説明

用紙後処理装置

【課題】折り曲げ処理を施した用紙をできるだけ多く用紙排出部に収容させたうえで用紙排出部の満杯を判定することが可能な用紙後処理装置を提供する。
【解決手段】用紙後処理装置1は、用紙に折り曲げ処理を施す折り曲げ部40と、折り曲げ処理が施された後の用紙を収容する冊子排出トレイ31と、折り曲げ処理が施された後の用紙を冊子排出トレイ31に向けて搬送するためのモータ44と、モータ44の回転速度を検知するための回転速度検知部60と、モータ44に生じる回転負荷に基づいて予め定められた冊子排出トレイ31の満杯を判別するための所定満杯条件を記憶する記憶部10と、折り曲げ処理が施された後の用紙を搬送する度に回転速度検知部60から得た出力に基づいてモータ44の回転速度を検知し、モータ44の回転速度が所定満杯条件を満たしたとき冊子排出トレイ31が満杯であると判定する制御部8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリといった画像形成装置から供給された用紙などに対して折り曲げ処理等の所定の後処理を施す用紙後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機に代表される画像形成装置には印刷が終了して排出した用紙に所定の後処理を施す用紙後処理装置が連結して設けられる場合がある。用紙後処理装置は画像形成装置に隣接して配置されることが多く、用紙にステイプルを打ち込むステイプル処理や用紙に穿孔を行うパンチ処理、用紙を折り曲げる折り曲げ処理などを施した後、用紙を用紙排出部に排出する。
【0003】
用紙後処理装置における用紙の折り曲げ処理では一般的に、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に折り目を付ける形で用紙を折り曲げることが多い。用紙に折り曲げ処理を施す折り曲げ部の箇所に到達した用紙は、例えばその一方の面側から用紙幅方向に延びるブレード状部材が押し当てられ、さらにこのブレード状部材によって他方の面側へと用紙面の法線方向に押し出されることでその箇所に折り目が付き、そのまま折り目を搬送方向下流端とした形で搬送されて用紙排出部に排出される。
【0004】
ここで、用紙の折り曲げ処理において、例えば折り曲げ方が不十分であると用紙の折り目の部分が膨らむ場合があることが懸念されている。これにより、用紙排出部において意図せず用紙がかさ張る可能性がある。そして、複数枚の用紙を重ねて折り曲げて冊子状にした場合には折り目の部分がさらに膨らむ虞があり、用紙排出部における用紙のかさ張り具合が一層悪化する可能性がある。その結果、例えば用紙排出部に排出された折り曲げ処理後の用紙の上限を検知して用紙排出部の満杯を判定する場合、本来用紙排出部に収容可能な用紙の量より明らかに少ないにもかかわらず満杯であると判定される虞がある。
【0005】
そこで、用紙に折り曲げ処理を施す用紙後処理装置において用紙の折り目の部分が膨らむことの防止を図った装置の一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載されたシート処理装置(用紙後処理装置)はステイプラユニットなどのシート綴じ手段によってシート束を中綴じし、その中綴じ部で屈曲させて二つ折りにしている。シート綴じ時の負荷に対応して二つ折り後のシート束の挟持時間を調節することにより、不要な生産性の低下を防止しながらシート束の二つ折り部分が膨らむことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−119197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたシート処理装置を用いた場合であっても用紙の折り目の部分に生じる膨らみを完全に防止することは困難である。したがって、用紙排出部の満杯を判別するような場合に一般的に広く利用されている用紙の上限を検知する手法では本来用紙排出部に収容可能な量の用紙の収容が達成できない可能性がある。これにより、用紙の折り曲げ処理に係る作業効率が低下するとともに、その使い勝手の悪さにユーザが不快感を抱く虞がある。また、用紙の上限を検知する専用のセンサを設ける必要があるので、装置の高コスト化が懸念される。