説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる現像装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】現像器12は、現像スリーブ38A及び内胴38Bを備えた現像ロール38と、現像スリーブ38Aとの間で層形成部70を形成するとともに該層形成部70において現像スリーブ38Aの法線方向と交差する接線方向に磁界を形成するように層形成極N1が配置された層形成部材45と、を有している。ここで、現像スリーブ38Aの外周に形成される磁界により穂立ちした現像剤の先端側は、層形成部材45により形成される磁界により現像スリーブ38Aの接線方向に曲がる。これにより、層形成部材45の近傍では、層形成部材45で層形成するときに現像剤が受けるせん断力を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の現像装置は、現像スリーブ周面と対向する現像剤層規制部材が設けられており、さらに、現像剤層規制部材の現像スリーブとは反対側に磁石が設けられている。
【0003】
特許文献2の現像装置は、磁性体で構成された層厚規制用ブレードが、回転可能に設けられたマグネットロールの周面と対向配置されている。
【0004】
特許文献3の現像装置は、現像スリーブ周面と対向する層厚規制ロールが設けられており、層厚規制ロールは少なくとも一部が磁性材料で構成されている。
【0005】
特許文献4の現像装置は、現像スリーブ周面と対向する規制板が設けられており、規制板に隣接して磁界発生手段を設けている。
【0006】
特許文献5の現像装置は、現像ロール周面と対向するロール状の現像剤循環移送部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−158352号公報
【特許文献2】特開平06−337593号公報
【特許文献3】特開平07−020717号公報
【特許文献4】特開平10−133518号公報
【特許文献5】特開平10−198171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる現像装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る現像装置は、周方向に複数の磁極が配置された磁性部材と、前記磁性部材の外側で前記磁性部材の周方向に移動可能に設けられた移動部材と、を有し、前記移動部材の外周面で法線方向に磁界が形成されると共に磁性を有する現像剤を保持する現像剤保持部材と、前記移動部材の外周面で前記法線方向の磁界が形成される部分と最も近接するように配置されて前記移動部材との間で現像剤層を形成する層形成部を形成すると共に、該層形成部を向く表面において前記移動部材の法線方向と交差する方向に磁界を形成するように磁極が配置された層形成部材と、を有する。
【0010】
本発明の請求項2に係る現像装置は、前記層形成部に前記現像剤保持部材の磁極が配置されている。
【0011】
本発明の請求項3に係る現像装置は、周方向に複数の磁極が配置された磁性部材と、前記磁性部材の外側で前記磁性部材の周方向に移動可能に設けられた移動部材と、を有し、現像剤を保持する現像剤保持部材と、前記現像剤保持部材における特定の磁極との間隔が最小となるように、且つ該特定の磁極に対し極性の異なる2つの磁極の中間部分が対向するように配置され、前記移動部材との間で現像剤層を形成する層形成部材と、を有する。
【0012】
本発明の請求項4に係る現像装置は、前記層形成部材の現像剤が流入する側の磁極の極性が、前記層形成部に配置された前記現像剤保持体の磁極の極性と同極性である。
【0013】
本発明の請求項5に係る現像装置は、前記層形成部材が、周方向に複数の磁極が配置された着磁部材である。
【0014】
本発明の請求項6に係る現像装置は、前記層形成部材が、周方向に複数の磁極が配置されると共に固定された着磁部材と、前記着磁部材の外側で前記移動部材と同じ方向に回転する回転部材とを有する。
【0015】
本発明の請求項7に係る現像装置は、前記磁性部材には、前記層形成部の外側で現像剤を前記回転部材から離脱させる離脱手段が設けられている。
【0016】
本発明の請求項8に係る現像装置は、前記現像剤保持部材の磁極に対する前記層形成部材の磁極の相対位置が調整可能に設けられている。
【0017】
