生理活性セラミックを含む生分解性インプラント材料
【課題】従来技術における課題を解決し得る、生分解性のポリマーを含む複合治療インプラント材料。
【解決手段】生分解性のポリマーを含む複合治療インプラント材料であって、該複合材料において増強した機械的特性を生成するのに充分な量の表面を不働態化(passiviate)した生理活性セラミックを含む生分解性ポリマーを含む、インプラント材料であって、1つの実施形態では、上記生理活性セラミックが、上記材料の容量に基づいて、約70%未満の量で存在し、別の実施形態では、上記生理活性セラミックが、上記材料の容量に基づいて、約40%未満の量で存在する、インプラント材料。
【解決手段】生分解性のポリマーを含む複合治療インプラント材料であって、該複合材料において増強した機械的特性を生成するのに充分な量の表面を不働態化(passiviate)した生理活性セラミックを含む生分解性ポリマーを含む、インプラント材料であって、1つの実施形態では、上記生理活性セラミックが、上記材料の容量に基づいて、約70%未満の量で存在し、別の実施形態では、上記生理活性セラミックが、上記材料の容量に基づいて、約40%未満の量で存在する、インプラント材料。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
生理活性セラミック材料は当該分野で公知であり、そして代表的には60モルパーセント未満のSiO2、高含量のナトリウムおよびCaO(各々20〜25%)、ならびに高モル比のカルシウム対リン(約5の範囲)を含む。このような材料は、材料と周囲組織との間の界面結合を形成するので、「生理活性」であると呼ばれる。このようなガラスが水または体液に曝されると、いくつかの鍵となる反応が起こる。第1はカチオン交換であり、ここでガラス由来の侵入型のナトリウムおよびカルシウムイオンが溶液由来のプロトンで置換され、表面シラノール基および非化学量論的な水素結合錯体を形成する:
【0002】
【化1】
【0003】
このカチオン交換はまた溶液のヒドロキシル濃度を増加させることにより、十分に密なシリカガラス網目の攻撃を導いて、さらなるシラノール基および制御された界面溶解を生じさせる。
【0004】
Si-O-Si + H+OH- --> Si-OH + HO-Si
界面pHがよりアルカリ性となり、かつ加水分解された表面シラノール基の濃度が増加するにつれ、多数の近位シラノール基を伴うコンホメーションの動力学は、格子間イオンの不在と組み合わせて、これらの基を再重合して、シリカリッチな表面層を与える:
Si-OH + HO-Si --> Si-O-Si + H2O
ガラス−溶液界面でのアルカリ性pHの別の結果として、結晶化によりCaOおよびP2O5の混合ヒドロキシアパタイト相が生じ、これが網目の溶解の間中、溶液中に放出される。このことはSiO2表面上で起こる。この相はアパタイトの微結晶を含み、これは、グリコサミノグリカン、コラーゲンおよび糖タンパク質のような界面成分の核を成し、かつ相互作用する。有機生物学的構成要素を、成長するヒドロキシアパタイト−およびSiO2−リッチな層に取り込むことは、生理活性の特徴である生存組織との密接な相互作用の引き金となると考えられる。Greenspanら(1994)、Bioceramics 7:55-60を参照のこと。
【0005】
生理活性セラミックをインプラント補綴デバイスおよび補綴デバイスのためのコーティングに使用することは、例えばHenchらの米国特許第4,775,646号(1988年10月4日発行)、「Fluoride-Containing Bioglass(登録商標) Composition」に記載されており、これは、46.1モルパーセントのSiO2、2.6モルパーセントのP2O5、26.9モルパーセントのCaOおよび24.4モルパーセントのNa2O、または52.1モルパーセントのSiO2、2.6モルパーセントのP2O5、23.8モルパーセントのCaOおよび21.5モルパーセントのNa2Oを含むガラス処方物、ならびに40〜60モルパーセントのCaOがCaF2で置換されている組成物を教示する。この特許は、この材料で作られたインプラントが、生体組織との耐久性のある化学結合の至適化が望まれる場合に有用であることを述べている。
【0006】
SiO2、CaOおよびP2O5に基づくアルカリを含まない生理活性ガラス組成物がHenchらの米国特許第5,074,916号(1991年12月24日発行)、「Alkali-Free Bioactive Sol-Gel Compositions」に開示される。
【0007】
Bioglass(登録商標)は、University of Floridaの登録商標であり、USBiomaterials Corporationにライセンスされている。Bioglass(登録商標)セラミックに関連する他の発行された特許は、米国特許第5,486,598号(1996年1月23日発行、Westら)「Silica Mediated Synthesis of Peptides」、米国特許第4,851,046号(1989年7月25日発行、Lowら)「Periodontal Osseous Defect Repair」、米国特許第4,676,796号(1987年6月30日発行、Merwinら)「Middle Ear Prosthesis」、米国特許第4,478,904号(1984年10月23日発行、Ducheyneら)「Metal Fiber Reinforced Bioglass(登録商標) Compositions」、米国特許第4,234,972号(1980年11月25日発行、Henchら)「Bioglass(登録商標)-Coated Metal Substrate」および米国特許第4,103,002号(1978年7月25日発行、Henchら)「Bioglass(登録商標) Coated A1203 Ceramics」を包含する。係属中の出願は、特許協力条約公開WO 9117777(1991年11月28日公開、発明者Walkerら)「Injectable Bioactive Glass Compositions and Methods for Tissue Recognition」(米国出願に基づき1990年5月22日の優先日に優先権主張する)を包含する。
【0008】
PerioGlas(登録商標)はUSBiomaterials Corporatoinの登録商標であり、Block Drug Corporationにライセンスされている。これはBioglass(登録商標)セラミックを含む合成骨移植片粒子状材料である。製品の文献は、この材料を骨および軟組織の両方を結合するものとして記載しており、骨の欠損中に直接充填されることが示されている。Hench, L.L.(1995)「Bioactive Implants」Chemistry and Industry (7月17日、n.14, 547-550頁)は周囲組織のコラーゲン原繊維が生理活性ガラス上に形成する表面層と直接相互作用することを報告する。
【0009】
PCT公開WO 96/00536(1996年1月11日公開、発明者Ducheyneら)は、骨組織の形成方法を開示し、この方法は骨欠損をバイオセラミック材料で充填する工程を包含する。
【0010】
粒子状骨置換材料を含む複合材料は、例えば、米国特許第4,192,021号(1980年3月11日発行、Deibigら)「Bone Replacement or Prosthesis Anchoring Matrial」を記載した。本特許は骨置換補綴固定(anchoring)材料を教示し、これは焼結リン酸カルシウムと生分解性有機材料との混合物であって、リン酸カルシウム対有機材料の比が10:1と1:1との間である。
【0011】
米国特許第5,017,627号(1991年5月21日発行、Bonfieldら)「Composite Material for Use in Orthopaedics」は、骨置換材料のための粒子状無機ソリッド(solid)粒子を含む、明らかに非生分解性のポリオレフィン材料を開示する。
【0012】
米国特許第5,552,454号(1996年9月3日発行、Kretschmannら)「New Materials for Bone Replacement and for Joining Bones or Prosthesis」は、生分解性ワックスまたはポリマー樹脂(分子量200〜10,000)および生体適合性セラミック材料を含む組成物を開示し、ここでポリマーは実質的に遊離カルボキシル基を含まない。
【0013】
他の生理活性セラミックは、米国特許第4,189,325号(1980年2月19日発行、Barrettら)「Glass-Ceramic Dental Restorations」および同特許第4,171,544号(1979年10月23日発行、Henchら)「Bonding of Bone to Materials Presenting a High Specific Area, Porous, Silica-Rich Surface」に開示される。
【0014】
PCT公開WO 96/19248(1996年6月27日公開)「Method of Controlling pH in the Vicinity of Biodegradable Implants and Method of Increasing Surface Porosity」は、生分解性ポリマーインプラントにおけるpH制御剤としての生理活性セラミックの使用を開示する。
【0015】
約10,000より上の分子量を有する生分解性ポリマーで作製された、骨および組織治癒用途のための複合材料は、文献にも開示されていないようであり、それらの材料の有利な特徴も報告されていないようである。
【0016】
本明細書中で言及される全ての刊行物はその全体が本明細書中に参考として援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によって以下が提供される:
(1)生分解性のポリマーを含む複合治療インプラント材料であって、該複合材料において増強した機械的特性を生成するのに充分な量の表面を不働態化(passiviate)した生理活性セラミックを含む生分解性ポリマーを含む、インプラント材料。
(2)前記生理活性セラミックが、前記材料の容量に基づいて、約70%未満の量で存在する、項目1に記載のインプラント材料。
(3)前記生理活性セラミックが、前記材料の容量に基づいて、約40%未満の量で存在する、項目1に記載のインプラント材料。
(4)前記生理活性セラミックが、前記材料の容量に基づいて、約30%未満の量で存在する、項目1に記載のインプラント材料。
(5)前記材料の容量に基づいて、約50%より多い空隙率を有する、項目1に記載のインプラント材料。
(6)前記材料の容量に基づいて、約75%未満の空隙率を有する、項目1に記載のインプラント材料。
(7)実質的に非多孔質である、項目1に記載のインプラント材料。
(8)生理的条件下で約1GPaと約100GPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の実質的に非多孔質のインプラント材料。
(9)生理的条件下で約1GPaと約30GPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の実質的に非多孔質のインプラント材料。
(10)生理的条件下で約0.1MPaと約100MPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の多孔質のインプラント材料。
(11)生理的条件下で約0.5MPaと約50MPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の多孔質のインプラント材料。
(12)前記生理活性セラミックが、水溶液と予め反応させることによって表面不働態化されている、項目1に記載のインプラント材料。
(13)シランカップリング剤もまた含む、項目1に記載のインプラント材料。
(14)前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、およびPLAとPGAとのコポリマーからなる群より選択される、項目1に記載のインプラント材料。
(15)前記生分解性ポリマーが約15と約50%との間のPGAを含むPLAとPGAとのコポリマーである、項目1に記載のインプラント材料。
(16)前記生理活性セラミックがSiO2、CaOおよびP2O5を含む、項目1に記載のインプラント材料。
(17)仕上がりインプラント材料における前記ポリマーが約25,000と約1,000,000との間の選択された重量平均分子量を有する、項目1に記載のインプラント材料。
(18)前記選択された分子量より大きな重量平均分子量を有するポリマーを出発材料として使用して作製された項目17に記載のインプラント材料。
(19)軟結合組織への結合に適合した生理活性セラミックを含む第一のセクション、および硬結合組織への結合に適合した生理活性セラミックを含む第二のセクションを含む、項目1に記載のインプラント材料。
(20)表面活性な生理活性セラミックもまた含む、項目1に記載のインプラント材料。
(21)項目1に記載の多孔質インプラント材料を作製する方法であって、以下:
(a)前記ポリマーとポリマー溶媒とを混合する工程;
(b)前記生理活性セラミックと該溶解したポリマーとを混合する工程;
(c)工程(b)の該混合物を型に入れる工程、および真空圧力条件下でインキュベートして前記多孔質インプラント材料を生成する工程、
を包含する、方法。
(22)項目1に記載の実質的に非多孔質のインプラント材料を作製する方法であって、以下:
(a)前記ポリマーとポリマー溶媒とを混合する工程;
(b)前記生理活性セラミックと該溶解したポリマーとを混合する工程;
(c)加圧下で工程(b)の該混合物をインキュベートして、該インプラント材料を生成する工程、
を包含する、方法。
(23)項目1に記載のインプラント材料を使用する方法であって、以下:組織足場、顆粒状骨移植片置換材料、二相骨軟骨インプラント、重量負荷骨インプラント、非重量負荷インプラント、および低重量負荷インプラント、または固定デバイス、タック(tack)、ピン、ねじ、骨アンレー、およびフィルムからなる群より選択されるインプラントデバイスへと該材料を形成させる工程を包含する、方法。
(24)患者における創傷に適用するための、生分解性ポリマーおよび約10%と約70%との間の生理活性セラミックを含む生分解性フィルム。
【0018】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、生分解性ポリマーおよび生理活性セラミックを含む多孔質および非多孔質の両方の治療用インプラント材料を提供する。生分解性ポリマーおよび生理活性セラミックを含むこのようなインプラントを本明細書では「複合インプラント」と呼ぶ。生理活性セラミックのポリマーへの取り込みは多数の利点を有する。
【0019】
重要な利点は、この材料が生理活性セラミックを含まないポリマー材料よりも優れた機械的特性を有することである(例えばヤング率がより高い)。本発明の多孔質インプラント材料は好ましくは、海綿質(スポンジ状、柵状織)の骨の欠損中に配置されるための、細胞の足場(scaffold)として使用される。このような骨のヤング率は約10MPaから3000MPaの範囲である。多孔質インプラント材料は好ましくは配置される骨のものに類似するヤング率を有する。これらの多孔質インプラント材料はまた、他のタイプの骨の中に配置される細胞の足場にもまた、使用され得る。これらはまた骨移植片置換物、骨アンレーとして、および脊髄固定のためにもまた、使用され得る。本発明の多孔質インプラント材料は好ましくは、生理学的条件(水性環境中37℃)下で本明細書中に記載の三点曲げ(three point bending)動的機械的(dynamic mechanical)分析で測定して、ヤング率が約0.1MPaと約100MPaとの間、好ましくは約0.5MPaと約50MPaとの間であり、そして空隙率が約50%より高く、そして好ましくは約65%と約75%との間であるが、より高い空隙率(例えば約90%まで)もまた使用され得る。
【0020】
本発明の多孔質インプラント材料はまた、腱、靱帯、および皮膚のような軟結合組織の修復にもまた、使用され得る。多孔質足場は、誘導される(guided)組織再生のための基質として役立つ。生分解性ポリマーが分解するにつれ、これは新しい健常な組織で置換される。生理活性セラミック成分の表面は細胞外マトリクス成分、特にI型コラーゲンと相互作用し、間葉細胞の移動のための生物学的表面を提供すること、および組織のインプラントへの並置の増強を引き起こすことによって、創傷の治癒を増強する。使用する生理活性セラミックのタイプおよび生分解性ポリマー内でのその濃度を変更することによって、インプラントの生物学的性質は調整され得る。多相インプラント、例えば、米国特許第5,607,474号(1997年3月4日発行、Athansiouら)「Multi-Phase bioerodible Implant/Carrier and Method of Manufacturing and Using Same」を生理活性セラミックを含むように改変したものもまた有用である。例えば、腱を骨に付着させるために、骨相は好ましくは45S Bioglass(登録商標)セラミックを含み、これはセメント質または骨のような硬結合組織に「結合」し、そして腱相は好ましくはBioglass(登録商標)セラミックを含み、これは腱または靱帯のような硬および軟結合組織の両方と相互作用する。あるいは、硬および軟結合組織の両方と相互作用する55S Bioglass(登録商標)セラミックを含む単一相インプラントが使用され得る。本発明の別の実施態様では、複合材料が粒子状形態で使用されて歯周修復(ここではセメント質(硬組織)、歯周靱帯(軟組織)および骨(硬組織)の再生が必要とされる)を増強し得る。インプラントの多孔質の性質は、創傷治癒細胞を含む骨髄、または他の目的の細胞の使用を可能にする。
【0021】
実質的に非多孔質である(本明細書中ではまた「十分に密な」または「ソリッド(solid)」ともいう)本発明のインプラント材料は好ましくは、プレート、ねじ、およびロッドのような骨折固定デバイスに使用される。生理学的条件下で試験した本発明の非多孔質材料のヤング率は、本明細書中に詳述される動的機械的分析三点曲げ試験を用いて試験した場合、約1GPaと約100GPaとの間であるべきである。本明細書で記載された弾性率はこのように試験されたものと理解される。骨の海綿骨質および部分的重量負荷(partial weifht-bearing)領域に適用するためには、ヤング率は好ましくは約1GPaと約30GPaとの間である。完全重量負荷(full weight-bearing)領域の骨に適用するためには、ヤング率は好ましくは約5GPaと約30GPaとの間である。非多孔質インプラント材料に増加した機械的特性を提供することに加えて、ねじなどの骨固定デバイスの材料中の生理活性セラミックスの存在は、インプラントがその場所の中に穿孔される場合に、インプラントが骨を切削する能力を高める。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「Bioglass(登録商標)」材料は、SiO2、CaOおよびP2O5を含む。生理活性セラミック(好ましくはBioglass(登録商標)セラミック)は、多孔質インプラント材料中に約40容量パーセント未満、そして好ましくは約30容量パーセント未満、下は約10容量パーセントまでで存在すべきである。生理活性セラミックは非多孔質インプラント材料中に約10容量パーセントから約70容量パーセント、好ましくは約50から60容量パーセントを超えずに存在すべきである。
