実施形態を示す全体構成の模式的断面図である。
図1に示す本実施形態の画像形成装置10は、主として露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスによって画像を記録媒体に記録するものである。このような画像形成装置10は、図1に示すように、静電的な潜像を担持し図示矢印方向に回転する感光体20を有し、その回転方向に沿って順次、帯電ユニット30、露光ユニット40、現像ユニット50、一次転写ローラ60、クリーニングユニット75が配設されている。また、画像形成装置10は、図1にて下部に、紙などの記録媒体Pを収容する給紙トレイ82が設けられ、その給紙トレイ82に対して記録媒体Pの搬送方向下流に、二次転写ローラ80、定着装置90が記録媒体Pの搬送方向に沿って順次配設されている。また、画像形成装置10には、記録媒体の両面に画像を形成する場合に、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを表裏反転させて二次転写ローラ80へ帰還させるための搬送部88が設けられている。
【0022】
感光体20は、円筒状の導電性基材(図示せず)と、その外周面に形成された感光層(図示せず)とを有し、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。
帯電ユニット30は、コロナ帯電などにより感光体20の表面を一様に帯電するための装置である。
露光ユニット40は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受けこれに応じて、一様に帯電された感光体20上に、レーザを照射することによって、静電的な潜像を形成する装置である。
【0023】
現像ユニット50は、ブラック現像装置51と、マゼンタ現像装置52と、シアン現像装置53と、イエロー現像装置54との4つの現像装置を有し、これらの現像装置を感光体20上の潜像に対応して選択的に用いて、前記潜像をトナー像(現像剤像)として可視化する装置である。この装置では、現像剤として、ブラック現像装置51はブラック(K)トナー、マゼンタ現像装置52はマゼンタ(M)トナー、シアン現像装置53はシアン(C)トナー、イエロー現像装置54はイエロー(Y)トナーを用いて現像を行う。
【0024】
本実施形態におけるYMCK現像ユニット50は、前述の4つの現像装置51、52、53、54を選択的に感光体20に対向するように、回転可能となっている。具体的には、このYMCK現像ユニット50は、軸50aを中心として回転可能な保持体55の4つの保持部55a、55b、55c、55dにそれぞれ4つの現像装置51、52、53、54が保持されており、保持体55の回転により、4つの現像装置51、52、53、54が相対位置関係を維持したまま、感光体20に選択的に対向するようになっている。各現像装置51、52、53、54は、本発明の現像剤担持体の製造方法を用いて製造された現像剤担持体を備えるものである。なお、各現像装置51、52、53、54については、後に詳述する。
【0025】
中間転写体61は、エンドレスベルト状の中間転写ベルト70を有し、この中間転写ベルト70は、一次転写ローラ60、従動ローラ72、駆動ローラ71で張架されており、駆動ローラ71の回転により、図1に示す矢印方向に、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。
一次転写ローラ60は、感光体20に形成された単色のトナー像を中間転写ベルト70に転写するための装置である。
【0026】
中間転写ベルト70上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの少なくとも1色のトナー像が担持され、例えばフルカラー画像の形成時に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。本実施形態では、駆動ローラ71が、後述する二次転写ローラ80のバックアップローラとしても機能する。また、一次転写ローラ60、駆動ローラ71、従動ローラ72は、基体73によって支持されている。
【0027】
二次転写ローラ80は、中間転写ベルト70上に形成された単色やフルカラーなどのトナー像を、紙、フィルム、布等の記録媒体Pに転写するための装置である。
定着装置90は、前記トナー像の転写を受けた記録媒体Pを加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録媒体Pに融着させて永久像として定着させるための装置である。
クリーニングユニット75は、一次転写ローラ60と帯電ユニット30との間で感光体20の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード76を有し、一次転写ローラ60によって中間転写ベルト70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード76により掻き落として除去するための装置である。
【0028】
