説明

現在位置表示方法、およびナビゲーション装置

【課題】ナビゲーション装置において、山間エリアの道路を走行している場合に、現在位置を適切に地図上に表示させる。
【解決手段】ナビゲーション装置の演算処理部1に、GPS受信装置7から3次元の現在位置を取得するステップと、車両の所定距離内の旋回頻度を算出するステップと、取得した3次元の現在位置から所定範囲内の交差点数を算出するステップと、交差点数および旋回頻度から車両が走行している道路が山間エリアの道路であるか否かを推定するステップと、走行している道路が山間エリアの道路ではないと推定した場合、取得した3次元の現在位置を用いて地図上に現在位置を表示するステップと、走行している道路が山間エリアの道路であると推定した場合、GPS受信装置7から2次元の現在位置を取得し、その2次元の現在位置を用いて地図上に現在位置を表示するステップと、を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置の技術に関し、特に地図上に現在位置をマップマッチングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナビゲーション装置には、地図データに高度(標高)情報を含めておいて、GPS受信装置が2次元測位を行なっている場合に、2次元測位のGPSデータおよび地図データの高度情報を利用して現在位置を算出するようにしているものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
また、従来の車載用装置には、記憶している地図データを利用して、走行予定の道路が山間エリアの道路か、或いは市街地の道路かについて推定しているものがある(例えば特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平05−26678号公報
【特許文献2】特開平11−53687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、GPS受信装置は、電波受信状態が良いエリアでは、4個以上のGPS衛星からの電波を受信し、緯度、経度、高度の3次元の現在位置を測位する(3次元測位)。一方、GPS受信装置は、山間エリアや高層ビルが乱立する都心部等の電波状態が悪いエリア等では、3個のGPS衛星からの電波しか受信できない場合がある。GPS受信装置は、3個のGPS衛星からの電波では、「緯度、経度」の2次元の現在位置しか測位することができない。
【0006】
そのため、GPS受信装置は、3個のGPS衛星からの電波しか受信できない場合、この電波と、前回の3次元測位で得られた高さとを用いて3次元の現在位置を擬似的に算出している。しかしながら、山間部等の高低差の大きいエリアでは、過去に測位した現在位置の高さを利用して擬似的に3次元の現在位置を算出した場合、誤差が生じてしまう。なお、山間部の道路には、交差点等の特徴的な形状の道路が少ないため、マップマッチングの技術で正確な位置補正ができない場合が多い。
【0007】
上記特許文献1は、現在位置を算出する際に高度(標高)に関する判定を行なう必要があり、ナビゲーション装置の処理負荷を増加させてしまう。その結果、特許文献1では、現在位置算出処理の速度が遅延することがある。また、上記特許文献1は、地図データに高度情報を持たせる必要があり、地図データのコストが高くなるという問題を有している。なお、地図データは、新たに開通した道路についてのメンテナンスが必要であるが、メンテナンスの際に高度情報についても追加する必要があり、地図データの製造者およびナビゲーション装置のユーザの負担が大きくなる。
【0008】
また、上記特許文献2は、走行予定の道路が市街地なのか或いは山間エリアなのかを推定することはできるが、現在位置を正確に地図上に表示することについて、考慮されているものではない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ナビゲーション装置において、山間エリアの道路を走行している場合でも、コストをかけないで、現在位置を適切に地図上に表示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、GPS(Global Positioning System)受信装置が測位した現在位置を利用して地図データが表す地図上に現在位置を表示するナビゲーション装置に適用される。ここで、前記GPS受信装置は、3次元測位の現在位置データおよび2次元測位の現在位置データが出力可能に構成されていることとする。
【0011】
