説明

環状オレフィン付加重合体の製造方法、環状オレフィン付加重合用触媒、および遷移金属化合物

【課題】 環状オレフィン付加重合にも、環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合にも高い重合活性を示す重合触媒及び重合方法を提供する。
【解決手段】 特定構造の周期表第4族遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/または周期表第4族遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物との組み合わせからなる触媒の存在下に、環状オレフィンを付加重合する環状オレフィン付加重合体の製造方法。また、上記特定構造の周期表第4族遷移金属化合物においては、周期表第4族遷移金属とシクロペンタジエニル環が、η1結合様式で結合していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン付加重合体の新規な製造方法とそれに用いられる重合触媒、および遷移金属化合物に関する。
本発明の重合触媒は、特に環状オレフィン付加重合および環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合がともに高活性で進行するという特性を有する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネンやテトラシクロドデセンなどの環状オレフィン付加重合体、またはノルボルネンやテトラシクロドデセンなどの環状オレフィンとエチレンまたはプロピレンなどのα‐オレフィンとの付加共重合体は、耐熱性、透明性、低吸水性、低複屈折性、電気特性などに優れるため、光学レンズ、光メモリディスク、光ファイバー、光学フィルムなどの光学部品や、電気絶縁材料などの電子・電気部品に適する材料であることが知られている。
【0003】
近年、これらの重合体の製造触媒や製造方法が数多く提案されている。例えば、環状オレフィン付加重合触媒としては、特許文献1,2記載のNi,Pd触媒などが提案されている。また、環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合触媒としては、特許文献3,4記載のメタロセン触媒やポストメタロセン触媒などが提案されている。
しかしながら、特許文献1,2記載のNi,Pd触媒は、環状オレフィン付加重合には高い活性を示すが、α−オレフィンとの付加共重合は全く進行しない。一方、特許文献3,4記載のメタロセン触媒やポストメタロセン触媒は、環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合には高い重合活性を示すが、環状オレフィンの付加重合はほとんど進行しない。したがって、環状オレフィン付加重合と環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合のいずれをも高活性で重合する触媒が求められていた。
【0004】
この課題に対して、特許文献5には、フルオレニル基を有するいわゆるCGC型メタロセン触媒を用いると、ノルボルネン付加重合もノルボルネン/エチレン付加共重合も比較的高活性で重合できることが記載されているが、工業的に使用するには活性が不十分と言わざるを得ない。
また、非特許文献1に記載されている置換フルオレニル基を有するCGC型メタロセン錯体は、置換フルオレニル基とη1結合様式で結合していること、さらに該メタロセン錯体からなる触媒を用いると、特に長鎖のα−オレフィンを高活性で重合することが記載されているが、環状オレフィンに対する重合性は知られていなかった。
【0005】
さらに特許文献6の請求項1には、中性ルイス塩基が第4族遷移金属原子に配位した錯体が記載されているが、具体例は示されていない。これは、特許文献6記載の第4族遷移金属化合物は、置換シクロペンタジエニル基と第4族遷移金属原子がη5結合様式で結合する化合物しか示されていないからである。
【0006】
【特許文献1】特表平9−508649号公報
【特許文献2】WO00/20472号公報
【特許文献3】特開平3−45612号公報
【特許文献4】特開2004−331966号公報
【特許文献5】特開2004−107442号公報
【特許文献6】特表平5−507756号公報
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society 126巻、pp16716−16717、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、環状オレフィン付加重合にも、環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合にも高い重合活性を示す重合触媒および重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、置換シクロペンタジエニル基が周期表第4族金属原子にη1結合様式で結合した遷移金属錯体は、置換シクロペンタジエニル基と遷移金属との間に大きな空間が生じ、中性ルイス塩基が配位すること、さらに、該遷移金属錯体とアルミノキサンやボレートと組み合わせた重合触媒は、環状オレフィンや1−ヘキセンなどの嵩高いオレフィンに対しても、エチレンやプロピレンなどの比較的小さなオレフィンに対しても極めて高い重合活性を示し、その結果、環状オレフィン付加重合も環状オレフィン/α−オレフィン付加共重合も、ともに高活性で重合できることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と、有機アルミニウムオキシ化合物(B)および/または一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)との組み合わせからなる触媒の存在下に、環状オレフィンを付加重合する環状オレフィン付加重合体の製造方法が提供される。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。C54―xxは、x個の置換基Qで置換されたシクロペンタジエニル環であり、xは1〜4の整数で、Qは、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、C54―xxは、2つの隣接した置換基Qが互いに結合して炭素数4〜20の環を形成し、多環式シクロペンタジエニル環であってもよい。Lは中性ルイス塩基であり、yは1〜2の整数である。)
【0012】
また、本発明によれば、上記一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と、有機アルミニウムオキシ化合物(B)および/または一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)との組み合わせからなる、環状オレフィンの付加重合用触媒が提供される。
また、本発明によれば、下記一般式(3)で示される周期表第4族遷移金属化合物が提供される。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、Mがチタンである場合は、R6とR7、および/またはR8とR9は、互いに結合して環を形成してもよい。Lは中性ルイス塩基である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環状オレフィン付加重合体から環状オレフィン/α‐オレフィン付加
共重合体までを任意の組成比(環状オレフィンの組成比=1モル%〜100モル%)で効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔周期表第4族遷移金属化合物(A)〕
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造に用いられる触媒は、下記一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)(以下、単に「遷移金属化合物(A)」ということがある。)と、有機アルミニウムオキシ化合物(B)および/または一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)との組み合わせからなる。
【0017】
【化5】

