球体の球径寸法測定方法及びその測定装置
【課題】コヒーレント光を用いて、被測定球体の球径を高精度で、且つ簡便な方法で短時間に測定できる球体の球径寸法測定方法及びその測定装置を提供する。
【解決手段】被測定球体1にコヒーレント光を照射することによって該被測定球体1の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部で構成されるアラゴスポットの前記輝点部を用いて、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は該被測定球体1の球径に応じて変位する前記アラゴスポットの輝点部の移動量から、該被測定球体1の球径を測定することを特徴とする。被測定球体1の球径は、幾何的手段、又は電気信号に変換されたアラゴスポットの輝点部の位置又はアラゴスポットの輝点部の移動量を用いてあらかじめ測定して得られたアラゴスポットの輝点部の移動量と球体1の球径との関係式から換算して求められる。
【解決手段】被測定球体1にコヒーレント光を照射することによって該被測定球体1の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部で構成されるアラゴスポットの前記輝点部を用いて、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は該被測定球体1の球径に応じて変位する前記アラゴスポットの輝点部の移動量から、該被測定球体1の球径を測定することを特徴とする。被測定球体1の球径は、幾何的手段、又は電気信号に変換されたアラゴスポットの輝点部の位置又はアラゴスポットの輝点部の移動量を用いてあらかじめ測定して得られたアラゴスポットの輝点部の移動量と球体1の球径との関係式から換算して求められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定球体の球径を高精度で、且つ簡便に測定する球径寸法測定方法及びその測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
球体として、例えば、ボールベアリングの球径は工業上高い製品精度が要求されており、ミクロン以下の精度で高精度に計測されなければならない。さらに、前記ボールベアリングの大量生産現場では、良品選別や品質管理等のために、多数のベアリングについてその球径を高精度で測定するだけではなく、短時間でかつ簡便に測定、解析できる球径寸法測定方法の確立とその測定装置が求められている。
【0003】
従来の球径寸法測定方法として、被測定球体を経由するレーザ光を受光して受光位置を電気信号に変換した後、その電気信号に基づいて被測定球体の最大径および最小径ならびに上記被測定球体の平均球径を求めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この測定方法では、案内溝中にて被測定球体を保持して回動させ前記被測定球体の少なくとも2本の特定の軸線をその案内方向に順次一致させ、被測定球体をその転動を規制しながら上記案内方向に沿って相対的に移動させる。そして、その移動中に被測定球体の移動方向に直角に横切る切断面に沿って平行なレーザを間欠的に走査する。
【0004】
また、別の球径寸法測定方法として、球状物を載せる設置台に、球状物の底部を浮かした状態で位置決めする窪み部を設けると共に、窪み部の表面形状に球状物が接する内接円の平面に対して直交し且つ内接円の中心点を通過する基準線上に、非接触式距離測定手段を設ける方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。前記の特許文献2において、球状物の外径寸法の算出は、窪み部上に球状物を載せ、距離測定手段によって、距離測定手段から球状物の頂点までの距離を測定し、その距離と、距離測定手段から内接円の平面までの距離と、内接円の半径とから、球状物の外径寸法を算出する演算手段を備えた測定装置を用いて行われる。
【0005】
さらに、連続生産された球状体において直径の最大値と最小値との差である直径不同の評価および直径不同の規格値に基づく選別作業を、生産速度に合わせてオンラインで迅速に精度よくできるようにしたものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
一方、被測定球体の球径寸法測定方法に関するものではないが、非特許文献1には、被測定球体にレーザ光を照射したときに前記被測定球体の影中の部分に回折光の干渉の結果として生じるアラゴスポットの輝点部を用いて、前記被測定球体の中心又は中心の移動量を高精度に測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7―69146号公報(第2頁右欄、図1、図2)
【特許文献2】特開2000−97687号公報(段落0005、図1、図2)
【特許文献3】特開2009−128230号公報(段落0007、図1〜図3)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Saruta、R.Tsuji、「Position Measurement Method Using a Divergent Laser Beam and Arago Spot for Tracking of an Inertial Fusion Energy Target」、Jpn.J.Appl.Phys.、第47巻、第3号(2008)pp.1742−1744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の発明は、被測定球体の少なくとも2本の特定の軸線をその案内方向に順次一致させ、被測定球体をその転動を規制しながら上記案内方向に沿って相対的に移動させるため、測定工程が複雑で必ずしも高能率で測定効率がよいとは言えない。
【0010】
上記特許文献2に記載の発明は、設置台を距離測定手段と相対的に移動させながら球状物を一個一個設置台の中心に位置させる必要があり、測定効率が劣る。
【0011】
上記特許文献3に記載の発明は、球体を小容器(ターンテーブル)に載せて一定時間揺動を続けて、そこで得られる複数回の画像を撮影して、各画像について最大径及び最小径を求めるため、不便さがある。加えて、選別不良品への良品混入率が15%程度であり、選別の精度は従来より向上するものの、高精度測定の点では十分に満足できるものではなかった。
【0012】
また、上記の非特許文献1には、被測定球体の球径寸法測定方法及びその装置については具体的に記載されておらず、ボールベアリング等の球体の球径を高精度に測定するための方法として、アラゴスポットを原理的に適用できるか否かについては全く不明であった。
【0013】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を高精度で、且つ簡便な方法で短時間に測定できる球体の球径寸法測定方法及びその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する方法について、従来より高精度で、且つ短時間で簡便な測定を行うことができる方法とその測定装置を鋭意検討した結果、被測定球体の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部とで構成されるアラゴスポットに着目し、該アラゴスポットの輝点部を利用することによって上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0015】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
(1)コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する方法であって、被測定球体にコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部で構成されるアラゴスポットの前記輝点部を用いて、前記被測定球体の球径を測定する球体の球径寸法測定方法を提供する。
(2)被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体にコヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置が前記被測定球体の球径に応じて変位することを利用して、前記アラゴスポットの輝点部の移動量から前記被測定球体の球径を測定する前記(1)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(3)前記アラゴスポットの輝点部の位置の移動量を電気信号に変換して、該電気信号として変換された移動量を用いて、あらかじめ測定して得られたアラゴスポットの輝点部の移動量と球体の球径との関係式から被測定球体の球径に換算することによって、前記被測定球体の球径を測定する前記(2)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(4)前記被測定球体は板に2点で接して転動又は係止され、前記被測定球体に前記コヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置と前記コヒーレント光の焦点とを結ぶ線分と、前記被測定球体と前記板との接点から定まる2つの接平面どうしが交差する点と前記被測定球体が前記板に接する2点との間で形成される角度を二等分する半直線との交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する前記(1)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(5)前記被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体に少なくとも2方向からコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる少なくとも2個のアラゴスポットの輝点部の位置と、前記コヒーレント光の焦点とをそれぞれ結んで得られる少なくとも2以上の線分の交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する前記(1)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(6)前記アラゴスポットの輝点部の位置又は該アラゴスポットの輝点部の移動量は、前記アラゴスポットの輝点部の中心点又は該中心点の移動量として測定されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(7)前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(8)前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レンズ、反射鏡又はフィルターを介して形成されるレーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする前記(7)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(9)コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する装置であって、前記コヒーレント光の光源、前記コヒーレント光の進行方向に配置される被測定球体と、該被測定球体が接する板と、該被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットを受光する受光手段と、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量に関する該受光手段からの出力信号を用いて前記被測定球体の球径を算出する演算処理装置とを備えたことを特徴とする球体の球径寸法測定装置を提供する。
(10)前記コヒーレント光の光源は、前記被測定球体が接する板が1枚であるときは2以上であることを特徴とする前記(9)に記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(11)前記のアラゴスポットはスクリーン又は固体撮像素子を介して受光されることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(12)前記受光手段からの出力信号は、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量が電気的に変換されている信号であることを特徴とする前記(11)に記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(13)前記コヒーレント光の光源は、平行ビーム光又は発散ビーム光を発光するレーザ光源、又は前記レーザ光源の発光側に設けたレンズ、反射鏡又はフィルターを介して平行ビーム光又は発散ビーム光を形成する光源であることを特徴とする前記(9)〜(12)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(14)前記コヒーレント光の通過する領域の周囲は、外乱の侵入を阻止するためのフードで覆われていることを特徴とする前記(9)〜(13)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(15)前記被測定球体は、板に接し、且つ該被測定球体の前方又は後方が光透過板若しくは光反射板に接して転動又は係止されていることを特徴とする前記(9)〜(14)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(16)前記コヒーレント光の光路上で、且つ前記被測定球体と前記受光手段との間に、アラゴスポットの輝点部の中心部分を拡大するための対物レンズを設けることを特徴とする前記(9)〜(15)のいずれかに記載の球径寸法測定装置を提供する。
