説明

生物活性アニリンコポリマー

健康産業、食品産業、包装産業、水関連産業、ペイント産業、木材産業、繊維産業、家禽産業、ガラス産業、紙産業、ゴム産業、セラミック産業、水産食品産業、スポーツ産業、プラスチック産業、および農産業において使用するのに適した、抗微生物性対象物を製造するための、抗微生物性物質(抗菌性、抗真菌性または抗ウイルス性物質)として使用するためのアニリンコポリマーおよびそれらの合成である。そのコポリマーは、たとえば(A)のものであるが、ここで、たとえばR=H−COH、−COMe、または−COEtである。Rは典型的にはHまたはC〜Cアルキルであり、xは1および0の間の整数であり、且つ、mは重合度を示す。好適なコポリマーは、アニリンと3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸および3−アミノ安息香酸エチルとのコポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニリンコポリマー、ならびに抗微生物剤としての、より詳しくは抗菌剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤としてのポリアニリンコポリマーの使用に関する。
【0002】
本発明は主として、表面上における細菌および/または真菌および/またはウイルスの増殖を防止するために開発されたものであり、以下においてはこの使用に関連させて記載する。しかしながら、本発明がこの特定の使用分野に限定されるものではないことは理解されたい。
【背景技術】
【0003】
本明細書全体を通じて、従来技術を説明する場合、それが、そのような従来技術が広く知られている、あるいは当分野において共有される一般常識の一部を形成していることを容認しているとは決して考えてはならない。
【0004】
ポリアニリン(PANI)の一般的な構造は公知である。しかしながら、現在に至るまで、ポリアニリンは工業的用途において広く活用されるということはなかったが、その理由は主として、一般的な溶媒における溶解度が低くそして他のポリマーとの混和性が低いことにより、ポリアニリンが加工性に乏しいためである(非特許文献1)。PANIに対して顕著な溶解度を示すのは、極めて限られた種類の溶媒、たとえばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFP)のみである。HFPを使用しようとしても、それが比較的高価であるために、コスト的に大いに不利となる。
【0005】
最近になって、PANIを含むフィルムが抗菌性物質として機能することが見出された。特許文献1には、PANIが、粉体としてまたはポリビニルアルコールもしくはポリエチレンとの複合フィルム中で、Escherichia coliおよびブドウ球菌微生物の増殖に対する抗菌活性を有していることが開示されている。それらのフィルムは、使用されたポリビニルアルコールまたはポリエチレンの量に対して少ない量(1〜10重量%)でPANIを含んでいるが、このことは、加工性の問題から、より大量のPANIを使用することができないということを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許第1844245号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H.サラバジオン(H.Salavagione)ら、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:パートA:ポリマー・ケミストリー(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry)、第42巻、p.5587〜5599(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも一つの不利な点を克服もしくは改良すること、または有用な代替物を提供することである。より詳しくは、本発明の目的は、その好ましい形態において、良好な加工性を有し、さらに抗微生物活性、特に抗菌および/または抗真菌および/または抗ウイルス活性を有する、ポリアニリンのポリマーまたはコポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、置換されたアニリンを含むアニリンのコポリマーを少量たとえば0.03〜1重量%以上で存在させると、病原菌も含めた微生物に対して迅速な抑制効果を有していることを見出した。驚くべきことには、それらのコポリマーは、容易に加工することが可能で、たとえば、フィルムもしくはゲルの中に容易に組み入れたり、あるいはエレクトロスピニング法により(electorospun)ナノ繊維としたりすることができる。
【0010】
微生物(「microorganism」、「microbial」)などの用語は、本明細書で使用するとき、広い意味合いで使用しており、細菌だけではなく真菌およびウイルスも含んでいる。同様にして、「抗微生物(antimicrobial)」などの用語も、細菌、真菌、ウイルスなどにおける、減少または増殖抑制を示すために使用している。
【0011】
第一の態様によれば、本発明は、抗微生物性物質としてのアニリンコポリマーの使用を提供する。好ましくは、そのアニリンコポリマーの使用が、抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性物質である。
【0012】
第二の態様によれば、本発明は、抗微生物性物質を製造するためのアニリンコポリマーの使用を提供する。好ましくは、そのアニリンコポリマーを、抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性対象物を製造するために使用する。
【0013】
前記アニリンコポリマーが、アニリンの導電性コポリマーであることが好ましい。前記アニリンコポリマーが抗酸化剤であることが好ましい。
【0014】
前記アニリンコポリマーが、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド(無水)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、クロロホルム、およびジクロロメタンからなる群より選択される溶媒の中に、少なくとも0.05mg/mLの溶解度を有しているのが好ましい。
【0015】
前記コポリマーが、ロイコエメラルジン、エメラルジン、またはペルニグラニリン構造を有しているのが好ましい。前記コポリマーがエメラルジン構造を有していれば、最も好ましい。前記コポリマーが、塩または遊離塩基の形態にあることが好ましい。エメラルジン塩の形態が、最も好ましい。
【0016】
前記コポリマーは、アニリンを式(I)の化合物およびその塩と反応させることによって形成されるのが好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択される。
【0019】
前記ベンゼン環は、随意に、炭素原子に代えて、1または複数の好ましくはN、O、Sから選択されるヘテロ原子、より好ましくは1、2または3の窒素原子を含んでいてもよい。
【0020】
2のR基が存在している場合には、それらが合体して環を形成していてもよく、たとえば、n=2でR基が両方ともCOOHであれば、前記化合物が無水フタル酸であってもよい。
【0021】
Rが水素でRが−COであれば好ましく、Rが水素でRが−COH、−COMe、または−COEtであればより好ましい。式(I)が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される化合物であれば最も好ましい。
【0022】
前記式Iの化合物がn=2である場合、前記独立して変化可能なR基が、NHR基に対してメタ位にあることが好ましいが、必須であるという訳ではない。前記式Iの化合物がn=3である場合、前記独立して変化可能なR基が、NHR基に対してオルト位およびパラ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。
【0023】
また、前記コポリマーは、その中の芳香環が必ずしもベンゼノイドである必要はなく、任意の適切な芳香環、すなわち任意の数の原子、より通常には5または6の原子を有する複素環である化合物とアニリンとの反応によって形成させてもよい。すなわち、前記コポリマーは、アニリンを式(Ia)の化合物と反応させることによって、前記コポリマーを形成させるのが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
式中、R、Rおよびnは先に挙げたものであり、Arは、たとえばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、ピラゾールなどのN含有ヘテロ環、たとえばピランもしくはフランなどのO含有ヘテロ環、たとえばチオフェンなどのS含有ヘテロ環、たとえばイソキサゾールなどの混合複素環系、またはたとえばナフタレン、キノリンもしくはキノキサリンなどの多環系である。
【0026】
以後において、前記化合物は、単一のRを担持するベンゼン環を参照しながらさらに記述されるが、それらは、混合されたR基で置換された任意の適切な芳香環を有する化合物か、またはモノ−、ジ−、トリ−またはその他のR置換された複数の環のいずれかまたは全部の混合物を開示しているものと理解されたい。
【0027】
その他の好ましいコモノマーとしては、以下のものからなる1種または複数の化合物が挙げられる:3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;および3−アミノピリジン。
【0028】
前記抗微生物性物質は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌から選択される細菌に対して有効であることが好ましい。
【0029】
好ましくは、前記グラム陽性菌および前記グラム陰性菌は、以下のものからなる群より選択される属に属する:Bordetella、Neisseria、Legionella、Pseudomonas、Salmonella、Shigella、Erwinia、Enterobacter、Escherichia、Vibrio、Haemophilus、Actinobacillus、Klebsiella、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Corynebacterium、Listeria、Bacillus、Mycobacterium、Enterococcus、Leptospira、Serpulina、Mycoplasma、Bacteroides、Yersinia、Chlamydia、Porphyromonas、Pasteurella、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Dermatophilus、Campylobacter、およびErysipelothrix。
【0030】
さらにより好ましくは、前記グラム陽性菌および前記グラム陰性菌は、以下のものからなる群より選択される:Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella enterica血清型エンテリチディス、Enterococcus属、Staphylococcus sciuri、Enterobacter属、およびCampylobacter jejuni。
【0031】
前記抗微生物性物質が、以下のものからなる群より選択される真菌の属に対して有効であることが好ましい:Aspergillus、Blastomyces、Candida、Coccidioides、Cryptococcus、Epidermophyton、Histoplasma、Microsporum、Mucor、Rhizopus、Sporothrix、Trichophyton、Paracoccidioides、Absidia、Fusarium、Penicillium、Torulopsis、Trichosporon、Rhodotorula、Malassezia、Cladosporium、Fonsecea、およびPhialophora。
【0032】
前記ウイルスは、DNAウイルスまたは、RNAウイルスであってもよい。好ましくは、前記DNAウイルスおよび前記RNAウイルスは、以下のものからなる群より選択される系統に属する:Parvoviridae、Papillomaviridae、Polyomaviridae、Adenoviridae、Hepadnaviridae、Herpesviridae、Poxviridae、Picornaviridae、Caliciviridae、Reoviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Coronaviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、およびRetroviridae。
【0033】
前記対象物は以下の産業において採用するのが好ましい:健康産業、食品産業、包装産業、繊維産業、プラスチック産業、ガラス産業、紙産業、ゴム産業、セラミック産業、水関連産業、ペイント産業、木材産業、家禽産業、水産食品産業、スポーツ産業、および農産業。
【0034】
本発明の物質は、その物質の物理的性質が適していれば、微生物の抑制を必要とする広い範囲の用途において使用するのに好適な対象物を製造するために使用することができる。抗微生物性の対象物のいくつかの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:包帯、尿カテーテル、内視鏡、医用機器、病院の備品、ピペット、マスク、手袋、フロア、ドアおよび壁面、調理器具(food utensil)および食品袋(food packet)、食品加工表面および装置、プラスチックフィルムラップおよびプラスチック容器、コンピューターのキーボードおよびマウス、化粧品、ハンドル、水タンク、浄水のための膜、洗面所、ドアハンドル、排水管、給水管、イヤピース、靴の中敷き、プール、尿または便または血小板のためのバッグ、エアコンユニット、濾過設備、低温殺菌設備および備品。
【0035】
一つの特に好ましい実施態様においては、本発明のアニリンコポリマーは、食品貯蔵および食品包装産業において有用であるか、または創傷被覆材としてもしくは包帯のために有用な、フィルムまたはラップまたはナノ繊維の中に組み入れられる。前記アニリンコポリマーは、フィルム、ゲル、ラップまたは包帯の中に、フィルム、ゲル、ラップもしくは包帯を形成する他の成分に分散されるか、ブレンドされるか、またはアロイ化される成分として存在してもよいし、あるいはアニリンコポリマーが、その他のフィルム、ゲル、ラップまたは包帯を形成する成分に共有結合された形態で存在していてもよい。
【0036】
第三の態様によれば、本発明は次式のアニリンコポリマーを提供する。
【0037】
【化3】

