説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】キャリア付着を抑えつつ、現像能力を向上させることができる現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】平均粒径の小さい小粒径磁性キャリア、小粒径磁性キャリアよりも平均粒径が大きい大粒径磁性キャリア、及び、小粒径磁性キャリアよりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを有する現像装置において、小粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で1012〜1013[Ω]であり、大粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で10〜10[Ω]である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性キャリア及びトナー粒子を含有する現像剤を、現像剤担持体に内包される磁気発生手段の磁力によって現像剤担持体の表面に担持して現像に用いる現像装置、及び、その現像装置を備えた、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置において、現像剤の磁性キャリアとして、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性キャリアを用いると、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性キャリアを用いる場合に比べて、単位体積あたりに収容される粒子の表面積が大きくなる。これにより、多量のトナー粒子を磁性キャリア表面に担持させて、画像を繊細にムラ無く現像することができる。この反面、現像剤の流動性が悪くなったり、磁化量が小さいため感光体に磁性キャリアが付着する所謂キャリア付着が発生したりするというデメリットがある。一方、大粒径磁性キャリアを用いると、現像剤の流動性を向上させたり、磁化量が大きいためキャリア付着の発生を抑えたりすることができる。この反面、小粒径磁性キャリアに比べてトナー粒子の担持量が少なくなることから、画像を繊細に現像することができずに、ボソツキや濃度ムラのある画像にしてしまうというデメリットがある。
【0003】
特許文献1には、小粒径磁性キャリアのデメリットを大粒径磁性キャリアで補い、且つ、大粒径磁性キャリアのデメリットを小粒径磁性キャリアで補う狙いから、磁性キャリアとして、小粒径磁性キャリアと大粒径磁性キャリアとの2種類の磁性キャリアを含有させた現像剤が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、磁性キャリアは磁気力により現像剤担持体上に保持されているが、同時に静電誘導或いは電荷注入による電荷が磁性キャリアに存在し、感光体上の電荷との間に静電力が働いている。特に、磁性キャリアの電気抵抗が小さくなるほど静電誘導や電荷注入により前記静電力が大きくなる。また、低抵抗の磁性キャリアを用いて現像剤全体の電気抵抗を下げ現像電界の強度を大きくすることにより現像能力の向上を図ることができる。
しかしながら、磁性キャリアの粒径が小さくなるほど磁性キャリアの磁化量が小さくなるので、磁性キャリアに働く磁気力が弱くなる。そのため、小粒径磁性キャリアの電気抵抗を小さくし過ぎると、小粒径磁性キャリアと感光体との間で生じる静電力が、小粒径磁性キャリアと現像剤担持体との間で生じる磁気力に打ち勝って、小粒径磁性キャリアが感光体上に付着しやすくなりキャリア付着が発生するといった問題が生じる。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、キャリア付着を抑えつつ現像能力を向上させることができる現像装置及びその現像装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、平均粒径の小さい小粒径磁性キャリア、前記小粒径磁性キャリアよりも平均粒径が大きい大粒径磁性キャリア、及び、前記小粒径磁性キャリアよりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を前記現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを有し、前記現像剤担持体の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する現像装置において、前記小粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で1012〜1013[Ω]であり、前記大粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で10〜10[Ω]であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記小粒径磁性キャリアの重量平均粒径が20[μm]〜40[μm]であり、上記大粒径磁性キャリアの重量平均粒径が60[μm]〜90[μm]であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の現像装置において、上記磁気発生手段の上記現像領域との対向位置に存在する磁極を、上記潜像担持体と上記現像剤担持体との最近接部分から、周方向下流側にずらした位置に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の現像装置において、樹脂材料を母材に用いた上記小粒径磁性キャリアを用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、潜像担持体上に形成された潜像に対して現像手段により現像剤を供給することにより該潜像を現像して得られる画像を、最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、前記現像手段として、請求項1、2、3、4または5の現像装置を用いたことを特徴とするものである
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、小粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で1012〜1013[Ω]であり、大粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で10〜10[Ω]であることで、後述する実験で明らかにしたように、キャリア付着を抑えつつ現像剤全体の抵抗を下げて現像能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】画像形成部の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図。