【0023】
生理活性セラミックは上記のように当該分野で公知であり、そして本発明で使用される好ましい種として、粒子サイズ90〜53μm、または粒子サイズ53〜38μmを有する45S、55S、および65S Bioglass(登録商標)粒子、またはアルカリを含まないゾル−ゲルBioglass(登録商標)粒子を含む。65S Bioglass(登録商標)製品は不活性である。すなわち本明細書で使用される表面不動態化材料の定義に適合する。しかし、ゾル−ゲル65S Bioglass(登録商標)製品は表面活性である。生理活性セラミックは種々の形状(例えば不規則な形状の粒子、線維および制御された幾何形状を有する粒子)で使用され得る。
【0024】
好ましい実施態様では、生理活性セラミックは表面不動態化される。なぜなら、出願人は、驚くべきことに、湿潤な生理学的条件下で、生理活性セラミックを含むインプラントの弾性率(貯蔵弾性率およびヤング率)は乾燥条件下で測定された弾性率に比べて低下することを発見したからである。この問題は生理活性セラミックの表面を不動態化する(水に対して非反応性にする)ことによって解決される。従って、本明細書中、用語「表面不動態化」とは、ポリマー複合材料中の生理活性セラミックの表面を、好ましくは水と予備反応させてアパタイト層を形成することによって、水と反応し得ないようにされていることを意味する。あるいは生理活性セラミック粒子は、ポリマー中に配合される前に、これらをポリマーの薄い溶液中に分散し、そして乾燥することによって、ポリマーフィルムで被覆され得る。これは生理活性セラミックの表面を変化させて、ポリマーの結合を良好にさせるが、インプラントされたときに水性条件に曝露される粒子表面のさらなる生理活性を妨げない。例えば、予備反応はわずかなアパタイト層を形成し、これはポリマー相と界面で結合するが、調製されたインプラントでは、身体に曝された生理活性セラミックの表面はなお反応して界面結合を形成する。
【0025】
本発明の別の実施態様では、複合材料を含めて、生理活性材料の表面を不動態化するため、およびポリマーと生理活性セラミックとの界面を強化するために、シランカップリング剤を用いて、生理活性セラミックを被覆する。このような使用される粒子の表面を被覆するに十分なカップリング剤の量が、有効量である。
【0026】
表面不動態化されておらず、かつ水と反応する生理活性セラミック材料は、本明細書中、「表面活性」材料と呼ばれる。本発明の1つの実施態様において、表面活性材料および表面不動態化材料の両方が生分解性ポリマー材料に配合される。これらの2つのタイプの生理活性セラミックは機械的特性に対して異なる影響を有するので、表面活性材料対表面不動態化材料の比は変更されて、仕上がりインプラント材料における所望の機械的特性を達成し得ると同時に、所望の総生理活性セラミック含量を維持し得る。
【0027】
表面不動態化生理活性セラミックを含む本発明の複合治療用インプラント材料は、非表面不動態化生理活性セラミックを含むこのような組成物および生理活性セラミックを含まないこのような組成物と比べた場合、増強された(より高い)機械的特性を有する。機械的特性は本明細書においてヤング率および貯蔵弾性率に関して記載される。ヤング率は当該分野で公知の手段で測定され得る。本明細書で報告される本発明の材料の研究に関して、ヤング率は貯蔵弾性率よりも約1桁低いことが見いだされている。
【0028】
生分解性ポリマーおよび生理活性セラミックの複合材料はまた、この材料で作られたインプラントの周囲のpHを、インプラントが分解するにつれ、緩衝化するのにも効果的であり、その結果として酸性分解生成物の潜在的な悪影響を回避する。
【0029】
出願人はまた、生理活性セラミック粒子を多孔質生分解性ポリマーの作製の際に添加するとインプラントの分子量およびガラス転移温度が低下することを発見した。これはインプラントの分解時間に影響を与え得る。従って、生理活性セラミックを含む多孔質生分解性ポリマーインプラント材料を作製する方法が提供され、この方法はこれらの影響を考慮に入れ、そして適切な分子量を有する適切な出発材料の選択を可能にして、選択された分子量、分解時間、貯蔵弾性率、またはヤング率およびガラス転移温度の、最終的なインプラントを提供する。多孔質インプラント材料において、生理活性セラミックの添加は、材料の分子量を添加される生理活性セラミック1パーセント当たり、約1パーセント減少させる。
【0030】
骨および他の組織の欠損の治癒を促進するための、本発明の材料を用いる方法もまた提供される。
【0031】
生分解性ポリマーのシリンダー、ウェーハ、球体、条片、フィルム、および不規則な形状のインプラント、ならびに生理活性セラミックを含む粒子状の骨移植片材料が本明細書において提供され、これらは、手で成形可能な生分解性ポリマー材料であり、これは生理活性セラミックおよび生分解性ポリマー材料を含み、この生分解性ポリマー材料は生理活性剤を連続的にスムーズに放出することができ、そして生理活性セラミックを含む。
【0032】
用語「生分解性」は、患者の体内において、または細胞と共に用いて体外で組織を成長させる場合に、時間が経つと分解し得ることを意味する。治療用インプラントは、患者(ヒトまたは動物)の組織欠損の置換のために用いられ、組織の内殖および欠損の治癒を助長するデバイスである。本発明の複合インプラントは細胞を含み得る。
【0033】
生分解性インプラント材料を生成するための当該分野で公知のポリマーは、本発明で使用され得る。このようなポリマーの例は、ポリグリコリド(PGA)、グリコリドのコポリマー、例えば、グリコリド/L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC);ポリラクチド(PLA)、PLAの立体コポリマー、例えばポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、L-ラクチド/DL-ラクチドコポリマー;PLAのコポリマー、例えばラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/δ−バレロラクトンコポリマー、ラクチドε−カプロラクトンコポリマー、ポリデプシペプチド、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー、非対称3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリ-β-ヒドロキシブチレート(PHBA)、PHBA/β-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHBA/HVA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオネート(PHPA)、ポリ-p-ジオキサノン(PDS)、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリ-ε-カプロラクトン、メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー、ポリエステルアミド、シュウ酸のポリエステル、ポリジヒドロピラン、ポリアルキル-2-シアノアクリレート、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリペプチド、ポリ-β-マレイン酸(PMLA)、およびポリ-β-アルカン酸である。
【0034】
本発明の材料の作製に使用するための好ましい生分解性ポリマーは当該分野で公知であり、脂肪族ポリエステル、好ましくはポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)およびそれらの混合物のポリマー、ならびにそのコポリマー、より好ましくはD、L-PLA/PGAの50:50から85:15のコポリマー、最も好ましくは55/45から75:25のD,L-PLA/PGAコポリマーを包含する。PLAの単一のエナンチオマーもまた用いられ得、好ましくは、単独またはPGAとの組み合わせのいずれかのL-PLAである。
【0035】
好ましくはポリマーインプラント材料は約25,000と約1,000,000ダルトンの間の分子量を有し、より好ましくは約40,000と約400,000ダルトンとの間、そして最も好ましくは約55,000と約200,000ダルトンとの間である。
【0036】
患者の創傷に適用するための生分解性フィルムもまた提供され、これは生分解性ポリマーおよび約10パーセントと約70パーセントとの間の生理活性セラミックを含む。本発明はまた、生理活性セラミックおよび生分解性ポリマーを含む多孔質の複合治療用インプラント材料を作製する方法を教示し、この方法は、上記ポリマーを未硬化の形態で調製する工程、生理活性セラミックを上記ポリマー中に混合する工程、上記混合物を型の中に配置する工程、および減圧条件下で硬化して、多孔質の複合インプラント材料を生成する工程を包含する。
【0037】
実質的に非多孔質の複合治療用インプラントの作製方法もまた教示され、この方法は、上記ポリマーを未硬化の形態で調製する工程、生理活性セラミックを上記ポリマー中に混合する工程、および上記混合物を熱および圧力条件下で硬化して、実質的に非多孔質の複合インプラント材料を生成する工程を包含する。
【0038】
本発明の複合インプラント材料は、上記材料を、細胞を含むまたは含まない組織足場インプラント、顆粒状骨移植片置換材料、二相骨軟骨インプラント、重量負荷の骨インプラント、非重量負荷から低重量負荷のインプラント、または固定デバイス、タック(tack)、ピン、ねじ、骨アンレー、およびフィルムからなる群から選択されるインプラントデバイスに形成することによって用いられ得る。
【0039】
好ましくは、ポリマーインプラント材料は、生理学的環境中でpHを約6と約9の間、そしてより好ましくは約6.5と約8.5との間に維持し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明の複合治療インプラント材料は、材料を硬化する前に、生理活性セラミックをポリマー性材料に組み込むことによって作製される。出願人は、生理活性セラミックが添加される加工段階が、最終産物の特性に差異を生じないようであることを見出した。
【0041】
沈殿ポリマーの調製は、当該分野において周知である。一般に、このプロセスは、乾燥ポリマー混合物を当該分野で公知の溶媒(例えば、アセトン、塩化メチレンまたはクロロホルム、好ましくはアセトン)と混合する工程、非溶媒(例えば、エタノール、メタノール、エーテルまたは水)を用いて、溶液からポリマー塊を沈殿させる工程、型にロールもしくはプレスされ得るか、または型に押し出され得る凝集塊となるまで、溶媒を抽出しそして塊から薬剤を沈殿する工程、ならびに所望の形状および堅さに組成物を硬化する工程を包含する。本発明の多孔質複合材料は、米国特許出願第08/727,204号(本明細書中で参考として援用される)に記載のように、生理活性セラミックを硬化前にポリマーに添加して、作製され得る。本発明の非多孔質の(十分に密な)複合材料は、本明細書中に記載のように、ポリマー粒子および生理活性セラミックを混合し、そして加熱プレスで圧されることにより作製され得る。
【0042】
本発明は、多孔質または非多孔質生分解性インプラント材料を提供する。多孔質インプラントは特に、組織内植のためのまたは細胞のキャリアとしての足場を提供するのに有用である。非多孔質インプラントは特に、ロードベアリング用途に有用である。多孔質インプラント材料は、好ましくは、孔サイズ分布が材料全体にわたって実質的に均一である、約60容量%と90容量%との間の空隙率を有する。本発明の材料の目標空隙率は、型に多少のポリマーを添加することによって達成される。例えば、長さa(mm)、幅b(mm)および深さc(mm)を有する型で、p(g/cm3)の密度のポリマーを用いて、選択された目標空隙率Qを有するようにN個の成形ウェーハを調製する場合、使用すべきポリマーの質量Mは、以下によって計算される:
【0043】
【数1】
【0044】
本発明の多孔質インプラント材料は、好ましくは約5μmと約400μmとの間、より好ましくは約100μmと約200μmとの間の平均孔サイズを有する。多孔質材料は、好ましくは約40容量%以下のBioglass(登録商標)セラミック、より好ましくは約20〜30容量%以下のBioglass(登録商標)セラミックを含む。非多孔質インプラントは、約70容量%までのBioglass(登録商標)セラミックを含み得る。
【0045】
インプラント材料は、細胞、当該分野で公知の生理活性薬剤、または当該分野で公知の他の添加剤(例えば、米国特許出願第08/250,695号(本明細書中で参考として援用される)に記載のような基質小胞または基質小胞抽出物)を組み込み得る。本発明のインプラント材料は、組織内植を容易にするチャネルを含み得、そして組織成長を促進するために、栄養素および/または細胞性材料、例えば、血液および骨髄細胞、軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、および他の間葉起源の細胞(例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、およびこれらの前駆体)、脂肪細胞、筋細胞、腱細胞、靱帯細胞、皮膚細胞、ならびに線維芽細胞で浸潤され得る。本発明のインプラント材料はまた、米国特許出願第08/196,970号(本明細書中で参考として援用される)に記載のように経時的に放出するように設計された、酵素、成長因子、分解剤、抗生物質などの生理活性薬剤を組み込み得る。
【0046】
最良の生体適合性のために、インプラント材料は溶媒を実質的に含まないことが好ましい。いくつかの残留溶媒がポリマー中に残存するが、好ましくは約100ppm未満であることが認識されている。
【0047】
本発明のインプラント材料は、PCT公報WO93/15694(本明細書中で参考として援用される)に記載の二相インプラントのような多相インプラントを作製するのに使用され得る。これらの二相インプラントは、好ましくは、上部の軟骨相および下部の骨相を有し、そして適切な相を同様の組織と隣接して軟骨から骨へ及ぶ欠損に挿入される。このインプラント材料は、組織内植のために、生理活性セラミックを含有するためにこの教示に従って修飾された三次元多孔質足場の形態(例えば、WO公報93/15694に開示されるようなシリンダー状インプラント)で、作製され得る。
【0048】
このインプラント材料はまた、生理活性セラミックを含有するためにこの教示に従って修飾された、同時係属出願番号第60/032,085号(本明細書中でまた参考として援用される)に開示されるような生分解性ポリマーフィルムを作製するために使用され得る。このようなフィルムは、筋肉の接着のためのフィルムを介して外科医が縫合し得る眼インプラントについて言えば、筋肉の外科的接着のために使用され得、多孔質でも非多孔質であってもよく、好ましくは非多孔質である。
【0049】
このようなフィルムは、選択されたポリマー材料を、当該分野で公知の溶媒(例えば、アセトン、クロロホルムまたは塩化メチレン)をポリマー1gあたり約20mlの溶媒を用いて溶解することによって作製され得る。次いで、溶液は、(好ましくは、穏やかな減圧下で)脱気されて、溶存空気を除去され、そして表面(好ましくは、平面非粘着表面(例えば、Bytac(Norton Performance Plastics, Akron, OHの商標)非粘着コーティング接着裏打ちアルミホイル、ガラスまたはテフロン(登録商標)))上に注がれる。次いで、溶液は、もはや粘着性でなく液体が無くなったと思われるまで、乾燥(好ましくは風乾)される。ポリマーの既知の密度が、所望の厚さのフィルムを作製するために必要である溶液の容量を逆算するために使用され得る。
【0050】
フィルムを生体適合性にするために、細胞移植を妨げる残留溶媒は除去されなければならない。好ましくは、これは、乾燥ポリマーを約55〜65℃でインキュベートして残留溶媒を取り去ることによってなされる。次いで減圧オーブンが約55〜70℃で用いられ、最後の溶媒が取り除かれ得、その結果、仕上がりポリマーフィルムは約100ppm未満の濃度の残留溶媒を有する。次いで、このフィルムは、非粘着表面から引き剥がされ、そして、厚み、滑らかさ、丈夫さおよび耐久性において、実質的に均一である。
【0051】
フィルムはまた、加熱プレスおよび当該分野で公知の溶融成形/延伸法により作製され得る。例えば、より厚いフィルムは、より薄いフィルムを成形するようにプレスされ得、加熱後、延伸され得、そして所望の形状に引っ張られるか、または減圧によって型に吸い込まれる。
【0052】
骨および軟部組織が片面のみまたは両面に接着するフィルムを作製するために、フィルムは、加熱プレスされるかまたは溶媒(例えば、クロロホルム、アセトンまたは塩化メチレン)にキャストされるかのいずれかであり得、そして少なくとも部分的に硬化される。依然として粘着性ではあるが、生理活性セラミック粒子層は、所望の厚みまたは表面密度に適用され得る。好ましくは、非表面不動態化粒子が使用される。あるいは、予め作製されたフィルムの表面は軟化され得、そして粒子が適用され得る。
【0053】
可塑剤は、生理活性セラミック含有生分解性フィルムに組み込まれ得、それを軟化しかつ外形表面と直接接触することが望まれる適用に成形しやすくする。薄フィルムは、N-メチルピロリドン(NMP)、または水、エタノール、PEG-400、グリセロール、もしくは他の当該分野で公知の共溶媒のような共溶媒と混合され得る他の生体適合性溶媒の溶液中で、可塑化される。共溶媒は、ポリマーの完全な溶解を阻止することが必要とされる。フィルムは、所望の柔らかさ(すなわち、インプラント形状に容易に適合するのに十分な柔らかさ)まで、溶媒に浸される。
【0054】
Bioglass(登録商標)セラミックを含むように修飾された米国特許第5,716,413号およびPCT公報WO97/13533(本明細書中で参考として援用される)に開示されるような手で整形可能である材料、ならびに生理活性セラミックを含むように修飾された同時係属出願番号第08/196,970号(本明細書中で参考として援用される)に開示されるような生理活性剤の継続的円滑な放出を提供する材料もまた、本発明により提供される。
【0055】