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、折り曲げ処理を施した用紙を用紙排出部に排出するに際し、用紙排出部の満杯を判定するために専用の用紙の上限検知センサなどを設けることなく簡便な構成で、できるだけ多くの用紙を用紙排出部に収容させたうえで用紙排出部の満杯を判定することが可能な用紙後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の用紙後処理装置は、用紙に折り目を付ける形で折り曲げ処理を施す折り曲げ部と、前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を重ねて収容する用紙排出部と、前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を前記用紙排出部に向けて搬送するためのモータと、前記モータの回転速度を検知するための回転速度検知部と、用紙搬送時の前記モータの回転速度の変化から識別される前記モータに生じる回転負荷に基づいて予め定められた前記用紙排出部の満杯を判別するための所定満杯条件を記憶する記憶部と、前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を搬送する度に前記回転速度検知部から得た出力に基づいて前記モータの回転速度を検知し、前記モータの回転速度が前記記憶部に記憶された前記所定満杯条件を満たしたとき前記用紙排出部が満杯であると判定する制御部と、を備えることとした。
【0010】
この構成によれば、用紙後処理装置は折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を搬送する度に回転速度検知部から得た出力に基づいて各用紙の搬送時におけるモータの回転速度を検知する。そして、用紙後処理装置は用紙搬送時のモータの回転速度が、モータの回転速度に基づいて予め定められた所定満杯条件を満たすことを認識したとき用紙排出部が満杯であると判定する。したがって、用紙後処理装置はモータの回転速度を利用して用紙排出部の満杯の判別を行うので、用紙の折り目の部分に生じる膨らみや折り曲げる用紙束の用紙枚数にかかわらず本来用紙排出部に収容可能な量の用紙の収容が期待できる。そして、適正な用紙搬送を実現するためにモータの回転速度の検知を行うことがあるので、用紙排出部の満杯を検知するために専用の用紙の上限検知センサを設ける必要がない。
【0011】
また、上記構成の用紙後処理装置において、前記記憶部は、前記回転速度検知部の出力値に関する閾値であって前記モータによる用紙搬送が通常搬送状態であるか或いは前記通常搬送状態より前記モータの回転負荷が高い高負荷搬送状態であるかを判別するための閾値と、各搬送状態の発生回数に基づいて前記用紙排出部が満杯であると判定するための条件データと、を前記所定満杯条件として記憶し、前記制御部は、前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を搬送する度に前記回転速度検知部から得た出力と前記閾値とに基づいて前記モータの回転負荷が前記通常搬送状態であるか或いは前記高負荷搬送状態であるかを検知し、前記条件データに適合することを識別したとき前記所定満杯条件を満たすと認識することとした。
【0012】
この構成によれば、用紙後処理装置は例えば前記回転速度検知部の出力値として得られる用紙搬送時のモータの回転速度が閾値未満になる高負荷搬送状態となり、高負荷搬送状態になった回数が条件データに適合することを識別したとき所定満杯条件を満たすと認識する。したがって、用紙後処理装置はモータによる用紙搬送が高負荷搬送状態となる回数と、その回数に基づいて設定された条件データとに基づいて用紙排出部の満杯の判別を行う。
【0013】
また、上記構成の用紙後処理装置において、前記記憶部は、前記モータを用いて前記用紙排出部に向けて用紙を搬送した回数について、初回から予め定められた規定回数までの間に前記高負荷搬送状態を何回検知すれば満杯と判定するかという情報と、前記規定回数を超えて予め定められた上限回数までの間に前記高負荷搬送状態を何回検知すれば満杯と判定するかという情報と、前記上限回数に達すると搬送状態によらず満杯と判定するという情報と、を前記条件データとして記憶することとした。
【0014】
この構成によれば、用紙後処理装置は用紙排出部に向けて用紙を搬送した回数について、初回から規定回数までの間に検知した高負荷搬送状態の回数と、規定回数を超えて上限回数までの間に検知した高負荷搬送状態の回数と、搬送状態によらず上限回数に達したか否かと、によって用紙排出部の満杯を判定する。
【0015】
また、上記構成の用紙後処理装置において、前記制御部は、前記用紙排出部が満杯であると判定したとき、前記折り曲げ部から前記用紙排出部までの搬送の途中にある用紙を前記用紙排出部まで搬送させ、前記折り曲げ部による用紙の折り曲げ処理を停止させることとした。
【0016】
この構成によれば、用紙排出部が満杯であると判定された場合でも判定前に折り曲げ処理が施された用紙は適切に用紙排出部まで搬送されるので、搬送途中でジャムなどの不具合を起こすことなく用紙排出部に収容される。
【0017】