(17)前記被測定球体が接する板は、前記被測定球体と接する側に電極を設けることによって、電気抵抗又は電気容量の変化から前記被測定球体との接触状態を判定する機能を有することを特徴とする前記(9)〜(16)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コヒーレント光の照射によって被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置、又は該アラゴスポットの輝点部の移動量をミクロン以下の精度で測定して得た位置データ又は移動量データからそれぞれ球体の球径を求める方法であるために、鋼球等の球体の球径をミクロン以下の精度で計測することができ、測定精度に優れる。また、本発明において、アラゴスポットは被測定球体にコヒーレント光を照射するだけで観測できるため、光学測定系の構成が簡単であり、光学測定系を容易に設計及び設置することができる。加えて、アラゴスポットの輝点部の位置又は輝点部の移動量は電気信号として出力されるので、被測定球体の球径寸法への換算は、該電気信号を用いて演算処理されるため、球径測定時間の短縮化を図ることができる。したがって、本発明の測定方法及び測定装置は、製造ライン中や検査工程中に設置して、量産時における球体の球径寸法の測定を、高精度で、且つ連続的に行えるものとして最適であり、球径寸法の全数検査が短時間に行えるなど、鋼球等の球体の品質や生産性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による球体の球径寸法測定装置の概略を示す図である。
【図2】本発明において球体の球径寸法を幾何的に測定する方法とその原理を示す図である。
【図3】本発明において球体の球径寸法を2方向からのコヒーレント光を用いて幾何的に測定する方法とその原理を示す図である。
【図4】本発明において球体の球径寸法を2方向からのコヒーレント光を用いて測定する方法の変形例を示す図である。
【図5】本発明において球体の球径寸法をアラゴスポットの輝点部の移動量から測定する方法とその原理を示す図である。
【図6】本発明において、被測定球体を係止するための治具の例を示す概念図である。
【図7】本発明において、板に電極膜を設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図8】本発明の実施形態である、光透過板を用いて溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態である、光反射板を用いて溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図10】本発明の別の実施形態である、発散ビーム光の照射によって測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図11】本発明の別の実施形態である、光路周りにフードを設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図12】本発明の別の実施形態である、球体と受光手段との間に対物レンズを設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に本発明による球体の球径寸法測定装置の概略と、図2、図3及び図4に本発明による球体の球径寸法測定方法とその原理をそれぞれ示す。図3及び図4において、(a)は測定光学系の上面図であり、(b)はその側面図である。
【0019】
図1に示すように、被測定球体1である鋼球Bを板2と光透過板3の両方に接するように係止させる。左方からコヒーレント光を入射させ、いったんレンズ4で集光すると焦点Fで集光した後は発散ビーム光となる。このコヒーレントな発散ビーム光を鋼球B全体に照射すると、照射された部分と影の部分の境界である鋼球Bの縁から回折光が生じ、回折光が干渉しあう結果として右方に置いたスクリーン上では鋼球の影の中心付近に干渉縞と輝点部P(これらをアラゴスポットまたはポアソンスポットともいう)を生じる。ここで、板2は被測定球体1を載置するために設けるものであって、薄板、厚板、ブロック、支持台のいずれかを用いて固定して構成する。板2は、光透過性の有無には限定されないため、光透過性のものであっても良い。また、光透過板3は、図1において被測定球体1の後方(右側)に配置されているが、被測定球体1と接するようにして係止できれば、その前方(左側)に配置しても良い。スクリーンは、アラゴスポットを投影観測するための受光手段を構成する。焦点Fと鋼球Bの中心Cと輝点部Pは一直線上にある。左方からコヒーレントな平行ビーム光を鋼球B全体に照射する場合は、焦点Fは左方無限遠にあるものとみなすことができる。本発明は、鮮明なアラゴスポットを受光手段で観測するために、通常、鋼球Bを板2と光透過板3の両方に接するように係止させるが、鮮明なアラゴスポットを観測できる程度の速度で転動させても良いし、充分な光量があるコヒーレントなパルス光源を使う場合はそれ以上の速度で転動させても良い。また、本発明は、少なくとも2方向からのコヒーレント光を照射して測定を行う場合、図1に示す光透過板3を使用しない測定系を構成しても良い。
【0020】
幾何的には図1のように鋼球を板2と光透過板3の両者に接触させる時、仮に板と光透過板の両者が平面であってそれらが直角に交わる場合、未知の球径の鋼球であっても鋼球の中心は図2に示すように、板2と光透過板3が交差する点Oから直角の半分の角度である45度をなす半直線OA上に存在する。つまり、鋼球を2点で接触させたことで鋼球の中心が存在可能な領域を制限したことになる。ゆえに、アラゴスポットを観測することで、アラゴスポットの輝点部P1又はP2と焦点Fを結ぶ線分F−P1又はF−P2が得られ、これと半直線OAとの交点が鋼球の中心C1又はC2の位置として求められ、中心C1又はC2から板2の平面までの距離r1又はr2、の2倍が鋼球の球径として求められる。ここで、コヒーレント光の焦点F、板2、光透過板3、及びスクリーンの空間的配置をあらかじめ精確に定めることができれば、前記線分と半直線OAの交点を幾何的に計算することによって球体の球径を求めることができる。また、図2には、直角に交わる板を用いて測定を行う例を示したが、この板は被測定球体を2点で係止できる形状であれば良く、直角以外の角度のV字状又はU字状のものも使用できる。V字状又はU字状の形状を有する板を使用する場合でも、鋼球と板2及び光透過板3との接点から定まる2つの接平面どうしが交差する点と鋼球が前記板に接する2点との間で形成される角度を二等分する半直線、すなわち図2に示すOAに相当する半直線を引くことによって、図2に示す場合と同様な方法で、幾何的に鋼球の球径を測定することができる。板が交差する点と鋼球が前記板に接する2点との間で形成される角度は、鋼球の保持性及び測定時の作業性を考慮して、30〜150度が好ましく、さらに45〜120度がより好ましい。
【0021】
未知の球径の鋼球が1点で板2だけと接している場合は、それだけでは鋼球の中心が存在可能な領域を制限することはできないが、図3の(a)と(b)に示すように、例えば2方向からコヒーレント光を被測定球体1である鋼球に照射してアラゴスポットを2個観測することで、F1−P1の線分とF2−P2の線分の交点が鋼球の中心Cの位置として幾何的に求められ、中心Cから板2との接点までの距離の2倍が鋼球の球径として求められる。図3に示す測定方法は、振動などが原因で被測定球体である鋼球を光透過板に接触させて係止させることが困難な場合に適用することができる。
【0022】
図3に示す測定方法の変形例を図4の(a)と(b)に示す。図4に示すように、測定の度に鋼球を設置する位置が異なった場合でも、中心C1を有する鋼球と中心C2を有する鋼球について、それぞれ2方向からコヒーレント光を鋼球に照射してアラゴスポットを2個観測することによって、それぞれの場合の鋼球の半径を個別に求めることができる。中心C1を有する鋼球はF1−P11の線分とF2−P21の線分との交点を用いて半径r1を求めることができ、また、中心C2を有する鋼球はF1−P12の線分とF2−P22の線分との交点を用いて半径r2を求めることができる。もし複数個の鋼球の影が重なって見えなければ、複数個の鋼球の半径を同時に求めることもできる。そのため、多数個の被測定球体について球径を迅速に測定したい場合に、被測定球体を設置する際のわずらわしさが低減されて使い勝手が良くなる。
【0023】
図3及び図4には、2方向からコヒーレント光を照射する例を示したが、本発明では3方向以上からのコヒーレント光を照射する方法を採用しても良い。コヒーレント光の数が多くなって、光学系がやや複雑にはなるものの、3つ以上の線分の交点を用いて球径測定を行うため、測定値のバラツキ等を詳細に把握することができ、より高精度の球径測定を行うことができる。
【0024】
図5は、アラゴスポットの輝点部の位置が被測定球体の球径に応じて変位することを利用して、アラゴスポットの輝点部の移動量から被測定球体の球径を測定する方法とその原理を示す図である。図5において、アラゴスポットの輝点部P2は、基準点となるアラゴスポットの輝点部P1から(P2−P1)だけ移動した場所にある。したがって、アラゴスポットの輝点部の位置を測定することと、基準点を決めてアラゴスポットの輝点部の基準点からの移動量を測定することは等価である。ここで、図5に示すように、鋼球(実線)の代わりに未知の球径の鋼球(破線)を板2と光透過板3の両方に接するように置いた場合を考える。もし鋼球の球径が違うなら、鋼球の中心位置C1とC2は一致しない。ゆえに直線F−C1の延長上にあるアラゴスポットの輝点部P1の位置と、直線F−C2の延長上にあるアラゴスポットの輝点部P2の位置は一致しない。コヒーレント光の焦点F、板2、光透過板3、及びスクリーンの空間的配置を定めれば、輝点部の位置は鋼球の球径の関数となるので、輝点部の位置又は輝点部の移動量を測ることで逆に鋼球の球径を求めることが出来る。前記関数の逆関数を使うと、鋼球の球径は、スクリーン上に投影されたアラゴスポットの輝点部の位置P2又は輝点部の移動量(P2−P1)が電気的に変換されている信号を演算処理して被測定球体の球径に数値的に換算することで求められる。上記の方法は、球体の球径を幾何的に求めることにも対応している。すなわち、図2において、球径の異なる鋼球のそれぞれの中心点であるC1とC2は半直線OA上にあるため、アラゴスポットの輝点部の位置がP1からP2へ変位するときの移動量(P2−P1)は、幾何的に半直線OA上の中心点の移動量(C2−C1)と対応しているので、鋼球の中心点C2を求めれば球径が求められる。
【0025】
図5に示す方法において、既知の球径を有する鋼球を用いて、アラゴスポットの輝点部の位置の移動量と鋼球の球径との関係の実験式をあらかじめ求めておいて、未知の球径の被測定球体について測定したアラゴスポットの輝点部の移動量を前記の実験式に代入して被測定球体の球径を求める方法が、本発明においては好ましい。上記の方法は、ビーム光の焦点、板、光透過板、及びスクリーンの空間的配置をあらかじめ精確に定める必要はなく、また該空間的配置の条件下での輝点の位置と鋼球の球径との関係式(関数と逆関数)を理論的にあらかじめ求めておく必要もない。鋼球等の球体を量産する現場等でその球径を測定する場合に、測定光学系の空間的配置をミクロンオーダーで精確に定めることは熟練を有し、測定系の調整に手間取る。また、長期間にわたって、測定光学系を構成する各要素どうしの相対的な空間的配置を不変にすることは実質的に困難であり、測定誤差が時間とともに大きくなるという問題が発生しやすい。したがって、前記の実験式を使う方法は、球径の高精度測定を簡便で、かつ迅速に行うことができるだけではなく、その適用範囲が研究用、検査用及び量産管理用等と広くなるため、有用性が極めて高い。図5に示す方法によって測定されたアラゴスポットの輝点部の移動量から球体の球径寸法を算出するための手順は、後ほど説明する。
【0026】
以上のように、本発明は、被測定球体のアラゴスポットの輝点部の位置又は基準点からの輝点部の移動量によって被測定球体の球径を求めるものであり、被測定球体はその接触する場所が制限されること、すなわち被測定球体の少なくとも1点は板と接することに特徴がある。図2及び図5に示すように被測定球体が後方の光透過板3によって係止されると被測定球体は板2と光透過板3の2点で接する。この場合、被測定球体の中心は、それぞれの接触点からの垂線の交点にあり、それはアラゴスポットの輝点部とコヒーレント光の焦点を結んだ線分上にある。また、図3及び図4に示すように、被測定球体が後方の光透過板によって係止されない場合は、被測定球体は板2と1点で接している。この場合、被測定球体の中心は、少なくとも2方向からのコヒーレント光の照射によって生じるアラゴスポットの輝点部とコヒーレント光の焦点とを結んで得られる2以上の線分の交点にあり、それは接点からの垂線上にある。
【0027】
本発明において、被測定球体に照射する光としては、回折光の干渉による鮮明なアラゴスポットを得るためにコヒーレントな光を用いる。コヒーレントな光としては、光の集束性及び取扱い性の点からレーザ光が好適であり、光源としては可視域レーザに限らず、紫外域レーザ又は赤外域のレーザ等も使用することができる。また、鮮明なアラゴスポットを得ることができる充分な光量があるならば、連続発振のレーザ光のみならずパルス発振のレーザ光も使用することができる。しかし、本発明では、コヒーレントな光はレーザ光には限定されないで、例えば、ナトリウムのD線や、ハロゲンランプ等の光源から出射される幅広い波長域を有する光をモノクロメーター等によって所定の波長域に絞ったものをコヒーレントな光として使用しても良い。
【0028】
このように、本発明における球体の球径寸法測定装置は、コヒーレント光の光源と、前記コヒーレント光の進行方法に配置される被測定球体と、該被測定球体が接する板と、該被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットを受光する手段と、該アラゴスポットの輝点部の位置又は輝点部の移動量に関する該受光手段からの出力信号を用いて被測定球体の球径を算出する演算処理装置とを備えることを基本構成とする。
【0029】
また、本発明において使用するコヒーレント光としては、図1に示すようなレンズ4によって集光された後に拡がる発散ビーム光だけではなく、平行ビーム光も使用することもできる。しかし、発散ビーム光は、平行ビーム光よりも被測定球体の球径の変化量に対して前記アラゴスポットの輝点部の移動量を大きくできるため、被測定球体の球径の測定精度が向上する。そのため、より高精度の球径測定を行うには発散ビーム光を使用するのが好ましい。
【0030】
本発明において、コヒーレントな平行ビーム又は発散ビーム光は、レーザ光源の発光側に設けたレンズ、反射鏡又はフィルターを介して形成する光源であっても良い。平行ビーム光は、例えばレンズを用いてビーム径を広げて使用することができる。発散ビーム光は、例えば図1に示すように、コヒーレント光源と被測定球体の間に設けられ、コヒーレント光源から被測定球体へ向けて出射される光線上に存在するレンズ4によって形成する。また、レンズ4の代わりに、コヒーレント光が発散するような角度に反射鏡を設置して発散レーザ光を形成する方法を採用しても良い。それ以外の方法として、空間フィルターを用いて発散ビーム光を得ることもできる。これらの場合において、コヒーレント光の光量を調整するために減光フィルターを併用しても良い。本発明では、鮮明なアラゴスポットを得るために、レンズを介して形成される発散ビーム光を使用することが好ましい。
