説明

現像装置および画像形成装置

【課題】規制部材による現像剤を規制する構成において、現像剤の搬送量を適正な量に維持して画質劣化を防止できる現像装置を提供すること。
【解決手段】規制部材54に取着されたクリーナフィルム55は、自由端側の部分551が、(a)現像ローラ51の正転時には現像ローラ51周面上の現像剤Dに接する第1姿勢になり、(b)〜(e)現像ローラ51が逆転駆動されると、現像ローラ51から逆転方向の力を受けて撓んだ状態で現像ローラ51周面に沿って逆転方向に移動し、先端部552が規制部材54と現像ローラ51の隙間58を通り抜けて規制部材54よりも逆転方向下流側に位置する第2姿勢に変わる。規制部材54に形成されている現像剤の薄層90は、クリーナフィルム55の自由端側の部分551が隙間58を通り抜けるときにその部分551により擦られたり叩かれたりして規制部材54から除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ周面に現像剤を担持して現像領域に搬送し、像担持体上の潜像を現像する現像装置およびこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置の現像装置として、周面に現像剤を担持した状態で回転して現像剤を搬送する現像ローラと、現像ローラ周面に所定間隔をおいて対向し、現像ローラにより搬送される現像剤の量を規制する規制部材を備えるものが知られている。
この現像装置では、現像ローラ周面に担持された現像剤は、現像ローラと規制部材が対向する位置で規制され、所定量の現像剤だけが現像ローラと規制部材の間を通過して現像領域に搬送される。
【特許文献1】特開2007−147916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような規制部材を備える現像装置では、現像ローラと規制部材の間を現像剤が通過する際に、現像剤の一部のトナーや外添剤などが、規制部材の、現像ローラとの対向面に付着し、画像形成回数が多くなるに連れて、その付着した上に徐々に積み重なるように堆積していくといった現象が生じることがある。
堆積した現像剤の量が増えると、現像ローラと規制部材の間隔が狭くなり、間隔が狭くなると、現像剤の搬送量が本来の量よりも低減して行くことが生じる。現像剤の搬送量が低減すると、現像が適正に行われなくなって、結果的に画質劣化に繋がってしまう。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、規制部材による現像剤を規制する構成において、現像剤の搬送量を適正な量に維持して画質劣化を防止できる現像装置およびこれを備える画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、正逆方向に回転可能であり、正転駆動されると現像剤を担持して現像領域まで搬送し、現像領域において像担持体上の潜像を現像する現像ローラと、現像ローラ周面と所定間隔をおいて対向配置され、現像ローラにより搬送される現像剤の量を規制する規制部材と、一端側が固定され、他端側が自由端である可撓性を有するフィルム状部材と、を備え、前記フィルム状部材は、固定されていない自由端側の部分が、現像ローラの正転方向に規制部材から現像領域まで間の位置で現像ローラ上の現像剤に面接触する第1姿勢の状態にあるときに現像ローラが逆転駆動されると、現像ローラから逆転方向の力を受けて撓んだ状態で現像ローラ周面に沿って逆転方向に移動し、その先端が規制部材と現像ローラの隙間を通り抜けて規制部材よりも逆転方向下流側に位置する第2姿勢に変わり、第2姿勢において現像ローラが正転に切り換えられると、現像ローラから正転方向の力を受けて撓んだ状態で現像ローラ周面に沿って正転方向に移動し、規制部材と現像ローラの隙間を通り抜けて第1姿勢に戻るように姿勢変更することを特徴とする。
【0006】
また、前記現像ローラを逆転させた後、正転に切り換える切換手段を備え、前記切換手段は、所定条件を満たしたときに前記現像ローラの回転の切換を行うことにより、前記フィルム状部材を第1姿勢から第2姿勢、第2姿勢から第1姿勢に姿勢変更させることを特徴とする。
ここで、前記所定条件を満たしたときとは、前記潜像を現像する現像動作以外の期間であり、電源投入時、前記現像動作の累積時間、前記現像ローラの累積回転数もしくは累積回転時間が所定値に達したときであることを特徴とする。
【0007】
また、前記切換手段は、前記現像ローラの回転切換の動作を複数回繰り返すことを特徴とする。
さらに、前記フィルム状部材は、自由端長が固定位置から前記現像ローラ周面までの長さよりも長く、自由端側の部分の、前記現像ローラの軸方向長さが、前記規制部材の、当該軸方向長さと略同じであることを特徴とする。