生理活性セラミックの本明細書中で開示される生分解性ポリマー材料への組み込みは、好ましくは約10容量%と約70容量%との間の量であり、保存率またはヤング率の点で、生理学的条件下で測定される材料の機械的性質を向上させる。保存率は、Perkin Elmer 7 Series Thermal Analysis Systemでの3点屈曲を用いて、ポリマー製ウェーハの穿孔円形サンプルのカット棒において測定される。ヤング率は、およそ保存率に満たない桁であると本明細書中では考えられている。
【0056】
当該分野で公知であるように、インビボでの材料の寿命は、D,L-PLAまたはL-PLA含量、分子量および結晶化度を増加させることによって増大され得るか、または同一の因子を減少させることによって減少され得る。予期せぬことに、多孔質材料への生理活性セラミックの添加もまた、分子量を減少し得、それ故、分解期間を減少させ得ることが見出された。
【0057】
本発明のポリマー/生理活性セラミック組成物を作製するために、適切なポリマー製材料が、インプラント材料に望まれる分解時間に依存して選択される。このようなポリマー製材料の選択は、当該分野で公知である。例えば、PLAは長期の分解時間が所望される場合(例えば、約2年まで)に使用される。低い目標分子量(例えば、約20,000ダルトン)、50:50または55:45のPLA:PGAコポリマーは、約2週間の分解時間が所望される場合に使用される。選択された目標分子量を保証するため、分子量および組成物が、当該分野で公知のようにそして本明細書中で教示のように、ポリマー/生理活性セラミック組成物から形成されるインプラントの質量に依存して、変化され得る。
【0058】
PLAおよびPGAの分解が、インビボおよびインビトロの両方において、広範に研究されている。多数の要因が、PLA:PGAコポリマーの分解速度に影響する(例えば、分子量、共重合率、ポリマー結晶化度、熱過程、形状および空隙率、ならびに水和性)。さらに、解剖学的インプラント部位、血管分布、組織相互作用および患者の反応のような他の因子も、インビボ分解速度に影響を与える。上記の因子に依存して、PLAおよびPGAポリマーの分解時間は、50:50PLGの場合のたった7日間からPLAの場合の数年であると報告されている。全体の分解反応速度論は、ホモポリマーおよびコポリマーの全体の群について、かなり良好に確立されている。以下の表1は、コポリマーの分解速度の知見を要約する。この表は多くの研究の編集物であるので、広範な分解の範囲は、利用された異なる実験変数およびパラメータを反映している。
【0059】
【表1】
【0060】
本発明のインプラント材料は約38℃を超える、例えば約38℃と約50との間の、ガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。出願人らによって、生理活性セラミックの組み込みは多孔性複合材料のガラス転移温度を低下させることが発見された。
【0061】
生理活性セラミックは、米国特許出願第60/032,085号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるようなポリマー製フィルムに添加され得る。
【0062】
以下の実施例は、本発明の実施態様を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図されない。当業者は、多数の異なるポリマー、試薬、生理活性セラミック、および加工条件が、同等の結果を与えるために、特定の例示されたものと置き換えられ得、これらの全てがこの請求の範囲内に包含されることが意図されることを理解する。
【実施例】
【0063】
実施例1.Bioglass(登録商標)セラミックを含まない多孔質ポリマーウェーハの作製方法
分子量80,000D、クロロホルム中で約0.6〜約0.75の固有粘度のPLA/PGA(75:25)ポリマーを5g、Teflonビーカーへと秤量した。3/4インチのTeflon皮膜磁性スターラーバーをビーカーに入れ、そしてビーカーを磁性攪拌プレートにおいた。30mlのアセトンを加え、そして混合物を、20分間(攪拌プレートで8に設定した)攪拌して、ポリマーを完全に溶解した。ポリマーを30mlのエタノールを加え、そして約20秒間攪拌する(攪拌プレートで3に設定した)ことによって沈澱させて、ポリマーゲル塊を凝集させた。
【0064】
次いで、上清液体をデカントし、そしてゲル塊を作業表面として使用されるTeflonプレートに戻した。攪拌バーを、Teflonポリスマンを使用して塊から分離して、可能な限り多くのポリマーを回収した。過剰の液体を、ポリマーに触らないように注意して、Kimwipe吸い取り紙を用いて吸い取った。次いで、ポリマーの塊を巻き、そして丸いTeflonストックの棒(直径約3/4インチ)を用いて薄いシート(1±0.1mm厚)へと平坦化した。
【0065】
次いで、ポリマーを有するTeflonプレートを、真空デシケーターに入れ、そして、KNF往復ダイアフラム真空ポンプを用いて、ポリマーの塊が溶媒が除去されるにつれ、膨れ(blister)、そして泡立つ(bubbly)まで、真空を数分間(2〜4.5分間)を適用した。真空を解き、そしてポリマーを有するTeflonプレートをデシケーターから取り出した。ゴム手袋を用いて、ポリマーゲルを手で巻き取って、ボール状にし、そして材料が軟らかくかつ伸展性になるまで、親指および人差し指を用いて練った。このプロセスの間、少量の残留溶媒が放出され、そしてポリマーは若干湿ったように感じられた。練ることを、液体がもはや明らかでなくなるまで継続した。次いで、ゲルをTeflon棒を用いて、そしてこの時点でポリマーは非常に粘着性でそして接触に際して容易にそれに接着するのでポリマーが棒に巻きつかないように注意しながら展ばして薄いシートにした。
【0066】
次いで、ポリマーを再び、デシケーターの中に入れ、そして、ゲルが膨張し、そしてマトリクス全体に分散した多くの細かな泡を有して、「泡状」に見えるようになるまで、真空をさらに数分間(2〜4.5分間)を適用した。ポリマーを真空から取り出し、そして再び以前のようにそれが軟らかくかつ伸展性となり、そして綿菓子のつやおよび「繻子」の外観を呈するまで練った。この時点でポリマーゲルの質量を記録する。
【0067】
次いで、ポリマーゲルを5つの等しい小片に分け、そしてこの小片を、型(mold)のウェルに嵌るように成型した。型は、ウェーハ形状で、約20mm×40mm×3mmであり、そして約3mmから10mmの間隔で直径0.7mmを有する孔で穿孔処理されていた。型のウェルに嵌るように各小片を、表面が均一でありかつ薄いスポットさえも有さないように平らになるように、そして材料が型の端から端を満たすように注意して成型した。次いで、型(蓋なし)をデシケーターに入れ、そして真空(100mTorr)を2分間適用した。次いで、型をデシケーターから取り出し、そしてウェーハの上部を、膨張したポリマーが完全には圧縮されないように平坦化した。次いで、型の上部プレートを適切なナットおよびボルトを用いて固定した。
【0068】
次いで、型を、60℃〜65℃で50mTorr未満の真空下で24〜48時間真空オーブンに入れた。軟骨相材料、すなわち、軟骨の機械的特性を有するウェーハのために、真空オーブン処理をさらに24時間同じ温度で継続した。硬化後、ポリマーは溶媒を実質的に有さなかった。
【0069】
得られたポリマー軟骨相ウェーハは、空隙率において均一であり、約100μmの平均孔サイズおよび約65容量%の空隙百分率(percent porosity)を有した。それらは、可撓性であり、そして、手の中で、ほぼ体温にまで若干暖めた場合、容易に手で成型可能であった。
【0070】
得られたポリマー性骨相ウェーハもまた、空隙率において均一であり、約150μmの平均孔サイズおよび約70容量%の空隙百分率を有した。これらは、室温で軟骨相ウェーハほどは可撓性ではなかったが、これらは体温では手で成型可能であった。
【0071】
実施例2.十分に密な、Bioglass(登録商標)セラミック/PLG複合材の作製方法
選択したポリマー(75/25PLG)をブレンダー中で粉砕し、そして<20メッシュ(<850μm)の粒子サイズでふるいにかけた。次いで、材料をブレンダーのステンレス鋼ボウル中に秤量し、そして適切な量のBioglass(登録商標)セラミックを加えて10容量%のBioglass(登録商標)セラミック組成物を提供した。重量比に対する相対容量比を決定するために、以下の等式を用いた:
【0072】
【数1】
【0073】
ここで、
fv =Bioglass(登録商標)セラミックの容量比
x =Bioglass(登録商標)セラミックの重量比
ρBG =Bioglass(登録商標)セラミックの密度
ρPLG =PLGの密度
次いで、ブレンダーを3または4回手短にパルスして、2つの材料を完全に合わせた。この時点では過剰の混合を避けて、仕上がり生成物の変色をもたらす、ブレンダーボウルの表面の磨り減りを予防する。
【0074】
次いで、合わせた材料を圧縮シリンダーに移した(このシリンダーの圧盤は、アルミニウムホイルディスクで裏打ちされている)。次いで、組み立てたシリンダー(ピストンを適所に有する)をCarver加熱プレスに移した。加熱圧盤をパワーレベル「1」に調整し、約240゜F(約115℃)の表面温度を生成した。20,000ポンド(約5000psi)の負荷をかけ、そして型を、シリンダーの外表面で測定される温度を85〜95℃にさせた。
【0075】
一旦温度に達したら、負荷を20,000ポンドに再調整し、圧盤のパワーを切り、そして冷却水を適用した。温度を、プレスから除去する前に40℃未満に下降させた。次いで、この部分を取り出し、そしてアルミニウムホイルディスクを取り出した。
【0076】
このプロセスを反復して、20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含む複合材料を作製した。
【0077】
以上の工程を55/45PLGを用いて反復した。
【0078】
実施例3.Bioglass(登録商標)セラミック濃度の研究
本発明の多孔質ポリラクチド−コ−グリコリド/Bioglass(登録商標)セラミック複合材に取り込まれるべきBioglass(登録商標)セラミックの最大量を決定する実験を行った。
【0079】
70%の目標空隙率(target porosity)を有するウェーハ20×40×3mmウェーハを55/45D,L−PLG(45%のポリグリコール酸と共重合した55%ポリ−d,l−乳酸)を用いて、実施例1に記載される手順に従って、30、40、および50容量%Bioglass(登録商標)セラミックを添加することによって改変して、製造した。ポリマーは、0.85の固有粘度を有するBirmingham Polymer,Inc.、ロット番号D96012 55/45 D−PLGであった。Bioglass(登録商標)セラミックは、走査型電子顕微鏡およびレーザ光散乱技術によって決定される場合53〜38μmの平均粒子サイズを有する45S5 Bioglass(登録商標)粉末であった。使用した溶媒は、Fisher Optima GradeのアセトンおよびQuantumの100%無水エタノールであった。
【0080】
示差走査熱量計(DSC):ガラス転移温度を決定するため、示差走査熱量分析を10℃/分の速度で−5℃〜250℃の第一のラン、および10℃/分の速度で−5℃〜100℃の第二のランを用いて、Mettler DSC 12−Eを使用して行った。分析について、種々のサンプルのラン2からのガラス転移(Tg)開始を、各組成物について比較した。Bioglass(登録商標)セラミックの量がサンプル中で増加するにつれ、Tgは下降した。この結果は、ラン2のTg開始が、55/45 PLG中で30容量%のBioglass(登録商標)セラミックについての39.0℃から、40容量%のBioglass(登録商標)セラミックについて36.4%にまでに下降したことを示す。これらの結果は、Tgの下降が分子量の減少に関連していることを示すようである。50容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含む組成物のDSCの結果は、おそらく多量のBioglass(登録商標)セラミックに起因して、プロット上では認識可能な発熱ピーク/吸熱ピークを示さなかった。
【0081】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
ポリマーウェーハの分子量を決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いて、0.80ml/分の流速で行った。50μlをTosoH TSK−GEL 4000+3000カラムへ、10.820mg/mlの濃度で、25℃のカラムおよび検出器温度を用いて注入した。データは、分子量(Mw)の有意な減少が存在したことを示す。30容量%のBioglass(登録商標)セラミック組成物は、Mwにおいて3.5倍減少し、40容量%組成物は、4.2分倍減少し、そして50容量%組成物は、8.8分倍減少した。
【0082】
ガスクロマトグラフィー
残留アセトンおよびエタノールのレベルを決定するために、ガスクロマトグラフィーを、Hewlett Packard 6890を用いて、そして窒素をキャリアガスとして用いるFIDプロトコルを実行して行った。結果は、PLG Plus Bioglass(登録商標)ウェーハについての残留アセトンレベルが100ppmの検出限界未満であったことを示す。
【0083】
これらの結果は、40容量%Bioglass(登録商標)セラミックまでを含む組成物が、ポリマーに良好なウェーハ成績(resulting)を加え得たことを示した。50容量%Bioglass(登録商標)セラミックのポリマーへの添加は、練ることが困難で、型に充分に膨張せず、そしてむらのある空隙性を有するウェアをもたらした。Bioglass(登録商標)セラミックは、分子量および同時に多孔質インプラント材料におけるそのTgを減少させる。
【0084】
実施例4.プロセス工程の順序
Bioglass(登録商標)セラミックをポリマー加工の種々の段階で加えることの効果を決定する実験を行った。
【0085】
70%の目標空隙率を有するウェーハ20×40×3mmを、Birmingham Polymers、Inc.(ロット D96012)からの、0.85の固有粘度、分子量(原料の(raw)ポリマー)約72,233、および上記の実施例2のラン2に示す条件下で測定されるガラス転移温度が約43.0℃を有する55/45 D,L−PLGを用いて作製した。使用したBioglass(登録商標)セラミックは、走査電子顕微鏡法およびレーザ光散乱法によって決定される場合、90〜53μmのおよその粒子サイズを有する45S5 Bioglass(登録商標)粉末であった。Bioglass(登録商標)セラミックを加えて、20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含むポリマー/Bioglass(登録商標)セラミック組成物を形成させた。
【0086】
使用した溶媒および手順は、Bioglass(登録商標)セラミックを以下の手順の異なる点において加えたことを除き、実施例2に記載のとおりであった:
グループA:溶解の開始時にBioglass(登録商標)セラミックを加えた(PLGおよびアセトン中にBioglass(登録商標)セラミックを混合する)。
グループB:沈澱の前に溶解したポリマー溶液にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
グループC:第一の真空工程の前に沈澱した塊にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
グループD:第二の真空工程の前に沈澱した塊にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
グループE:第三の真空工程の前に沈澱した塊にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
【0087】
Bioglass(登録商標)セラミックのポリマーへの添加は、5つすべての処理グループについて成功した。以前およびこの実験におけるように、沈澱したポリマー塊(グループC、D、およびE)にBioglass(登録商標)セラミックを加える場合、ポリマー塊が練っている間に乾燥し、そして破壊する場合に生じるBioglass(登録商標)セラミックの、わずかなおそらく有意ではない欠失が存在した。反対に、グループAおよびグループBについて、Bioglass(登録商標)セラミックはポリマー/アセトン混合物中に容易に分散し、これは、沈澱したポリマー塊のより容易な運搬(transfer)をもたらし、そしてポリマーへのBioglass(登録商標)セラミックの100%の取り込みを確実にした。
【0088】
処理後、ポリマーウェーハを、50℃で4日間(型中に2日間およびペトリ皿中に2日間)真空中において、充分な時間、残留溶媒を除去させた。残留溶媒含量を確認し、そして加工したMw、Tgを測定するために、GC,DSC,およびHPLCを各処理グループからの1つのサンプルにおいて実行した。
【0089】
以下の標準的な品質管理試験を、各処理グループから1つのサンプルにおいて実行した:
GC:1処理グループあたり1つのサンプルで実行して、受容可能な(100ppm未満)残留溶媒レベルを確認する。
HPLC:1処理グループあたり1つのサンプルで実行して、加工したサンプルのMwを決定する。
DSC:1処理グループあたり1つのサンプルで実行して、加工したサンプルのTgを決定する。
【0090】
示差走査熱量計:ガラス転移温度を決定するため、示差走査熱量測定(DSC)を10℃/分の速度で−5℃〜250℃の第一のラン、および10℃/分の速度で−5℃〜100℃の第二のランを用いて、Mettler DSC 12−Eを使用して行った。分析については、種々のサンプルのラン2からのTg開始を、各処理グループについて比較した(表2)。全体として、5つのグループのラン2の平均Tg開始は40.0±0.5℃であった。ラン2のTg開始の一方向ANOVA(p<0.05の有意レベル)は、0.28のp値をもたらし、これは、5つの処理グループのラン2のTg開始の間に統計学的に有意な差異が存在しないことを示す。
【0091】
高速液体クロマトグラフィー:ポリマーウェーハの分子量を決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いて、0.80ml/分の流速で行った。50μlをTosoH TSK−GEL 4000+3000カラムへ、10.820mg/mlの濃度で、25℃のカラムおよび検出器温度を用いて注入した。5つの処理グループについてのMw値は、61,000から69,900Daに及んだ。表3は、各グループについての値を示す。ここで、全体の平均Mwは、64,650±3044Daである。一方向ANOVA(p<0.05の有意レベル)は、0.08のp値をもたらし、これは、処理グループのMwの間に統計学的に有意な差異が存在しないことを示す。
【0092】