そして、前記ナビゲーション装置は、前記GPS受信装置から3次元の現在位置データを取得するステップと、車両の走行距離を測定するステップと、車両の旋回を検知し、前記測定した走行距離を用いて所定距離における旋回頻度を算出するステップと、前記取得した3次元の現在位置から所定範囲内の交差点数を前記地図データを利用して算出するステップと、前記交差点数および前記旋回頻度から車両が走行している道路が山間エリアの道路であるか否かを推定するステップと、前記走行している道路が山間エリアの道路ではないと推定した場合、前記取得した3次元の現在位置を用いて地図上に現在位置を表示するステップと、前記走行している道路が山間エリアの道路であると推定した場合、前記GPS受信装置から2次元の現在位置データを取得して、前記取得した2次元の現在位置データを用いて地図上に現在位置を表示するステップと、を行なう。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、ナビゲーション装置において、山間エリアの道路を走行している場合でも、コストをかけないで、地図上に現在位置を適切に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
最初に本実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置の概略構成について図1を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置(以下において単に「ナビゲーション装置」という)の概略構成図である。
【0016】
図示するように、ナビゲーション装置は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、地図データ記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、車輪速センサ6と、GPS(Global Positioning System)受信装置7と、旋回センサ8とを有する。
【0017】
演算処理部1は、ナビゲーション装置がユーザに提供する各種情報を処理するための中心的ユニットである。例えば、GPS受信装置7から出力される情報を基にして現在位置を算出し、算出した現在位置に基づいて、表示に必要な地図データを地図データ記憶装置3から読み出す。その後、演算処理部1は、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在位置を示すマークを重ねてディスプレイ2に表示する。
【0018】
ディスプレイ2は、演算処理部1で生成された画像データを表示するユニットで、CRTや液晶ディスプレイ等により構成される。また、演算処理部1とディスプレイ2との間の信号S1は、RGB信号やNTSC(National TV Standards Committee)信号で接続するのが一般的である。
【0019】
地図データ記憶装置3は、日本列島の全体図から全国各市町村の詳細図まで多段階の縮尺図に対応した地図データを記憶するユニットであり、例えば、CD−ROMドライブとCD−ROM、DVD−ROMドライブとDVD−ROM、またはHDD等により構成される。
【0020】
地図データは、地図を複数に分割したメッシュ領域毎に分けられ、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータを有する。また、各リンクのリンクデータは、リンクを構成する2つのノード情報(リンクの開始ノードおよび終了ノード)を有し、ノード情報には、そのノードが交差点ノードであるか否かを示す識別情報が含まれている。また、地図データには、対応するメッシュ領域に含まれている道路以外の地図構成物の情報(名称、種別、座標情報など)も含まれている。
【0021】
なお、本実施形態の地図データには、3次元の鳥瞰図が含まれていているものとする。そして、本実施形態のナビゲーション装置は、3次元の鳥瞰図に現在位置を表示可能に構成されている。
【0022】
音声入出力装置4は、演算処理部1で生成したユーザへのメッセージを音声信号に変換して出力すると共に、ユーザが発した声を認識し、デジタルデータに変換して演算処理部1にその内容を転送する。
【0023】
入力装置5は、ナビゲーション装置の各種機能選択、目的地設定等のユーザからの指示を受け付けるユニットで、スクロールキー、縮尺変更キーなどのハードスイッチ、ジョイステック、ディスプレイ上に貼られたタッチパネルなどで構成される。
【0024】
