説明

画像処理システム、画像処理方法及びプログラム

【課題】入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を行う際に画質が劣化しない画像処理システム、画像処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】補正パラメータエンコーダ202は、ズーム領域をM×N個に格子分割し、格子分割されたズーム領域の各格子点における歪み補正パラメータを抽出する。補正パラメータエンコーダ202は、入力画像と同サイズの画像において、M×N個に格子分割した際の各格子点の座標と、格子分割されたズーム領域の対応する格子点の歪み補正パラメータとを対応付けて圧縮し、圧縮データを作成して画像処理装置100に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ、銀塩カメラなどに用いられる画像処理システム、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置により撮像された画像には、撮像に使用したレンズの歪曲収差特性の影響で歪み(ディストーション)が発生していた。高精度・高性能なレンズを使用すれば、歪みを目立たなくすることは可能であるが、レンズコストの高騰を抑えた場合や光学ズームレンズを搭載した撮像装置では、歪みの発生を完全に防ぐことは難しい。更に、車載カメラや監視カメラ等、広角な撮像範囲を必要とする撮像装置では大きい歪みが生じていた。
【0003】
こうした歪みを除去するために、近年、予め記録された全画素に対応する補正ベクトルを読み出し、補正情報に応じて画像を格納する画像メモリから必要な情報を取り出し、2次元補間方式による幾何学補正を実行するレンズの歪曲収差特性に起因する歪みを画像処理によって補正する画像処理装置(第1の従来技術)が提案されている。
【0004】
しかし、このような画像処理装置は、全画素に対応した歪み補正情報を持つ必要があり、ハードウェアによる実現の場合、大容量の記憶領域が必要なのでコストが高くなる、という不利益があった。
【0005】
こうした不利益を解消するために、特許文献1に開示された画像処理システム(第2の従来技術)は、画像入力手段としてレンズ及び撮像素子を備え、予め効率よく圧縮された水平方向と垂直方向とで独立な補正パラメータから、適切な補正パラメータを選択し、エンコードする手段と、エンコードされたパラメータをリアルタイムにデコードする手段と、デコードされた歪み補正パラメータにより水平方向と垂直方向を独立に補間演算を実現する手段とを備える画像処理システムを提供している。すなわち、メモリアーキテクチャの工夫と、補正パラメータの圧縮とを行うことにより、これらの課題を解決し、メモリアーキテクチャの特徴を活かして歪み補正を実現しながら、同時に拡大縮小処理も行うための信号処理回路と補間回路も用意している。
【0006】
このため、上述した第1の従来の画像処理装置の最大のデメリットであった、全画素に対応した歪み補正情報を保持する必要があり、ハードウェアによる実現の場合、大容量の記憶領域が必要となりコストが高くついてしまうという点について、特許文献1に開示された画像処理装置では、膨大な補正パラメータの内、入力画像を水平M×垂直Nに格子分割し、格子線分の両端及び格子線分をn分割して得られる内分点n−1上における歪み補正パラメータを圧縮(符号化)、伸張(復号)して求め、これを基に歪み補正を行うことで克服している。
【0007】
第1従来技術の画像処理装置と特許文献1に記載された第2従来技術の画像処理システムとを比較すると、例えば入力画像の解像度が800×600画素であった場合、上述した従来の画像処理装置であれば、歪み補正情報には、800×600個の歪み補正パラメータが必要であったのに対し、第2の従来技術の特許文献1に開示された画像処理システムでは、8×8に格子分割し、格子点間の分割数はn=1とした場合、各格子点の歪み補正パラメータを使用するので、8×8個の歪み補正パラメータのみが必要であり、歪み補正パラメータのデータ量を1/7500に削減できた。
【特許文献1】特開2004−80545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどにおいては、電子的に処理を行い画面内の一部分をズーミングすることがある(以下、単に『電子ズーム』という)。特許文献1に開示された画像処理システムにおいて、歪み補正を行いかつ電子ズームを実行する場合について、以下説明する。
【0009】
特許文献1に開示された画像処理システムにおいて電子ズームを行う場合、全画面に対し歪み補正を実施した画像の一部を切り出した後に電子ズーム処理を施すことになる。
図1は、特許文献1に開示された画像処理装置において歪み補正及び電子ズームを行った場合について説明するための図である。図1では、一例として1280×960画素の画像の中心部320×240画素の領域を電子ズーム処理し、640×480画素の画像を得る場合について説明する。
【0010】
図1(a)は、入力画像、すなわち歪み補正及び電子ズームされる前の入力画像である。ここでは一例として1280×960画素の画像を入力画像としている。