また、上記構成の用紙後処理装置において、前記回転速度検知部は、発光部及び受光部を有する光センサと、前記光センサの光を通過させる開口部を有するパルス板と、を備え、前記制御部は、単位時間あたりの前記開口部を通過する光を計数することにより前記モータの回転速度を検知することとした。
【0018】
この構成によれば、用紙後処理装置は用紙排出部の満杯の判別に必要なモータの回転速度を、光センサとパルス板とを用いた簡便な構成の回転速度検知部を用いて検知する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成によれば、折り曲げ処理を施した用紙を用紙排出部に排出するに際し、モータの回転速度を利用して用紙排出部の満杯の判別を行うので、専用の用紙の上限検知センサなどを設けることなく簡便な構成で、用紙の折り目の部分に生じる膨らみや折り曲げる用紙束の用紙枚数にかかわらずできるだけ多くの用紙を用紙排出部に収容させたうえで用紙排出部の満杯を判定することが可能な用紙後処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る用紙後処理装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の用紙後処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の用紙後処理装置の折り曲げ処理ユニットの垂直断面正面図である。
【図4】図3に示す折り曲げ処理ユニットの回転速度検知部の概略斜視図である。
【図5】折り曲げ処理ユニットの冊子排出トレイの所定満杯条件示す説明図及び用紙排出例を示す表である。
【図6】冊子排出トレイの満杯判定に係る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図1〜図6に基づき説明する。
【0022】
最初に、本発明の実施形態に係る用紙後処理装置について、図1及び図2を用いてその構造の概略と動作とを説明する。図1は用紙後処理装置の模型的垂直断面正面図、図2は用紙後処理装置の構成を示すブロック図である。なお、図1中の点線矢印は用紙の搬送経路及び搬送方向を示す。
【0023】
図1に示すように、用紙後処理装置1は画像形成装置100の用紙排出側に着脱自在に連結される。なお、画像形成装置100は図1において用紙後処理装置1の右方に存在する。用紙後処理装置1は画像形成装置100から排出された用紙に対してパンチ処理、ステイプル処理及び折り曲げ処理を施すためにパンチ装置2、ステイプル処理ユニット20及び折り曲げ処理ユニット30を備えている。
【0024】
パンチ装置2は用紙後処理装置1の上部であって、画像形成装置100から排出された用紙を受ける用紙搬入口3のすぐ用紙搬送方向下流に配置されている。用紙搬入口3は用紙後処理装置1の画像形成装置100が配置された側の側面、すなわち図1における右側面に設けられている。
【0025】
画像形成装置100から排出された用紙は用紙搬入口3を通ってすぐにパンチ装置2の箇所に到達する。用紙後処理装置1がパンチ処理の指令を受けている場合、パンチ装置2は用紙に対して穿孔を行うパンチ処理を施す。パンチ装置2の箇所を通過した用紙はその用紙搬送方向下流の用紙振り分け部4に到達する。
【0026】
用紙振り分け部4には複数の可動ガイド5が備えられている。各可動ガイド5は用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向、すなわち図1の紙面奥行き方向に延びる軸線を中心として回転自在に設けられている。可動ガイド5はその形状が回転中心である軸線方向から見てくさび形をなし、用紙の搬送方向を切り替え、振り分ける。
【0027】
用紙振り分け部4はパンチ装置2の箇所を通過した用紙に対して特に何も処理を施さない場合、用紙をメイン排出トレイ6或いはサブ排出トレイ7へと振り分ける。メイン排出トレイ6とサブ排出トレイ7とは図1における用紙後処理装置1の左側面上部に上下方向に二段にして設けられている。用紙振り分け部4は用紙にさらにステイプル処理や折り曲げ処理を施す場合、用紙を下方へと振り分ける。
【0028】
ステイプル処理ユニット20はパンチ装置2や用紙振り分け部4の下方であって、用紙後処理装置1の上下方向略中央部に配置されている。ステイプル処理ユニット20はスタックトレイ21、カバートレイ22、下端ストッパ23、上端押さえ24、移動機構25及びステイプル装置26を備えている。
【0029】
スタックトレイ21とカバートレイ22とは所定の空間を隔てて対向して配置されている。この空間は用紙処理空間Sであり、垂直方向からやや傾斜した角度で上下に延びるように形成され、ここに上方から搬送されてきた用紙が送り込まれる。
【0030】