搬送部88は、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを挟持搬送する搬送ローラ対88A、88Bと、搬送ローラ対88A、88Bによって搬送される記録媒体Pを表裏反転しつつレジローラ86へ向け案内する搬送路88Cとを備えている。これにより、記録媒体の両面に画像形成する場合に、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを表裏反転して二次転写ローラ80へ帰還させる。
【0029】
次に、このように構成された画像形成装置10の動作を説明する。
まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体20、現像ユニット50に設けられた現像ローラ(図示せず)、および中間転写ベルト70が回転を開始する。そして、感光体20は、回転しながら、帯電ユニット30により順次帯電される。
感光体20の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット40によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
【0030】
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。このとき、YMCK現像ユニット50は、イエロー現像装置54が、前記現像位置にて感光体20と対向している。
感光体20上に形成されたイエロートナー像は、感光体20の回転に伴って一次転写位置(すなわち、感光体20と一次転写ローラ60との対向部)に至り、一次転写ローラ60によって、中間転写ベルト70に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ60には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。なお、この間、二次転写ローラ80は、中間転写ベルト70から離間している。
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト70に重なり合って転写される。これにより、中間転写ベルト70上にはフルカラートナー像が形成される。
【0031】
一方、記録媒体Pは、給紙トレイ82から、給紙ローラ84、レジローラ86によって二次転写ローラ80へ搬送される。
中間転写ベルト70上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト70の回転に伴って二次転写位置(すなわち、二次転写ローラ80と駆動ローラ71との対向部)に至り、二次転写ローラ80によって記録媒体Pに転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ80は中間転写ベルト70に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
記録媒体Pに転写されたフルカラートナー像は、定着装置90によって加熱および加圧されて記録媒体Pに融着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対87によって画像形成装置10の外部へ排出される。
一方、感光体20は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット75のクリーニングブレード76によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット75内の残存トナー回収部に回収される。
【0032】
記録媒体の両面に画像形成する場合には、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦排紙ローラ対87により挟持した後に、排紙ローラ対87を反転駆動するとともに、搬送ローラ対88A、88Bを駆動して、当該記録媒体Pを搬送路88Cを通じて表裏反転して二次転写ローラ80へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
【0033】
<現像装置>
次に、現像ユニット50の現像装置51、52、53、54を詳細に説明する。なお、現像装置51、52、53、54は、使用するトナーが異なるが、それ以外は同様の構成であるため、以下、図2に基づいて、イエロー現像装置54を代表的に説明する。
図2は、本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。
図2に示すイエロー現像装置54は、現像剤たるトナーT(イエロートナー)を収容するハウジング540と、現像剤担持体たる現像ローラ510と、この現像ローラ510にトナーTを供給するトナー供給ローラ550と、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制する規制ブレード560とを有している。
【0034】