【0018】
式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。C5H4―xQxは、x個の置換基Qで置換されたシクロペンタジエニル環であり、xは1〜4の整数で、Qは、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、C54―xxは、2つの隣接した置換基Qが互いに結合して、それぞれのQが結合するシクロペンタジエニル環中の炭素原子とともに炭素数4〜20の環を形成した多環式シクロペンタジエニル環であってもよい。Lは中性ルイス塩基であり、yは1〜2の整数である。
【0019】
一般式(1)で表される遷移金属化合物(A)において、Mは周期表第4族遷移金属、具体的には、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、なかでも、チタン、ジルコニウムが好ましく、チタンが特に好ましい。
1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基およびオクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびアダマンチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基などのアリール基;を挙げることができる。なお、上記アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基はハロゲン原子を置換基として有していても良く、シクロアルキル基およびアリール基は上記アルキル基を置換基として有していても良い。
【0020】
4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。その具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基およびオクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基などのアリール基;を挙げることができる。なお、上記アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基はハロゲン原子を置換基として有していても良く、シクロアルキル基およびアリール基は上記アルキル基を置換基として有していても良い。
【0021】
54―xxは、x個の置換基Qで置換されたシクロペンタジエニル環で、xは1〜4の整数である。Qは、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。その具体例としては、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基およびオクチル基などのアルキル基;ハロゲン原子を置換基として有していてもよい、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ハロゲン原子を置換基として有していてもよい、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基などのアリール基;ハロゲン原子を置換基として有してもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基)またはハロゲン原子を置換基として有してもよいシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)を置換基として有していてもよいシリル基;などを挙げることができる。
【0022】
なお、上記のシクロアルキル基およびアリール基は、上記のアルキル基を置換基として有していても良い。
さらに、C54―xxは、2つの隣接した置換基Qが互いに結合して、それぞれのQが結合するシクロペンタジエニル環中の炭素原子とともに炭素数4〜20の環を形成した多環式シクロペンタジエニル環であってもよい。具体的には、C54―xxが、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基であってもよく、さらにこれらが、上記のアルキル基、アリール基を置換基として有してもよいし、さらに縮合環が結合したものであってもよい。
【0023】
Lは中性ルイス塩基で、yは1〜2の整数である。本発明に用いる遷移金属化合物(A)の置換シクロペンタジエニル基は、遷移金属Mとη1結合様式で結合した場合には、中性ルイス塩基が配位することが容易になる。中性ルイス塩基の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルアニリン、トリエチルアミンなどアミン類;ピリジン、メチルピリジンなどのピリジン類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;フェニルエチルチオエーテルなどのチオエーテル類;ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが挙げられる。これらの中でも、エーテル類、ピリジン類、ホスフィン類、二トリル類が好ましく、エーテル類がより好ましい。
【0024】
本発明に用いる遷移金属化合物(A)は、置換シクロペンタジエニル環と中心遷移金属Mとがη1結合様式で結合した化合物であることが好ましい。η1結合様式であることは、X線結晶構造解析により決定される置換シクロペンタジエニル環の5つの各炭素と中心金属との結合間距離から判断することができる。
【0025】
また、置換シクロペンタジエニル基がη1結合様式で結合する場合は、置換シクロペンタジエニル環と中心金属との間に空間ができるので、中性ルイス塩基が容易に配位することができる。したがって、本発明の遷移金属化合物(A)は、中性ルイス塩基が配位していることにより特定することができる。中性ルイス塩基が配位しているか否かは、元素組成分析、NMRスペクトル分析、X線結晶構造解析などから決定することができる。
【0026】
一般式(1)で示される遷移金属化合物(A)の好ましい具体例としては、一般式(3)で示される化合物を挙げることができる。
【化6】

