説明

田植機のエンジン回転数制御装置

【課題】植付作業中に一時的に走行抵抗(作業抵抗)が大きくなった場合でも、エンスト等のエンジントラブルを防止する田植機のエンジン回転数制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン5と、無段変速装置21と、スロットルレバー85と、変速アーム47と、変速ペダル16と、エンジン回転数制御装置95を備えた田植機1において、変速ペダル16の位置を検出する第一検出手段55と、スロットルレバー85を操作する回転数変更アクチュエータ88と、変速アーム47を操作する変速アクチュエータ60と、エンジン5の出力負荷を検出するエンジン出力負荷検出手段90と、制御装置80とを備え、制御装置80は、エンジン出力負荷検出手段90の検出結果によりエンジン5の出力負荷が所定値以上の時、変速ペダル16の変速操作量に応じたエンジン5の回転数に維持するようにスロットルレバー85を制御する田植機1のエンジン回転数制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機のエンジン回転数制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの回転数を変更するエンジン回転変更部材(スロットルレバー)を具備する田植機において、無段変速装置を変速操作する変速操作部材を操作する変速ペダル(変速操作具)、およびエンジン回転変更部材(スロットルレバー)を変更操作するエンジン回転変更操作部材(アクセルレバー)、のそれぞれがエンジン回転変更部材(スロットルレバー)に連結されている田植機は公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−199447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような田植機においては、変速ペダル(変速操作具)の変速操作量に比例してエンジンの回転数が増速されるため、変速ペダル(変速操作具)の変速操作量を一定に維持した状態で植付け作業を行うと、エンジンの回転数はその設定(操作)した回転数以上は上がらない。そのため、植付け作業中に一時的に走行抵抗(作業抵抗)が大きくなった場合には、エンジンが過負荷運転されるため、エンジンがストップする等のエンジントラブルが生じるという問題点があった。
また、操縦者は、エンジンの回転数を変更するために、変速ペダル(変速操作具)、およびエンジン回転変更部材(スロットルレバー)のそれぞれを操作する必要があるため、操作が煩雑であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、植付け作業中に一時的に走行抵抗(作業抵抗)が大きくなった場合であっても、エンジンがストップする等のエンジントラブルを防止する田植機の負荷制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、第1の発明に係る田植機のエンジン回転数制御装置は、
エンジンと、無段変速装置と、前記エンジンの回転数を変更するスロットルレバーと、前記無段変速装置を変速操作する変速操作部材と、変速操作具と、エンジン回転数制御装置と、を備えた田植機において、
前記変速操作具の操作位置を検出する操作位置検出手段と、
前記スロットルレバーの操作を行う変更アクチュエータと、
前記変速操作具の変速操作量に基づいて前記変速操作部材の操作を行う変速アクチュエータと、
前記エンジンの出力負荷を検出する負荷検出手段と、
前記操作位置検出手段と、前記変更アクチュエータと、前記変更アクチュエータと、前記負荷検出手段と、が接続される制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記負荷検出手段の検出結果に基づきエンジンの出力負荷が所定値以上になったときに、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数に一定維持するように、前記スロットルレバーを変更制御するものである。
【0008】
第2の発明に係る田植機のエンジン回転数制御装置は、
エンジンと、無段変速装置と、前記エンジンの回転数を変更するスロットルレバーと、前記無段変速装置を変速操作する変速操作部材と、変速操作具と、エンジン回転数制御装置とを備えた田植機において、
前記変速操作具の操作位置を検出する操作位置検出手段と、
前記スロットルレバーの位置を検出するレバー位置検出手段と、
前記エンジンの出力軸の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記スロットルレバーの操作を行う変更アクチュエータと、
前記変速操作具の変速操作量に基づいて前記変速操作部材の操作を行う変速アクチュエータと、
前記操作位置検出手段と、前記レバー位置検出手段と、前記回転数検出手段と、前記変更アクチュエータと、前記変更アクチュエータと、が接続される制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記レバー位置検出手段および前記回転数検出手段の検出結果に基づき前記エンジンの出力負荷を取得し、
取得したエンジンの出力負荷が所定値以上になったときに、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数に一定維持するように、前記スロットルレバーを変更制御するものである。
【0009】
第3の発明に係る田植機のエンジン回転数制御装置は、第1または第2の発明に係る田植機のエンジン回転数制御装置において、
前記変速操作具を初期位置に支持させた状態で、走行機体の移動速度を一定に維持させる速度一定維持スイッチを設け、
前記制御装置は、前記速度一定維持スイッチの入り操作によって前記走行機体を定速度で移動させ、且つ、前記エンジンの出力負荷が所定値以上になったときに、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数に一定維持するように、前記スロットルレバーを変更制御するものである。
【0010】
第4の発明に係る田植機のエンジン回転数制御装置は、第1または第2の発明に係る田植機のエンジン回転数制御装置において、
前記制御装置は、前記エンジンの出力負荷が所定値未満のときには、前記操作位置検出手段の検出結果に基づき前記変更アクチュエータを作動させて前記エンジンの回転数を制御し、