図1(b)は、図1(a)に示した画像に等倍に歪み補正処理を行った画像である。
次に、図1(c)に示すように、図1(b)において歪み補正を行った画像の、電子ズームを行う対象となる中心部を切り出す。図1(c)に示す例は、1280×960画素の画像の中心部のサイズを320×240画素とした場合であり、このとき、切り出し位置(切り出す画像の左上の座標値)は(480,360)である。
図1(d)に示すように、図1(c)において切り出した中心部画像を、2倍に拡大して640×480画素の電子ズーム画像とする。
【0011】
格子分割という観点から見れば、特許文献1に開示された画像処理システムにおいては、例えば図2(a)に示すように、8×8に格子分割を行い格子点間の分割数を1にした場合、電子ズームの際に中心部の320×240画素の領域を切り出して拡大して電子ズーム画像を作成しようとすると、切り出された320×240画素の領域は図2(b)に示すように、2×2の格子分割しかされていないため、歪み補正画像を作成するための歪み補正パラメータは、各格子点分、すなわち9個しか取得されない。
なお、歪み補正パラメータは、歪みを有する入力画像に対して、入力画像を構成する画素点における水平方向及び垂直方向の補正量を示すパラメータである。特許文献1に開示された画像処理システムでは、歪み補正パラメータを利用し入力画像に1次元補間処理を施すことにより歪み補正を行う。歪み補正パラメータは、上記のように入力画像に対し格子分割を行い、各格子点におけるゆがみを補正するための補正量ベクトルを歪み補正パラメータとすることにより全画素における歪み補正パラメータを保持しなくても良いようになっている。
【0012】
特許文献1に開示された画像処理システムでは、格子点以外に相当する画素の歪み補正パラメータは、すべて補間して求められるが、図2(a)のように荒く格子分割されると原画素の各歪み補正パラメータに対し誤差が大きくなる。これにより、出力画像(歪み補正と電子ズームとを施された画像)においてゆがみが十分に補正されず、本来自然な曲線になるべきところが折れ線になったり不自然に変形したりすることがある。レンズの歪みが緩ければそれほど目立つものではないが、車載カメラや監視カメラ等で使用されている歪みのきついレンズを画像処理システムに適用した場合、これが顕著に現れてしまう。
【0013】
すなわち、入力画像内の一部を拡大する電子ズーム処理の場合、特許文献1に開示された画像処理システムでは、ズームされた画像の一部からしか歪み補正パラメータを取得せずに歪み補正処理及びズーム処理を施した画像を作成しているので、画質が悪くなる、という不利益があった。
【0014】
本発明は、上述した不利益を解消するために、歪み補正と電子ズームとの両方の処理を入力画像に対して行う場合に、出力画像の画質が悪くならない画像処理システム、画像処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するために、第1の発明の画像処理システムは、入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を実行する画像処理システムであって、入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割して格子点における歪み補正パラメータを抽出し、当該歪み補正パラメータを圧縮して圧縮データを作成する第1の画像処理装置と、前記第1の画像処理装置が圧縮した前記圧縮データを伸張して使用し前記ズーム対象領域の歪み補正及び電子ズーム処理を行って出力画像とする第2の画像処理装置と、を有し、前記第1の画像処理装置は、前記ズーム対象領域を格子分割した各格子点における歪み補正パラメータと、前記入力画像と同じ大きさの画像を前記所定の数と同じ数だけ格子分割した際の各格子点の位置情報とを、同一の格子内位置にある格子点について対応付け、前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを圧縮して圧縮データとする。
【0016】
第2の発明の画像処理方法は、入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割する第1の工程と、前記第1の工程において格子分割された格子点における歪み補正パラメータを抽出する第2の工程と、前記第2の工程において抽出された歪み補正パラメータと、前記入力画像と同じ大きさの画像を前記所定の数と同じ数だけ格子分割した際の各格子点の位置情報とを、同一の格子内位置にある格子点について対応付ける第3の工程と、前記第3の工程において対応付けられた前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを圧縮して圧縮データとする第4の工程と、前記第4の工程において得られた前記圧縮データを伸張する第5の工程と、前記入力画像の前記ズーム対象領域を前記入力画像と同じ大きさに拡大する第6の工程と、前記第6の工程において拡大された前記ズーム対象領域に対し、前記第5の工程において前記圧縮データを伸張して取得した前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを基に歪み補正処理を行う第7の工程と、前記第7の工程において歪み補正された前記拡大されたズーム領域を、所定の大きさまで縮小して出力する第8の工程と、を有する。