【0008】
また、前記フィルム状部材は、樹脂又はゴムからなることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、像担持体上の潜像を現像剤で現像する現像器を有する画像形成装置であって、前記現像器として上記の現像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、フィルム状部材の姿勢変更の際にフィルム状部材が規制部材と現像ローラの隙間を通り抜けるときに、規制部材の、現像ローラとの対向面に付着した現像剤を規制部材から除去させることができる。これより当該フィルム状部材の姿勢変更を、規制部材と現像ローラの間隔が画質劣化に至る程度まで狭くなる前に実行させることにより、長期的に現像剤の搬送量を適正な量に維持して画質向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る現像装置および画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した例を説明する。
(1)プリンタの全体の構成
図1は、プリンタ100の全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンタ100は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、画像プロセス部1、給送部2、定着部4および制御部6を備え、LANなどのネットワークに接続されて、外部端末(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表す。
【0011】
画像プロセス部1は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部10Y、10M、10C、10K、中間転写ベルト1aなどを備えている。
作像部10Kは、感光体ドラム11、その周囲に配設された帯電器12、露光部13、現像器14、一次転写ローラ15、感光体ドラムを清掃するためのクリーナ16などを備えており、感光体ドラム11にK色のトナー像を作像する。ここで現像器14には、K色用の現像剤としてキャリアとトナーを含む公知の2成分現像剤が充填されている。また、現像器14の上部には、感光体ドラム11周辺空間のエアを吸引して機外に排出する吸引ダクト8が備えられている。
【0012】
他の作像部10Y、10M、10Cは、基本的に作像部10Kと同様の構成であるが、感光体ドラムなどの部材の大きさが異なる点、作像部毎に当該作像部に対応する色の二成分現像剤が当該作像部の現像器14に充填されている点、および吸引ダクト8が備えられていない点などが異なっている。なお、同図では、符号を省略している。
中間転写ベルト1aは、無端状のベルトであり、駆動ローラ1dと従動ローラ1cに張架されて、同図矢印方向に周回駆動される。
【0013】
給送部2は、用紙Sを収容する給紙カセット21と、給紙カセット21内の用紙Sを1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ22と、繰り出された用紙Sを搬送する搬送ローラ対31と、繰り出された用紙Sを二次転写位置3aに送り出すタイミングをとるタイミングローラ対32と、二次転写位置3aにおいて中間転写ベルト1aを挟んで駆動ローラ1dに圧接される二次転写ローラ33などを備えている。
【0014】
定着部4は、定着ローラ41と加圧ローラなどを備え、所定の定着温度で用紙Sを加熱加圧してトナー像を定着させる。
制御部6は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、作像部毎に、露光部13のレーザダイオードを駆動させるための駆動信号を生成する。生成された駆動信号により各色用の露光部13のレーザダイオードが駆動されて、レーザビームが出射され、感光体ドラム11が露光走査される。
【0015】
この露光走査を受ける前に、作像部毎に、感光体ドラム11は、帯電器12により一様に帯電されており、レーザビームの露光により、感光体ドラム11に静電潜像が形成される。各静電潜像は、現像器14により現像されてトナー像として顕像化される。
各色のトナー像は、一次転写ローラ15と感光体ドラム11間に発生する電界による静電力の作用により中間転写ベルト1a上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト1a上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト1a上に重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト1aの周回走行により二次転写位置3aに移動する。