車輪速センサ6は、車両の走行距離を測定する。具体的には、車輪速センサ6は、車輪の円周と計測される車輪の回転数から車両の走行距離を測定して、その測定した走行距離を示すデータを演算処理部1に出力する。なお、後述するが、演算処理部1に出力された走行距離を示すデータは、車両の走行している道路がワンディング道路(湾曲が多い、曲がりくねった道路)であるか否かを判断するために用いられる。
【0025】
GPS受信装置7は、ナビゲーション装置が現在位置を算出するために使用するものである。GPS受信装置7は、GPS衛星からの位置測位用の電波を受信して、車両の搭載されているGPS受信装置7とGSP衛星間の距離および距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで車両の現在位置、速度、および進行方向(方位)を測定する。
【0026】
ところで、GPS受信装置7は、電波受信状態が良いエリアでは、4個以上のGPS衛星からの電波を受信し、「緯度、経度、高度」の3次元の現在位置を測位する(3次元測位)。そして、GPS受信装置7は、3次元で測位した現在位置と、速度および進行方向(方位)とを含むGPSデータを演算処理部1に出力する。
【0027】
ここで、GPS受信装置は、高低差の変化が大きい山間エリアや高層ビルが乱立する都心部等の電波状態が悪いエリアにおいて、4個以上のGPS衛星からの電波を受信できないことがある。GPS受信装置7は、3個のGPS衛星からの電波では、「緯度、経度」の2次元の現在位置しか測位することができない。この場合、GPS受信装置7は、この電波から3次元の現在位置を擬似的に算出する。なお、3次元の現在位置を擬似的に算出する方法は、従来技術により実現されるものとする。例えば、GPS受信装置7は、3次元の現在位置が測位できた場合、その3次元の現在位置を所定回数分保持する。そして、GPS受信装置7は、2次元による現在位置しか測位できなかった場合、保持している前回の3次元測位で得られた現在位置の高さを利用し、2次元の現在位置の高さを推定するようにしてもよい。そして、GPS受信装置7は、2次元の現在位置しか測位することができない場合、擬似的に算出した3次元の現在位置、速度、および進行方向(方位)を含むGPSデータを演算処理部1に出力する。
【0028】
旋回センサ8は、車両が所定角度以上旋回したか否かを検知し、上記所定角度以上の旋回を検知した場合、車両が旋回した旨を示すデータを演算処理部1に出力する。なお、本実施形態では、旋回センサ8の具体的な構成については特に限定しない。例えば、旋回センサ8を車両が有するハンドル機構に設ける。そして、旋回センサ8は、車両の所定角度以上の旋回の検知を、ハンドル機構の回転を検知することで行うにしてもよい。
【0029】
続いて、上述したナビゲーション装置の演算処理部1が有する機能について図2を用いて説明する。図2は、演算処理部1の機能構成を説明するためのブロック図である。
【0030】
図示するように、演算処理部1は、設定部10、現在位置検出部11、データ読出部12、交差点密度算出部13、マップマッチ処理部14、ワインディング判定部15、表示処理部16、およびエリア判定部17を有する。
【0031】
設定部10は、入力装置5および音声入出力装置4に入力されたユーザからの要求を受け付けて、その要求された内容に対応する処理が実行されるように演算処理部1を制御する。例えば、設定部10は、表示処理部16を制御し、2次元地図表示および3次元地図表示のいずれか一方の表示を受付けるメニュー画面をディスプレイ2に表示する。そして、設定部10は、入力装置5を介して、2次元地図表示或いは3次元地図表示の設定を受付ける。
【0032】
現在位置検出部11は、GPS受信装置7が出力するGPSデータを取得し、そのGPSデータに含まれる現在位置を利用して車両の現在位置を算出する。現在位置算出部11は、後述するワインディング判定部15から車両が山間エリアを走行しているか否かを示す情報を取得する。現在位置検出部11は、山間エリアを走行していない旨を示す情報を取得した場合、上記の算出した現在位置を表示処理部16に出力する。一方、現在位置検出部11は、山間エリアを走行している旨を示す情報を取得した場合には、GPS受信装置7から2次元で測位した現在位置を含むGPSデータを取得して、そのGPSデータを利用して現在位置を算出する。
【0033】
また、現在位置検出部11は、現在位置を算出した場合、所定の割り合(例えば10回に1度)で、マップマッチ処理部14にマップマッチグ処理を行なわせ、マップマッチング処理された現在位置を取得する。そして、現在位置検出部11は、マップマッチングされた現在位置を表示処理部16に出力する。
