説明

環境音再生を伴うナビゲーション装置

【課題】自動車の走行につれて経路の環境音を自動的に再生する。
【解決手段】地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部21と、前記地図座標に関連づけられた強度分布を有する環境音を記憶した環境音データ記憶部22と、前記地図データ記憶部21から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍からの鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ28の画面上に再生する地図画像再生部25と、前記環境音データ記憶部22から現在の自己位置に対応する環境音データを読み出して少なくとも1つのスピーカ29、30に環境音として再生する環境音再生部26とを備え、前記環境音再生部26は、前記環境音データ記憶部から読み出された環境音データの大きさに比例した強度の環境音として前記スピーカに再生するように構成されているナビゲーション装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーナビ、歩行ナビ等のナビゲーション方法に関し、特に環境音再生を伴うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の現在の自己位置を検出してその位置を中心とする地図情報を表示するカーナビゲーションが実用化されている。例えば、本発明者により提案された特開平1−263688号では、精細データと粗データをROM、ハードディスクその他の記録メディアに記憶し、宇宙衛星、ジャイロスコープ等を利用した現在の自己位置検出器及び方位検出器から得られる現在の自己位置・方位情報に従って、各種の透視図法の一つに従ってディスプレイ上に現在の自己位置の前方の周辺を精細に拡大表示し、遠方を小さく圧縮して表示する。
同種の方法は特開平11−86027号にも記載され、地理上の各地点に関連した1種以上の仮想の画像情報を蓄積したデータ記憶部、及び通信手段により受信する仮想情報の蓄積部を用意し、カーナビ搭載車や歩行ナビ携帯者の現在の自己位置からの対象物までの距離と方位を距離計及び方位計により検出し、前記データ記憶部及び蓄積部から対象物の1種以上の仮想情報を読み取り表示し、同時に前記対象物例えば施設の内外の画像や商店の商品情報をディスプレイ上に表示する。またその際に撮像手段により対象物の実像画像を撮像し、実像画像を同時に表示して仮想画像と対比することもできる。さらに対象物又はその内部の情報を音声で解説することもできると記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−263688号
【特許文献2】特開平11−86027号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの従来技術によるナビゲーション法では、ディスプレイ上に透視図法により地図画像の表示を行う際に、特定対象物に関する情報を音声で再生することができるが、自動車やヒトの進行につれて周辺の状況を鐘、水流、街の音、飛行場の発着、等、音源の特性に応じて、かつ自動車等の進行につれて自動的に又は希望する時に環境音を再生する方法は提案されていない。周囲からの音は街の騒音に紛れており、或いは自動車の風防ガラスにより阻止されており、通常では殆ど聞こえない。また若干遠くの音源からの音は通常は聞こえない。
通常は聞こえない範囲に或る音源でも有名な寺院等からの音はその方向と共に聞こえることは、カーナビや歩行ナビの使用者にとって周囲状況や雰囲気が地図情報と共に把握できるので好ましく、また乗用車のような閉じた室内では環境音をステレオや多チャンネルで楽しめることになれば一種の環境空間劇場が実現でき、楽しさが増す。
本発明はかかる課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は鳥瞰図等の透視図形態の地図をナビゲーション装置のディスプレイに表示する従来のナビゲーション装置において、ナビゲーション装置を搭載した車又は携帯したヒトが進行する経路に沿って、周囲環境の音源からの音声又は模擬音を現在の自己位置からの音源までの距離及び方位の両者が把握できる状態で再生する装置を提供する。
(1)すなわち、本発明は、地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部と、前記地図座標に関連づけられた音色と音強度と音源の方位とを含む環境音データを記憶した環境音データ記憶部と、前記地図データ記憶部から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍からの鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ画面上に再生する地図画像再生部と、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置又はその近傍に対応する一つ以上の環境音データを読み出して複数のスピーカで環境音として前記音色で再生する環境音再生部とを備え、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から読み出された前記環境音データのうち音強度に前記前進方向又は向きと音源の方位とに依存した減衰特性と位相差を導入した複数の信号を生成し、複数の前記スピーカに加えるように構成されているナビゲーション装置である。