【0016】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給送部2からは、タイミングローラ対32を介して用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、中間転写ベルト1aと二次転写ローラ33の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラ33と駆動ローラ1d間に発生する電界による静電力の作用により、中間転写ベルト1a上のトナー像が一括して用紙S上に二次転写される。
【0017】
二次転写位置3aを通過した用紙Sは、定着部4に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されてシートに定着された後、排出ローラ対5を介して排出され、収容トレイ7に収容される。
(2)現像器14の構成
図2は、作像部10Kの現像器14の構成を示す横断面図である。
【0018】
同図に示すように、現像器14は、筐体としてのハウジング50と、ハウジング50内に配される現像ローラ51、供給ローラ52、攪拌ローラ53、規制部材54およびクリーナフィルム55などを備える。現像ローラ51〜クリーナフィルム55は、現像ローラ51の軸方向(ローラ軸方向:紙面垂直方向)に沿って伸びる長尺状の部材である。ハウジング50の内部には、トナーと磁性粒子であるキャリアとを含む二成分現像剤(以下、「現像剤」という。)Dが充填される。
【0019】
現像ローラ51は、矢印A方向(以下、「正転方向」という。)と、正転方向の逆方向(以下、「逆転方向」という。)に回転可能であり、ハウジング50の、感光体ドラム11に対向する位置に設けられた開口部59に、感光体ドラム11表面と所定間隔、例えば0.27〔mm〕を空けて配置される。
現像ローラ51は、円筒形の現像スリーブ511と、現像スリーブ511の内部にローラ軸方向に沿って挿通されるマグネットローラ512を備えている。
【0020】
マグネットローラ512は、外周部に複数の磁極N1、S1・・が周方向に間隔をおいて形成されており、回転できないようにハウジング50に固定されている。ここでは、磁極のうち、N2が規制部材54に略対向する位置に来るように形成されている。なお、各磁極は、ローラ軸方向に沿って延在される。
現像スリーブ511は、正転および逆転方向に回転自在にハウジング50に保持されており、現像モータ9(図1)の駆動力を受けて、静止しているマグネットローラ512の周りを回転する。以下、現像スリーブ511(現像ローラ51)が正転方向に回転することを正転、逆転方向に回転することを逆転という。
【0021】
供給ローラ52は、現像ローラ51に現像剤Dを供給する。攪拌ローラ53は、ハウジング50内の現像剤Dを攪拌して固化を防ぐと共に流動性を保持しつつ、攪拌した現像剤Dを供給ローラ52に搬送する。
規制部材54は、板状であり、その先端が現像スリーブ511の周面との間に所定間隔dの隙間58(図4)を有するように配置され、隙間58を通過する現像剤Dの量を規制する。所定間隔dは、例えば0.5〔mm〕であり、規制部材54の厚みt(図4)は、例えば1.5〜2.0〔mm〕である。また、規制部材54のローラ軸方向長さは、現像ローラ51のローラ軸方向長さと略同じになっている。
【0022】
クリーナフィルム55は、薄板状の可撓性部材として、例えば厚みが50〜150〔μm〕のもの、より具体的にはウレタンゴム製で厚み100〔μm〕のものや、PET(ポリエチレンテレフタレート)製で厚み75〔μm〕のものなどが用いられ、規制部材54の先端に堆積する現像剤(規制部材54と現像ローラ51間の隙間58を狭くする要因となるもの)を除去して清掃するためのものである。この清掃方法については、後述する。
【0023】
上記のような構成において、供給ローラ52により現像剤Dが現像ローラ51に供給されると、現像剤Dはマグネットローラ512の磁極S2の磁力によって現像スリーブ511の周面に保持(担持)される。担持された現像剤Dは、現像スリーブ511の正転により正転方向に搬送され、規制部材54により規制された後、磁極S1の位置を通過し、感光体ドラム11と対向する現像領域70に搬送される。現像領域70に搬送された現像剤Dは、磁極N1によって穂立ちされ、感光体ドラム11上の静電潜像の現像に供される。現像に供された後、現像領域70を通過した現像剤Dは、磁極S3とS2の間でマグネットローラ512の磁力から開放されて、供給ローラ52に回収される。
【0024】
(3)クリーナフィルム55による清掃
図3は、クリーナフィルム55を図2の矢印P方向から見たときの斜視図であり、クリーナフィルム55の形状を判り易くするため、現像ローラ51と規制部材54以外の部材については図示を省略している。