前記エンジンの出力負荷が所定値以上になったときには、前記変速操作具の操作に優先させて、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数を一定維持するように前記スロットルレバーを変更制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
第1の発明においては、植付作業の途中で走行負荷が大きくなったときに、エンジンの出力不足を防止できる。例えば、圃場の耕盤に形成された大きな凹部に車輪が嵌っても、所定の速度を維持して移動できる。条件が悪い圃場でも植付作業性を向上できる。
【0013】
第2の発明においては、植付作業の途中で走行負荷が大きくなったときに、エンジンの出力不足を防止できる。例えば、圃場の耕盤に形成された大きな凹部に車輪が嵌っても、所定の速度を維持して移動できる。条件が悪い圃場でも植付作業性を向上できる。
【0014】
第3の発明においては、移動速度を一定に維持しながら植付作業を行っているときに、エンジンの出力負荷が所定値以上になっても、エンジン回転数に一定維持するように制御しているから、操縦者が特別な操作を行わなくても、植付途中での動力不足を防止でき、植付作業をスムーズに行うことができる。
【0015】
第4の発明においては、走行負荷が所定値以上になったときに、変速操作具を操作した場合であっても、変速アームを回転して増速するよりも先に、スロットルレバーを回動してエンジン回転数を維持することにより、エンストすることを回避することができる。そして、その後アクチュエータによって増速制御を行い移動速度の維持を図ることで、植付精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る田植機の側面図。
【図2】第1実施形態に係る田植機の平面図。
【図3】走行変速ミッションの概略図。
【図4】運転操作部と走行変速ミッションとの関係を示す概略図。
【図5】図4のV−V視拡大断面図。
【図6】図4のVI−VI視拡大断面図。
【図7】田植機の制御装置の制御構成を示すブロック図。
【図8】エンジンの出力負荷に対するスロットルレバーの変更制御を示すフローチャート。
【図9】速度一定維持制御(オートクルーズ制御)におけるエンジンの出力負荷に対するスロットルレバーの変更制御を示すフローチャート。
【図10】エンジンの出力負荷に対するエンジンの回転数および無段変速装置の変速出力の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
田植機1の全体的な構成について、図1における矢印A方向を前方向として説明する。
【0018】
図1、図2に示すように、田植機1は多条植式の苗植装置2と走行機体3とで構成される。
苗植装置2は、走行機体3の後部に上下方向に回転可能に取り付けられ、適宜の上下位置で苗載台2aの苗を複数の苗植付爪2bにより圃場に植え付けることができるように構成される。
【0019】
走行機体3では、車体フレーム4が左右一対の前車輪6と、左右一対の後車輪7とで支持される。車体フレーム4には、エンジン5が搭載されるとともに、走行変速ミッション20が搭載される。エンジン5は車体フレーム4の前部側でボンネット9にて被覆される。そして、エンジン5の出力が走行変速ミッション20により適宜変速されたあと、各車輪6・7に伝達されるように構成される。これにより、走行機体3が走行可能とされる。
【0020】
また、車体フレーム4には運転操作部10が設けられる。運転操作部10には座席12、操縦ハンドル13、変速レバー14、表示パネル15、本発明に係る変速操作具の一形態である変速ペダル16、ブレーキペダル17等が備えられる。変速ペダル16およびブレーキペダル17は、前方向への足踏み式のペダルであり、操縦ハンドル13の右側で運転操作部10の床面に左右に並べられて、車体フレーム4に枢着される。
【0021】
図2に示すように、表示パネル15は操縦ハンドル13の近傍に配置される。表示パネル15には、機体状況を表示する表示手段が備えられるとともに、後述する変速アクチュエータ60の動作異常、苗や肥料の切れおよび肥料の詰まり等の問題が発生した場合に、これを操縦者に報知する報知手段が備えられる。
【0022】
この報知手段は、たとえば、図示せぬ表示ランプを表示パネル本体に設け、前述のような不具合が発生した場合に点灯または点滅するようにして構成される。ただし、報知手段は、ブザー等を表示パネル本体に設け、前述のような問題が発生した場合に報知音がなるようにして構成することも可能である。また、報知手段は表示パネルに限らず、別の部材に備えてもよい。
【0023】
オートクルーズスイッチ18は、本発明における速度一定維持操作手段の一実施形態であり、変速ペダル16を操作し所望の移動速度とした状態で設定操作することで、田植機1(走行機体3)の移動速度を一定に維持させるスイッチである。
オートクルーズスイッチ18は、操縦ハンドル13の近傍に配置され、スイッチがON(入)になったとき、田植機1(走行機体3)の移動速度を一定に保持させる(移動速度を固定する)、即ち移動速度を定速にすることができるように構成される。
【0024】
次に、変速操作機構について説明する。
【0025】
図3に示すように、走行変速ミッション20には、油圧式の無段変速装置21が備えられる。無段変速装置21は、エンジン5の動力により駆動される可変容量形の油圧ポンプ24と、この油圧ポンプ24からの油圧にて駆動される油圧モータ25とを有し、油圧ポンプ24における斜板24aの傾斜角が変更されることにより変速比を変更して、作動油の吐出量を変更し、油圧モータ25の出力軸の回転数を変更して、走行機体3の移動速度を変速させるように構成される。
【0026】
なお、本実施形態においては、油圧式無段変速装置21に遊星歯車機構からなる機械式変速装置40が組み合わされて、油圧・機械式無段変速装置が構成される。
【0027】
また、車体フレーム4の前部には、図4、図6に示すように、変速操作軸63が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。変速操作軸63には扇形歯車62が固定されて、この扇形歯車62と変速操作軸63とが一体的に回転可能とされる。変速操作軸63には、また、アーム65がその基端部で固定されて、このアーム65と変速操作軸63とが一体的に回転可能とされる。
【0028】
変速操作軸63上の扇形歯車62には、ピニオン61が噛合される。ピニオン61は、電動式モータからなる変速アクチュエータ60により回転可能とされ、その回転により変速操作軸63を扇形歯車62を介して図6における矢印C方向、または図6における矢印D方向へ回転させることができるように構成される。