(式中、R1〜R9、MおよびLは、それぞれ、前に記載した一般式(3)中のものと同様である。)
一般式(3)中のR1〜R5の具体例としては、一般式(1)中のR1〜R5と同様なものを挙げることができ、また、R6〜R9の具体例としては、一般式(1)中のR4およびR5と同様なものを挙げることができる。
【0027】
遷移金属Mとしては、チタンおよびジルコニウムが好ましい。R1は、t−ブチル基、アダマンチル基およびフェニル基が好ましい。R2およびR3はメチル基およびフェニル基が好ましく、R4およびR5は、塩素原子、臭素原子、メチル基およびフェニル基が好ましい。Lは、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランが好ましい。R6〜R9は、水素原子および炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
なお、一般式(3)で示される化合物は、Mがジルコニウムまたはハフニウムであって、かつ、R6とR7、および/またはR8とR9が、互いに結合して環を形成した化合物を除き、新規である。
【0028】
一般式(3)で示される化合物の中でも、一般式(2)で示されるチタン化合物が、環状オレフィンの付加重合に対しても、環状オレフィン/α‐オレフィン付加共重合に関しても特に高い重合活性を示すので、好ましい。
【化7】

(式中、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。Lは中性ルイス塩基である。)
なお、一般式(2)におけるR1〜R5、Lの具体例は上記一般式(1)中のものと同様である。
【0029】
一般式(1)で示される遷移金属化合物(A)は、既知の合成方法、例えば、Journal of the American Chemical Society,126巻、pp16716−16717(2004年)やMacromolecules,31巻、10号、pp3184−3188(1998年)記載の合成方法、または、『Metalorganic Catalysts for Synthesis and Polymerization』Kaminsky,W.編集、Springer−Verlag(Berlin)出版、pp264−273(1999)記載の合成方法を用いて、合成することができる。
【0030】
〔有機アルミニウムオキシ化合物(B)、および一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)〕
(B)成分および(C)成分は、遷移金属化合物(A)を活性化させる活性化剤である。
有機アルミニウムオキシ化合物(B)、および遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)は、それぞれ、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0031】
有機アルミニウムオキシ化合物(B)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また、特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0032】
アルミノキサンは、トリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物である。アルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサンなどが例示できる。これらのアルミノキサンは、一種類を単独で使用してもよく、複数種類を併用してもよい。これらの中で、メチルアルミノキサンの使用が好ましい。
【0033】
遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)としては、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号公報などに記載されているルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物、およびカルボラン化合物を例示することができる。さらに、その他の例として、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0034】
具体的には、ルイス酸としては、BR63(ここで、R6は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子、フェニル基、またはフッ素原子もしくはフッ素原子置換アルキル基などの置換基を有していてもよいフェニル基である。)で示される化合物が挙げられる。その具体例としては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0035】
イオン性化合物としては、ボレート塩およびアルミネート塩を例示することができる。
ボレート塩の具体例としては、リチウムテトラキス(2−フルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、タリウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、フェロセニウム(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス〔トリス(トリフルオロメチル)メトキシ〕ボレート、タリウムテトラキス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ボレート、トリチルテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)メトキシ〕ボレート、銀〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ボレート、リチウムビス(テトラフルオロカテコール)ボレート、〔銀(トルエン)2〕ビス(テトラフルオロカテコール)ボレート、およびタリウムビス(テトラクロロカテコール)ボレートなどを挙げることができる。
【0036】
また、アルミネート塩の具体例としては、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリチル(パーフルオロビフェニル)フルオロアルミネート、ナトリウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕アルミネート、カリウム(オクチルオキシ)トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、マグネシウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、カルシウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、リチウムテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)フェニルメトキシ〕アルミネート、タリウムテトラキス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕アルミネート、トリチルテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)メトキシ〕アルミネート、銀テトラキス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕アルミネート、リチウムビス(テトラフルオロカテコール)アルミネート、およびリチウムテトラキス〔ビス(トリフルオロメチル)−4−イソプロピルフェニルメトキシ〕アルミネートなどを挙げることができる。
【0037】
本発明の触媒には、必要に応じて、さらに有機アルミニウム化合物(D)を併用してもよい。
有機アルミニウム化合物(D)の具体例としては、下記一般式(4)で示される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
(R10zAlX3-z (4)
式(4)中、R10は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜8の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、zは1〜3の整数である。
【0038】
炭素原子数が1〜15の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−オクチル基などのアルキル基;シクロアルキル基;またはアリール基が挙げられる。
【0039】
このような有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;一般式:(i−C49pAlq(C510r(式中、p、qおよびrは、それぞれ、正の数であり、r≧2pである。)で表わされるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;などが挙げられる。
【0040】
本発明で使用する遷移金属化合物(A)と有機アルミニウムオキシ化合物(B)、遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)または有機アルミニウム化合物(D)との併用割合は、適宜に選択することができる。
遷移金属化合物(A)と有機アルミニウムオキシ化合物(B)との割合は、通常、(A)の遷移金属原子:(B)のアルミニウム原子のモル比で、1:0.1〜1:10,000、好ましくは1:0.5〜1:5,000、より好ましくは、1:1〜1:2,000となる範囲である。
【0041】
また、遷移金属化合物(A)と、これと反応してイオン対を形成する化合物(C)との割合は、モル比で1:0.1〜1:100、好ましくは1:0.5〜1:50、より好ましくは、1:1〜1:20となる範囲である。
さらに、有機アルミニウム化合物(D)を併用する場合の遷移金属化合物(A)と有機アルミニウム化合物(D)との割合は、(A):(D)のモル比で1:0.1〜1:100、好ましくは1:0.5〜1:50、より好ましくは、1:1〜1:20となる範囲である。
【0042】
これらの触媒成分の混合は、溶媒中で行ってもよい。溶媒は特に限定されないが、不活性であり、工業的に汎用なものが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン溶媒;などの溶媒を使用することができる。
これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ハロゲン溶媒が好ましい。
【0043】
混合時の温度は、特に限定されないが、通常、−200℃〜200℃、好ましくは、−150℃〜150℃、より好ましくは、−100℃〜100℃の範囲である。
【0044】
〔環状オレフィン付加重合体の製造方法〕
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法は、上述の重合触媒存在下で、環状オレフィンを含む単量体を重合する方法である。
【0045】
環状オレフィンの好適な具体例として、一般式(5)で示されるノルボルネン化合物単量体を挙げることができる。
【0046】
【化8】