同図に示すように、クリーナフィルム55は、基端部550(一端側)が規制部材54の一方の主面541に接着等で固定(片持ち支持)されており、先端部552(他端側)が自由端になっている。自由端長Lは、固定位置から現像ローラ51の周面(現像スリーブ511の周面)までの距離よりも長い、例えば5〜10〔mm〕の長さ、ここでは7〔mm〕になっている。また、クリーナフィルム55のローラ軸方向長さは、規制部材54のローラ軸方向長さと略同じになっている。
【0025】
クリーナフィルム55は、画像形成中や、ジョブが受け付けられるのを待つ待機中など通常の場合には、固定されていない部分(以下、「自由端側の部分」という。)551が規制部材54から正転方向に現像領域70までの間の位置で現像ローラ51上に担持された現像剤Dに面接触する姿勢(第1姿勢)をとっている。この第1姿勢では、現像ローラ51上の現像剤Dがクリーナフィルム55により上方から押されるようになるが、現像剤量が変わるわけではなく、磁極N1のところで適正な穂立ちが形成されるので問題が生じることはない。
【0026】
クリーナフィルム55による清掃は、非画像形成時、より具体的には感光体ドラム11上の潜像を現像する現像動作以外の期間かつ所定条件を満たしたときに、現像ローラ51を逆転させ、その後、正転させることにより行われる。この清掃の様子を図4を用いて具体的に説明する。
図4は、クリーナフィルム55を図3の矢印Z方向から見たときの図であり、図4(a)は現像ローラ51が正転しているとき、(b)〜(e)は逆転しているとき、(f)は正転に戻ったときのそれぞれにおけるクリーナフィルム55の姿勢の例を模式的に示している。クリーナフィルム55の姿勢が現像ローラ51の正逆転に連れて順次変わり、この姿勢変更により清掃が行われる。
【0027】
ここで図4(a)には、規制部材54の、現像ローラ51との対向面(以下、「先端面」という。)540に付着した現像剤Dが堆積して薄層90を形成している様子を示している。薄層90は、上記「発明が解決しようとする課題」の項で説明した、規制部材に付着して堆積した現像剤に相当する。この薄層90により規制部材54と現像ローラ51の間隔が本来の値dよりも狭くなっていることが判る。
【0028】
図4(a)に示すようにクリーナフィルム55が第1姿勢にある状態から、現像ローラ51が逆転に切り換わると、図4(b)〜(e)に示すようにクリーナフィルム55の自由端側の部分551は、自身が接している現像ローラ51上の現像剤Dを介して現像ローラ51の逆転方向の力を受けて撓んだ状態で現像ローラ51の周面に沿って逆転方向に移動する。そして、クリーナフィルム55の先端部552が規制部材54と現像ローラ51の隙間58を通り抜けて、規制部材54よりも逆転方向下流側に位置する姿勢(第2姿勢:図4(d)、図4(e))に変わる。
【0029】
規制部材54の先端面540に付着している薄層90は、クリーナフィルム55の自由端側の部分551が規制部材54と現像ローラ51の隙間58を通り抜ける際、すなわちクリーナフィルム55が第1姿勢から第2姿勢に遷移しようとする際に、撓みながら移動する自由端側の部分551に擦られたり削られたりすることで掻き取られる。
特に、規制部材54による現像剤の規制位置近辺に磁極N2が形成されているので、隣り合う磁極間の位置よりも、磁界に沿って現像剤の粒子が現像ローラ51周面から垂直方向に起立して現像剤が隆起するようになる。このため、クリーナフィルム55の自由端側の部分551が隙間58を通り抜ける際に、隆起した現像剤D表面の稜線に沿って規制部材54に近づいたり離れたりしつつ現像剤の薄層90を擦り、また掃くようになるので、薄層90が掻き取られ易い。
【0030】
なお、現像ローラ51の逆転が進むと、図4(d)に示すように現像ローラ51上には周方向において現像剤Dがほとんど担持されない部分513が現れる。これは、マグネットローラ512の磁極S2の位置で現像スリーブ511上に担持された現像剤Dが、現像ローラ51の逆転により磁極S2とS3間を通過する際にマグネットローラ512の磁力から開放されて現像スリーブ511から離れるからである。従って、現像ローラ51を約半周程度以上、逆転させると、現像ローラ51上の、磁極S3の位置から逆転方向に規制部材54を介して磁極N2の位置までの間の部分には、現像剤Dがほとんど担持されない状態になる。
【0031】
図4(e)に示すように、現像剤Dが担持されない状態になるまで現像ローラ51を逆転させると、クリーナフィルム55の自由端側の部分551が垂下しつつ先端部552が現像スリーブ511の周面と当接した状態になる。