【0029】
一方、変速操作軸63上のアーム65の先端部には、前後方向に延設された変速ロッド杆67の前端部が枢着される。変速ロッド杆67の後端部には長溝孔67aが前後方向に所定長さをもって形成される。この長溝孔67aに無段変速装置21の変速アーム47の先端部に設けられたピン47aが摺動自在に嵌入されて、変速ロッド杆67の後端部と変速アーム47の先端部とが係合される。変速アーム47は、本発明に係る「変速操作部材」の実施の一形態であり、その基部で油圧ポンプ24の斜板24a(図3)にトラニオン軸を介して連動連結される。
【0030】
こうして、無段変速装置21は、変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されないとき、または、変速操作軸63が回転されて、変速ロッド杆67が後方に移動されても、その移動量が長溝孔67aの所定長さを超えないとき、変速アーム47およびトラニオン軸によって、油圧ポンプ24の斜板24aを傾転させずに中立位置とし、各車輪6・7へ向けて動力を伝達しない中立状態となるように構成される。
【0031】
無段変速装置21は、変速ロッド杆67が殆ど後方へ移動されていない状態で、変速操作軸63が図6における矢印C方向へ回転されて、変速ロッド杆67が後方へ移動され、その後方への移動量が長溝孔67aの所定長さを超えたとき、その時点から、変速アーム47およびトラニオン軸によって、油圧ポンプ24の斜板24a(図3)を変速ロッド杆67の後方への移動量に基づいて傾転させて、変速比を増速側に変更し、移動速度を無段に増速させるように構成される。
【0032】
無段変速装置21は、変速ロッド杆67が長溝孔67aの所定長さを超えて後方へ移動されている状態で、変速操作軸63が図6における矢印D方向へ回転されて、変速ロッド杆67が前方へ移動されたとき、変速ロッド杆67の後方への移動量が長溝孔67aの所定長さを超えている間は、変速アーム47およびトラニオン軸によって、油圧ポンプ24の斜板24aを変速ロッド杆67の前方への移動量に基づいて傾転させて、変速比を減速側に変更し、移動速度を無段に減速させるように構成される。
【0033】
変速操作軸63には、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角(変速アクチュエータ60の回転角)を検知するための第二検出手段66が設けられる。第二検出手段66は、ポテンショメータ等の角度センサからなり、変速操作軸63の回転角を検出することができるように構成される。
【0034】
また、車体フレーム4(図1)の前部には、変速ペダル軸51が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。変速ペダル軸51には変速ペダル16が連動機構50を介して連動連結される。
【0035】
変速ペダル16は、運転操作部10の床面上で前高後低の傾斜状に配置され、この状態が初期位置として保持されるように、付勢手段としてのばね手段により後部を回動支点として付勢される。この変速ペダル16に対しては、操縦者が初期位置にある変速ペダル16を足にて前方向へ踏み込む踏込操作、操縦者が踏み込まれた状態の変速ペダル16から足を外す踏込解除操作が行われる。
【0036】
変速ペダル16は、踏込操作が行われると、初期位置からばね手段に抗して前方向へ回転されて、変速ペダル軸51を図5における矢印E方向へ回転させる一方、踏込解除操作が行われると、ばね手段にて元の初期位置に戻されて、変速ペダル軸51を図5における矢印F方向へ回転させるように構成される。
【0037】
変速ペダル軸51には、変速ペダル16の変速操作量を検知するための第一検出手段55が設けられる。
第一検出手段55は、本発明に係る「操作位置検出手段」の実施の一形態である。第一検出手段55は、ポテンショメータ等の角度センサからなり、変速ペダル軸51の回転角を検出することができるように構成される。
【0038】
また、図3に示すように、走行変速ミッション20には、油圧式無段変速装置21から各車輪6・7への動力を伝達または遮断可能とするためのクラッチ機構22が備えられるとともに、各車輪6・7に制動力を付与するブレーキ機構23が備えられる。
【0039】
図3および図4に示すように、走行変速ミッション20には、ブレーキ機構23に対する回転式の操作軸45が設けられる。操作軸45には作動部材46が固定されて、この作動部材46と操作軸45とが一体的に回転可能とされる。作動部材46はブレーキ機構23に連動連結されるだけでなく、ワイヤー等を介してクラッチ機構22とも連動連結される。
【0040】
ブレーキ機構23には、走行機体3に備えられたブレーキ入切部材75も連動連結される。
【0041】
そして、作動部材46は、操作軸45とともに回転して所定回転位置にあるとき、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態となる一方、別の所定回転位置にあるとき、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態となるように構成される。作動部材46はばね手段により走行状態となるように付勢される。
【0042】
このようにクラッチ機構22およびブレーキ機構23の両方に対する作動部材46には、受け片46aが一体的に設けられる(図3および図4)。受け片46aには、変速ロッド杆67が前後方向に摺動自在に挿通される。変速ロッド杆67の受け片46aよりも後方に位置する部分には、ストッパー片67bが設けられて、このストッパー片67bと受け片46aとが当接可能とされる。
【0043】
変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されないとき、つまり変速ペダル16が初期位置に保持され、その踏込操作が行われないとき、作動部材46は、ばね手段に抗するように、ストッパー片67bに当接されて回転を規制され、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態に保持される。
【0044】
変速操作軸63が回転され、変速ロッド杆67が後方に移動されたとき、つまり変速ペダル16の踏込操作が行われて後述のように変速アクチュエータ60が回転駆動されたとき、作動部材46は、ストッパー片67bの後方への移動にともなってばね手段により回転されて、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態に変更される。
【0045】