スタックトレイ21の用紙処理空間Sの下端には下端ストッパ23が、上端には上端押さえ24が設けられている。下端ストッパ23、上端押さえ24及び用紙処理空間S内の用紙は移動機構25によって、各々独立して上下方向に移動させることができる。複数枚の用紙からなる用紙束を形成する場合、用紙処理空間Sに順次送り込まれる用紙を下端ストッパ23が受け止め、用紙処理空間Sに複数枚の用紙が積み重ねられる。そして、下端ストッパ23が停止した状態で、上端押さえ24が用紙束の上端を下端ストッパ23側へと軽く押さえることにより用紙束の上端が揃えられる。
【0031】
上記のように揃えられた用紙束に対して、ステイプル装置26によるステイプル処理が施される。ステイプル装置26は用紙幅方向、すなわち図1の紙面奥行き方向に並べて2箇所に配置されている。ステイプル処理ユニット20では移動機構25を駆動することにより、用紙束の搬送方向先端にステイプルを打ち込む先端綴じ、用紙束の搬送方向中央部にステイプルを打ち込む中央綴じなどのステイプル処理を施すことが可能である。ステイプル処理が済み、折り曲げ処理を行わない場合、用紙束は移動機構25により上方のメイン排出トレイ6へ搬送され、折り曲げ処理を行う場合、用紙束は下方へと搬送される。
【0032】
折り曲げ処理ユニット30は、ステイプル処理ユニット20の用紙搬送方向下流側、すなわちステイプル処理ユニット20の下方であって、用紙後処理装置1の上下方向最下部に配置されている。折り曲げ処理ユニット30は、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に折り目を付ける形で用紙に折り曲げ処理を施す折り曲げ部40を中心として構成され、さらに折り曲げ処理が施された後の用紙を重ねて収容する用紙排出部である冊子排出トレイ31を備えている。ステイプル処理ユニット20でステイプル処理を施された用紙束は折り曲げ部40で折り曲げられ、冊子状となって冊子排出トレイ31に排出される。
【0033】
また、用紙後処理装置1は装置全体の動作制御のため、図2に示すようにその内部にCPU9やその他の図示しない電子部品で構成された制御部8を備えている。制御部8はCPU9を中央演算処理装置として利用し、記憶部10に記憶、入力されたプログラム、データに基づきパンチ装置2、ステイプル処理ユニット20、折り曲げ処理ユニット30、その他の用紙搬送機構などといった構成要素を制御して一連の用紙後処理動作を実現する。なお、用紙後処理装置1の制御部8は画像形成装置100の画像形成装置制御部101から受ける制御指令に基づいて画像形成装置100から排出された用紙に対してパンチ処理、ステイプル処理、折り曲げ処理といった後処理を施す。
【0034】
続いて、折り曲げ処理ユニット30の詳細な構成及びその動作について、図1及び図2に加えて、図3〜図5を用いて説明する。図3は折り曲げ処理ユニット30の垂直断面正面図、図4は折り曲げ処理ユニット30の回転速度検知部の概略斜視図、図5は折り曲げ処理ユニット30の冊子排出トレイ31の所定満杯条件示す説明図及び用紙排出例を示す表である。なお、図3中の点線矢印は用紙の搬送経路及び搬送方向を示す。
【0035】
折り曲げ処理ユニット30は、図1及び図3示すように前出の折り曲げ部40及び用紙排出部である冊子排出トレイ31に加えて、用紙積載部32、搬送ローラ対33、センター合わせ部50、排出口34、冊子有無検知センサ35及び回転速度検知部60を備えている。
【0036】
用紙積載部32は折り曲げ処理ユニット30の内部において、水平よりやや傾斜して用紙搬送方向に下方に向かって延びる形にして配置されている。用紙積載部32には下流側に向かって順に搬送ローラ対33、折り曲げ部40及びセンター合わせ部50が配置されている。折り曲げ部40は用紙積載部32の用紙搬送方向略中央に備えられている。排出口34は斜め下方に向かって延びる用紙積載部32に対して折り曲げ部40で上方に向かって分岐した先に配置されている。冊子排出トレイ31は排出口34の下流に設けられ、冊子の有無を検知するための冊子有無検知センサ35をその下部に備えている。
【0037】
搬送ローラ対33は折り曲げ処理ユニット30の略中央部に配置された折り曲げ部40に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。搬送ローラ対33はステイプル処理ユニット20から受け取り、対をなすローラ33a、33bが圧接して形成される搬送ニップに送り込まれた用紙束を折り曲げ部40に向かって搬送する。搬送ローラ対33は上側のローラ33aを上方に移動させることにより、その搬送ニップを解除することができる。
【0038】
ステイプル処理ユニット20から用紙積載部32に送り込まれる用紙の搬送には搬送ローラ対33が利用される。このとき、用紙の下流端がセンター合わせ部50の後述するセンター合わせカーソル51に当接する直前に搬送ローラ対33の搬送ニップを解除し、その後は慣性で用紙の下流端をセンター合わせカーソル51に当接させる。