【図3】4つのプロセスユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図4】ダイナミック抵抗DRの測定装置の概略構成図。
【図5】現像剤とトナー付着量γとの関係を示すグラフ。
【図6】感光体と現像装置とを拡大して示す模式図。
【図7】磁極N1の磁極角度とキャリア付着量の関係を表す図。
【図8】現像スリーブを振動させる現像剤担持体振動装置を表す図。
【図9】現像スリーブ振動装置の振動周波数とトナー付着量γとの関係を示すグラフ。
【図10】樹脂材料を母材に用いた小粒径磁性キャリアを使用した場合と、フェライト材料を母材とした小粒径磁性キャリアを使用した場合とでトナー付着量γを評価した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
【0010】
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成部1と、白紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0011】
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録紙を送り出す送出ローラ43、送り出された記録紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に、シート状部材としての記録紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の記録紙を画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0012】
画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,3Y,3M,3C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,4Y,4M,4Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0013】
図2は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図3は、4つのプロセスユニット3K,3Y,3M,3Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,3Y,3M,3Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図3においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
【0014】
プロセスユニット3K,3Y,3M,3Cは、それぞれ、感光体4とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,3Y,3M,3Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0015】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0016】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。現像装置内部に収容している現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0017】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像剤収容部である現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサ10などを有している。
【0018】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられた磁気発生手段としてのマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像剤担持体としての現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ13は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる現像剤を現像スリーブ表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0019】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサ10による検知結果に基づいて、現像剤に適量のトナーが補給される。なお、ドクタブレード14は、現像剤中における磁性キャリアとの摺擦によるトナーの摩擦帯電を促進させる役割も担っている。
【0020】
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置6に送ってリサイクルする。
【0021】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0022】
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3K,3Y,3M,3Cの感光体4K,4Y,4M,4Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0023】
4つのプロセスユニット3K,3Y,3M,3Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,4Y,4M,4Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,4Y,4M,4Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の一次転写ニップが形成されている。
【0024】