【0017】
第3の発明のプログラムは、画像処理システムが実行するプログラムであって、入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割する第1の工程と、前記第1の工程において格子分割された格子点における歪み補正パラメータを抽出する第2の工程と、前記第2の工程において抽出された歪み補正パラメータと、前記入力画像と同じ大きさの画像を前記所定の数と同じ数だけ格子分割した際の各格子点の位置情報とを、同一の格子内位置にある格子点について対応付ける第3の工程と、前記第3の工程において対応付けられた前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを圧縮して圧縮データとする第4の工程と、前記第4の工程において得られた前記圧縮データを伸張する第5の工程と、前記入力画像の前記ズーム対象領域を前記入力画像と同じ大きさに拡大する第6の工程と、前記第6の工程において拡大された前記ズーム対象領域に対し、前記第5の工程において前記圧縮データを伸張して取得した前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを基に歪み補正処理を行う第7の工程と、前記第7の工程において歪み補正された前記拡大されたズーム領域を、所定の大きさまで縮小して出力する第8の工程と、を前記画像処理システムに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を行う際に画質が劣化しない画像処理システム、画像処理方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態にかかる画像処理システム1000について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る画像処理システム1000は、画像処理装置100(第2の画像処理装置)、前処理装置200(第1の画像処理装置)、外部記録メディア300で構成される。
図3は、本実施形態に係る画像処理システム1000の構成を示すブロック図である。
【0020】
図3に示すように、画像処理装置100は、レンズ101、撮像素子102、データ変換部103、同期信号生成部104、画像メモリ105、信号処理部106、表示処理部107、再生部108、記録部109、歪み補正処理制御部110、歪み補正メモリ111、補正パラメータデコーダ112を有する。
なお、画像処理装置100の各構成はハードウェア的に実現される必要は無く、ソフトウェア上の構成とすることが可能である。
【0021】
レンズ101は、被写体からの反射光を集光し、撮像素子102に写影する。レンズ101は、単焦点のレンズにとどまらず、ズーム機能を有する。
撮像素子102はCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどから構成され、同期信号生成部104から供給された内部同期信号に応じて写影された映像をキャプチャしアナログ画像信号を生成する。
【0022】
データ変換部103は撮像素子102に接続され、同期信号生成部104から供給された内部同期信号に応じて、撮像素子102により生成されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し入力画像を生成する。
同期信号生成部104は、外部から供給されるクロック信号CLKに応じて内部生成信号を生成し、撮像素子102、データ変換部103及び信号処理部106へ供給する。
画像メモリ105は、データ変換部103が出力した入力画像を格納する。
【0023】
信号処理部106は、データ変換部103、同期信号生成部104、画像メモリ105、歪み補正処理制御部110及び補正パラメータデコーダ112に接続され、歪み補正処理制御部110から供給されたコマンドに応じて、データ変換部103から供給される入力画像を画像メモリ105へ格納するとともに、補正パラメータデコーダ112が出力した補正量ベクトルを基に当該入力画像に対する補正処理を実行する。ここで、補正量ベクトルは例えば、入力画像の各画素を歪み補正及びズーム処理の際にどの方向に移動させるかを記述したベクトルであり、信号処理部106は各画素に対応する補正量ベクトルだけ各画素を移動させて補正画像を作成する。そして、信号処理部106は、当該補正により得られた補正画像を表示処理部107及び記録部109へ供給する。
また、信号処理部106は、入力された画像の一部を拡大(縮小)する電子ズーム処理を実行する。
表示処理部107は、図3に図示しない例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやLCD(Liquid Crystal Display)等の表示部に信号処理部106が出力した補正画像を表示する。