ハウジング540は、その内部空間として形成された収容部530内にトナーTを収容する。ハウジング540では、収容部530の下部に形成された開口およびその近傍において、トナー供給ローラ550および現像ローラ510が互いに圧接回転するように支持されている。また、ハウジング540には、規制ブレード560が取り付けられていて、これが現像ローラ510に圧接している。さらに、ハウジング540には、前記開口におけるハウジング540と現像ローラ510との間からのトナーの漏れを防止するためのシール部材520が取り付けられている。
【0035】
現像ローラ510は、その外周面にトナーTを担持しつつ、現像ローラ510と感光体20との対向部である現像位置(以下、単に「現像位置」という)へトナーTを搬送するものである。また、現像ローラ510は、円筒状をなし、その軸線まわりに回転可能となっている。本実施形態では、現像ローラ510は、感光体20の回転方向と逆の方向に回転する。なお、現像ローラ510については、後に詳述する。
また、本実施形態では、イエロー現像装置54による現像時に、現像ローラ510と感光体20とが微小間隙をもって、非接触状態で対向する。そして、現像ローラ510と感光体20との間に交番電界を印加することにより、トナーTを現像ローラ510上から感光体20へ飛翔させて、感光体20上の潜像が現像される。
【0036】
トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する。このトナー供給ローラ550は、ポリウレタンフォーム等からなり、弾性変形された状態で現像ローラ510に圧接している。本実施形態では、トナー供給ローラ550は、現像ローラ510の回転方向と逆の方向に回転する。なお、トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する機能を有するだけでなく、現像後に現像ローラ510に残存しているトナーTを現像ローラ510から剥ぎ取る機能をも有している。
【0037】
規制ブレード560は、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制するとともに、その規制時に、摩擦帯電により、現像ローラ510に担持されたトナーTに電荷を付与する。この規制ブレード560は、現像ローラ510の回転方向にて現像位置の上流側のシール部材としても機能している。
この規制ブレード560は、現像ローラ510の軸方向に沿って当接される当接部材としてのゴム部560aと、このゴム部560aを支持する支持部材としてのゴム支持部560bとを有している。ゴム部560aは、シリコンゴム、ウレタンゴム等を主材料として構成され、ゴム支持部560bは、ゴム部560aを現像ローラ510側に付勢する機能も有するため、リン青銅、ステンレス等のバネ性(弾性)を有するシート状の薄板が用いられる。ゴム支持部560bは、その一端がブレード支持板金562に固定されている。ブレード支持板金562は、ハウジング540に取り付けられ、シール部材520もハウジング540に取り付けられる。さらに現像ローラ510が取り付けられた状態で、ゴム部560aは、ゴム支持部560bの撓みによる弾性力によって、現像ローラ510に押しつけられている。
また、本実施形態では、規制ブレード560の現像ローラ510側とは逆側には、ブレード裏部材570が設けられ、ゴム支持部560bとハウジング540との間にトナーTが入り込むことを防止するとともに、ゴム部560aを現像ローラ510へ押圧して、ゴム部560aを現像ローラ510に押しつけている。
【0038】
本実施形態では、規制ブレード560の自由端部、すなわち、ブレード支持板金562に支持されている側とは逆側の端部は、その端縁で現像ローラ510に接触せずに、端縁から若干離れた部位で現像ローラ510に接触している。また、規制ブレード560は、その先端が現像ローラ510の回転方向の上流側に向くように配置されており、いわゆるカウンタ当接している。
【0039】
<現像剤担持体>
ここで、図3および図4に基づき、本発明の現像剤担持体の一例である現像ローラ510を詳細に説明する。
図3は、図2に示す現像装置に備えられた現像剤担持体の概略構成を示す平面図、図4は、図3におけるA−A線での拡大断面図である。
図3に示す現像ローラ510は、円筒状の本体300と、この本体300の両端から突出する軸受部310とを有している。
【0040】
本体300の外周面301には、図3に示すように、トナーを担持するための凹凸部2が形成されている。この凹凸部2は、互いにほぼ平行な複数の第1の溝21と、この第1の溝21に交差(本実施形態ではほぼ直交)するとともに、互いにほぼ平行な複数の第2の溝22とで構成されている。すなわち、外周面301には、複数の第1の溝21と複数の第2の溝22とが格子状をなすように形成されている。そのため、互いに隣接する1対の第1の溝21と、互いに隣接する1対の第2の溝22とで囲まれた領域には、凸部23が形成されている。
図3に示すように、第1の溝21は、外周面301に沿って螺旋状をなすように形成されている。言い換えすれば、第1の溝21は、外周面301の周方向に対して傾斜する方向に延在している。
【0041】