【0034】
データ読出部12は、ディスプレイ2に表示が要求される領域や、経路探索のために要求される領域にある地図データを、地図データ記憶装置3から読み出す。
【0035】
交差点密度算出部13は、現在位置から所定の範囲内に含まれる交差点数を算出する。具体的には、交差点密度算出部13は、現在位置検出部11から現在位置を示すデータを取得する。交差点密度算出部13は、データ読出部12を介して、地図データ記憶装置3から現在位置から所定範囲内(例えば数100m以内)に位置するリンクデータを読み出す。そして、交差点密度算出部13は、読み出したリンクデータに含まれるノードの中から、交差点ノードを算出することで所定範囲内に含まれる交差点数を求める。
【0036】
マップマッチ処理部14は、データ読出部12が読み込んだ現在地周辺の地図データと、現在位置検出部11が検出する現時位置を所定の間隔で合わせ込むマップマッチングを従来技術により行なう。
【0037】
表示処理部16は、現在位置算出部11から現在位置を表すデータを取得する。表示処理部16は、上記取得したデータから地図上に現在位置を示すマークを表す画像データを生成する。表示処理部16は、生成した画像データをディスプレイ2の画面に表示する。なお、表示処理部16は、設定部10が3次元地図表示の設定を受付けている場合、地図データ記憶装置3から3次元の鳥瞰図を読み出す。そして、表示処理部16は、3次元の鳥瞰図に現在位置を示すマークを表した画像データを生成して、該生成した画像データをディスプレイ2の画面に表示する。
【0038】
ワインディング判定部15は、走行している道路がワインディング道路であるか否かの判定を行う。具体的には、ワインディング判定部15は、旋回センサ8が出力する車両が旋回した旨を示すデータを受信し、所定距離における旋回数を算出する。そして、ワインディング判定部15は、所定距離(例えば1000m)における旋回数である旋回頻度を利用して、走行予定の道路がワインディング道路であるか否かを判定する。なお、ワンディング判定部15が行なう、ワインディング道路であるか否かの判定処理については、後段で詳細に説明する。
【0039】
エリア判定部17は、車両の走行している道路が山間エリアの道路であるか否かを推定する。具体的には、エリア判定部17は、交差点密度算出部13が算出した交差点数が所定数以下であって、かつワインディング判定部15が、車両の走行している道路が「ワインディング道路」であると判定した場合、走行している道路が山間エリアの道路であると推定する。そして、エリア判定部17は、車両が走行している道路が山間エリアの道路であるか否かを示す情報を現在地位算出部11に出力する。なお、エリア判定部17が行なう処理については、後段で詳細に説明する。
【0040】
続いて、演算処理部1のハードウェア構成を説明する。図3は、演算処理部1のハードウェア構成を示す図である。
【0041】
図示するように、演算処理部1は、CPU(中央演算処理装置)21と、CPU21が実行するプログラムやデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)22と、上記各部(設定部10、現在位置検出部11、データ読出部12、交差点密度算出部13、マップマッチ処理部14、ワインディング判定部15、表示処理部16、およびエリア判定部17)の機能を実行するためのプログラムが予め記憶されているROM(Read Only Memory)23と、メモリ間およびメモリと各デバイスとの間のデータを転送するDMA(Direct Memory Access)24と、グラフィック描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ25と、グラフィックスイメージデータを蓄えるVRAM(Video Random Access Memory)26と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット27と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器28と、シリアル信号をバスに同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)29と、パラレル信号をバスに同期させてバス上に載せるPIO(Parallel Input/Output)30と、パルス信号を積分するカウンタ31と、を有する。
【0042】