【0039】
センター合わせ部50は折り曲げ部40の下流に配置されている。センター合わせ部50はセンター合わせカーソル51及び移動機構52を備えている。
【0040】
センター合わせカーソル51は用紙積載部32上に配置され、用紙束の下流端を受け止める形状をなしている。移動機構52は用紙積載部32の用紙搬送方向に沿って延びて回転する無端状のベルト53を備えている。センター合わせカーソル51はベルト53の上面に取り付けられており、移動機構52により用紙搬送方向に移動させることが可能である。これにより、センター合わせ部50は用紙積載部32上において用紙束の下流端を移動させる形で用紙束の用紙搬送方向中央が折り曲げ部40の後述する折り曲げブレード42の箇所に一致するように用紙全体を変位させる。
【0041】
折り曲げ部40は搬送ローラ対33の下流であって、センター合わせ部50の上流に配置されている。折り曲げ部40は往復機構41、折り曲げブレード42及び折り曲げローラ対43を備えている。
【0042】
往復機構41は水平よりやや傾斜した形の用紙積載部32の用紙搬送空間及びその下方にかけての箇所に配置されている。往復機構41は折り曲げブレード42を支持する支持部材41aと、クランク機構41bとを備えている。往復機構41はクランク機構41bの作用によりモータ(不図示)の回転動力を直線運動に換え、支持部材41aを用紙積載部32と直角をなす方向、すなわち図2の白抜き矢印の方向に往復移動させることができる。
【0043】
支持部材41aを最下方に移動させると、折り曲げブレード42の先端は用紙積載部32より下方に位置する。支持部材41aを最上方に移動させると、折り曲げブレード42の先端は用紙積載部32よりさらに上方に突出し、折り曲げローラ対43の搬送ニップ部まで到達する。
【0044】
折り曲げローラ対43は往復機構41の上方に配置されている。折り曲げローラ対43の一方のローラ43aはモータ44(図4参照)からの動力を得て回転し、他方のローラ43bはこれに圧接することによりローラ43aの回転に従って回転する。折り曲げローラ対43は対をなすローラ43a、43bが圧接して搬送ニップを形成しているが、ローラ43bをローラ43aに対して離間させることにより搬送ニップを解除することが可能である。
【0045】
上記構成により、折り曲げ部40は用紙積載部32上の用紙を折り曲げブレード42で上方に突き上げて折り曲げローラ対43の搬送ニップに挟ませ、用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向に折り目を付ける形で用紙に折り曲げ処理を施す。折り曲げ部40で折り曲げ処理が施された後の用紙は折り曲げローラ対43を用いて冊子排出トレイ31に向けて搬送される。
【0046】
回転速度検知部60は、図3に示すように折り曲げローラ対43の箇所であって、ローラ43aに動力を与えるモータ44に隣接して設けられている(図4参照)。回転速度検知部60はパルス板61と、光センサ62とを備えている。
【0047】
パルス板61は、図4に示すように円盤状をなし、その回転面である平面がモータ44の駆動軸44aの軸線と直角をなすように駆動軸44aに固定されている。パルス板61は周方向に等角度間隔で設けられた複数の開口部61aを有している。なお、図4では作図の便宜上、開口部61aは省略して6個のみ描画している。
【0048】
光センサ62はパルス板61に対応する箇所に隣接して配置されている。光センサ62は、例えばフォトインタラプタで構成され、対向し合う発光部62aと受光部62bとを備えるとともに、これらの間に隙間62cが設けられている。そして、光センサ62は隙間62cにパルス板61が挿入され、その光がパルス板61の開口部61aを通過可能な位置に配置されている。これにより、モータ44を回転させると、光センサ62は断続的に発光部62aから出射した光が受光部62bに入射することを識別し、パルス状の信号を発信する。
【0049】
光センサ62が発信した信号は制御部8に送られる。制御部8は光センサ62、すなわち回転速度検知部60から得た出力に基づいてモータ44の回転速度を検知する。このようにして、回転速度検知部60はモータ44の回転速度を検知するために利用される。
【0050】
そして、制御部8は回転速度検知部60を用いて検知したモータ44の回転速度の出力を冊子排出トレイ31の満杯を判定するために利用している。すなわち、制御部8は折り曲げ部40で折り曲げ処理が施された後の用紙を折り曲げローラ対43を用いて冊子排出トレイ31に向けて搬送するためのモータ44に回転負荷が生じたことを識別することにより、冊子排出トレイ31が満杯になってそれ以上収容できないことを判別する。