【0031】
次に、図5に示す測定系において、アラゴスポットの輝点部の移動量から球体の球径寸法を測定するための手順を説明する。
【0032】
上記で説明したように、板2と光透過板3とで構成される治具に鋼球を係止すると、アラゴスポットの輝点部の位置は鋼球の球径の関数となる。そこで、もし鋼球(実線)の球径D1とアラゴスポットの輝点部の位置P1が既知とすると、被測定球体である球径D2(未知)の鋼球(破線)がつくるアラゴスポットの輝点部の位置P2を測定するとアラゴスポットの輝点部の移動量(P2−P1)は鋼球(破線)と鋼球(実線)の球径の差(D2−D1)を反映する物理量になる。そのため、別の方法で精密に測定された球径の異なる複数個の参照用鋼球を用いて、それらの鋼球の球径の差に応じて変位するアラゴスポットの輝点部の移動量をミクロン以下の精度で測定することによって、あらかじめアラゴスポットの輝点部の移動量と鋼球の球径との関係の実験式を求めておく。本発明では、球体が係止するところの板と光透過板が平板である場合、スクリーン上でのアラゴスポットの輝点部の移動量と鋼球の球径との関係の実験式は一次関数式となる。
【0033】
その後、被測定球体である鋼球(破線)を上記と同じ板2と光透過板3で係止し、アラゴスポットを観測し、該アラゴスポットの輝点部の位置P2を測定する。図5において、被測定球体である鋼球が球の中心位置C1を有する参照用鋼球よりも大きい場合は、アラゴスポットの輝点部の移動量(P2−P1)は便宜的に正となり、逆に小さい場合は、(P2−P1)は負となる。そして、あらかじめ校正曲線として求めていた、移動量と鋼球の球径との関係の実験式を利用することによって、被測定球体のアラゴスポットの輝点部の移動量(P2−P1)から被測定球体の球径を求める。本発明において、球の中心位置C1を有する参照用鋼球の球径は、1〜100mmの範囲にあるものであれば特に限定されないが、被測定球体の球径に近い値を有する参照用鋼球を用いて校正曲線を作成する方が、移動量(P2−P1)の値が大きくならず、アラゴスポットを検知する受光部分の大きさを小さくでき、測定系がコンパクトにできることから好ましい。また、移動量(P2−P1)を小さくすると、位置P2におけるアラゴスポットの画像歪みが抑えられ、アラゴスポットの輝点部の移動量の測定誤差を小さくできるという効果がある。
【0034】
本発明において、移動量を測定するときのアラゴスポットの輝点部の位置の定義としては、該輝点部内の任意の場所を設定することができるが、最大の光強度の位置、光強度が一定閾値以上の領域の重心、又は該領域内を光強度の関数で重みづけをした場合の重心、のいずれかを輝点部の中心点と定義して、それを輝点部の位置とするのが測定精度を高めることができるため好ましい。このように定義される中心点は、いずれも観測されるアラゴスポットの輝点部の広がりや光強度分布から正確に、且つ容易に求めることができることからも輝点部の位置の定義として好適である。
【0035】
本発明において、受光手段として使用されるスクリーン上に投影されたアラゴスポットの輝点部の位置又は輝点部の移動量は、計算機又は演算処理装置による球径算出を迅速に行うためには、電気信号に変換される必要がある。輝点部の位置又は輝点部の移動量を電気信号に変換する際には、スクリーン上に投影されたアラゴスポットを、スクリーン自体に光−電気変換可能な受光素子を使い、そこから出力される電気信号を演算処理するのが好ましい。また、処理時間はかかるものの、スクリーン上に投影されたアラゴスポットをカメラ等で写して、フィルム上でのアラゴスポットの輝点部の位置を、電気信号に変換してもよい。本発明は、球体の球径測定を短時間で高精度に行うことを特徴としており、スクリーンを使用しないで、直接、固体撮像素子を用いてアラゴスポットを計測し、該素子より出力される電気信号に演算処理を行い、輝点部の位置又は輝点部の移動量を表す電気信号に変換する方法が好適である。
【0036】
前記の固体撮像素子による受光手段では、アラゴスポットの光強度分布が撮像面上の2次元画像データ(1次元イメージセンサの場合は1次元画像データ)として測定され、撮像面上での位置は、固体撮像素子のピクセル座標と一次関数式で関係づけられる。この固体撮像素子で得られる2次元画像データは位置と光強度に関して量子化されたものであり、アラゴスポットの輝点部の位置を求めるために、前記固体撮像素子の画像データは電気信号として画像処理装置に転送される。画像処理装置の内部では、最大の光強度の位置、光強度が一定閾値以上の領域の重心および該領域内を光強度の関数で重みづけをした場合の重心、を求める演算処理を行うことができる。すなわち、前記固体撮像素子から出力される前記電気信号は、最大の光強度の位置、光強度が一定閾値以上の領域の重心及び該領域内を光強度の関数で重みづけをした場合の重心、が電気的に変換されている信号とみなすことができる。画像データにノイズがある場合は、前記の演算処理を行う前に画像データの平滑化処理を行うことが好ましい。
【0037】
本発明は、係止板として図2及び図5に示す光透過板3に代えて、光反射板を使用しても良い。その場合、受光手段であるスクリーン又は固体撮像素子は、図2及び図5に示す位置とは反対側(図2及び図5において、球体を係止する垂直板の左側)の適当な位置に設置することによってアラゴスポットを観測することができる。
【0038】
本発明において、被測定球体の少なくとも2点を係止する方法を図6によって説明する。本発明は、図2及び図5に示すように、平板と光透過板若しくは光反射板が直角に配置される必然性は必ずしもなく、それ以外の形状でも構成することができる。図6は、被測定球体1を係止するための治具の概念図である。図6の(a)は、板2と光透過板3若しくは光反射板13がV字状に構成された治具の例であり、被測定球体が測定中に測定治具から脱落するのを防止する効果を有する。同様に、係止治具として図6の(b)に示すU字状の係止板12は、被測定球体が脱落するのを防止するだけではなく、測定装置の外部へ飛び出す心配を無くす効果を有するので、量産現場で使用する際に適する。その場合は、U字状を構成する板面において少なくとも2点(図6(b)において示すAとBの点)だけを接触係止できるようにすれば良く、他の面は被測定球体の球径に応じて、寸法的にやや余裕を持って作成する。また、図6の(c)に示すように、U字状の係止板12を傾けることによって、被測定球体の接触係止を確実に行うことができる。図6において、被測定球体を係止するために配置される(a)〜(c)に示すV字状又はU字状の治具は、アラゴスポットの観測が阻害されない限りにおいて、光反射性若しくは光透過性のどちらであっても良い。
【0039】
図6の(a)〜(c)には、被測定球体を係止するための治具として、被測定球体の球径よりも高い板又は幅広い板を示しているが、本発明は、図6の(d)に示すように、測定中に被測定球体が係止治具から遊離せず、かつアラゴスポットの観測が阻害されない限りにおいて、被測定球体の球径よりも低い板又は幅の狭い板を使用しても良い。
【0040】
本発明の測定方法では、被測定球体が図6に示す直角状、V字状又はU字状の形状を有する板に接して係止されることによって、初めて高精度の球径測定が可能になる。しかし、被測定球体の球径を連続的に測定する場合には、被測定球体が前記の板に接しないで確実には係止されないことがある。その場合は、高精度でかつ信頼性のある測定を行うことが困難となる。本発明は、被測定球体の接触状態を判定するため、被測定球体が接する上記の板と光透過板若しくは光反射板の両者において、前記被測定球体が接する面側に電極膜を設けることによって、被測定球体が両者の板に接しているか否かを、両者の板(平板と光透過板若しくは光反射板)の間の電気的導通の有無で検知する方法を採用することができる。図7に、その方法の一例を示す。図7において、板2及び光透過板3の表面には、被測定球体1と板2及び光透過板3との接触状態を判定するための電極膜15が設けてある。光透過板3の表面に電極膜を設ける場合は、電極膜の透明性が必要であるため、例えば、酸化インジウムスズ蒸着薄膜や導電性高分子薄膜によって電極膜を形成する。一方、光透過板3の代わりに光反射板を使用する場合は、板2又は光反射板は透明性が必ずしも必要でないため、これらの電極薄膜以外にもアルミニウムや銅等の金属薄膜や導電性高分子等からなる薄膜を使用してもよいし、金属板を使用してもよい。板2と光透過板3若しくは光反射板との間の電気的導通の有無は、例えば、両者の電極膜を結線して電気回路を構成し抵抗計16によって検知する。それによって、球径測定中に非導通と検知される鋼球等の被測定球体は自動的に測定ラインから排除されるようにすれば、迅速で、且つ信頼性のある高精度の測定ができる。この方法は被測定球体が鋼球等の導体に容易に適用できる。被測定球体が導体以外の場合は、高抵抗計又は容量計を用いるか、又は板と光透過板若しくは光反射板の表面又は内部に微小な荷重負荷を感知するセンサ−等を設けても良い。
【0041】
本発明の球径寸法測定方法は、空間中を伝送されたアラゴスポットを観測するものであるために、測定中の雰囲気の微妙なゆらぎによる影響を受けやすい。通常は、測定雰囲気である空気等の流れを調整することによって十分に対応することができるが、測定雰囲気の微妙なゆらぎによる影響を排除するために、本発明では光路周りにフードを設けても良い。ゆらぎ防止用のフードは、少なくともコヒーレント光源から被測定球体までの光路及び被測定球体から受光手段までの光路のどちらかに設ける。このフードを両者の光路に同時に設ける場合は、よりゆらぎの少ないアラゴスポットが観測でき、球径の測定精度を一層向上させるためにはこの方法を採用することが好ましい。
【0042】
本発明は、被測定球体の対象とする数mmから数十mmの範囲にあるベアリング用鋼球等の球体の球径をミクロン以下の精度で測定することを特徴とするが、さらに高精度な測定を行うことが可能である。その方法について説明する。
【0043】
本発明において、コヒ―レントな発散ビーム光を使用する場合、アラゴスポットの輝点部の移動量は、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板までの距離(L)と光透過板からスクリーンまでの距離(Z)で決まる比(L+Z)/Lによって変わる。基準となる参照用球体の球径と被測定球体の球径の差、の半分(すなわち半径の差)が(L+Z)/L倍に拡大されて、アラゴスポットの輝点部の移動量として測定される。比(L+Z)/Lが大きくなるほど輝点部の移動量が大きくなるので、被測定球体の球径をより高精度で測定することができる。すなわち、被測定球体の球径をより高精度で測定したい場合は、比(L+Z)/Lが大きい測定光学系を構築すればよい。ただし、測定光学系においてアラゴスポットが観測されるためには、LおよびZの値を被測定球体の球径から決まる値より大きくしておく必要がある。
【0044】
また、市販品として容易に入手できる固体撮像素子を用いたカメラは、固体撮像素子の1画素の大きさが2〜6μmであるため、画像自体の空間分解能も同じ程度である。しかし、1画素の大きさが2μm以下の固体撮像素子を本発明の受光素子として使用することによって、アラゴスポットの輝点部の移動量をより高精度に測定することが可能となり、被測定球体の球径をより高精度に測定することができる。さらに、観測されたアラゴスポットの輝点部の光強度分布からアラゴスポットの中心点を決める場合は、数学的には平均を求める演算を行っているため1画素の数分の一程度の誤差でアラゴスポットの輝点部の中心点を決定できるので、中心点又は中心点の移動量を使うことで被測定球体の球径を高精度で求めることができる。
【0045】
さらに、観測されるアラゴスポットは、コヒーレント光の光路上で、且つ被測定球体と受光手段との間にアラゴスポットの輝点部を拡大するための対物レンズを設けることによって、輝点部がより鮮明に観測できるようになる。それにより、アラゴスポットの輝点部の位置や輝点部の移動量の測定を高精度に行うことができ、被測定球体の球径を高精度で求めることができる。ここで、使用する対物レンズの倍率は2〜100倍である。
【0046】
このように、本発明は、原理的に球体の球径をミクロン以下の精度で測定でき、測定光学系の構成及び/又は受光素子を改善することによって、測定精度をさらに向上させることができる技術である。
【0047】
本発明を実施の形態によって説明するが、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0048】
[実施の形態1]
図8に、溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。板2と光透過板3はV字状の溝を構成し、被測定球体1はV字状の溝を回転しながら移動する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0049】
図8に示す測定系を用いて、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。また、本実施の形態例では、図8において、光透過板3と該カメラ8までの距離を32cmに設定して測定を行った。
【0050】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で4.6μmであった。このように、本実施の形態例は、次々に板2と光透過板3で構成されるV字状の溝の一端から他端に向けて被測定球体を移動させることで、次々に投入される被測定球体の球径を測定することができ、単位時間あたりの測定個数を増やすことができるという利点を有する。
【0051】
[実施の形態2]
図9に、光反射板を用いて溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0052】
図9に示す測定系を用いて、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について、実施の形態1と同じ方法でコヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。また、本実施の形態例では、図9において、光反射板13と該カメラ8までの距離は、実施の形態1と同じ32cmに設定して測定を行った。
【0053】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で5.1μmであり、実施の形態1とほぼ同じ結果が得られた。このように、本実施の形態例は、次々に板2と光反射板13で構成されるV字状の溝の一端から他端に向けて被測定球体を移動させることで、次々に投入される被測定球体の球径を測定することができ、単位時間あたりの測定個数を増やすことができるという利点を有する。また、光反射板13の傾きを変えると光路が変わりアラゴスポットができる位置を制御できるので、例えば、レーザ光を複数回反射させて光路長をかせぐことで測定装置の小型化をはかることができるという利点も有する。