【0038】
式中、R=Hもしくは上記のRであり、Rは上記のものであり、
xは1および0の間の整数であり、且つ、mは重合度を示す。前記化合物は、それ自体でポリアニリンでないのが好ましい。
【0039】
前記ベンゼン環は、随意に、炭素原子に代えて、1または複数の好ましくはN、O、Sから選択されるヘテロ原子、より好ましくは1、2または3の窒素原子を含んでいてもよい。
【0040】
重合度のmは、1から10までの間の数値とすることができる。
【0041】
第四の態様によれば、本発明は、アニリンコポリマーを調製するためのプロセスを提供する。前記プロセスには、酸化剤を含む鉱酸の溶液中で、アニリンを式(I)の化合物またはその塩と反応させる工程を含む。
【0042】
【化4】

【0043】
式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択される。
【0044】
前記ベンゼン環は、随意に、炭素原子に代えて、1または複数の好ましくはN、O、Sから選択されるヘテロ原子、より好ましくは1、2または3の窒素原子を含んでいてもよい。
【0045】
2のR基が存在している場合には、それらが合体して環を形成していてもよく、たとえば、n=2でR基が両方ともCOOHであれば、前記化合物が無水フタル酸であってもよい。
【0046】
Rが水素でRが−COであれば好ましく、Rが水素でRが−COH、−COMe、または−COEtであればより好ましい。式(I)が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される化合物であれば最も好ましい。
【0047】
前記式Iの化合物がn=2である場合、前記独立して変化可能なR基が、NHR基に対してメタ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。前記式Iの化合物がn=3である場合、前記独立して変化可能なR基が、NHR基に対してオルト位およびパラ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。
【0048】
また、前記コポリマーは、芳香環がベンゼノイドでなく、任意の適切な芳香環、すなわち任意の数の原子、より通常には5または6の原子を有する複素環である化合物とアニリンとの反応によって形成させてもよい。すなわち、アニリンを式(Ia)の化合物と反応させることによって、前記コポリマーを形成させるのが好ましい。
【0049】
【化5】

【0050】
式中、R、Rおよびnは先に挙げたものであり、Arは、たとえばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、ピラゾールなどのN含有ヘテロ環、たとえばピランもしくはフランなどのO含有ヘテロ環、たとえばチオフェンなどのS含有ヘテロ環、たとえばイソキサゾールなどの混合複素環系、またはたとえばナフタレン、キノリンもしくはキノキサリンなどの多環系である。
【0051】
さらに、前記化合物は、単一のRを担持するベンゼン環を参照されているが、それらには、混合されたR基でさらに置換された化合物か、またはモノ−、ジ−、トリ−またはその他のR置換された複数の環のいずれかまたは全部の混合物が包含されているものと理解されたい。
【0052】
その他の好ましいコモノマーとしては、以下のものからなる群から1または複数の化合物が挙げられる:3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;および3−アミノピリジン。
【0053】
任意の適切な酸化剤を使用してよい。酸化剤が、過硫酸アンモニウム、フェリシアン化カリウム、ヨウ素酸塩、および過酸化水素からなる群より選択されるのが好ましい。酸化剤がヨウ素酸カリウムであれば、最も好ましい。好ましくは、好適な鉱酸は、塩酸、硫酸、硝酸、および過塩素酸である。鉱酸が塩酸であれば、最も好ましい。ヨウ素酸塩がヨウ素酸カリウムであり、鉱酸が塩酸であることが好ましい。
【0054】
前記アニリンの前記式(I)の化合物に対する比率が(1:2)から(2:1)までであることが好ましく、前記の比率が約(1:1)であれば、より好ましい。
【0055】
さらに、アニリンコポリマーは、アニリンコポリマーはその中にほとんど溶解しないが、出発モノマー、中間体オリゴマーなどの除去に溶媒として機能するような化合物を用いて処理することによって精製されることが好ましい。この目的のために好ましい化合物はアセトンである。
【0056】
本発明はさらに、先行する態様のプロセスによって調製された場合の、アニリンコポリマーも提供する。
【0057】
第五の態様によれば、本発明はアニリンコポリマーを提供するが、ここで前記コポリマーは、アニリンを式(I)の化合物およびその塩と反応させることによって製造される。
【0058】
【化6】

【0059】
式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択される。
【0060】
前記ベンゼン環は、随意に、炭素原子に代えて、1または複数の好ましくはN、O、Sから選択されるヘテロ原子、より好ましくは1、2または3の窒素原子を含んでいてもよい。
【0061】
2のR基が存在している場合には、それらが合体して環を形成していてもよく、たとえば、n=2でR基が両方ともCOOHであれば、その化合物が無水フタル酸であってもよい。
【0062】
Rが水素でRが−COであれば好ましく、Rが水素でRが−COH、−COMe、または−COEtであればより好ましい。式(I)が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される化合物であれば最も好ましい。
【0063】
前記式Iの化合物がn=2である場合、前記独立して変化可能なR基が、NHR基に対してメタ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。前記式Iの化合物がn=3である場合、前記独立して変化可能なR基が、NHR基に対してオルト位およびパラ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。
【0064】
さらに、コポリマーは、芳香環がベンゼノイドでなく、任意の適切な芳香環、すなわち任意の数の原子、より通常には5または6の原子を有する複素環である化合物とアニリンとの反応によって形成させてもよい。すなわち、アニリンを式(Ia)の化合物と反応させることによって、前記コポリマーを形成させるのが好ましい。
【0065】
【化7】

【0066】
式中、R、Rおよびnは先に挙げたものであり、Arは、たとえばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、ピラゾールなどのN含有ヘテロ環、たとえばピランもしくはフランなどのO含有ヘテロ環、たとえばチオフェンなどのS含有ヘテロ環、たとえばイソキサゾールなどの混合複素環系、またはたとえばナフタレン、キノリンもしくはキノキサリンなどの多環系である。
【0067】
さらに、前記化合物は、単一のRを担持するベンゼン環を参照されているが、それらには、混合されたR基でさらに置換された化合物か、またはモノ−、ジ−、トリ−またはその他のR置換された複数の環のいずれかまたは全部の混合物が包含されているものと理解されたい。
【0068】
その他の好ましいコモノマーとしては、以下のものからなる群から1または複数の化合物が挙げられる:3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;および3−アミノピリジン。
【0069】
さらに、前記アニリンコポリマーは、アニリンコポリマーはその中にほとんど溶解しないが、出発モノマー、中間体オリゴマーなどの除去のための溶媒として機能するような化合物を用いて処理することによって精製されることが好ましい。この目的のために好ましい化合物は、アセトンである。
【0070】
第六の態様によれば、本発明は、アニリンコポリマーを含む抗微生物性対象物を提供する。
【0071】
第七の態様によれば、本発明は、アニリンコポリマーを組み入れた製品を提供する。好ましくは、前記製品が食品包装において使用するのに適したフィルムであってよい。また、好ましくは前記製品が創傷被覆材であってもよい。
【0072】
第八の態様によれば、本発明は、アニリンコポリマー好ましくは本発明のものと、少なくとも1種のその他の物質とを含む複合材料を提供する。前記複合材料は、粉体、ブレンド物の形態か、または少なくとも1種のその他の物質の上へのコーティングとして存在していてもよい。
【0073】
好ましくは、前記少なくとも1種の他の物質は、以下のものからなる群より選択される:ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)もしくはアクリルポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)もしくはその他のポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸メチルコポリマー、ブタンコポリマー、ヘキサンコポリマー、ゴム、天然ゴムラテックス、アクリルラテックス、エポキシラテックス、エチルセルロース、セルロース、多糖類、およびタンパク質。
【0074】
前記複合材料は、in situ重合または表面コーティングによって合成するのが好ましい。
【0075】
前記複合材料がMIC中に存在するアニリンコポリマーを有していて、それにより前記複合材料が適切な抗微生物活性を有しているのが好ましい。
【0076】
本発明はさらに、食品をアニリンコポリマーと接触させる工程を含む、食品を保存する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】3ABAPANI(ES)と相互作用させた後のE.coli細菌のTEM画像を示す図である。
【図2】2%の3ABAPANI(ES)の存在下における、Staphylococcus aureus ATCC 25923の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図3】2%の3ABAPANI(ES)の存在下における、Escherichia coli ATCC 25922の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。。
【図4】2%の3ABAPANI(ES)の存在下における、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図5】2%の3ABAPANI(ES)の存在下における、Candida albicansの生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図6】2%の3ABAPANI(ES)の存在下(高初期接種)における、Staphylococcus aureus ATCC 25923の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図7】2%の3ABAPANI(ES)および20%の血漿の存在下における、Staphylococcus aureus ATCC 25923の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図8】2%の3ABAPANI(ES)および20%の血漿の存在下における、Escherichia coli ATCC 25922の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図9】2%の3ABAPANI(ES)および20%の血漿の存在下における、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図10】2%の3ABAPANI(ES)および20%の血漿の存在下における、Candida albicansの生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図11】2%の3ABAPANI(ES)および5%の血漿の存在下における、Candida albicansの生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図12】2%の3ABAPANI(ES)および10%の血漿の存在下における、Candida albicansの生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図13】2%の3ABAPANI(ES)および16mmolのNACの存在下における、Staphylococcus aureus ATCC 25923の生菌数の減少をLog10で示すグラフである。
【図14】Staphylococcus aureus ATCC 25923と相互作用させた後の、PMMA上にコーティングしたフィルムθ4(PVAおよびPANI)を示す図である。
【図15】Staphylococcus aureus ATCC 25923と相互作用させた後の、PMMA上にコーティングしたフィルムρ2(PVAおよびPoly3ABA)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明は、微生物の増殖を抑制するためのアニリンコポリマーを提供する。
【0079】
本発明は、院内感染、特に創傷感染および医療移植に伴う感染ならびに食品および/または水の摂取にともなう感染の予防または治療において特に有用であるが、本発明は、あらゆる環境または任意のタイプの表面における微生物をターゲットとして使用してもよく、そのようなものとしては、たとえば除染されるべきヒトおよび動物の対象物または物質などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0080】
非病原性の菌もまた、特にそれらが食品の腐敗および品質低下のような望ましくない影響の原因となりうるような場合には、本発明のターゲットとすることができる。
【0081】
本発明のコポリマーはアニリンコポリマーであり、それらは、アニリンを式(I)の化合物およびその塩と反応させることによって合成することができる。
【0082】
【化8】