【0047】
ここで、一般式(5)中のR18〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
炭化水素基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基およびシクロアルケニル基、並びに炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基の一部はハロゲン原子により置換されていてもよい。また、ハロゲン原子以外の極性基によって置換されていても良い。
【0048】
炭素数1〜20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基の例としては、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。炭素原子数3〜20のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。炭素原子数3〜20のシクロアルケニル基の例としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0049】
19とR20とは互いに結合して単環または縮合環を形成していてもよく、さらに、これらの単環または縮合環は二重結合を有してもよい。
19とR20とを含む単環として、具体的には、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロへキセン環およびベンゼン環を挙げることができる、また、R19とR20とを含む縮合環としては、これら単環にさらに環構造が結合したものを挙げることができる。
【0050】
また、R18とR19とが、またはR20とR21とがアルキリデン基を形成してもよい。このようなアルキリデン基の具体例としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基などを挙げることができる。
【0051】
一般式(5)中のmは0〜2の整数である。一般式(5)のノルボルネン化合物単量体は、m=0のときは、ノルボルネン単量体であり、m=1のときはテトラシクロドデセン単量体である。
【0052】
m=0のノルボルネン単量体の具体例としては、2−ノルボルネン;5−クロロ−2−ノルボルネン、5−ブロモ−2−ノルボルネンなどのハロゲン原子を有するノルボルネン単量体;5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなどのアルキル基を有するノルボルネン単量体;5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン単量体;5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネンなどのシクロアルキル基を有するノルボルネン単量体;5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネンなどのシクロアルケニル基を有するノルボルネン単量体;5−フェニル−2−ノルボルネン、p−メチル−5−フェニル−2−ノルボルネン、o−メチル−5−フェニル−2−ノルボルネン、m−メチル−5−フェニル−2−ノルボルネンなどの芳香族炭化水素基を有するノルボルネン単量体;5−クロロメチル−2−ノルボルネン、p−クロロ−5−フェニル−2−ノルボルネンなどのハロゲン原子が置換された炭化水素基を有するノルボルネン単量体;などを挙げることができる。
【0053】
さらに、R19とR20とが互いに結合して単環または縮合環を形成しているものの具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン)、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)などが挙げられる。
【0054】
また、R18とR19とが、またはR20とR21とがアルキリデンを形成しているものとしては、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネンなどを挙げることができる。
【0055】
m=1のテトラシクロドデセン単量体としては、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン;9−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ブロモテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのハロゲン原子を有するテトラシクロドデセン単量体;9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−デシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのアルキル基を有するテトラシクロドデセン単量体;9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのアルケニル基を有するテトラシクロドデセン単量体;
【0056】
9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのシクロアルキル基を有するテトラシクロドデセン単量体;9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのシクロアルケニル基を有するテトラシクロドデセン単量体;9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの芳香族炭化水素基を有するテトラシクロドデセン単量体;9−クロロメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのハロゲン原子が置換された炭化水素基を有するテトラシクロドデセン単量体;を挙げることができる。