また、車体フレーム4の前部には、ブレーキ軸70が横(左右)方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。ブレーキ軸70にはブレーキペダル17が連動連結される。
【0046】
ブレーキペダル17は、運転操作部10の床面上で前高後低の傾斜状に配置され、この状態が初期位置として保持されるように、付勢手段としてのばね手段により後部を回動支点として付勢される。このブレーキペダル17に対しては、操縦者が初期位置にあるブレーキペダル17を足にて前方向へ踏み込む踏込操作、または、操縦者が踏み込まれた状態のブレーキペダル17から足を外す踏込解除操作が行われる。
【0047】
ブレーキペダル17は、踏込操作が行われると、初期位置からばね手段に抗して前方向へ回転されて、ブレーキ軸70を図5における矢印M方向へ回転させる一方、踏込解除操作が行われると、ばね手段により後方向へ回転されて元の初期位置に戻され、ブレーキ軸70を図5における矢印M方向と逆方向へ回転させるように構成される。
【0048】
図4に示すように、ブレーキ軸70には、アーム71がその基端部で固定され、アーム71の先端部には、前後方向に延設されたブレーキロッド杆72の前端部が枢着される。ブレーキロッド杆72の後端部は作動部材46の係止片46bに前後方向に摺動自在に挿通される。
【0049】
係止片46bは作動部材46に一体に設けられる。ブレーキロッド杆72の係止片46bよりも後方へ位置する部分には、ストッパー72aが設けられて、このストッパー72aと係止片46bとが当接可能とされる。
【0050】
ブレーキ軸70が回転されず、ブレーキロッド杆72が前方に移動されないとき、つまりブレーキペダル17が初期位置に保持され、その踏込操作が行われないとき、作動部材46の、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態から、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態への自由な作動が許容される。そのため、変速ペダル16の踏込操作が行われたとき、作動部材46は前述のように走行状態に変更される。
【0051】
ブレーキ軸70が回転され、ブレーキロッド杆72が前方、即ち図5における矢印L方向に移動されたとき、つまりブレーキペダル17の踏込操作が行われたとき、作動部材46は、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態であれば、ばね手段に抗して回転されて、変速ロッド杆67の移動位置にかかわらず、つまり変速ペダル16の踏込操作よりも優先して、強制的に停止状態に変更される。
【0052】
また、走行機体3には、制御装置80(図7)が備えられる。この制御装置80には、第一検出手段55、第二検出手段66、電動式モータからなる変速アクチュエータ60、およびブレーキ入切部材75が接続される。
【0053】
制御装置80は、第一検出手段55に基づいて変速ペダル16の変速操作量を検知し、その検知結果に基づいて無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角があらかじめ設定された設定角となるように、変速アクチュエータ60を回転駆動させるように構成される。制御装置80は、また、第二検出手段66に基づいて油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角を検知するように構成される。
【0054】
このような構成において、変速ペダル16の踏込操作が行われないときには、変速アクチュエータ60により変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されない。そのため、走行変速ミッション20における無段変速装置21の変速アーム47が回転せず、無段変速装置21の油圧ポンプ24の斜板24aが中立位置で保持される。つまり、無段変速装置21が各車輪6・7へ向けて動力を伝達しない中立状態となる。
【0055】
しかも、変速ペダル16の踏込操作が行われないときには、作動部材46が停止状態となって、ブレーキ機構23が作動状態となると同時に、クラッチ機構22が切状態となる。これにより、無段変速装置21(油圧・機械式無段変速装置)から各車輪6・7への動力が遮断されることとなる。したがって、走行機体3は走行せずに停止状態となる。
【0056】
走行機体3が停止状態である時に、変速ペダル16の踏込操作が行われると、変速ペダル軸51が図5における矢印E方向に回転し、第一検出手段55がこの回転よる変速ペダル軸51の回転角を検出する。制御装置80は、この第一検出手段55の検出値を取得し、これに基づいて変速ペダル16の変速操作量を検知する。
【0057】
そして、この変速ペダル16の変速操作量に基づいて、制御装置80は変速アクチュエータ60を回転駆動させる。この変速アクチュエータ60の回転駆動にともなって変速操作軸63が図6における矢印C方向に回転し、変速ロッド杆67が図6における矢印G方向へ移動し始める。
【0058】
変速ロッド杆67の後方への移動量が、その後端側の長溝孔67aの所定長さを超えると、ストッパー片67bが後方へ移動する。その結果、ストッパー片67bにてばね手段による回転を規制されていた作動部材46が回転し、ブレーキ機構23が非作動状態になると同時に、クラッチ機構22が入状態になり、これにより無段変速装置21から各車輪6・7へ動力が伝達可能となる。
【0059】
このときには、変速アーム47が後方に回転し、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aが、その傾転角が変速ペダル16の変速操作量に応じた設定角となるように、トラニオン軸を介して傾転する。これにより、無段変速装置21がその変速比を増速側に変更し、変速した動力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3は走行を始める。
【0060】
このような状態で、変速ペダル16の踏込解除操作を行うと、変速ペダル軸51が図5における矢印F方向に回転し、第一検出手段55がこの回転よる変速ペダル軸51の回転角を検出する。制御装置80は、第一検出手段55の検出値を取得して、これに基づいて変速ペダル16の変速操作量を検知する。
【0061】
そして、この変速ペダル16の変速操作量に基づいて、制御装置80は変速アクチュエータ60を前記とは逆方向に回転駆動させる。変速アクチュエータ60の回転駆動にともなって変速操作軸63が図6における矢印D方向に回転し、変速ロッド杆67が図6における矢印H方向へ移動する。