また、図4に示すように、第1の溝21は、互いに深さの異なる第1の凹部21Aおよび第2の凹部21Bを有し、これらが部分的に重なるようにして2段構造となっている。なお、第2の溝22の構成は、前述したように延在方向が異なる以外は、第1の溝21の構成と同様である。なお、説明の便宜上、図4では、第1の溝21および第2の溝22を模式的に示している。
このような凹凸部2は規則的かつ均一であるため、現像ローラ510上に均一かつ最適な量のトナーTを担持させることが、また、現像ローラ510の外周面でのトナーの転動性(転がりやすさ)も均一なものとすることができる。その結果、トナーの局所的な帯電不良や搬送不良を防止して、優れた現像特性を発揮させることができる。
【0042】
また、ブラスト処理により得られたものと異なり、このような凹凸部2は、その凸部23の先端の幅が比較的太いため、優れた機械的強度を有する。特に、凹凸部2は、後述するように型を用いた転写(転造)のような処理によって得られるものであるため、押圧された部分の強度が向上し、切削加工のような処理で得られたものと比しても、優れた機械的強度を有する。このような凹凸部2を有する現像ローラ510は、前述したような規制ブレード560やトナー供給ローラ550などの摺動を受けていても、優れた耐久性を発揮することができる。したがって、このような現像ローラ510は、乾式一成分非磁性トナーを用いる現像装置に好適に用いることができる。また、凹凸部2の凸部の先端の幅が比較的太いと、磨耗しても形状変化が少ないので、磨耗により現像特性が急激に低下することも防止して、長期にわたり優れた現像特性を発揮することができる。
また、凹凸部2は、段差(複数段溝構造)を有するものであるため、トナーの出入りが容易であり、トナーの転動性が向上する。本例では、現像ローラ510の回転方向における凹凸部2の下流側のみに段差を形成し、上流側には段差を形成しない構成となっている。
【0043】
このような現像ローラ510の本体300は、アルミニウム、ステンレス、鉄等のような金属材料を主材料として構成されている。
なお、本体300の外周面(外周面301)には、必要に応じて、ニッケルメッキ、クロムメッキ等が施されていてもよい。
また、本体300の外径(直径)は、特に限定されないが、例えば、10〜30mmであるのが好ましく、15〜20mmであるのがより好ましい。
【0044】
<現像剤担持体の製造方法>
次に、図5ないし図8に基づいて、本発明の現像剤担持体の製造方法の一例として、前述した現像ローラ510の製造方法を説明する。
図5は、本発明の実施形態にかかる現像剤担持体の製造方法を説明するための図、図6は、図5に示す製造方法において基材の外周面に凹凸部を形成する装置の概略構成を示す斜視図、図7は、図6に示す装置の平面図、図8は、図5に示す製造方法において基材の外周面に対する凹凸部の形成を説明するための図である。
現像ローラ510の製造方法は、[1]現像ローラ510となるべき円筒状の基材を用意する工程と、[2]この基材の外周面に凹凸部2を形成する工程とを有する。
【0045】
以下、各工程を順次詳細に説明する。
[1]基材を用意する工程
まず、図5(a)に示すように、現像ローラ510となるべき円筒状の基材300Aを用意する。
この基材300Aは、前述した現像ローラ510の本体300となるべきものであり、アルミニウム、ステンレス、鉄等のような金属材料を主材料として構成されている。より具体的には、基材300Aの構成材料としては、STKM、STK、SGPなどの鉄系材料や、A6063、A5056などのアルミ系材料が好適に用いられる。これにより、後述する製造工程において、凹凸部2を本体300(現像ローラ510)の外周面301に形成するとき、当該溝を容易かつ確実に形成することができる。
また、この基材300Aの外径は、特に限定されないが、10〜30mmであるのが好ましく、15〜25mmであるのがより好ましい。
また、基材300Aの厚さは、特に限定されないが、0.2〜3mmであるのが好ましく、0.5〜3mmであるのがより好ましい。
【0046】
このような基材300Aの軸線方向での端部における内周部を、図5(b)に示すように、切削加工などにより例えば厚さ0.5〜1mm程度除去して、薄肉化し、軸受部310となるべき軸部材310Aを圧入するための圧入部302を形成する。
これにより、圧入部302の寸法精度が優れたものなり、基材300Aに軸部材310Aを簡単に圧入することができるとともに、接着剤や溶接などを用いなくても、その圧入後に軸部材310Aを基材300Aに強固に固定することができる。
【0047】
そして、図5(c)に示すように、基材300Aの圧入部302に軸部材310Aを圧入する。これにより、軸部材310Aが基材300Aに固定される。
基材300Aに対する軸部材310Aの固定方法としては、軸部材310Aを基材300Aの圧入部302に圧入するのみでもよいし、接着剤や溶接を用いてもよい。
その後、基材300Aの軸線と、軸部材310Aのうちの基材300Aの端面から突出した部分の軸線とが一致するように、基材300Aの外周面と軸部材310Aの前記突出した部分の外周面とを研削する。これにより、図5(d)に示すように、基材300Aの両端から突出する軸受部310が形成される。