【0057】
さらに、R18とR19とが、またはR20とR21とがアルキリデンを形成しているものとしては、9−メチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどを挙げることができる。
【0058】
本発明の製造方法で得られた環状オレフィン付加重合体を光学用成形材料として用いる場合には、成形性、透明性および耐熱性の観点から、上記のR18〜R21は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法は、上述の環状オレフィンと共重合可能な単量体との付加共重合も含まれる。そのような共重合可能な単量体としては、炭素数2〜20のα−オレフィンを挙げることができる。具体的には、エチレン;プロピレン;1−ブテン;1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン;1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン;1−ヘプテン;1−オクテン、ビニルシクロヘキサン;1−ノネン、3−シクロヘキシル−1−プロペン;1−デセン;1−ウンデセン;1−ドデセンなどを挙げることができる。
本発明の重合触媒は、エチレンやプロピレンなどの短鎖のα−オレフィンは無論のこと、1−ヘキセンや1−オクテンなどの長鎖のα−オレフィンの重合にも優れるため、環状オレフィンとの共重合においても、任意のα−オレフィンと高活性で共重合することができる。
【0060】
さらに、環状オレフィンと共重合可能なその他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、インデンなどのスチレン単量体;1,3−ブタジエン、イソプレンなどの鎖状共役ジエン単量体;などを挙げることができる。
【0061】
単量体に対する触媒の割合は、遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子:単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:200〜1,000,000、より好ましくは1:500〜1:500,000である。触媒量が多すぎると触媒除去が必要な場合にその操作が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
【0062】
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法は溶媒存在下または溶媒非存在下に、前記の重合触媒と、単量体を混合して行なうことができる。
混合に際して、触媒の(A)成分、これと併用する(B)〜(D)成分、および単量体の三者を混合する順序は特に限定されない。
【0063】
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法において溶媒を用いる場合には、重合に影響しない溶媒であれば、その種類は特に限定されないが、工業的に汎用なものが好ましい。このような溶媒としては、触媒各成分の混合に使用可能な溶媒を使用することができる。中でも、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類およびハロゲン溶剤が好ましい。
【0064】
重合を溶媒中で行なう場合には、単量体の濃度は、溶液中1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪く、50重量%を超える場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の取り扱いが困難となる場合がある。
重合温度には特に制限はないが、一般には、−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、1分間〜100時間で、特に制限はない。
【0065】
得られる環状オレフィン付加重合体の分子量は、単量体と触媒との比率や重合温度などを変えることによって調節することができる。また、水素などの添加によっても、重合体の分子量をコントロールすることができる。
【0066】
このようにして、本発明の環状オレフィン付加重合体の製造方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が、ポリスチレン換算分子量で、10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜800,000である環状オレフィン付加重合体を得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例において、各種試験および評価は以下の方法で行った。
なお、重合活性の高さは、重合体の生成量を、触媒のモル数と重合時間で除した値「kg-polymer/(mol-Ti・h)」で評価し、この値が高いほど重合活性が高いことを表す。
【0068】
(1)遷移金属化合物(A)の同定
1H−NMR測定(重クロロホルム溶媒中、室温)およびX線結晶構造解析による。
(2)重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)
テトラヒドロフランまたはクロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定する。
(3)重合体の共重合比
1H−NMR測定より求める。
(4)ガラス転移温度
重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析(DSC)により毎分10℃で昇温して測定した。
【0069】
(実施例1)
遷移金属化合物(A)の合成
{(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチル(テトラヒドロフラン)錯体(錯体I)の合成}
【0070】
【化9】