【0054】
[実施の形態3]
図10に、発散レーザ光照射によって測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。板2と光透過板3はV字状の溝を構成し、被測定球体1はV字状の溝を回転しながら移動する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からのレンズ4を通した発散レーザ光11を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0055】
図10に示す測定系を用いて、実施の形態1と同じように被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について球径を種類ごとに測定した。本実施の形態例では、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光をレンズ4によって変換した発散レーザ光11による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。また、本実施の形態例では、図10において、ビーム光の焦点Fから光透過板3までの距離(L)は32cm、光透過板3と該カメラ8までの距離(Z)は実施の形態1と同じ32cmに設定して測定を行った。
【0056】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で3.1μmであった。本実施の形態例は、発散レーザ光で被測定球体1を照射することにより、実施の形態1の場合よりも誤差が小さくなった。
【0057】
また、本実施の形態の変形例として、図10において、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板3までの距離(L)及び光透過板3と前記カメラ8までの距離(Z)を、それぞれ17cm及び32cmに設定して比(L+Z)/Lを大きくした条件で、同じようにベアリング用鋼球の10個について球径を測定した。その結果、誤差は最大で2.1μmとさらに小さくなった。
【0058】
このように、本実施の形態例は、発散レーザ光で被測定球体1を照射することにより、球径の変動量が固体撮像素子上ではアラゴスポットの輝点部の移動量として拡大されて測定されるので、球径計測の高精度化が実現できるという利点を有する。
【0059】
[実施の形態4]
ベアリング用鋼球の球径を、図2に示す方法によって幾何的に測定した。コヒ―レントな光源としてHe−Neレーザ光発生装置からの平行レーザ光をレンズによって変換した発散レーザ光を用いた。コヒ―レント光の焦点Fと板2までの距離、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板3までの距離および光透過板3と固体撮像素子までの距離をそれぞれ0.5cm、32cmおよび32cmに設定して、これらの位置関係が測定中に変わらないように強固に固定した。参照用鋼球を係止させた状態でアラゴスポットの輝点部の位置P1を測定した後で、被測定球体であるベアリング用鋼球を係止させた状態でアラゴスポットの輝点部の位置P2を測定した。それらの位置データに基づいて幾何的な計算手順によって被測定球体の中心C2を求め、これより該被測定球体の球径を求めた。このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で2.8μmで、実施の形態3における誤差とほぼ同じ大きさであった。
【0060】
[実施の形態5]
図11に、光路周りにフード10を設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。板2と光透過板3はV字状の溝を構成し、被測定球体1はV字状の溝を回転しながら移動する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0061】
図11に示す測定系を用いて、実施の形態1と同じように、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、実施の形態1と同じ0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。最初に、レーザ光発生装置5と被測定球体1を結ぶ光路中に、該光路に直交するような風を扇風機で送りながら球径を測定し、次に、扇風機はつけたまま該光路にフード10を設置した状態で球径を測定した。また、本実施の形態例では、図11において、光透過板3と該カメラ8までの距離は、実施の形態1と同じ32cmに設定して測定を行った。
【0062】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、前記光路が扇風機の風を受ける状態では誤差は最大で12.6μmであったが、フード10を設けた場合は3.9μmと誤差が低減された。本実施の形態例は、フード10を設置しその中にレーザ光を通すことで空気の流れによる影響を抑えることができるので、フード10を設置しない実施の形態1の場合よりも、球径の測定誤差を減少できるという利点を有する。
【0063】
本実施の形態の変形例として、ビーム光として、図10に示す測定系と同じように、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5による平行レーザ光をレンズ4によって変換した発散レーザ光11を用いて同様の測定を行った。その結果、被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について公称値(呼び直径)との誤差は最大で1.7μmとなり、さらに高精度の測定が可能となった。
【0064】
[実施の形態6]
図12に、対物レンズと発散ビーム光照射によって測定する球体の球径寸法測定方法とその装置の概略を示す。図12に示す測定系は、被測定球体1と固体撮像素子を用いたカメラ8との間に対物レンズ14を設ける以外は、図10に示すものと同じである。図12において、板2と光透過板3はV字状の溝を構成する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からのレンズ4を通した発散レーザ光11を溝中で係止させた被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に、対物レンズ14を介して、固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0065】
図12に示す測定系を用いて、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について球径を種類ごとに測定した。本実施の形態例では、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光をレンズ4によって変換した発散レーザ光11による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、被測定球体1を溝中で係止させて行った。また、本実施の形態例では、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板3までの距離(L)および光透過板3と該カメラ8までの距離(Z)を、実施の形態3と同じに設定して測定を行った。
【0066】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で0.9μmであった。本実施の形態例は、被測定球体1と固体撮像素子を用いたカメラ8との間に対物レンズ14を設けることによって、アラゴスポットが拡大されて該カメラ8で測定されるため、アラゴスポットの輝点部の中心点の測定精度が向上するので、結果的に実施の形態3の方法よりもさらに球径測定の誤差が小さくできるという利点を有する。
【0067】
以上のように、本発明は、被測定球体の球径測定を高精度で、且つ短時間に簡便な方法で行うことができる。また、光学測定系の最適化と受光手段の高性能化によって、測定精度を向上させることができる。加えて、本発明は、ベアリング用鋼球に限定されないで、様々な用途に適用できる点で有用性が極めて高い。
【符号の説明】
【0068】
1・・・被測定球体、2・・・板、3・・・光透過板、4・・・レンズ、5・・・レーザ光発生装置、6・・・平行レーザ光、7・・・レーザ光の進む向き、8・・・固体撮像素子を用いたカメラ、9・・・演算処理装置を有する画像処理装置、10・・・フード、11・・・発散レーザ光、12・・・U字状の係止板、13・・・光反射板、14・・・対物レンズ、15・・・電極膜、16・・・抵抗計又は容量計。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定球体の球径を高精度で、且つ簡便に測定する球径寸法測定方法及びその測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
球体として、例えば、ボールベアリングの球径は工業上高い製品精度が要求されており、ミクロン以下の精度で高精度に計測されなければならない。さらに、前記ボールベアリングの大量生産現場では、良品選別や品質管理等のために、多数のベアリングについてその球径を高精度で測定するだけではなく、短時間でかつ簡便に測定、解析できる球径寸法測定方法の確立とその測定装置が求められている。
【0003】
従来の球径寸法測定方法として、被測定球体を経由するレーザ光を受光して受光位置を電気信号に変換した後、その電気信号に基づいて被測定球体の最大径および最小径ならびに上記被測定球体の平均球径を求めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この測定方法では、案内溝中にて被測定球体を保持して回動させ前記被測定球体の少なくとも2本の特定の軸線をその案内方向に順次一致させ、被測定球体をその転動を規制しながら上記案内方向に沿って相対的に移動させる。そして、その移動中に被測定球体の移動方向に直角に横切る切断面に沿って平行なレーザを間欠的に走査する。
【0004】
また、別の球径寸法測定方法として、球状物を載せる設置台に、球状物の底部を浮かした状態で位置決めする窪み部を設けると共に、窪み部の表面形状に球状物が接する内接円の平面に対して直交し且つ内接円の中心点を通過する基準線上に、非接触式距離測定手段を設ける方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。前記の特許文献2において、球状物の外径寸法の算出は、窪み部上に球状物を載せ、距離測定手段によって、距離測定手段から球状物の頂点までの距離を測定し、その距離と、距離測定手段から内接円の平面までの距離と、内接円の半径とから、球状物の外径寸法を算出する演算手段を備えた測定装置を用いて行われる。
【0005】
さらに、連続生産された球状体において直径の最大値と最小値との差である直径不同の評価および直径不同の規格値に基づく選別作業を、生産速度に合わせてオンラインで迅速に精度よくできるようにしたものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
一方、被測定球体の球径寸法測定方法に関するものではないが、非特許文献1には、被測定球体にレーザ光を照射したときに前記被測定球体の影中の部分に回折光の干渉の結果として生じるアラゴスポットの輝点部を用いて、前記被測定球体の中心又は中心の移動量を高精度に測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7―69146号公報(第2頁右欄、図1、図2)
【特許文献2】特開2000−97687号公報(段落0005、図1、図2)
【特許文献3】特開2009−128230号公報(段落0007、図1〜図3)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Saruta、R.Tsuji、「Position Measurement Method Using a Divergent Laser Beam and Arago Spot for Tracking of an Inertial Fusion Energy Target」、Jpn.J.Appl.Phys.、第47巻、第3号(2008)pp.1742−1744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の発明は、被測定球体の少なくとも2本の特定の軸線をその案内方向に順次一致させ、被測定球体をその転動を規制しながら上記案内方向に沿って相対的に移動させるため、測定工程が複雑で必ずしも高能率で測定効率がよいとは言えない。
【0010】
上記特許文献2に記載の発明は、設置台を距離測定手段と相対的に移動させながら球状物を一個一個設置台の中心に位置させる必要があり、測定効率が劣る。
【0011】
上記特許文献3に記載の発明は、球体を小容器(ターンテーブル)に載せて一定時間揺動を続けて、そこで得られる複数回の画像を撮影して、各画像について最大径及び最小径を求めるため、不便さがある。加えて、選別不良品への良品混入率が15%程度であり、選別の精度は従来より向上するものの、高精度測定の点では十分に満足できるものではなかった。
【0012】
また、上記の非特許文献1には、被測定球体の球径寸法測定方法及びその装置については具体的に記載されておらず、ボールベアリング等の球体の球径を高精度に測定するための方法として、アラゴスポットを原理的に適用できるか否かについては全く不明であった。
【0013】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を高精度で、且つ簡便な方法で短時間に測定できる球体の球径寸法測定方法及びその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する方法について、従来より高精度で、且つ短時間で簡便な測定を行うことができる方法とその測定装置を鋭意検討した結果、被測定球体の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部とで構成されるアラゴスポットに着目し、該アラゴスポットの輝点部を利用することによって上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0015】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