この研削方法としては、特に限定されないが、例えば、センタレス研磨を好適に用いることができる。
【0048】
また、研削後の基材300Aおよび軸受部310において、外径精度を±10〜±50μmとするのが好ましく、また、ふれを10〜50μmとするのが好ましく、さらに、表面粗さを0.5〜1μmとするのが好ましい。これらにより、得られる現像ローラ510の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、圧入部302の形成や、軸部材310Aの圧入は、後述する工程[2]の後に行ってもよい。また、圧入部302の形成や、基材300Aおよび軸部材310Aの外周面の研削を省略することもできる。
【0049】
[2]凹凸部を形成する工程
次に、図5(e)に示すように、基材300Aの外周面に、凹凸部2を形成する。
以下、凹凸部2の形成について、図6ないし図8に基づいて、詳細に説明する。
凹凸部2の形成に際しては、例えば、図6および図7に示すような加工装置200を用いる。
【0050】
図6および図7に示す加工装置200は、前述した工程[1]で得られた基材300Aをその下方から支持する基台210と、基台210上の基材300Aをその両側から押圧する第1の型220および第2の型230(1対のダイス)とを有している。
第1の型220および第2の型230は、それぞれ、円板状(短い円柱状)をなし、その軸線まわりに回転可能となっている。
また、第1の型220には、図7に示すように、形成すべき複数の第1の溝21の形状に対応した形状をなす複数の凸条(凸部)221が形成されている。一方、第2の型230には、形成すべき複数の第2の溝22の形状に対応した形状をなす複数の凸条(凸部)231が形成されている。
【0051】
このような第1の型220および第2の型230の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、基材300Aよりも硬質な材料であるのが好ましく、具体的には、SKD、SKH、SLDなどを好適に用いることができる。
また、凸条221同士のピッチおよび凸条231同士のピッチ(図7に示すp1)としては、特に限定されないが、50〜150μmであるのが好ましく、50〜100μmであるのがより好ましい。
【0052】
前述したように、凹凸部2は、互いに平行に形成された多数の第1の溝21と、第1の溝21に交差するとともに、互いに平行に形成された多数の第2の溝22とで構成されている。したがって、第1の型220および第2の型230として前述したような比較的単純な形状の型を用いて、規則的かつ均一な凹凸部2を簡単に形成することができる。
また、第1の溝21の形成と第2の溝22の形成とは、別々の型を用いて行うので、それぞれの型に互いに平行な複数の凸条を設けるだけですみ、型の形状を簡単なものとし、また、型を安価なものとすることができる。
【0053】
第1の型220の凸条221同士間のピッチp1は、第1の溝21同士間のピッチpの2倍のピッチとなっている。これと同様に、第2の型230の凸条231同士間のピッチは、第2の溝22同士間のピッチの2倍のピッチとなっている。
また、第1の溝21同士間および/または第2の溝22同士間のピッチをpとしたとき、Pは、用いられる解像度(画像の解像度)のピッチよりも小さいのが好ましく、より具体的には、例えば、Pは、前記解像度が150dpiである場合には、169μmよりも小さいのが好ましく、前記解像度が200dpiである場合には、127μmよりも小さいのが好ましく、前記解像度が300dpiである場合には、85μmよりも小さいのが好ましい。これにより、現像によって得られるトナー像のムラを防止することができる。
【0054】
また、第1の溝21および/または第2の溝22の深さをDとし、トナーT(現像剤)の平均粒径をdとしたとき、D/dは、0.5〜2であるのが好ましく、0.9〜1.3であるのがより好ましい。これにより、得られる現像ローラ510は、その凹凸部2にトナーTを均一かつ最適な量で担持することができる。これに対し、D/dが前記下限値未満であると、凹凸部2の形状などによっては、凹凸部2の凸部に引っ掛かりにくく、トナーの転動性が悪化し、帯電不良を生じやすくなる。一方、D/dが前記上限値を超えると、凹凸部2の形状などによっては、溝内(凹凸部2の凹部内)のトナーが現像ローラ510および規制ブレード560のいずれにも接触せずに帯電不良を生じる場合がある。
【0055】
また、第1の溝21および/または第2の溝22の幅をWとし、トナーT(現像剤)の平均粒径をdとしたとき、W/dは、2〜20であるのが好ましく、W/dは、4〜10であるのがより好ましい。これにより、得られる現像ローラ510は、その凹凸部2にトナーT(現像剤)を均一かつ最適な量で担持することができる。これに対し、W/dが前記下限値未満であると、凹凸部2の形状などによっては、トナーが溝内に入り込まず転動性が悪化し帯電不良を生じたり、トナーが溝内に入っても溝内に滞留してフィルミングを生じる傾向となる。一方、W/dが前記上限値を超えると、凹凸部2の形状などによっては、現像ローラ510に担持されるトナー量が少なく搬送不良を生じたり、トナーが凹凸部2の凸部に接触する機会が少なくなり転動性が悪化し、帯電不良を生じる場合がある。