【0006】
(2)より具体的には、本発明は、地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部と、前記地図座標に関連づけられた音色と音強度と音源の方位とを含む環境音データを記憶した環境音データ記憶部と、前記地図データ記憶部から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍の鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ画面上に再生する地図画像再生部と、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置に対応する環境音データを読み出して複数のスピーカで環境音として前記音色で再生する環境音再生部とを備え、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から読み出された前記環境音データのうち音強度に前記前進方向又は向きと音源の方位との間の偏角に依存した減衰特性と位相差を導入した複数の信号を生成し、複数の前記スピーカに加えるように構成されているナビゲーション装置を提供する。
【0007】
(3)本発明はまた、地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部と、前記地図座標に関連づけられた音色と音強度と音源の方位とを含む環境音データを記憶した環境音データ記憶部と、前記地図データ記憶部から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍からの鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ画面上に再生する地図画像再生部と、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置の近傍の複数の地図座標に対応する環境音データを読み出して複数のスピーカで環境音として前記音色で再生する環境音再生部とを備え、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から読み出された前記複数の環境音データのうちそれぞれの音強度に前記前進方向又は向きと音源の方位との間の偏角に依存した位相差を導入し、複数の前記スピーカに加えるように構成されているナビゲーション装置を提供する。
【0008】
更に、好ましくは、本発明は上記のナビゲーション装置において、選択された地図座標に関するポップアップ映像を記憶する映像データ記憶部、自動的に又は手動で指示されたときに前記選択されたポップアップ映像を前記地図画像と共に前記ディスプレイ上に表示する手段を含み、前記環境音再生装置は使用者が前記ポップアップ映像をタッチしたときに前記ポップアップ映像に関連した環境音を再生するようにすることが望ましい。
【0009】
好ましくは、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置に対応する環境音データの読み出しと再生を修正させる手段を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境音記憶部に、環境音の分布の座標位置における強度と座標位置から見た音源の方位が環境音データとして記憶されているので、それに応じた強度で、或いはさらに音源の方向が把握できる状態で再生することができる。
ナビゲーション装置のディスプレイ上に透視図法により地図画像の表示を行う際に、自動車やヒトの前進につれて周辺の状況を鐘、水流、海の浪音、街の音、パレードや祭りで出る音、飛行場の発着など、音源の特性に応じて、かつ自動車等の前進につれて自動的に又は希望する時に環境音再生装置から再生される。このようにして、通常は聞こえない範囲に或る音源例えば有名な寺院や教会からの音がその方向と共に聞こえるので、カーナビや歩行ナビの使用者にとって周囲状況や雰囲気が地図情報と共に把握できる効果が得られる。また乗用車のような閉じた室内では環境音をステレオや多チャンネルで楽しめることになれば一種の環境空間劇場が実現でき、楽しさが倍増する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
環境音源の選択は任意に定めれば良く、音源を有する著名な場所や施設、交差点、イベント会場、河川、鉄道、飛行機等に限定して地図座標に関連づけて環境音データ記憶部に記憶されていれば良い。ここでの環境音はあくまで空間を圧縮した人工的なものであり、ナビゲーション装置を搭載した自動車等の現在の自己位置と実際の施設の距離が遠くても実際と同一の方向から強調されて聞こえるように強度分布を定めることができる。例えば1kmの距離にある音源を100mの距離になるかのような強度分布を定める。