【0024】
再生部108は、後述する外部記録メディア300に記録された画像を再生し、再生信号を表示処理部107に出力する。
記録部109は、信号処理部106が出力した補正画像をテープやフレキシブルディスク、DVD(Digital Versatile Disk)、HDD(Hard Disk Drive)、メモリ等の外部記録メディア300に記録する。なお、信号処理部106により生成された画像信号は、インターネットやワイヤレス通信などを用いて外部記録メディア300に記録されるようにしてもよい。
【0025】
歪み補正処理制御部110は、図3に図示しない操作部を介したユーザの入力等に応じて、所定の動作を命令するコマンド等を信号処理部106へ出力するとともに、レンズ101の位置情報を補正パラメータデコーダ112へ供給する。この位置情報は、後述する歪み補正パラメータを算出する際に使用される。
歪み補正メモリ111は、後述する補正パラメータエンコーダ202から供給される圧縮データを格納する。
【0026】
補正パラメータデコーダ112は、信号処理部106、歪み補正処理制御部110、歪み補正メモリ111及び後述する補正パラメータエンコーダ202に接続されており、歪み補正処理制御部110から供給されたレンズ101の位置情報を使用して、後述する補正パラメータエンコーダ202から供給された圧縮データを歪み補正メモリ111から読み出し、伸張(デコード)して歪み補正パラメータ(補正量ベクトル)を取得し、取得した補正量ベクトルを信号処理部106へ供給する。
【0027】
次に、前処理装置200は、補正パラメータ導出部201、補正パラメータエンコーダ202、歪み補正パラメータメモリ203を有する。
なお、前処理装置200の各構成はハードウェア的に実現される必要は無く、ソフトウェア上の構成とすることが可能である。
補正パラメータ導出部201は、レンズ101に固有の歪曲収差によって決まる、当該レンズ101によって取得される画像の全画素の歪み補正パラメータを算出し、補正パラメータメモリ203に記憶する。この処理は、歪み補正パラメータがレンズ101に固有のものであるため、画像処理システムが歪み補正及びズーム処理を行う以前に実行される。
【0028】
歪み補正パラメータとは、歪みを有する入力画像に対して、入力画像を構成する画素点における水平方向及び垂直方向の補正量を示すパラメータである。
【0029】
補正パラメータエンコーダ202は、図示しない操作部を介したユーザの操作等に応じて、補正パラメータ導出部201が算出した歪み補正パラメータを補正パラメータメモリ203から読み出し、圧縮(エンコード)して圧縮データを作成し、圧縮データを補正パラメータデコーダ112へ供給する。なお、圧縮方法や形式については本発明では限定しない。
この際、補正パラメータエンコーダ202は、入力画像をM×N(M,Nは任意の自然数)に格子分割し、格子分割された格子点及び格子線分をn分割して得られる内分点n−1上における歪み補正パラメータをエンコードして画像処理装置100に供給する。
これにより、膨大な歪み補正パラメータの内の一部のみを利用して歪み補正を行うことができるようになっている。
補正パラメータメモリ203は、補正パラメータ導出部201が算出したレンズ101に固有の歪み補正パラメータを、レンズ101によって作成された画像の各画素に対応させて記憶する。
【0030】
なお、補正パラメータ導出部201における歪み補正パラメータの算出と、補正パラメータエンコーダ202による歪み補正パラメータのエンコードは、非常に負荷の大きな演算であるが、補正パラメータ導出部201及び補正パラメータエンコーダ202を含む前処理装置200は、画像処理装置100から独立したパーソナルコンピュータ等の演算装置であり、これらの負荷の大きい演算は画像処理装置100の歪み補正処理より以前に済まされているために、画像処理装置100のリアルタイムの歪み補正処理に影響を及ぼすことはない。
【0031】
次に、本実施形態の画像処理システム1000において、入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を行う場合の動作例について説明する。
図4は、画像処理システム1000の、入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を行う場合の動作例を説明するためのフローチャートである。
【0032】
ステップST1:
レンズ101、撮像素子102、データ変換部103により、被写体を撮影した入力画像を得る。
ステップST2:
図示しない操作部を介したユーザの操作等により、入力画像の中でズームする領域(以下ズーム領域と称する)の大きさ及び位置、出力画像の大きさ(解像度)が決定される。
【0033】
ステップST3:
補正パラメータ導出部201は、ステップST2において決定されたズーム領域内の全画素の歪み補正パラメータを補正パラメータメモリ203から読み出す。
ステップST4:
補正パラメータエンコーダ202は、ステップST2において決定されたズーム領域をM×N個に格子分割する。
【0034】
ステップST5:
