説明

生物医学装置用ポリシロキサンプレポリマー

生物医学装置を製造するのに有用なポリシロキサンプレポリマーは、ブロック(I)と(II)を含有し、各末端はエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされており、各ブロックは下記式で表される。
(*Dii*Diol*Dii*PS)x ブロック(I)
(*Dii*PS)y ブロック(II)
式中、各Diiは独立してジイソシアネートのジラジカル残基であり、
各Diolは独立して、1-10個の炭素原子を有するジオールのジラジカル残基であり、
各PSは独立してポリシロキサン含有ジオール又は-ポリシロキサン含有ジアミンのジラジカル残基であり、
*は独立して-NH-CO-NH-、-NH-COO-又は-OCO-NH-であり、
xはブロック(I)の数を表し少なくとも2であり、及び
yはブロック(II)の数を表し少なくとも1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学装置、特に、コンタクトレンズ、眼内レンズ及び眼科移植体などの眼科装置を製造するのに有用なポリシロキサンプレポリマーに関する。また本発明は、これらプレポリマーから製造されるコポリマー、特にヒドロゲルコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルは、コンタクトレンズなどの眼科装置を含む各種生物医学装置を製造するのに望ましいクラスの代表的な材料である。ヒドロゲルは、平衡状態で水を含有する水和架橋ポリマー系である。ヒドロゲル製レンズは、望ましい生体適合性と快適性を提供する。シリコーンヒドロゲルは、既知のクラスのヒドロゲルであり、シリコーン含有物質を含有していることが特徴である。一般に、シリコーン含有モノマーは、架橋剤として機能するシリコーン含有モノマー又は親水性モノマー(架橋剤は複数の重合性官能基を有するモノマーと定義されている)とともに、親水性モノマーと、フリーラジカル重合反応で共重合する。なお別の架橋剤も利用できる。非シリコーンヒドロゲルを超えるシリコーンヒドロゲルの利点は、シリコーンヒドロゲルが一般に、シリコーン含有モノマーを含んでいるため、酸素透過率が高いことである。
【0003】
尿素結合又はウレタン結合を有する各種のポリシロキサンベースプレポリマーは、シリコーンヒドロゲル用に可能性のあるシリコーン含有モノマーとして開示されている。これらの各種プレポリマーは、その製造法及びその物理的特性/性質が異なっていてもよく、したがって、ヒドロゲルコポリマー用の他のモノマーと結合したとき多様な挙動を示すことができる。
【0004】
一クラスのウレタン-又は尿素-含有ポリシロキサンプレポリマーとしては、メタクリル酸イソシアナトエチル(IEM)などのイソシアネート基を有するエチレン系不飽和モノマーでエンドキャップされたポリシロキサン-ジオール又はポリシロキサン-ジアミンがある。例えば、IEMを、ヒドロキシを末端基とするポリジメチルシロキサンと反応させることによってプレポリマーが製造される。一般に、このクラスのプレポリマーは、親水性モノマーに対して、ウレタン結合なしの特に高分子量の対応するプレポリマーと類似の相溶性を示す。また一般に、これらプレポリマーは、室温で液体である。かようなプレポリマーの例は、米国特許第4,605,712号(Muellerら)に見られる。
【0005】
第二クラスのウレタン含有ポリシロキサンプレポリマーは、ジイソシアネートを利用してウレタン結合をつくる。一般に、これらのプレポリマーは、2モルのジイソシアネートを、ヒドロキシを末端基とするポリジメチルシロキサンと反応させ続いてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)でエンドキャップすることによって製造される。このクラスは、ポリシロキサンの分子量によって、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)などの親水性モノマーとの相溶性がわずかに改善される。また一般に、このクラスのプレポリマーは室温で液体である。かようなプレポリマーの例は、米国特許第4,136,250号(Muellerら)に見られる。
【0006】
米国特許第5,034,461号(Laiら)には、各種のポリシロキサン含有のウレタンプレポリマーもしくは尿素プレポリマーが開示されている。一般に、これらのプレポリマーは、短鎖のジオール、ヒドロキシを末端基とするポリジメチルシロキサン及びジイソシアネートから誘導され、その結果、その構造はセグメント化ポリウレタンエラストマー(segmented polyurethane elastomer)に類似しており、これらプレポリマーはイソシアネートと反応させたHEMAなどの重合性のエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされる。これらのプレポリマーは、親水性コモノマーと共重合させて、コンタクトレンズの材料又は他の生物医学装置の用途に有用なシリコーンヒドロゲルコポリマーを製造できる。米国特許第5,034,461号の好ましいプレポリマーは、柔軟なポリシロキサンセグメント(この特許の式中、Aで表されている)及び強力で硬いセグメント(この特許の式中、*D*G*D*で表されている)で構成され、重合性のエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされている。
【0007】
本発明のポリシロキサン含有プレポリマーは、米国特許第5,034,461号に記載されているような柔軟なセグメント及び強力で硬いセグメントを含有している。しかし、本発明のプレポリマーは、前記柔軟なセグメントと強力で硬いセグメントに加えて、さらに比較的弱くて硬いセグメントを含有している。このことがいくつもの利点をもたらすことが分かったのである。第一に、本発明のプレポリマーは、室温にて粘度が低い傾向があるので、米国特許第5,034,461号に開示されているプレポリマーに比べて、合成中及び生物医学装置を注型成形中の工程が容易になる。第二に、この配列によれば、シリコーン含量の高いプレポリマーを製造できるので、米国特許第4,136,250号及び同第4,605,712号に開示されているプレポリマーと比較して、親水性モノマーとの良好な相溶性を維持しかつ透明なヒドロゲルを生成しながら高い酸素透過率を有するコポリマーを製造できる。第三に、各種セグメントが配列されているので、高い酸素透過率を提供するコポリマーを、高いモジュラス無しで得ることができる。