本発明の請求項9に係る画像形成装置は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の現像装置と、静電潜像を外周に保持すると共に前記現像装置によって静電潜像が現像剤像とされる像保持体と、前記像保持体から被転写材へ現像剤像を転写する転写手段と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、現像剤の層形成部において移動部材の法線方向と交差する方向に磁界を形成するように層形成部材の磁極が配置されていない構成に比べて、層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる。
【0019】
請求項2の発明は、層形成部に現像剤保持部材の磁極が配置されていない構成に比べて、層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる。
【0020】
請求項3の発明は、現像剤保持部材における特定の磁極との間隔が最小となるように、且つ該特定の磁極に対し極性の異なる2つの磁極の中間部分が対向するように層形成部材が配置されていない構成に比べて、層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる。
【0021】
請求項4の発明は、層形成部材の現像剤が流入する側の磁極の極性が、層形成部に配置された現像剤保持体の磁極の極性と異なる構成に比べて、層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる。
【0022】
請求項5の発明は、現像剤の層形成部において移動部材の法線方向と交差する方向に磁界を形成するように層形成部材の磁極が配置されていない構成に比べて、層形成部で現像剤に作用するせん断力を抑えることができる。
【0023】
請求項6の発明は、周方向に複数の磁極が配置されると共に固定された着磁部材の外側に回転部材を設けていない構成に比べて、過剰な現像剤が層形成部に流入するのを防ぐことができる。
【0024】
請求項7の発明は、層形成部の外側で現像剤を回転部材から離脱させる離脱手段を着磁部材に設けない場合に比べて、層形成部材の外周面に現像剤が滞留するのを防ぐことができる。
【0025】
請求項8の発明は、現像剤保持部材の磁極に対する層形成部材の磁極の相対位置が固定されている構成に比べて、層形成後の現像剤量を調整することができる。
【0026】
請求項9の発明は、現像剤の層形成部において移動部材の法線方向と交差する方向に磁界を形成しないように層形成部材の磁極が配置された構成に比べて、画像欠陥を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に備えられた画像形成部を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成部に備えられた感光体及びその周囲の構成を示す概略図である。
【図4】(a)本発明の第1実施形態に係る現像装置の概略図である。(b)本発明の第1実施形態に係る層形成板の配置状態を示す模式図である。
【図5】(a)比較例の層形成板の配置状態を示す模式図である。(b)比較例の層形成板に対して穂立ちした現像剤に機械的せん断力が作用する状態を示す模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る層形成板に対して穂立ちした現像剤に機械的せん断力が作用する状態を示す模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る現像装置の概略図である。
【図8】(a)本発明の第2実施形態に係る層形成スリーブの配置状態を示す模式図である。(b)本発明の第2実施形態に係る層形成スリーブに対して穂立ちした現像剤に機械的せん断力が作用する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1実施形態に係る現像装置及び画像形成装置の一例について説明する。
【0029】
図1には、第1実施形態の画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、一例として、画像形成装置10の底部に設けられた給紙部16と、給紙部16の上方に設けられイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)による画像形成を行う画像形成部30と、画像形成部30の上方に設けられた排紙部17と、給紙部16から画像形成部30を通って排紙部17へ記録用紙Pを搬送する搬送路19と、搬送路19に設けられトナー画像の定着が行われる定着部28と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部60とを有している。なお、以後の説明において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を区別する際には、符号の後にY、M、C、Kの英字を付与して説明するが、各色を区別する必要がない場合は、符号の後のY、M、C、Kを省略する。