(錯体I)
【0071】
配位子である(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランは、非特許文献1に記載の方法を用いて合成した。窒素気流下、得られた配位子32.0部をガラス反応器に入れ、ジエチルエーテル424部を加えた。この溶液を−20℃まで冷却し、メチルリチウム8.06部を加え、室温にて4時間撹拌した。リチウム化した配位子のジエチルエーテル溶液を、あらかじめ用意した四塩化チタン7.60部、ヘキサン130部の混合溶液中に0℃にて加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧除去した後、得られた残渣をテトラヒドロフラン、ヘキサンで抽出し、デカンテーションを行った。分離した溶液の溶媒を減圧除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで抽出し、デカンテーション、ろ過を2回繰り返した後、再結晶することによりチタン錯体の結晶15.0部を得た。
【0072】
錯体Iの1H−NMRスペクトルを図1に示す。なお、図1中、「thf」はテトラヒドロフランを示す。錯体Iの1H−NMRスペクトルは以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3)δppm:-0.34(br,6H),0.75(s,6H),1.22(s,9H),1.36,1.39,1.40,1.44(s,24H),1.74(s,8H),1.83(br,4H),3.70(br,4H),7.53(s,2H),7.95(s,2H)。
【0073】
錯体IのX線結晶構造解析の結果(ORTEP図)を図2に示す。X線結晶構造解析から、Ti原子とシクロペンタジエニル環(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基の真ん中の環をいう)の5つの各炭素との距離は以下のとおりであった。
Ti−C1:2.198(6)Å、 Ti−C2:3.040(6)Å、 Ti−C3:3.884(6)Å、 Ti−C4:3.790(6)Å、 Ti−C5:2.851(6)Å。(上記X線結晶構造解析から、Ti原子とシクロペンタジエニル環は、η1結合様式で結合していることがわかる。)
【0074】
(実施例2)
2−ノルボルネンの重合
ガラス反応器に、トルエン130部、ノルボルネン18.8部、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)4.64部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体I 0.13部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。1分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体9.70部(重合活性:2,910kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwおよびMnはテトラヒドロフランまたはクロロホルムを溶媒とするGPCでは測定不可能であった。
【0075】
(実施例3)
2−ノルボルネンと1−ヘキセンの共重合
ガラス反応器に、トルエン346部、ノルボルネン37.6部、1−ヘキセン8.40部、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)2.32部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体I 0.06部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。5分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体13.7部(重合活性:1,644kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwは152,400、Mnは89,200であった。
【0076】
(実施例4)
ジシクロペンタジエンとエチレンの共重合
攪拌機付き耐圧ガラス反応器に、トルエン346部、ジシクロペンタジエン54.8部、エチレンガスを常圧で導入、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)4.64部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体I 0.13部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。4分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体33.9部(重合活性:2,542kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwは269,200、Mnは88,100であった。重合体中のジシクロペンタジエン/エチレン組成比は、54.4/45.6(モル/モル)であった。
【0077】
(実施例5)
遷移金属化合物(A)の合成
{(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[フルオレニル]シランチタンジメチル(テトラヒドロフラン)錯体(錯体III)の合成}
【0078】
【化10】