【発明の開示】
【0008】
本発明は生物医学装置を製造するのに有用なポリシロキサンプレポリマーを提供するものである。本発明のプレポリマーは、下記式:
(*Dii*Diol*Dii*PS)x ブロック(I)
(*Dii*PS)y ブロック(II)
(式中、各Diiは独立してジイソシアネートのジラジカル残基であり、
各Diolは独立して、1-10個の炭素原子を有するジオールのジラジカル残基であり、
各PSは独立してポリシロキサン-ジオール又はポリシロキサン-ジアミンのジラジカル残基であり、
*は独立して-NH-CO-NH-、-NH-COO-又は-OCO-NH-であり、
xはブロック(I)の数を表し少なくとも2であり、及び
yはブロック(II)の数を表し少なくとも1である)
で表されるブロック(I)とブロック(II)を含有し、各末端をエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされている。
【0009】
好ましいプレポリマーは、下記一般式:
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M (III )又は
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*Diol*Dii*M (IV)
(式中、Dii、Diol、PS、*、x及びyは上記定義の通りであり及びMは独立して重合性エチレン系不飽和ラジカルである)で表される。
【0010】
本発明はさらに、前記プレポリマーとコモノマーを含むモノマー混合物の重合生成物であるコポリマーを提供するものである。一つの好ましいコモノマーは親水性のモノマーでありそしてもう一つの好ましいコモノマーは単官能のシリコーン含有モノマーである。好ましいコポリマーは、前記プレポリマーと親水性コモノマーを含有するモノマー混合物の水和重合生成物であるヒドロゲルである。特に好ましいのは、含水率が少なくとも20質量%、モジュラスが100g/mm2を超えず及び/又は酸素透過率が少なくとも100バーラー(barrer)であるヒドロゲルコポリマーである。
【0011】
本発明はさらに、前記コポリマーで構成された生物医学装置、特に、コンタクトレンズ又は眼内レンズなどの眼科装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のプレポリマーは上記式(I)及び(II)で表されるブロックを含有している。一般に、式(I)で表されるブロックは、強力で硬いセグメント(*Dii*Diol*Dii*で表される)及び柔軟なセグメント(PSで表される)で構成されていることが特徴である。一般に、式(II)で表されるブロックは、弱くて硬いセグメント(*Dii*で表される)及び柔軟なセグメント(PSで表される)で構成されていることが特徴である。これらの強力で硬いブロック(I)と弱くて硬いブロック(II)の分布はランダム又は一つおきでもよく、xとyはプレポリマー中のそれぞれの構造の合計数を表し、換言すれば、式(III )と(IV)において、式(I)で表されるブロックすべてが互いに直接互いに結合している必要はない。これらブロックの分布は、プレポリマーの製造中にポリシロキサン、ジイソシアネート及び短鎖ジオールの成分を添加する順序によって制御できる。
【0013】
本発明のプレポリマーは、式(I)、(II)、(III )及び(IV)中にPSで表されるポリシロキサン含有の柔軟なセグメントを含有している。さらに詳細に述べると、このポリシロキサン含有セグメントは、下記式:
【化1】

(式中、各Aはヒドロキシルラジカル又はアミノラジカルであり、
各Rは独立して、1-10個の炭素原子を有しこれら炭素原子の間に、エーテル結合、ウレタン結合又はウレイド結合を含んでいてもよいアルキレン基から選択され、
各R’は独立して、水素、又は1-20個の炭素原子を含みその炭素原子の間にエーテル結合を含んでいてもよい一価の炭化水素ラジカルもしくはハロゲンで置換された一価の炭化水素ラジカルから選択され、及び
aは少なくとも1である)
で表される、ヒドロキシラジカル又はアミノラジカルでエンドキャップされたポリシロキサンから誘導される。
【0014】
好ましいRラジカルは、エーテルラジカルで随意選択的に置換されたアルキレンである。好ましいR’としては、アルキル基類、フェニル基類、フッ素で置換されたアルキル基類とアルケニル基類、随意選択的に置換されたエーテル基類がある。特に好ましいR’ラジカルとしては、メチルなどのアルキル;又は随意選択的にエーテル結合を含むフルオロアルキル例えば-CH2-CH2-CH2-O-CH2-(CF2)z-H(式中、zは1-6である)がある。
【0015】
aは、好ましくは約10-約100であり、より好ましくは約15-約80である。PSのMnは1000-8000の範囲内であり、より好ましくは2000-6000の範囲内である。
【0016】
各種のポリシロキサン-ジオール及びポリシロキサン-ジアミンが市販されている。さらに、ポリシロキサンの代表的な合成法は実施例で提示する。
【0017】
本発明のプレポリマーの強力で硬いセグメントは、式(I)、(III )及び(IV)中Diolで表されるジオールの残基を含んでいる。好ましいジオールの残基としては、1-10個の炭素原子を有しかつ主鎖中にエーテル、チオ又はアミンの結合を含有していてもよいアルキルジオール、シクロアルキルジオール、アルキルシクロアルキルジオール、アリールジオール又はアルキルアリールジオールのジラジカル残基がある。代表的なジオールとしては、2,2-(4,4’-ジヒドロキシジフェニル)プロパン(ビスフェノール-A)、4,4’-イソ-プロピリジンジシクロヘキサノール、エトキシル化及びプロポキシル化ビスフェノール-A、2,2-(4,4’-ジヒドロキシジフェニル)ペンタン、1,1’-(4,4’-ジヒドロキシジフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールがある。特に好ましいのは、1-10個の炭素原子を含有するアルキレンジオール又はエーテル化アルキレンジオールである。
【0018】