【0083】
式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択される。
【0084】
ベンゼン環は、随意に、炭素原子に代えて、1または複数の好ましくはN、O、Sから選択されるヘテロ原子、より好ましくは1、2または3の窒素原子を含んでいてもよい。
【0085】
2のR基が存在している場合には、それらが合体して環を形成していてもよく、たとえば、n=2でR基が両方ともCOOHであれば、その化合物が無水フタル酸であってもよい。
【0086】
Rが水素でRが−COであれば好ましく、Rが水素でRが−COH、−COMe、または−COEtであればより好ましい。式(I)が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される化合物であれば最も好ましい。
【0087】
式Iの化合物がn=2である場合、それらの独立して変化可能なR基が、NHR基に対してメタ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。式Iの化合物がn=3である場合、それらの独立して変化可能なR基が、NHR基に対してオルト位およびパラ位にあることが好ましいが、そのことが必須であるという訳ではない。
【0088】
アニリンを、その中の芳香環がベンゼノイドではなく、任意の適切な芳香環、すなわち任意の数の原子、より通常には5または6の原子を有する複素環である化合物と反応させることによって、コポリマーを形成させてもよい。すなわち、アニリンを式(Ia)の化合物と反応させることによって、前記コポリマーを形成させるのが好ましい。
【0089】
【化9】

【0090】
式中、R、Rおよびnは先に挙げたものであり、Arは、たとえばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、ピラゾールなどのN含有ヘテロ環、たとえばピランもしくはフランなどのO含有ヘテロ環、たとえばチオフェンなどのS含有ヘテロ環、たとえばイソキサゾールなどの混合複素環系、またはたとえばナフタレン、キノリンもしくはキノキサリンなどの多環系である。
【0091】
いくつかの好ましいコモノマーとしては、以下のものの単独または任意の組合せが挙げられる:3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;または3−アミノピリジン。
【0092】
アニリンと式(I)の化合物との反応は、酸化剤の存在する鉱酸中で行われる。任意の適切な酸化剤を使用してよい。好適な酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、フェリシアン化カリウム、ヨウ素酸カリウム、過酸化水素、硫酸セリウム(IV)、二クロム酸カリウム、およびバナジン酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。好適な鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、または過塩素酸などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。鉱酸が塩酸であり、酸化剤がヨウ素酸カリウム、KIOであることが好ましい。
【0093】
本発明のコポリマーは、一般的な有機溶媒の中で、アニリン対官能化アニリンのモル比が1:1である反応混合物を使用して合成された。その結果良好な収率が得られ、PANIに比較して、より溶解性の高い反応生成物が得られた。一般的な溶媒としてはたとえば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ジメチルスルホキシド、無水のN,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、およびジメチルホルムアミド(DMF)、ならびに重要度は低いが、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFP)、クロロホルムおよびジクロロメタンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ES形またはEB形の場合の、PANI、3ABAPANI(3−アミノ安息香酸とアニリンとのコポリマー)、OABAPANI(2−アミノ安息香酸とアニリンとのコポリマー)、および3EABPANI(3−アミノ安息香酸エチルとアニリンとのコポリマー)の溶解性を表1に示す。理論に拘束されるものではないが、それらのコポリマーは、溶媒たとえば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)およびピリジンの中では、溶媒とポリマーとの水素結合のために、より良好な溶解性を示していると考えられる。
【0094】
【表1】