そして、上記各部(設定部10、現在位置検出部11、データ読出部12、交差点密度算出部13、マップマッチ処理部14、ワインディング判定部15、表示処理部16、エリア判定部17)の機能は、CPU21が、ROM23に記憶されている上記各部が有する機能を実行するためのプログラを、RAM22にロードし、実行することにより実現される。
【0043】
続いて、ワインディング判定部15が行なう、走行している道路がワインディング道路であるか否かを判定する処理について説明する。ワインディング判定部15は、所定距離における旋回数(旋回頻度)を算出するために用いる、旋回登録TB100を有する。なお、以下において、上記の所定距離が「1000m」に設定されている場合を例にして説明する。
【0044】
図4は、ワインディング判定部15が有する、旋回登録TB100を模擬的に示した図である。図示するように、旋回登録TB100は、有効距離を格納するエントリ101を有する。
【0045】
ワインディング判定部15は、旋回センサ8が出力する車両が旋回した旨を示すデータを受信する毎に、旋回登録TB100のエントリ101に有効距離の初期値である所定距離(「1000m」)を格納する。
【0046】
ワインディング判定部15は、車輪速センサ6から走行距離を示すデータを取得し、所定の間隔で、エントリ101に格納されている有効距離から走行距離を減算する。ワインディング判定部15は、上記の減算の結果、エントリ101に格納されている有効距離が「0」以下に減算された場合、その有効距離を削除する。
【0047】
なお、本実施形態では、旋回登録TB100に格納された有効距離を減算する所定の間隔について、特に限定しない。例えば、ワインディング判定部15は、旋回登録TB100に、新たに有効距離を格納した際、エントリ101に既に格納されている有効距離を減算するようにしてもよい。また、例えば、ワインディング判定部15は、車両が所定距離(例えば「20m」)を走行する毎に、エントリ101に既に格納されている有効距離を減算するようにしてもよい。
【0048】
図示する例では、旋回登録TB100のエントリ101に、「50m」、「600m」、および「900m」が格納されている。これは、車両が旋回を「3回」していることを示し、それぞれの旋回の後、車両が「950m」、「400m」、および「100m」の距離を走行したことを示している。
【0049】
また、ワインディング判定部15は、走行している道路が「ワインディング道路」であるか否かを管理するためのワインディングフラグ(wdf)を有している。ワインディング判定部15は、所定距離である「1000m」を走行する毎に、旋回登録TB100のエントリ101に格納されたデータの登録数(旋回頻度)を数えて、その登録数(旋回頻度)が所定数以上の場合に走行している道路が「ワインディング道路」であると判断して、ワインディングフラグ(wdf)を「1」に設定する。一方、ワインディング判定部15は、登録数が所定数より少ない場合に走行している道路が「ワインディング道路」ではないと判断して、ワインディングフラグ(wdf)を「0」に設定する。
【0050】
続いて、本実施形態のナビゲーション装置が行なう、地図上に現在位置を表示するための処理のフローについて図5および図6を用いて説明する。
【0051】
図5は、本実施形態のGPS受信装置7の現在位置測定機能および現在位置出力機能を説明するための概念図である。図6は、本実施形態のナビゲーション装置が行なう、地図上に現在位置を表示するための処理のフローを説明するための図である。
【0052】
最初に本実施形態のGPS受信装置7の機能を図5を用いて説明する。図5に示すように、GPS受信装置7は、位置測位部70およびGPSデータ出力部71を有する。
【0053】
位置測位部70は、GPS衛星が送信する電波を受信して、受信した電波を用いて現在位置を測位する。そして、位置測位部70は、測位した現在位置と、速度および進行方向(方位)とを含むGPSデータをGPSデータ出力部71に出力する。
【0054】
具体的には、位置測位部70は、4個以上のGPS衛星からの電波を受信した場合、受信した電波(3次元測位データ700)を用いて「緯度、経度、高度」の3次元現在位置710を測位する。ここで、位置測位部70は、所定回分の測位した3次元現在位置710を保持することとする。そして、位置測位部70は、3次元で測位した現在位置と、速度および進行方向(方位)とを含むGPSデータをGPSデータ出力部71の選択SW72の入力端子Aに出力する。
【0055】