上記ポリシロキサン含有セグメント及びジオール残基セグメントは、そのポリシロキサン含有セグメント及びジオールのヒドロキシル官能基又はアミノ官能基と反応するジイソシアネートを通じて連結される。一般に、どのようなジイソシアネートでも採用できる。これらジイソシアネートは脂肪族でも芳香族でもよく、好ましくはその脂肪族の部分又は芳香族の部分に6-30個の炭素原子を有するアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキル、アルキルの脂肪族又は芳香族のジイソシアネートがある。具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエン-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレン4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス-(4,4’-イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びシクロヘキサンジイソシアネートがある。
【0019】
一般に、プレポリマーのxの値が高くなると、極性ウレタン/尿素結合の数が増大し、そのプレポリマーの極性は、親水性コモノマーとの相溶性を保証するのに重要である。一般に、yの値が高くなると、ケイ素の百分率の高いプレポリマーが得られ、その結果、酸素透過率が高くなる。しかしxとyの比率はバランスをとらねばならない。したがって、xのyに対する比率は好ましくは少なくとも0.6であり(すなわちx : yは少なくとも0.6 : 1である)、より好ましくは少なくとも0.75である。
【0020】
これらプレポリマーは、両末端を、式(III )及び(IV)中にMで表されている重合性のエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされている。代表的なMラジカルは、下記式:
【化2】

(式中、R23は水素又はメチルであり、
各R24は、水素、1-6個の炭素原子を有するアルキルラジカル又は-CO-Y-R26ラジカル(式中、Yは-O-、-S-又は-NH-である)であり、
R25は1-10個の炭素原子を有する二価のアルキレンラジカルであり、
R26は1-12個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、
Qは-CO、-OCO-又は-COO-を意味し、
Xは-O-又は-NH-を意味し、
Arは6-30個の炭素原子を有する芳香族のラジカルを意味し、bは0-6であり、cは0又は1であり、dは0又は1であり、及びeは0又は1である)
で表すことができる。
【0021】
Mラジカルを形成する適切なエンドキャッピング前駆体としては、ヒドロキシを末端基とする(メタ)アクリレート類例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート;アミノを末端基とする(メタ)アクリレート類例えばt-ブチルアミノエチルメタクリレート及びアミノエチルメタクリレート;並びに(メタ)アクリル酸がある。なお用語「(メタ)」は本願で使用する場合、任意のメチル置換基を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート)」のような用語は、メタアクリレート又はアクリレートを意味し、そして用語「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
【0022】
本発明のプレポリマーを生成する代表的な第一反応式は下記のとおりである。第一に、ジイソシアネートをジオールと、2 : 1の比率で反応させる。
【0023】
2xOCN- Dii-NCO+xHO-Diol-OH→xOCN-Dii*Diol*Dii-NCO
【0024】
この反応式において、*はウレタンラジカルの-NH-COO-又は-OCO-NH-を意味する。一般に、この反応は、塩化メチレンなどの溶媒中、ジブチル錫ジラウレートなどの触媒の存在下、還流しながら実施する。次に、全ジイソシアネート(x+y)/ポリシロキサン-ジオールの比率が少なくとも1.1で(一般に、2<x+y≦11;x>0;y>0)、ジイソシアネートとポリシロキサン-ジオールを添加する。
【0025】
xOCN-Dii*Diol*Dii-NCO+(x+y−1)HO-PS-OH+yOCN-Dii-NCO→
OCN-(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*-NCO
【0026】
最後に、この生成物は、重合性のエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされる。
【0027】
OCN-(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*-NCO+2M-OH→
M(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M
【0028】
本発明のプレポリマーを生成する第二の代表的反応式は以下の通りである。まず、ジイソシアネートを、ポリシロキサン-ジオールと下記モル比で反応させる。すなわち下記式中(1+1/m)は好ましくは1.05-1.9の範囲内にあり最も好ましくは1.2-1.5の範囲内にある。
【0029】
(m+1) OCN- Dii-NCO+mHO-PS-OH→OCN-(Dii*PS)m*Dii-NCO
【0030】
この反応式において、*はやはりウレタンラジカルの-NH-COO-又は-OCO-NH-を意味する。一般に、この反応は、塩化メチレンなどの溶媒中、ジブチル錫ジラウレートなどの触媒の存在下、還流しながら実施する。次にジオールを、還流を続けながら、強力で硬いセグメントと弱くて硬いセグメントの所望の比率に基づいて選択されたモル比で添加する。なおz1/z2は2以下であるが1より大きい。
【0031】
z1 OCN-(Dii*PS)m*Dii-NCO+z2HO-Diol-OH→
OCN-(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii-NCO
【0032】
最後に、この生成物は重合性エチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされる。
OCN-(Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii-NCO+2M-OH→
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M
【0033】