【0062】
変速ロッド杆67の前方への移動にともなって、変速アーム47が前方に回転し、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aが、その傾転角が変速ペダル16の変速操作量に応じた設定角となるように、トラニオン軸を介して傾転する。これにより、無段変速装置21がその変速比を減速側に変更し、変速した動力を各車輪6・7へ伝達し、走行機体3の速度が減速する。
【0063】
変速ペダル16が元の初期位置まで戻った時点で、変速アーム47も元の位置に戻り、無段変速装置21の油圧ポンプ24の斜板24aが中立位置となる。したがって、走行機体3の走行が停止する。
【0064】
次に、エンジン5の回転数を変更する構成について説明する。
図7に示すように、エンジン回転数制御装置95は、エンジン5の回転数を変更制御する装置である。エンジン回転数制御装置95は、制御装置80と、第一検出手段55と、変速アクチュエータ60と、回転数変更アクチュエータ88と、エンジン出力負荷検出手段90と、レバー位置検出手段91と、エンジン回転数検出手段92と、から構成されている。
制御装置80には、電動式モータからなる回転数変更アクチュエータ88が接続されている。
回転数変更アクチュエータ88は、本発明に係る「変更アクチュエータ」の実施の一態様であり、ワイヤー等を介してスロットルレバー85に連動連結されている。
スロットルレバー85は、エンジン5の回転数を変更するものであり、回転数変更アクチュエータ88が回動駆動されることで回動する。スロットルレバー85の回動によりエンジン5に供給される燃料の供給量が変化し、その変化量によってエンジン5の回転数が変更される。
制御装置80は、第一検出手段55に基づいて変速ペダル16の変速操作量を検知し、その検知結果に基づいて、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数となるように、回転数変更アクチュエータ88を回動駆動させるように構成されている。
【0065】
次に、制御構成について説明する。
【0066】
図7に示すように、制御装置80には、第一検出手段55と、第二検出手段66と、エンジン出力負荷検出手段90と、レバー位置検出手段91と、エンジン回転数検出手段92と、オートクルーズスイッチ18と、最高速度設定器77と、移動速度検知手段86と、が接続される。
また、制御装置80には、変速アクチュエータ60と、回転数変更アクチュエータ88と、表示パネル15と、ブレーキ入切部材75と、が接続される。
【0067】
制御装置80は、CPU(中央演算装置)と、記憶装置としてROM、RAM、HDD等がバスで接続される。但し、これらはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。ROMには制御プログラムが記憶されている。
エンジン出力負荷検出手段90は、本発明に係る「負荷検出手段」の実施の一形態である。エンジン出力負荷検出手段90は、エンジン5の出力負荷を検出する負荷センサ等からなり、その検出値からエンジン5の出力負荷を検知することができるように構成されている。
当該負荷センサは、エンジン5の回転数と、エンジン5への燃料供給量との関係からエンジン5の負荷を検出する。即ち、当該負荷センサは、エンジン5の回転数を検出する手段と、エンジン5への燃料の供給量を検出する手段と、を有するものである。
エンジン出力負荷検出手段90は、エンジン5への燃料の供給量が一定の場合に、エンジン5の回転数が減少すれば、エンジン5の出力負荷が増加したと検知し、逆に、エンジン5の回転数が増加すれば、エンジン5の出力負荷が減少したと検知する。
【0068】
レバー位置検出手段91は、スロットルレバー85の角度を検出する角度センサ等からなり、その検出値からスロットルレバー85の位置を検知することができるように構成されている。
【0069】
エンジン回転数検出手段92は、本発明に係る「回転数検出手段」の実施の一形態である。エンジン回転数検出手段92は、エンジン5の出力軸の回転数を検出する回転数センサ等からなり、その検出値からエンジン5の回転数を検知することができるように構成される。当該回転数センサは、エンジン5の出力軸に配置される角度センサ等である。
【0070】
最高速度設定器77は、運転操作部10に設けられたダイヤル等からなり、田植機1の最高速度を設定することができるように構成される。
移動速度検知手段86は、車軸等の回転数を検出する回転数センサ等からなり、その検出値から田植機1の移動速度を検知することができるように構成される。
【0071】
ブレーキ入切部材75は、電動式のモータやシリンダ、または電磁バルブで制御される油圧シリンダ等からなり、その作動によりブレーキ機構23を非作動状態と作動状態とを切り替えることができるように構成される。ただし、ブレーキ入切部材75は、作動部材46によるブレーキ機構23の動作と干渉することなく、当該ブレーキ装置23を動作させることができるように設けられる。
【0072】
次に、エンジン5の回転数の制御について説明する。
【0073】
まず、エンジン5の出力負荷と、スロットルレバー85の変更制御と、の関係について説明する。
図7に示すように、エンジン出力負荷検出手段90は制御装置80に接続され、エンジン5の出力負荷を検出する。
【0074】
図8に示すように、操縦者が、運転操作部10の変速ペダル16を踏込操作して田植機1の走行が開始されると、制御装置80は、エンジン出力負荷検出手段90により検出されたエンジン5の出力負荷を取得する(S1)。制御装置80は、この取得したエンジン5の出力負荷と、予め設定した所定値とを比較し、この取得したエンジン5の出力負荷が当該所定値以上であるか否かを判断する(S2)。
ここでの「予め設定した所定値」とは、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持することのできるエンジン5の出力負荷の最大値である。つまり、エンジン5の出力負荷が大きくなりすぎると、変速ペダル16の変速操作量に対応してエンジン5の回転数を一定にすることができないため、予め制御可能な設定値を設定する。
【0075】
取得したエンジン5の出力負荷が前記所定値以上であると判断した場合(S2−Yes)、即ち、走行抵抗等が大きくなり、エンジン5の出力負荷が、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持することができない負荷であると判断した場合、制御装置80は、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン回転数に維持するように、回転数変更アクチュエータ88を回動駆動して、スロットルレバー85を増加側に所定量回動する(S3)。これにより、エンジン5は回転数が所定量増加される。