一方、位置測位部70は、3個のGPS衛星からの電波(2次元測位データ730)しか受信できなかった場合、受信した電波(2次元測位データ730)を用いて「緯度、経度」の2次元現在位置740を測位する。また、位置測定部70は、2次元測位データ730と、保持している3次元現在位置710とに含まれる「高度(高さ)」を示す情報とを用いて、「緯度、経度、高度」の3次元の現在位置を示す擬似3次元データ750を算出する。位置測定部70は、擬似3次元データ750と、速度および進行方向(方位)とを含むGPSデータをGPSデータ出力部71の選択SW72の入力端子Bに出力する。また、位置測位部70は、測位した2次元現在位置740と、速度および進行方向(方位)とを含むGPSデータをGPSデータ出力部71の選択SW72の入力端子Cに出力する。
【0056】
GPSデータ出力部71は、選択SW72に入力されたGPSデータを演算処理部1に出力する。具体的には、GPSデータ出力部71は、通常、入力端子AおよびBのいずれかで受付けたGPSデータ(S200)を演算処理部1に出力するように構成されている。なお、入力端子AおよびBの選択は、GPSデータ出力部71により自動的に行なわれる。また、GPSデータ出力部71は、後述するが、演算処理部1からの2次元データ送信要求(S300)を受付けた場合、入力端子Cで受付けた2次元現在位置740が含まれるGPSデータを演算処理部1に出力するように構成されている。すなわち、GPSデータ出力部71は、通常、「緯度、経度、高度」の3次元の現在位置が含まれるGPSデータを出力し、演算処理部1から2次元データ送信要求(S300)を受けた場合、「緯度、経度」の2次元の現在位置が含まれるGPSデータを出力する。
【0057】
次に、本実施形態の地図上に現在位置を表示するための処理について説明する。
【0058】
図6に示すように、最初に、ナビゲーション装置の現在地検出部11は、GPS受信装置7が出力するGPSデータの入力を受付ける。現在位置算出部11は、受付けたGPSデータに含まれる現在位置を示すデータを交差点密度算出部13に出力してS2の処理に進む(S1)。なお、S1で受付けるGPSデータとは、図5で説明した、3次元現在位置710或いは擬似3次元データ750のいずれかが含まれるデータである。
【0059】
S2において、交差点密度算出部13は、現在位置検出部11が出力した現在位置を示すデータを受信する。交差点密度算出部13は、受信した現在位置を示すデータを用いて、現在位置周辺から所定範囲内(例えば100m以内)に位置するリンクデータを地図データ記憶装置3から読み出す。交差点密度算出部13は、読み出したリンクデータに含まれる交差点ノードの数を計算して、所定範囲内の交差点数(INTSEC)を算出する。そして、交差点密度算出部13は、算出した交差点数(INTSEC)を示すデータをエリア判定部17に出力する。
【0060】
エリア判定部17は、S2において交差点密度算出部13が出力した交差点数(INTSEC)を受信する。また、エリア判定部17は、ワインディング判定部15から、上述したワインディングフラグ(wdf)に設定されているデータを取得する(S3)。
【0061】
続いて、エリア判定部17は、走行している道路が山間エリアの道路であるか否かの推定を行う。エリア判定部17は、山間エリアの道路であると推定した場合、その旨を示すデータを現在位置算出部11に出力してS5の処理に進む。一方、エリア判定部17は、走行している道路が山間エリアの道路ではないと推定した場合、その旨を示すデータを現在位置算出部11に出力してS7の処理に進む(S4)。
【0062】
具体的には、エリア判定部17は、S2で算出した交差点数(INTSEC)が所定数以下であって、かつS3で取得したワインディングフラグ(wdf)に設定されているデータが「ワインディング道路」を示すデータの場合(wdfが「1」である場合)、走行している道路が山間エリアの道路であると推定する。一方、エリア判定部17は、上記以外の場合、走行している道路は山間エリアの道路でなないと推定する。すなわち、エリア判定部17は、S3で取得した「ワインディング道路」を示すデータに関係なく、交差点数(INTSEC)が所定数より多い場合、走行している道路は山間エリアの道路ではなないと推定する。また、エリア判定部17は、S2で算出した交差点数(INTSEC)に関係なく、ワインディングフラグ(wdf)に設定されているデータが「ワインディング道路」ではない旨を示すデータの場合(「0」である場合)に走行している道路は山間エリアの道路でなないと推定する。
【0063】
S5では、現在位置算出部11は、GPS受信装置7に2次元の現在位置の送信を要求(2次元データ送信要求)して、S6の処理に進む。なお、上述したように、GPS受信装置7は、2次元データ送信要求を受付けた場合、2次元現在位置740が含まれるGPSデータを出力する。