そして、クリーナフィルム55が第2姿勢の状態で現像ローラ51が正転に切り換えられると、図4(f)に示すように、クリーナフィルム55の自由端側の部分551が現像ローラ51から正転方向の力(現像ローラ51との当接による摩擦力)を受けて撓んだ状態で現像ローラ51の周面に沿って正転方向に移動し、先端部552が規制部材54と現像ローラ51の隙間58を通り抜けて、図4(a)に示す第1姿勢に戻る。この際、現像剤の薄層90がまだ残っていれば、現像ローラ51の逆転時と同様に、自由端側の部分551が隙間58を通り抜ける際に現像剤の薄層90に当たって薄層90を掻き取る。
【0032】
現像ローラ51の周面には、通常、現像剤が担持され易いように公知のブラスト処理が施されており、ブラスト処理により形成された小さな凹凸にクリーナフィルム55の自由端側の部分551が引っ掛かることで正転方向の力がクリーナフィルム55に作用し易くなる。
現像ローラ51の正転により、マグネットローラ512の磁極S2の位置で現像剤Dが現像ローラ51に担持され、担持された現像剤Dが規制部材54により規制された後、現像領域70に搬送される。仮にクリーナフィルム55の自由端側の部分551が現像ローラ51の周面上を滑るような状況になった場合でも、クリーナフィルム55は、正転する現像ローラ51上に担持された現像剤Dを介して現像ローラ51の正転方向の力を受けて現像剤に押されるように現像剤と一緒に正転方向に移動して第1姿勢に戻される。
【0033】
なお、クリーナフィルム55の撓みの程度や状態は、クリーナフィルム55の自由端長、厚み、材料、隙間58の間隔などによってある程度変わるので、必ずしも図4に例示するものと同じになるとは限らない。クリーナフィルム55の自由端側の部分551が隙間58を通り抜ける際に現像剤の薄層90の除去が効果的に実行されるように、装置構成に応じてクリーナフィルム55の適正な自由端長や厚み、材料などが予め決められる。
【0034】
図5は、クリーナフィルム55による清掃を行った場合(本実施の形態)と、クリーナフィルム55が配されておらず清掃を行っていない場合(従来例)において、規制部材54と現像ローラ51の隙間58を通過する現像剤量(現像領域70への現像剤搬送量)を実験で測定して得られた結果を示すグラフである。同図では、横軸がプリント枚数の累積値(耐久枚数)を、縦軸が現像剤の搬送量を示している。実施例1のグラフは、10K(1万枚:K=1000枚)毎に上記の現像ローラ51の逆転、正転動作(クリーナフィルム55による清掃)を1回行ったときのものであり、実施例2のグラフは、10K毎に現像ローラ51の逆転、正転を3回繰り返して行ったときのものである。
【0035】
ここでは現像剤D中のトナーの比率(質量比)TCが7〔%〕のものを用い、30万枚の用紙に連続してプリントを実行し、耐久枚数が50、100、200、300Kのときの現像剤搬送量を測定した。
同図に示すように、耐久初期では搬送量が200〔g/m〕に設定されており、従来例のグラフを見ると耐久枚数が増えるに連れて実施例1と2のグラフよりも搬送量の低下が大きくなっていることが判る。このようになっているのは、従来例の構成の場合、規制部材54の先端に形成される現像剤の薄層90を除去できないので、耐久枚数が増えるに連れて薄層90の上に新たな現像剤が付着して付着量が増え、逆に規制部材54と現像ローラ51の隙間58が狭くなって現像剤Dが隙間58を通過できる量が減るからである。
【0036】
現像剤の搬送量の下限値は、本実施の形態の構成では150〔g/m〕であり、これを下回ると現像時に濃度低下や濃度ムラなどによる画質低下を引き起こすことが判っている。従来例の構成では、耐久枚数が50K(5万枚)を越えると下限値を下回っており、50Kになると現像部や作像ユニットを新たなものに交換したり、現像部を分解して規制部材54に形成された現像剤の薄層を除去したりする作業などが必要であった。
【0037】
これに対し、実施例1と2のグラフを見ると、耐久枚数が300K(30万枚)に至るまで搬送量が下限値を上回っており、より長期的に画質を維持できることが確認された。また、逆転と正転の繰り返し回数の多い実施例2の方が1回だけの実施例1よりも現像剤の薄層の除去がより効果的であることも判った。
なお、実施例1と2のグラフを見ると、10K毎にクリーナフィルム55による清掃を行っているのにも関わらず、耐久枚数の増加に連れて搬送量が少しずつ下がっている。このようになるのは、現像剤の劣化に伴ってキャリアとトナーの流動性が低下し、この流動性の低下により規制部材54と現像ローラ51の隙間58を通過する際の現像剤の搬送性も低下するからであると考えられる。また、ブラスト処理により現像スリーブ511周面に形成された凹凸が耐久枚数の増加に伴って磨耗して行き、現像剤担持性が低下して行くことも要因と想定される。従って、規制部材54に形成された現像剤の薄層90を除去できても、実際には耐久枚数の増加に連れて現像剤の搬送性がある程度低下することは避けられないといえ、一定以上の画質を確保できるようにクリーナフィルム55による清掃の頻度が決められることになる。