#の“レ”は、溶媒1mLあたり少なくとも0.05mgの溶解度があることを示し;
“レ×”は、溶媒に部分的に溶解することを示し;
“×”は、溶媒に実質的に不溶であることを示す。
【0095】
本発明のアニリンコポリマーは実質的に水に不溶であり、121℃での湿熱滅菌に対しては安定である。
【0096】
官能化アニリンに対するアニリンの比率が低い(1:2)反応混合物から、低収率20〜25%の反応生成物が得られた。アニリンの官能化アニリンに対するモル比を2:1とすると、一般的な有機溶媒中への溶解性の低下が見られた。アニリンと、2−アミノ安息香酸または3−アミノ安息香酸とのいずれかに対するコモノマー反応性比は、それに対応するコポリマー鎖が、約90%のアニリン単位と10%の官能化アニリン単位を有することを示唆している。コポリマーにおけるアニリン単位と官能化アニリン単位との比率は、コモノマー反応性比、およびその反応混合物中のコモノマーの相対比によって支配される。
【0097】
コポリマー鎖中の官能化アニリン単位の比率が低い(たとえば約10%)場合であっても、たとえば有機溶媒中における溶解度のような性質は、PANIの場合に比較して、顕著に変化する。コポリマーが、好ましくは少なくとも約0.01%の官能化アニリン単位を、より好ましくは少なくとも約1%の官能化アニリン単位を、最も好ましくは少なくとも約10%の官能化アニリン単位を含む。
【0098】
官能化アニリンのホモポリマーは多くの場合望ましくない。その理由は、それらは水中への幾分かの溶解性を通常有していて、そのことがいくつかの工業的利用では望ましくないからである。さらに、官能性アニリンはポリマー生成の際に、アニリンそのものよりも反応性が低い傾向にある。
【0099】
反応性比の相対的な数値(アニリン>官能化アニリン)によって、コポリマーでは、平均すると、官能化アニリン単位のシーケンスよりもアニリン単位のシーケンスの方が長い。官能化アニリンは、コポリマー鎖の中にランダムに分散されるか、それらがブロックコポリマーを形成する可能性がある。典型的には、官能化アニリンはランダムに分散される。
【0100】
出発混合物中に存在するアニリンが10〜15%未満の場合、アニリンの官能化アニリンに対する比率を変化させることによって、異なった色のコポリマーを得ることができる。
【0101】
コポリマー鎖の中での原子の配列が変化しないが、アニリンと2−アミノ安息香酸とのコポリマーの電子構造がそのコポリマーの酸化状態に依存することは知られている。以下に示すように、PANIの構造は、ロイコエメラルジン(完全還元)、エメラルジン(半酸化)、およびペルニグラニリン(完全酸化)である。
【0102】
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0103】
Xは重合度を表し、Aはアニオンである。
【0104】
エメラルジン形は、その塩の形(ES)または塩基の形(EB)として単離することができる。EB形は、塩基を添加することによって、その塩(ES)から得ることができる。好ましくは、その塩基は、1〜15%(典型的には6%)のアンモニア溶液である。その他の好適な塩基としては、金属水酸化物たとえば水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0105】
本発明のアニリンコポリマーは、抗酸化活性も示す。このことは、それらの持つ抗菌性と組み合わさって、食品包装および保存の分野においてそれらを特に有用なものとする。本発明のポリアニリンの作業性とは、密着性フィルムラップ、バッグなどの中に組み込むことが可能であるということを意味している。官能基が存在することによって、所望により、アニリンコポリマーを他の成膜性成分の中に共有結合させることがさらに可能となる。したがって、その導電性ポリマーは、食品およびゴム産業における抗酸化剤として使用される可能性を有している。酸化は、食料品の劣化の主原因である。
【0106】
導電性ポリマー抗酸化剤は、任意の疾患、ガン、および老化の進行において重要な、生体系における脂質、タンパク質およびDNAの調節不能な酸化を抑制するために採用してもよい。
【0107】
フリーラジカルの捕捉は、生物学的組織の中に存在するか、またはそれと接触する化合物にとっては有益であると広く考えられている性質である。飲料、果実および野菜の中に存在している、任意のビタミンおよびポリフェノールのフリーラジカル捕捉性抗酸化剤は、現在大きな注目をあびているが、その理由は、それらが、循環器疾患およびガンのような任意の疾患に対する保護作用を有している可能性があるからである。完全に確証されている訳ではないが、それらの作用機構としては、酸化促進性金属イオンのキレート化、ならびにそれらの還元剤としての作用によって、(そうでなければ)脂質物質およびDNAの酸化および分解に寄与する過剰レベルの損傷性フリーラジカルを捕捉する能力が上げられる。
【0108】
それらのエメラルジン塩形にあるアニリンコポリマーは、典型的には、エメラルジン塩基形のものよりも良好なラジカル捕捉性を示す。
【0109】
仕上がり品のゴム製品の使用要件としては、改良されたポリマー安定性が要求される。ゴムの酸化的劣化は、ゴム技術において最も重要な問題の一つである。その理由は、ゴムが少量の酸素を吸収するだけで、その物理機械的性質にかなりの変化を引き起こすからである。そのような変化は、抗酸化剤を添加することによって抑制することは可能であるが、完全に避けることはできない。ポリアニリンは、特にメトキシ−置換されたポリアニリンを使用した場合には、酸化速度を遅らせるのに効果があることが見出された。
【0110】
本発明のアニリンコポリマーは、病原性の種および非病原性の種のいずれも含めて、広く任意の細菌に対して有用である。アニリンコポリマーは、それらのエメラルジン塩の形にあると、エメラルジン塩基の形よりは、より良好な抗微生物活性を示す。
【0111】
本発明のターゲット生物体である細菌は、好気性、嫌気性、条件的嫌気性、または微好気性のいずれであってもよい。グラム陰性の好気性および微好気性の桿菌および球菌としては、Bordetella、Neisseria、およびLegionellaの属が挙げられる。条件的嫌気性のグラム陰性桿菌としては、Pseudomonas、Salmonella、Shigella、Erwinia、Enterobacter、Escherichia、Vibrio、Haemophilus、Actinobacillus、およびKlebsiellaの属が挙げられる。本発明におけるターゲット生物体として重要な細菌の群は、グラム陽性の好気性および微好気性の桿菌および球菌であって、そのようなものとしては、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Corynebacterium、Listeria、Bacillus、およびErysipelothrixの属が挙げられる。本発明の特にターゲットとなる細菌としては、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella enterica血清型エンテリチディス、Enterococcus属、Staphylococcus sciuri、Enterobacter属、およびCampylobacter jejuniが挙げられる。
【0112】
さらなる細菌の属としては以下のものが挙げられる:Mycobacterium、Leptospira、Serpulina、Mycoplasma、Bacteroides、Yersinia、Chlamydia、Porphyromonas、Hemophilus、Pasteurella、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Dermatophilus。これら、ならびにここにリストアップされていないその他の細菌の群および属も、当業者によれば、本発明の好適なターゲット細菌であると認識されよう。
【0113】
本発明の組成物は、任意の細菌が原因の皮膚感染、特に表皮感染を治療するのには特に有用である。本発明のアニリンコポリマーのターゲットとなる真菌の属としては以下のものからなる群より選択される属が挙げられるが、これらに限定される訳ではない:Aspergillus、Blastomyces、Candida、Coccidioides、Cryptococcus、Epidermophyton、Histoplasma、Microsporum、Mucor、Rhizopus、Sporothrix、Trichophyton、Paracoccidioides、Absidia、Fusarium、Penicillium、Torulopsis、Trichosporon、Rhodotorula、Malassezia、Cladosporium、Fonsecea、およびPhialophora。
【0114】
DNAウイルスおよびRNAウイルスとしては、以下のものからなる群より選択される系統が挙げられる:Parvoviridae、Papillomaviridae、Polyomaviridae、Adenoviridae、Hepadnaviridae、Herpesviridae、Poxviridae、Picornaviridae、Caliciviridae、Reoviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Coronaviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、およびRetroviridae。
【0115】
上述の細菌、真菌およびウイルスは、例として挙げた好適なターゲット生物体であるが、本発明が列記された種、属、科、目または綱に限定されると受け取ってはならない。
【0116】
ES形およびEB形の両方の、3種類のアニリンコポリマー、3ABAPANI(3−アミノ安息香酸とアニリンとの1:1コポリマー)、OABAPANI(アントラニル酸とアニリンとの1:1コポリマー)、および3EABPANI(3−アミノ安息香酸エチルとアニリンとの1:1コポリマー)について、それらの抗菌性の試験を行った。3種のものすべては、PANIそのものよりは、抗菌剤としてより優れた有効性を示す。
【0117】
コポリマーのES形は、同一のコポリマーのEB形よりも、高い有効性を示す。3ABAPANIおよびOABAPANIコポリマーは、3EABPANIよりも、微生物に対してより良好な抑制効果を示した。ポリマー鎖の中に酸性の官能基(すなわち、−COOH)が存在すると、そのコポリマーの抗菌有効性が改良されることが見出された。理論に拘束されるものではないが、コポリマーの分子鎖の上の酸性のドーパントが細菌(またはその他関連の微生物体)に作用して、その結果それらが死滅するのかもしれない。別な考え方として、異なる極性の電荷を担持しているコポリマー分子と細菌との間で静電的な付着が起きるために、細菌の壁面が破壊され、細菌の内容物が暴露されるかまたは漏れだし、それによって細菌の死滅がもたらされるのかもしれない。
【0118】
アニリンコポリマーは、固体の形状として表面に、または液状の形態の中で適用することができる。
【0119】
アニリンコポリマーは、通常のポリマーフィルムの中に組み入れることが可能であり、それを表面に適用することができる。通常のポリマーフィルムとしては、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリフッ化ビニリデン、ブテンコポリマー、ヘキセンコポリマー、アクリル酸メチルコポリマー、およびエチレン酢酸ビニルコポリマーなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0120】
アニリンコポリマーは、抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性対象物を製造するのに使用することができる。そのような対象物としては、以下のようなものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:包帯、尿カテーテル、内視鏡、医用機器、病院の備品、マスク、フロア、食品袋、プラスチックフィルムラップ、食品加工表面および装置、ピペット、コンピューターのキーボードおよびマウス、化粧品、ハンドル、水タンク、浄水のための膜、洗面所、ドアハンドル、排水管、給水管、イヤピース、靴の中敷き、プール、尿または便または血小板のためのバッグ、エアコンユニット、濾過設備、低温殺菌設備および備品。
【0121】
アニリンポリマーは、当業者公知の任意の産業において使用することができる。そのような産業としては、以下のようなものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:健康産業、食品産業、包装産業、水関連産業、ペイント産業、繊維産業、プラスチック産業、ガラス産業、紙産業、ゴム産業、セラミック産業、木材産業、家禽産業、水産食品産業、スポーツ産業、および農産業。
【実施例】
【0122】
コポリマーの合成
アニリンと3−アミノ安息香酸との1:1コポリマー(3ABAPANI)、またはアニリンとアントラニル酸との1:1コポリマー(OABAPANI)の合成を、3.88mLのアニリン、それぞれ5.85gの3−アミノ安息香酸またはアントラニル酸、8.64gのヨウ素酸カリウム(KIO)および240mLの1.25M塩酸を使用して実施した。
【0123】
アニリンと3−アミノ安息香酸エチルとの1:1コポリマー(3EABPANI)の合成を、0.9mLのアニリン、1.65gの3−アミノ安息香酸エチル、62.5mLの1.25MのHClおよび2.25gのKIOを使用して実施した。
【0124】
ヨウ素酸カリウムおよび塩酸の溶液を7℃に冷却してから、アニリンおよび官能化アニリンモノマーを1:1のモル比で使用した。その溶液を7℃で5時間撹拌し、エメラルジン塩の形(ES)を得た。その反応混合物を濾過し、蒸留水を用いて完全に洗浄し、その濾液をフラスコに移し替え、6%アンモニア溶液150mL(または、3EABPANIの場合には46.8mL)と共に一晩撹拌し、ポリマーを脱ドープ(dedope)して、エメラルジン塩基の形(EB)を得た。それぞれのコポリマーのES形の半分の量だけを使用して、EB形を調製した。濾過後、蒸留水を用いて繰り返し洗浄してから、その濾液をアセトン75mL(または、3EABPANIの場合には23.5mL)と共に15分間撹拌し、再度濾過した。EB形の場合と同じ条件で、それぞれのコポリマーのES形も、アセトンを用いて精製した。それぞれのコポリマー(EBまたはES)の濾液を、40℃で一晩真空オーブン中に静置して乾燥させた。
【0125】
理論に束縛されることなく言えば、アセトンを用いて処理することによって、望ましくない毒性の副作用を有する可能性がある未反応または不完全に反応した出発物質(たとえば、モノマー)または中間体(たとえば、オリゴマー)が洗い出されたものと考えられる。この目的のためにはアセトンが好ましい化合物であるが、なにかその他の適切な溶媒を使用することも可能であろう。処理後に、ポリアニリンの抗微生物活性の低下は観察されなかった。
【0126】
3ABAPANI、OABAPANI、および3EABPANIのサンプルの抗微生物的性能および抗酸化的性能を比較する目的で、ES形のアニリンと官能化アニリン(−OCH、−CH、−SOH、−Cl)とのコポリマーを、3ABAPANI/OABAPANI(ES)サンプルの場合と同じ条件下で合成した。官能化アニリンのホモポリマー、3−アミノ安息香酸のホモポリマー(Poly3ABA)、および3−アミノスルホン酸のホモポリマー(PolySOH)もまた化学的に合成した。
【0127】
FTIR
PANIのEB形は、1586、1493、1305、1162、および828cm−1に強い吸収ピークを有している。PANIのプロトン化された塩の形(ES)においては、キノイド単位に起因する1586cm−1および1162cm−1〜1574cm−1および1135cm−1への吸収帯のシフトが観察された。
【0128】
カルボニル基C=Oによる特異的吸収帯が、すべてのコポリマーサンプルで認められたが、ES形における方が高強度であった。コポリマーのES形の中のNH構造が、1135cm−1に現れる吸収帯により確認された。1220、1105、1010、および830cm−1における吸収帯は、ベンゼノイド環の1,4置換で生じた。官能化アニリンによる吸収帯も、コポリマーのES形およびEB形の両方に見出された。
【0129】
ラマン
ラマンスペクトルは、PANIのES形およびEB形のそれと同様の吸収帯を示した。コポリマーのES形において1336cm−1に現れる吸収帯は、カチオンラジカル種のC−N伸縮と同定された。ESの場合のアミン変角吸収帯である、1414cm−1でのN−H変角もまた観察された。
【0130】
UV−VIS
PANI/NMP溶液のUV−VISスペクトルには、〜330nmのピーク(ベンゼノイドピーク;Bと呼ばれる)および〜630nmの第二のピーク(キノイドピーク;Qと呼ばれる)の二つ特異的ピークが存在する。3EABPANIサンプルの方がより良好な溶解性を示す。
【0131】
ラジカル捕捉性能
コポリマーのDPPHフリーラジカル捕捉活性、およびそれぞれのコポリマーで捕捉されたDPPHラジカルあたりのアニリン単位の比率を表2に示す。
【0132】
【表2】