【0051】
このため、記憶部10には用紙搬送時のモータ44の回転速度の変化から識別されるモータ44に生じる回転負荷に基づいて予め定められた冊子排出トレイ31の満杯を判別するための所定満杯条件が予め記憶されている。この所定満杯条件としては回転速度検知部60の出力値に関する閾値であってモータ44による用紙搬送が通常搬送状態であるか或いは通常搬送状態よりモータ44の回転負荷が高い高負荷搬送状態であるかを判別するための閾値と、各搬送状態の発生回数に基づいて冊子排出トレイ31が満杯であると判定するための条件データとが記憶されている。
【0052】
例えば図5に示すように、回転速度検知部60の出力値の閾値を回転速度検知部60から得られるパルス信号を用いて1000pps(パルス/秒)と予め設定し、記憶部10に記憶させている。モータ44の回転速度が1000pps以上であれば通常搬送状態であるとみなし、1000pps未満であれば通常搬送状態よりモータ44の回転負荷が高い高負荷搬送状態であるとみなす。
【0053】
また例えば、冊子排出トレイ31が満杯であると判定するための条件データとして、モータ44を用いて冊子排出トレイ31に向けて用紙を搬送した回数について、初回から予め定められた規定回数である5回目までの間に高負荷搬送状態を3回検知したとき満杯とみなすことと、5回目を超えて予め定められた上限回数である10回目までの間に高負荷搬送状態を1回検知したとき満杯とみなすことと、冊子排出トレイ31の収容容量を考慮して上限回数である10回目に達すると搬送状態によらず満杯と判定することと、を予め設定して記憶部10に記憶させている。
【0054】
これにより、例えば図5の用紙排出例の排出例1に記載したように、モータ44による用紙の搬送回数が10回目でも高負荷搬送状態が検知されなかった場合、冊子排出トレイ31の収容容量が考慮されて満杯とみなされる。
【0055】
また例えば、排出例2及び3に記載したように、初回から5回目までの間、すなわち前半5回中に高負荷搬送状態を3回検知したとき満杯(図中黒丸印)とみなされる。通常の普通紙より比較的厚い用紙や硬い用紙を用いて冊子を作成した場合、排出例2及び3のように満杯とみなされることが多い。
【0056】
また例えば、排出例4〜6に記載したように、5回目を超えて10回目までの間、すなわち後半5回中に高負荷搬送状態を1回検知したとき満杯とみなされる。通常の普通紙により冊子を作成した場合、冊子を形成する用紙束の用紙枚数の違いにより排出例4〜6のように満杯とみなされることが多い。例えば、排出例7及び8に記載したように、前半5回中に2回まで高負荷搬送状態を検知した場合には満杯とみなされることはないが、その後の後半5回中に高負荷搬送状態を検知したときには満杯とみなされる。
【0057】
なお、冊子排出トレイ31の満杯を判別するための所定満杯条件は上記回転速度の閾値や条件データに限定されるわけではなく、他の条件を加えたり、他の条件に変更したりしても良い。また、上記閾値や条件データに用いた回転速度や搬送回数の数値は上記数値に限定されるわけではなく、他の数値に変更しても構わない。
【0058】
続いて、冊子排出トレイ31の満杯判定に係る動作について、図5の所定満杯条件を一例として用いて図6に示すフローに沿って説明する。図3は冊子排出トレイ31の満杯判定に係る動作を示すフローチャートである。
【0059】
用紙後処理装置1が折り曲げ処理ユニット30で用紙に折り曲げ処理を施すとき(図6のスタート)、制御部8は冊子有無検知センサ35が冊子排出トレイ31の冊子(用紙)を検知し始めてから、すなわち冊子排出トレイ31にモータ44による搬送回数にして初回の冊子が排出されてから11回目になるか否かを判定する(図6のステップ#101)。冊子の搬送回数が11回目に達していない場合(ステップ#101のNo)、制御部8は折り曲げ部40の各構成要素を制御して用紙に折り曲げ処理を施す(ステップ#102)。なお、冊子の搬送回数が11回目に達した場合(ステップ#101のYes)、制御部8は冊子排出トレイ31が満杯であると判定する(ステップ#106)。
【0060】
折り曲げ部40で折り曲げ処理が施された後の用紙を折り曲げローラ対43を用いて冊子排出トレイ31に向けて搬送するとき、制御部8は回転速度検知部60から得た出力に基づいて用紙搬送時のモータ44の回転速度を検知する(ステップ#103)。そして、制御部8はモータ44の回転速度が閾値である1000pps未満か否かを判定する(ステップ#104)。モータ44の回転速度が1000pps以上(ステップ#104のNo)、すなわち用紙搬送が通常搬送状態である場合、ステップ#101に戻って次の冊子の搬送回数が11回目になるか否かを判定する。
【0061】