上記反応式において、ジオールとジイソシアネートの反応でウレタンラジカル(-NH-COO-又は-OCO-NH-)が得られる。代わりに、ジアミンとジイソシアネートが反応するとウレタンラジカル(-NH-CO-NH-)が得られるであろう。ウレタンポリマー又は尿素ポリマーの他の製造方法は、当該技術分野で知られており、代表的な合成法は実施例で例示する。
【0034】
本発明のコポリマーは、本発明のプレポリマーを、一種又は二種以上のコモノマーと共重合させることによって製造される。本発明のプレポリマーは、重合性のエチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされているので、フリーラジカル重合反応で重合させることができる。本発明で採用されるモノマー混合物は、通常のレンズ形成モノマー又は装置形成モノマーを含有している。なお、用語「モノマー」もしくは「モノマーの」及び類似の用語は、本願で使用する場合、フリーラジカル重合反応で重合できる分子量が比較的低い化合物、並びに「プレポリマー」、「マクロモノマー」及び類縁用語で呼称される分子量がより高い化合物を意味する。コポリマーには、主題のプレポリマーが、モノマー混合物中に5-95質量%含有され好ましくは20-70質量%含有されている。
【0035】
例えばより親水性のコポリマーを得たいか又はヒドロゲルコポリマーを製造したい場合は、親水性コモノマーを、主題のプレポリマーを含有する最初のモノマー混合物に含有させればよい。代表的な親水性コモノマーとしては、不飽和カルボン酸類例えばメタクリル酸及びアクリル酸;(メタ)アクリルで置換されたアルコール類例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及びグリセリルメタクリレート;ビニルラクタム類例えばN-ビニルピロリドン;並びに(メタ)アクリルアミド類例えばメタアクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドがある。ヒドロゲルは、水を吸収して平衡状態で保持できる架橋ポリマー系である。ヒドロゲルのコポリマーの場合は、モノマー混合物中に、少なくとも一種の親水性モノマーが、20-60質量%含有され、好ましくは25-50質量%含有されている。
【0036】
もう一つのクラスのレンズ形成モノマー又は装置形成モノマーはシリコーン含有モノマーである。換言すると、例えば酸素透過率がより高いコポリマーを得たい場合は、主題のプレポリマーに加えて別のシリコーン含有コモノマーを最初のモノマー混合物中に含有させればよい。
【0037】
一つの適切なクラスのシリコーン含有モノマーとしては、下記式(V):
【化3】

(式中、Xは-COO-、-CONR4-、-OCOO-又は-OCONR4-(各式中、R4はH又は低級アルキルである)を意味し;R3は水素又はメチルを意味し;hは1-10であり;並びに各R2は独立して低級アルキルラジカルもしくはハロゲン化アルキルラジカル、フェニルラジカル又は式-Si(R5)3(式中、各R5は独立して低級アルキルラジカル又はフェニルラジカルである)で表されるラジカルを意味する)で表される既知のかさ高の単官能ポリシロキサニルアルキルモノマーがある。かようなかさ高のモノマーとしては、具体的にのべると、メタクリルオキシプロピル トリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシラン、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート及び3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネートがある。
【0038】
各種の二官能及び多官能のシリコーン含有モノマーは、当該技術分野で知られており、必要に応じてコモノマーとして使用できる。
【0039】
前記モノマー混合物は、主題のプレポリマーに加えて、シリコーンコモノマーを0-50質量%、好ましくは5-30質量%含有していてもよい。
【0040】
シリコーンヒドロゲルの場合、モノマー混合物は架橋用モノマーを含有している。なお、架橋用モノマーは、複数の重合性官能基を有するモノマーと定義される。主題のプレポリマーは、両末端を重合性ラジカルでエンドキャップされているので、架橋剤として機能する。最初のモノマー混合物には、随意選択的に、補助の架橋用モノマーを添加してもよい。代表的な架橋用モノマーとしては、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリコールジメタクリレート類のビニルカーボネート誘導体及びメタクリルオキシエチル-ビニルカーボネートがある。補助架橋剤を利用するとき、このモノマー材料は、モノマー混合物中に、0.1-20質量%、より好ましくは0.2-10質量%含有させてもよい。
【0041】
眼内レンズの場合、モノマー混合物はさらに、生成するコポリマーの屈折力を増大するためのモノマーを含有させてもよい。かようなモノマーの例は、芳香族の(メタ)アクリレート類、例えばフェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートである。
【0042】
最初のモノマー混合物に有機希釈剤を含有させてもよい。用語「有機希釈剤」には、本願で使用する場合、最初の混合物中の成分と実質的に反応しない有機化合物が含まれ、有機希釈剤は、最初の混合物中のモノマー成分の不相溶性を最小限にするため使用することが多い。代表的な有機希釈剤としては、一価のアルコール類、例えばC2-C10の一価アルコール類;ジオール類、例えばエチレングリコール;ポリオール類、例えばグリセリン;エーテル類、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル;ケトン類、例えばメチルエチルケトン;エステル類、例えばヘプタン酸メチル;及び炭化水素類、例えばトルエンがある。
【0043】