ガスクロマトグラフィー:残留アセトンおよびエタノールのレベルを決定するために、ガスクロマトグラフィーを、Hewlett Packard 6890を用いて、そして窒素をキャリアガスとして用いるFIDプロトコルを実行して行った。結果は、これらのグループがいずれも残留エタノールを全く含んでいなかったことを示す。グループA、B、およびCは、検出可能な残留アセトンを含んでいなかったが、グループCおよびグループDは、100ppm未満のアセトンを含んでいた。これは、種々の工程でのBioglass(登録商標)セラミックの添加が、残留アセトンおよびエタノールの損失に影響しないことを示す。
【0093】
これらの結果は、ポリラクチド−コ−グリコリドウェーハの製造における種々の工程でのBioglass(登録商標)セラミックの添加が、ウェーハの化学特性を有意には変更しないことを示す。Bioglass(登録商標)セラミックのポリマーへの添加は、5つすべてのグループについて、受容可能なウェーハをもたらす。統計学的な分析は、ポリマー加工における異なる点におけるBioglass(登録商標)セラミックの添加にもかかわらずラン2についてTg開始または5つのグループにおけるMwが有意に変化しないことを示す。
【0094】
種々の処理グループにおいてウェーハの化学特性において有意な変更が存在しないので、機械的試験は行わなかった。
【0095】
実施例5. 多孔性Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の機械的特性、分子量およびガラス転移温度
ウェーハを、以下を使用して実施例2のように作製した:(A)BPIからの55/45 D,L-PLG、これは約72,233の分子量、約0.85の固有粘度(HFIP 30℃)および約43℃のガラス転移温度を有し、そして5、10および20容量%のBioglass(登録商標)Mセラミック(45S粉末、これは走査電子顕微鏡およびレーザー光散乱技術によって決定されたようなほぼ90〜53μmの粒子サイズを有する)を有する;(B)65/35 D,L-PLG、これは約77,400の分子量、0.86の固有粘度(HFIP 30℃)および約41.9℃のガラス転移温度を有し、そして5、10および20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを有する;および(C)75/25 D,L-PLG、これは約90,300の分子量、約0.76の固有粘度(クロロ、25℃)および約48.4℃のガラス転移温度を有し、そして5、10および20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを有する。20×40×3mmおよび60×60×3mmのウェーハは、70%の目標空隙率で作製された。作成後、ウェーハは50℃で4日間真空下に置かれ(型に2日間およびペトリ皿に2日間)、十分な時間残留溶媒を除去した。
【0096】
ウェーハは視覚的に検査され、作製の成功を判断し、そして以下の標準品質コントロール試験を実行した:
GC:1つのサンプルを1処理グループ当たり20×40×3mmウェーハおよび60×60×3mmウェーハから実行し、受容可能な残留溶媒レベル(100ppm未満)を確認した;
HPLC:1つのサンプルを1処理グループ当たりで実行し、加工したサンプルのMwを決定した。
【0097】
DSC:1つのサンプルを1処理グループ当たりで実行し、加工したサンプルのTgを決定した。
【0098】
DMA:4×3×20mmの寸法(幅、高さ、長さ)を有する2つの20×40×3mmのウェーハの末端領域からの1つのバーおよび中央領域からの1つのバーを、メスを使用してDMA試験のために注意深く切断した。4つのバーは2つの20×40×3mmウェーハでランされた。3点曲げ試験を0〜70℃の乾燥材料を使用して実行した。データをプロットして貯蔵弾性率および損失弾性率の両方を示した。
【0099】
空隙率:孔サイズ分布および空隙率を水銀侵入空隙率測定(mercury intrusion porosimetry)を用いて決定した。
【0100】
pH変化:pHの変化を経時的に測定した。
【0101】
処理グループは以下の通りである:
1.コントロールA:100%PLG(55/45 DL)
2.グループA1:PLG(55/45 DL) + 5v/% Bioglass(登録商標)セラミック
3.グループA2:PLG(55/45 DL) + 10v/% Bioglass(登録商標)セラミック
4.グループA3:PLG(55/45 DL) + 20v/% Bioglass(登録商標)セラミック
5.コントロールB:100%PLG(65/35 DL)
6.グループB1:PLG(65/35 DL) + 5v/% Bioglass(登録商標)セラミック
7.グループB2:PLG(65/35 DL) + 10v/% Bioglass(登録商標)セラミック
8.グループB3:PLG(65/35 DL) + 20v/% Bioglass(登録商標)セラミック
9.コントロールC:100%PLG(75/25 DL)
10.グループC1:PLG(75/25 DL) + 5v/% Bioglass(登録商標)セラミック
11.グループC2:PLG(75/25 DL) + 10v/% Bioglass(登録商標)セラミック
12.グループC3:PLG(75/25 DL) + 20v/% Bioglass(登録商標)セラミック
結果を図1〜3に示す。
【0102】
機械的試験:動的機械的分析(DMA)をPerkin Elmer 7 Series Thermal Analysis System上で3点曲げを用いてポリマーウェーハの切断したバーで行った。ウェーハ中央および末端領域からのバーを上記のように試験した。このバーを5℃/分の速度で0〜70℃まで曝した。保存および損失弾性率を測定し、そしてプロットした。これらの弾性率対温度のプロットから、最大貯蔵弾性率、37℃での貯蔵弾性率、最大損失弾性率での温度、および貯蔵弾性率の50%低下での温度を決定した。
【0103】
データを表にし、そして統計学的分析を実行して、2つの領域(末端および中央)の37℃での貯蔵弾性率と各ポリマーグループ内の4つの処理物(Bioglass(登録商標)セラミックの0、5、10および20v/%の添加)との間の任意に有意な差異があるか否かを、決定した。分散の2方向分析(具体的にはTukey全ペア複数比較試験(all pairwise multiple comparison test)(<0.05のp-値を有意とみなした)を利用した。中央領域および末端領域からの37℃での貯蔵弾性率は、任意の3つのポリマーグループ(55/45についてp=0.59、65/35についてp=0.25、75/25についてp=0.12)について有意差を示さなかった。末端領域と中央領域との間で有意差が見出せ得ないので、各処理グループについてのDMAの結果は、一緒に分類された。各ポリマーグループ(A、B、C)について、Bioglass(登録商標)セラミック含量が増加するにつれて、最大貯蔵弾性率および37℃での貯蔵弾性率における顕著な増加が存在した。これらの弾性率の増加は、グループAにおいて最も大きく、グループCにおいて最も小さな増加を有した。
【0104】
この実験のグループAおよびBは、この実験についての90〜53μmの範囲の粒子サイズのBioglass(登録商標)と比較して、53〜38μmの範囲の粒子サイズのBioglass(登録商標)を使用して、実施例2の値と比較した。8つのグループを比較して、より小さな粒子サイズを有する2つのグループのみが、最大貯蔵弾性率および37℃での貯蔵弾性率についてより大きな値を有した。また、より小さな粒子サイズを有する1つのグループのみが、より大きな粒子サイズを有する同様のグループより最大損失弾性率でのより高い温度および50%貯蔵弾性率でのより高い温度を有し、そしてより小さい粒子サイズを有する1つのグループは、最大損失弾性率でのより高い温度を有した。これらの結果は、より大きな粒子サイズを有する添加Bioglass(登録商標)セラミックが、より小さい粒子サイズのBioglass(登録商標)セラミックよりもウェーハの機械的特性により意味深い効果を有することを示す。
【0105】
示差走査熱量測定:
ガラス転移温度を決定するために、示差走査熱量測定(DSC)をMettler DSC 12-Eを用いて10℃/分の速度で-50〜250℃までの1番目のランおよび10℃/分の速度での-5℃〜100℃の2番目のランで行った。分析において、ラン2の種々のサンプルからのTg開始を各処理グループと比較した。グループA3、B3およびC3(20v/%のBioglass(登録商標)セラミック)は、それぞれコントロールグループから4.3°、4.9°、および5.8°のラン2のTg開始の減少を生じた。結果はまた、ラン2のTg開始において温度の減少がウェーハ中のBioglass(登録商標)セラミックの増加量に比例することを示した。この傾向の例外は処理グループB1のみであった。
【0106】
高速液体クロマトグラフィー:
ポリマーウェーハの分子量を決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を0.80ml/分の流速で、溶媒としてテトラヒドラフラン(THF)を用いて行った。50μlをTosoH TSK-GEL 4000+3000カラムに、10.820mg/mlの濃度で、25℃のカラムおよび検出器温度で注入した。ウェーハ中のBioglass(登録商標)セラミックの増加した添加は全グループについて10〜15%の分子量の減少を生じた。これらの結果は、ウェーハに添加したBioglass(登録商標)セラミックの増加した量が、分子量の減少に比例することを示す。
【0107】
ガスクロマトグラフィー:残留アセトンおよびエタノールレベルを決定するために、ガスクロマトグラフィーをHewlett Packard 6890を用いて、そしてキャリアガスとして窒素を用いてFDIプロトコルを行って実行した。グループCおよびグループA1の全てにおける100ppmより大きなアセトンレベルが、試験期間で検出された。他のグループの全ては検出されないかまたは残留アセトンについて100ppm未満のレベルのいずれかを有した。100ppmより大きな残留エタノールはコントロールグループCおよびグループC3において検出された。他の全てのグループは残留エタノールの量を検出できなかった。
【0108】
ウェーハに添加したBioglass(登録商標)セラミックの量が増加するにつれて、DMAバーの貯蔵弾性率は増加し、そしてポリマーの分子量が減少する。55/45ポリマーグループは最も大きい貯蔵弾性率の増加およびコントロール値からのラン2のTg開始の最も小さい低下を示した。DMAデータはウェーハの末端領域および中央領域からの試験済みのバーに有意な差異は示さなかった。本実験で使用されるより大きな粒子サイズを有するBioglass(登録商標)セラミックはまた、より小さな粒子サイズを有するBioglass(登録商標)セラミックと比較して貯蔵弾性率のより大きな増加を生じる。
実施例6. 十分に密なBioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材の機械的特性
実施例2で調製された複合材料を、生理学的条件(すなわち37℃で湿潤)で試験することを除いて、実施例5に記載の3点曲げ試験を用いて試験した。温度を1Hzおよび0.05%のひずみにおいて15〜50℃の範囲にし、そして平均の曲がりはじめる温度(ガラス転移温度)を記述した。結果を図5および6に示す。
【0109】
材料の分子量を表2に記述した。
【0110】
【表2】
【0111】
次いで曲げ試験を37℃で乾燥状態においてこれらの材料上で行った。結果を図7に示す。これらの結果は湿潤条件で試験した場合、貯蔵弾性率が劇的な降下を示した。55/45材料の弾性率は減少するか、または10容量%および20容量%のBioglass(登録商標)セラミックで同じままであるが、75/25材料の弾性率はBioglass(登録商標)セラミックの添加を伴って減少する。乾燥状態で試験した場合、これらの十分に密な材料の貯蔵弾性率はBioglass(登録商標)セラミック含量が増加するにつれて予想したように振舞う。湿潤材料における貯蔵弾性率のこの減少は、水とBioglass(登録商標)セラミック表面の反応のためであると考えられ、この反応はBioglass(登録商標)粒子とポリマーとの間の界面の欠陥から起こり、そして全体の剛性の減少から生じる。
【0112】
実施例7. Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材の機械的特性を増加する方法
A.複合材料を、ポリマーにBioglass(登録商標)セラミックを添加する前に、Bioglass(登録商標)粒子を生理的緩衝化溶液に浸漬し、未反応の不動態化表面を形成することを除いて、実施例1および2の手順に従って作製する。
【0113】
この材料を試験する場合、材料を湿潤することを除いて、実施例5に記載のように試験した。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材における増加した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0114】
B.複合材料を、シランカップリング剤をBioglass(登録商標)セラミックを有するポリマーに添加することを除いて、実施例1および2の手順に従って作製する。この材料を、試験する場合、材料を湿潤することを除いて、実施例5に記載されるように試験する。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材の増大した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0115】
C.複合材料を、ポリマーにBioglass(登録商標)セラミックを添加する前に、ポリマーで予備処理することを除いて、実施例1および2の手順に従って作製する。少量のポリマーを溶媒に溶解し、そしてBioglass(登録商標)セラミックを溶媒に分散する。Bioglass(登録商標)セラミックは、次いで、空気乾燥するか、または流動床で乾燥するか、または噴霧乾燥機で乾燥し、続いて、凝集体を細かく破壊する。ここでポリマーでコーティングされたBioglass(登録商標)粒子を、次いで、追加のポリマーと混合して複合材を形成する。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材における増加した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0116】
材料を、試験した場合、材料を湿潤することを除いて実施例5で記載のように試験する。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材における増加した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0117】
実施例8. Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材のpH
20×40×3mmのサイズのウェーハを75/25D,L-PLG単独、または20容量%のBioglass(登録商標)セラミック、炭酸カルシウムもしくは炭酸水素ナトリウムとともに用いて実施例1の手順を使用して作製した。残留溶媒を60〜65℃で少なくとも72時間真空オーブン中に置くことによって完全に除去した。ウェーハを、約10×10×3mmのサンプルに切断し、そして0.01%のチメロサールを含む約40mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に入れた。添加物を含まないコントロールグループにおけるサンプルは、37日の期間にわたって7.33から7.38へのpHの増加を示した。Bioglass(登録商標)セラミックを含むグループのサンプルは同じ期間にわたって8.24から8.86への増加を示した。炭酸カルシウムを含むグループにおけるサンプルは34日の期間にわたって8.50から8.8への増加を示した。炭酸ナトリウムを含むグループにおけるサンプルは37日の期間にわたって7.39から8.61への増加を示した。コントロールサンプルおよび炭酸水素ナトリウムを含むサンプルはその期間にわたってサイズがわずかに減少し、一方Bioglass(登録商標)セラミックおよび炭酸カルシウムを含むサンプルは試験期間にわたってサイズがわずかに増加した。
実施例9. Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の表面反応性
複合材の表面反応特性を特徴付けるために、実施例1に記載のようなBioglass(登録商標)を5、10および20容量%含む55/45D,L-PLGの試験片を、37℃で0.1cm-1の表面積対容積比で8週間までの間、擬似体液(SBF)中で懸濁した。種々の反応時間の終わりに、サンプルを取りだし、そして表面反応性をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)により決定した。8週間において、20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含む複合材のみがアパタイト層の形成を示し、これは骨との密接な相互作用を促進する。結果を図4に示す。表面反応性特性は、Bioglass(登録商標)セラミックのタイプおよび濃度の変化によって所望の組織に合わせられ得る。
【0118】
実施例10.
実施例2の複合材料を、40容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含ませて作製した。このBioglass(登録商標)セラミックは、1.0リットルのリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)に6.0グラムのBioglass(登録商標)セラミックを添加し、そして37℃で24時間緩やかに攪拌することによって、水と予備反応することにより表面を不動態化した。この溶液を濾過して材料を回収し、脱イオン水でリンスし、そして最後にアセトンでリンスした。次いで、回収したBioglass(登録商標)セラミックを真空下65℃で2日間乾燥した。回収率は約75%であった。表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材をBioglass(登録商標)セラミックを含まないコントロールおよび非表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミックを用いて作製した同じ複合材に対して37℃湿潤で機械的特性(ヤング率)について試験した。この結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
これらの試験は、生理活性のセラミックを含む生理学的条件(湿潤、37℃)下で皮質性の骨と同様の機械的特性を有する複合材料が、生理活性セラミックで予備反応することによって作製され、アパタイト様の表面不動態化層を形成し得ることを示す。
【0121】
実施例11.