【0012】
環境音データは例えば音声ミキサーを利用することにより、任意の音源を模擬することができる。そして例えば音源を分類してコード化して環境音データの一部として記憶しておく。そのコードに従った音色を選択し、地図座標に関連付けて記憶されている環境音強度で再生するか、又はこの強度に強度分布の勾配に対応して左右強度に差を付けて2つのスピーカや多チャンネルスピーカで再生する。
【0013】
環境音データは、地図座標に関連づけられており、音源からその地図座標までの距離に応じた強度分布(距離の2乗に反比例するのが普通であるが、線形減衰、障害物がある場所での非対称分布など適宜でよい)で減衰する強度を表すデータと、上記の音色を表すデータとを含む。従って環境音データはベクトル(地図上の座標、その座標点での音の強度、音色コード)とか、ベクトル(地図上の座標、その座標点でのその音源からの音の強度、その座標点での音源の方位、音色コード)等から構成できる。座標はナビ装置の自己位置から環境音データ記憶部へアクセスするためのアドレスの役目をする。なお音源データの一つとして方位の代わりに音源の座標を使用しても良く、この場合には現在位置又はその周辺の特定の地図座標と音源位置の地図座標から方位が分かり左右又は前後左右の再生音に位相差や強度差を付けることができる。方位は音の迂回も考慮できるので音源の座標を使用する場合よりもより真実らしく環境音を再現できる。
【0014】
音源の方向の知覚は、左右の耳が受ける音の強度差及び位相差(音が到達する時間差)を聞き分けることにより行われるといわれている。音の強度は音が頭部を迂回することにより減衰する。遠方の音源から来る音の強度は左右の耳の位置で実質的に差がないが頭部を迂回する際に大きく減衰して到達するので人の脳が方向を判断する材料となる。音の位相は音が頭部を迂回することにより遅延する時間差に相当するので人の脳が方向を判断する材料となる。このように音の方向の認識にはその他の要素(例えば前後方向の音の判断は視覚が関係している)も関係があるとされているが、主として左右の耳に到達する音の強度差と位相差が関係している。(日本音響学会編「音のなんでも小辞典」講談社1996年12月20日発行第227−230頁)。
【0015】
本発明はこの原理を利用する。
先ず、音源が比較的遠い場合には、ナビゲーション装置の現在位置に到達する音は左右の耳の位置で差がないが、上記の人の頭部周りの音の伝達特性を考慮して単一の環境音データから複数のスピーカに加えるべき複数の音の強度と位相を決定する。これが上記の(2)のナビゲーション装置である。
次に、音源が比較的近い場合には、ナビゲーション装置の現在位置に到達する音は左右の耳の位置で差があるので、上記の人の頭部周りの音の伝達特性を考慮して現在位置の近傍における複数の環境音データからそれに対応した複数のスピーカに加えるべき複数の音の強度と位相を決定する。これが上記の(3)のナビゲーション装置である。
上記(3)のナビゲーション装置の原理は、音源が比較的遠い場合でも有効である。ただしこの場合には、ナビゲーション装置の現在位置に到達する音は左右の耳の位置で差がないが、自己位置から相当に離れた(例えば10mのような)複数点の地図座標(例えば自己位置を中心とし進行方向を軸線とした長方形の4隅の座標)に相当する複数の環境音データから上記の人の頭部における伝達特性を考慮して複数のスピーカに加えるべき複数の音の強度と位相をそれぞれ決定する。音の強度に応じて上記(3)の座標点を選択することが可能である。
なお、人の頭部による伝達特性は複雑であるが、適宜に単純化することができる。例えばナビ装置の進行方向から音源方向への角度をθとすれば、I0―Asinθのような単純化した強度差を有する左右の音を生成すればよい。ただしI0は基本の強度、Aは適宜に選択した減衰係数とする。位相についても同様な微調整が可能である。
【0016】
環境音データはベクトル(地図上の座標、その座標点での音の強度、その座標点での音源の方位、及び音色コード)で表される。上記(2)のように、音源から遠い場合には左右又は左右前後の座標点の強度を使用しなくても自己位置の座標点での環境音データ中の強度と音源の方位に自己の進行方向を関連づけて左右強度と位相を容易に生成することができる。また上記(3)のように音源に近い場合や遠い場合でも適宜に選択した複数の座標点を使用し、音源の方位に自己の進行方向から、左右又は左右前後のスピーカに加えるべき左右又は左右前後の強度と位相を容易に生成することができる。
【0017】
一方、地図画像データは、地図座標に関連づけられている。地図画像データに基づいて地図画像をディスプレイ上に表示する技術は先に記載した特許文献1に記載されているので詳細は省く。また表示した地図画像と共に自己位置から目標地点までの所望の経路例えば最短経路や所望経路を表示する方法、所望経路に沿った建物等を地図画像と共にディスプレイ上に表示する方法、地図画像データをインターネット経由で、又は無線経由で地図画像データ記憶部(ハードディスク等)に記憶させることも公知であるので詳細は省く。これらは上記特許文献2等を参照されたい。