このような第1の型220および第2の型230は、それぞれ、その板面が基材300Aの軸線に直角な方向に対し若干傾斜するように配設されている。
【0056】
このような第1の型220および第2の型230を基材300Aをその両側から押圧しつつ互いに逆方向に回転すると、図6中矢印で示すように、基材300Aがその軸線方向に搬送されながら、第1の型220および第2の型230による加工が行われる。
このような加工による凹凸部2の第1の溝21の形成に際しては、基材300Aの外周面に対する第1の型220の凸条221の2回の押圧により第1の溝21を形成するが、1回目の押圧位置と2回目の押圧位置を部分的に重なるようにピッチ方向にずらして行う。
【0057】
これと同様に、凹凸部2の第2の溝22の形成に際しては、基材300Aの外周面に対する第2の型230の凸条231の2回の押圧により第2の溝22を形成し、1回目の押圧位置と2回目の押圧位置を部分的に重なるようにピッチ方向にずらして行う。
このようにして凹凸部2を形成すると、複雑な形状の型を用いなくても、所望の特性を有する凹凸部2を得ることができる。特に、本実施形態では、前述したような2段構造の凹凸部2を形成する。
【0058】
以下、このような凹凸部2の形成の一例をより具体的に説明する。なお、第1の溝21の形成と第2の溝22の形成とは、ほぼ同様であるため、第1の溝21の形成を代表的に説明する。また、以下の説明では、2回の押圧により凹凸部2を形成する場合を例に説明する。なお、型の押圧回数は、3回以上であってもよい。
凹凸部2を形成する工程は、型を用いて、基材300Aの外周面に複数の第1の凹部を形成する第1の工程と、前記型と同一または異なる型を用いて、基材300Aの外周面の前記第1の凹部に部分的に重なるように第2の凹部を形成することにより、凹凸部2を形成する第2の工程とを含む。
より具体的に説明すると、例えば、まず、一回目の押圧(第1の工程)では、図8(a)に示すような基材300Aの外周面に対し、第1の型220の凸条221を押圧することにより、図8(b)に示すように、形成するべき第1の溝21同士間のピッチと同ピッチで複数の溝(第1の凹部)21Aを形成する。
【0059】
次いで、二回目の押圧(第2の工程)では、基材300Aの溝21A同士の間に対し、第1の型220の凸条221を押圧することにより、図8(c)に示すように、溝21Aに部分的に重なるように、溝(第2の凹部)21Bを形成する。これにより、第1の溝21が形成される。
このように、第1の凹部である溝21Aに部分的に重なるように、第2の凹部である溝21Bを形成して凹凸部2を形成するので、複雑な形状の型を用いなくても、凹凸部2を得ることができる。特に、溝21Aの深さと溝21Bの深さが異なるので、段差(複数段溝構造)を有する凹凸部2を形成することができる。このような凹凸部2は、トナーの出入りが容易であるため、トナーの転動性が向上する。
【0060】
その際、第1の凹部である溝21Aの形成に用いる型と、第2の凹部である溝21Bの形成に用いる型とが同一であるため、均一な凹凸部2をより確実に形成することができる。また、型にかかるコストを抑え、その結果、得られる現像ローラ510の低コスト化を図ることができる。
また、凹凸を形成する工程では、溝21Aを形成した後に、溝21Bを形成し、溝21Bの深さが溝21Aの深さよりも浅いので、第2の工程時での押圧力を低減して、凹凸部2の形成を容易にすることができる。
【0061】
本実施形態では、溝21Bは、現像ローラ510の回転方向にて溝21Aの下流側の一部に重なるように形成するので、凹凸部2内のトナーがより出やすくなるので、トナーの転動性がより確実に向上する。特に、現像ローラ510の回転方向における凹凸部2の下流側のみに段差を形成し、上流側には段差を形成しない構成とすることができる。
一方、第1の凹部である溝21Aの形成に用いる型と、第2の凹部である溝21Bの形成に用いる型とが異なっていても、凹凸部2を形成することができる。この場合、溝21Aの形成に用いる型には、第1のピッチで溝21A1の形成のための凸部を形成し、溝21Bの形成に用いる型には、前記第1のピッチのn倍または1/n倍の第2のピッチで溝21Bの形成のための凸部を形成するのが好ましい。これにより、溝21Aの形成の型の形状と溝21Bの形成のための型の形状とを適宜組み合わせることにより、所望の形状をなす凹凸部2を形成することができ、得られる凹凸部2の設計自由度を大きくすることができる。
この場合、前記第2のピッチは前記第1のピッチと等しいのが好ましい。これにより、凹凸部2の各凹部および各凸部の形状をより確実に均一なものとすることができる。
【0062】
また、第2の型230の凸条(凸部)の高さは、第1の型220の凸条(凸部)の高さよりも小さいのが好ましい。これにより、段差(2段溝構造)を有する凹凸部2を簡単に形成することができる。また、第2の工程にて、溝21B(第2の凹部)の形成に用いる型の凹部により、凹凸部2の凸部23が押圧されるので、凹凸部2の凸部23の機械的強度の向上を図ることができる。その結果、得られる現像ローラ510の耐久性が向上する。