【0038】
(4)制御部6の構成
図6は、制御部6の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、制御部6は、主な構成要素としてCPU61、通信インターフェース(I/F)部62、ROM63、RAM64、現像ローラ正逆転切換部65および累積用紙枚数記憶部66を備えている。
【0039】
通信I/F部62は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースである。
累積用紙枚数記憶部66は、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発性記憶手段であり、累積用紙枚数R(上記耐久枚数に相当)を示すデータが格納される。なお、累積用紙枚数Rが多くなるに連れて、感光体ドラム11上の潜像を現像する現像動作の累積時間も多くなるので、累積用紙枚数Rを現像動作の累積時間に置き換えるとしても良い。この場合、1枚の用紙へのプリント毎に、その現像に要した時間が現像時間として累積される。
【0040】
現像ローラ正逆転切換部65は、累積プリント枚数Rが1万枚に達する毎に、非画像形成時に現像ローラ51を正逆転させる現像ローラ正逆転切換処理を実行して、クリーナフィルム55による清掃を実行させる。
CPU61は、ROM63から必要なプログラムを読み出して、画像プロセス部1、給送部2等の動作をタイミングを取りながら統一的に制御して、プリント動作を円滑に実行させる。また、1枚の用紙にプリントを行う毎に、その時点で累積用紙枚数記憶部66に格納されている値に「1」をインクリメントした値を新たな累積枚数として書き換える(更新する)。
【0041】
ROM63には、プリントジョブを実行するための制御プログラム、現像ローラ正逆転切換処理を実行するためのプログラム等が格納されている。RAM64は、CPU61のプログラム実行時のワークエリアとして用いられる。
(5)現像ローラ正逆転切換処理
図7は、現像ローラ正逆転切換処理の内容を示すフローチャートである。ここで、同図のフローチャートは、図外のメインルーチンに対するサブルーチンであり、処理を終了すると、メインルーチンへリターンする。当該処理は、非画像形成時に所定時間間隔でメインルーチンにおいてコールされて実行される。
【0042】
図7に示すように、累積用紙枚数記憶部66に現に格納されている累積用紙枚数Rを読み出す(ステップS1)。そして、読み出した累積用紙枚数Rが所定値R0(ここでは、1万〔枚〕)以上であるか否かを判断する(ステップS2)。
累積用紙枚数Rが所定値R0よりも小さいことを判断すると(ステップS2で「NO」)、そのままリターンする。この場合、クリーナフィルム55による清掃は行われない。
【0043】
累積用紙枚数Rが所定値R0以上であることを判断すると(ステップS2で「YES」)、現像モータ9を駆動させて現像ローラ51を所定量だけ逆転させる(ステップS3)。この逆転は、現像ローラ51を逆転させるための駆動電流を現像モータ9に供給することにより行われる。なお、所定量とは、例えば現像ローラ51の1回転分または複数回転分に相当する量とすることができる。現像ローラ51の逆転により、第1姿勢のクリーナフィルム55(図4(a))が第2姿勢(図4(e))に変わる。この姿勢変更の際にクリーナフィルム55による清掃が実行される。
【0044】
現像ローラ51の逆転が終了すると正転に切り換える(ステップS4)。この正転への切り換えは、現像ローラ51を正転させるための駆動電流を現像モータ9に供給することにより行われる。現像ローラ51の正転により、第2姿勢のクリーナフィルム55が第1姿勢に戻ることになる。この際にもクリーナフィルム55による清掃が実行される。なお、現像ローラ51の正転は、クリーナフィルム55を第1姿勢に戻すのに必要な時間だけ行われれば良いが、現像ローラ51の逆転により図4(d)に示すように現像ローラ51上に現像剤Dが担持されなくなる部分513が現れるので、現像ローラ51上に本来の適正な量の現像剤Dが担持されるように1回転以上とすることが望ましい。
【0045】
上記では、現像ローラ51の逆転を1回だけ行う例(図5の実施例1に相当)を説明したが、複数回、具体的には図5の実施例2のように逆転、正転を3回繰り返すようにすることもできる。繰り返し回数が多くなると、図5に示すように清掃をより効果的に行えるが、その分、清掃に要する時間が長くなる。例えば、清掃中に受け付けたジョブを直ぐに実行せず清掃後に開始させようとする場合に、清掃時間が長くなるとそのジョブの待機時間も長くなって開始が遅れるといったことに繋がるおそれも生じるので、清掃の効果と時間の双方を考慮して最適な回数、回転量が予め実験などから決められる。