【0076】
取得したエンジン5の出力負荷が前記所定値以上でないと判断した場合(S2−No)、即ち、エンジン5の出力負荷が、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持することができる程度の負荷であると判断した場合、制御装置80は、エンジン回転数検出手段92からエンジン5の回転数を取得し(S4)、このエンジン5の回転数が設定回転数より大きいか否かを判断する(S5)。即ち、エンジン5の出力負荷が小さくなってエンジン5の回転数が設定回転数よりも上昇していないかを判断する。
取得したエンジン5の回転数が設定回転数より大きいと判断した場合(S5−Yes)、回転数変更アクチュエータ88を回動駆動して、スロットルレバー85を減少側に所定量回動する(S6)。
取得したエンジン5の回転数が設定回転数より大きくない判断した場合(S5−No)、即ちエンジン5の回転数が設定回転数となっている場合、引き続き、エンジン出力負荷検出手段90により検出されたエンジン5の出力負荷を取得する(S1)。
【0077】
次に、速度一定維持制御(オートクルーズ制御)におけるエンジン5の出力負荷と、スロットルレバー85の変更制御と、の関係について説明する。
図7に示すように、オートクルーズスイッチ18は制御装置80に接続され、スイッチがON(入)になったとき、田植機1(走行機体3)の移動速度を一定に保持させる(移動速度を固定する)。
【0078】
図9に示すように、操縦者が、運転操作部10の変速ペダル16を踏込操作して田植機1の走行が開始されて、制御装置80は、オートクルーズスイッチ18がON(入)であるか否かを判断する(S11)。
オートクルーズスイッチ18がON(入)でない(OFF(切)である)と判断した場合(S1−No)、前記制御(図8・S1)が行われる。
【0079】
オートクルーズスイッチ18がON(入)された判断した場合(S11−Yes)、制御装置80は、第一検出手段55より変速ペダル軸51の回転角を取得し、その検出結果に基づいて変速ペダル16の変速操作量を演算して取得する(S12)。
【0080】
制御装置80は、第一検出手段55の検出結果に基づく変速ペダル16の変速操作量を記憶する(S13)。
【0081】
制御装置80は、前記記憶した変速ペダル16の変速操作量に応じた移動速度が維持されるように、変速アクチュエータ60を回動駆動させることで、田植機1を定速度で移動させる速度一定維持制御(オートクルーズ制御)を開始する(S14)。これにより、田植機1は移動速度が一定に維持された状態で移動する。
【0082】
速度一定維持制御(オートクルーズ制御)が開始されると、制御装置80は、エンジン出力負荷検出手段90により検出されたエンジン5の出力負荷を取得する(S15)。制御装置80は、この取得したエンジン5の出力負荷と、予め設定した所定値とを比較し、この取得したエンジン5の出力負荷が当該所定値以上であるか否かを判断する(S16)。
ここでの「予め設定した所定値」とは、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持することのできるエンジン5の出力負荷の最大値である。
【0083】
取得したエンジン5の出力負荷が、前記所定値以上でないと判断した場合(S16−No)、即ちエンジン5の出力負荷が、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持することができる程度の負荷であると判断した場合、制御装置80は、エンジン回転数を取得して(S18)、このエンジン回転数が設定回転数より大きいかどうか判断する(S19)。即ち、負荷が小さくなってエンジン回転数が設定回転数よりも上昇していないかを判断する。
【0084】
取得したエンジン回転数が設定回転数よりも大きいと判断した場合(S19−Yes)、回転数変更アクチュエータ88を回動駆動して、スロットルレバー85を減少側に所定量回動する(S20)。そして、オートクルーズ制御が解除されていないかを判断する(S21)。
取得したエンジン回転数が設定回転数よりも大きくないと判断した場合(S19−Yes)、即ち、取得したエンジン回転数が設定回転数であると判断した場合、オートクルーズ制御が解除されていないかを判断する(S21)。
【0085】
ステップS16において、取得したエンジン5の出力負荷が、前記所定値以上であると判断した場合(S16−Yes)、即ちエンジン5の出力負荷が、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持することができない負荷であると判断した場合、制御装置80は、変速ペダル16の変速操作量に対応したエンジン回転数で一定維持するように、スロットルレバー85を変更制御するために、回転数変更アクチュエータ88を回動駆動させる(S17)。これにより、スロットルレバー85は、エンジン5の回転数を増加させる方向に作動する。
そして、変速ペダル16またはブレーキペダルが踏み込まれ、または、オートクルーズスイッチ18がOFFとされて、オートクルーズ制御が解除されていないかを判断する(S21)。
【0086】
オートクルーズが解除されていないと判断した場合(S21−No)は、ステップS15に戻り、オートクルーズが解除されると判断した場合(S21−Yes)は、ステップS11に戻る。
【0087】
次に、エンジン5の出力負荷を、エンジン出力負荷検出手段90を用いずに、スロットルレバー85の位置およびエンジン5の回転数に基づいてエンジン5の出力負荷を演算し、この出力負荷を用いてスロットルレバー85を回動制御する実施形態について説明する。
図7に示すように、レバー位置検出手段91は制御装置80に接続され、スロットルレバー85の角度を検出する。つまり、エンジン5の回転数の設定値を検出する。
また、エンジン回転数検出手段92は制御装置80に接続され、エンジン5の出力軸の回転数を検出する。つまり、エンジン5の実エンジン回転数を検出する。
制御装置80は、スロットルレバー85によるエンジン5の回転数設定値と実エンジン回転数の偏差よりエンジン5の出力負荷を演算する。
こうして得られたエンジン5の出力負荷は、エンジン出力負荷検出手段90により検出したエンジン5の出力負荷に代えて前記(図8および図9)と同様に制御することができる。