【0030】
給紙部16は、内部に記録用紙Pが収納されており、給紙部16における記録用紙Pの搬送方向の先端部には、給紙部16から記録用紙Pを1枚ずつ送り出す送出ロール18が設けられている。さらに、記録用紙Pの搬送路19(搬送経路PA)における送出ロール18よりも下流側には、記録用紙Pを搬送する2組の搬送ロール20が設けられており、記録用紙Pは、搬送ロール20によって、上方に設けられた後述する二次転写部22へ搬送されるようになっている。
【0031】
図2に示すように、画像形成部30は、潜像を保持する像保持体の一例としての感光体13C、13M、13Y、13Kが、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の各色に対応して被転写材の一例としての中間転写ベルト14と接触して設けられている。感光体13C、13M、13Y、13Kは、一方向(図示の反時計回り方向である矢印b方向)へ回転するようになっている。
【0032】
図3に示すように、画像形成部30における感光体13の周囲には、感光体13の回転方向bに沿って順に、感光体13の外周面と対向配置され電位差により感光体13表面を帯電させる帯電ロール36と、帯電された感光体13の外周面に露光光を照射して感光体13の外周面に画像情報に応じた静電潜像を形成する露光部40と、感光体13の静電潜像を現像剤を用いて現像して現像剤像(トナー画像)を形成する現像装置の一例としての現像器12と、現像剤像が外周面に転写される中間転写ベルト14と、現像剤像の転写後に感光体13の外周面を清掃するブラシロール34とが設けられている。また、中間転写ベルト14を挟んで感光体13と反対側には、現像剤像を感光体13から中間転写ベルト14へ転写させる転写手段の一例としての一次転写ロール32が設けられており、感光体13、中間転写ベルト14、及び一次転写ロール32とにより一次転写部21が構成されている。
【0033】
図2に示すように、中間転写ベルト14は、無端状に形成されており、ベルト搬送ロール24Aと、ベルト搬送ロール24Aの下方(図示の右下方)に配設されたベルト搬送ロール24Bと、ベルト搬送ロール24Bの斜め上方(図示の右斜め上方)であって搬送路19の反対側に配設されたベルト搬送ロール24Cとに巻き掛けられて支持されている。また、中間転写ベルト14は、ベルト搬送ロール24Cがモータ(図示省略)により回転されることで、矢印a方向に循環移動可能となっている。
【0034】
中間転写ベルト14のベルト搬送ロール24Bと反対側には、中間転写ベルト14の外周面に接触してトナー濃度検出センサ15が設けられている。トナー濃度検出センサ15は、中間転写ベルト14の外周面(転写面)に転写されたトナーの濃度を検出する機能を有している。また、中間転写ベルト14のベルト搬送ロール24Cと反対側には、中間転写ベルト14の外周面に接触して清掃部42が設けられている。清掃部42は、二次転写後の中間転写ベルト14の外周面を清掃する機能を有している。
【0035】
さらに、中間転写ベルト14のベルト搬送ロール24Aと反対側には、設定されたバイアス電圧が印加されるとともに中間転写ベルト14の外周面で保持されているトナー画像を記録用紙Pへ転写させる二次転写ロール26が設けられている。ここで、中間転写ベルト14と二次転写ロール26とで二次転写部22が構成されている。
【0036】
一方、図1に示すように、二次転写部22の上方には、定着部28が設けられている。定着部28は、内部に熱源を有する定着ロール28Aと、定着ロール28Aの外周面を加圧する加圧ロール28Bとを有しており、記録用紙Pが定着ロール28Aと加圧ロール28Bとで形成されるニップ部を通過すると、記録用紙P上のトナー画像が溶融、凝固して定着されるようになっている。
【0037】
ここで、画像形成装置10の画像形成方法について説明する。
【0038】
図1及び図3に示すように、画像形成装置10において、まず、パーソナルコンピュータ等から出力される画像データが、画像処理装置(図示省略)によって画像処理を施される。画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、それぞれの色毎に露光部40に出力される。