補正パラメータエンコーダ202は、ステップST4において格子分割されたズーム領域の各格子点(及び内分点)における歪み補正パラメータを、ステップST3において読み出された歪み補正パラメータの中から抽出する。
ステップST6:
補正パラメータエンコーダ202は、入力画像と同サイズの画像において、M×N個に格子分割した際の各格子点の座標と、ステップST4において格子分割したズーム領域の対応する格子点の歪み補正パラメータとを対応付ける。すなわち、図5に示すように、M×N個に格子分割されたズーム画像とM×N個に格子分割した入力画像と同サイズの画像とにおいて、入力画像の同サイズの画像における格子点の座標と、ズーム画像内でその格子点とM×Nの格子空間において同一の位置にある格子点の歪み補正パラメータとを対応付ける。図5では一例として8×8に格子分割した場合について説明しているが、これは一例である。図5(a)と図5(b)において便宜上つけられた各格子点の番号において、図5(a)における格子点の歪み補正パラメータが図5(b)における同一番号の格子点の座標と対応付けられる。
【0035】
ステップST7:
補正パラメータエンコーダ202は、ステップST6において対応付けた格子点の座標と歪み補正パラメータとを圧縮(エンコード)し、圧縮データを作成する。
ステップST8:
補正パラメータエンコーダ202は、ステップST7において圧縮された、圧縮データを画像処理装置に送信する。送信された圧縮データは、歪み補正メモリ111に記憶される。
【0036】
ステップST9:
補正パラメータデコーダ112が、ステップST8において前処理装置200から送信された圧縮データを伸張(デコード)する。
ステップST10:
信号処理部106は、入力画像のズーム画像を、入力画像と同一サイズまで拡大する。
【0037】
ステップST11:
信号処理部106は、ステップST9においてデコードされたステップST6において対応付けた格子点の座標と歪み補正パラメータを基に、ステップST10において拡大した画像の歪み補正を行い、歪み補正拡大画像を得る。ステップST6においてズーム画像の各格子点の歪み補正パラメータが、ステップST10において拡大された画像と同一サイズにおいてM×N個の格子分割をした場合の各格子点の座標と対応付けられているために、この処理をスムーズに行うことができる。
ステップST12:
ステップST11において歪み補正を行った補正画像を、ステップST2において決定された出力画像の大きさまで縮小する。これにより、入力画像の一部のみ歪み補正を行い画質劣化なしでズームすることが可能になる。
【0038】
以下、画像処理システム1000における歪み補正及び電子ズーム処理を、具体例を挙げながら説明する。以下の各ステップは、図4のフローチャートに示す各ステップに対応している。
図6は、画像の具体例を示す図である。
【0039】
ステップST1:
図6(a)に示すように、1280×960画素の入力画像を作成する。
ステップST2:
図6(a)に示すように、320×240画素の領域をズームして640×480画素の画像を出力する場合について考える。ここで、入力画像の左上の画素を原点とし水平方向の画素数をx座標、垂直方向の画素数をy座標とする座標系を考えたときに、ズーム領域の左上の画素の座標は例えば(480,360)である。なお、以下の説明における座標もこの座標系における座標である。なお、この座標系のとり方は一例であり、本発明では座標系のとり方はこれに限定されない。
【0040】
ステップST4:
図6(b)に示すように、ズーム領域を8×8に格子分割するとする。なお、図6に関連付けて行う説明においては、内分点はとらないものとする。
ステップST6:
入力サイズと同一サイズの画像(1280×960画素)において、8×8個に格子分割した場合を図6(c)に示す。
ここでズーム画像の左上にある格子点の歪み補正パラメータを(x0,y0)とすると、図6(c)における画像の左上にある格子点の座標は(0,0)であるため、歪み補正パラメータ(x0,y0)と座標(0,0)とが対応付けられる。同様に、ズーム画像の左上から水平方向に2番目の格子点の歪み補正パラメータを(x1,y0)とすると、図6(c)に示す画像の左上から水平方向に2番目の格子点の座標は(160,0)であるため、歪み補正パラメータ(x1,y0)と座標(160,0)とが対応付けられる。このようにして、ズーム画像の全ての格子点の歪み補正パラメータと、図6(c)に示す画像のすべての格子点の座標とを対応付ける。
【0041】
ステップST12:
1280×960画素に拡大され歪み補正された補正画像を、ステップST2において決定された大きさまで縮小し、出力画像とする。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の画像処理システム1000によれば、補正パラメータエンコーダ202は、入力画像と同サイズの画像において、M×N個に格子分割した際の各格子点の座標と、格子分割したズーム領域の対応する格子点の歪み補正パラメータとを対応付け、信号処理部106はこのデータを使用して歪み補正を行っているので、特許文献1に開示された画像処理システムにおいて歪み補正と電子ズーム処理とを行う場合の不利益であった、電子ズームされた画像の一部からしか歪み補正パラメータを取得せずに歪み補正処理及び電子ズーム処理を施した画像が作成されることによる出力画像の画質の低下を防ぐことができる。