K,Y,M,C用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ26K,26Y,26M,26Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,4Y,4M,4Cに向けて押圧している。これら一次転写ローラ26K,26Y,26M,26Cには、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の一次転写ニップには、感光体4K,4Y,4M,4C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。
【0025】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0026】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と二次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの二次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ31には図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。
【0027】
この二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサが配設されている。図示しない白紙供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録紙Pは、その先端がレジストローラセンサに検知された所定時間後記録紙Pの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。この結果、記録紙Pの姿勢が修正され、画像形成との同期をとる準備が整う。このようにして、記録紙Pは、姿勢が修正されるが、その修正が上手く行われない場合もある。すると、レジストローラ対33の下流側で記録紙Pのスキューが発生する。
【0028】
記録紙Pの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに送り出す。
【0029】
二次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって記録紙に一括二次転写され、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過した記録紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0030】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、二次転写ニップで記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0031】
定着装置34に搬送された記録紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0032】
先に示した図1において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録紙が、切換爪で記録紙の進路を記録紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び二次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0033】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどを搭載した移動体としてのキャリッジを図中左右方向に移動させることができる。そして、キャリッジを図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させてCCD等の撮像素子で読み取る。
【0034】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0035】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート状部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。スキャナ150に固定された図示しない蝶番によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。
【0036】
原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図示のように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図1に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
【0037】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。
【0038】
この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0039】
各色のプロセスユニット3K,3Y,3M,3Cに用いられるK,Y,C,Mトナーとしては、高画質画像を実現するために、重量平均粒径4〜8[μm]であるものが用いられている。重量平均粒径が3[μm]未満であると、飛散による機内汚れを引き起こしたり、低湿環境下での画像濃度を低下させたり、感光体クリーニング不良を引き起こしたりという不具合を発生させ易くなってしまう。また、重量平均粒径が8[μm]を超えると、100[μm]以下の微小スポットを現像する際にスポット周囲への飛び散りを発生させ易くなる。なお、トナーの重量平均粒径や円形度については、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子株式会社製)を用いて測定することが可能である。
【0040】
トナーの母粒子を構成する樹脂としては、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等が上げられる。また、ビニル樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体:スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体:ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂としては、次に例示するA群中の2価のアルコールと、B群中の二塩基酸塩とからなるものであり、さらにC群中の3価以上のアルコールあるいはカルボン酸を第三成分として加えたものであってもよい。
【0042】
