画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
【課題】黒インク用ノズルがカラーインク用ノズルに対して対称にならない不完全対称配置のヘッドを用いた場合に、黒インクを使用する双方向印刷時に発生する双方向色差を低減する。
【解決手段】画像データが入力されると、色空間処理変換テーブルを用いてCMM処理を行い、双方向印刷か否かを判別し、双方向印刷であれば、墨入れ開始位置を片方向印刷の場合に比べてシャドー側に遅らせた双方向用BG/UCR処理を行い、双方向印刷でなければ、墨入れ開始位置を遅らせない片方向用BG/UCR処理を行う。
【解決手段】画像データが入力されると、色空間処理変換テーブルを用いてCMM処理を行い、双方向印刷か否かを判別し、双方向印刷であれば、墨入れ開始位置を片方向印刷の場合に比べてシャドー側に遅らせた双方向用BG/UCR処理を行い、双方向印刷でなければ、墨入れ開始位置を遅らせない片方向用BG/UCR処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴吐出ヘッドを記録ヘッドに用いたインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、インク記録ヘッドから用紙(紙に限定するものではなく、OHP、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙等も含む)に記録液としてのインクを吐出して画像形成を行なう。
【0003】
このようなインクジェット記録装置がパーソナル領域からオフィス領域に広がるためには、次の2つの課題を解決しなければならない。1つの課題は、記録速度である。工業用の特殊なタイプを除いて、一般的なインクジェット記録装置では、記録用紙よりもかなり小さい記録ヘッドが繰り返し用紙上を走査してインク滴を吹き付けることで記録を行っている。これはいわば「線」で記録する方式である。用紙(ページ)単位、すなわち「面」で記録を行なう電子写真方式の画像形成装置に比べると、記録速度の点で不利になる。
【0004】
この印刷速度面の不利を解消するために、インク滴を噴射する周期を高めて走査速度の向上を図る方式や、記録ヘッドの大型化や双方向記録による走査回数の削減、画像データを記録する部位にのみ走査を行なう最短制御の走査方式が採用されている。これにより、小〜中部数の印刷では、電子写真方式を上回る記録速度を実現できる。
【0005】
もう1つの課題は、コストに関係する問題として、普通紙対応が挙げられる。専用紙を用いた場合には、インクジェット記録画像は極めて高品質な画像再現が可能であり、昨今のパーソナル用途のインクジェット記録装置では、写真と見間違えるばかりの画像品質が得られるようになってきている。
【0006】
しかし、これらの専用紙は一般に高価であり、企業等において厳しいコスト管理が要求される場合には導入が難しい。また、オフィス用途で出力される画像では、高い画像品質は要求されないため、専用紙でしか品質の高い画像を形成できないのではデメリットが大きくなる。
【0007】
そこで、普通紙に対応するために、インクの組成に改良を加えることが必要となる。例えば、低浸透な染料インクの開発や、定着補助剤の利用、顔料系インクの開発等が試みられ、最新の機種では、オフィスで一般的に利用される普通紙、一般にコピー用紙として利用される用紙でも、電子写真方式の画像形成装置と同等の品質の画像を形成できる。
【0008】
このように、走査速度や画像品質の改善により、インクジェット記録装置はオフィスにおいても非常に魅力的な製品となってきている。特に、レーザープリンタに比べてコスト面で有利であり、小型化が容易なために、デスクトップでの利用も進んでいる。
【0009】
しかし、色剤を用紙表面に定着させる機構を持つレーザープリンタやオフセット印刷等の画像形成装置と異なり、用紙中へ色剤を浸透させて定着を行なうインクジェット記録では、この浸透プロセスに伴う問題や制約がある。
【0010】
その一つが、先に用紙に付着したインクの色が、後から同一箇所に付着したインクよりも強く発色してしまうという問題である。特に、オフィス向けのインクジェット記録装置では、記録速度を高めるために、印字ヘッドの往路及び復路で記録を行う双方向印刷(双方向記録)が採用されるが、双方向印刷を行なうと、往路印字と復路印字でインクの着弾順が逆転し、往路と復路の走査バンド毎に異なった発色を呈することになる。現象としては、本来記録したい画像の上に、あたかも薄い横縞模様が乗ったように見えてしまい、画像品質が低下することになる。
【0011】
このような双方向印刷に伴う色差(双方向色差)に対する対策の一つとして、特許文献1、2に記載されているように、各色のノズル配置が、主走査方向に対して対称配置となるヘッドユニットを使用することがある。このような構成のヘッドでは、解像度1ピッチ分、2つのユニットをずらすことで、正逆双方の重ね順で形成される画像が1ドットライン置きに形成されるため、片方向だけの記録も双方向での記録も、理論上、発色そのものに違いは生じなくなる。しかし、各色対称構成のヘッドを実現するにあたっても幾つかの課題が残されており、必ずしも完全対称なノズル配置が実現できない場合がある。
【0012】
例えば、各色それぞれ別ユニットのヘッド構成とすると、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色ヘッドでも7〜8ユニットが必要となり、対称配置を取らない場合のユニットに比べてコストアップにつながってしまう。
【0013】
特に、圧電素子の変位によって加圧液室の一部を構成する振動板を変形させ、体積変化による圧力でインクを噴射するタイプのヘッドでは、元々ユニット自体の小型化が難しいところに加えて、ユニット数の増加に伴い、ヘッドモジュールの大型化、キャリッジの大型化、すなわち装置本体の大型化にも繋がることになる。また、個々のユニットを組み付けるときにも、異なる色のユニットだけでなく同色のユニットの組み付け精度にも注意する必要があり、製造の難易度が高くなるといったデメリットにも繋がる。
【0014】