【0064】
S6では、現在位置算出部11は、GPS受信装置7が出力した2次元現在位置740が含まれるGPSデータの入力を受付ける。
【0065】
続いて、現在位置算出部11は、S6で受付けた2次元現在位置740が含まれるGPSデータを用いて地図上の現在位置を算出する。また、現在位置算出部11は、所定の割り合(例えば10回に1度)で、マップマッチ処理部14にマップマッチグ処理を行なわせる。現在位置算出部11は、マップマッチ処理部14からマップマッチング処理が施された現在位置を取得する。現在位置算出部11は、算出した現在位置或いはマップマッチ処理が施された現在位置を表示処理部11に出力して、S9の処理に進む(S8)。なお、本実施形態では、所定の割り合(例えば10回に1度)で、マップマッチ処理部14にマップマッチグ処理を行なわせるようにしたが、現在位置を算出するたびにマップマッチング処理を行なわせるようにしてもかまわない。
【0066】
続いて、S4において、走行している道路が山間エリアの道路ではないと推定した場合に進むS7の処理を説明する。
【0067】
S7では、現在位置検出部11は、S1で受付けた3次元現在位置710或いは擬似3次元現在位置750のいずれかが含まれるGPSデータを用いて地図上の現在位置を算出する。また、上述したS8と同様で、所定の割り合で、マップマッチ処理部14にマップマッチグ処理を行なわせる。現在位置算出部11は、マップマッチ処理部14からマップマッチング処理された現在位置を取得する。現在位置算出部11は、算出した現在位置或いはマップマッチ処理部14から取得したマップマッチング処理された現在位置を表示処理部11に出力して、S9の処理に進む。
【0068】
S9では、表示処理部16は、現在位置算出部11が出力した現在位置の入力を受付ける。表示処理部16は、上記受付けたデータを用いて、地図上に現在位置を表示する画像データを生成する。表示処理部16は、生成した画像データをディスプレイ2に表示する。
【0069】
このように、本実施形態によれば、S2〜S4において、山間エリアの道路であるか否かを、地図データを用いて算出した交差点数、および自動車の旋回頻度により推定するようにしている。そのため、本実施形態では、山間エリアの道路であるか否かを推定するための高度(標高)情報を地図データに保持させる必要がなく、低コストで山間エリアを走行しているか否かを判断することができる。
【0070】
また、本実施形態では、山間エリアの道路を走行していると推定した場合に、GPS受信装置7から2次元の現在位置を取得するようにしている。これは、高低差の大きい道路を走行している際、3個のGPS衛星からの電波と、過去に測位した「高度」とを用いて算出した擬似3次元データ750の誤差が大きくなるという問題を考慮したためである。すなわち、本実施形態では、電波状態が悪いため2次元測位データ730しか受信できないエリアであって、かつ高低差が大きいエリアを走行する場合、擬似3次元データ750より誤差が少ない2次元現在位置740を用いるようにしている。そのため、本実施形態によれば、ナビゲーション装置において、山間エリアを走行している際の現在位置を正確に地図上に表示させることができる。
【0071】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記の説明では、山間エリアの道路であるか否かを推定する基準として、所定範囲内の交差点数と旋回頻度を利用する場合を例に説明したが特にこれに限定するものではない。例えば、所定範囲内の交差点数に代えて、所定距離内のリンク数より求める道路密度を利用するようにしてもよい。
【0072】
この場合、現在位置から所定範囲内の道路密度が所定の密度より大きければ、現在走行している道路は、山間エリアの道路ではないと推定する。一方、現在位置から所定範囲内の道路密度が所定密度より小さい場合であって、かつ旋回頻度が所定頻度より大きければ走行している道路が山間エリアの道路であると推定する。
【0073】
また、本実施形態では、現在位置を算出する方法として、GPS受信装置7が出力するGPSデータを利用する場合を説明したが、GPS受信装置7と共にジャイロ等の各種センサを利用して現在位置を算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態が適用されたナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態が適用された、ナビゲーション装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態のナビゲーション装置のハードウェア構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態の旋回登録TB100を模擬的に示した図である