【0039】
各露光部40は、色材階調データに応じて、光ビーム(露光光)を各々の感光体13C、13M、13Y、13Kに照射する。そして、感光体13C、13M、13Y、13Kは、予め帯電ロール36によって表面が帯電されており、光ビームによって表面が露光され電位が低下することにより静電潜像が形成される。さらに、形成された感光体13C、13M、13Y、13Kの静電潜像は、現像器12C、12M、12Y、12Kによって、C、M、Y、Kの各色のトナー像として現像される。
【0040】
続いて、感光体13C、13M、13Y、13Kに形成されたトナー像は、一次転写部21において、一次転写ロール32C、32M、32Y、32Kによって中間転写ベルト14上に一次転写される。この一次転写は、トナー像を中間転写ベルト14の外周面に順次重ね合わせてトナー画像とすることで行われる。そして、トナー画像が転写された中間転写ベルト14は、二次転写部22に搬送される。
【0041】
一方、トナー画像が二次転写部22に搬送されるタイミングに合わせて、給紙部16から設定されたサイズの記録用紙Pが二次転写部22に送り出される。さらに、給紙部16から送り出された記録用紙Pは、二次転写部22に到達する前に一旦搬送が停止され、トナー画像が保持された中間転写ベルト14の移動タイミングに合わせて位置合せロール(図示省略)が回転することで、記録用紙Pの位置とトナー画像の位置との位置合わせが行われる。
【0042】
二次転写部22では、タイミングを合わせて搬送された記録用紙Pが、中間転写ベルト14と二次転写ロール26との間に挟み込まれる。このとき、二次転写ロール26にトナーの帯電極性(一例としてマイナス極性)と逆極性の電圧(二次転写バイアス)が印加され、中間転写ベルト14上に保持された未定着のトナー画像は、記録用紙Pに一括して静電転写(二次転写)される。
【0043】
続いて、トナー画像が二次転写された記録用紙Pは、定着部28に搬送される。そして、定着部28では、記録用紙Pの未定着トナー画像が、定着ロール28A及び加圧ロール28Bによって加熱及び加圧され、記録用紙Pに定着される。そして、定着部28でトナー画像が定着された記録用紙Pは、定着部28の搬送方向下流側に配置された排紙ロール29によって排紙部17に排紙される。また、記録用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト14上に残った残留トナーは、清掃部42により中間転写ベルト14上から除去される。このようにして画像形成装置10の画像形成が行われる。
【0044】
次に、現像器12の構成について説明する。
【0045】
図4(a)に示すように、現像器12は、感光体13に対向する位置に開口部37Aが形成された筐体37を有している。筐体37には、感光体13に形成された潜像へ二成分現像剤(主要成分としてトナー粒子と磁性のキャリア粒子とを含有)を供給する現像剤保持部材の一例としての現像ロール38と、現像ロール38へ二成分現像剤を搬送するスクリューフィーダ39A、39Bと、筐体37内でスクリューフィーダ39Aに隣接して設けられた傾斜面47に感光体13と対向して固定され現像ロール38の外周面の現像剤量(厚み)を規制して現像剤の層形成を行う層形成部材45と、が収容されている。
【0046】
スクリューフィーダ39A、39Bは、現像ロール38の下方(図示の右斜め下方)に配置されており、スクリューフィーダ39A、39Bが回転することにより、二成分現像剤が攪拌されながら現像ロール38の回転軸方向に沿って搬送され、現像ロール38へ供給されるようになっている。
【0047】
現像ロール38は、磁性部材の一例としての円柱状の内胴38Bと、内胴38Bの外側で回転可能に設けられた移動部材の一例としての現像スリーブ38Aとを有し、現像スリーブ38Aの外周面の一部が筐体37の開口部37Aから感光体13側へ露出するように筐体37内に配置されている。また、現像スリーブ38Aは、矢印c方向(図示の時計回り方向)に回転可能となるように軸方向の両端部がベアリング(図示省略)で支持されると共に、モータ及びギヤ(図示省略)により回転駆動されるようになっている。そして、現像ロール38は、感光体13の外周面との間に間隙(現像ギャップ)が形成されるように感光体13に対向配置されている。
【0048】