55/45DL PLGおよび75/25DL PLGポリマーにBioglass(登録商標)セラミックの量およびタイプを変化して添加する結果として圧縮剛性の改良が試験された。
【0122】
研究されたポリマーは55/45DL PLG、IV=0.83、および75/25DL PLG、IV=0.76(Boehringer Ingelheim、Germany)であった。使用したガラスは45S5(53〜90μm)、58S ゾル−ゲル(38〜90μm)、および45S5-PR(53〜90μm)Bioglass(登録商標)セラミック製品(USBiomaterials、Alachua、FL)であった。45S5-PRを実施例10に記載のように表面を不動態化することによって45S5Bioglass(登録商標)セラミックから作製した。
【0123】
ポリマーを製造者から粉末として受領した。それは簡単にミクロ製粉機で製粉され、次いで≦850μm(20メッシュ)までふるいにかけられた。複合材料をミクロ製粉機中でポリマーとガラスを合わせ、円筒(cylindrical)プレス型にその粉末を移し、そして型の外表面が85〜95℃の温度に達するまで熱しながら20kpsiでプレスして調製した。直径6mm×高さ4mmの試験クーポン(coupon)を穿孔機およびダイスで合わせられた手動プレスを用いて穿孔した。
【0124】
材料を試験するために、サンプルを37℃で1〜2時間脱イオン水で前もって調整した。次いで、これらは37℃に維持された温度制御水浴を備えたInstron model 5545の試験圧盤に取りつけた。このサンプルを50%のひずみを達成するまで10%/分のひずみ速度で圧縮した。次いで、ヤング率を応力-ひずみダイヤグラムの傾きから決定した。
【0125】
結果を図9および10に示す。グラフは75/25材料が55/45材料より明らかに剛性であることを示す。これはより高いガラス転移温度およびこのポリマーのより高い疎水性のためである。圧縮弾性率は20容量%の2つのガラスの添加を含む55/45ポリマーに対して2倍以上である。75/25ポリマーについて増加は、58S ゾル−ゲルガラスについてのみ明らかであるが、45S5組成物の弾性率は実際には減少した。40%ガラスでは58S ゾル−ゲル材料は、55/45材料についてのみ剛性の増加が明らかに起こるが、45S5材料は剛性の減少を再び生じる。60%では材料は脆化および軟化し、そして生じた弾性率は非常に低い。弾性率は、全てのレベルで非不動態化45S5と比較された両方のポリマーを含む、表面不動態化45S5-PRを使用して同様に増加または維持され、40%で最大増加を示した。明らかな分子量の変化は加工の機能として認められなかった。
【0126】
変更は、添付の請求の範囲により規定されるような本発明の範囲から外れることなく本明細書中で示され、そして記載された本発明の実施態様においてなされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、55/45、65/35および75/25PLGを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の分子量の低下を、5容量パーセントから20容量パーセントまで上昇するBioglass(登録商標)セラミック濃度の関数として示す。
【図2】図2は、乾燥下で試験された、55/45、65/35および75/25PLGを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物のガラス転移温度の低下を、5容量パーセントから20容量パーセントまで上昇するBioglass(登録商標)セラミック濃度の関数として示す。
【図3】図3は、55/45、65/35および75/25PLGを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の機械的特性(37℃、乾燥下での貯蔵弾性率)の変化を、5容量パーセントから20容量パーセントまで上昇するBioglass(登録商標)セラミック濃度の関数として示す。
【図4】図4は、55/45PLGおよび20容量パーセントのBioglass(登録商標)セラミックを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物を疑似体液(SBF)中に6週間懸濁した後のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)の結果を示し、これはアパタイト層の形成を示す。
【図5】図5は、湿潤下で試験された、55/45および75/25PLG、ならびに0、10および20容量パーセントのBioglass(登録商標)セラミックとを含む十分に密なポリマー組成物中のBioglass(登録商標)セラミック含量の結果としてのガラス転移温度の変化を示す。
【図6】図6は、55/45および75/25PLGならびに0、10および20容量パーセントの非表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミックとを含む十分に密なBioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物中の、37℃、湿潤下での機械的特性(貯蔵弾性率)の変化を示す。
【図7】図7は、37℃、生理学的(湿潤)条件下での機械的特性(ヤング率)の試験と、非表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミックを含む乾燥材料上で行われた同じ試験との比較である。色の濃い方の棒は湿潤試験結果を示し、そして薄い方の棒は乾燥試験結果を示す。
【図8】図8は、75/25PLG、水と予備反応させることによって表面不動態化させた40容量パーセントのBioglass(登録商標)セラミックを含む75/25PLG、および表面不動態化させていない同じ複合材を用いる、37℃、生理学的(湿潤)条件下での機械的特性(ヤング率)の試験を比較する。
【図9】図9は、種々の割合およびタイプのBioglass(登録商標)セラミックおよび55/45DL PLGを用いて作製された複合ポリマーの圧縮弾性率を比較する。
【図10】図10は、種々の割合およびタイプのBioglass(登録商標)セラミックおよび75/25DL PLGを用いて作製された複合ポリマーの圧縮弾性率を比較する。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
生理活性セラミック材料は当該分野で公知であり、そして代表的には60モルパーセント未満のSiO2、高含量のナトリウムおよびCaO(各々20〜25%)、ならびに高モル比のカルシウム対リン(約5の範囲)を含む。このような材料は、材料と周囲組織との間の界面結合を形成するので、「生理活性」であると呼ばれる。このようなガラスが水または体液に曝されると、いくつかの鍵となる反応が起こる。第1はカチオン交換であり、ここでガラス由来の侵入型のナトリウムおよびカルシウムイオンが溶液由来のプロトンで置換され、表面シラノール基および非化学量論的な水素結合錯体を形成する:
【0002】
【化1】
【0003】
このカチオン交換はまた溶液のヒドロキシル濃度を増加させることにより、十分に密なシリカガラス網目の攻撃を導いて、さらなるシラノール基および制御された界面溶解を生じさせる。
【0004】
Si-O-Si + H+OH- --> Si-OH + HO-Si
界面pHがよりアルカリ性となり、かつ加水分解された表面シラノール基の濃度が増加するにつれ、多数の近位シラノール基を伴うコンホメーションの動力学は、格子間イオンの不在と組み合わせて、これらの基を再重合して、シリカリッチな表面層を与える:
Si-OH + HO-Si --> Si-O-Si + H2O
ガラス−溶液界面でのアルカリ性pHの別の結果として、結晶化によりCaOおよびP2O5の混合ヒドロキシアパタイト相が生じ、これが網目の溶解の間中、溶液中に放出される。このことはSiO2表面上で起こる。この相はアパタイトの微結晶を含み、これは、グリコサミノグリカン、コラーゲンおよび糖タンパク質のような界面成分の核を成し、かつ相互作用する。有機生物学的構成要素を、成長するヒドロキシアパタイト−およびSiO2−リッチな層に取り込むことは、生理活性の特徴である生存組織との密接な相互作用の引き金となると考えられる。Greenspanら(1994)、Bioceramics 7:55-60を参照のこと。
【0005】
生理活性セラミックをインプラント補綴デバイスおよび補綴デバイスのためのコーティングに使用することは、例えばHenchらの米国特許第4,775,646号(1988年10月4日発行)、「Fluoride-Containing Bioglass(登録商標) Composition」に記載されており、これは、46.1モルパーセントのSiO2、2.6モルパーセントのP2O5、26.9モルパーセントのCaOおよび24.4モルパーセントのNa2O、または52.1モルパーセントのSiO2、2.6モルパーセントのP2O5、23.8モルパーセントのCaOおよび21.5モルパーセントのNa2Oを含むガラス処方物、ならびに40〜60モルパーセントのCaOがCaF2で置換されている組成物を教示する。この特許は、この材料で作られたインプラントが、生体組織との耐久性のある化学結合の至適化が望まれる場合に有用であることを述べている。
【0006】
SiO2、CaOおよびP2O5に基づくアルカリを含まない生理活性ガラス組成物がHenchらの米国特許第5,074,916号(1991年12月24日発行)、「Alkali-Free Bioactive Sol-Gel Compositions」に開示される。
【0007】
Bioglass(登録商標)は、University of Floridaの登録商標であり、USBiomaterials Corporationにライセンスされている。Bioglass(登録商標)セラミックに関連する他の発行された特許は、米国特許第5,486,598号(1996年1月23日発行、Westら)「Silica Mediated Synthesis of Peptides」、米国特許第4,851,046号(1989年7月25日発行、Lowら)「Periodontal Osseous Defect Repair」、米国特許第4,676,796号(1987年6月30日発行、Merwinら)「Middle Ear Prosthesis」、米国特許第4,478,904号(1984年10月23日発行、Ducheyneら)「Metal Fiber Reinforced Bioglass(登録商標) Compositions」、米国特許第4,234,972号(1980年11月25日発行、Henchら)「Bioglass(登録商標)-Coated Metal Substrate」および米国特許第4,103,002号(1978年7月25日発行、Henchら)「Bioglass(登録商標) Coated A1203 Ceramics」を包含する。係属中の出願は、特許協力条約公開WO 9117777(1991年11月28日公開、発明者Walkerら)「Injectable Bioactive Glass Compositions and Methods for Tissue Recognition」(米国出願に基づき1990年5月22日の優先日に優先権主張する)を包含する。
【0008】
PerioGlas(登録商標)はUSBiomaterials Corporatoinの登録商標であり、Block Drug Corporationにライセンスされている。これはBioglass(登録商標)セラミックを含む合成骨移植片粒子状材料である。製品の文献は、この材料を骨および軟組織の両方を結合するものとして記載しており、骨の欠損中に直接充填されることが示されている。Hench, L.L.(1995)「Bioactive Implants」Chemistry and Industry (7月17日、n.14, 547-550頁)は周囲組織のコラーゲン原繊維が生理活性ガラス上に形成する表面層と直接相互作用することを報告する。
【0009】
PCT公開WO 96/00536(1996年1月11日公開、発明者Ducheyneら)は、骨組織の形成方法を開示し、この方法は骨欠損をバイオセラミック材料で充填する工程を包含する。
【0010】
粒子状骨置換材料を含む複合材料は、例えば、米国特許第4,192,021号(1980年3月11日発行、Deibigら)「Bone Replacement or Prosthesis Anchoring Matrial」を記載した。本特許は骨置換補綴固定(anchoring)材料を教示し、これは焼結リン酸カルシウムと生分解性有機材料との混合物であって、リン酸カルシウム対有機材料の比が10:1と1:1との間である。
【0011】
米国特許第5,017,627号(1991年5月21日発行、Bonfieldら)「Composite Material for Use in Orthopaedics」は、骨置換材料のための粒子状無機ソリッド(solid)粒子を含む、明らかに非生分解性のポリオレフィン材料を開示する。
【0012】
米国特許第5,552,454号(1996年9月3日発行、Kretschmannら)「New Materials for Bone Replacement and for Joining Bones or Prosthesis」は、生分解性ワックスまたはポリマー樹脂(分子量200〜10,000)および生体適合性セラミック材料を含む組成物を開示し、ここでポリマーは実質的に遊離カルボキシル基を含まない。
【0013】
他の生理活性セラミックは、米国特許第4,189,325号(1980年2月19日発行、Barrettら)「Glass-Ceramic Dental Restorations」および同特許第4,171,544号(1979年10月23日発行、Henchら)「Bonding of Bone to Materials Presenting a High Specific Area, Porous, Silica-Rich Surface」に開示される。
【0014】
PCT公開WO 96/19248(1996年6月27日公開)「Method of Controlling pH in the Vicinity of Biodegradable Implants and Method of Increasing Surface Porosity」は、生分解性ポリマーインプラントにおけるpH制御剤としての生理活性セラミックの使用を開示する。
【0015】
約10,000より上の分子量を有する生分解性ポリマーで作製された、骨および組織治癒用途のための複合材料は、文献にも開示されていないようであり、それらの材料の有利な特徴も報告されていないようである。
【0016】
本明細書中で言及される全ての刊行物はその全体が本明細書中に参考として援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によって以下が提供される:
(1)生分解性のポリマーを含む複合治療インプラント材料であって、該複合材料において増強した機械的特性を生成するのに充分な量の表面を不働態化(passiviate)した生理活性セラミックを含む生分解性ポリマーを含む、インプラント材料。
(2)前記生理活性セラミックが、前記材料の容量に基づいて、約70%未満の量で存在する、項目1に記載のインプラント材料。
(3)前記生理活性セラミックが、前記材料の容量に基づいて、約40%未満の量で存在する、項目1に記載のインプラント材料。
(4)前記生理活性セラミックが、前記材料の容量に基づいて、約30%未満の量で存在する、項目1に記載のインプラント材料。
(5)前記材料の容量に基づいて、約50%より多い空隙率を有する、項目1に記載のインプラント材料。
(6)前記材料の容量に基づいて、約75%未満の空隙率を有する、項目1に記載のインプラント材料。
(7)実質的に非多孔質である、項目1に記載のインプラント材料。
(8)生理的条件下で約1GPaと約100GPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の実質的に非多孔質のインプラント材料。
(9)生理的条件下で約1GPaと約30GPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の実質的に非多孔質のインプラント材料。
(10)生理的条件下で約0.1MPaと約100MPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の多孔質のインプラント材料。
(11)生理的条件下で約0.5MPaと約50MPaとの間のヤング率を有する、項目1に記載の多孔質のインプラント材料。
(12)前記生理活性セラミックが、水溶液と予め反応させることによって表面不働態化されている、項目1に記載のインプラント材料。
(13)シランカップリング剤もまた含む、項目1に記載のインプラント材料。
(14)前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、およびPLAとPGAとのコポリマーからなる群より選択される、項目1に記載のインプラント材料。
(15)前記生分解性ポリマーが約15と約50%との間のPGAを含むPLAとPGAとのコポリマーである、項目1に記載のインプラント材料。
(16)前記生理活性セラミックがSiO2、CaOおよびP2O5を含む、項目1に記載のインプラント材料。
(17)仕上がりインプラント材料における前記ポリマーが約25,000と約1,000,000との間の選択された重量平均分子量を有する、項目1に記載のインプラント材料。
(18)前記選択された分子量より大きな重量平均分子量を有するポリマーを出発材料として使用して作製された項目17に記載のインプラント材料。
(19)軟結合組織への結合に適合した生理活性セラミックを含む第一のセクション、および硬結合組織への結合に適合した生理活性セラミックを含む第二のセクションを含む、項目1に記載のインプラント材料。
(20)表面活性な生理活性セラミックもまた含む、項目1に記載のインプラント材料。
(21)項目1に記載の多孔質インプラント材料を作製する方法であって、以下:
(a)前記ポリマーとポリマー溶媒とを混合する工程;
(b)前記生理活性セラミックと該溶解したポリマーとを混合する工程;
(c)工程(b)の該混合物を型に入れる工程、および真空圧力条件下でインキュベートして前記多孔質インプラント材料を生成する工程、
を包含する、方法。
(22)項目1に記載の実質的に非多孔質のインプラント材料を作製する方法であって、以下:
(a)前記ポリマーとポリマー溶媒とを混合する工程;
(b)前記生理活性セラミックと該溶解したポリマーとを混合する工程;
(c)加圧下で工程(b)の該混合物をインキュベートして、該インプラント材料を生成する工程、
を包含する、方法。
(23)項目1に記載のインプラント材料を使用する方法であって、以下:組織足場、顆粒状骨移植片置換材料、二相骨軟骨インプラント、重量負荷骨インプラント、非重量負荷インプラント、および低重量負荷インプラント、または固定デバイス、タック(tack)、ピン、ねじ、骨アンレー、およびフィルムからなる群より選択されるインプラントデバイスへと該材料を形成させる工程を包含する、方法。
(24)患者における創傷に適用するための、生分解性ポリマーおよび約10%と約70%との間の生理活性セラミックを含む生分解性フィルム。
【0018】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、生分解性ポリマーおよび生理活性セラミックを含む多孔質および非多孔質の両方の治療用インプラント材料を提供する。生分解性ポリマーおよび生理活性セラミックを含むこのようなインプラントを本明細書では「複合インプラント」と呼ぶ。生理活性セラミックのポリマーへの取り込みは多数の利点を有する。
【0019】
重要な利点は、この材料が生理活性セラミックを含まないポリマー材料よりも優れた機械的特性を有することである(例えばヤング率がより高い)。本発明の多孔質インプラント材料は好ましくは、海綿質(スポンジ状、柵状織)の骨の欠損中に配置されるための、細胞の足場(scaffold)として使用される。このような骨のヤング率は約10MPaから3000MPaの範囲である。多孔質インプラント材料は好ましくは配置される骨のものに類似するヤング率を有する。これらの多孔質インプラント材料はまた、他のタイプの骨の中に配置される細胞の足場にもまた、使用され得る。これらはまた骨移植片置換物、骨アンレーとして、および脊髄固定のためにもまた、使用され得る。本発明の多孔質インプラント材料は好ましくは、生理学的条件(水性環境中37℃)下で本明細書中に記載の三点曲げ(three point bending)動的機械的(dynamic mechanical)分析で測定して、ヤング率が約0.1MPaと約100MPaとの間、好ましくは約0.5MPaと約50MPaとの間であり、そして空隙率が約50%より高く、そして好ましくは約65%と約75%との間であるが、より高い空隙率(例えば約90%まで)もまた使用され得る。
【0020】
本発明の多孔質インプラント材料はまた、腱、靱帯、および皮膚のような軟結合組織の修復にもまた、使用され得る。多孔質足場は、誘導される(guided)組織再生のための基質として役立つ。生分解性ポリマーが分解するにつれ、これは新しい健常な組織で置換される。生理活性セラミック成分の表面は細胞外マトリクス成分、特にI型コラーゲンと相互作用し、間葉細胞の移動のための生物学的表面を提供すること、および組織のインプラントへの並置の増強を引き起こすことによって、創傷の治癒を増強する。使用する生理活性セラミックのタイプおよび生分解性ポリマー内でのその濃度を変更することによって、インプラントの生物学的性質は調整され得る。多相インプラント、例えば、米国特許第5,607,474号(1997年3月4日発行、Athansiouら)「Multi-Phase bioerodible Implant/Carrier and Method of Manufacturing and Using Same」を生理活性セラミックを含むように改変したものもまた有用である。例えば、腱を骨に付着させるために、骨相は好ましくは45S Bioglass(登録商標)セラミックを含み、これはセメント質または骨のような硬結合組織に「結合」し、そして腱相は好ましくはBioglass(登録商標)セラミックを含み、これは腱または靱帯のような硬および軟結合組織の両方と相互作用する。あるいは、硬および軟結合組織の両方と相互作用する55S Bioglass(登録商標)セラミックを含む単一相インプラントが使用され得る。本発明の別の実施態様では、複合材料が粒子状形態で使用されて歯周修復(ここではセメント質(硬組織)、歯周靱帯(軟組織)および骨(硬組織)の再生が必要とされる)を増強し得る。インプラントの多孔質の性質は、創傷治癒細胞を含む骨髄、または他の目的の細胞の使用を可能にする。