【0079】
配位子である(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(フルオレニル)シランは、
Journal of Organometallic Chemistry 691巻、pp193−201、2006年に記載の方法を用いて合成した。窒素気流下、得られた配位子24.3部をガラス反応器に入れ、ジエチルエーテル424部を加えた。
この溶液を−20℃まで冷却し、メチルリチウム8.06部を加え、室温にて4時間撹拌した。リチウム化した配位子のジエチルエーテル溶液を、あらかじめ用意した四塩化チタン15.6部、ヘキサン130部の混合溶液中に0℃にて加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧除去した後、得られた残渣をテトラヒドロフラン、ヘキサンで抽出し、デカンテーションを行った。分離した溶液の溶媒を減圧除去した。得られた残渣をジエチルエーテル/ヘキサン混合溶媒で抽出し、デカンテーション、ろ過を2回繰り返した後、ヘキサン中にて再結晶することによりチタン錯体の結晶12.0部を得た。
【0080】
錯体IIIの1H−NMRスペクトルを図3に示す。なお、図3中、「THF」はテトラヒドロフランを示す。錯体IIIの1H−NMRスペクトルは以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3)δppm:0.03(s,6H),0.76(s,6H),1.56(s,9H),1.64(br,4H),3.26(br,4H),7.28(ddd,2H),7.36(ddd,2H),7.59(dd,2H),8.07(dd,2H)。
錯体IIIのX線結晶構造解析の結果(ORTEP図)を図4に示す。X線結晶構造解析から、Ti原子とシクロペンタジエニル環の5つの各炭素との距離は以下のとおりであった。
Ti−C1:2.193(17)Å、Ti−C2:3.065(16)Å、Ti−C3:2.913(17)Å、Ti−C7:3.954(17)Å、Ti−C8:3.875(17)Å。
【0081】
(実施例6)
ジシクロペンタジエンとエチレンの共重合
攪拌機付き耐圧ガラス反応器に、トルエン355部、ジシクロペンタジエン26.4部、エチレンガスを常圧で導入、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)4.90部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体III8.87*10-2部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。3分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体35.1部(重合活性:3,510kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwは121,300、Mnは18,600であった。重合体中のジシクロペンタジエン/エチレン組成比は、40.6/59.4(モル/モル)であった。Tgは142℃であった。
【0082】
(実施例7)
ジシクロペンタジエンとエチレンの共重合
攪拌機付き耐圧ガラス反応器に、トルエン355部、ジシクロペンタジエン52.8部、エチレンガスを常圧で導入、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)4.90部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体III8.87*10-2部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。3分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体35.2部(重合活性:3,520kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwは272,100、Mnは35,900であった。重合体中のジシクロペンタジエン/エチレン組成比は、53.3/46.7(モル/モル)であった。Tgは193℃であった。
【0083】
(比較例1)
2−ノルボルネンの重合
第4族遷移金属化合物として、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル錯体(錯体II)を用いた。
なお、下記式で表したようにTi原子とシクロペンタジエニル環(フルオレニル基の真ん中の環をいう)は、η3結合様式で結合しているため、中性ルイス塩基(L)がTi原に配位していない。
【0084】
【化10】

【0085】
ガラス反応器に、トルエン260部、ノルボルネン37.6部、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)37.1部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体II 0.07部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。30分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体19.7部(重合活性:197kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwおよびMnはテトラヒドロフランまたはクロロホルムを溶媒とするGPCでは測定不可能であった。
【0086】
(比較例2)
2−ノルボルネンと1−ヘキセンの共重合
ガラス反応器に、トルエン260部、ノルボルネン18.8部、1−ヘキセン16.8部、およびトルエンに溶解したモディファイメチルアルミノキサン(東ソー・ファンケム社製、MMAO−3A)37.1部を加えた。次に、トルエン8.67部に溶解させた錯体II 0.07部を前記反応器に添加した。オイルバスを50℃に設定し重合を開始した。60分間撹拌して重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で15時間減圧乾燥して重合体8.40部(重合活性:42kg-polymer/(mol-Ti・h))を得た。得られた重合体のMwは49,900、Mnは33,100であった。
【0087】
中性ルイス塩基が配位していないために、遷移金属化合物(A)に該当しない錯体IIを用いた場合には、ノルボルネンの単独重合および2−ノルボルネンと1−ヘキセンの共重合のいずれにおいても重合活性が低かった(比較例1および2)。
一方、遷移金属化合物(A)に該当する錯体IまたはIIIを用いた場合には、環状オレフィン付加重合(実施例2)、および環状オレフィン/α−オレフィン付加重合(実施例3、4、6および7)のいずれにおいても高い重合活性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例1で得た錯体Iの1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得た錯体IのX線結晶構造解析図(水素原子省略)[ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)(オークリッジ熱の楕円体プロット)]である。
【図3】実施例5で得た錯体IIIの1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例5で得た錯体IIIのX線結晶構造解析図(水素原子省略)[ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)(オークリッジ熱の楕円体プロット)]である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と、有機アルミニウムオキシ化合物(B)および/または一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)との組み合わせからなる触媒の存在下に、環状オレフィンを付加重合する環状オレフィン付加重合体の製造方法。
【化1】