モータ44の回転速度が1000pps未満である場合(ステップ#104のYes)、次に制御部8はこのときモータ44によって搬送中の用紙(冊子)の搬送回数が5回目を超えたか否かを判定する(ステップ#105)。搬送中の用紙(冊子)の搬送回数が5回目を超えている場合(ステップ#105のYes)、制御部8はモータ44の回転速度が1000pps未満になる回数が条件データに適合することを識別して所定満杯条件を満たすと認識し、冊子排出トレイ31が満杯であると判定する(ステップ#106)。
【0062】
一方、搬送中の用紙(冊子)の搬送回数が初回から5回目までの間である場合(ステップ#105のNo)、制御部8はモータ44の回転速度が1000pps未満になった回数が用紙搬送の初回から数えて3回目であるか否かを判定する(ステップ#107)。このことに関して、制御部8はモータ44の回転速度が1000pps未満になった回数を用紙搬送の初回から数えて記憶部10に記憶させている。モータ44の回転速度が1000pps未満になった回数が初回から数えて3回未満である場合(ステップ#107のNo)、ステップ#101に戻って次の冊子の搬送回数が11回目になるか否かを判定する。
【0063】
ステップ#107においてモータ44の回転速度が1000pps未満になった回数が初回から数えて3回目である場合(ステップ#107のYes)、制御部8は冊子排出トレイ31が満杯であると判定する(ステップ#106)。
【0064】
ステップ#106で冊子排出トレイ31が満杯であると判定した後、制御部8は折り曲げ部40から冊子排出トレイ31までの搬送の途中にある用紙を冊子排出トレイ31まで搬送させ、折り曲げ部40による用紙の折り曲げ処理を停止させる(ステップ#108)。そして、制御部8は冊子排出トレイ31の満杯判定に係る動作を終了する(図6のエンド)。
【0065】
上記のように、用紙後処理装置1は用紙搬送時のモータ44の回転速度が、モータ44の回転速度に基づいて予め定められた所定満杯条件を満たすことを認識したとき冊子排出トレイ31が満杯であると判定する。したがって、用紙後処理装置1はモータ44の回転速度を利用して冊子排出トレイ31の満杯の判別を行うので、用紙の折り目の部分に生じる膨らみや折り曲げる用紙束の用紙枚数にかかわらず本来冊子排出トレイ31に収容可能な量の用紙の収容が期待できる。そして、適正な用紙搬送を実現するためにモータ44の回転速度の検知を行うことがあるので、冊子排出トレイ31の満杯を検知するために専用の用紙の上限検知センサを設ける必要がない。
【0066】
また、用紙後処理装置1は回転速度検知部60の出力値として得られる用紙搬送時のモータ44の回転速度が閾値未満になる高負荷搬送状態となり、高負荷搬送状態になった回数が条件データに適合することを識別したとき所定満杯条件を満たすと認識する。したがって、用紙後処理装置1はモータ44による用紙搬送が高負荷搬送状態となる回数と、その回数に基づいて設定された条件データとに基づいて冊子排出トレイ31の満杯の判別を行うので、冊子(用紙束)の用紙枚数や用紙種類に対応した好適な所定満杯条件を設定することができる。これにより、冊子排出トレイ31に一層多くの用紙を収納させることが可能である。
【0067】
また、用紙後処理装置は冊子排出トレイ31が満杯であると判定するための条件データとして満杯をどのようにして検知するか、詳細な設定を行うことが可能である。
【0068】
また、用紙後処理装置1は冊子排出トレイ31が満杯であると判定した場合でも判定前に折り曲げ処理を施した用紙を適切に冊子排出トレイ31まで搬送する。これにより、用紙が搬送途中でジャムなどの不具合を起こすことなく冊子排出トレイ31に収容されるので、1部でも多くの用紙(冊子)を冊子排出トレイ31に収容することができ、その後の用紙の折り曲げ処理を円滑に継続することが可能である。
【0069】
上記実施形態の構成によれば、折り曲げ処理を施した用紙を冊子排出トレイ31に排出するに際し、モータ44の回転速度を利用して冊子排出トレイ31の満杯の判別を行うので、専用の用紙の上限検知センサなどを設けることなく簡便な構成で、用紙の折り目の部分に生じる膨らみや折り曲げる用紙束の用紙枚数にかかわらずできるだけ多くの用紙を冊子排出トレイ31に収容させたうえで冊子排出トレイ31の満杯を判定することが可能な用紙後処理装置1を提供することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0071】
例えば、上記実施形態では、回転数検知部60が開口部61aを有するパルス板61とその開口部61aに光を通過させる光センサ62とを備え、制御部8が単位時間あたりの開口部61aを通過する光を計数することによりモータ44の回転速度を検知することとしたが、他の構成、方法でモータ44の回転速度を検知しても良い。例えば、回転負荷の強弱により高低が変化するモータ44に流れる電流値を用いてモータ44の回転速度を検知しても構わない。