レンズなどの生物医学装置を製造する際は、モノマー混合物を、型に充填し次いで加熱し及び/又は紫外線などの光線を照射して、型の中のモノマー混合物を硬化させすなわちフリーラジカル重合させる。コンタクトレンズなどの生物医学装置を製造する際にモノマー混合物を硬化させる各種の方法が知られており、スピンキャスティング法(spincasting)とスタティックキャスティング法(static casting)がある。スピンキャスティング法は、モノマー混合物を型に充填し次いでそのモノマー混合物を光に暴露しながら制御された方法で型を回転させて行われる。スタティックキャスティング法は、所望の製品の形状を提供する型キャビティを形成する二つの型部分の間に、モノマー混合物を充填し次いでそのモノマー混合物を熱及び/又は光に暴露して硬化させて行われる。コンタクトレンズの場合、一方の型部分がレンズの前面を形成するように成形され及びもう一方の型部分がレンズの後面を形成するように成形されている。必要な場合、モノマー混合物を型の中で硬化させたのち所望の最終形態を有するコンタクトレンズ又は製品を提供するため、機械加工を行うことができる。かような方法は、米国特許第3,408,429号、第3,660,545号、第4,113,224号、第4,197,266号、第5,271,875号及び第5,260,000号に記載されている。なお、これら特許の開示事項は本願に援用するものである。さらに、モノマー混合物は、ロッド又はボタンの形状に成形し次いで旋盤加工を行って所望の形状例えばレンズ型の製品にすることができる。
【0044】
主題のプレポリマーの好ましい一用途はヒドロゲル製コンタクトレンズである。コンタクトレンズの用途の場合、ヒドロゲルのコポリマーは、十分水和されたとき、含水量が、重量分析法で測定して少なくとも20重量%であることが好ましい。
【0045】
また、ヒドロゲルコポリマーは、引張りモジュラスが100g/mm2を超えない方が好ましく、約40-80g/mm2の間の範囲がより好ましい。モジュラスは、ASTM D-1708aに従ってInstron(Model 4502)測定器で測定できるが、この規格では、ヒドロゲルコポリマー製フィルムの試料はホウ酸緩衝食塩水に浸漬される。フィルム試料の適切な大きさは、ゲージ長が22mmで幅が4.75mmであり、試料はさらに、Instron測定器のクランプで試料を把持するため末端がdogbone形であり、そして厚さが200±50μmである。
【0046】
ヒドロゲルコポリマーは、酸素透過率が好ましくは少なくとも100バーラーであり、より好ましくは少なくとも150バーラーである。酸素透過率(DKと呼称されることもある)は以下の手順で測定される。シリコーンヒドロゲルの酸素透過率は、その末端の中央の円形で金製のカソード及びそのカソードから絶縁された銀製アノードを備えたプローブを有する02 Permeometer Model 201T instrument(Createch、米国カリフォルニア州オールバニー所在)を使って、ポーラログラフ法(ANSI Z80.20-1998)で測定する。中央の厚さが150-600μmの範囲内の3種類の予め検査されたピンホールのない平坦なシリコーンヒドロゲルフィルムの試料でのみ測定した。フィルム試料の中央の厚さは、Rehder ET-1電子厚さゲージを使って測定できる。一般に、フィルム試料は円板形である。リン酸緩衝食塩水(PBS)を循環させて35±0.2℃に平衡させた浴に浸漬したフィルム試料とプローブで測定を行う。プローブとフィルム試料をPBS浴中に浸漬する前に、フィルム試料を、平衡化PBSで予め湿潤させたカソードの上に置いて心を合わせて、カソードとフィルム試料の間に気泡又は過剰のPBSが存在しないことを保証し、次いでフィルム試料を取り付けキャップでプローブに固定して、プローブのカソード部分をフィルム試料とのみ接触させる。シリコーンヒドロゲルのフィルムの場合は、例えば円板形のTeflonポリマー膜を、プローブカソードとフィルム試料の間に使用することが有用であることが多い。この場合、まずTeflon膜を予め湿潤させたカソードの上に置き、次いでフィルム試料をTeflon膜の上において、Teflon膜又はフィルム試料の下に気泡又は過剰のPBSが存在しないことを保証する。測定結果を集めたならば、相関係数値(R2)が0.97以上のデータのみDK値を計算するのに入力すべきである。R2値が上記条件を満たす、一つの厚さ当たり少なくとも二つの測定値を得る。既知の回帰分析法を利用して、酸素透過率(DK)を、少なくとも3種の厚さを有するフィルム試料から計算する。PBS以外の溶液で水和されたフィルム試料はどれもまず純水に浸漬し次いで少なくとも24時間平衡させ、次にPHBに浸漬して少なくとも12時間平衡させる。前記測定器は定期的に清掃しかつ定期的にRGP標準を使って校正する。William J.Benjamjn,et al.,The Oxygen Permeability of Reference Materials,Optom Vis Sc 7(12s):95(1997)によって確立されたレポジトリー値(repository value)の±8.8%を計算することによって、上限と下限を確定する。なおこの文献の開示事項は全体を本願に援用するものである。
【0047】
【表1】

【0048】
以下の諸実施例は本発明の好ましい各種実施態様を例示するものである。
【実施例】
【0049】
実施例1
α,ω-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリジメチルシロキサン(Mn約5000)の製造
1台の還流冷却器を備えた2Lの三つ口丸底フラスコに、51.26gの1,3-ビスヒドロキシブチルテトラメチルジシロキサン、1085gのジメトキシジメチルシラン、157.8gの蒸留水及び18.4mlの濃塩酸を充填した。その混合物を60℃で1時間加熱した。次いでメタノールを5時間にわたって留去して552mLを収集した。次に、349mlの蒸留水と349mLの濃HClを添加し次いで内容物を100℃で3時間還流した。次に粗生成物を水性層から分離した。次いで600mLのジエチルエーテル(エーテル)と400mLの脱イオン水を添加し、次にその溶液を、400mlの重炭酸ナトリウム溶液(0.5%)で2回抽出し、次に洗浄水が中性pHになるまで蒸留水で抽出した。次いで生成物(655.8g)を、メタノール/水混合物(508.2g/147.97g)中にゆっくり添加した。底部の有機層を分離しジエチルエーテルを添加し次に硫酸マグネシウムで乾燥した。次いでエーテルを室温にて減圧下で除去し、そして残留物をさらに80℃にて減圧(0.77-mm torr)でストリッピングを行った。最終生成物を回収した。H-NMRで測定した分子量(Mn)は4800であった。
【0050】
実施例2
α,ω-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリジメチルシロキサン(Mn約2700)の製造
1,3-ビスヒドロキシブチルテトラメチルジシロキサン:ジメトキシジメチルシランのモル比を約1:28に変更したこと以外、実施例1の全手順に従って、上記ポリシロキサンを製造した。滴定法で測定した生成物の分子量(Mn)は2730であった。