【0133】
酸性の官能基を有するコポリマーは、酸性の官能基を有さないコポリマーよりも良好なラジカル捕捉性能を示す。3ABAPANI/OABAPANIコポリマーおよび3EABPANIによるDPPH捕捉量は、それぞれ3.1および1.7μmolである。3ABAPANI/OABAPANIのDPPH捕捉活性は、3EABPANIサンプルのほぼ2倍である。ポリマー鎖の中に存在する強酸性の基(−SOH)を含むコポリマーは、より弱い酸性の−COOH基を有するコポリマーと同程度のDPPH活性を示す。さらに、−COOH置換基を有するコポリマーのDPPH活性は、その置換基の位置(オルトまたはメタ)とは無関係であった。したがって、それぞれのコポリマーについて最大の捕捉値を使用すると、3ABAPANI/OABAPANI/SOHPANIの場合には捕捉されるDPPHラジカルあたり3.4のアニリン単位の比率であったが、ClPANIの場合にはそれが8.2アニリン単位にまで大きくなった。
【0134】
細菌
本発明の化合物を、以下の細菌の菌株に対して試験した:Staphylococcus aureus ATCC 25923(ATCC=アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(グラム陽性菌)、Escherichia coli ATCC 25922(グラム陰性菌)、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853(グラム陰性菌)、Salmonella enterica血清型エンテリチディス(2種の抗生物質耐性菌株;グラム陰性菌)、Enterococcus faecalis(バンコマイシン耐性菌株;グラム陽性菌)、Staphylococcus sciuri(オキサシリン耐性菌株、多剤耐性;グラム陽性菌)、Enterobacter属(多剤耐性菌株;グラム陰性菌)、Pseudomonas aeruginosa(多剤耐性菌株;グラム陰性菌)、Campylobacter jejuni(菌株A;グラム陰性菌)、Campylobacter jejuni(菌株B;グラム陰性菌)、Salmonella enterica血清型エンテリチディス(広域スペクトルベータラクタマーゼ陽性分離菌、多剤耐性;グラム陰性菌)、Escherichia coli(広域スペクトルベータラクタマーゼ陽性分離菌及び多剤耐性;グラム陰性菌)、Pseudomonas aeruginosa(メタロベータラクタマーゼ陽性及び多剤耐性;グラム陰性菌)、Staphylococcus aureus(メチシリン耐性、多剤耐性;グラム陽性菌)、Listeria monocytogenes ATCC BAA−751(グラム陽性菌)、Bacillus subtilis ATCC 6633(グラム陽性菌)、およびEnterococcus faecalis ATCC 29212(グラム陽性菌)。
【0135】
菌株の保存培養は、15%グリセロールを補ったトリプティックソイブロス(仏国ビオメリュー(bioMerieux,France)製)中、−80℃で保存した。唯一の例外は、2種のCampylobacter jejuni菌株であって、それらはフレッシュな分離菌として使用した。
【0136】
菌株を、保存培養から脳心臓浸出物(BHI)寒天(BD−米国ベクトン・ディッキンソン・マイクロバオロジー・システム(Becton Dickinson Microbiology Systems,USA)製)へ移し、空気雰囲気中35℃で一晩インキュベートした。唯一の例外は、2種のCampylobacter jejuni菌株であって、これらは、5%ウマ血液を補足したBHI寒天上で培養し、ジェンボックス・マイクロエア・システムズ(GENbox microaer systems)(仏国ビオメリュー製)を用いて得られる微好気性条件中35℃で2日間インキュベートした。それらの菌株を同一条件下でもう一度継代培養し、その増殖した培養物を用い、デンシマット(Densimat)デンシトメーター(仏国ビオメリュー製)を使用することにより、無菌の綿棒を使用して5mLの懸濁培地(仏国ビオメリュー製)の中で、0.5マックファーランド(約10cfu/mL;cfu/mL=1mLあたりのコロニー形成単位)に相当する細菌懸濁液を調製し、そして必要に応じてさらに希釈した。
【0137】
コポリマーの抗菌活性は、a)ポリビニルアルコール(PVA)フィルム中に分散させたコポリマーとして、およびb)純粋な粉体として、試験した。コポリマー/PVAフィルムを混合し、オートクレーブ中121℃、15分間の滅菌を行い、ペトリ板の中に注入した。そのコポリマー/PVAフィルムから水を蒸発させるために、35℃で48時間インキュベーションした。PVA中3ABAPANI(0.2重量%)について、グラム陰性のEscherichia coli ATCC 25922細菌およびグラム陽性のStaphylococcus aureus ATCC 25923細菌の異なる量(10、10、10、および10cfu/mL)を用いて試験した。細菌の懸濁液(100μL)を、乾燥させたコポリマー/PVAフィルムの上に注ぎ、次いで、脳心臓浸出物寒天を用いて被覆した。そのプレートを35℃で48時間インキュベートした後に、結果を読み取った。
【0138】
酵母およびカビ
本発明の化合物を、以下の酵母およびカビ菌株に対して試験した:Candida albicans、Cryptococcus neoformans、Candida guilliermondii、Candida parapsilosis、Candida kefyr、Candida glabrata、Aspergillus flavus、およびAspergillus niger。
【0139】
酵母の菌株を、保存培養からサボラウド(Saboraud)ブドウ糖寒天(SDA)(仏国ビオメリュー製)の上に移し、空気雰囲気中35℃で一晩インキュベートした。それらの酵母の菌株を同一条件下でもう一度継代培養し、その増殖した培養物を用い、デンシマットデンシトメーター(仏国ビオメリュー製)を使用することにより、0.5マックファーランド(1〜5×10cfu/mL;cfu/mL=1mLあたりのコロニー形成単位、すなわち1mLあたりの酵母の数)に相当する酵母懸濁液を調製し、そして必要に応じてさらに希釈した。
【0140】
カビを、保存培養からサボラウドブドウ糖寒天(SDA)(仏国ビオメリュー製)の上に移し、空気雰囲気中35℃で5日間インキュベートした。カビを同一条件下でもう一度継代培養し、その培養物を用いて、5mLのTween−20を0.1%(v/v)含むBHIブロスを用いてAspergillusコロニーの表面を覆い、滅菌ループを用いてプロービングすることによって、接種懸濁液を調製した。その分生子の懸濁液を無菌のチューブに移し、ボルテックスにより激しく撹拌してから、ノイバウエル(Neubauer)細胞数血球計数器を用いて顕微鏡的に計数することにより調整して、1〜5×10分生子/mLの懸濁液を得た。その懸濁液を必要に応じて希釈した。
【0141】
最小発育阻止濃度(MIC)
コポリマー粉体についてのMICは、微量希釈試験法を用いて求めた。その方法は、ふた付きの無菌の平底96ウェルポリスチレン非組織培養処理マイクロタイタープレート(マイクロプレート)中で、最終容積100μLで、以下のようにして実施した。
【0142】
40mg(40mg=0.04g)のコポリマー、または対照物質として使用される純粋に化学的に合成したポリアニリン(PANI)を化学天秤で秤量して、ガラスチューブに入れ、2mLのBHIブロス(仏国ビオメリュー製)を添加して、コポリマーまたはPANIの2%懸濁液を得た。次いで、そのコポリマーまたはPANIの懸濁液を、オートクレーブ中121℃で15分間かけて滅菌した(加圧下、水−飽和蒸気を使用)。
【0143】
滅菌後、自動ピペットを用いて、ウェルあたり100μLのコポリマーまたはPANIの懸濁液をトリプリケートで(コポリマーまたはPANI一つあたり三つのウェル)添加した。その後、すべての空のウェルに50μLのBHIブロスを加え、自動ピペットにより(100μLのコポリマーまたはPANIの懸濁液を含むウェルを第一のウェルとして開始して)一つのウェルから次のウェルへ50μLを移行させていくことによって、コポリマーまたはポリアニリンの懸濁液について全部で7回の2倍希釈を行った(2%−1%−0.5%−0.25%−0.125%−0.0625%−0.03125%)。この手順の後では、すべてのウェルに50μLの流体が含まれていた。
【0144】
0.5マックファーランド(〜10cfu/mL)に相当する細菌懸濁液を、BHIブロスの中で10倍希釈を2回行って〜10cfu/mLとし、その一方で、酵母およびカビの懸濁液については、BHIブロスで10倍希釈を1回だけ行った。
【0145】
希釈された微生物を含む50μLのBHIブロスを、50μLのBHIブロスで作製したコポリマーまたはPANIの懸濁液に添加した(すなわち、微生物の懸濁液と同様に、ポリアニリン懸濁液がもう一度2倍希釈た)。したがって、ウェルの中のコポリマーまたはPANIの最終的な濃度は、1%−0.5%−0.25%−0.125%−0.0625%−0.03125%−0.015625%の順となったが、それに対して、最終的な細菌接種物は、〜5×10cfu/mL含まれ、最終的な酵母およびカビ接種物は0.5〜2.5×10cfu/mL含まれていた。(コポリマーまたはPANIを含まず)BHIブロスと細菌および/または酵母/カビとだけを含むウェルを、増殖の対照として使用した。
【0146】
マイクロタイタープレートをそれぞれのふたで覆い、空気雰囲気中35℃で2日インキュベートしてから、結果の読み取りを行った。Campylobacter jejuni菌株を含むマイクロタイタープレートは、ジェンボックス・マイクロエア・システム(仏国ビオメリュー製)により得られる微好気性条件下でジャーの中でインキュベートした。
【0147】
最小発育阻止濃度(MIC)は、裸眼で観察して目に見えるような濁りの発生を防止できるアニリンコポリマーまたはポリアニリンの最低の濃度と定義した。
【0148】
ポリビニルアルコール(PVA)フィルム中に分散させたコポリマーの抗微生物活性の試験から得られた結果は、〜10cfu/mLでの純粋な粉体の試験で得られた結果と同程度であった。純粋なPVAフィルムは抗菌効果を有していなかった。しかしながら、コポリマー/PVAフィルムは、PVAが水に溶解するために、PVA中でのコポリマーの分散を均一に保つことができなかった(栄養培地の主成分は、95〜98重量%の水である)。表3に、それぞれのサンプルについて、それぞれのタイプの試験した細菌に対する抑制効果の結果(重量%)を示す。
【0149】
表4に、いくつかの置換されたポリアニリンによる、特定の細菌に対する抑制効果(重量%)を示す。
【0150】
Campylobacter jejuni細菌に対してはコポリマーが最も有効であった。3ABAPANI、OABAPANIおよび3EABPANIの3種のコポリマーはすべて、ES形またはEB形のいずれにおいても、純粋に化学合成されたPANIならびにコポリマーのOCHPANI、CHPANIおよびClPANIよりも優れた抗菌剤としての有効性を示した。すべての場合において、コポリマーのES形の方が、同一のコポリマーのEB形よりも、高い効果を示した。
【0151】
表5に、それぞれのサンプルについて、それぞれのタイプの試験した酵母およびカビに対する抑制効果の結果(重量%)を示す。
【0152】
3ABAPANIと、OABAPANI(−COOHが3位または2位)との間では、抗微生物活性における差は見出されなかった。強酸性の基(SOHPANIコポリマー中の−SOH)を有するコポリマーは、−COOHを有するコポリマー(3ABAPANI/OABAPANI)に類似の抗微生物活性を示した。3ABAPANI、OABAPANIおよびSOHPANIの抗酸化性の試験からも、同様の結果が得られた。
【0153】
3ABAPANI、OABAPANIおよび3EABPANIの3種のコポリマーはすべて、多剤耐性細菌、バンコマイシン耐性enterococcusおよびメチシリン/オキサシリン耐性Staphylococcus、さらには酵母およびカビも含めて、抗生物質耐性細菌に対する活性を有していた。
【0154】
説明してきたアニリンコポリマーが、一般的な有機溶媒に可溶性であり、抗菌活性および抗真菌活性を有していることは明らかであろう。
【0155】
【表3a】