【0072】
また、用紙後処理装置1はパンチ装置2やステイプル処理ユニット20を備えていなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、画像形成装置から供給された用紙などに対して折り曲げ処理等の所定の後処理を施す用紙後処理装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 用紙後処理装置
2 パンチ装置
8 制御部
10 記憶部
20 ステイプル処理ユニット
30 折り曲げ処理ユニット
31 冊子排出トレイ(用紙排出部)
40 折り曲げ部
43 折り曲げローラ対
44 モータ
60 回転速度検知部
61 パルス板
62 光センサ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に折り目を付ける形で折り曲げ処理を施す折り曲げ部と、
前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を重ねて収容する用紙排出部と、
前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を前記用紙排出部に向けて搬送するためのモータと、
前記モータの回転速度を検知するための回転速度検知部と、
用紙搬送時の前記モータの回転速度の変化から識別される前記モータに生じる回転負荷に基づいて予め定められた前記用紙排出部の満杯を判別するための所定満杯条件を記憶する記憶部と、
前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を搬送する度に前記回転速度検知部から得た出力に基づいて前記モータの回転速度を検知し、前記モータの回転速度が前記記憶部に記憶された前記所定満杯条件を満たしたとき前記用紙排出部が満杯であると判定する制御部と、
を備えることを特徴とする用紙後処理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記回転速度検知部の出力値に関する閾値であって前記モータによる用紙搬送が通常搬送状態であるか或いは前記通常搬送状態より前記モータの回転負荷が高い高負荷搬送状態であるかを判別するための閾値と、各搬送状態の発生回数に基づいて前記用紙排出部が満杯であると判定するための条件データと、を前記所定満杯条件として記憶し、
前記制御部は、前記折り曲げ部で折り曲げ処理が施された後の用紙を搬送する度に前記回転速度検知部から得た出力と前記閾値とに基づいて前記モータの回転負荷が前記通常搬送状態であるか或いは前記高負荷搬送状態であるかを検知し、前記条件データに適合することを識別したとき前記所定満杯条件を満たすと認識することを特徴とする請求項1に記載の用紙後処理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記モータを用いて前記用紙排出部に向けて用紙を搬送した回数について、初回から予め定められた規定回数までの間に前記高負荷搬送状態を何回検知すれば満杯と判定するかという情報と、前記規定回数を超えて予め定められた上限回数までの間に前記高負荷搬送状態を何回検知すれば満杯と判定するかという情報と、前記上限回数に達すると搬送状態によらず満杯と判定するという情報と、を前記条件データとして記憶することを特徴とする請求項2に記載の用紙後処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記用紙排出部が満杯であると判定したとき、前記折り曲げ部から前記用紙排出部までの搬送の途中にある用紙を前記用紙排出部まで搬送させ、前記折り曲げ部による用紙の折り曲げ処理を停止させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の用紙後処理装置。
【請求項5】
前記回転速度検知部は、
発光部及び受光部を有する光センサと、
前記光センサの光を通過させる開口部を有するパルス板と、を備え、
前記制御部は、単位時間あたりの前記開口部を通過する光を計数することにより前記モータの回転速度を検知することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の用紙後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131633(P2012−131633A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287104(P2010−287104)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】