【0051】
実施例3
実施例1のPDMSを使って行うポリジメチルシロキサンベースのプレポリマーの製造
乾燥した500mL三つ口丸底フラスコを、窒素注入管と還流冷却器に接続した。このフラスコに、イソホロンジイソシアネート(2.111g,9.497mmol)(IPDI)、ジエチレングリコール(0.498g,4.696mmol)(DEG)、ジブチル錫ジラウレート(0.161g)及び150mLの塩化メチレンをすべて一度に添加した。内容物を還流した。一夜経過後、イソシアネートの量は、滴定法で測定したところ、43.3%まで減少していた。次いでこのフラスコに、実施例1由来のα,ω-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリジメチルシロキサン(45.873g,9.557mmol)を添加した。還流を一夜続けて、滴定法で測定したところ、未反応のイソシアネートは全く残っていなかった。次にIPDI(1.261g,5.673mmol)を添加して還流を一夜続けた。滴定法で測定した結果、イソシアネートの量は、22.9%まで減少していた。内容物を周囲温度まで放冷した。次いで1,1’-ビ-2-ナフトール(0.008g)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(0.429g,3.296mmol)を添加し、次いでイソシアネートの2267cm-1におけるピークが、生成物のIRスペクトルから消えるまで、内容物を周囲温度で攪拌した(約20時間)。次に溶媒を減圧で除き、44.55gの生成物を回収した。理論的に、このプレポリマーは、3個の強力で硬いセグメント、4個の弱くて硬いセグメントを有していた(x=約3、y=約4)。
【0052】
実施例4
実施例1のPDMSを使って行うポリジメチルシロキサンベースのプレポリマーの製造
乾燥した500mL三つ口丸底フラスコを、窒素注入管と還流冷却器に接続した。このフラスコにイソホロンジイソシアネート(7.825g,35.202mmol)(IPDI)、実施例1由来のα,ω-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリジメチルシロキサン(94.31g,19.648mmol)、ジブチル錫ジラウレート(0.297g)及び250mLの塩化メチレンをすべて一度に添加した。内容物を還流した。一夜経過後、イソシアネートの量は、滴定法で測定したところ、44.5%まで減少していた。次いでこのフラスコに、ジエチレングリコール(1.421g,13.391mmol)(DEG)を添加した。還流を一夜続けて、イソシアネートの量は、滴定法で測定したところ、最初の量の5.1%まで減少していた。次に内容物を周囲温度まで放冷した。次いで1,1’-ビ-2-ナフトール(0.013g)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(0.819g,6.293mmol)を添加し、次いでイソシアネートの2267cm-1におけるピークが、生成物のIRスペクトルから消えるまで、内容物を周囲温度で攪拌した(約20時間)。次に溶媒を減圧で除き、82gの生成物を回収した。理論的に、このプレポリマーは、4個の強力で硬いセグメント、3個の弱くて硬いセグメントを有していた(x=約4、y=約3)。
【0053】
実施例5
実施例1のPDMSを使って行うポリジメチルシロキサンベースのプレポリマーの製造
実施例4のプレポリマーと類似のモル比の成分を有するプレポリマーを製造した。この合成は、分子量がほぼ同じ第二バッチのポリシロキサンを使用したこと以外は実施例4と同じであった。成分の量は、イソホロンジイソシアネート(8.716g,39.209mmol)、α,ω-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリジメチルシロキサン(105.23g,21.923mmol)、ジブチル錫ジラウレート(0.307g)、250mLの塩化メチレン、ジエチレングリコール(1.496g,14.093mmol)、1,1’-ビ-2-ナフトール(0.0146g)及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(1.033g,7.938mmol)であった。
【0054】
実施例6
実施例2のPDMSを使って行うポリジメチルシロキサンベースのプレポリマーの製造
乾燥した500mL三つ口丸底フラスコを、窒素注入管と還流冷却器に接続した。このフラスコにIPDI(10.3311g,46.475mmol)、実施例2由来のα,ω-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリジメチルシロキサン(84.68g,31.023mmol)、ジブチル錫ジラウレート(0.300g)及び200mLの塩化メチレンをすべて一度に添加した。内容物を還流した。一夜経過後、イソシアネートの量は、滴定法で測定したところ、33.6%まで減少していた。次いでこのフラスコに、DEG(1.092g,1o.288mmol)を添加した。還流を60時間続けて、イソシアネートの量は、滴定法で測定したところ、最初の量の11.4%まで減少していた。次に内容物を周囲温度まで放冷した。次いで1,1’-ビ-2-ナフトール(0.012g)と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(1.639g,12.595mmol)を添加し、次いでイソシアネートの2267cm-1におけるピークが、生成物のIRスペクトルから消えるまで、内容物を周囲温度で攪拌した(約20時間)。次に溶媒を減圧で除き、透明の液体生成物(96.67g)を得た。理論的に、このプレポリマーは、6個のPDMSブロック及びと2個の強力で硬いセグメントを有していた(x=約2、y=約5)。
【0055】
実施例7-12
実施例3のプレポリマーから誘導したコポリマー類