・A群:エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ブテンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等。
【0043】
・B群:マレイン酸、フマール酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コ
ハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、リノレイン酸、またはこれらの酸無水物または低級アルコールのエステル等。
【0044】
・C群:グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール、トリメリト酸、ピロメリト酸等の3価以上のカルボン酸等。ポリオール樹脂としては、エポキシ樹脂と2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物、もしくはそのグリシジルエーテルとエポキシ基と反応する活性水素を分子中に1個有する化合物と、エポキシ樹脂と反応する活性水素を分子中に2個以上有する化合物を反応してなるもの。
【0045】
トナーに含有させる顔料としては、次のようなものが挙げられる。即ち、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等である。また、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。
【0046】
また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。また、赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。
【0047】
また、紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。また、青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。また、緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0048】
それら顔料については、単独で使用してもよいし、2種類以上を混ぜて使用しても良い。カラートナーにおいては、良好な顔料の均一分散が必須となるため、顔料を大量の樹脂中に直接投入するのではなく、高濃度に顔料を分散させたマスターバッチを作製し、それを希釈して投入する方式が用いられる。この場合、一般的には、分散性を助けるために溶剤が使用されるが、環境等を配慮して水で分散させてもよい。水を使用する場合、マスターバッチ中の残水分が問題にならないように、温度コントロールが重要になる。
【0049】
トナー粒子には、電荷制御剤を粒子内部に分散(内添)させている。電荷制御剤により、現像システムに応じた最適の電荷量コントロールが可能となり、粒度分布と電荷量とのバランスの安定化を図ることができる。トナーを正電荷性に制御するものとして、ニグロシンおよび四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染料、イミダゾール金属錯体や塩類を、単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、トナーを負電荷性に制御するものとしてサリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類、カリックスアレン系化合物等が用いられる。
【0050】
また、本発明におけるトナーには定着時のオフセット防止のために離型剤を内添することが可能である。離型剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、モンタンワックスおよびその誘導体、パラフィンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、サゾールワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキルリン酸エステル等がある。これら離型剤の融点は65〜90℃であることが好ましい。この範囲より低い場合には、トナーの保存時のブロッキングが発生しやすくなり、この範囲より高い場合には定着ローラ温度 が低い領域でオフセットが発生しやすくなる場合がある。
【0051】
離型性を高めたり、分散性を向上さえたりする狙いから、トナー粒子に添加剤を加えても良い。添加剤としては、スチレンアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられ、それらを2種以上混合しても良い。ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステルを用いても良い。結晶性を有し、分子量分布がシャープでかつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くした脂肪族系ポリエステルである。この樹脂はガラス転移温度(Tg)において結晶転移を起こすと同時に、固体状態から急激に溶融粘度が低下し、紙への定着機能を発現する。この結晶性ポリエステル樹脂の使用により、樹脂のTgや分子量を下げ過ぎることなく低温定着化を達成することができる。そのため、Tg低下に伴う保存性の低下はない。また、低分子量化に伴う高過ぎる光沢や耐オフセット性の悪化もない。したがってこの結晶性ポリエステル樹脂の導入は、トナーの低温定着性の向上に非常に有効である。
【0052】
流動性を向上させる狙いから、無機微粉体をトナー表面に付着または固着させてもよい。この無機微粉体の平均粒径は10[nm]〜200[nm]が適している。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
【0053】
前述の無機微粉体としてはSi、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物や複合酸化物が挙げられる。これらのうち二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン(チタニア)、アルミナの微粒子が好適に用いられる。さらに、疎水化処理剤等により表面改質処理することが有効である。疎水化処理剤の代表例としては以下のものが挙げられる。即ち、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等である。
【0054】