【実施例】
【0018】
以下本発明を図面に関連して詳細に説明する。
図1は地図画像と、関連した建物、施設、場所等(5で代表して示す)と共にディスプレイ上に表示した鳥瞰図であり、これらをまとめて地図画像1と称する。現在の自己位置(カーナビ又は歩行ナビ等のナビゲーション装置の位置)から目標地点へのルート3は従来のナビゲーション装置の原理に従って設定される。所望により、設定されたルートの両側に存在する目立った建物や名所等、例えば温泉7、ビル内部9、駅ターミナル11、イベント12等が地図画面からの指示線と共に地図画面の欄外にポップアップ映像として表示される。
【0019】
ところで、上記の7〜12の場所等には特有の環境音が存在し、例えば温泉では湯もみの音、野鳥の声、ビル内のレストランでは厨房の音、駅ターミナルでは雑踏のざわめきやアナウンス、イベント会場では音楽等が聞こえる。これらの環境音は建物の壁による透過率を調整し、又音源からの距離に応じて減衰(正規には自乗に比例して減衰)した強度でルート3に聞こえてくるので、音の強度分布を適宜に人工的に設定し、それを地図座標に対応させ、音源の音色コードと共に環境音データ記憶部に記憶させる。
【0020】
この様子を図2に示す。図2では音源はルート3の周りの音源13−1、13−2、13−3等で表され、その強度分布は音源を中心とした円錐状の等高線で表される。従って、今ルート3をナビゲーション装置15を搭載した自動車等が通過すると、自動車は進行方向に応じた音のポテンシャルの中を通過することになり、それに人の頭部周りの伝達特性に依存して左右の耳には強度と位相の異なった音として聞こえ、これにより音源の方向が判別できる。
【0021】
本発明ではこれと同じことを座標に関連づけた音強度分布の環境音データとして記憶部に記憶させ、自動車等が画面上のルート3に相当する地点を通過するときに、前記(2)のように、現在位置の座標点での車の進行方向と音源の方位と頭部の伝達特性に依存した位相差と強度差を導入して左右の人工音を生成し、車内の左右前後のスピーカで再生する。
【0022】
前記(3)のナビゲーション装置では、記憶部からその地点に相当する記憶部の環境音データを記憶部の地図座標点FL(前方左一定距離にある座標点)、FR(前方右一定距離にある座標点)、RF(後方左一定距離にある座標点)、及びRR(後方右一定距離にある座標点)から読み出し、それらの座標における音源の方位と進行方向から座標点間の位相差が計算できるから、それらの座標点からの音強度と計算された位相差とを用いて車内の左右前後のスピーカで再生する。好ましくは車の進行方向と音源の方位と頭部の伝達特性に対応して各座標点での位相差と強度の減衰を更に導入して、より現実感に近い再生音を作出することができる。
【0023】
こうして、自動車の進行につれて、自動車の向きが変われば同じ音源でも左右の強度バランスと位相差が異なってくるので、音源の方向が相対的に変化し自身が変位したかのような感覚を得ることができる。
音源は各地図座標にせいぜい数個入れておけば充分に環境音を感じることができる。
【0024】
図3は自動車に搭載したカーナビ15と複数のスピーカ17−1、17−2等を配置した様子を示す。
図4は歩行ナビの2つのスピーカを2つのヘッドホン19−1、19−2とした場合であり、歩行者が向きを変えると歩行ナビも向きを変えるが、ジャイロなどによりその動きを検出し補正することにより音源の方向が逆回転し視覚等の感覚と合わせ自身の変位を認識できる。
【0025】
以上が本発明の基本原理であるが、これを実現する具体的な手段と方法を説明する。
図5は本発明のナビゲーション装置(以下「ナビ装置」と省略する)の構成を示す実施例である。
地図画像のデータ(情報)はナビ装置内の地図データ記憶部21に、環境音のデータは環境音データ記憶部22にそれぞれ予め記憶されているが、適宜にハードディスクの交換やインターネット31、無線32を通じて適宜更新でき或いは補充できる。
地図データ記憶部21は地図画像再生部25に接続され、環境音データ記憶部22は環境音再生部26に接続されている。再生部25は、通信衛星やその他の誘導電波をアンテナ24から入信する信号から自己位置を検出する自己位置検出器23、及びジャイロスコープ等の自己向き検出器27により再生を制御される。すなわち、地図画像再生部25は自己位置の近傍の地図画像をナビ装置のディスプレイ28に自己位置から進行方向に見た鳥瞰図として再生する。再生部26は、同様に検出器23、27により再生を制御される。即ち、環境音再生部26では複数個のスピーカ又はヘッドホン(本例では2個)を進行方向に見て正しい向きで再生する。地図画像の再生は以前から実用化されているため詳細を省くので、特許文献1、2等を参照されたい。
ここに自己位置とはナビ装置の位置のことを指し、自己向き(方向)とはナビ装置の進行方向すなわち前方の向きを指す。
【0026】