【0046】
現像ローラ51の正転後、累積用紙枚数記憶部66に格納されている累積用紙枚数Rの値をゼロにリセットして(ステップS5)、リターンする。
以上説明したように、クリーナフィルム55による清掃を実行するとしたので、規制部材54の先端面540に付着している現像剤の薄層90を除去でき、累積用紙枚数が増えるに連れて規制部材54と現像ローラ51の隙間58が狭くなり現像剤の搬送量が低下して画質劣化に至るといったことを防止できる。
【0047】
なお、クリーナフィルム55による清掃は、各作像部の現像器14において同時に実行されるとしても良いし、作像部毎に所定条件を満たした場合に実行するとしても良い。この場合、作像部ごとに現像モータ9が配置される。
(6)変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0048】
(6−1)上記実施の形態では、現像ローラ正逆転切換処理を実行する条件を、累積用紙枚数Rが1万枚に達する毎としたが、これに限られることはない。規制部材54に付着している現像剤の薄層90の除去が必要な時期であれば良い。例えば、装置への電源投入時とすることができる。また、プリントされた用紙枚数の累積値を用いるのではなく、例えば現像ローラ51の累積回転数や累積回転時間を用いるとしても良い。累積回転数は、プリント動作に伴って増加していき、累積回転数が増えるとプリント枚数と同様に現像剤の薄層90の形成量も増加していく関係にあるからである。このことは累積回転時間について同様である。
【0049】
(6−2)クリーナフィルム55が現像ローラ51の逆転に伴って第1姿勢から第2姿勢に変わり、第2姿勢の状態で現像ローラ51が正転に転じると第2姿勢から第1姿勢に戻るように構成することで現像剤の薄層90を除去できれば良く、クリーナフィルム55の形状、大きさ、厚み、材料等が上記のものに限られないことはいうまでもない。また、クリーナフィルム55の基端部550を規制部材54に固定する構成例を説明したが、固定位置はこれに限られない。例えば、ハウジング50の内面の一部であり、規制部材54よりも正転方向下流側かつ規制部材54の近辺に位置する部分に基端部550を貼着等により固定するとしても良い。さらに、上記では第1姿勢においてクリーナフィルム55は、自由端側の部分551のほとんど全部が現像剤Dに接する例を説明したが、これに限られず、例えば先端部552だけが接する構成や先端部552と基端部550の間の一部だけが接する構成をとるようにしても良い。
【0050】
(6−3)上記実施の形態では、クリーナフィルム55のローラ軸方向長さを規制部材54のローラ軸方向長さと略同じにした構成例を説明したが、クリーナフィルム55の長さや枚数は、これに限られない。例えば、仮に現像剤の薄層90が、現像剤の流動性などに起因して規制部材54のローラ軸方向中央寄りに形成され易いが両端側ではほとんど形成されないような場合には、クリーナフィルム55の長さを、薄層90が形成され易い中央領域に相当する長さだけとすることが考えられる。
【0051】
また、逆に、ローラ軸方向中央寄りにはほとんど形成されないが両端側で形成され易いような場合には、規制部材54のローラ軸方向両端部にのみクリーナフィルム55を1枚ずつ配置する構成とすることも考えられる。クリーナフィルム55の使用量を少なくでき、コスト低減を図れる。
(6−4)上記実施の形態では、本発明に係る現像装置をタンデム型カラーデジタルプリンタの現像装置に適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、現像ローラ周面に現像剤を担持して現像領域まで搬送し、現像領域において感光体ドラムや感光体ベルトなどの像担持体上の潜像を現像する現像装置およびこれを備える画像形成装置であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。また、制御部6が現像ローラ正逆転切換部65を備える構成としたが、現像装置が備える構成としても良い。また、現像剤として二成分現像剤を用いた例を説明したが、これに限られることもない。例えば、一成分現像剤を用いる現像装置についても現像ローラの正逆転が可能な構成であれば同様に適用可能であろう。さらに、現像装置に限られず、規制部材に付着した現像剤を除去する方法であるとしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る現像装置は、規制部材を備える構成をとりつつ現像剤の搬送量を適正な量に維持して画質向上を図る技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】プリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】プリンタに備えられる現像器の構成を示す横断面図である。