【図5】本発明の実施形態のGPS受信装置7の現在位置測定機能および現在位置出力機能を説明するための概念図である。
【図6】本発明の実施形態のナビゲーション装置が行なう、地図上に現在位置を表示するための処理のフローを説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
1…演算処理部、2…ディスプレイ、3…地図データ記憶装置、4…音声入出力装置、5…入力装置、6…車輪速センサ、7…GPS受信装置、8…旋回センサ、10…設定部、11…現在位置検出部、12…データ読込部、13…交差点密度算出部、14…マップマッチ処理部、15…ワインディング判定部、16…表示処理部、17…エリア判定部、21…CPU、22…RAM、23…ROM、24…DMA、25…描画コントローラ、26…VRAM、27…カラーパレット、28…A/D変換器、29…SCI、30…PIO、31…カウンタ、位置測位部70、GPSデータ出力部71、100…旋回登録TB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS(Global Positioning System)受信装置が測位した現在位置を利用して地図データ上に現在位置を表示するナビゲーション装置が行う現在位置表示方法であって、
前記GPS受信装置は、3次元の現在位置データおよび2次元の現在位置データを出力可能に構成されていて、
前記ナビゲーション装置は、
前記GPS受信装置から3次元の現在位置データを取得するステップと、
車両の走行距離を測定するステップと、
車両の旋回を検知し、前記測定した走行距離を用いて所定距離における旋回頻度を算出するステップと、
前記取得した3次元の現在位置から所定範囲内の交差点数を前記地図データを利用して算出するステップと、
前記交差点数および前記旋回頻度から車両が走行している道路が山間エリアの道路であるか否かを推定するステップと、
前記走行している道路が山間エリアの道路ではないと推定した場合、前記取得した3次元の現在位置を用いて地図上に現在位置を表示するステップと、
前記走行している道路が山間エリアの道路であると推定した場合、前記GPS受信装置から2次元の現在位置データを取得して、前記取得した2次元の現在位置データを用いて地図上に現在位置を表示するステップと、を行なうこと
を特徴とする現在位置表示方法。
【請求項2】
請求項1に記載の現在位置表示方法であって、
前記推定するステップは、
前記算出した交差点数が所定の数より少なく、かつ前記旋回頻度が所定頻度より大きい場合に前記走行している道路が山間エリアの道路であると推定すること
を特徴とするナビゲーション装置の現在位置表示方法。
【請求項3】
GPS(Global Positioning System)受信装置が測位した現在位置を利用して地図データ上に現在位置を表示するナビゲーション装置であって、
前記GPS受信装置は、3次元の現在位置データおよび2次元の現在位置データを出力可能に構成されていて、
前記GPS受信装置から3次元の現在位置データを取得する手段と、
車両の走行距離を測定する手段と、
車両の旋回を検知し、前記測定した走行距離を用いて所定距離における旋回頻度を算出する手段と、
前記取得した3次元の現在位置から所定範囲内の交差点数を前記地図データを利用して算出する手段と、
前記交差点数および前記旋回頻度から車両が走行している道路が山間エリアの道路であるか否かを推定する手段と、
前記走行している道路が山間エリアの道路ではないと推定した場合、前記取得した3次元の現在位置を用いて地図上に現在位置を表示する手段と、
前記走行している道路が山間エリアの道路であると推定した場合、前記GPS受信装置から2次元の現在位置データを取得して、前記取得した2次元の現在位置データを用いて地図上に現在位置を表示する手段と、を有すること
を特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−194719(P2006−194719A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6053(P2005−6053)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】