【0021】
実質的に非多孔質である(本明細書中ではまた「十分に密な」または「ソリッド(solid)」ともいう)本発明のインプラント材料は好ましくは、プレート、ねじ、およびロッドのような骨折固定デバイスに使用される。生理学的条件下で試験した本発明の非多孔質材料のヤング率は、本明細書中に詳述される動的機械的分析三点曲げ試験を用いて試験した場合、約1GPaと約100GPaとの間であるべきである。本明細書で記載された弾性率はこのように試験されたものと理解される。骨の海綿骨質および部分的重量負荷(partial weifht-bearing)領域に適用するためには、ヤング率は好ましくは約1GPaと約30GPaとの間である。完全重量負荷(full weight-bearing)領域の骨に適用するためには、ヤング率は好ましくは約5GPaと約30GPaとの間である。非多孔質インプラント材料に増加した機械的特性を提供することに加えて、ねじなどの骨固定デバイスの材料中の生理活性セラミックスの存在は、インプラントがその場所の中に穿孔される場合に、インプラントが骨を切削する能力を高める。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「Bioglass(登録商標)」材料は、SiO2、CaOおよびP2O5を含む。生理活性セラミック(好ましくはBioglass(登録商標)セラミック)は、多孔質インプラント材料中に約40容量パーセント未満、そして好ましくは約30容量パーセント未満、下は約10容量パーセントまでで存在すべきである。生理活性セラミックは非多孔質インプラント材料中に約10容量パーセントから約70容量パーセント、好ましくは約50から60容量パーセントを超えずに存在すべきである。
【0023】
生理活性セラミックは上記のように当該分野で公知であり、そして本発明で使用される好ましい種として、粒子サイズ90〜53μm、または粒子サイズ53〜38μmを有する45S、55S、および65S Bioglass(登録商標)粒子、またはアルカリを含まないゾル−ゲルBioglass(登録商標)粒子を含む。65S Bioglass(登録商標)製品は不活性である。すなわち本明細書で使用される表面不動態化材料の定義に適合する。しかし、ゾル−ゲル65S Bioglass(登録商標)製品は表面活性である。生理活性セラミックは種々の形状(例えば不規則な形状の粒子、線維および制御された幾何形状を有する粒子)で使用され得る。
【0024】
好ましい実施態様では、生理活性セラミックは表面不動態化される。なぜなら、出願人は、驚くべきことに、湿潤な生理学的条件下で、生理活性セラミックを含むインプラントの弾性率(貯蔵弾性率およびヤング率)は乾燥条件下で測定された弾性率に比べて低下することを発見したからである。この問題は生理活性セラミックの表面を不動態化する(水に対して非反応性にする)ことによって解決される。従って、本明細書中、用語「表面不動態化」とは、ポリマー複合材料中の生理活性セラミックの表面を、好ましくは水と予備反応させてアパタイト層を形成することによって、水と反応し得ないようにされていることを意味する。あるいは生理活性セラミック粒子は、ポリマー中に配合される前に、これらをポリマーの薄い溶液中に分散し、そして乾燥することによって、ポリマーフィルムで被覆され得る。これは生理活性セラミックの表面を変化させて、ポリマーの結合を良好にさせるが、インプラントされたときに水性条件に曝露される粒子表面のさらなる生理活性を妨げない。例えば、予備反応はわずかなアパタイト層を形成し、これはポリマー相と界面で結合するが、調製されたインプラントでは、身体に曝された生理活性セラミックの表面はなお反応して界面結合を形成する。
【0025】
本発明の別の実施態様では、複合材料を含めて、生理活性材料の表面を不動態化するため、およびポリマーと生理活性セラミックとの界面を強化するために、シランカップリング剤を用いて、生理活性セラミックを被覆する。このような使用される粒子の表面を被覆するに十分なカップリング剤の量が、有効量である。
【0026】
表面不動態化されておらず、かつ水と反応する生理活性セラミック材料は、本明細書中、「表面活性」材料と呼ばれる。本発明の1つの実施態様において、表面活性材料および表面不動態化材料の両方が生分解性ポリマー材料に配合される。これらの2つのタイプの生理活性セラミックは機械的特性に対して異なる影響を有するので、表面活性材料対表面不動態化材料の比は変更されて、仕上がりインプラント材料における所望の機械的特性を達成し得ると同時に、所望の総生理活性セラミック含量を維持し得る。
【0027】
表面不動態化生理活性セラミックを含む本発明の複合治療用インプラント材料は、非表面不動態化生理活性セラミックを含むこのような組成物および生理活性セラミックを含まないこのような組成物と比べた場合、増強された(より高い)機械的特性を有する。機械的特性は本明細書においてヤング率および貯蔵弾性率に関して記載される。ヤング率は当該分野で公知の手段で測定され得る。本明細書で報告される本発明の材料の研究に関して、ヤング率は貯蔵弾性率よりも約1桁低いことが見いだされている。
【0028】
生分解性ポリマーおよび生理活性セラミックの複合材料はまた、この材料で作られたインプラントの周囲のpHを、インプラントが分解するにつれ、緩衝化するのにも効果的であり、その結果として酸性分解生成物の潜在的な悪影響を回避する。
【0029】
出願人はまた、生理活性セラミック粒子を多孔質生分解性ポリマーの作製の際に添加するとインプラントの分子量およびガラス転移温度が低下することを発見した。これはインプラントの分解時間に影響を与え得る。従って、生理活性セラミックを含む多孔質生分解性ポリマーインプラント材料を作製する方法が提供され、この方法はこれらの影響を考慮に入れ、そして適切な分子量を有する適切な出発材料の選択を可能にして、選択された分子量、分解時間、貯蔵弾性率、またはヤング率およびガラス転移温度の、最終的なインプラントを提供する。多孔質インプラント材料において、生理活性セラミックの添加は、材料の分子量を添加される生理活性セラミック1パーセント当たり、約1パーセント減少させる。
【0030】
骨および他の組織の欠損の治癒を促進するための、本発明の材料を用いる方法もまた提供される。
【0031】
生分解性ポリマーのシリンダー、ウェーハ、球体、条片、フィルム、および不規則な形状のインプラント、ならびに生理活性セラミックを含む粒子状の骨移植片材料が本明細書において提供され、これらは、手で成形可能な生分解性ポリマー材料であり、これは生理活性セラミックおよび生分解性ポリマー材料を含み、この生分解性ポリマー材料は生理活性剤を連続的にスムーズに放出することができ、そして生理活性セラミックを含む。
【0032】
用語「生分解性」は、患者の体内において、または細胞と共に用いて体外で組織を成長させる場合に、時間が経つと分解し得ることを意味する。治療用インプラントは、患者(ヒトまたは動物)の組織欠損の置換のために用いられ、組織の内殖および欠損の治癒を助長するデバイスである。本発明の複合インプラントは細胞を含み得る。
【0033】
生分解性インプラント材料を生成するための当該分野で公知のポリマーは、本発明で使用され得る。このようなポリマーの例は、ポリグリコリド(PGA)、グリコリドのコポリマー、例えば、グリコリド/L-ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC);ポリラクチド(PLA)、PLAの立体コポリマー、例えばポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、L-ラクチド/DL-ラクチドコポリマー;PLAのコポリマー、例えばラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/δ−バレロラクトンコポリマー、ラクチドε−カプロラクトンコポリマー、ポリデプシペプチド、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー、非対称3,6-置換ポリ-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン;ポリ-β-ヒドロキシブチレート(PHBA)、PHBA/β-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHBA/HVA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオネート(PHPA)、ポリ-p-ジオキサノン(PDS)、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリ-ε-カプロラクトン、メチルメタクリレート-N-ビニルピロリドンコポリマー、ポリエステルアミド、シュウ酸のポリエステル、ポリジヒドロピラン、ポリアルキル-2-シアノアクリレート、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリペプチド、ポリ-β-マレイン酸(PMLA)、およびポリ-β-アルカン酸である。
【0034】
本発明の材料の作製に使用するための好ましい生分解性ポリマーは当該分野で公知であり、脂肪族ポリエステル、好ましくはポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)およびそれらの混合物のポリマー、ならびにそのコポリマー、より好ましくはD、L-PLA/PGAの50:50から85:15のコポリマー、最も好ましくは55/45から75:25のD,L-PLA/PGAコポリマーを包含する。PLAの単一のエナンチオマーもまた用いられ得、好ましくは、単独またはPGAとの組み合わせのいずれかのL-PLAである。
【0035】
好ましくはポリマーインプラント材料は約25,000と約1,000,000ダルトンの間の分子量を有し、より好ましくは約40,000と約400,000ダルトンとの間、そして最も好ましくは約55,000と約200,000ダルトンとの間である。
【0036】
患者の創傷に適用するための生分解性フィルムもまた提供され、これは生分解性ポリマーおよび約10パーセントと約70パーセントとの間の生理活性セラミックを含む。本発明はまた、生理活性セラミックおよび生分解性ポリマーを含む多孔質の複合治療用インプラント材料を作製する方法を教示し、この方法は、上記ポリマーを未硬化の形態で調製する工程、生理活性セラミックを上記ポリマー中に混合する工程、上記混合物を型の中に配置する工程、および減圧条件下で硬化して、多孔質の複合インプラント材料を生成する工程を包含する。
【0037】
実質的に非多孔質の複合治療用インプラントの作製方法もまた教示され、この方法は、上記ポリマーを未硬化の形態で調製する工程、生理活性セラミックを上記ポリマー中に混合する工程、および上記混合物を熱および圧力条件下で硬化して、実質的に非多孔質の複合インプラント材料を生成する工程を包含する。
【0038】
本発明の複合インプラント材料は、上記材料を、細胞を含むまたは含まない組織足場インプラント、顆粒状骨移植片置換材料、二相骨軟骨インプラント、重量負荷の骨インプラント、非重量負荷から低重量負荷のインプラント、または固定デバイス、タック(tack)、ピン、ねじ、骨アンレー、およびフィルムからなる群から選択されるインプラントデバイスに形成することによって用いられ得る。
【0039】
好ましくは、ポリマーインプラント材料は、生理学的環境中でpHを約6と約9の間、そしてより好ましくは約6.5と約8.5との間に維持し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明の複合治療インプラント材料は、材料を硬化する前に、生理活性セラミックをポリマー性材料に組み込むことによって作製される。出願人は、生理活性セラミックが添加される加工段階が、最終産物の特性に差異を生じないようであることを見出した。
【0041】
沈殿ポリマーの調製は、当該分野において周知である。一般に、このプロセスは、乾燥ポリマー混合物を当該分野で公知の溶媒(例えば、アセトン、塩化メチレンまたはクロロホルム、好ましくはアセトン)と混合する工程、非溶媒(例えば、エタノール、メタノール、エーテルまたは水)を用いて、溶液からポリマー塊を沈殿させる工程、型にロールもしくはプレスされ得るか、または型に押し出され得る凝集塊となるまで、溶媒を抽出しそして塊から薬剤を沈殿する工程、ならびに所望の形状および堅さに組成物を硬化する工程を包含する。本発明の多孔質複合材料は、米国特許出願第08/727,204号(本明細書中で参考として援用される)に記載のように、生理活性セラミックを硬化前にポリマーに添加して、作製され得る。本発明の非多孔質の(十分に密な)複合材料は、本明細書中に記載のように、ポリマー粒子および生理活性セラミックを混合し、そして加熱プレスで圧されることにより作製され得る。
【0042】
本発明は、多孔質または非多孔質生分解性インプラント材料を提供する。多孔質インプラントは特に、組織内植のためのまたは細胞のキャリアとしての足場を提供するのに有用である。非多孔質インプラントは特に、ロードベアリング用途に有用である。多孔質インプラント材料は、好ましくは、孔サイズ分布が材料全体にわたって実質的に均一である、約60容量%と90容量%との間の空隙率を有する。本発明の材料の目標空隙率は、型に多少のポリマーを添加することによって達成される。例えば、長さa(mm)、幅b(mm)および深さc(mm)を有する型で、p(g/cm3)の密度のポリマーを用いて、選択された目標空隙率Qを有するようにN個の成形ウェーハを調製する場合、使用すべきポリマーの質量Mは、以下によって計算される:
【0043】
【数1】
【0044】
本発明の多孔質インプラント材料は、好ましくは約5μmと約400μmとの間、より好ましくは約100μmと約200μmとの間の平均孔サイズを有する。多孔質材料は、好ましくは約40容量%以下のBioglass(登録商標)セラミック、より好ましくは約20〜30容量%以下のBioglass(登録商標)セラミックを含む。非多孔質インプラントは、約70容量%までのBioglass(登録商標)セラミックを含み得る。
【0045】
インプラント材料は、細胞、当該分野で公知の生理活性薬剤、または当該分野で公知の他の添加剤(例えば、米国特許出願第08/250,695号(本明細書中で参考として援用される)に記載のような基質小胞または基質小胞抽出物)を組み込み得る。本発明のインプラント材料は、組織内植を容易にするチャネルを含み得、そして組織成長を促進するために、栄養素および/または細胞性材料、例えば、血液および骨髄細胞、軟骨細胞、軟骨膜細胞、骨膜細胞、および他の間葉起源の細胞(例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、およびこれらの前駆体)、脂肪細胞、筋細胞、腱細胞、靱帯細胞、皮膚細胞、ならびに線維芽細胞で浸潤され得る。本発明のインプラント材料はまた、米国特許出願第08/196,970号(本明細書中で参考として援用される)に記載のように経時的に放出するように設計された、酵素、成長因子、分解剤、抗生物質などの生理活性薬剤を組み込み得る。
【0046】
最良の生体適合性のために、インプラント材料は溶媒を実質的に含まないことが好ましい。いくつかの残留溶媒がポリマー中に残存するが、好ましくは約100ppm未満であることが認識されている。
【0047】
本発明のインプラント材料は、PCT公報WO93/15694(本明細書中で参考として援用される)に記載の二相インプラントのような多相インプラントを作製するのに使用され得る。これらの二相インプラントは、好ましくは、上部の軟骨相および下部の骨相を有し、そして適切な相を同様の組織と隣接して軟骨から骨へ及ぶ欠損に挿入される。このインプラント材料は、組織内植のために、生理活性セラミックを含有するためにこの教示に従って修飾された三次元多孔質足場の形態(例えば、WO公報93/15694に開示されるようなシリンダー状インプラント)で、作製され得る。
【0048】
このインプラント材料はまた、生理活性セラミックを含有するためにこの教示に従って修飾された、同時係属出願番号第60/032,085号(本明細書中でまた参考として援用される)に開示されるような生分解性ポリマーフィルムを作製するために使用され得る。このようなフィルムは、筋肉の接着のためのフィルムを介して外科医が縫合し得る眼インプラントについて言えば、筋肉の外科的接着のために使用され得、多孔質でも非多孔質であってもよく、好ましくは非多孔質である。
【0049】
このようなフィルムは、選択されたポリマー材料を、当該分野で公知の溶媒(例えば、アセトン、クロロホルムまたは塩化メチレン)をポリマー1gあたり約20mlの溶媒を用いて溶解することによって作製され得る。次いで、溶液は、(好ましくは、穏やかな減圧下で)脱気されて、溶存空気を除去され、そして表面(好ましくは、平面非粘着表面(例えば、Bytac(Norton Performance Plastics, Akron, OHの商標)非粘着コーティング接着裏打ちアルミホイル、ガラスまたはテフロン(登録商標)))上に注がれる。次いで、溶液は、もはや粘着性でなく液体が無くなったと思われるまで、乾燥(好ましくは風乾)される。ポリマーの既知の密度が、所望の厚さのフィルムを作製するために必要である溶液の容量を逆算するために使用され得る。
【0050】
フィルムを生体適合性にするために、細胞移植を妨げる残留溶媒は除去されなければならない。好ましくは、これは、乾燥ポリマーを約55〜65℃でインキュベートして残留溶媒を取り去ることによってなされる。次いで減圧オーブンが約55〜70℃で用いられ、最後の溶媒が取り除かれ得、その結果、仕上がりポリマーフィルムは約100ppm未満の濃度の残留溶媒を有する。次いで、このフィルムは、非粘着表面から引き剥がされ、そして、厚み、滑らかさ、丈夫さおよび耐久性において、実質的に均一である。
【0051】
フィルムはまた、加熱プレスおよび当該分野で公知の溶融成形/延伸法により作製され得る。例えば、より厚いフィルムは、より薄いフィルムを成形するようにプレスされ得、加熱後、延伸され得、そして所望の形状に引っ張られるか、または減圧によって型に吸い込まれる。
【0052】
骨および軟部組織が片面のみまたは両面に接着するフィルムを作製するために、フィルムは、加熱プレスされるかまたは溶媒(例えば、クロロホルム、アセトンまたは塩化メチレン)にキャストされるかのいずれかであり得、そして少なくとも部分的に硬化される。依然として粘着性ではあるが、生理活性セラミック粒子層は、所望の厚みまたは表面密度に適用され得る。好ましくは、非表面不動態化粒子が使用される。あるいは、予め作製されたフィルムの表面は軟化され得、そして粒子が適用され得る。
【0053】
可塑剤は、生理活性セラミック含有生分解性フィルムに組み込まれ得、それを軟化しかつ外形表面と直接接触することが望まれる適用に成形しやすくする。薄フィルムは、N-メチルピロリドン(NMP)、または水、エタノール、PEG-400、グリセロール、もしくは他の当該分野で公知の共溶媒のような共溶媒と混合され得る他の生体適合性溶媒の溶液中で、可塑化される。共溶媒は、ポリマーの完全な溶解を阻止することが必要とされる。フィルムは、所望の柔らかさ(すなわち、インプラント形状に容易に適合するのに十分な柔らかさ)まで、溶媒に浸される。
【0054】
Bioglass(登録商標)セラミックを含むように修飾された米国特許第5,716,413号およびPCT公報WO97/13533(本明細書中で参考として援用される)に開示されるような手で整形可能である材料、ならびに生理活性セラミックを含むように修飾された同時係属出願番号第08/196,970号(本明細書中で参考として援用される)に開示されるような生理活性剤の継続的円滑な放出を提供する材料もまた、本発明により提供される。
【0055】
生理活性セラミックの本明細書中で開示される生分解性ポリマー材料への組み込みは、好ましくは約10容量%と約70容量%との間の量であり、保存率またはヤング率の点で、生理学的条件下で測定される材料の機械的性質を向上させる。保存率は、Perkin Elmer 7 Series Thermal Analysis Systemでの3点屈曲を用いて、ポリマー製ウェーハの穿孔円形サンプルのカット棒において測定される。ヤング率は、およそ保存率に満たない桁であると本明細書中では考えられている。
【0056】
当該分野で公知であるように、インビボでの材料の寿命は、D,L-PLAまたはL-PLA含量、分子量および結晶化度を増加させることによって増大され得るか、または同一の因子を減少させることによって減少され得る。予期せぬことに、多孔質材料への生理活性セラミックの添加もまた、分子量を減少し得、それ故、分解期間を減少させ得ることが見出された。
【0057】
本発明のポリマー/生理活性セラミック組成物を作製するために、適切なポリマー製材料が、インプラント材料に望まれる分解時間に依存して選択される。このようなポリマー製材料の選択は、当該分野で公知である。例えば、PLAは長期の分解時間が所望される場合(例えば、約2年まで)に使用される。低い目標分子量(例えば、約20,000ダルトン)、50:50または55:45のPLA:PGAコポリマーは、約2週間の分解時間が所望される場合に使用される。選択された目標分子量を保証するため、分子量および組成物が、当該分野で公知のようにそして本明細書中で教示のように、ポリマー/生理活性セラミック組成物から形成されるインプラントの質量に依存して、変化され得る。