無機微粉体はトナーに対して0.1〜2[重量%]の割合で添加することが好ましい。0.1[重量%]未満では、トナー凝集を改善する効果が乏しくなり、2[重量%]を超える場合は、細線間のトナー飛び散り、機内の汚染、感光体の傷や摩耗等の問題が生じやすい傾向があるからである。
【0055】
また、少なくとも、樹脂、顔料からなる粉体の表面に電荷制御剤を付着または固着させ、粉体表面形状を小さな周期と大きな周期を持つようにしても良い。その平均粒径は10〜200[nm]の小さい粒径のものが最適である。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
【0056】
また、実質的な悪影響を与えない範囲内で、他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;あるいは酸化セリウム粉末、炭化珪素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤を、現像性向上剤として少量添加してもよい。
【0057】
混練り工程や粉砕工程を用いないで作製するスプレードライ法などで作製したトナー、カプセルトナーであってもよい。
【0058】
トナーの抵抗調整については、母材樹脂に含有、分散せしめる導電性材料の量調整によって行う。カーボン系の導電性材料としては、アセチルブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、炭素繊維、黒鉛等を例示することができる。また、金属系の導電性材料としては、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、Cu、Ni等の金属粉末を例示することができる。これらを適宜トナーバインダ樹脂に分散させて、電気抵抗を調整する。
【0059】
次に、本発明の特徴部について説明する。
先に図2に示した現像装置6K,6Y,6C,6Mは何れも磁性キャリアとして小粒径磁性キャリアと大粒径磁性キャリアの2種類を含有する現像剤を使用して現像を行うようになっている。小粒径磁性キャリアと大粒径磁性キャリアは後述するように、それぞれ電気抵抗が異なるように処理が施されているが、母材となる磁性材料には同じものが使用されている。その磁性材料は質量磁化が80〜100[emu/g]のフェライト材料である。実施形態に係る複写機においては、小粒径磁性キャリアと大粒径磁性キャリアとを重量比50[%]:50[%]で混合している。
【0060】
現像装置6K,6Y,6C,6Mで用いられる現像剤においては、小粒径磁性キャリアの重量平均粒径が約25[μm]に調整されており、大粒径磁性キャリアの重量平均粒径が約80[μm]に調整されている。母材にはベースとなるフェライト材料を1250〜1300[℃]で3〜5時間ほど焼成し、クラッシャーなどで粉砕し、その後、所望の粒径に加工したものを使用している。なお、磁性キャリアの重量平均粒径や円形度については、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子株式会社製)を用いて測定することが可能である。
【0061】
小粒径磁性キャリアの重量平均粒径としては20[μm]〜40[μm]が好ましく、より好ましい範囲は25[μm]〜35[μm]である。また、大粒径磁性キャリアの重量平均粒径としては60[μm]〜90[μm]が好ましく、より好ましい範囲は70[μm]〜80[μm]である。小粒径磁性キャリアは、小さ過ぎるとキャリア付着に不利となり、大き過ぎるとボソツキや濃度ムラが発生し画質が低下するため、上記範囲が適当である。また、大粒径磁性キャリアは、小さ過ぎるとかく乱を起こすのに十分ではなく、大き過ぎるとボソツキや濃度ムラが発生し画質が低下するため、上記範囲が適当である。
【0062】
小粒径磁性キャリアの電気抵抗については、ダイナミック抵抗DRで1012〜1013[Ω]に調整されており、大粒径磁性キャリアはダイナミック抵抗DRで10〜10[Ω]に調整されている。
【0063】
ダイナミック抵抗DRについては、図4に示す測定装置を用いて測定することが可能である。電気的に接地した台座500の上方に、マグネットローラ513を内包した直径20[mm]の回転可能なスリーブ512をセットする。このスリーブ512の表面に対しては、0.9[mm]のギャップを介して対向電極(ドクタ)502の自由端を対向させる。対向電極502の大きさは、幅=65[mm]、長さL=0.5〜1[mm]である。この状態で、スリーブ512を回転速度600[rpm](線速628[mm/sec])で回転駆動する。そして、回転しているスリーブ512上に測定対象となる磁性キャリアCを所定量(14g)だけ担持させ、スリーブ512の回転に伴って磁性キャリアCを10分間攪拌する。次に、スリーブ512に電圧を印加しない状態で、スリーブ512と対向電極502との間を流れる電流IRII[A]を電流計503で測定する。次に、直流電源504からスリーブ512に耐圧上限レベル(高抵抗シリコンコートキャリアでは400[V]から鉄粉キャリアでは数[V])の電圧E[V]を5分間印加する。そして、電圧Eを印加した状態でスリーブ512と対向電極502との間を流れる電流IRQ[A]を電流計503で測定する。最後に「DR=E/(IRQ−IRII)」という式に、各測定値を代入して、ダイナミック抵抗DRを求める。
【0064】
上述した条件で混合した磁性キャリアのダイナミック抵抗は1010〜1011[Ω]であった。
【0065】
前述した電気抵抗の小粒径磁性キャリアと大粒径磁性キャリアとを混合して現像に使用することで、小粒径磁性キャリアを単独で使用する場合と比較して現像剤の電気抵抗が小さくなるので、現像電界の強度が大きくなり、現像能力を向上させることができる。
【0066】
[実験]
本発明者は、本発明の効果を確かめるために、実施形態に係る画像形成装置を用いて、トナーと表1に示した磁性キャリアとをそれぞれ含有する現像剤1、現像剤2及び現像剤3を用いて画像出力を行った。
【0067】
【表1】

【0068】
なお、現像剤1、現像剤2及び現像剤3中に含有される磁性キャリアの詳細は次の通りである。
【0069】
<現像剤1>
磁性キャリアとして、重量平均粒径が60[μm]〜90[μm]であり、電気抵抗がダイナミック抵抗DRで10〜10[Ω]である大粒径磁性キャリアのみを含有した。
【0070】
<現像剤2>
磁性キャリアとして、重量平均粒径が20[μm]〜40[μm]であり、電気抵抗がダイナミック抵抗DRで1012〜1013[Ω]である小粒径磁性キャリアのみを含有した。
【0071】
<現像剤3>