【0088】
次に、エンジン5の出力負荷が大きくなった場合に、変速ペダル16の操作に優先させて、エンジン5の回転数を一定に維持するようにスロットルレバー85を回動制御する実施形態について説明する。
具体的には、植付作業時において、走行負荷(エンジン5の出力負荷)が大きくなって移動速度が低下すると、操縦者は必然的に変速ペダル16を加速側に操作して移動速度を維持しようとする。しかし、従来では、変速ペダル16を操作するとスロットルレバー85および変速アーム47が同時に回動するため、操縦者が所望する移動速度よりも速い移動速度となってしまうことがあり、植え付け精度に悪影響を及ぼすことがあった。
そこで、エンジン5の出力負荷が所定値以上になったときは、まず、変速アーム47は回動させずに、スロットルレバー85のみを回動してエンジン5の回転数を増加させる。これにより、エンジン5の出力負荷の軽減を図り、田植機1の移動速度が維持できるようにする。この状態でエンジン5の出力負荷がいまだ軽減されず、田植機1の移動速度が低下した時は、変速アーム47を増速側に回動させるようにする。
【0089】
ここで、図10に示すフローチャートにより上記制御について詳述する。
作業時において、制御装置80は、エンジン出力負荷検出手段90から検知することにより、または、設定エンジン回転数と実エンジン回転数から演算することにより、エンジン5の出力負荷を取得する(S31)。
制御装置80は、取得したエンジン5の出力負荷が予め設定した所定値以上であるか否か判断する(S32)。
【0090】
取得したエンジン5の出力負荷が所定値未満と判断した場合(S32−No)、変速ペダル16の変速操作量を検知し(S33)、その変速操作量に応じて、変速アーム47およびスロットルレバー85を変速アクチュエータ60および回転数変更アクチュエータ88により回動する(S34)。
【0091】
取得したエンジン5の出力負荷が所定値以上と判断した場合(S32−Yes)、変速ペダル16が操作されているか否かを判断する(S35)。
変速ペダル16が操作されていないと判断した場合(S35−No)、スロットルレバー85を回転数変更アクチュエータ88により所定量回動する(S36)。
【0092】
変更ペダル16が操作されたと判断した場合(S35−Yes)、変速ペダル16による変速アーム47の駆動よりも優先させて、スロットルレバー85を回転数変更アクチュエータ88により所定量回動し(S37)、さらに、エンジン5の出力負荷が所定値以上であるか否かを判断する(S38)。
【0093】
エンジン5の出力負荷が所定値以上でないと判断した場合(S38−No)、変速アーム47は駆動されない状態で、回転数変更アクチュエータ88を回動して、スロットルレバー85を回動させることによりエンジン5の回転数を上昇させる(S39)。
エンジン5の出力負荷が所定値以上であると判断した場合(S38−Yes)、スロットルレバー85だけでは負荷の軽減が図れないため、変速アクチュエータ60を回動して、変速アーム47を減速側に回動させる(S40)。
【0094】
以上のように、田植機1のエンジン回転数制御装置95は、
エンジン5と、無段変速装置21と、エンジン5の回転数を変更するスロットルレバー85と、無段変速装置21を変速操作する変速アーム47(変速操作部材)と、変速ペダル16(変速操作具)と、エンジン回転数制御装置95と、を備えた田植機1において、
変速ペダル16(変速操作具)の操作位置を検出する第一検出手段55(操作位置検出手段)と、
スロットルレバー85の操作を行う回転数変更アクチュエータ88(変更アクチュエータ)と、
変速ペダル16(変速操作具)の変速操作量に基づいて変速アーム47(変速操作部材)の操作を行う変速アクチュエータ60と、
エンジン5の出力負荷を検出するエンジン出力負荷検出手段90(負荷検出手段)と、
第一検出手段55(操作位置検出手段)と、回転数変更アクチュエータ88と、変速アクチュエータ60と、エンジン出力負荷検出手段90(負荷検出手段)と、が接続される制御装置80と、
を備え、
制御装置80は、エンジン出力負荷検出手段90(負荷検出手段)の検出結果に基づきエンジン5の出力負荷が所定値以上になったときに、変速ペダル16(変速操作具)の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持するように、スロットルレバー85を変更制御するものである。
このように構成することで、植付作業の途中で走行負荷が大きくなったときに、エンジン5の出力不足を防止できる。例えば、圃場の耕盤に形成された大きな凹部に車輪が嵌っても、所定の速度を維持して移動できる。条件が悪い圃場でも植付作業性を向上できる。また、個別のアクチュエータでスロットルレバー85の操作および変速アーム47(変速操作部材)の操作を行うため、的確にエンジン5の回転数を制御することができる。
【0095】
また、田植機1のエンジン回転数制御装置95は、
エンジン5と、無段変速装置21と、エンジン5の回転数を変更するスロットルレバー85と、無段変速装置21を変速操作する変速アーム47(変速操作部材)と、変速ペダル16(変速操作具)と、エンジン回転数制御装置95と、を備えた田植機1において、
変速ペダル16(変速操作具)の操作位置を検出する第一検出手段55(操作位置検出手段)と、
スロットルレバー85の位置を検出するレバー位置検出手段91と、
エンジン5の出力軸の回転数を検出するエンジン回転数検出手段92(回転数検出手段)と、
スロットルレバー85の操作を行う回転数変更アクチュエータ88(変更アクチュエータ)と、
変速ペダル16(変速操作具)の変速操作量に基づいて変速アーム47(変速操作部材)の操作を行う変速アクチュエータ60と、
第一検出手段55(操作位置検出手段)と、レバー位置検出手段91と、エンジン回転数検出手段92(回転数検出手段)と、回転数変更アクチュエータ88と、変速アクチュエータ60と、が接続される制御装置80と、
を備え、
制御装置80は、レバー位置検出手段91およびエンジン回転数検出手段92(回転数検出手段)の検出結果に基づきエンジン5の出力負荷を取得し、
取得したエンジン5の出力負荷が所定値以上になったときに、変速ペダル16(変速操作具)の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持するように、スロットルレバー85を変更制御するものである。
このように構成することで、植付作業の途中で走行負荷が大きくなったときに、エンジン5の出力不足を防止できる。例えば、圃場の耕盤に形成された大きな凹部に車輪が嵌っても、所定の速度を維持して移動できる。条件が悪い圃場でも植付作業性を向上できる。
