説明

産業用車両における表示装置

【課題】総稼動時間と総走行距離については、特別なボタン操作などをすることなく確認し得る産業用車両における表示装置を提供する。
【解決手段】フォークリフトの表示パネルに設けられて車両の稼動状態を表示し得る稼動状態表示部4を有する表示装置であって、走行距離計測器8からの総走行距離及び時間計測器7からの総稼動時間のいずれかを稼動状態表示部に出力し得る表示切替手段6を有し、この表示切替手段において、車両のメインスイッチがオン状態になったときのオン信号を入力すると、走行距離計測器からの総走行距離を稼動状態表示部に出力させるとともに、エンジンを駆動させた際に、メインスイッチのオン状態によるオン信号及びエンジン11により駆動される発電機12の作動信号を入力すると、時間計測器からの総稼動時間を稼動状態表示部に出力させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用車両における表示装置に関するもので、少なくとも総稼働時間および総走行距離を表示し得る表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトなどの産業用車両においては、その稼動状態を知るために、種々のメータ類が表示パネルに設けられている。
これらメータ類の中でも、保守点検のために需要なものとして、総稼動時間および総走行距離(積算距離)があり、これらに関しては、通常、いずれかを表示するようにされている。
【0003】
従来、これらの表示を切り替える際に、例えば総稼動時間が表示されている状態で、切替スイッチを操作したときに、総走行距離が表示されるようにされていたり、また総稼動時間が表示されている状態で、さらに運転者が所定のボタン操作を実行したときに、総走行距離が表示されるようにされていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−121990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したように、総稼動時間が表示されている状態で総走行距離を見たい場合には、切替スイッチまたは他のボタン操作を必要とするため、その操作が煩わしい場合があり、また切替スイッチを別途設ける場合には、設置スペースなどを考慮する必要が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、総稼動時間と総走行距離については、切替スイッチを設けることなく、また特別なボタン操作などをすることなく視認し得る産業用車両における表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の産業用車両における表示装置は、産業用車両の車両本体に設けられて少なくとも当該車両の稼動状態を表示し得る稼動状態表示部を有する表示装置であって、
走行距離計測器にて計測された総走行距離および時間計測器にて計測された総稼動時間のいずれかを稼動状態表示部に出力し得る表示切替手段を有し、
且つ上記表示切替手段において、
車両本体のメインスイッチがオン状態になったときのオン信号を入力すると、走行距離計測器からの総走行距離を稼動状態表示部に出力させるとともに、
エンジンを駆動させた際に、メインスイッチのオン状態によるオン信号およびエンジンにより駆動される発電機の作動信号を入力すると、時間計測器からの総稼動時間を稼動状態表示部に出力させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によると、総稼動時間および総走行距離のいずれかに切り替える際に、切替スイッチまたは他のボタンなどを操作することなく、すなわち車両のメインスイッチを操作するだけで、総稼動時間および総走行距離を自動的に且つ選択的に表示させることができ、したがって容易に視認することができる。また、切替スイッチを設ける必要がないので、設置スペースを考慮する必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る産業用車両における表示装置を、図1および図2に基づき説明する。
【0009】
本実施の形態に係る産業用車両として、フォークリフトである場合について説明する。
まず、フォークリフトの構成を簡単に説明する。
このフォークリフトは、概略的には、下部に走行用車輪が設けられるとともに上部に運転席が設けられた車両本体と、この車両本体の前部に鉛直面内で傾動自在に支持されたチルト用マスト部材と、このチルト用マスト部材に昇降可能に保持されたリフト用マスト部材と、このリフト用マスト部材に昇降可能に配置されて荷物を保持し得るフォーク部材と、このフォーク部材とチルト用マスト部材とに亘って設けられるとともに上記リフト用マスト部材の上部に設けられたシーブに巻装されて(巻き付けられて)当該フォーク部材を吊持するチェーンと、上記チルト用マスト部材に固定支持されてリフト用マスト部材をチルト用マスト部材に対して昇降させるリフト用シリンダ装置と、上記チルト用マスト部材と車両本体とに亘って設けられて当該チルト用マスト部材を傾動させるチルト用シリンダ装置とから構成されている。そして、上記リフト用シリンダ装置によりリフト用マスト部材が昇降されると、シーブの昇降により、チェーンを介してフォーク部材が昇降されることになる。なお、リフト用シリンダ装置はチルト用マスト部材の左右に配置されるとともに、チェーンについても左右に配置されている。また、リフト用シリンダ装置のシリンダ本体がチルト用マスト部材側に固定されている。
【0010】
次に、上記フォークリフトに設けられているメータ類の表示装置について説明する。
図1に示すように、この表示装置の表示パネル1には、例えば燃料メータ(燃料表示部)2、エンジンの水温計(水温表示部)3、および総稼動時間、総走行距離などの稼動状態を示す稼動状態表示部(具体的にいえば、アワーメータ(h)および距離メータ(km)である)4、並びにその他の機器状態、例えばエンジン油圧、充電の有無(チャージランプ)、ラジエータ水量などの状態を示すモニター群5が具備されている。
【0011】