(1)コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する方法であって、被測定球体にコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部で構成されるアラゴスポットの前記輝点部を用いて、前記被測定球体の球径を測定する球体の球径寸法測定方法を提供する。
(2)被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体にコヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置が前記被測定球体の球径に応じて変位することを利用して、前記アラゴスポットの輝点部の移動量から前記被測定球体の球径を測定する前記(1)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(3)前記アラゴスポットの輝点部の位置の移動量を電気信号に変換して、該電気信号として変換された移動量を用いて、あらかじめ測定して得られたアラゴスポットの輝点部の移動量と球体の球径との関係式から被測定球体の球径に換算することによって、前記被測定球体の球径を測定する前記(2)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(4)前記被測定球体は板に2点で接して転動又は係止され、前記被測定球体に前記コヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置と前記コヒーレント光の焦点とを結ぶ線分と、前記被測定球体と前記板との接点から定まる2つの接平面どうしが交差する点と前記被測定球体が前記板に接する2点との間で形成される角度を二等分する半直線との交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する前記(1)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(5)前記被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体に少なくとも2方向からコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる少なくとも2個のアラゴスポットの輝点部の位置と、前記コヒーレント光の焦点とをそれぞれ結んで得られる少なくとも2以上の線分の交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する前記(1)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(6)前記アラゴスポットの輝点部の位置又は該アラゴスポットの輝点部の移動量は、前記アラゴスポットの輝点部の中心点又は該中心点の移動量として測定されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(7)前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(8)前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レンズ、反射鏡又はフィルターを介して形成されるレーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする前記(7)に記載の球体の球径寸法測定方法を提供する。
(9)コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する装置であって、前記コヒーレント光の光源、前記コヒーレント光の進行方向に配置される被測定球体と、該被測定球体が接する板と、該被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットを受光する受光手段と、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量に関する該受光手段からの出力信号を用いて前記被測定球体の球径を算出する演算処理装置とを備えたことを特徴とする球体の球径寸法測定装置を提供する。
(10)前記コヒーレント光の光源は、前記被測定球体が接する板が1枚であるときは2以上であることを特徴とする前記(9)に記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(11)前記のアラゴスポットはスクリーン又は固体撮像素子を介して受光されることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(12)前記受光手段からの出力信号は、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量が電気的に変換されている信号であることを特徴とする前記(11)に記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(13)前記コヒーレント光の光源は、平行ビーム光又は発散ビーム光を発光するレーザ光源、又は前記レーザ光源の発光側に設けたレンズ、反射鏡又はフィルターを介して平行ビーム光又は発散ビーム光を形成する光源であることを特徴とする前記(9)〜(12)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(14)前記コヒーレント光の通過する領域の周囲は、外乱の侵入を阻止するためのフードで覆われていることを特徴とする前記(9)〜(13)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(15)前記被測定球体は、板に接し、且つ該被測定球体の前方又は後方が光透過板若しくは光反射板に接して転動又は係止されていることを特徴とする前記(9)〜(14)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
(16)前記コヒーレント光の光路上で、且つ前記被測定球体と前記受光手段との間に、アラゴスポットの輝点部の中心部分を拡大するための対物レンズを設けることを特徴とする前記(9)〜(15)のいずれかに記載の球径寸法測定装置を提供する。
(17)前記被測定球体が接する板は、前記被測定球体と接する側に電極を設けることによって、電気抵抗又は電気容量の変化から前記被測定球体との接触状態を判定する機能を有することを特徴とする前記(9)〜(16)のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コヒーレント光の照射によって被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置、又は該アラゴスポットの輝点部の移動量をミクロン以下の精度で測定して得た位置データ又は移動量データからそれぞれ球体の球径を求める方法であるために、鋼球等の球体の球径をミクロン以下の精度で計測することができ、測定精度に優れる。また、本発明において、アラゴスポットは被測定球体にコヒーレント光を照射するだけで観測できるため、光学測定系の構成が簡単であり、光学測定系を容易に設計及び設置することができる。加えて、アラゴスポットの輝点部の位置又は輝点部の移動量は電気信号として出力されるので、被測定球体の球径寸法への換算は、該電気信号を用いて演算処理されるため、球径測定時間の短縮化を図ることができる。したがって、本発明の測定方法及び測定装置は、製造ライン中や検査工程中に設置して、量産時における球体の球径寸法の測定を、高精度で、且つ連続的に行えるものとして最適であり、球径寸法の全数検査が短時間に行えるなど、鋼球等の球体の品質や生産性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による球体の球径寸法測定装置の概略を示す図である。
【図2】本発明において球体の球径寸法を幾何的に測定する方法とその原理を示す図である。
【図3】本発明において球体の球径寸法を2方向からのコヒーレント光を用いて幾何的に測定する方法とその原理を示す図である。
【図4】本発明において球体の球径寸法を2方向からのコヒーレント光を用いて測定する方法の変形例を示す図である。
【図5】本発明において球体の球径寸法をアラゴスポットの輝点部の移動量から測定する方法とその原理を示す図である。
【図6】本発明において、被測定球体を係止するための治具の例を示す概念図である。
【図7】本発明において、板に電極膜を設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図8】本発明の実施形態である、光透過板を用いて溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態である、光反射板を用いて溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図10】本発明の別の実施形態である、発散ビーム光の照射によって測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図11】本発明の別の実施形態である、光路周りにフードを設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【図12】本発明の別の実施形態である、球体と受光手段との間に対物レンズを設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に本発明による球体の球径寸法測定装置の概略と、図2、図3及び図4に本発明による球体の球径寸法測定方法とその原理をそれぞれ示す。図3及び図4において、(a)は測定光学系の上面図であり、(b)はその側面図である。
【0019】
図1に示すように、被測定球体1である鋼球Bを板2と光透過板3の両方に接するように係止させる。左方からコヒーレント光を入射させ、いったんレンズ4で集光すると焦点Fで集光した後は発散ビーム光となる。このコヒーレントな発散ビーム光を鋼球B全体に照射すると、照射された部分と影の部分の境界である鋼球Bの縁から回折光が生じ、回折光が干渉しあう結果として右方に置いたスクリーン上では鋼球の影の中心付近に干渉縞と輝点部P(これらをアラゴスポットまたはポアソンスポットともいう)を生じる。ここで、板2は被測定球体1を載置するために設けるものであって、薄板、厚板、ブロック、支持台のいずれかを用いて固定して構成する。板2は、光透過性の有無には限定されないため、光透過性のものであっても良い。また、光透過板3は、図1において被測定球体1の後方(右側)に配置されているが、被測定球体1と接するようにして係止できれば、その前方(左側)に配置しても良い。スクリーンは、アラゴスポットを投影観測するための受光手段を構成する。焦点Fと鋼球Bの中心Cと輝点部Pは一直線上にある。左方からコヒーレントな平行ビーム光を鋼球B全体に照射する場合は、焦点Fは左方無限遠にあるものとみなすことができる。本発明は、鮮明なアラゴスポットを受光手段で観測するために、通常、鋼球Bを板2と光透過板3の両方に接するように係止させるが、鮮明なアラゴスポットを観測できる程度の速度で転動させても良いし、充分な光量があるコヒーレントなパルス光源を使う場合はそれ以上の速度で転動させても良い。また、本発明は、少なくとも2方向からのコヒーレント光を照射して測定を行う場合、図1に示す光透過板3を使用しない測定系を構成しても良い。
【0020】
幾何的には図1のように鋼球を板2と光透過板3の両者に接触させる時、仮に板と光透過板の両者が平面であってそれらが直角に交わる場合、未知の球径の鋼球であっても鋼球の中心は図2に示すように、板2と光透過板3が交差する点Oから直角の半分の角度である45度をなす半直線OA上に存在する。つまり、鋼球を2点で接触させたことで鋼球の中心が存在可能な領域を制限したことになる。ゆえに、アラゴスポットを観測することで、アラゴスポットの輝点部P1又はP2と焦点Fを結ぶ線分F−P1又はF−P2が得られ、これと半直線OAとの交点が鋼球の中心C1又はC2の位置として求められ、中心C1又はC2から板2の平面までの距離r1又はr2、の2倍が鋼球の球径として求められる。ここで、コヒーレント光の焦点F、板2、光透過板3、及びスクリーンの空間的配置をあらかじめ精確に定めることができれば、前記線分と半直線OAの交点を幾何的に計算することによって球体の球径を求めることができる。また、図2には、直角に交わる板を用いて測定を行う例を示したが、この板は被測定球体を2点で係止できる形状であれば良く、直角以外の角度のV字状又はU字状のものも使用できる。V字状又はU字状の形状を有する板を使用する場合でも、鋼球と板2及び光透過板3との接点から定まる2つの接平面どうしが交差する点と鋼球が前記板に接する2点との間で形成される角度を二等分する半直線、すなわち図2に示すOAに相当する半直線を引くことによって、図2に示す場合と同様な方法で、幾何的に鋼球の球径を測定することができる。板が交差する点と鋼球が前記板に接する2点との間で形成される角度は、鋼球の保持性及び測定時の作業性を考慮して、30〜150度が好ましく、さらに45〜120度がより好ましい。
【0021】
未知の球径の鋼球が1点で板2だけと接している場合は、それだけでは鋼球の中心が存在可能な領域を制限することはできないが、図3の(a)と(b)に示すように、例えば2方向からコヒーレント光を被測定球体1である鋼球に照射してアラゴスポットを2個観測することで、F1−P1の線分とF2−P2の線分の交点が鋼球の中心Cの位置として幾何的に求められ、中心Cから板2との接点までの距離の2倍が鋼球の球径として求められる。図3に示す測定方法は、振動などが原因で被測定球体である鋼球を光透過板に接触させて係止させることが困難な場合に適用することができる。
【0022】
図3に示す測定方法の変形例を図4の(a)と(b)に示す。図4に示すように、測定の度に鋼球を設置する位置が異なった場合でも、中心C1を有する鋼球と中心C2を有する鋼球について、それぞれ2方向からコヒーレント光を鋼球に照射してアラゴスポットを2個観測することによって、それぞれの場合の鋼球の半径を個別に求めることができる。中心C1を有する鋼球はF1−P11の線分とF2−P21の線分との交点を用いて半径r1を求めることができ、また、中心C2を有する鋼球はF1−P12の線分とF2−P22の線分との交点を用いて半径r2を求めることができる。もし複数個の鋼球の影が重なって見えなければ、複数個の鋼球の半径を同時に求めることもできる。そのため、多数個の被測定球体について球径を迅速に測定したい場合に、被測定球体を設置する際のわずらわしさが低減されて使い勝手が良くなる。
【0023】