磁性キャリアとして、重量平均粒径が60[μm]〜90[μm]であり、電気抵抗がダイナミック抵抗DRで10〜10[Ω]である大粒径磁性キャリアと、重量平均粒径が20[μm]〜40[μm]であり、電気抵抗がダイナミック抵抗DRで1012〜1013[Ω]である小粒径磁性キャリアと、を重量比50[%]:50[%]で混合したものを含有した。
【0072】
また、現像剤1、現像剤2及び現像剤3で用いたトナーは、本実施形態で説明したものであり、いずれの現像剤においても同一のものを用いている。
【0073】
図5および表2は実験結果を示したものである。
【0074】
【表2】

【0075】
表2に示したキャリア付着の評価において、「○」はキャリア付着が生じていない場合であり、「×」はキャリア付着が生じた場合である。また、画像の均一性の評価において、「○」は画像の均一性が良好であり、「×」は画像が不均一の場合である。
【0076】
図5に示すトナー付着量γは、現像バイアス1[kv]あたりでどの程度のトナーが感光体4上の潜像に付着したかを示す指標であり、数値が大きくなるほど、現像能力が良好になっていることを表している。図に示すように、低抵抗の大粒径磁性キャリアと高抵抗の小粒径磁性キャリアとを混合したキャリアとトナーとからなる現像剤3を使用することで、小粒径磁性キャリア単独のキャリアとトナーとからなる現像剤2を使用する場合と比較して現像能力が向上する。
【0077】
また、表2に示すように、低抵抗の大粒径磁性キャリアと高抵抗の小粒径磁性キャリアとを混合した現像剤3を使用することでキャリア付着することなく均一な画像を得ることができる。
【0078】
次に、図6は感光体4と現像装置6とを拡大して示す模式図である。
現像スリーブ12の表面上の現像剤中の磁性キャリアは、磁気発生手段たるマグネットローラ13の発する磁束によってスリーブ表面上で穂立ちして磁気ブラシを形成する。
【0079】
マグネットローラ13は周方向にN1(N極)、S1(S極)、N2(N極)、S2(S極)、S3(S極)、S4(S極)の順で並ぶ6つの磁極を具備している。磁極S1は、図3に示す攪拌部7内の現像剤を回転する現像スリーブ12表面で汲み上げるための磁束を発生する汲み上げ磁極である。また、磁極N1は感光体4と現像スリーブ12とが対向する現像領域で現像剤を穂立ちさせるための現像磁極である。また、磁極S2と磁極N2とは現像領域を通過した現像剤を搬送するための搬送極であり、磁極S3と磁極S4とは磁極S2と磁極N2とによって搬送された現像剤を現像スリーブ表面から離脱させて、図3に示す攪拌部7に戻すための反発磁極である。
【0080】
同図において、符号L2で示す破線は、現像磁極である磁極N1の磁極の方向を表しており、その位置は符号L1で示す現像スリーブ表面と感光体表面との最近接点からスリーブ周方向にずれた位置に配設されている。最近接位置に磁極N1を配設した場合、最近接位置において現像剤が強く圧迫され、キャリア付着が発生し易い。
【0081】
図7は磁極N1の磁極角度とキャリア付着量との関係を表す図である。キャリア付着は、感光体表面の一定面積内におけるキャリアの付着数を数え算出した。図に示すように、最近接点と磁極N1とが一致している場合(磁極角度0[°])と比較して、磁極角度を最近接点よりも現像スリーブ周方向下流方向にずらして(磁極角度を大きくして)磁極N1を配設することで、現像剤が現像領域を通過した後に磁気力による回収効果が得られ、キャリア付着を抑制することが可能である。本実施形態に係る複写機においては、最近接点より5[°]周方向にずらした位置に磁極N1が配設されている。なお、最近接点における感光体4と現像スリーブ12との間隙である現像ギャップは、300[μm]に設定されている。
【0082】
次に実施形態に係る複写機の変形例について説明する。なお以下に特筆しない限り、変形例に係る複写機の構成は図1などを用いて説明した複写機と同様である。図8は現像スリーブ12を振動させる現像スリーブ振動装置を表す図である。
【0083】
現像スリーブ12は軸の片側に駆動を伝達するためのギア601が配設されており、もう一方に現像スリーブ12の軸を支持する軸受け602が配設されている。
【0084】
また、現像スリーブ12のギア601が配設された側の軸の端面にはバネからなる弾性部材603が当接しており、軸受け602が配設された側の軸の端部には現像スリーブ振動装置を構成する、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電材料からなる圧電素子604が当接している。そして、圧電素子604に接続されている交流電源605から圧電素子604に電圧を出力することで、現像スリーブ12を軸方向に振動させることができる。
【0085】
このように現像スリーブ12を軸方向に振動させることで、現像スリーブ12上の磁性キャリアとトナー粒子との付着力が弱まるので、現像スリーブ12から感光体4へのトナーの供給性が高まり現像能力を更に向上させることができる。
【0086】
図9は現像スリーブ振動装置の振動周波数とトナー付着量γとの関係を示すグラフである。図示のように現像スリーブ12をある程度の周波数で振動させることでトナー付着量γを増大させることができる。
【0087】
変形例に係る複写機では、各色の現像装置6において、収容されている現像剤の小粒径磁性キャリアに、母材として樹脂に磁性体粒子を混ぜ込んだものを使用している。樹脂材料は前述したフェライト材料と比較して比重が小さいことから、現像領域中で大粒径磁性キャリアの動きによって押しのけられる動きが活発となる。そのため、感光体4と接触する確率が高まり、それに伴って感光体4へのトナー供給性が向上するので現像能力が向上する。
【0088】
図10は係る条件でトナー付着量γを評価した結果を示すグラフである。
図に示すように樹脂材料を母材に用いた小粒径磁性キャリアを使用した場合は、フェライト材料を母材とした小粒径磁性キャリアを使用した場合と比較して、トナー付着量γが向上している。
【0089】