式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。C54-xxは、x個の置換基Qで置換されたシクロペンタジエニル環であり、xは1〜4の整数で、Qは、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、C54-xxは、2つの隣接した置換基Qが互いに結合して、それぞれのQが結合するシクロペンタジエニル環中の炭素原子とともに炭素数4〜20の環を形成した多環式シクロペンタジエニル環であってもよい。Lは中性ルイス塩基であり、yは1〜2の整数である。
【請求項2】
一般式(1)中のC54―xxとMがη1結合様式で結合している、請求項1に記載の環状オレフィン付加重合体の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)中のC54―xxが、フルオレニル基または置換フルオレニル基である、請求項1または2に記載の環状オレフィン付加重合体の製造方法。
【請求項4】
周期表第4族遷移金属化合物(A)が、下記一般式(3)で示される周期表第4族遷移金属化合物である請求項1に記載の環状オレフィン付加重合体の製造方法。
【化2】

式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、R6とR7、R8とR9は、互いに結合して環を形成してもよい。Lは中性ルイス塩基である。
【請求項5】
一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と、有機アルミニウムオキシ化合物(B)および/または一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(C)との組み合わせからなる環状オレフィンの付加重合用触媒。
【化3】

式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。C54-xxは、x個の置換基Qで置換されたシクロペンタジエニル環であり、xは1〜4の整数で、Qは、それぞれ独立に、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、C54-xxは、2つの隣接した置換基Qが互いに結合して、それぞれのQが結合するシクロペンタジエニル環中の炭素原子とともに炭素数4〜20の環を形成した多環式シクロペンタジエニル環であってもよい。Lは中性ルイス塩基であり、yは1〜2の整数である。
【請求項6】
一般式(1)中のC54―xxとMがη1結合様式で結合している、請求項5に記載の環状オレフィン付加重合用触媒。
【請求項7】
一般式(1)中のC54―xxが、フルオレニル基または置換フルオレニル基である、請求項5または6に記載の環状オレフィン付加重合用触媒。
【請求項8】
周期表第4族遷移金属化合物(A)が、下記一般式(3)で示される周期表第4族遷移金属化合物である請求項5に記載の環状オレフィン付加重合用触媒。
【化4】

式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、R6とR7、R8とR9は、互いに結合して環を形成してもよい。Lは中性ルイス塩基である。
【請求項9】
周期表第4族遷移金属化合物(A)が、下記一般式(2)で示されるチタン化合物である請求項5に記載の環状オレフィン付加重合用触媒。
【化5】

式中、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。Lは中性ルイス塩基である。
【請求項10】
下記一般式(3)で示される周期表第4族遷移金属化合物。
【化6】

式中、Mは、周期表第4族遷移金属原子、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子、水素原子がハロゲン原子に置換していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基、または炭素数1〜12の炭化水素基を置換基として有していてもよいシリル基である。さらに、Mがチタンである場合は、R6とR7、および/またはR8とR9は、互いに結合して環を形成してもよい。Lは中性ルイス塩基である。
【請求項11】
下記一般式(2)で示されるチタン化合物である請求項10に記載の周期表第4族遷移金属化合物。
【化7】

式中、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子である。Lは中性ルイス塩基である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−255341(P2008−255341A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58606(P2008−58606)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】