【0063】
以上のようにして型を用いて凹凸部2を形成した後に、その表面に、必要に応じて、メッキ処理を施す。これにより、得られる凹凸部2の機械的強度をさらに優れたものとすることができる。
このようなメッキ処理の方法としては、特に限定されないが、無電解Ni−Pメッキ、電気メッキ、硬質クロームメッキなどを好適に用いることができる。
また、メッキの厚さは、2〜10μm程度であるのが好ましい。
以上のようにして現像ローラ510を製造することができる。
このような現像ローラ510、およびこれを備える現像装置や画像形成装置は、現像特性および耐久性に優れたものとすることができる。
【0064】
以上、本発明の現像剤担持体の製造方法、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、現像剤担持体、現像装置、および画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0065】
前述した実施形態では、現像剤担持体およびこれを形成するための基材が円筒状をなすものについて説明したが、現像剤担持体(本体)および基材が円柱状をなしていてもよい。
また、現像剤担持体の外周面に形成される凹凸部の形状は、前述した実施形態のものに限定されず、現像剤を担持する機能を有するものであれば、任意である。また、型を用いて、第1の凹部に部分的に重なるように第2の凹部を形成して凹凸部を形成するものであればよい。この場合、第1の凹部および第2の凹部のそれぞれの形状、大きさ、深さや、第1の凹部と第2の凹部との重なり量などを適宜設定することで、得られる凹凸部の形状を任意に設定して、所望の特性を有する凹凸部を得ることができる。
【0066】
また、前述した実施形態では第1の溝21と第2の溝22とがほぼ直交していたが、これに限定されず、鋭角または鈍角をもってこれらが交差するように形成されていてもよい。
また、前述した実施形態では、第1の溝21と第2の溝22とを別々の型を用いて形成したが、1つの型に第1の溝21および第2の溝22の形成のための凹凸パターンを形成してもよい。この場合、例えば、第1の型220または第2の型230のうちの一方の型の外周面に前記凹凸パターンを形成し、他方の型の外周面を平坦面としてもよいし、両方の型に前記凹凸パターンを形成してもよい。
【0067】
また、前述した実施形態では、円板状(短い円柱状)の型を用いて、基材300Aを軸線方向に移動させながら、凹凸部2の形成を行ったが、基材300Aの凹凸部2形成予定部位の軸線方向での長さとほぼ同じ長さの円柱状の型を用い、基材300Aを軸線方向に移動せずに、凹凸部2の形成を行ってもよい。
また、凹凸部2の形成に用いる型は、前述したような円板状または円筒状のものに限定させず、板状などの他の形状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】図2に示す現像装置に備えられた現像剤担持体の概略構成を示す平面図である。
【図4】図3におけるA−A線での拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる現像剤担持体の製造方法を説明するための図である。
【図6】図5に示す製造方法において基材の外周面に凹凸部を形成する装置の概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示す装置の平面図である。
【図8】図5に示す製造方法において基材の外周面に対する凹凸部の形成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
10……画像形成装置 2……凹凸部 21……第1の溝 21A、21B……溝 22……第2の溝 23……凸部 20……感光体 30……帯電ユニット 200……加工装置 210……基台 220……第1の型 221……凸条 230……第2の型 231……凸条 300……本体 300A……基材 301……外周面 302……圧入部 310……軸受部 310A……軸部材 40……露光ユニット 50……現像ユニット 50a……軸 51……ブラック現像装置 52……マゼンタ現像装置 53……シアン現像装置 54……イエロー現像装置 55……保持体 55a〜55d……保持部 510……現像ローラ 520……シール部材 530……収容部 540……ハウジング 550……トナー供給ローラ 560……規制ブレード 560a……ゴム部 560b……ゴム支持部 562……ブレード支持板金 570……ブレード裏部材 60……一次転写ローラ 61……中間転写体 70……中間転写ベルト 71……駆動ローラ 72……従動ローラ 73……基体 75……クリーニングユニット 76……クリーニングブレード 80……二次転写ローラ 87……排紙ローラ対 88……搬送部 88A、88B……搬送ローラ対 88C……搬送路 82……給紙トレイ 84……給紙ローラ 86……レジローラ 90……定着装置 p、p1……ピッチ P……記録媒体 T……トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状または円柱状をなし、その外周面に現像剤を担持する凹凸部を有する現像剤担持体を製造する方法であって、