【0096】
さらに、田植機1のエンジン回転数制御装置95は、
変速ペダル16(変速操作具)を初期位置に支持させた状態で、走行機体3の移動速度を一定に維持させるオートクルーズスイッチ18(速度一定維持スイッチ)を設け、
制御装置80は、オートクルーズスイッチ18(速度一定維持スイッチ)の入り操作によって走行機体3を定速度で移動させ、且つ、エンジン5の出力負荷が所定値以上になったときに、変速ペダル16(変速操作具)の変速操作量に対応したエンジン5の回転数に一定維持するように、スロットルレバー85を変更制御するものである。
このように構成することで、移動速度を一定に維持しながら植付作業を行っているときに、エンジン5の出力負荷が所定値以上になっても、エンジン5の回転数に一定維持するように制御しているから、操縦者が特別な操作を行わなくても、植付途中での動力不足を防止でき、植付作業をスムーズに行うことができる。
【0097】
さらにまた、田植機1のエンジン回転数制御装置95は、
制御装置80は、エンジン5の出力負荷が所定値未満のときには、第一検出手段55(操作位置検出手段)の検出結果に基づき回転数変更アクチュエータ88を作動させてエンジン5の回転数を制御し、
エンジン5の出力負荷が所定値以上になったときには、変速ペダル16(変速操作具)の操作に優先させて、変速ペダル16(変速操作具)の変速操作量に対応したエンジン5の回転数を一定維持するようにスロットルレバー85を変更制御するものである。
このように構成することで、走行負荷が所定値以上になったときに、変速ペダル16(変速操作具)を操作した場合であっても、変速アーム47を回転して増速するよりも先に、スロットルレバー85を回動してエンジン5の回転数を維持することにより、エンストすることを回避することができる。そして、その後アクチュエータによって増速制御を行い移動速度の維持を図ることで、植付精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 田植機
5 エンジン
16 変速ペダル(変速操作具)
18 オートクルーズスイッチ(速度一定維持スイッチ)
21 無段変速装置
55 第一検出手段(操作位置検出手段)
60 変速アクチュエータ
85 スロットルレバー
88 回転数変更アクチュエータ(変更アクチュエータ)
90 エンジン出力負荷検出手段(負荷検出手段)
91 レバー位置検出手段
92 エンジン回転数検出手段(回転数検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、無段変速装置と、前記エンジンの回転数を変更するスロットルレバーと、前記無段変速装置を変速操作する変速操作部材と、変速操作具と、エンジン回転数制御装置と、を備えた田植機において、
前記変速操作具の操作位置を検出する操作位置検出手段と、
前記スロットルレバーの操作を行う変更アクチュエータと、
前記変速操作具の変速操作量に基づいて前記変速操作部材の操作を行う変速アクチュエータと、
前記エンジンの出力負荷を検出する負荷検出手段と、
前記操作位置検出手段と、前記変更アクチュエータと、前記変更アクチュエータと、前記負荷検出手段と、が接続される制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記負荷検出手段の検出結果に基づきエンジンの出力負荷が所定値以上になったときに、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数に一定維持するように、前記スロットルレバーを変更制御する田植機のエンジン回転数制御装置。
【請求項2】
エンジンと、無段変速装置と、前記エンジンの回転数を変更するスロットルレバーと、前記無段変速装置を変速操作する変速操作部材と、変速操作具と、エンジン回転数制御装置とを備えた田植機において、
前記変速操作具の操作位置を検出する操作位置検出手段と、
前記スロットルレバーの位置を検出するレバー位置検出手段と、
前記エンジンの出力軸の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記スロットルレバーの操作を行う変更アクチュエータと、
前記変速操作具の変速操作量に基づいて前記変速操作部材の操作を行う変速アクチュエータと、
前記操作位置検出手段と、前記レバー位置検出手段と、前記回転数検出手段と、前記変更アクチュエータと、前記変更アクチュエータと、が接続される制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記レバー位置検出手段および前記回転数検出手段の検出結果に基づき前記エンジンの出力負荷を取得し、
取得したエンジンの出力負荷が所定値以上になったときに、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数に一定維持するように、前記スロットルレバーを変更制御する田植機のエンジン回転数制御装置。
【請求項3】
前記変速操作具を初期位置に支持させた状態で、走行機体の移動速度を一定に維持させる速度一定維持スイッチを設け、
前記制御装置は、前記速度一定維持スイッチの入り操作によって前記走行機体を定速度で移動させ、且つ、前記エンジンの出力負荷が所定値以上になったときに、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数に一定維持するように、前記スロットルレバーを変更制御する請求項1または請求項2に記載の田植機のエンジン回転数制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エンジンの出力負荷が所定値未満のときには、前記操作位置検出手段の検出結果に基づき前記変更アクチュエータを作動させて前記エンジンの回転数を制御し、
前記エンジンの出力負荷が所定値以上になったときには、前記変速操作具の操作に優先させて、前記変速操作具の変速操作量に対応したエンジン回転数を一定維持するように前記スロットルレバーを変更制御する請求項1または請求項2に記載の田植機のエンジン回転数制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−216400(P2010−216400A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65155(P2009−65155)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】