図6は環境音再生装置26の一例を示す。環境音データは前記のようにベクトル(位置座標、その座標での音強度、その座標からの音源の方位、音色コード)で構成されており、ナビ装置は通信衛星やジャイロスコープにより自己位置と向きを常時把握しているので、環境音読出し器40は環境音データ記憶部22(図5)から自己位置と進行方向に直角な方向に近接した位置の、または自己位置近傍の進行方向に直角な方向に近接した2つの(好ましくは左右前後4つの)位置の環境音強度信号と音色コードを読み取る。音色合成器41は複数周波数の発振器42から発振信号を音色コードに基づいて合成して当該音色コードに相当する所定の音色信号を生成し、左右の位相・強度調整及び電力増幅器44、45に送り、そこで音色信号は左右の環境音強度信号と位相差信号に基づいてレベル及び位相調整され、左右のスピーカ29、30に送られる。
この工程は自動車の走行又は歩行者の移動や方向転換に対応できるように刻々修正される。
【0027】
図7は本発明のナビ装置の動作の一例を示す。図で左半分地図画像の表示方法であり、スタート1(スイッチオン)でナビ装置を始動し、衛星等を利用して自己位置を決定し(S1)、またジャイロ等により自己の走行方向又は歩行方向を決定し(S2)、地図画像データ部から自己位置周辺の地図画像データを読み出して地図画像をディスプレイ上に鳥瞰形式で表示する(S3)。S1からS3の動作は絶え間なく繰返され画像は修正される。なお使用者はこの地図画像を見ながらルート探索等の操作、選択、設定等を行う等の操作を行いうるがいずれも公知である。場合により点線で示したように使用者の選択により又は自動的に代表的な施設等をポップアップ表示できる(S4)ことは図1に関連して述べたとおりである。もしも環境音を得たければ段階S5で使用者がポップアップ映像に手で触れ(タッチ)、環境音の再生を始動することができる。
【0028】
図の右半分を参照するに、上記ポップアップ映像へのタッチで、又はスタート2(スイッチオン)で環境音データ記憶部からの読み取りを開始する。すなわち先ず自己位置を決定し(S6)また自己の向きを決定する(S7)。この部分は左半分の対応部分と同じ動作であるので(S6=S1、S7=S2)別に行う必要はない。
自己位置と向きが決定されるとそれを記憶装置のアドレスとして利用して環境音データ記憶部22から音色コード、環境音強度及び方位が信号として読み出される(S8)。環境音強度信号は自己位置と向きに基づいて進行方向に直角な自己位置の左右方向2個所の環境音データからの環境音信号である。次いで環境音コードに基づいて発振器からの複数発振周波数が合成されて特定の音色信号が合成される(S9)。この音色信号は例えば寺院の鐘の音である。合成された音色信号は左右の環境音信号によりレベル及び位相調整され(S10)、スピーカに送られる。S6からS10の動作は絶え間なく繰返され表示される内容が絶え間なく更新される。なお段階S9において頭部周りの伝達特性を考慮して更に強度と位相の調整をしても良い。
なお、上に述べたようにポップアップ映像の画面上をタッチすることにより環境音再生ループを始動しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、カーナビゲーションや歩行者ナビゲーションに広く応用できる。
例えば次のような利用形態が可能である。
利用形態
カーナビに適用する例を図8を参照して説明するに以下のA、B、Cの順次動作が可能である。また図9はその詳しいフローシートを示す。
A(走行開始前)
これから向かおうとする目標(目的地)の観光地や地方から都会に向かう場合には街の音と影像をディスプレイ画面上の鳥瞰図で認識できる。目的地の説明も合わせて聴くことができる。そして目的地に至る経路も経路シュミレーションにより確認できる。
B(走行中)
通過中の経路に比較的近い名所、イベント、設備などの選別された場所からの音を聞くことができる。走行中の時間を利用して目的地に関する或いは走行経路に沿った説明(特開2004−212131に記載の歩行または走行ナビ)と合わせて聴くことができる。
C(目的地到着時)
目的地の付近に到着したら、その地区全体又は周辺の任意の地区にスクロールしてディスプレイ上の鳥瞰図と合わせて環境音を再生することで、一種の現実空間圧縮劇場として空間の広がり全体が利用者に認識できる。
D(歩行ナビ)
次いで歩行ナビ(特開2004−212131)に本願の環境音再生を併用して目的地での散策探訪に移行できる。目的地の知識はBの段階で或る程度得られているので、主に感性的なレベルでナビ空間を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】地図画像と、関連した建物、施設、場所等(5で代表して示す)と共にディスプレイ上に表示した鳥瞰図である。
【図2】環境音の複数の音源とその強度分布の例を示す。
【図3】自動車にカーナビと複数のスピーカを配置した様子を示す。
【図4】歩行ナビに2つのヘッドホンを付設した状態を示す図である。
【図5】本発明のナビゲーション装置の構成を示す実施例である。
【図6】本発明の環境音再生部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の動作例を示すフロー図である。
【図8】本発明の利用形態を段階A〜Cとして示した図である。
【図9】上記の利用形態を示すフローシートである。
【符号の説明】
【0031】