【図3】現像器のクリーナフィルムを図2の矢印P方向から見たときの斜視図である。
【図4】クリーナフィルムを図3の矢印Z方向から見たときの図であり、クリーナフィルムの姿勢が現像ローラの正逆転に連れて順次変わっていく様子を示す図である。
【図5】クリーナフィルムによる清掃を行った場合と、行わなかった場合それぞれの現像ローラによる現像剤搬送量を測定して得られた結果を示すグラフである。
【図6】プリンタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】現像ローラ正逆転切換処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
6 制御部
9 現像モータ
11 感光体ドラム
14 現像器
50 ハウジング
51 現像ローラ
54 規制部材
55 クリーナフィルム
58 規制部材と現像ローラの隙間
65 現像ローラ正逆転切換部
70 現像領域
90 現像剤の薄層
100 プリンタ
550 クリーナフィルムの基端部(一端側)
551 クリーナフィルムの自由端側の部分(固定されていない部分)
552 クリーナフィルムの先端部(他端側)
D 現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆方向に回転可能であり、正転駆動されると現像剤を担持して現像領域まで搬送し、現像領域において像担持体上の潜像を現像する現像ローラと、
現像ローラ周面と所定間隔をおいて対向配置され、現像ローラにより搬送される現像剤の量を規制する規制部材と、
一端側が固定され、他端側が自由端である可撓性を有するフィルム状部材と、を備え、
前記フィルム状部材は、固定されていない自由端側の部分が、
現像ローラの正転方向に規制部材から現像領域まで間の位置で現像ローラ上の現像剤に面接触する第1姿勢の状態にあるときに現像ローラが逆転駆動されると、現像ローラから逆転方向の力を受けて撓んだ状態で現像ローラ周面に沿って逆転方向に移動し、その先端が規制部材と現像ローラの隙間を通り抜けて規制部材よりも逆転方向下流側に位置する第2姿勢に変わり、
第2姿勢において現像ローラが正転に切り換えられると、現像ローラから正転方向の力を受けて撓んだ状態で現像ローラ周面に沿って正転方向に移動し、規制部材と現像ローラの隙間を通り抜けて第1姿勢に戻るように姿勢変更することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像ローラを逆転させた後、正転に切り換える切換手段を備え、
前記切換手段は、
所定条件を満たしたときに前記現像ローラの回転の切換を行うことにより、前記フィルム状部材を第1姿勢から第2姿勢、第2姿勢から第1姿勢に姿勢変更させることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記所定条件を満たしたときとは、
前記潜像を現像する現像動作以外の期間であり、電源投入時、前記現像動作の累積時間、前記現像ローラの累積回転数もしくは累積回転時間が所定値に達したときであることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記切換手段は、
前記現像ローラの回転切換の動作を複数回繰り返すことを特徴とする請求項2または3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記フィルム状部材は、
自由端長が固定位置から前記現像ローラ周面までの長さよりも長く、
自由端側の部分の、前記現像ローラの軸方向長さが、前記規制部材の、当該軸方向長さと略同じであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記フィルム状部材は、
樹脂又はゴムからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
像担持体上の潜像を現像剤で現像する現像器を有する画像形成装置であって、
前記現像器として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−145409(P2009−145409A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319804(P2007−319804)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】