【0156】
【表3b】

【0157】
【表3c】

[ES形は試験の前にアセトン洗浄を用いて精製もしたが、それらの活性は、ここに示したアセトンを用いた前精製をしなかったサンプルでの結果と違いはなかった。]
*MDR=多剤耐性、すなわち作用機構の異なる3種以上の抗微生物剤に耐性あり;ESBL=広域スペクトルベータラクタマーゼ;MBL=メタロベータラクタマーゼ;VR=バンコマイシン耐性;MR=メチシリン/オキサシリン耐性。
【0158】
【表4a】

【0159】
【表4b】

*MDR=多剤耐性、すなわち作用機構の異なる3種以上の抗微生物剤に耐性あり;ESBL=広域スペクトルベータラクタマーゼ;MBL=メタロベータラクタマーゼ;VR=バンコマイシン耐性;MR=メチシリン/オキサシリン耐性。
【0160】
【表5a】

【0161】
【表5b】

【0162】
作用機構
滅菌後、ならびにa)グラム陰性のEscherichia coli ATCC 25922およびPseudomonas aeruginosa ATCC 27853、ならびにb)グラム陽性のStaphylococcus aureus ATCC 25923細菌で処理した後の、3ABAPANI(ES)、3EABPANI(ES)、OABAPANI(ES)、PANI(ES)、SOHPANI(ES)、3ABAPANI(EB)およびPANI(EB)のFTIRスペクトルを記録した。その結果は、すべてのサンプルにおいて、C−C伸縮キノイドおよび脱プロトン化吸収帯が、9cm−1までシフトしていることを示している。理論に束縛されることなく言えば、これらの結果から、異なる極性の電荷を担持するポリマー分子と微生物たとえば(一例として)E.coli細菌との間の静電的付着によって、図1に見られるように、細菌の壁面が破壊され、細菌の内容物が漏れだし、それによって細菌を死滅させることが示唆されている。
【0163】
すべてのサンプルにおいて、細菌との相互作用の後、EPRシグナルが高くなった。これらの結果は、ポリマー鎖中のポーラロンの濃度が、細菌との相互作用の後では高くなったことを暗示しているが、このことは、アニリンコポリマーと細菌との間で静電的付着が起きたことのもう一つの証明である。
【0164】
寒天拡散法−タブレット法
以下の表6に示したコポリマーから、平均重量100±5mg、直径1.5cmのタブレットを作製した。Staphylococcus aureus ATCC 25923について、抗微生物活性の試験をした。
【0165】
BHI寒天20mLを、90mmペトリ板の中に注入した。0.5マックファーランドに相当するStaphylococcus aureus ATCC 25923の懸濁液を、綿棒を用いてBHI寒天の上に接種した。次いで、その接種されたBHI寒天の表面上にタブレットを置いた。そのプレートを、空気中35℃で一晩インキュベートした。それぞれのタブレットの周りの阻止帯の大きさ(単位mm)を測定した。
【0166】
【表6】

【0167】
すべてのコポリマーサンプルにおいて、本発明のコポリマーが純粋に化学合成されたPANIよりも、抗菌剤として優れた有効性を有していることが判った。強酸性の基を有するコポリマー、たとえば3ABAPANI、OABAPANI、およびSOHPANI(ES)が、強い阻止帯を示した。
【0168】
作用機構:抑制効果対殺菌/殺真菌効果
「静菌(static)」または「抑制」効果とは、薬剤/物質が微生物の増殖を抑制することを意味しているが、その一方で、殺菌/殺真菌/殺ウイルスという用語は、その薬剤/物質が微生物を死滅させるということを意味している。細菌のStaphylococcus aureus ATCC 25923、Escherichia coli ATCC 25922、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853、および酵母のCandida albicansに対する3ABAPANI(ES)およびPANI(ES)の作用機構を調べた。
【0169】
3ABAPANI(ES)およびPANI(ES)を2%、1%、0.5%、0.25%、および0.125%含む懸濁液を、ガラスチューブ中の2mLのBHIブロスで作製し、オートクレーブ中121℃で滅菌した。次いで、その懸濁液に微生物を接種し、5×10cfu/mLの細菌、および0.5〜2.5×10cfu/mLの酵母を得た。24時間のインキュベーション後、すべてのチューブから100μLをBHI寒天プレートに移し、ガラス棒を用いてBHI寒天の表面上に拡げた。そのBHI寒天プレートを35℃で48時間インキュベートした後、微生物コロニーを計数した。初期微生物接種の微生物の0.1%以下しか生存していない(99.9%が死滅した)場合には、そのサンプルは、殺菌性である(または、Candida albicansの場合であれば殺真菌性である)とみなした。
【0170】
【表7】