1 地図画像
3 ルート
7、9、11、12 ポップアップ映像
13−1、13−2、13−3 音源
15 ナビゲーション装置
17−1、17−2 スピーカ
19−1、19−2 ヘッドホン
21 地図データ記憶部
22 環境音データ記憶部
23 自己位置検出器
25 地図画像再生部
26 環境音再生部
27 自己向き検出器
28 ディスプレイ
29、30 スピーカ
40 環境音読出し器
41 音色合成器
42 発振器
44、45 左右音強度位相調整電力増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部と、前記地図座標に関連づけられた音色と音強度と音源の方位とを含む環境音データを記憶した環境音データ記憶部と、前記地図データ記憶部から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍からの鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ画面上に再生する地図画像再生部と、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置又はその近傍に対応する一つ以上の環境音データを読み出して複数のスピーカで環境音として前記音色で再生する環境音再生部とを備え、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から読み出された前記環境音データのうち音強度に前記前進方向又は向きと音源の方位とに依存した減衰特性と位相差を導入した複数の信号を生成し、複数の前記スピーカに加えるように構成されているナビゲーション装置。
【請求項2】
地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部と、前記地図座標に関連づけられた音色と音強度と音源の方位とを含む環境音データを記憶した環境音データ記憶部と、前記地図データ記憶部から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍からの鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ画面上に再生する地図画像再生部と、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置に対応する環境音データを読み出して複数のスピーカで環境音として前記音色で再生する環境音再生部とを備え、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から読み出された前記環境音データのうち音強度に前記前進方向又は向きと音源の方位との間の偏角に依存した減衰特性と位相差を導入した複数の信号を生成し、複数の前記スピーカに加えるように構成されているナビゲーション装置。
【請求項3】
地図座標に関連づけられた地図画像データを記憶した地図データ記憶部と、前記地図座標に関連づけられた音色と音強度と音源の方位とを含む環境音データを記憶した環境音データ記憶部と、前記地図データ記憶部から地図画像データを読み取り該地図画像を現在の自己位置近傍からの鳥瞰図として装置の進行方向又は向きを前方にしてディスプレイ画面上に再生する地図画像再生部と、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置の近傍の複数の地図座標に対応する環境音データを読み出して複数のスピーカで環境音として前記音色で再生する環境音再生部とを備え、前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から読み出された前記複数の環境音データのうちそれぞれの音強度に前記前進方向又は向きと音源の方位とに依存した偏角に依存した位相差を導入し、複数の前記スピーカに加えるように構成されているナビゲーション装置。
【請求項4】
更に、好ましくは、本発明は上記のナビゲーション装置において、選択された地図座標に関するポップアップ映像を記憶する映像データ記憶部、自動的に又は手動で指示されたときに前記選択されたポップアップ映像を前記地図画像と共に前記ディスプレイ上に表示する手段を含み、前記環境音再生装置は使用者が前記ポップアップ映像をタッチしたときに前記ポップアップ映像に関連した環境音を再生するようにする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記環境音再生部は、前記環境音データ記憶部から現在の自己位置に対応する環境音データの読み出しと再生を修正させる手段を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−266902(P2006−266902A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86021(P2005−86021)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(597106600)有限会社ヴェルク・ジャパン (4)
【Fターム(参考)】