内胴38Bは、両端部が筐体37に固定され回転しないようになっている。また、現像スリーブ38Aは、内胴38Bの軸線の回りを感光体13の回転方向bとは反対方向に回転する構成となっている。すなわち、感光体13が図4(a)における反時計方向に回転するのに対して、現像スリーブ38Aは時計方向に回転するようになっている。さらに、内胴38Bは、現像スリーブ38Aの回転方向に沿って内胴38Bの外周面に磁極である複数のS極(S1、S2、S3、S4、S5極)と複数のN極(N1、N2、N3極)とが形成されるように8本の永久磁石が放射状に設けられた構成となっている。
【0049】
S1極は現像極であり、感光体13と対向する位置に配置されている。そして、現像スリーブ38Aの回転方向c(図示の時計回り方向)に沿って、搬送極N3、ピックオフ極S2、S3、S4、層形成極N1、搬送極S5、N2が設けられている。搬送極N3は、筐体37内の現像剤が貯留されているところへ現像剤を搬送するための磁極であり、搬送極N2、S5は、現像剤を感光体13へ搬送するための磁極である。また、ピックオフ極S2、S3、S4は、現像スリーブ38Aと層形成部材45とが対向している層形成部70の外側で現像剤を現像スリーブ38Aから離脱させるための磁極である。さらに、層形成極N1は、層形成部材45と対向する位置で現像剤を真っ直ぐな状態で配列(穂立ち)させ磁気ブラシを形成するための磁極である。
【0050】
層形成部材45は、図4(b)の紙面手前側から奥側へ向かう方向(現像ロール38の軸方向)を長手方向とする板状の磁石であり、図4(b)に示すように、長手方向と交差する方向で切った断面形状は矩形状となっている。また、層形成部材45は、矩形状断面の短辺の一方がN極(層形成極N4とする)他方がS極(層形成極S6とする)となっており、矩形状断面の短辺が現像スリーブ38Aの層形成極N1における法線方向(矢印R方向)と平行に配置され、矩形状断面の長辺が現像スリーブ38Aの層形成極N1における接線方向と平行な矢印Q方向に配置されている。
【0051】
さらに、層形成部材45は、現像スリーブ38Aの回転方向上流側(現像剤が流入する側)に現像ロール38の層形成極N1と同じ極性である層形成極N4が配置され、回転方向下流側に反対側の極性である層形成極S6が配置されており、接線方向の中央部が層形成極N1からの法線上の最短距離の部分に配置されている。すなわち、層形成部70では、層形成極N1を頂点として、層形成極N1、N4、S6が二等辺三角形状に配置されている。
【0052】
層形成部70では、層形成極N1から層形成部材45に向かう磁力線J1と、層形成極N1からピックオフ極S4に向かう磁力線J2と、層形成極N1から搬送極S5に向かう磁力線J3と、層形成極N4から層形成極S6に向かう磁力線J4とが形成されている。そして、磁力線J1は、現像ロール38の層形成極N1における法線方向に形成されており、磁力線J4は、現像ロール38の層形成極N1における接線方向に形成されている。このように、層形成部材45は、現像スリーブ38Aの外周面で法線方向の磁界が形成される部分(層形成極N1が配置される部分)と最も近接するように配置されて現像スリーブ38Aとの間で現像剤層を形成する層形成部70を形成すると共に、層形成部70を向く表面において現像スリーブ38Aの法線方向と交差する接線方向に磁界を形成するように層形成極N4、S6が配置されている。そして、現像ロール38の層形成位置が層形成極N1上となっている。
【0053】
次に、第1実施形態の作用について比較例と比較しつつ説明する。
【0054】
まず、第1実施形態の比較例である現像器100の作用について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0055】
図5(a)に示すように、比較例の現像器100は、現像ロール38と、現像ロール38と対向配置された層形成部材102とを有しており、現像ロール38と層形成部材102とが対向配置された領域が層形成部110となっている。層形成部材102は、現像ロール38に対して第1実施形態の層形成部材45(図4(b)参照)と同じ形状及び配置となっているが、磁石ではなく非磁性体で構成されている点が異なる。
【0056】
図5(b)に示すように、比較例の現像器100では、層形成部材102が非磁性体であるため、層形成部110において層形成極N1から法線方向に延びる磁力線J1(図5(a)参照)はそのまま真っ直ぐな状態となる。これにより、現像スリーブ38Aが矢印c方向に回転したとき、層形成極N1上の複数のキャリア粒子CAは、磁力線J1に沿ってほぼ真っ直ぐな状態で配列(穂立ち)され磁気ブラシを形成する。
【0057】