ところで、上記稼動状態表示部4においては、少なくとも、総稼動時間および総走行距離を表示し得るとともに、いずれかを選択的に表示し得るようにされている。すなわち、この表示装置には、稼動状態表示部4での表示対象を切り替えるための表示切替手段(後述する)が具備されている。
【0012】
そして、本発明の要旨は稼動状態表示部4にあるため、以下の説明においては、表示切替手段に着目して説明する。
図2に示すように、表示装置に具備されている表示切替手段6には、稼動時間計測器7からの総稼動時間データおよび走行距離計測器8からの総走行距離データを入力するとともに、車両のメインスイッチ(図示しないが、スタータスイッチである)のオン・オフ信号およびエンジン11の駆動により回転される発電機12から出力される作動信号(電気信号)を入力して総稼動時間および総走行距離のいずれかを稼動状態表示部4に出力するための電気回路が具備されている。
【0013】
すなわち、この表示切替手段6には、稼動時間計測器7に接続されて時間データを入力する第1入力端子21と、走行距離計測器8に接続されて距離データを入力する第2入力端子22と、稼動状態表示部4に接続されて時間データまたは距離データを出力する出力端子23と、上記第1入力端子21および第2入力端子22からのいずれかのデータを出力端子23側に導き得る切替回路部(図示せず)とから構成されている。
【0014】
そして、この切替回路部おいては、メインスイッチからのオン信号を入力した場合には、第1入力端子21を出力端子23側に接続するようにするとともに、メインスイッチからのオン信号および発電機12からの作動信号が入力された場合には、第2入力端子22を出力端子23側に接続し得るような回路にされており、具体的には、プログラムにより実行される。
【0015】
具体的に説明すれば、切替回路部においては、メインスイッチからのオン信号が入力された場合、総走行距離データを稼動状態表示部4に出力するとともに、メインスイッチからのオン信号および発電機12からの作動信号が入力された場合、総稼動時間データを稼動状態表示部4に出力するようにされている。
【0016】
上記構成において、フォークリフトを作動させる際に、メインスイッチをオンにすると、車両の電気系統に電気が供給されるとともに、表示切替手段6すなわち切替回路部にはオン信号が入力される。
【0017】
そして、この切替回路部にメインスイッチのオン動作によるオン信号だけが入力されると、当該切替回路部において、第1入力端子21が出力端子23に接続されて、総走行距離データが稼動状態表示部4に出力され、したがって運転者は総走行距離を知ることができる。
【0018】
さらに、運転者が、エンジン11を駆動させると、発電機12が回転するため、その発電による電気信号つまり作動信号が切替回路部に入力される。すなわち、切替回路部に、メインスイッチのオン信号とエンジン11の駆動による発電機12からの作動信号の両信号が入力されると、第2入力端子22が出力端子23側に接続されて総稼動時間が稼動状態表示部4に出力され、したがって運転者は総稼動時間を知ることができる。
【0019】
このように、運転者が、フォークリフトを作動させる通常の一連の操作に応じて、すなわちメインスイッチを入れると総走行距離が表示され、さらにエンジン11を駆動させると、総走行距離に替わって、運転者が知りたい総稼動時間が表示される。
【0020】
この構成によると、従来のように、総稼動時間および総走行距離のいずれかに切り替えるための切替スイッチを操作することなく、総稼動時間および総走行距離を順番に見ることができ、しかもエンジンを駆動させているときに、運転者が最も必要とする総稼動時間が自動的に表示される。簡単に言えば、運転者は稼動状態を見るのに、フォークリフトを作動させるための通常の操作を行うだけで両方のデータを見ることができる。また、切替スイッチを必要としないため、コストダウンに繋がる。
【0021】
なお、メインスイッチはオン状態で且つエンジンの停止時に、例えば保守作業者などが総稼動時間を知りたい場合がある。このような事態に対処するために、すなわち保守点検時などの特別な場合に用いるために、メインスイッチのオン動作時に得られる電気信号を発電機12からの作動信号の替わりにダミー信号として表示切替手段6の切替回路部に入力するための簡単な専用スイッチを設けておくこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るフォークリフトにおける表示装置の表示画面を示す。
【図2】同表示装置における表示内容選択部を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 表示パネル
4 稼動状態表示部
5 モニター群
6 表示切替手段
7 稼動時間計測器
8 走行距離計測器
11 エンジン
12 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用車両の車両本体に設けられて少なくとも当該車両の稼動状態を表示し得る稼動状態表示部を有する表示装置であって、
走行距離計測器にて計測された総走行距離および時間計測器にて計測された総稼動時間のいずれかを稼動状態表示部に出力し得る表示切替手段を具備し、
且つ上記表示切替手段において、
車両本体のメインスイッチがオン状態になった際のオン信号を入力すると、走行距離計測器からの総走行距離を稼動状態表示部に出力させるとともに、
エンジンを駆動した際に、メインスイッチのオン状態によるオン信号およびエンジンにより駆動される発電機の作動信号を入力すると、時間計測器からの総稼動時間を稼動状態表示部に出力させるようにしたことを特徴とする産業用車両における表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−161128(P2009−161128A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2683(P2008−2683)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】