【0043】
具体例を挙げると、特許文献1に開示した画像処理システムでは、1280×960画素の入力画像に対して8×8個に格子分割をして歪み補正を行い、入力画像の中心部320×240画素を640×480画素に拡大して出力する場合には、図7(a)に示すように、ズーム領域は2×2個にしか格子分割されず、ズーム領域内にある9個の格子点の歪み補正パラメータしか歪み補正に使用されないために歪み補正及び電子ズーム後の画質が入力画像に対し低下していたが、本実施形態の画像処理システム1000では、上記と同様の場合には、図7(b)に示すように、ズーム領域が8×8個に格子分割され、81個の格子点における歪み補正パラメータが歪み補正処理に使用されるため、歪み補正による画質の低下が非常に小さい。
【0044】
また、本実施形態の画像処理システム1000によれば、ズーム領域の大きさに左右されずズーム領域をM×N個に格子分割して各格子点の歪み補正パラメータを使用し歪み補正処理を行うので、ズーム領域の大きさによって出力画質が左右されることがない。同様に、ズーム領域を一度入力画像と同一サイズまで拡大及び歪み補正を終えた後に、あらかじめ決定されたサイズまで縮小し出力画像としているので、出力画像の大きさによっても出力画像の画質が左右されることがない。
【0045】
また、本実施形態の画像処理システム1000によれば、撮像された光学歪みを伴う画像に対して格子分割を行い、格子点における水平及び垂直方向に歪み補正パラメータのみ利用して歪み補正を行うため、必要なデータ量が少なくて済み、静止画像だけでなくリアルタイム処理が必要な動画像に対する歪み補正が簡易な構成により実現され、歪みの無い高画質な画像を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態の画像処理システム1000によれば、上述した歪み補正処理、電子ズーム処理を、ソフトウェア上で行うことができるので、信号処理によりリアルタイムに画像の歪みを補正することができる。さらにこのため、レンズ設計の自由度を高めることができ、レンズの小型化やレンズの低コスト化を容易に実現することができる。
【0047】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、本発明の実施に際しては、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、特許文献1に開示された画像処理装置において歪み補正及び電子ズームを行った場合について説明するための図である。
【図2】図2は、特許文献1に開示された画像処理装置において歪み補正及び電子ズームを行った場合の格子分割について説明するための図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る画像処理システム1000の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、画像処理システム1000の、入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を行う場合の動作例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、ズーム領域における歪み補正パラメータの抽出点と、抽出した歪み補正パラメータを対応付ける座標との関連を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態の画像処理システム1000において、歪み補正及び電子ズームを行う際の各ステップの画像の具体例を示す図である。
【図7】図7は、特許文献1におけるズーム領域の格子分割と本実施形態におけるズーム領域の格子分割との差異を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1000…画像処理システム、100…画像処理装置、101…レンズ、102…撮像素子、103…データ変換部、104…同期信号生成部、105…画像メモリ、106…信号処理部、107…表示処理部、108…再生部、109…記録部、110…補正処理制御部、111…補正メモリ、112…補正パラメータデコーダ、200…前処理装置、201…補正パラメータ導出部、202…補正パラメータエンコーダ、203…補正パラメータメモリ、300…外部記録メディア



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に対し歪み補正及び電子ズーム処理を実行する画像処理システムであって、
入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割して格子点における歪み補正パラメータを抽出し、当該歪み補正パラメータを圧縮して圧縮データを作成する第1の画像処理装置と、
前記第1の画像処理装置が圧縮した前記圧縮データを伸張して使用し前記ズーム対象領域の歪み補正及び電子ズーム処理を行って出力画像とする第2の画像処理装置と、