表1に重量比で列挙した下記の成分すなわち実施例3と4のプレポリマー;メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS);N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA);メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA);N-ビニルピロリドン(NVP);及びメタクリルオキシエチルビニルカーボネート(HemaVC)を混合することによってモノマー混合物を調製した。さらに、各モノマー混合物に、tintとしての1,4-ビス(2-メタクリルアミドエチルアミノ)アントラキノン(150ppm);希釈剤としてのヘキサノール(10重量部);及びDarocur-1173(商標)UVイニシエーター(Ciba Specialty Chemical,米国ニューヨーク州アードズリー所在)(0.5質量%)を含有させた。
【0056】
そのモノマー混合物を、シランで処理したガラス板の間に流延し、次いで紫外線で1時間硬化させた。各モノマー混合物を3組のガラス板の間に流延したが、各組のガラス板は厚さが異なるTeflon(商標)ポリマーのテープを挟んで隔てたので、各モノマー混合物に対してフィルムの厚さが約200、400及び600μmの3組のフィルム試料を得た。硬化させたフィルムを次に一夜イソプロパノールで抽出し、続いて脱イオン(DI)水で水和し、DI水中で4時間煮沸し次いでホウ酸緩衝食塩水中又はリン酸緩衝食塩水中で飽和させてヒドロゲルフィルムを得た。含水量は重量分析法で測定した。機械的試験は、先に考察したASTM D-1708aに従ってホウ酸緩衝食塩水中で実施した。DK(又はバーラー)単位で報告した酸素透過率は、先に考察した、3種の厚さを有する許容できるフィルムを使って、35℃のリン酸緩衝食塩水中で測定した。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例8及び9で調製したモノマー混合物は、濁っていたのでフィルムの流延は行わなかった。しかし、親水性コモノマーとして少ない量のHEMAを使用するか(実施例9、10及び11のように)又はDMA全体をNVPと取り替えると(実施例6のように)、配合物は透明でかつヒドロゲルフィルムはすべて透明であった。(1) 3種の厚さのデータ点は得られなかった。(2) 4種の厚さのデータ点を得た。
【0059】
実施例13-18
実施例4のプレポリマーから誘導したコポリマー類
実施例7-12の全手順に従い、実施例4のプレポリマーを使用して、モノマー混合物を調製し、コポリマーフィルムを流延して特性を評価した。その結果を表2に要約した。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例3と実施例4のプレポリマーを比較した結果、実施例4のプレポリマーを使用して5量部のHEMAを配合できるが、一方、実施例3のプレポリマーを使うと僅か2.5量部しか配合できないことが分かったのである。これは、実施例4のプレポリマーが、実施例3のプレポリマーより多くの強力で硬いセグメントを有しているためであると考えられる。
【0062】
実施例19-24
実施例5のプレポリマーから誘導したコポリマー類
実施例7-12の全手順に従い、実施例5のプレポリマーを使用して、モノマー混合物を調製し、コポリマーフィルムを流延し次いで特性を評価した。その結果を表3に要約した。
【0063】
【表4】

【0064】
実施例25-27
実施例6のプレポリマーから誘導したコポリマー類
実施例7-12の全手順に従い、実施例6のプレポリマーを使用して、モノマー混合物を調製し、コポリマーフィルムを流延し次いで特性を評価した。その結果を表4に要約した。
【0065】
【表5】

【0066】
本発明の好ましい実施態様を説明してきたが、当業者は、前掲の特許請求の範囲に記述したような本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明は各種の変形、付加及び変更を実施できることは分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*M又は
M(*Dii*Diol*Dii*PS)x(*Dii*PS)y*Dii*Diol*Dii*M
(式中、各Mは独立して重合性のエチレン系不飽和ラジカルであり、
各Diiは独立してジイソシアネートのジラジカル残基であり、
各Diolは独立して、1-10個の炭素原子を有するジオールのジラジカル残基であり、
各PSは独立してポリシロキサン-ジオール又はポリシロキサン-ジアミンのジラジカル残基であり、
*は独立して-NH-CO-NH-、-NH-COO-又は-OCO-NH-であり、
xは少なくとも2であり、及び
yは少なくとも1である)
で表されるプレポリマー。
【請求項2】
各Diiが独立して、脂肪族又は芳香族の部分に6-30個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族のジイソシアネートのジラジカル残基である請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項3】
各Diiが、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレン4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス-(4,4’-イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びシクロヘキサンジイソシアネートからなる群から選択されるジイソシアネートのジラジカル残基である請求項2に記載のプレポリマー。
【請求項4】
各Diolが、1-10個の炭素原子を有しかつ主鎖中にエーテル結合、チオ結合又はアミン結合を含有していてもよいアルキルジオール、シクロアルキルジオール、アルキルシクロアルキルジオール、アリールジオール又はアルキルアリールジオールからなる群から独立して選択される請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項5】
各Diolが独立して、2,2-(4,4'-ジヒドロキシジフェニル)プロパン(ビスフェノール-A)、4,4’-イソプロピリジンジシクロヘキサノール、エトキシル化及びプロポキシル化ビスフェノール-A、2,2-(4,4’-ジヒドロキシジフェニル)ペンタン、1,1’-(4,4’-ジヒドロキシジフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールからなる群から選択される請求項4に記載のプレポリマー。
【請求項6】
各PSが、独立して、下記式:
【化1】

(式中、各Aはヒドロキシルラジカル又はアミノラジカルであり、