【0058】
PLAおよびPGAの分解が、インビボおよびインビトロの両方において、広範に研究されている。多数の要因が、PLA:PGAコポリマーの分解速度に影響する(例えば、分子量、共重合率、ポリマー結晶化度、熱過程、形状および空隙率、ならびに水和性)。さらに、解剖学的インプラント部位、血管分布、組織相互作用および患者の反応のような他の因子も、インビボ分解速度に影響を与える。上記の因子に依存して、PLAおよびPGAポリマーの分解時間は、50:50PLGの場合のたった7日間からPLAの場合の数年であると報告されている。全体の分解反応速度論は、ホモポリマーおよびコポリマーの全体の群について、かなり良好に確立されている。以下の表1は、コポリマーの分解速度の知見を要約する。この表は多くの研究の編集物であるので、広範な分解の範囲は、利用された異なる実験変数およびパラメータを反映している。
【0059】
【表1】
【0060】
本発明のインプラント材料は約38℃を超える、例えば約38℃と約50との間の、ガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。出願人らによって、生理活性セラミックの組み込みは多孔性複合材料のガラス転移温度を低下させることが発見された。
【0061】
生理活性セラミックは、米国特許出願第60/032,085号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるようなポリマー製フィルムに添加され得る。
【0062】
以下の実施例は、本発明の実施態様を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図されない。当業者は、多数の異なるポリマー、試薬、生理活性セラミック、および加工条件が、同等の結果を与えるために、特定の例示されたものと置き換えられ得、これらの全てがこの請求の範囲内に包含されることが意図されることを理解する。
【実施例】
【0063】
実施例1.Bioglass(登録商標)セラミックを含まない多孔質ポリマーウェーハの作製方法
分子量80,000D、クロロホルム中で約0.6〜約0.75の固有粘度のPLA/PGA(75:25)ポリマーを5g、Teflonビーカーへと秤量した。3/4インチのTeflon皮膜磁性スターラーバーをビーカーに入れ、そしてビーカーを磁性攪拌プレートにおいた。30mlのアセトンを加え、そして混合物を、20分間(攪拌プレートで8に設定した)攪拌して、ポリマーを完全に溶解した。ポリマーを30mlのエタノールを加え、そして約20秒間攪拌する(攪拌プレートで3に設定した)ことによって沈澱させて、ポリマーゲル塊を凝集させた。
【0064】
次いで、上清液体をデカントし、そしてゲル塊を作業表面として使用されるTeflonプレートに戻した。攪拌バーを、Teflonポリスマンを使用して塊から分離して、可能な限り多くのポリマーを回収した。過剰の液体を、ポリマーに触らないように注意して、Kimwipe吸い取り紙を用いて吸い取った。次いで、ポリマーの塊を巻き、そして丸いTeflonストックの棒(直径約3/4インチ)を用いて薄いシート(1±0.1mm厚)へと平坦化した。
【0065】
次いで、ポリマーを有するTeflonプレートを、真空デシケーターに入れ、そして、KNF往復ダイアフラム真空ポンプを用いて、ポリマーの塊が溶媒が除去されるにつれ、膨れ(blister)、そして泡立つ(bubbly)まで、真空を数分間(2〜4.5分間)を適用した。真空を解き、そしてポリマーを有するTeflonプレートをデシケーターから取り出した。ゴム手袋を用いて、ポリマーゲルを手で巻き取って、ボール状にし、そして材料が軟らかくかつ伸展性になるまで、親指および人差し指を用いて練った。このプロセスの間、少量の残留溶媒が放出され、そしてポリマーは若干湿ったように感じられた。練ることを、液体がもはや明らかでなくなるまで継続した。次いで、ゲルをTeflon棒を用いて、そしてこの時点でポリマーは非常に粘着性でそして接触に際して容易にそれに接着するのでポリマーが棒に巻きつかないように注意しながら展ばして薄いシートにした。
【0066】
次いで、ポリマーを再び、デシケーターの中に入れ、そして、ゲルが膨張し、そしてマトリクス全体に分散した多くの細かな泡を有して、「泡状」に見えるようになるまで、真空をさらに数分間(2〜4.5分間)を適用した。ポリマーを真空から取り出し、そして再び以前のようにそれが軟らかくかつ伸展性となり、そして綿菓子のつやおよび「繻子」の外観を呈するまで練った。この時点でポリマーゲルの質量を記録する。
【0067】
次いで、ポリマーゲルを5つの等しい小片に分け、そしてこの小片を、型(mold)のウェルに嵌るように成型した。型は、ウェーハ形状で、約20mm×40mm×3mmであり、そして約3mmから10mmの間隔で直径0.7mmを有する孔で穿孔処理されていた。型のウェルに嵌るように各小片を、表面が均一でありかつ薄いスポットさえも有さないように平らになるように、そして材料が型の端から端を満たすように注意して成型した。次いで、型(蓋なし)をデシケーターに入れ、そして真空(100mTorr)を2分間適用した。次いで、型をデシケーターから取り出し、そしてウェーハの上部を、膨張したポリマーが完全には圧縮されないように平坦化した。次いで、型の上部プレートを適切なナットおよびボルトを用いて固定した。
【0068】
次いで、型を、60℃〜65℃で50mTorr未満の真空下で24〜48時間真空オーブンに入れた。軟骨相材料、すなわち、軟骨の機械的特性を有するウェーハのために、真空オーブン処理をさらに24時間同じ温度で継続した。硬化後、ポリマーは溶媒を実質的に有さなかった。
【0069】
得られたポリマー軟骨相ウェーハは、空隙率において均一であり、約100μmの平均孔サイズおよび約65容量%の空隙百分率(percent porosity)を有した。それらは、可撓性であり、そして、手の中で、ほぼ体温にまで若干暖めた場合、容易に手で成型可能であった。
【0070】
得られたポリマー性骨相ウェーハもまた、空隙率において均一であり、約150μmの平均孔サイズおよび約70容量%の空隙百分率を有した。これらは、室温で軟骨相ウェーハほどは可撓性ではなかったが、これらは体温では手で成型可能であった。
【0071】
実施例2.十分に密な、Bioglass(登録商標)セラミック/PLG複合材の作製方法
選択したポリマー(75/25PLG)をブレンダー中で粉砕し、そして<20メッシュ(<850μm)の粒子サイズでふるいにかけた。次いで、材料をブレンダーのステンレス鋼ボウル中に秤量し、そして適切な量のBioglass(登録商標)セラミックを加えて10容量%のBioglass(登録商標)セラミック組成物を提供した。重量比に対する相対容量比を決定するために、以下の等式を用いた:
【0072】
【数1】
【0073】
ここで、
fv =Bioglass(登録商標)セラミックの容量比
x =Bioglass(登録商標)セラミックの重量比
ρBG =Bioglass(登録商標)セラミックの密度
ρPLG =PLGの密度
次いで、ブレンダーを3または4回手短にパルスして、2つの材料を完全に合わせた。この時点では過剰の混合を避けて、仕上がり生成物の変色をもたらす、ブレンダーボウルの表面の磨り減りを予防する。
【0074】
次いで、合わせた材料を圧縮シリンダーに移した(このシリンダーの圧盤は、アルミニウムホイルディスクで裏打ちされている)。次いで、組み立てたシリンダー(ピストンを適所に有する)をCarver加熱プレスに移した。加熱圧盤をパワーレベル「1」に調整し、約240゜F(約115℃)の表面温度を生成した。20,000ポンド(約5000psi)の負荷をかけ、そして型を、シリンダーの外表面で測定される温度を85〜95℃にさせた。
【0075】
一旦温度に達したら、負荷を20,000ポンドに再調整し、圧盤のパワーを切り、そして冷却水を適用した。温度を、プレスから除去する前に40℃未満に下降させた。次いで、この部分を取り出し、そしてアルミニウムホイルディスクを取り出した。
【0076】
このプロセスを反復して、20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含む複合材料を作製した。
【0077】
以上の工程を55/45PLGを用いて反復した。
【0078】
実施例3.Bioglass(登録商標)セラミック濃度の研究
本発明の多孔質ポリラクチド−コ−グリコリド/Bioglass(登録商標)セラミック複合材に取り込まれるべきBioglass(登録商標)セラミックの最大量を決定する実験を行った。
【0079】
70%の目標空隙率(target porosity)を有するウェーハ20×40×3mmウェーハを55/45D,L−PLG(45%のポリグリコール酸と共重合した55%ポリ−d,l−乳酸)を用いて、実施例1に記載される手順に従って、30、40、および50容量%Bioglass(登録商標)セラミックを添加することによって改変して、製造した。ポリマーは、0.85の固有粘度を有するBirmingham Polymer,Inc.、ロット番号D96012 55/45 D−PLGであった。Bioglass(登録商標)セラミックは、走査型電子顕微鏡およびレーザ光散乱技術によって決定される場合53〜38μmの平均粒子サイズを有する45S5 Bioglass(登録商標)粉末であった。使用した溶媒は、Fisher Optima GradeのアセトンおよびQuantumの100%無水エタノールであった。
【0080】
示差走査熱量計(DSC):ガラス転移温度を決定するため、示差走査熱量分析を10℃/分の速度で−5℃〜250℃の第一のラン、および10℃/分の速度で−5℃〜100℃の第二のランを用いて、Mettler DSC 12−Eを使用して行った。分析について、種々のサンプルのラン2からのガラス転移(Tg)開始を、各組成物について比較した。Bioglass(登録商標)セラミックの量がサンプル中で増加するにつれ、Tgは下降した。この結果は、ラン2のTg開始が、55/45 PLG中で30容量%のBioglass(登録商標)セラミックについての39.0℃から、40容量%のBioglass(登録商標)セラミックについて36.4%にまでに下降したことを示す。これらの結果は、Tgの下降が分子量の減少に関連していることを示すようである。50容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含む組成物のDSCの結果は、おそらく多量のBioglass(登録商標)セラミックに起因して、プロット上では認識可能な発熱ピーク/吸熱ピークを示さなかった。
【0081】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
ポリマーウェーハの分子量を決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いて、0.80ml/分の流速で行った。50μlをTosoH TSK−GEL 4000+3000カラムへ、10.820mg/mlの濃度で、25℃のカラムおよび検出器温度を用いて注入した。データは、分子量(Mw)の有意な減少が存在したことを示す。30容量%のBioglass(登録商標)セラミック組成物は、Mwにおいて3.5倍減少し、40容量%組成物は、4.2分倍減少し、そして50容量%組成物は、8.8分倍減少した。
【0082】
ガスクロマトグラフィー
残留アセトンおよびエタノールのレベルを決定するために、ガスクロマトグラフィーを、Hewlett Packard 6890を用いて、そして窒素をキャリアガスとして用いるFIDプロトコルを実行して行った。結果は、PLG Plus Bioglass(登録商標)ウェーハについての残留アセトンレベルが100ppmの検出限界未満であったことを示す。
【0083】
これらの結果は、40容量%Bioglass(登録商標)セラミックまでを含む組成物が、ポリマーに良好なウェーハ成績(resulting)を加え得たことを示した。50容量%Bioglass(登録商標)セラミックのポリマーへの添加は、練ることが困難で、型に充分に膨張せず、そしてむらのある空隙性を有するウェアをもたらした。Bioglass(登録商標)セラミックは、分子量および同時に多孔質インプラント材料におけるそのTgを減少させる。
【0084】
実施例4.プロセス工程の順序
Bioglass(登録商標)セラミックをポリマー加工の種々の段階で加えることの効果を決定する実験を行った。
【0085】
70%の目標空隙率を有するウェーハ20×40×3mmを、Birmingham Polymers、Inc.(ロット D96012)からの、0.85の固有粘度、分子量(原料の(raw)ポリマー)約72,233、および上記の実施例2のラン2に示す条件下で測定されるガラス転移温度が約43.0℃を有する55/45 D,L−PLGを用いて作製した。使用したBioglass(登録商標)セラミックは、走査電子顕微鏡法およびレーザ光散乱法によって決定される場合、90〜53μmのおよその粒子サイズを有する45S5 Bioglass(登録商標)粉末であった。Bioglass(登録商標)セラミックを加えて、20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含むポリマー/Bioglass(登録商標)セラミック組成物を形成させた。
【0086】
使用した溶媒および手順は、Bioglass(登録商標)セラミックを以下の手順の異なる点において加えたことを除き、実施例2に記載のとおりであった:
グループA:溶解の開始時にBioglass(登録商標)セラミックを加えた(PLGおよびアセトン中にBioglass(登録商標)セラミックを混合する)。
グループB:沈澱の前に溶解したポリマー溶液にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
グループC:第一の真空工程の前に沈澱した塊にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
グループD:第二の真空工程の前に沈澱した塊にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
グループE:第三の真空工程の前に沈澱した塊にBioglass(登録商標)セラミックを加えた。
【0087】
Bioglass(登録商標)セラミックのポリマーへの添加は、5つすべての処理グループについて成功した。以前およびこの実験におけるように、沈澱したポリマー塊(グループC、D、およびE)にBioglass(登録商標)セラミックを加える場合、ポリマー塊が練っている間に乾燥し、そして破壊する場合に生じるBioglass(登録商標)セラミックの、わずかなおそらく有意ではない欠失が存在した。反対に、グループAおよびグループBについて、Bioglass(登録商標)セラミックはポリマー/アセトン混合物中に容易に分散し、これは、沈澱したポリマー塊のより容易な運搬(transfer)をもたらし、そしてポリマーへのBioglass(登録商標)セラミックの100%の取り込みを確実にした。
【0088】
処理後、ポリマーウェーハを、50℃で4日間(型中に2日間およびペトリ皿中に2日間)真空中において、充分な時間、残留溶媒を除去させた。残留溶媒含量を確認し、そして加工したMw、Tgを測定するために、GC,DSC,およびHPLCを各処理グループからの1つのサンプルにおいて実行した。
【0089】
以下の標準的な品質管理試験を、各処理グループから1つのサンプルにおいて実行した:
GC:1処理グループあたり1つのサンプルで実行して、受容可能な(100ppm未満)残留溶媒レベルを確認する。
HPLC:1処理グループあたり1つのサンプルで実行して、加工したサンプルのMwを決定する。
DSC:1処理グループあたり1つのサンプルで実行して、加工したサンプルのTgを決定する。
【0090】
示差走査熱量計:ガラス転移温度を決定するため、示差走査熱量測定(DSC)を10℃/分の速度で−5℃〜250℃の第一のラン、および10℃/分の速度で−5℃〜100℃の第二のランを用いて、Mettler DSC 12−Eを使用して行った。分析については、種々のサンプルのラン2からのTg開始を、各処理グループについて比較した(表2)。全体として、5つのグループのラン2の平均Tg開始は40.0±0.5℃であった。ラン2のTg開始の一方向ANOVA(p<0.05の有意レベル)は、0.28のp値をもたらし、これは、5つの処理グループのラン2のTg開始の間に統計学的に有意な差異が存在しないことを示す。
【0091】
高速液体クロマトグラフィー:ポリマーウェーハの分子量を決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いて、0.80ml/分の流速で行った。50μlをTosoH TSK−GEL 4000+3000カラムへ、10.820mg/mlの濃度で、25℃のカラムおよび検出器温度を用いて注入した。5つの処理グループについてのMw値は、61,000から69,900Daに及んだ。表3は、各グループについての値を示す。ここで、全体の平均Mwは、64,650±3044Daである。一方向ANOVA(p<0.05の有意レベル)は、0.08のp値をもたらし、これは、処理グループのMwの間に統計学的に有意な差異が存在しないことを示す。
【0092】
ガスクロマトグラフィー:残留アセトンおよびエタノールのレベルを決定するために、ガスクロマトグラフィーを、Hewlett Packard 6890を用いて、そして窒素をキャリアガスとして用いるFIDプロトコルを実行して行った。結果は、これらのグループがいずれも残留エタノールを全く含んでいなかったことを示す。グループA、B、およびCは、検出可能な残留アセトンを含んでいなかったが、グループCおよびグループDは、100ppm未満のアセトンを含んでいた。これは、種々の工程でのBioglass(登録商標)セラミックの添加が、残留アセトンおよびエタノールの損失に影響しないことを示す。
【0093】
これらの結果は、ポリラクチド−コ−グリコリドウェーハの製造における種々の工程でのBioglass(登録商標)セラミックの添加が、ウェーハの化学特性を有意には変更しないことを示す。Bioglass(登録商標)セラミックのポリマーへの添加は、5つすべてのグループについて、受容可能なウェーハをもたらす。統計学的な分析は、ポリマー加工における異なる点におけるBioglass(登録商標)セラミックの添加にもかかわらずラン2についてTg開始または5つのグループにおけるMwが有意に変化しないことを示す。
【0094】
種々の処理グループにおいてウェーハの化学特性において有意な変更が存在しないので、機械的試験は行わなかった。
【0095】
実施例5. 多孔性Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の機械的特性、分子量およびガラス転移温度
ウェーハを、以下を使用して実施例2のように作製した:(A)BPIからの55/45 D,L-PLG、これは約72,233の分子量、約0.85の固有粘度(HFIP 30℃)および約43℃のガラス転移温度を有し、そして5、10および20容量%のBioglass(登録商標)Mセラミック(45S粉末、これは走査電子顕微鏡およびレーザー光散乱技術によって決定されたようなほぼ90〜53μmの粒子サイズを有する)を有する;(B)65/35 D,L-PLG、これは約77,400の分子量、0.86の固有粘度(HFIP 30℃)および約41.9℃のガラス転移温度を有し、そして5、10および20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを有する;および(C)75/25 D,L-PLG、これは約90,300の分子量、約0.76の固有粘度(クロロ、25℃)および約48.4℃のガラス転移温度を有し、そして5、10および20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを有する。20×40×3mmおよび60×60×3mmのウェーハは、70%の目標空隙率で作製された。作成後、ウェーハは50℃で4日間真空下に置かれ(型に2日間およびペトリ皿に2日間)、十分な時間残留溶媒を除去した。
【0096】
ウェーハは視覚的に検査され、作製の成功を判断し、そして以下の標準品質コントロール試験を実行した:
GC:1つのサンプルを1処理グループ当たり20×40×3mmウェーハおよび60×60×3mmウェーハから実行し、受容可能な残留溶媒レベル(100ppm未満)を確認した;
HPLC:1つのサンプルを1処理グループ当たりで実行し、加工したサンプルのMwを決定した。
【0097】
DSC:1つのサンプルを1処理グループ当たりで実行し、加工したサンプルのTgを決定した。
【0098】
DMA:4×3×20mmの寸法(幅、高さ、長さ)を有する2つの20×40×3mmのウェーハの末端領域からの1つのバーおよび中央領域からの1つのバーを、メスを使用してDMA試験のために注意深く切断した。4つのバーは2つの20×40×3mmウェーハでランされた。3点曲げ試験を0〜70℃の乾燥材料を使用して実行した。データをプロットして貯蔵弾性率および損失弾性率の両方を示した。
【0099】
空隙率:孔サイズ分布および空隙率を水銀侵入空隙率測定(mercury intrusion porosimetry)を用いて決定した。
【0100】
pH変化:pHの変化を経時的に測定した。
【0101】
処理グループは以下の通りである:
1.コントロールA:100%PLG(55/45 DL)
2.グループA1:PLG(55/45 DL) + 5v/% Bioglass(登録商標)セラミック
3.グループA2:PLG(55/45 DL) + 10v/% Bioglass(登録商標)セラミック
4.グループA3:PLG(55/45 DL) + 20v/% Bioglass(登録商標)セラミック
5.コントロールB:100%PLG(65/35 DL)
6.グループB1:PLG(65/35 DL) + 5v/% Bioglass(登録商標)セラミック