*静菌効果が認められた。より高い濃度ではおそらく殺菌性であろう。
【0171】
この実験により、アニリンコポリマーの殺菌有効性が0.5重量%、そして殺真菌有効性はやや高くて濃度2重量%であることが確認された。
【0172】
抗微生物活性の動態学
本発明において最も有効なアニリンコポリマーであった3ABAPANI(ES)について、微生物の死滅速度の面から、動態学的検討を行った。ガラスチューブに、5mLのBHIブロスで2%3ABAPANI(ES)の懸濁液を作製し、オートクレーブ中121℃で滅菌した。次いで、懸濁液に微生物を播種した。CFU滴定後ゼロ時間で、微生物の初期接種量を計算すると、Staphylococcus aureus ATCC 25923では3.4×10cfu/mL、Escherichia coli ATCC 25922では3.8×10cfu/mL、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853では3.8×10cfu/mL、そしてCandida albicansでは1.4×10cfu/mLであった。時間間隔を置いて100μLのサンプルを採取し、BHIブロスを用いて段階的に10倍希釈し、それぞれの希釈液から100μLを、BHI寒天表面プレート全体の上にガラス棒を用いて拡げた。そのBHI寒天プレートを35℃で48時間インキュベートした後、コロニーを計数した。最小検出レベルは100コロニーであった。
【0173】
結果は、増殖の減少をLog10として表した。×印をつけたデータポイントは、生存している細菌をもはや見つけることができなかった時期を表している。
【0174】
それらの実験結果を図2〜図5に示す。これらは、2%濃度における3ABAPANI(ES)の殺菌性能、さらには殺真菌性能を示している。3ABAPANI(ES)は、1%でも殺菌効果を示したが、ただし、4〜6倍長い死滅時間を必要とした。
【0175】
接種数がアニリンコポリマーの抗微生物活性におよぼす影響
動態学(死滅速度または死滅率)の場合とまったく同じ方法であるが、ただし接種数だけを変化させて、接種数の影響を調べた。ガラスチューブに、5mLのBHIブロスで2%3ABAPANI(ES)を含む懸濁液を作製し、オートクレーブ中121℃で滅菌した。次いで、懸濁液に微生物を播種した。CFU滴定後ゼロ時間のところで、微生物の初期接種量を計算すると、Staphylococcus aureus ATCC 25923の場合で1.2×1010cfu/mLであった。時間間隔を置いて100μLのサンプルを採取し、BHIブロスを用いて段階的に10倍希釈し、それぞれの希釈液から100μLを、BHI寒天表面プレート全体の上にガラス棒を用いて拡げた。そのBHI寒天プレートを35℃で48時間インキュベート後、コロニーを計数した。最小検出レベルは100コロニーであった。
【0176】
結果は、増殖の減少をLog10で表し、図6に示す。×印をつけたデータポイントは、生存している細菌をもはや見つけることができなかった時期を表している。この実験の部分から、Staphylococcus aureus ATCC 25923に対するコポリマーの抗微生物活性には接種数が顕著な影響を与えることがないということが明らかになった。接種数とは無関係に、3ABAPANI(ES)はその殺菌効果を維持していた。
【0177】
有機物担持がアニリンコポリマーの抗微生物活性におよぼす影響
有機物担持がアニリンコポリマーの抗微生物活性におよぼす影響を調べるために、接種数がアニリンコポリマーの抗微生物活性におよぼす影響を調べるために先に記載した手順を一般的に使用した。ガラスチューブにBHIブロスで作製し、オートクレーブ中121℃で滅菌した3ABAPANI(ES)の懸濁液をヒト血漿と混合した。得られた混合物を、室温で30分間静置した。次いで、その混合物に微生物を接種した。その最終容積は5mLであり、それにはBHIブロス、最終濃度2%の3ABAPANI(ES)、および最終濃度20%、10%または5%のヒト血漿が含まれていた。一方、CFU滴定後ゼロ時間での微生物の初期接種量を計算すると、Staphylococcus aureus ATCC 25923の場合で1.2×1010cfu/mL、Escherichia coli ATCC 25922の場合で5.7×1011cfu/mL、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853の場合で3.84×1011cfu/mL、そしてCandida albicansの場合で8.1×10cfu/mLであった。時間間隔を置いて100μLのサンプルを採取し、BHIブロスを用いて段階的に10倍希釈し、それぞれの希釈液から100μLを、BHI寒天表面プレート全体の上にガラス棒を用いて拡げた。そのBHI寒天プレートを35℃で48時間インキュベート後、コロニーを計数した。最小検出レベルは100コロニーであった。
【0178】
結果は、増殖の減少をLog10で表し、図7〜11に示す。×印をつけたデータポイントは、生存している細菌をもはや見つけることができなかった時期を表している。
【0179】
極端に高い微生物接種量、極めて高い(20%)有機物担持量(このタイプの実験では、10%、さらにはそれ以下で使用されることが多い)、および最後に、血清ではなく血漿を使用しているという点から、これはアニリンコポリマーの抗微生物活性にとっては起こりうる最悪のシナリオである。これらの条件では、試験した細菌(20%有機物担持でも殺菌作用は維持された)および真菌(殺真菌作用は有機物担持量5%でも、静真菌作用は20%でも維持された)に対する、アニリンコポリマーの抗微生物活性を低下させはしたものの、停止はさせなかった。
【0180】
有機物担持がアニリンコポリマーの抗真菌活性におよぼす影響
MBC(最小殺菌濃度、最小殺真菌濃度(MFC)に同じ)を、初期微生物接種量の生存を0.1%以下(死滅が99.9%)とするような最低の薬剤濃度と定義する。図12に示すように、この定義を本発明の結果に対して適用すると、初期接種量がLog108.99であったものが、8時間後にLog106.32、24時間後にはLog105.41となっているので、10%血漿の存在下での3ABAPANI(ES)は24時間後であっても、(静真菌性作用のみでなく)殺真菌性作用を示した。
【0181】
N−アセチル−L−システイン(NAC)がアニリンコポリマーの抗微生物活性におよぼす影響
NACがコポリマーの抗微生物活性におよぼす影響を、Staphylococcus aureus ATCC 25923に対しての3ABAPANI(ES)により調べた。
【0182】
80mmolのNAC1mLを2mLの微生物と混合して、(ポリアニリン懸濁液と混合した後、これについては後述)最終濃度〜1010/mL(理論的接種量)の細菌を得た。CFU滴定後ゼロ時間のところで、実際の初期接種量を計算した。その(NAC+微生物)の混合物を、室温に30分間静置した。次いでその(NAC+微生物)の混合物を、ガラスチューブ内に2mLの2.5強度のBHIブロスで3ABAPANI(ES)(100mg)を含む懸濁液を混合した(3ABAPANI(ES)懸濁液は、最初にオートクレーブ中121℃で滅菌しておいた)。すべて混合した後、最終容積が5mL、3ABAPANI(ES)の最終濃度が2%で、16mmolのNACが含まれていた。
【0183】
時間間隔を置いて100μLのサンプルを採取し、0.9mLのBHIブロスを用いて段階的に10倍希釈し、それぞれの希釈液から100μLを、BHI寒天表面プレート全体の上にガラス棒を用いて拡げた。そのBHI寒天プレートを35℃で48時間インキュベート後、微生物コロニーを計数した。キャリーオーバー効果を回避する目的で、3ABAPANI(ES)およびBHIの混合物からサンプルを直接採取することはしなかったので、最小検出レベルは100コロニーであった。
【0184】
図13に見られるように、3ABAPANI(ES)の抗微生物活性は、NACによって顕著に向上した。その系(3ABAPANI+NAC)はさらに、極めて強い抗酸化性も示す。
【0185】
フィルムの抗微生物特性−寒天重ね合わせ(agar overlay)法
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の上にコーティングしたθ4(ポリビニルアルコール−PVAおよび0.7重量%PANI)のフィルムと、PMMAの上にコーティングしたρ2(PVAおよび0.2重量%Poly3ABA)のフィルムを切断して、約1×1cmの小片とした。アニリンコポリマーまたはポリアニリンで覆われたフィルムの側が最上部になるように注意しながら、それらのフィルムを無菌のプラスチック製ペトリ皿の底部に置いた。
【0186】
次いで、それらのフィルムの上側を、50μLのStaphylococcus aureus ATCC 25923懸濁液(含量、約10cfu/mL)を用いて覆った。フィルムの表面上に播種された細菌細胞の実際の数は、BHI寒天の表面上に50μLのStaphylococcus aureus ATCC 25923を蒔くことにより求めた。一晩インキュベート後、コロニーを計数した。それぞれのフィルムの上には、Staphylococcus aureus ATCC 25923の367細胞が接種されたということが判明した。
【0187】
細菌懸濁液をフィルムの中央に置き、ピペットチップを用いてフィルムの表面全体に拡げた。次いで、それぞれのフィルムの小片を(予め別のペトリ皿の中に注入して固化させた培地から切り出した)BHI寒天の小片を用いて覆った。フィルムの小片を入れたプラスチック製のペトリ皿をそれらのふたで覆って、35℃で一晩インキュベートした。
【0188】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の上にコーティングされたθ4(PVAおよび0.7重量%PANI)およびPMMAの上にコーティングされたρ2(PVAおよび0.2重量%Poly3ABA)の表面においては、Staphylococcus aureus ATCC 25923の増殖は完全に抑制された。たとえば、図14および15を参照されたい。PANIおよびPoly3ABAは、それらをPVAコーティングの中に組み入れても、有効性が低下することはなかった。
【0189】
増殖を観察するのは容易ではないので、35℃で全部で48時間のインキュベーションの後に、フィルムの小片を覆っていたBHI寒天の小片を慎重に剥がし、無菌のループを用いて直接フィルムの表面からサンプルを取り出した。BHI寒天の上にサンプルを播種し、35℃で一晩インキュベートした。この手順によって、ポリアニリンフィルムを存在させることによって細菌の増殖が単に抑制されただけなのか、あるいは細菌が死滅したのか(静菌性か、殺菌性か)を見極めることも可能となった。PMMA上にコーティングされたθ4(PVAおよびPANI)、およびPMMAの上にコーティングされたρ2(PVAおよびPoly3ABA)の、Staphylococcus aureus ATCC 25923に対する殺菌効果を観察した。それらのフィルムの写真を図14および15に示す。
【0190】
それらの結果から、アニリンコポリマーは、他の物質とのブレンド物または複合材料においても、アニリンコポリマー粉体におけるのと同じMICの抗微生物活性を有していることが判る。ブレンドするか、または複合材料に成形することが可能な物質の例としては、以下のものが挙げられる:in situ重合により合成されるか、またはその表面の上にコーティングされるかのいずれかによる、ポリマーたとえば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)およびその他のアクリル酸誘導体、ポリ(エチレンテレフタレート)およびその他のポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸メチルコポリマー、ブタンコポリマー、ヘキサンコポリマー、ゴム、天然ゴムラテックス、アクリルラテックスおよびエポキシラテックス、エチルセルロース、セルロースおよびその他の多糖類、ならびにタンパク質。
【0191】
ウイルス
オートクレーブ処理したポリマーの3ABAPANI(ES)およびPANI(ES)の懸濁液を、細胞培養増殖培地(DMEM)で、2、1および0.4%(w/v)の濃度で調製した。ワクシニアウイルス(WR株)をDMEM中で段階的に希釈して、最終濃度が1mLあたり10〜10個の間の感染性粒子数になるようにした。ウイルスのアリコートを等容のポリマー懸濁液(およびポリマーを含まないDMEMの対照物)と混合し、室温で1時間穏やかに撹拌しながらインキュベートしてから、等容のそれぞれの懸濁液を直接添加して、CV−I細胞の単層培養物を複製させた。1時間後にその接種物を除去し、その細胞を5%のウシ胎児血清を含むDMEMで覆った。2日後にその培地を取り出し、細胞を0.5%クリスタルバイオレットで染色した。ウイルス懸濁液の感染力を、プラーク数を計数することにより求め、それぞれのポリマーの出発濃度について、(ポリマーを含まない対照との比較で)感染力の低下を求めた。
【0192】
3ABAPANI(ES)およびPANI(ES)と1時間接触させた後に生存していたワクシニアウイルスのパーセンテージを表8に示す。その結果は、ポリマーと1時間接触させた後に生存していた(感染力を維持している)ウイルスのパーセントの数字として表している。3ABAPANI(ES)では、PANI(ES)とは対照的に、ウイルス感染力の顕著な抑制が得られた。0.5重量%および1重量%の3ABAPANI(ES)では、10倍および100倍の高濃度ウイルスでも、同様なパターンの感染力の低下が観察された。
【0193】
【表8】

【0194】
具体例を挙げながら本発明の説明をしてきたが、多くのその他の形態においても具体化することが可能であることは、当業者には明らかであろう。特に、記載された任意の実施例の任意の一つの特徴は、記載されたその他の実施例のいずれと組み合わせた形であっても具体化することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗微生物性物質としてのアニリンコポリマーの使用。
【請求項2】
抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性物質としての、請求項1に記載のアニリンコポリマーの使用。
【請求項3】
抗微生物性対象物を製造するための、アニリンコポリマーの使用。
【請求項4】
抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性対象物を製造するための、請求項3に記載のアニリンコポリマーの使用。
【請求項5】
前記アニリンコポリマーが、アニリンの導電性コポリマーである、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記アニリンコポリマーが抗酸化剤である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記アニリンコポリマーが、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド(無水)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、クロロホルム、およびジクロロメタンからなる群より選択される溶媒に、少なくとも0.05mg/mLの溶解度を有している、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記アニリンコポリマーが、以下の式:
【化1】