以上、本実施形態によれば、重量平均粒径の小さい小粒径磁性キャリア、小粒径磁性キャリアよりも重量平均粒径が大きい大粒径磁性キャリア、及び、小粒径磁性キャリアよりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部である現像ケース9と、現像ケース9内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体である現像スリーブ12と、現像スリーブ12の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を現像スリーブ12の周面に引き寄せる磁気発生手段であるマグネットローラ13とを有し、現像スリーブ12の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体である感光体4に対向する現像領域に搬送し、現像領域で現像剤中のトナーを感光体4の潜像に転移させて前記潜像を現像する現像装置6において、小粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で1012〜1013[Ω]であり、大粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で10〜10[Ω]である。これにより、前述した実験で明らかにしたように、キャリア付着を抑えつつ現像剤全体の抵抗を下げて現像能力を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、小粒径磁性キャリアの重量平均粒径が20[μm]〜40[μm]であり、大粒径磁性キャリアの重量平均粒径が60[μm]〜90[μm]である。小粒径磁性キャリアは、小さ過ぎるとキャリア付着に不利となり、大き過ぎるとボソツキや濃度ムラが発生し画質が低下するため、上記範囲が適当である。また、大粒径磁性キャリアは、小さ過ぎるとかく乱を起こすのに十分ではなく、大き過ぎるとボソツキや濃度ムラが発生し画質が低下するため、上記範囲が適当である。
また、本実施形態によれば、マグネットローラ13の現像領域との対向位置に存在する磁極N1を、感光体4と現像スリーブ12との最近接部分から、周方向下流側にずらした位置に設けたで、現像剤が現像領域を通過した後に磁気力による回収効果が得られ、キャリア付着を更に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、現像スリーブ12を機械的に振動させる振動手段である現像スリーブ振動装置を設けたことで、現像スリーブ12上の磁性キャリアとトナー粒子との付着力が弱まり、トナーの供給性が向上し、現像能力を更に向上させることができる。
また、本実施形態によれば、樹脂材料を母材に用いた小粒径磁性キャリアを用いることで、小粒径磁性キャリアの比重が小さいことから、現像領域内での動きが活発となり、感光体4に接触する確率が増えることから現像能力が更に向上する。
【符号の説明】
【0090】
1 画像形成部
2 光書込装置
3 プロセスユニット
4 感光体
6 現像装置
7 攪拌部
8 搬送スクリュウ
9 現像ケース
10 トナー濃度センサ
11 現像部
12 現像スリーブ
13 マグネットローラ
14 ドクタブレード
15 ドラムクリーニング装置
16 クリーニングブレード
17 ファーブラシ
18 電界ローラ
19 スクレーパ
20 回収スクリュウ
21 リサイクル搬送装置
22 紙搬送ユニット
22 除電ランプ
23 帯電装置
24 転写ユニット
25 中間転写ベルト
26 一次転写ローラ
27 下部張架ローラ
28 紙搬送ユニット
29 紙搬送ベルト
30 駆動ローラ
31 二次転写ローラ
33 レジストローラ対
34 定着装置
35 排紙ローラ対
36 スイッチバック装置
37 給紙路
40 白紙供給装置
41 ペーパーバンク
42 給紙カセット
43 送出ローラ
44 給紙路
45 分離ローラ
47 搬送ローラ
50 画像読取ユニット
52 本体カバー
53 原稿載置台
54 搬送ユニット
55 原稿スタック台
150 スキャナ
151 面固定読取部
152 移動読取部
154 コンタクトガラス
155 コンタクトガラス
500 台座
502 対向電極
503 電流計
504 直流電源
512 スリーブ
513 マグネットローラ
601 ギア
603 弾性部材
604 圧電素子
605 交流電源
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特許第3306730号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径の小さい小粒径磁性キャリア、前記小粒径磁性キャリアよりも平均粒径が大きい大粒径磁性キャリア、及び、前記小粒径磁性キャリアよりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、
前記現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を前記現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを有し、
前記現像剤担持体の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する現像装置において、
前記小粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で1012〜1013[Ω]であり、前記大粒径磁性キャリアの電気抵抗がダイナミック抵抗で10〜10[Ω]であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記小粒径磁性キャリアの重量平均粒径が20[μm]〜40[μm]であり、上記大粒径磁性キャリアの重量平均粒径が60[μm]〜90[μm]であることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または2の現像装置において、
上記磁気発生手段の上記現像領域との対向位置に存在する磁極を、上記潜像担持体と上記現像剤担持体との最近接部分から、周方向下流側にずらした位置に設けたことを特徴とする現像装置
【請求項4】
請求項1、2または3の現像装置において、
上記現像剤担持体を機械的に振動させる振動手段を設けたことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の現像装置において、
樹脂材料を母材に用いた上記小粒径磁性キャリアを用いることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
潜像担持体上に形成された潜像に対して現像手段により現像剤を供給することにより該潜像を現像して得られる画像を、最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
前記現像手段として、請求項1、2、3、4または5の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−78724(P2012−78724A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226019(P2010−226019)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】