ここで、層形成部材102に近い領域にある複数のキャリア粒子CAは、法線方向の磁力線J1により拘束されているため、層形成部材102で層形成するときに、複数のキャリア粒子CA間のせん断面M1でキャリア粒子CAが受ける接線方向の機械的せん断力F1が強くなり、キャリア粒子CAが受ける負荷が大きくなって、トナーの外添剤の遊離やキャリア粒子CAへの埋まりこみが起こり易くなる。なお、トナー粒子はキャリア粒子CAに比べて外径が小さいので、図示を省略している。
【0058】
また、層形成部材102におけるキャリア粒子CA(現像剤)の流入側(現像剤溜まり)では、停留しているキャリア粒子CA1と流動するキャリア粒子CA2との界面M2において、キャリア粒子CA1とキャリア粒子CA2とが不規則に混在しているため、キャリア粒子CA1とキャリア粒子CA2との接触摩擦によりキャリア粒子CA1又はCA2の表面が剥がれるなどの劣化が生じることになる。
【0059】
一方、図6に示すように、第1実施形態の現像器12では、層形成部材45が磁石であるため、層形成部70において現像スリーブ38Aの外周に形成される磁界(磁力線J1(図4(b)参照))により穂立ちした磁気ブラシ(複数のキャリア粒子CA)の先端側(層形成部材45側)は、層形成部材45により形成される磁界(磁力線J4(図4(b)参照))により、現像スリーブ38Aの法線方向と交差する接線方向に曲がった状態となる。
【0060】
ここで、現像スリーブ38Aが矢印c方向に回転したとき、層形成部材45に近い領域にある複数のキャリア粒子CAは、接線方向の磁力線J4に沿って配列され、法線方向の磁力線J1には拘束されない。これにより、層形成部材45で層形成するときに、複数のキャリア粒子CA間のせん断面M3でキャリア粒子CAが受ける接線方向の機械的せん断力F2が比較例の現像器100のせん断力F1に比べて小さくなり、キャリア粒子CAが受ける負荷が小さくなって、キャリア粒子CA表面の剥がれなどの劣化が起こるのを抑える。なお、トナー粒子はキャリア粒子CAに比べて外径が小さいので、図示を省略している。
【0061】
また、層形成部70では、層形成極N1と層形成極N4とが同極性であるため、この間で磁力線がつながらず、磁力線J2(図4(b)参照)と磁力線J4(図4(b)参照)との間で界面M4が形成されており、層形成部材45におけるキャリア粒子CA(現像剤)の流入側(現像剤溜まり)では、停留しているキャリア粒子CA1が、磁力線J4(図4(b)参照)の磁界に沿って接線方向に配列される。これにより、界面M4において、停留しているキャリア粒子CA1と流動するキャリア粒子CA2とが接線方向に整列し、せん断力が作用する方向が一致するため、キャリア粒子CA1とキャリア粒子CA2との接触摩擦が比較例の現像器100に比べて小さくなり、キャリア粒子CA1又はCA2の表面の劣化が抑えられる。さらに、トナーの外添剤の遊離やキャリア粒子CAへの埋まりこみが回避され、現像剤の寿命が比較例に比べて延びる。
【0062】
なお、層形成部70を通って磁気ブラシの高さが揃えられた現像剤は、現像極S1近傍において磁気ブラシ上のトナーが感光体13の外周面に移行し、現像スリーブ38Aの表面には殆どキャリア粒子だけになった磁気ブラシが残る。そして、この磁気ブラシは、現像スリーブ38Aの回転に伴い、ピックオフ極S2、S3、S4で現像スリーブ38Aの表面から脱落する。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態に係る現像装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0064】
図7には、第2実施形態の現像器80が示されている。現像器80は、感光体13に対向する位置に開口部82Aが形成された筐体82を有している。筐体82には、感光体13に形成された潜像へ現像剤を供給する現像ロール38と、スクリューフィーダ39A、39Bと、筐体82内でスクリューフィーダ39Aに隣接して回転可能に設けられ現像ロール38の外周面の現像剤量を規制して現像剤の層形成を行う層形成ロール84と、が収容されている。
【0065】
層形成ロール84は、両端部から外側へ回転軸84Cが突出された着磁部材の一例としての円柱状の内胴84Bと、内胴84Bの外側で回転可能に設けられた回転部材の一例としての層形成スリーブ84Aとを有し、層形成スリーブ84Aの外周面の一部が現像ロール38の層形成極N1と対向するように筐体82内に配置されている。また、層形成スリーブ84Aは、矢印d方向(図示の時計回り方向で且つ現像スリーブ38Aの回転方向と同方向)に回転可能となるように軸方向の両端部がベアリング(図示省略)で支持されると共に、モータ及びギヤ(図示省略)により回転駆動されるようになっている。これにより、現像ロール38と層形成スリーブ84Aとの間に層形成部88が形成されている。