各Rは独立して、1-10個の炭素原子を有しこれら炭素原子の間に、エーテル結合、ウレタン結合又はウレイド結合を含んでいてもよいアルキレン基から選択され、
各R’は独立して、水素、又は1-20個の炭素原子を含みその炭素原子の間にエーテル結合を含んでいてもよい一価の炭化水素ラジカルもしくはハロゲンで置換された一価の炭化水素ラジカルから選択され、及び
aは少なくとも1である)
で表されるポリシロキサンのジラジカル残基である請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項7】
各Rがアルキレンでありかつ各R’が独立して、エーテル結合を随意選択的に含むアルキル又はフルオロアルキルである請求項6に記載のプレポリマー。
【請求項8】
PSのMnが1000-8000の範囲内にある請求項6に記載のプレポリマー。
【請求項9】
x対yの比率が少なくとも0.6である請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項10】
各Mが独立して、下記式:
【化2】

(式中、R23は水素又はメチルであり、
各R24は、水素、1-6個の炭素原子を有するアルキルラジカル又は-CO-Y-R26ラジカル(式中、Yは-O-、-S-又は-NH-である)であり、
R25は1-10個の炭素原子を有する二価のアルキレンラジカルであり、
R26は1-12個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、
Qは-CO、-OCO-又は-COO-であり、
Xは-O-又は-NH-であり、
Arは6-30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルであり、
bは0-6であり、cは0又は1であり、dは0又は1であり、及びeは0又は1である)
で表される重合性エチレン系不飽和ラジカルである請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項11】
各Mがメタクリルオキシエチルであり、
各Diiがイソホロンジイソシアネートのジラジカル残基であり、
各Diolがジエチレングリコールのジラジカル残基であり、
各PSが、Mnが少なくとも2000のポリジメチルシロキサン-ジオールのジラジカル残基であり、及び
*が-NH-COO-又は-OCO-NH-である
請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項12】
下記式:
(*Dii*Diol*Dii*PS)x ブロック(I)
(*Dii*PS)y ブロック(II)
(式中、各Diiは独立してジイソシアネートのジラジカル残基であり、
各Diolは独立して、1-10個の炭素原子を有するジオールのジラジカル残基であり、
各PSは独立してポリシロキサン-ジオールのジラジカル残基であり、
*は独立して-NH-CO-NH-又は-OCO-NH-であり、
xはブロック(I)の数を表し少なくとも2であり、及び
yはブロック(II)の数を表し少なくとも1である)
で表されるブロック(I)とブロック(II)を含み、各末端を重合性エチレン系不飽和ラジカルでエンドキャップされているプレポリマー。
【請求項13】
請求項1に記載のプレポリマー及びコモノマーを含有するモノマー混合物の重合生成物であるコポリマー。
【請求項14】
モノマー混合物が親水性コモノマーを含有している請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
モノマー混合物が、エチレン系不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリル置換アルコール類、ビニルラクタム類及び(メタ)アクリルアミド類からなる群から選択される少なくとも一種の親水性モノマーを含有している請求項14に記載のコポリマー。
【請求項16】
モノマー混合物が、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、グリセリルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、メタクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも一種の親水性モノマーを含有している請求項15に記載のコポリマー。
【請求項17】
モノマー混合物がさらに、単官能シリコーン含有モノマーを含有している請求項14に記載のコポリマー。
【請求項18】
モノマー混合物がさらに、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを含有している請求項17に記載のコポリマー。
【請求項19】
請求項1に記載のプレポリマー及び親水性コモノマーを含有するモノマー混合物の水和された重合生成物であるヒドロゲルコポリマー。
【請求項20】
含水量が少なくとも20質量%である請求項19に記載のヒドロゲルコポリマー。
【請求項21】
モジュラスが100g/mm2を超えない請求項19に記載のヒドロゲルコポリマー
【請求項22】
モジュラスが約40-80g/mm2の間の範囲内である請求項21に記載のヒドロゲルコポリマー。
【請求項23】
酸素透過率が少なくとも100バーラーである請求項19に記載のヒドロゲルコポリマー。
【請求項24】
酸素透過率が少なくとも150バーラーである請求項23に記載のヒドロゲルコポリマー。
【請求項25】
含水量が少なくとも20質量%であり、モジュラスが40-80g/mm2の間の範囲内でありかつ酸素透過率が少なくとも150バーラーである請求項19に記載のヒドロゲルコポリマー。
【請求項26】
請求項19に記載のコポリマーで構成されている生物医学装置。
【請求項27】
請求項19に記載のコポリマーで構成されている眼科装置。
【請求項28】
コンタクトレンズ又は眼内レンズである請求項27に記載の眼科装置。

【公表番号】特表2008−525614(P2008−525614A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549364(P2007−549364)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/041537
【国際公開番号】WO2006/071387
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】