式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルであり、R=HまたはRであり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択され;
xは1および0の間の整数であり、且つ、mは重合度を示す、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記一つまたは複数のベンゼン環が、炭素原子に代えて、N、O、Sから選択される1または複数のヘテロ原子を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記コポリマーが、ロイコエメラルジン、エメラルジン、またはペルニグラニリン構造を有する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記コポリマーが、塩または遊離塩基の形態にある、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記コポリマーが、アニリンを式(I)の化合物およびその塩と反応させることによって形成され:
【化2】

式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択される、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
Rが水素であり、且つ、Rが−COである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
Rが水素であり、且つ、Rが−COH、−COMe、または−COEtである、請求項12または請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記式(I)の化合物が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される、請求項12乃至請求項14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記ベンゼン環が、炭素原子に代えて、N、O、Sから選択される1または複数のヘテロ原子を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項17】
前記式Iの化合物が、3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;および3−アミノピリジンからなる群より選択される、請求項12乃至請求項16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性物質が、グラム陽性菌およびグラム陰性菌から選択される細菌に対して有効である、請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記グラム陽性菌および前記グラム陰性菌が、Bordetella、Neisseria、Legionella、Pseudomonas、Salmonella、Shigella、Erwinia、Enterobacter、Escherichia、Vibrio、Haemophilus、Actinobacillus、Klebsiella、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Corynebacterium、Listeria、Bacillus、Mycobacterium、Enterococcus、Leptospira、Serpulina、Mycoplasma、Bacteroides、Yersinia、Chlamydia、Porphyromonas、Pasteurella、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Dermatophilus、Campylobacter、およびErysipelothrixからなる群より選択される属に属する、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記グラム陽性菌および前記グラム陰性菌が、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella enterica血清型エンテリチディス、Enterococcus属、Staphylococcus sciuri、Enterobacter属、Campylobacter jejuni、Listeria monocytogenes、およびBacillus subtilisからなる群より選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性物質が、Aspergillus、Blastomyces、Candida、Coccidioides、Cryptococcus、Epidermophyton、Histoplasma、Microsporum、Mucor、Rhizopus、Sporothrix、Trichophyton、Paracoccidioides、Absidia、Fusarium、Penicillium、Torulopsis、Trichosporon、Rhodotorula、Malassezia、Cladosporium、Fonsecea、およびPhialophoraからなる群より選択される真菌の属に対して有効である、請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記抗菌性および/または抗真菌性および/または抗ウイルス性物質が、Parvoviridae、Papillomaviridae、Polyomaviridae、Adenoviridae、Hepadnaviridae、Herpesviridae、Poxviridae、Picornaviridae、Caliciviridae、Reoviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Coronaviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、およびRetroviridaeからなる群より選択される系統に属するDNAおよびRNAウイルスに対して有効である、請求項1乃至請求項21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記対象物が、健康産業、食品産業、包装産業、水関連産業、繊維産業、プラスチック産業、ガラス産業、紙産業、ゴム産業、セラミック産業、ペイント産業、木材産業、家禽産業、水産食品産業、スポーツ産業、および農産業において採用される、請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記対象物が、包帯、尿カテーテル、内視鏡、医用機器、病院の備品、マスク、フロア、食品袋、食品加工表面および装置、ピペット、コンピューターのキーボードおよびマウス、プラスチックフィルムラップ、化粧品、ハンドル、水タンク、浄水のための膜、洗面所、ドアハンドル、排水管、給水管、イヤピース、靴の中敷き、プール、尿または便または血小板のためのバッグ、エアコンユニット、濾過設備、低温殺菌設備および備品を含む群から選択される、請求項1乃至請求項23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
次式:
【化3】

式中、Rは、水素またはC〜Cアルキルであり、R=HまたはRであり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択され;
は、水素、C〜Cアルキル、フェニルから選択され;
xは1および0の間の整数であり、且つ、mは重合度を示す、アニリンコポリマー。
【請求項26】
前記一つまたは複数のベンゼン環が、炭素原子に代えて、N、O、Sから選択される1または複数のヘテロ原子を含む、請求項25に記載のアニリンコポリマー。
【請求項27】
アニリンコポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、酸化剤を含む鉱酸の溶液中で、アニリンを式(I)の化合物と反応させる工程を含み:
【化4】

式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH、
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択される、プロセス。
【請求項28】
Rが水素であり、且つ、Rが−COである、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
Rが水素であり、且つ、Rが−COH、−COMe、または−COEtである、請求項27または請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記式(I)の化合物が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される、請求項27乃至請求項29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記ベンゼン環が、炭素原子に代えて、N、O、Sから選択される1または複数のヘテロ原子を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項32】
前記式Iの化合物が、3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;および3−アミノピリジンからなる群より選択される、請求項27乃至請求項31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記酸化剤が、過硫酸アンモニウム、フェリシアン化カリウム、ヨウ素酸塩、および過酸化水素からなる群より選択される、請求項27乃至請求項32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記ヨウ素酸塩がヨウ素酸カリウムである、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記鉱酸が塩酸である、請求項27乃至請求項34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記アニリンの前記式(I)の化合物に対する比率が、(1:2)から(2:1)までである、請求項27乃至請求項35のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項37】
前記比率が約(1:1)である、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記アニリンコポリマーの大部分が不溶であり、且つ、その存在下において、出発モノマー、中間体オリゴマーまたは他の不純物を除去する溶媒として作用する化合物を用いて前記アニリンコポリマーを処理する工程を含む請求項24乃至請求項33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記化合物がアセトンである、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
請求項27乃至請求項39のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された場合のアニリンコポリマー。
【請求項41】
アニリンコポリマーであって、前記コポリマーが、アニリンと式(I)の化合物とを反応させることにより製造され:
【化5】

式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、
n=1、2または3であり、
は、独立して、以下のものからなる群より選択され:
〜Cアルキル、
〜Cアルコキシル、
ハロ、
−CO
−SO
−POHR
−COR
−CHCOOR
−CN、
−CHOH、
−CHNH
−CHCN、
−OH
−SONH
は、水素、C〜Cアルキル、アルカリ金属、アンモニウム、および置換されたアンモニウム塩から選択される、アニリンコポリマー。
【請求項42】
Rが水素であり、且つ、Rが−COである、請求項41に記載のアニリンコポリマー。
【請求項43】
Rが水素であり、且つ、Rが−COH、−COMe、または−COEtである、請求項41または請求項42に記載のアニリンコポリマー。
【請求項44】
RがHであり、且つ、Rが−COEtである、請求項41乃至請求項43のいずれか一項に記載のアニリンコポリマー。
【請求項45】
前記ベンゼン環が、炭素原子に代えて、N、O、Sから選択される1または複数のヘテロ原子を含む、請求項41に記載のプロセス。
【請求項46】
前記式(I)の化合物が、3−アミノ安息香酸、2−アミノ安息香酸、および3−アミノ安息香酸エチルからなる群より選択される、請求項41に記載のアニリンコポリマー。
【請求項47】
前記式Iの化合物が、3−アセチルアニリン;2−アミノベンズアルデヒド;2−アミノベンゼンスルホンアミド;2−アミノフェノール;3−アミノフェノール;2−アミノフェニル酢酸;3−アミノフェニル酢酸;2−アミノベンゾニトリル;3−アミノベンゾニトリル;2−アミノベンゾフェノン;3−アミノベンゾフェノン;2−アミノベンジルアルコール;3−アミノベンジルアルコール;2−アミノベンジルアミン;2−アミノベンジルシアニド;2−アミノ−4−ブロモ安息香酸;2−アミノ−6−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロ安息香酸;2−アミノ−4−クロロフェノール;2−アミノ−4−メチルフェノール;2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン;2−アミノ−1,3−ジエチルベンゼン;1−アミノ−3,5−ジメチルベンゼン;2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン;2−アミノ−4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン;5−アミノイソフタル酸;3−アミノ−2−メチル安息香酸;2−アミノ−3−メチルフェノール;2−アミノ−6−メチルピリジン;2−アミノ−3−ピコリン;2−アミノピリジン;および3−アミノピリジンからなる群より選択される、請求項41に記載のアニリンコポリマー。
【請求項48】
アニリンコポリマーを含む、抗菌性対象物。
【請求項49】
アニリンコポリマーを組み入れた製品。
【請求項50】
アニリンコポリマーおよび少なくとも1のその他の物質を含む、複合材料。
【請求項51】
ブレンド物の形態にある、請求項50に記載の複合材料。
【請求項52】
粉体の形態にある、請求項50に記載の複合材料。
【請求項53】
前記アニリンコポリマーが、少なくとも1の他の物質の上にコーティングとして存在する、請求項50に記載の複合材料。
【請求項54】
前記少なくとも1の他の物質が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、アクリルポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸メチルコポリマー、ブタンコポリマー、ヘキサンコポリマー、ゴム、天然ゴムラテックス、アクリルラテックス、エポキシラテックス、エチルセルロース、セルロース、多糖類、ならびにタンパク質からなる群より選択される、請求項50乃至請求項53のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項55】
in situ重合または表面コーティングによって合成される、請求項50乃至請求項54のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項56】
抗微生物剤である、請求項50乃至請求項55のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項57】
前記複合材料が、適切な抗微生物活性を有するMIC中に存在するアニリンコポリマーを備える、請求項50乃至請求項56のいずれか一項に記載の複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−540514(P2010−540514A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526842(P2010−526842)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/NZ2008/000254
【国際公開番号】WO2009/041837
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504448092)オークランド ユニサービシズ リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
【Fターム(参考)】