【0066】
内胴84Bは、回転軸84Cが筐体82に設けられたベアリング(図示省略)により回転可能に支持されている。また、回転軸84Cにはギヤ(図示省略)を介してステッピングモータ86が接続されており、内胴84Bは、ステッピングモータ86が回転軸84Cを矢印θ方向に往復させることにより往復回転可能となっている。さらに、内胴84Bは、層形成スリーブ84Aの回転方向に沿って、内胴84Bの外周面に磁極である複数のS極(S6、S7、S8極)と複数のN極(N4、N5極)とが形成されるように5本の永久磁石が放射状に設けられた構成となっている。
【0067】
ここで、層形成極N4、S6は、極間(中間部分)が、層形成極N1と対向する最短距離となるように、すなわち、現像スリーブ38Aの外周面で法線方向の磁界が形成される部分(層形成極N1が配置される部分)と最も近接するように配置され、現像ロール38の層形成位置が層形成極N1上となっている。そして、層形成スリーブ84Aの回転方向d(図示の時計回り方向)に沿って、層形成極S6、N4、ピックオフ極S7、S8、搬送極N5が設けられている。搬送極N5は、筐体82内の現像剤が貯留されているところへ現像剤を搬送するための磁極であり、ピックオフ極S7、S8は、現像スリーブ38Aと層形成スリーブ84Aとが対向している層形成部88の外側で、現像剤を層形成スリーブ84Aから離脱させる離脱手段の一例である。なお、層形成部88では、層形成極N1を頂点として、層形成極N1、N4、S6が二等辺三角形状に配置されている。
【0068】
図8(a)に示すように、層形成部88では、層形成極N1から層形成ロール84に向かう磁力線J1と、層形成極N1からピックオフ極S4に向かう磁力線J2と、層形成極N1から搬送極S5に向かう磁力線J3と、層形成極N4から層形成極S6に向かう磁力線J5とが形成されている。そして、磁力線J1は、現像ロール38の層形成極N1における法線方向に形成されており、磁力線J5は、現像ロール38の層形成極N1における接線方向に形成されている。
【0069】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0070】
図8(a)、(b)に示すように、第2実施形態の現像器80では、層形成ロール84の内胴84Bが磁石であるため、層形成部88において現像スリーブ38Aの外周に形成される磁界(磁力線J1)により穂立ちした磁気ブラシ(複数のキャリア粒子CA)の先端側(層形成ロール84側)は、層形成ロール84により形成される磁界(磁力線J5)により、現像スリーブ38Aの法線方向と交差する接線方向に曲がった状態となる。
【0071】
ここで、現像スリーブ38Aが矢印c方向に回転したとき、層形成ロール84に近い領域にある複数のキャリア粒子CAは、接線方向の磁力線J5に沿って配列され、法線方向の磁力線J1には拘束されない。これにより、層形成ロール84で層形成するときに、複数のキャリア粒子CA間のせん断面M5でキャリア粒子CAが受ける接線方向の機械的せん断力F3が、比較例の現像器100(図5(a)参照)のせん断力F1に比べて小さくなり、キャリア粒子CAが受ける負荷が小さくなる。なお、トナー粒子はキャリア粒子CAに比べて外径が小さいので、図示を省略している。
【0072】
また、現像器80では、層形成ロール84周辺で停留しているキャリア粒子CAが、層形成スリーブ84Aの矢印d方向への回転によって、スクリューフィーダ39A側に移動する。これにより、層形成部88への過剰な現像剤の流入が抑えられて層形成部88における現像剤(磁気ブラシ)の密度が低下し、現像剤に作用する圧縮力が低下して、現像剤に作用する負荷が低減される。なお、層形成部88を通った層形成スリーブ84A上の現像剤は、ピックオフ極S7、S8(図7参照)で層形成スリーブ84Aの表面から脱落して筐体82内に戻る。
【0073】
さらに、現像器80では、ステッピングモータ86により内胴84Bを矢印θ方向に移動させることで、各磁極角度が調整可能となっている。ここで、層形成部88における層形成極N1に対する層形成極N4、S6の配置を変えると、層形成部88に流入する現像剤量が変化して、層形成後の現像スリーブ38A外周面の現像剤量が変化する。これにより、感光体13の現像領域に搬送される現像剤量が可変となる。また、現像剤量の変化は、ステッピングモータ86による内胴84Bの磁極の段階的な位置変化と対応しているため、画像形成装置10の印刷モード設定に応じた現像剤量の制御が可能である。