前記現像剤担持体となるべき円筒状または円柱状の基材を用意する工程と、
前記基材の外周面に前記凹凸部の形成のための型を押圧することにより、前記凹凸部を形成する工程とを有し、
前記凹凸を形成する工程は、型を用いて、前記基材の外周面に複数の第1の凹部を形成する第1の工程と、前記型と同一または異なる型を用いて、前記第1の凹部に部分的に重なるように、前記基材の外周面に第2の凹部を形成する第2の工程とを含むことを特徴とする現像剤担持体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の凹部の深さと前記第2の凹部の深さが異なる請求項1に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸を形成する工程では、前記第1の凹部を形成した後に、前記第2の凹部を形成し、前記第2の凹部の深さが前記第1の凹部の深さよりも浅い請求項2に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項4】
前記現像剤担持体は、その軸線方向に回転可能に配設されて用いられるものであり、前記第2の凹部は、前記現像剤担持体の回転方向にて前記第1の凹部の下流側の一部に重なるように形成する請求項2または3に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の凹部の形成に用いる型と、前記第2の凹部の形成に用いる型とが同一である請求項1ないし4のいずれかに記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の凹部の形成に用いる型と、前記第2の凹部の形成に用いる型とが異なり、前記第1の凹部の形成に用いる型には、第1のピッチで前記第1の凹部のための凸部が形成され、前記第2の凹部の形成に用いる型には、前記第1のピッチのn倍または1/n倍の第2のピッチで前記第2の凹部の形成のための凸部が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の現像剤担持体の製造方法(ただし、nは自然数である。)。
【請求項7】
前記第2のピッチは、前記第1のピッチと等しい請求項6に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項8】
前記第2の型の凸部の高さは、前記第1の型の凸部の高さよりも小さい請求項6または7に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項9】
前記凹凸部は、互いに平行に形成された多数の第1の溝と、該第1の溝に交差するとともに、互いに平行に形成された多数の第2の溝とで構成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の溝の形成と前記第2の溝の形成とは、別々の型を用いて行う請求項9に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項11】
前記第1の溝同士間および/または前記第2の溝同士間のピッチをpとしたとき、pは、用いられる解像度のピッチよりも小さい請求項9または10に記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の溝および/または前記第2の溝の深さをDとし、前記現像剤の平均粒径をdとしたとき、D/dは、0.5〜2である請求項9ないし11のいずれかに記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項13】
前記第1の溝および/または前記第2の溝の幅をWとし、前記現像剤の平均粒径をdとしたとき、W/dは、2〜20である請求項9ないし12のいずれかに記載の現像剤担持体の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする現像剤担持体。
【請求項15】
請求項14に記載の現像剤担持体を備え、該現像剤担持体は、潜像を担持する潜像担持体に接触または近接して対向しており、前記現像剤担持体から前記潜像担持体へ現像剤を付与することにより、前記潜像を現像剤像として可視化することを特徴とする現像装置。
【請求項16】
帯電・露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスにより、画像を記録媒体に形成する画像形成装置であって、
請求項15に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−140082(P2007−140082A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333428(P2005−333428)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】