図3及び図4には、2方向からコヒーレント光を照射する例を示したが、本発明では3方向以上からのコヒーレント光を照射する方法を採用しても良い。コヒーレント光の数が多くなって、光学系がやや複雑にはなるものの、3つ以上の線分の交点を用いて球径測定を行うため、測定値のバラツキ等を詳細に把握することができ、より高精度の球径測定を行うことができる。
【0024】
図5は、アラゴスポットの輝点部の位置が被測定球体の球径に応じて変位することを利用して、アラゴスポットの輝点部の移動量から被測定球体の球径を測定する方法とその原理を示す図である。図5において、アラゴスポットの輝点部P2は、基準点となるアラゴスポットの輝点部P1から(P2−P1)だけ移動した場所にある。したがって、アラゴスポットの輝点部の位置を測定することと、基準点を決めてアラゴスポットの輝点部の基準点からの移動量を測定することは等価である。ここで、図5に示すように、鋼球(実線)の代わりに未知の球径の鋼球(破線)を板2と光透過板3の両方に接するように置いた場合を考える。もし鋼球の球径が違うなら、鋼球の中心位置C1とC2は一致しない。ゆえに直線F−C1の延長上にあるアラゴスポットの輝点部P1の位置と、直線F−C2の延長上にあるアラゴスポットの輝点部P2の位置は一致しない。コヒーレント光の焦点F、板2、光透過板3、及びスクリーンの空間的配置を定めれば、輝点部の位置は鋼球の球径の関数となるので、輝点部の位置又は輝点部の移動量を測ることで逆に鋼球の球径を求めることが出来る。前記関数の逆関数を使うと、鋼球の球径は、スクリーン上に投影されたアラゴスポットの輝点部の位置P2又は輝点部の移動量(P2−P1)が電気的に変換されている信号を演算処理して被測定球体の球径に数値的に換算することで求められる。上記の方法は、球体の球径を幾何的に求めることにも対応している。すなわち、図2において、球径の異なる鋼球のそれぞれの中心点であるC1とC2は半直線OA上にあるため、アラゴスポットの輝点部の位置がP1からP2へ変位するときの移動量(P2−P1)は、幾何的に半直線OA上の中心点の移動量(C2−C1)と対応しているので、鋼球の中心点C2を求めれば球径が求められる。
【0025】
図5に示す方法において、既知の球径を有する鋼球を用いて、アラゴスポットの輝点部の位置の移動量と鋼球の球径との関係の実験式をあらかじめ求めておいて、未知の球径の被測定球体について測定したアラゴスポットの輝点部の移動量を前記の実験式に代入して被測定球体の球径を求める方法が、本発明においては好ましい。上記の方法は、ビーム光の焦点、板、光透過板、及びスクリーンの空間的配置をあらかじめ精確に定める必要はなく、また該空間的配置の条件下での輝点の位置と鋼球の球径との関係式(関数と逆関数)を理論的にあらかじめ求めておく必要もない。鋼球等の球体を量産する現場等でその球径を測定する場合に、測定光学系の空間的配置をミクロンオーダーで精確に定めることは熟練を有し、測定系の調整に手間取る。また、長期間にわたって、測定光学系を構成する各要素どうしの相対的な空間的配置を不変にすることは実質的に困難であり、測定誤差が時間とともに大きくなるという問題が発生しやすい。したがって、前記の実験式を使う方法は、球径の高精度測定を簡便で、かつ迅速に行うことができるだけではなく、その適用範囲が研究用、検査用及び量産管理用等と広くなるため、有用性が極めて高い。図5に示す方法によって測定されたアラゴスポットの輝点部の移動量から球体の球径寸法を算出するための手順は、後ほど説明する。
【0026】
以上のように、本発明は、被測定球体のアラゴスポットの輝点部の位置又は基準点からの輝点部の移動量によって被測定球体の球径を求めるものであり、被測定球体はその接触する場所が制限されること、すなわち被測定球体の少なくとも1点は板と接することに特徴がある。図2及び図5に示すように被測定球体が後方の光透過板3によって係止されると被測定球体は板2と光透過板3の2点で接する。この場合、被測定球体の中心は、それぞれの接触点からの垂線の交点にあり、それはアラゴスポットの輝点部とコヒーレント光の焦点を結んだ線分上にある。また、図3及び図4に示すように、被測定球体が後方の光透過板によって係止されない場合は、被測定球体は板2と1点で接している。この場合、被測定球体の中心は、少なくとも2方向からのコヒーレント光の照射によって生じるアラゴスポットの輝点部とコヒーレント光の焦点とを結んで得られる2以上の線分の交点にあり、それは接点からの垂線上にある。
【0027】
本発明において、被測定球体に照射する光としては、回折光の干渉による鮮明なアラゴスポットを得るためにコヒーレントな光を用いる。コヒーレントな光としては、光の集束性及び取扱い性の点からレーザ光が好適であり、光源としては可視域レーザに限らず、紫外域レーザ又は赤外域のレーザ等も使用することができる。また、鮮明なアラゴスポットを得ることができる充分な光量があるならば、連続発振のレーザ光のみならずパルス発振のレーザ光も使用することができる。しかし、本発明では、コヒーレントな光はレーザ光には限定されないで、例えば、ナトリウムのD線や、ハロゲンランプ等の光源から出射される幅広い波長域を有する光をモノクロメーター等によって所定の波長域に絞ったものをコヒーレントな光として使用しても良い。
【0028】
このように、本発明における球体の球径寸法測定装置は、コヒーレント光の光源と、前記コヒーレント光の進行方法に配置される被測定球体と、該被測定球体が接する板と、該被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットを受光する手段と、該アラゴスポットの輝点部の位置又は輝点部の移動量に関する該受光手段からの出力信号を用いて被測定球体の球径を算出する演算処理装置とを備えることを基本構成とする。
【0029】
また、本発明において使用するコヒーレント光としては、図1に示すようなレンズ4によって集光された後に拡がる発散ビーム光だけではなく、平行ビーム光も使用することもできる。しかし、発散ビーム光は、平行ビーム光よりも被測定球体の球径の変化量に対して前記アラゴスポットの輝点部の移動量を大きくできるため、被測定球体の球径の測定精度が向上する。そのため、より高精度の球径測定を行うには発散ビーム光を使用するのが好ましい。
【0030】
本発明において、コヒーレントな平行ビーム又は発散ビーム光は、レーザ光源の発光側に設けたレンズ、反射鏡又はフィルターを介して形成する光源であっても良い。平行ビーム光は、例えばレンズを用いてビーム径を広げて使用することができる。発散ビーム光は、例えば図1に示すように、コヒーレント光源と被測定球体の間に設けられ、コヒーレント光源から被測定球体へ向けて出射される光線上に存在するレンズ4によって形成する。また、レンズ4の代わりに、コヒーレント光が発散するような角度に反射鏡を設置して発散レーザ光を形成する方法を採用しても良い。それ以外の方法として、空間フィルターを用いて発散ビーム光を得ることもできる。これらの場合において、コヒーレント光の光量を調整するために減光フィルターを併用しても良い。本発明では、鮮明なアラゴスポットを得るために、レンズを介して形成される発散ビーム光を使用することが好ましい。
【0031】
次に、図5に示す測定系において、アラゴスポットの輝点部の移動量から球体の球径寸法を測定するための手順を説明する。
【0032】
上記で説明したように、板2と光透過板3とで構成される治具に鋼球を係止すると、アラゴスポットの輝点部の位置は鋼球の球径の関数となる。そこで、もし鋼球(実線)の球径D1とアラゴスポットの輝点部の位置P1が既知とすると、被測定球体である球径D2(未知)の鋼球(破線)がつくるアラゴスポットの輝点部の位置P2を測定するとアラゴスポットの輝点部の移動量(P2−P1)は鋼球(破線)と鋼球(実線)の球径の差(D2−D1)を反映する物理量になる。そのため、別の方法で精密に測定された球径の異なる複数個の参照用鋼球を用いて、それらの鋼球の球径の差に応じて変位するアラゴスポットの輝点部の移動量をミクロン以下の精度で測定することによって、あらかじめアラゴスポットの輝点部の移動量と鋼球の球径との関係の実験式を求めておく。本発明では、球体が係止するところの板と光透過板が平板である場合、スクリーン上でのアラゴスポットの輝点部の移動量と鋼球の球径との関係の実験式は一次関数式となる。
【0033】
その後、被測定球体である鋼球(破線)を上記と同じ板2と光透過板3で係止し、アラゴスポットを観測し、該アラゴスポットの輝点部の位置P2を測定する。図5において、被測定球体である鋼球が球の中心位置C1を有する参照用鋼球よりも大きい場合は、アラゴスポットの輝点部の移動量(P2−P1)は便宜的に正となり、逆に小さい場合は、(P2−P1)は負となる。そして、あらかじめ校正曲線として求めていた、移動量と鋼球の球径との関係の実験式を利用することによって、被測定球体のアラゴスポットの輝点部の移動量(P2−P1)から被測定球体の球径を求める。本発明において、球の中心位置C1を有する参照用鋼球の球径は、1〜100mmの範囲にあるものであれば特に限定されないが、被測定球体の球径に近い値を有する参照用鋼球を用いて校正曲線を作成する方が、移動量(P2−P1)の値が大きくならず、アラゴスポットを検知する受光部分の大きさを小さくでき、測定系がコンパクトにできることから好ましい。また、移動量(P2−P1)を小さくすると、位置P2におけるアラゴスポットの画像歪みが抑えられ、アラゴスポットの輝点部の移動量の測定誤差を小さくできるという効果がある。
【0034】
本発明において、移動量を測定するときのアラゴスポットの輝点部の位置の定義としては、該輝点部内の任意の場所を設定することができるが、最大の光強度の位置、光強度が一定閾値以上の領域の重心、又は該領域内を光強度の関数で重みづけをした場合の重心、のいずれかを輝点部の中心点と定義して、それを輝点部の位置とするのが測定精度を高めることができるため好ましい。このように定義される中心点は、いずれも観測されるアラゴスポットの輝点部の広がりや光強度分布から正確に、且つ容易に求めることができることからも輝点部の位置の定義として好適である。
【0035】
本発明において、受光手段として使用されるスクリーン上に投影されたアラゴスポットの輝点部の位置又は輝点部の移動量は、計算機又は演算処理装置による球径算出を迅速に行うためには、電気信号に変換される必要がある。輝点部の位置又は輝点部の移動量を電気信号に変換する際には、スクリーン上に投影されたアラゴスポットを、スクリーン自体に光−電気変換可能な受光素子を使い、そこから出力される電気信号を演算処理するのが好ましい。また、処理時間はかかるものの、スクリーン上に投影されたアラゴスポットをカメラ等で写して、フィルム上でのアラゴスポットの輝点部の位置を、電気信号に変換してもよい。本発明は、球体の球径測定を短時間で高精度に行うことを特徴としており、スクリーンを使用しないで、直接、固体撮像素子を用いてアラゴスポットを計測し、該素子より出力される電気信号に演算処理を行い、輝点部の位置又は輝点部の移動量を表す電気信号に変換する方法が好適である。
【0036】
前記の固体撮像素子による受光手段では、アラゴスポットの光強度分布が撮像面上の2次元画像データ(1次元イメージセンサの場合は1次元画像データ)として測定され、撮像面上での位置は、固体撮像素子のピクセル座標と一次関数式で関係づけられる。この固体撮像素子で得られる2次元画像データは位置と光強度に関して量子化されたものであり、アラゴスポットの輝点部の位置を求めるために、前記固体撮像素子の画像データは電気信号として画像処理装置に転送される。画像処理装置の内部では、最大の光強度の位置、光強度が一定閾値以上の領域の重心および該領域内を光強度の関数で重みづけをした場合の重心、を求める演算処理を行うことができる。すなわち、前記固体撮像素子から出力される前記電気信号は、最大の光強度の位置、光強度が一定閾値以上の領域の重心及び該領域内を光強度の関数で重みづけをした場合の重心、が電気的に変換されている信号とみなすことができる。画像データにノイズがある場合は、前記の演算処理を行う前に画像データの平滑化処理を行うことが好ましい。
【0037】
本発明は、係止板として図2及び図5に示す光透過板3に代えて、光反射板を使用しても良い。その場合、受光手段であるスクリーン又は固体撮像素子は、図2及び図5に示す位置とは反対側(図2及び図5において、球体を係止する垂直板の左側)の適当な位置に設置することによってアラゴスポットを観測することができる。
【0038】
本発明において、被測定球体の少なくとも2点を係止する方法を図6によって説明する。本発明は、図2及び図5に示すように、平板と光透過板若しくは光反射板が直角に配置される必然性は必ずしもなく、それ以外の形状でも構成することができる。図6は、被測定球体1を係止するための治具の概念図である。図6の(a)は、板2と光透過板3若しくは光反射板13がV字状に構成された治具の例であり、被測定球体が測定中に測定治具から脱落するのを防止する効果を有する。同様に、係止治具として図6の(b)に示すU字状の係止板12は、被測定球体が脱落するのを防止するだけではなく、測定装置の外部へ飛び出す心配を無くす効果を有するので、量産現場で使用する際に適する。その場合は、U字状を構成する板面において少なくとも2点(図6(b)において示すAとBの点)だけを接触係止できるようにすれば良く、他の面は被測定球体の球径に応じて、寸法的にやや余裕を持って作成する。また、図6の(c)に示すように、U字状の係止板12を傾けることによって、被測定球体の接触係止を確実に行うことができる。図6において、被測定球体を係止するために配置される(a)〜(c)に示すV字状又はU字状の治具は、アラゴスポットの観測が阻害されない限りにおいて、光反射性若しくは光透過性のどちらであっても良い。
【0039】
図6の(a)〜(c)には、被測定球体を係止するための治具として、被測定球体の球径よりも高い板又は幅広い板を示しているが、本発明は、図6の(d)に示すように、測定中に被測定球体が係止治具から遊離せず、かつアラゴスポットの観測が阻害されない限りにおいて、被測定球体の球径よりも低い板又は幅の狭い板を使用しても良い。
【0040】