【0074】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0075】
層形成ロール84は、層形成スリーブ84Aを外して内胴84Bのみを用いるようにしてもよい。また、内胴84Bの磁極配置は、ステッピングモータ86に代えてソレノイドを用いて変更したり、あるいはラックとピニオンを用いて変更してもよい。さらに、内胴84Bの磁極配置は調整しなくてもよい。また、第1実施形態において、層形成部材45の両端部を往復回転可能に支持して磁極配置を調整可能としてもよい。さらに、離脱手段の他の例としてピックオフ極に代えて機械的な掻き取りを行うブレードを層形成スリーブ84Aの外周面に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 画像形成装置
12 現像器(現像装置)
13 感光体(像保持体)
14 中間転写ベルト(被転写材)
32 一次転写ロール(転写手段)
38 現像ロール(現像剤保持部材)
38A 現像スリーブ(移動部材)
38B 内胴(磁性部材)
45 層形成部材
70 層形成部
84 層形成ロール(層形成部材)
84A 層形成スリーブ(回転部材、層形成部材)
84B 内胴(着磁部材、層形成部材)
88 層形成部
S7 ピックオフ極(離脱手段)
S8 ピックオフ極(離脱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に複数の磁極が配置された磁性部材と、前記磁性部材の外側で前記磁性部材の周方向に移動可能に設けられた移動部材と、を有し、前記移動部材の外周面で法線方向に磁界が形成されると共に磁性を有する現像剤を保持する現像剤保持部材と、
前記移動部材の外周面で前記法線方向の磁界が形成される部分と最も近接するように配置されて前記移動部材との間で現像剤層を形成する層形成部を形成すると共に、該層形成部を向く表面において前記移動部材の法線方向と交差する方向に磁界を形成するように磁極が配置された層形成部材と、
を有する現像装置。
【請求項2】
前記層形成部に前記現像剤保持部材の磁極が配置されている請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
周方向に複数の磁極が配置された磁性部材と、前記磁性部材の外側で前記磁性部材の周方向に移動可能に設けられた移動部材と、を有し、現像剤を保持する現像剤保持部材と、
前記現像剤保持部材における特定の磁極との間隔が最小となるように、且つ該特定の磁極に対し極性の異なる2つの磁極の中間部分が対向するように配置され、前記移動部材との間で現像剤層を形成する層形成部材と、
を有する現像装置。
【請求項4】
前記層形成部材の現像剤が流入する側の磁極の極性が、前記層形成部に配置された前記現像剤保持体の磁極の極性と同極性である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記層形成部材が、周方向に複数の磁極が配置された着磁部材である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記層形成部材が、周方向に複数の磁極が配置されると共に固定された着磁部材と、前記着磁部材の外側で前記移動部材と同じ方向に回転する回転部材とを有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記磁性部材には、前記層形成部の外側で現像剤を前記回転部材から離脱させる離脱手段が設けられている請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記現像剤保持部材の磁極に対する前記層形成部材の磁極の相対位置が調整可能に設けられている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の現像装置と、
静電潜像を外周に保持すると共に前記現像装置によって静電潜像が現像剤像とされる像保持体と、
前記像保持体から被転写材へ現像剤像を転写する転写手段と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−158649(P2011−158649A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19295(P2010−19295)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】