を有し、
前記第1の画像処理装置は、前記ズーム対象領域を格子分割した各格子点における歪み補正パラメータと、前記入力画像と同じ大きさの画像を前記所定の数と同じ数だけ格子分割した際の各格子点の位置情報とを、同一の格子内位置にある格子点について対応付け、前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを圧縮して圧縮データとする
画像処理システム。
【請求項2】
前記第1の画像処理装置は、前記入力画像の全画素における歪み補正パラメータを予め算出する
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記第1の画像処理装置は、入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割して、格子点及び格子線分を均一または非均一に等分した内分点における歪み補正パラメータを抽出する
請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記第1の画像処理装置と、前記第2の画像処理装置と離間して配置され、
前記第1の画像処理装置は、圧縮した前記圧縮データを送信し、
前記第2の画像処理装置は、前記第1の画像処理装置が送信した前記圧縮データを受信する
請求項3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割する第1の工程と、
前記第1の工程において格子分割された格子点における歪み補正パラメータを抽出する第2の工程と、
前記第2の工程において抽出された歪み補正パラメータと、前記入力画像と同じ大きさの画像を前記所定の数と同じ数だけ格子分割した際の各格子点の位置情報とを、同一の格子内位置にある格子点について対応付ける第3の工程と、
前記第3の工程において対応付けられた前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを圧縮して圧縮データとする第4の工程と、
前記第4の工程において得られた前記圧縮データを伸張する第5の工程と、
前記入力画像の前記ズーム対象領域を前記入力画像と同じ大きさに拡大する第6の工程と、
前記第6の工程において拡大された前記ズーム対象領域に対し、前記第5の工程において前記圧縮データを伸張して取得した前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを基に歪み補正処理を行う第7の工程と、
前記第7の工程において歪み補正された前記拡大されたズーム領域を、所定の大きさまで縮小して出力する第8の工程と、
を有する画像処理方法。
【請求項6】
前記第1から第4の工程は第1の画像処理装置において実施され、
前記第5から第8の工程は第2の画像処理装置において実施され、
前記第1の画像処理装置と、前記第2の画像処理装置と離間して配置され、
前記第1の画像処理装置が前記第4の工程において圧縮した前記圧縮データを前記第2の画像処理装置に送信する第9の工程と、
前記第2の画像処理装置が前記第9の工程において送信された前記圧縮データを受信する第10の工程と、
を更に有し、
前記第5の工程において、受信した圧縮データを伸張する
請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
画像処理システムが実行するプログラムであって、
入力画像内のズーム対象となるズーム対象領域を所定の数に格子分割する第1の工程と、
前記第1の工程において格子分割された格子点における歪み補正パラメータを抽出する第2の工程と、
前記第2の工程において抽出された歪み補正パラメータと、前記入力画像と同じ大きさの画像を前記所定の数と同じ数だけ格子分割した際の各格子点の位置情報とを、同一の格子内位置にある格子点について対応付ける第3の工程と、
前記第3の工程において対応付けられた前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを圧縮して圧縮データとする第4の工程と、
前記第4の工程において得られた前記圧縮データを伸張する第5の工程と、
前記入力画像の前記ズーム対象領域を前記入力画像と同じ大きさに拡大する第6の工程と、
前記第6の工程において拡大された前記ズーム対象領域に対し、前記第5の工程において前記圧縮データを伸張して取得した前記歪み補正パラメータと前記位置情報とを基に歪み補正処理を行う第7の工程と、
前記第7の工程において歪み補正された前記拡大されたズーム領域を、所定の大きさまで縮小して出力する第8の工程と、
を前記画像処理システムに実行させるプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−329548(P2007−329548A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157183(P2006−157183)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】