本発明の測定方法では、被測定球体が図6に示す直角状、V字状又はU字状の形状を有する板に接して係止されることによって、初めて高精度の球径測定が可能になる。しかし、被測定球体の球径を連続的に測定する場合には、被測定球体が前記の板に接しないで確実には係止されないことがある。その場合は、高精度でかつ信頼性のある測定を行うことが困難となる。本発明は、被測定球体の接触状態を判定するため、被測定球体が接する上記の板と光透過板若しくは光反射板の両者において、前記被測定球体が接する面側に電極膜を設けることによって、被測定球体が両者の板に接しているか否かを、両者の板(平板と光透過板若しくは光反射板)の間の電気的導通の有無で検知する方法を採用することができる。図7に、その方法の一例を示す。図7において、板2及び光透過板3の表面には、被測定球体1と板2及び光透過板3との接触状態を判定するための電極膜15が設けてある。光透過板3の表面に電極膜を設ける場合は、電極膜の透明性が必要であるため、例えば、酸化インジウムスズ蒸着薄膜や導電性高分子薄膜によって電極膜を形成する。一方、光透過板3の代わりに光反射板を使用する場合は、板2又は光反射板は透明性が必ずしも必要でないため、これらの電極薄膜以外にもアルミニウムや銅等の金属薄膜や導電性高分子等からなる薄膜を使用してもよいし、金属板を使用してもよい。板2と光透過板3若しくは光反射板との間の電気的導通の有無は、例えば、両者の電極膜を結線して電気回路を構成し抵抗計16によって検知する。それによって、球径測定中に非導通と検知される鋼球等の被測定球体は自動的に測定ラインから排除されるようにすれば、迅速で、且つ信頼性のある高精度の測定ができる。この方法は被測定球体が鋼球等の導体に容易に適用できる。被測定球体が導体以外の場合は、高抵抗計又は容量計を用いるか、又は板と光透過板若しくは光反射板の表面又は内部に微小な荷重負荷を感知するセンサ−等を設けても良い。
【0041】
本発明の球径寸法測定方法は、空間中を伝送されたアラゴスポットを観測するものであるために、測定中の雰囲気の微妙なゆらぎによる影響を受けやすい。通常は、測定雰囲気である空気等の流れを調整することによって十分に対応することができるが、測定雰囲気の微妙なゆらぎによる影響を排除するために、本発明では光路周りにフードを設けても良い。ゆらぎ防止用のフードは、少なくともコヒーレント光源から被測定球体までの光路及び被測定球体から受光手段までの光路のどちらかに設ける。このフードを両者の光路に同時に設ける場合は、よりゆらぎの少ないアラゴスポットが観測でき、球径の測定精度を一層向上させるためにはこの方法を採用することが好ましい。
【0042】
本発明は、被測定球体の対象とする数mmから数十mmの範囲にあるベアリング用鋼球等の球体の球径をミクロン以下の精度で測定することを特徴とするが、さらに高精度な測定を行うことが可能である。その方法について説明する。
【0043】
本発明において、コヒ―レントな発散ビーム光を使用する場合、アラゴスポットの輝点部の移動量は、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板までの距離(L)と光透過板からスクリーンまでの距離(Z)で決まる比(L+Z)/Lによって変わる。基準となる参照用球体の球径と被測定球体の球径の差、の半分(すなわち半径の差)が(L+Z)/L倍に拡大されて、アラゴスポットの輝点部の移動量として測定される。比(L+Z)/Lが大きくなるほど輝点部の移動量が大きくなるので、被測定球体の球径をより高精度で測定することができる。すなわち、被測定球体の球径をより高精度で測定したい場合は、比(L+Z)/Lが大きい測定光学系を構築すればよい。ただし、測定光学系においてアラゴスポットが観測されるためには、LおよびZの値を被測定球体の球径から決まる値より大きくしておく必要がある。
【0044】
また、市販品として容易に入手できる固体撮像素子を用いたカメラは、固体撮像素子の1画素の大きさが2〜6μmであるため、画像自体の空間分解能も同じ程度である。しかし、1画素の大きさが2μm以下の固体撮像素子を本発明の受光素子として使用することによって、アラゴスポットの輝点部の移動量をより高精度に測定することが可能となり、被測定球体の球径をより高精度に測定することができる。さらに、観測されたアラゴスポットの輝点部の光強度分布からアラゴスポットの中心点を決める場合は、数学的には平均を求める演算を行っているため1画素の数分の一程度の誤差でアラゴスポットの輝点部の中心点を決定できるので、中心点又は中心点の移動量を使うことで被測定球体の球径を高精度で求めることができる。
【0045】
さらに、観測されるアラゴスポットは、コヒーレント光の光路上で、且つ被測定球体と受光手段との間にアラゴスポットの輝点部を拡大するための対物レンズを設けることによって、輝点部がより鮮明に観測できるようになる。それにより、アラゴスポットの輝点部の位置や輝点部の移動量の測定を高精度に行うことができ、被測定球体の球径を高精度で求めることができる。ここで、使用する対物レンズの倍率は2〜100倍である。
【0046】
このように、本発明は、原理的に球体の球径をミクロン以下の精度で測定でき、測定光学系の構成及び/又は受光素子を改善することによって、測定精度をさらに向上させることができる技術である。
【0047】
本発明を実施の形態によって説明するが、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0048】
[実施の形態1]
図8に、溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。板2と光透過板3はV字状の溝を構成し、被測定球体1はV字状の溝を回転しながら移動する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0049】
図8に示す測定系を用いて、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。また、本実施の形態例では、図8において、光透過板3と該カメラ8までの距離を32cmに設定して測定を行った。
【0050】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で4.6μmであった。このように、本実施の形態例は、次々に板2と光透過板3で構成されるV字状の溝の一端から他端に向けて被測定球体を移動させることで、次々に投入される被測定球体の球径を測定することができ、単位時間あたりの測定個数を増やすことができるという利点を有する。
【0051】
[実施の形態2]
図9に、光反射板を用いて溝内で球体を移動させて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0052】
図9に示す測定系を用いて、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について、実施の形態1と同じ方法でコヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。また、本実施の形態例では、図9において、光反射板13と該カメラ8までの距離は、実施の形態1と同じ32cmに設定して測定を行った。
【0053】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で5.1μmであり、実施の形態1とほぼ同じ結果が得られた。このように、本実施の形態例は、次々に板2と光反射板13で構成されるV字状の溝の一端から他端に向けて被測定球体を移動させることで、次々に投入される被測定球体の球径を測定することができ、単位時間あたりの測定個数を増やすことができるという利点を有する。また、光反射板13の傾きを変えると光路が変わりアラゴスポットができる位置を制御できるので、例えば、レーザ光を複数回反射させて光路長をかせぐことで測定装置の小型化をはかることができるという利点も有する。
【0054】
[実施の形態3]
図10に、発散レーザ光照射によって測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。板2と光透過板3はV字状の溝を構成し、被測定球体1はV字状の溝を回転しながら移動する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からのレンズ4を通した発散レーザ光11を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0055】
図10に示す測定系を用いて、実施の形態1と同じように被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について球径を種類ごとに測定した。本実施の形態例では、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光をレンズ4によって変換した発散レーザ光11による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。また、本実施の形態例では、図10において、ビーム光の焦点Fから光透過板3までの距離(L)は32cm、光透過板3と該カメラ8までの距離(Z)は実施の形態1と同じ32cmに設定して測定を行った。
【0056】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で3.1μmであった。本実施の形態例は、発散レーザ光で被測定球体1を照射することにより、実施の形態1の場合よりも誤差が小さくなった。
【0057】
また、本実施の形態の変形例として、図10において、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板3までの距離(L)及び光透過板3と前記カメラ8までの距離(Z)を、それぞれ17cm及び32cmに設定して比(L+Z)/Lを大きくした条件で、同じようにベアリング用鋼球の10個について球径を測定した。その結果、誤差は最大で2.1μmとさらに小さくなった。
【0058】
このように、本実施の形態例は、発散レーザ光で被測定球体1を照射することにより、球径の変動量が固体撮像素子上ではアラゴスポットの輝点部の移動量として拡大されて測定されるので、球径計測の高精度化が実現できるという利点を有する。
【0059】
[実施の形態4]
ベアリング用鋼球の球径を、図2に示す方法によって幾何的に測定した。コヒ―レントな光源としてHe−Neレーザ光発生装置からの平行レーザ光をレンズによって変換した発散レーザ光を用いた。コヒ―レント光の焦点Fと板2までの距離、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板3までの距離および光透過板3と固体撮像素子までの距離をそれぞれ0.5cm、32cmおよび32cmに設定して、これらの位置関係が測定中に変わらないように強固に固定した。参照用鋼球を係止させた状態でアラゴスポットの輝点部の位置P1を測定した後で、被測定球体であるベアリング用鋼球を係止させた状態でアラゴスポットの輝点部の位置P2を測定した。それらの位置データに基づいて幾何的な計算手順によって被測定球体の中心C2を求め、これより該被測定球体の球径を求めた。このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で2.8μmで、実施の形態3における誤差とほぼ同じ大きさであった。
【0060】
[実施の形態5]
図11に、光路周りにフード10を設けて測定する球体の球径寸法測定方法とその測定装置の概略を示す。板2と光透過板3はV字状の溝を構成し、被測定球体1はV字状の溝を回転しながら移動する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6を移動中の被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0061】
図11に示す測定系を用いて、実施の形態1と同じように、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光6による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、実施の形態1と同じ0.5個/秒の速度で種類ごとに行った。最初に、レーザ光発生装置5と被測定球体1を結ぶ光路中に、該光路に直交するような風を扇風機で送りながら球径を測定し、次に、扇風機はつけたまま該光路にフード10を設置した状態で球径を測定した。また、本実施の形態例では、図11において、光透過板3と該カメラ8までの距離は、実施の形態1と同じ32cmに設定して測定を行った。
【0062】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、前記光路が扇風機の風を受ける状態では誤差は最大で12.6μmであったが、フード10を設けた場合は3.9μmと誤差が低減された。本実施の形態例は、フード10を設置しその中にレーザ光を通すことで空気の流れによる影響を抑えることができるので、フード10を設置しない実施の形態1の場合よりも、球径の測定誤差を減少できるという利点を有する。
【0063】
本実施の形態の変形例として、ビーム光として、図10に示す測定系と同じように、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5による平行レーザ光をレンズ4によって変換した発散レーザ光11を用いて同様の測定を行った。その結果、被測定球体であるベアリング用鋼球の10個について公称値(呼び直径)との誤差は最大で1.7μmとなり、さらに高精度の測定が可能となった。
【0064】
[実施の形態6]
図12に、対物レンズと発散ビーム光照射によって測定する球体の球径寸法測定方法とその装置の概略を示す。図12に示す測定系は、被測定球体1と固体撮像素子を用いたカメラ8との間に対物レンズ14を設ける以外は、図10に示すものと同じである。図12において、板2と光透過板3はV字状の溝を構成する。コヒ―レントな光源であるレーザ光発生装置5からのレンズ4を通した発散レーザ光11を溝中で係止させた被測定球体全体に照射する。被測定球体1の中心からレーザ光の進む向きに半直線7を引く。半直線7の延長上に、対物レンズ14を介して、固体撮像素子を用いたカメラ8を設置する。該カメラ8は被測定球体1の影中の明るい部分を測定するものである。該カメラ8の画像データの出力信号を、データ処理用の演算処理装置を有する画像処理装置9に取り込んで、明るい部分の中心点を計算する。あらかじめ求めておいた球径の異なる参照用鋼球での実験値に基づく実験式に代入して、補間計算によって被測定球体1の球径を計算する。
【0065】
図12に示す測定系を用いて、被測定球体1として球径が3.175〜9.525mmの範囲にあるベアリング用鋼球の10個(5種類)について球径を種類ごとに測定した。本実施の形態例では、コヒ―レントな光源であるHe−Neレーザ光発生装置5からの平行レーザ光をレンズ4によって変換した発散レーザ光11による鋼球からの回折光の干渉の結果として観測されるアラゴスポットの輝点部の移動量を、該カメラ8によって観測し測定を行った。あらかじめ求めておいた球径(3〜10mm)の異なる参照用鋼球で得られた実験式に代入し、補間計算によって被測定球体1の球径を計算した。ここで、球径測定は、被測定球体1を溝中で係止させて行った。また、本実施の形態例では、コヒ―レント光の焦点Fから光透過板3までの距離(L)および光透過板3と該カメラ8までの距離(Z)を、実施の形態3と同じに設定して測定を行った。