7.グループB2:PLG(65/35 DL) + 10v/% Bioglass(登録商標)セラミック
8.グループB3:PLG(65/35 DL) + 20v/% Bioglass(登録商標)セラミック
9.コントロールC:100%PLG(75/25 DL)
10.グループC1:PLG(75/25 DL) + 5v/% Bioglass(登録商標)セラミック
11.グループC2:PLG(75/25 DL) + 10v/% Bioglass(登録商標)セラミック
12.グループC3:PLG(75/25 DL) + 20v/% Bioglass(登録商標)セラミック
結果を図1〜3に示す。
【0102】
機械的試験:動的機械的分析(DMA)をPerkin Elmer 7 Series Thermal Analysis System上で3点曲げを用いてポリマーウェーハの切断したバーで行った。ウェーハ中央および末端領域からのバーを上記のように試験した。このバーを5℃/分の速度で0〜70℃まで曝した。保存および損失弾性率を測定し、そしてプロットした。これらの弾性率対温度のプロットから、最大貯蔵弾性率、37℃での貯蔵弾性率、最大損失弾性率での温度、および貯蔵弾性率の50%低下での温度を決定した。
【0103】
データを表にし、そして統計学的分析を実行して、2つの領域(末端および中央)の37℃での貯蔵弾性率と各ポリマーグループ内の4つの処理物(Bioglass(登録商標)セラミックの0、5、10および20v/%の添加)との間の任意に有意な差異があるか否かを、決定した。分散の2方向分析(具体的にはTukey全ペア複数比較試験(all pairwise multiple comparison test)(<0.05のp-値を有意とみなした)を利用した。中央領域および末端領域からの37℃での貯蔵弾性率は、任意の3つのポリマーグループ(55/45についてp=0.59、65/35についてp=0.25、75/25についてp=0.12)について有意差を示さなかった。末端領域と中央領域との間で有意差が見出せ得ないので、各処理グループについてのDMAの結果は、一緒に分類された。各ポリマーグループ(A、B、C)について、Bioglass(登録商標)セラミック含量が増加するにつれて、最大貯蔵弾性率および37℃での貯蔵弾性率における顕著な増加が存在した。これらの弾性率の増加は、グループAにおいて最も大きく、グループCにおいて最も小さな増加を有した。
【0104】
この実験のグループAおよびBは、この実験についての90〜53μmの範囲の粒子サイズのBioglass(登録商標)と比較して、53〜38μmの範囲の粒子サイズのBioglass(登録商標)を使用して、実施例2の値と比較した。8つのグループを比較して、より小さな粒子サイズを有する2つのグループのみが、最大貯蔵弾性率および37℃での貯蔵弾性率についてより大きな値を有した。また、より小さな粒子サイズを有する1つのグループのみが、より大きな粒子サイズを有する同様のグループより最大損失弾性率でのより高い温度および50%貯蔵弾性率でのより高い温度を有し、そしてより小さい粒子サイズを有する1つのグループは、最大損失弾性率でのより高い温度を有した。これらの結果は、より大きな粒子サイズを有する添加Bioglass(登録商標)セラミックが、より小さい粒子サイズのBioglass(登録商標)セラミックよりもウェーハの機械的特性により意味深い効果を有することを示す。
【0105】
示差走査熱量測定:
ガラス転移温度を決定するために、示差走査熱量測定(DSC)をMettler DSC 12-Eを用いて10℃/分の速度で-50〜250℃までの1番目のランおよび10℃/分の速度での-5℃〜100℃の2番目のランで行った。分析において、ラン2の種々のサンプルからのTg開始を各処理グループと比較した。グループA3、B3およびC3(20v/%のBioglass(登録商標)セラミック)は、それぞれコントロールグループから4.3°、4.9°、および5.8°のラン2のTg開始の減少を生じた。結果はまた、ラン2のTg開始において温度の減少がウェーハ中のBioglass(登録商標)セラミックの増加量に比例することを示した。この傾向の例外は処理グループB1のみであった。
【0106】
高速液体クロマトグラフィー:
ポリマーウェーハの分子量を決定するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を0.80ml/分の流速で、溶媒としてテトラヒドラフラン(THF)を用いて行った。50μlをTosoH TSK-GEL 4000+3000カラムに、10.820mg/mlの濃度で、25℃のカラムおよび検出器温度で注入した。ウェーハ中のBioglass(登録商標)セラミックの増加した添加は全グループについて10〜15%の分子量の減少を生じた。これらの結果は、ウェーハに添加したBioglass(登録商標)セラミックの増加した量が、分子量の減少に比例することを示す。
【0107】
ガスクロマトグラフィー:残留アセトンおよびエタノールレベルを決定するために、ガスクロマトグラフィーをHewlett Packard 6890を用いて、そしてキャリアガスとして窒素を用いてFDIプロトコルを行って実行した。グループCおよびグループA1の全てにおける100ppmより大きなアセトンレベルが、試験期間で検出された。他のグループの全ては検出されないかまたは残留アセトンについて100ppm未満のレベルのいずれかを有した。100ppmより大きな残留エタノールはコントロールグループCおよびグループC3において検出された。他の全てのグループは残留エタノールの量を検出できなかった。
【0108】
ウェーハに添加したBioglass(登録商標)セラミックの量が増加するにつれて、DMAバーの貯蔵弾性率は増加し、そしてポリマーの分子量が減少する。55/45ポリマーグループは最も大きい貯蔵弾性率の増加およびコントロール値からのラン2のTg開始の最も小さい低下を示した。DMAデータはウェーハの末端領域および中央領域からの試験済みのバーに有意な差異は示さなかった。本実験で使用されるより大きな粒子サイズを有するBioglass(登録商標)セラミックはまた、より小さな粒子サイズを有するBioglass(登録商標)セラミックと比較して貯蔵弾性率のより大きな増加を生じる。
実施例6. 十分に密なBioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材の機械的特性
実施例2で調製された複合材料を、生理学的条件(すなわち37℃で湿潤)で試験することを除いて、実施例5に記載の3点曲げ試験を用いて試験した。温度を1Hzおよび0.05%のひずみにおいて15〜50℃の範囲にし、そして平均の曲がりはじめる温度(ガラス転移温度)を記述した。結果を図5および6に示す。
【0109】
材料の分子量を表2に記述した。
【0110】
【表2】
【0111】
次いで曲げ試験を37℃で乾燥状態においてこれらの材料上で行った。結果を図7に示す。これらの結果は湿潤条件で試験した場合、貯蔵弾性率が劇的な降下を示した。55/45材料の弾性率は減少するか、または10容量%および20容量%のBioglass(登録商標)セラミックで同じままであるが、75/25材料の弾性率はBioglass(登録商標)セラミックの添加を伴って減少する。乾燥状態で試験した場合、これらの十分に密な材料の貯蔵弾性率はBioglass(登録商標)セラミック含量が増加するにつれて予想したように振舞う。湿潤材料における貯蔵弾性率のこの減少は、水とBioglass(登録商標)セラミック表面の反応のためであると考えられ、この反応はBioglass(登録商標)粒子とポリマーとの間の界面の欠陥から起こり、そして全体の剛性の減少から生じる。
【0112】
実施例7. Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材の機械的特性を増加する方法
A.複合材料を、ポリマーにBioglass(登録商標)セラミックを添加する前に、Bioglass(登録商標)粒子を生理的緩衝化溶液に浸漬し、未反応の不動態化表面を形成することを除いて、実施例1および2の手順に従って作製する。
【0113】
この材料を試験する場合、材料を湿潤することを除いて、実施例5に記載のように試験した。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材における増加した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0114】
B.複合材料を、シランカップリング剤をBioglass(登録商標)セラミックを有するポリマーに添加することを除いて、実施例1および2の手順に従って作製する。この材料を、試験する場合、材料を湿潤することを除いて、実施例5に記載されるように試験する。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材の増大した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0115】
C.複合材料を、ポリマーにBioglass(登録商標)セラミックを添加する前に、ポリマーで予備処理することを除いて、実施例1および2の手順に従って作製する。少量のポリマーを溶媒に溶解し、そしてBioglass(登録商標)セラミックを溶媒に分散する。Bioglass(登録商標)セラミックは、次いで、空気乾燥するか、または流動床で乾燥するか、または噴霧乾燥機で乾燥し、続いて、凝集体を細かく破壊する。ここでポリマーでコーティングされたBioglass(登録商標)粒子を、次いで、追加のポリマーと混合して複合材を形成する。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材における増加した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0116】
材料を、試験した場合、材料を湿潤することを除いて実施例5で記載のように試験する。Bioglass(登録商標)セラミック含有複合材における増加した機械的特性を示す比較結果を達成する。
【0117】
実施例8. Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材のpH
20×40×3mmのサイズのウェーハを75/25D,L-PLG単独、または20容量%のBioglass(登録商標)セラミック、炭酸カルシウムもしくは炭酸水素ナトリウムとともに用いて実施例1の手順を使用して作製した。残留溶媒を60〜65℃で少なくとも72時間真空オーブン中に置くことによって完全に除去した。ウェーハを、約10×10×3mmのサンプルに切断し、そして0.01%のチメロサールを含む約40mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に入れた。添加物を含まないコントロールグループにおけるサンプルは、37日の期間にわたって7.33から7.38へのpHの増加を示した。Bioglass(登録商標)セラミックを含むグループのサンプルは同じ期間にわたって8.24から8.86への増加を示した。炭酸カルシウムを含むグループにおけるサンプルは34日の期間にわたって8.50から8.8への増加を示した。炭酸ナトリウムを含むグループにおけるサンプルは37日の期間にわたって7.39から8.61への増加を示した。コントロールサンプルおよび炭酸水素ナトリウムを含むサンプルはその期間にわたってサイズがわずかに減少し、一方Bioglass(登録商標)セラミックおよび炭酸カルシウムを含むサンプルは試験期間にわたってサイズがわずかに増加した。
実施例9. Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の表面反応性
複合材の表面反応特性を特徴付けるために、実施例1に記載のようなBioglass(登録商標)を5、10および20容量%含む55/45D,L-PLGの試験片を、37℃で0.1cm-1の表面積対容積比で8週間までの間、擬似体液(SBF)中で懸濁した。種々の反応時間の終わりに、サンプルを取りだし、そして表面反応性をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)により決定した。8週間において、20容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含む複合材のみがアパタイト層の形成を示し、これは骨との密接な相互作用を促進する。結果を図4に示す。表面反応性特性は、Bioglass(登録商標)セラミックのタイプおよび濃度の変化によって所望の組織に合わせられ得る。
【0118】
実施例10.
実施例2の複合材料を、40容量%のBioglass(登録商標)セラミックを含ませて作製した。このBioglass(登録商標)セラミックは、1.0リットルのリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)に6.0グラムのBioglass(登録商標)セラミックを添加し、そして37℃で24時間緩やかに攪拌することによって、水と予備反応することにより表面を不動態化した。この溶液を濾過して材料を回収し、脱イオン水でリンスし、そして最後にアセトンでリンスした。次いで、回収したBioglass(登録商標)セラミックを真空下65℃で2日間乾燥した。回収率は約75%であった。表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー複合材をBioglass(登録商標)セラミックを含まないコントロールおよび非表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミックを用いて作製した同じ複合材に対して37℃湿潤で機械的特性(ヤング率)について試験した。この結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
これらの試験は、生理活性のセラミックを含む生理学的条件(湿潤、37℃)下で皮質性の骨と同様の機械的特性を有する複合材料が、生理活性セラミックで予備反応することによって作製され、アパタイト様の表面不動態化層を形成し得ることを示す。
【0121】
実施例11.
55/45DL PLGおよび75/25DL PLGポリマーにBioglass(登録商標)セラミックの量およびタイプを変化して添加する結果として圧縮剛性の改良が試験された。
【0122】
研究されたポリマーは55/45DL PLG、IV=0.83、および75/25DL PLG、IV=0.76(Boehringer Ingelheim、Germany)であった。使用したガラスは45S5(53〜90μm)、58S ゾル−ゲル(38〜90μm)、および45S5-PR(53〜90μm)Bioglass(登録商標)セラミック製品(USBiomaterials、Alachua、FL)であった。45S5-PRを実施例10に記載のように表面を不動態化することによって45S5Bioglass(登録商標)セラミックから作製した。
【0123】
ポリマーを製造者から粉末として受領した。それは簡単にミクロ製粉機で製粉され、次いで≦850μm(20メッシュ)までふるいにかけられた。複合材料をミクロ製粉機中でポリマーとガラスを合わせ、円筒(cylindrical)プレス型にその粉末を移し、そして型の外表面が85〜95℃の温度に達するまで熱しながら20kpsiでプレスして調製した。直径6mm×高さ4mmの試験クーポン(coupon)を穿孔機およびダイスで合わせられた手動プレスを用いて穿孔した。
【0124】
材料を試験するために、サンプルを37℃で1〜2時間脱イオン水で前もって調整した。次いで、これらは37℃に維持された温度制御水浴を備えたInstron model 5545の試験圧盤に取りつけた。このサンプルを50%のひずみを達成するまで10%/分のひずみ速度で圧縮した。次いで、ヤング率を応力-ひずみダイヤグラムの傾きから決定した。
【0125】
結果を図9および10に示す。グラフは75/25材料が55/45材料より明らかに剛性であることを示す。これはより高いガラス転移温度およびこのポリマーのより高い疎水性のためである。圧縮弾性率は20容量%の2つのガラスの添加を含む55/45ポリマーに対して2倍以上である。75/25ポリマーについて増加は、58S ゾル−ゲルガラスについてのみ明らかであるが、45S5組成物の弾性率は実際には減少した。40%ガラスでは58S ゾル−ゲル材料は、55/45材料についてのみ剛性の増加が明らかに起こるが、45S5材料は剛性の減少を再び生じる。60%では材料は脆化および軟化し、そして生じた弾性率は非常に低い。弾性率は、全てのレベルで非不動態化45S5と比較された両方のポリマーを含む、表面不動態化45S5-PRを使用して同様に増加または維持され、40%で最大増加を示した。明らかな分子量の変化は加工の機能として認められなかった。
【0126】
変更は、添付の請求の範囲により規定されるような本発明の範囲から外れることなく本明細書中で示され、そして記載された本発明の実施態様においてなされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、55/45、65/35および75/25PLGを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の分子量の低下を、5容量パーセントから20容量パーセントまで上昇するBioglass(登録商標)セラミック濃度の関数として示す。
【図2】図2は、乾燥下で試験された、55/45、65/35および75/25PLGを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物のガラス転移温度の低下を、5容量パーセントから20容量パーセントまで上昇するBioglass(登録商標)セラミック濃度の関数として示す。
【図3】図3は、55/45、65/35および75/25PLGを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物の機械的特性(37℃、乾燥下での貯蔵弾性率)の変化を、5容量パーセントから20容量パーセントまで上昇するBioglass(登録商標)セラミック濃度の関数として示す。
【図4】図4は、55/45PLGおよび20容量パーセントのBioglass(登録商標)セラミックを含む多孔質Bioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物を疑似体液(SBF)中に6週間懸濁した後のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)の結果を示し、これはアパタイト層の形成を示す。
【図5】図5は、湿潤下で試験された、55/45および75/25PLG、ならびに0、10および20容量パーセントのBioglass(登録商標)セラミックとを含む十分に密なポリマー組成物中のBioglass(登録商標)セラミック含量の結果としてのガラス転移温度の変化を示す。
【図6】図6は、55/45および75/25PLGならびに0、10および20容量パーセントの非表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミックとを含む十分に密なBioglass(登録商標)セラミック/ポリマー組成物中の、37℃、湿潤下での機械的特性(貯蔵弾性率)の変化を示す。
【図7】図7は、37℃、生理学的(湿潤)条件下での機械的特性(ヤング率)の試験と、非表面不動態化Bioglass(登録商標)セラミックを含む乾燥材料上で行われた同じ試験との比較である。色の濃い方の棒は湿潤試験結果を示し、そして薄い方の棒は乾燥試験結果を示す。
【図8】図8は、75/25PLG、水と予備反応させることによって表面不動態化させた40容量パーセントのBioglass(登録商標)セラミックを含む75/25PLG、および表面不動態化させていない同じ複合材を用いる、37℃、生理学的(湿潤)条件下での機械的特性(ヤング率)の試験を比較する。
【図9】図9は、種々の割合およびタイプのBioglass(登録商標)セラミックおよび55/45DL PLGを用いて作製された複合ポリマーの圧縮弾性率を比較する。
【図10】図10は、種々の割合およびタイプのBioglass(登録商標)セラミックおよび75/25DL PLGを用いて作製された複合ポリマーの圧縮弾性率を比較する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるような、インプラント材料。
【請求項1】
本願明細書に記載されるような、インプラント材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−301382(P2007−301382A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160779(P2007−160779)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【分割の表示】特願平10−544187の分割
【原出願日】平成10年4月13日(1998.4.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507202932)ユーエスバイオマテリアルズ コーポレイション (1)
【出願人】(505316358)オステオバイオロジックス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【分割の表示】特願平10−544187の分割
【原出願日】平成10年4月13日(1998.4.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507202932)ユーエスバイオマテリアルズ コーポレイション (1)
【出願人】(505316358)オステオバイオロジックス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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