【0066】
このようにして被測定球体であるベアリング用鋼球10個について測定した球径を、公称値(呼び直径)と個別に比較した結果、誤差は最大で0.9μmであった。本実施の形態例は、被測定球体1と固体撮像素子を用いたカメラ8との間に対物レンズ14を設けることによって、アラゴスポットが拡大されて該カメラ8で測定されるため、アラゴスポットの輝点部の中心点の測定精度が向上するので、結果的に実施の形態3の方法よりもさらに球径測定の誤差が小さくできるという利点を有する。
【0067】
以上のように、本発明は、被測定球体の球径測定を高精度で、且つ短時間に簡便な方法で行うことができる。また、光学測定系の最適化と受光手段の高性能化によって、測定精度を向上させることができる。加えて、本発明は、ベアリング用鋼球に限定されないで、様々な用途に適用できる点で有用性が極めて高い。
【符号の説明】
【0068】
1・・・被測定球体、2・・・板、3・・・光透過板、4・・・レンズ、5・・・レーザ光発生装置、6・・・平行レーザ光、7・・・レーザ光の進む向き、8・・・固体撮像素子を用いたカメラ、9・・・演算処理装置を有する画像処理装置、10・・・フード、11・・・発散レーザ光、12・・・U字状の係止板、13・・・光反射板、14・・・対物レンズ、15・・・電極膜、16・・・抵抗計又は容量計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する方法であって、被測定球体にコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部で構成されるアラゴスポットの前記輝点部を用いて、前記被測定球体の球径を測定する球体の球径寸法測定方法。
【請求項2】
被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体にコヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置が前記被測定球体の球径に応じて変位することを利用して、前記アラゴスポットの輝点部の移動量から前記被測定球体の球径を測定する請求項1に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項3】
前記アラゴスポットの輝点部の位置の移動量を電気信号に変換して、該電気信号として変換された移動量を用いて、あらかじめ測定して得られたアラゴスポットの輝点部の移動量と球体の球径との関係式から被測定球体の球径に換算することによって、前記被測定球体の球径を測定する請求項2に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項4】
前記被測定球体は板に2点で接して転動又は係止され、前記被測定球体に前記コヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置と前記コヒーレント光の焦点とを結ぶ線分と、前記被測定球体と前記板との接点から定まる2つの接平面どうしが交差する点と前記被測定球体が前記板に接する2点との間で形成される角度を二等分する半直線との交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する請求項1に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項5】
前記被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体に少なくとも2方向からコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる少なくとも2個のアラゴスポットの輝点部の位置と、前記コヒーレント光の焦点とをそれぞれ結んで得られる少なくとも2以上の線分の交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する請求項1に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項6】
前記アラゴスポットの輝点部の位置又は該アラゴスポットの輝点部の移動量は、前記アラゴスポットの輝点部の中心点又は該中心点の移動量として測定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項7】
前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項8】
前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レンズ、反射鏡又はフィルターを介して形成されるレーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする請求項7に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項9】
コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する装置であって、前記コヒーレント光の光源、前記コヒーレント光の進行方向に配置される被測定球体と、該被測定球体が接する板と、該被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットを受光する受光手段と、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量に関する該受光手段からの出力信号を用いて前記被測定球体の球径を算出する演算処理装置とを備えたことを特徴とする球体の球径寸法測定装置。
【請求項10】
前記コヒーレント光の光源は、前記被測定球体が接する板が1枚であるときは2以上であることを特徴とする請求項9に記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項11】
前記のアラゴスポットはスクリーン又は固体撮像素子を介して受光されることを特徴とする請求項9又は10に記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項12】
前記受光手段からの出力信号は、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量が電気的に変換されている信号であることを特徴とする請求項11に記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項13】
前記コヒーレント光の光源は、平行ビーム光又は発散ビーム光を発光するレーザ光源、又は前記レーザ光源の発光側に設けたレンズ、反射鏡又はフィルターを介して平行ビーム光又は発散ビーム光を形成する光源であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項14】
前記コヒーレント光の通過する領域の周囲は、外乱の侵入を阻止するためのフードで覆われていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項15】
前記被測定球体は、板に接し、且つ該被測定球体の前方又は後方が光透過板若しくは光反射板に接して転動又は係止されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項16】
前記コヒーレント光の光路上で、且つ前記被測定球体と前記受光手段との間に、アラゴスポットの輝点部の中心部分を拡大するための対物レンズを設けることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の球径寸法測定装置。
【請求項17】
前記被測定球体が接する板は、前記被測定球体と接する側に電極を設けることによって、電気抵抗又は電気容量の変化から前記被測定球体との接触状態を判定する機能を有することを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項1】
コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する方法であって、被測定球体にコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる干渉縞と輝点部で構成されるアラゴスポットの前記輝点部を用いて、前記被測定球体の球径を測定する球体の球径寸法測定方法。
【請求項2】
被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体にコヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置が前記被測定球体の球径に応じて変位することを利用して、前記アラゴスポットの輝点部の移動量から前記被測定球体の球径を測定する請求項1に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項3】
前記アラゴスポットの輝点部の位置の移動量を電気信号に変換して、該電気信号として変換された移動量を用いて、あらかじめ測定して得られたアラゴスポットの輝点部の移動量と球体の球径との関係式から被測定球体の球径に換算することによって、前記被測定球体の球径を測定する請求項2に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項4】
前記被測定球体は板に2点で接して転動又は係止され、前記被測定球体に前記コヒーレント光を照射することによって前記被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットの輝点部の位置と前記コヒーレント光の焦点とを結ぶ線分と、前記被測定球体と前記板との接点から定まる2つの接平面どうしが交差する点と前記被測定球体が前記板に接する2点との間で形成される角度を二等分する半直線との交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する請求項1に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項5】
前記被測定球体は板に接して転動又は係止され、前記被測定球体に少なくとも2方向からコヒーレント光を照射することによって該被測定球体の影中の部分に生じる少なくとも2個のアラゴスポットの輝点部の位置と、前記コヒーレント光の焦点とをそれぞれ結んで得られる少なくとも2以上の線分の交点から、幾何的に前記被測定球体の球径を測定する請求項1に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項6】
前記アラゴスポットの輝点部の位置又は該アラゴスポットの輝点部の移動量は、前記アラゴスポットの輝点部の中心点又は該中心点の移動量として測定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項7】
前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項8】
前記の被測定球体に照射されるコヒーレント光は、レンズ、反射鏡又はフィルターを介して形成されるレーザによる発散ビーム光又は平行ビーム光であることを特徴とする請求項7に記載の球体の球径寸法測定方法。
【請求項9】
コヒーレント光を用いて被測定球体の球径を測定する装置であって、前記コヒーレント光の光源、前記コヒーレント光の進行方向に配置される被測定球体と、該被測定球体が接する板と、該被測定球体の影中の部分に生じるアラゴスポットを受光する受光手段と、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量に関する該受光手段からの出力信号を用いて前記被測定球体の球径を算出する演算処理装置とを備えたことを特徴とする球体の球径寸法測定装置。
【請求項10】
前記コヒーレント光の光源は、前記被測定球体が接する板が1枚であるときは2以上であることを特徴とする請求項9に記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項11】
前記のアラゴスポットはスクリーン又は固体撮像素子を介して受光されることを特徴とする請求項9又は10に記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項12】
前記受光手段からの出力信号は、前記アラゴスポットの輝点部の位置又は前記アラゴスポットの輝点部の移動量が電気的に変換されている信号であることを特徴とする請求項11に記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項13】
前記コヒーレント光の光源は、平行ビーム光又は発散ビーム光を発光するレーザ光源、又は前記レーザ光源の発光側に設けたレンズ、反射鏡又はフィルターを介して平行ビーム光又は発散ビーム光を形成する光源であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項14】
前記コヒーレント光の通過する領域の周囲は、外乱の侵入を阻止するためのフードで覆われていることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項15】
前記被測定球体は、板に接し、且つ該被測定球体の前方又は後方が光透過板若しくは光反射板に接して転動又は係止されていることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【請求項16】
前記コヒーレント光の光路上で、且つ前記被測定球体と前記受光手段との間に、アラゴスポットの輝点部の中心部分を拡大するための対物レンズを設けることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の球径寸法測定装置。
【請求項17】
前記被測定球体が接する板は、前記被測定球体と接する側に電極を設けることによって、電気抵抗又は電気容量の変化から前記被測定球体との接触状態を判定する機能を有することを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の球体の球径寸法測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−185120(P2012−185120A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50094(P2011−50094)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【Fターム(参考)】
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