また、加圧液室に充填したインクを急加熱し膜沸騰による体積変化を利用してインクを噴射するタイプのヘッドでは、フォトリソグラフィー技術を応用し、一体のユニットとして対称構成のヘッドを製造することも容易であるため、組み付けの難易度を軽減することが可能である。その代わり、ノズル面の状態を常に一定に保つための維持回復機構も各色共通のものを使用することになり、ノズル面上での混色が発生しやすくなる。特に、近年では黒文字の品質を向上させるため、カラーインクは染料インク、黒インクは顔料インク等、異なる特性のインクを搭載するケースが増えており、維持回復機構による混色が画像品質を落とすだけでなく、凝固した副生成物によるノズル詰まり等、噴射安定性の低下に繋がるおそれがある。
【0015】
そこで、実際には、特許文献3,4に記載されているように、黒インクを吐出するノズルを対称配置から切り離した不完全対称配置が採用されている。黒をカラーインクから切り離すことで、カラーの内、もう一色も1ユニット化が可能となるため、組み付け時の難易度も軽減することが可能となる。
【特許文献1】特開平11−320926号公報
【特許文献2】特開平07−242036号公報
【特許文献3】特開2005−001337号公報
【特許文献4】特開2005−001336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献3、4に記載されているように黒インクを切り離すことによって、対称配置によって解消したはずの双方向色差が、黒とカラーインクの間でまた発生することになるという課題がある。
【0017】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、黒(又はグレー)を切り離した不完全対称配置のヘッドによって発生する双方向色差を低減する画像処理方法、この画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム、この画像処理方法を実行する画像処理装置、この画像処理方法を実行する画像形成装置、及びこれらの画像処理装置と画像形成装置とを組み合わせた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像処理方法は、入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成処理する画像処理方法において、入力データに対して墨入れ処理を行うとき、双方向印刷を行なうときには片方向印刷を行なうときよりもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた処理を行う構成とした。なお、「入力データ」とは入力されたデータそのものだけでなく、入力されたデータに対して所要の処理を施したデータも含むものとする。
【0019】
ここで、双方向印刷の墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーの記録液を用いた場合の多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせることが好ましい。また、表現可能な多値レベルがn値(n>3)のとき、墨入れ開始位置は(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側であることが好ましい。さらに、片方向印刷のときにもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた墨入れ処理を選択可能とすることができる。さらにまた、用紙の種類に応じて双方向印刷を行なうときに墨入れ開始位置を遅らせた墨入れ処理を行なうか否かを切り替えることができる。また、入力データに対して色変換処理を行なう色変換処理に含ませることができる。
【0020】
本発明に係るプログラムは、入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理をコンピュータに行なわせるプログラムにおいて、コンピュータに本発明に係る画像処理方法を実行させる構成とした。
【0021】
本発明に係る画像処理装置は、入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理を行う画像処理装置において、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段を備える構成とした。
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置において、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段を備える構成とした。ここで、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段は特定用途向け集積回路で構成することができる。
【0023】
本発明に係る画像形成システムは、本発明に係る画像処理装置と、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る画像形成システムは、本発明に係る画像形成装置とこの画像形成装置に画像データを送出する画像処理装置とで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システムによれば、入力データに対して墨入れ処理を行うとき、双方向印刷を行なうときには片方向印刷を行なうときよりもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた処理を行う構成としたので、黒又はグレーを切り離した不完全対称配置のヘッドによって発生する双方向色差を低減することができ、出力された画像の画像品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
まず、画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一例について図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の機構部全体の概略構成図、図2は同記録装置の要部平面説明図、図3は同記録装置のヘッド構成を説明する斜視説明図である。
【0028】
このインクジェット記録装置は、装置本体1の内部に画像形成部2等を有し、装置本体1の下方側に多数枚の記録媒体(以下「用紙」という。)3を積載可能な給紙トレイ4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙3を取り込み、搬送機構5によって用紙3を搬送しながら画像形成部2によって所要の画像を記録した後、装置本体1の側方に装着された排紙トレイ6に用紙3を排紙する。
【0029】
また、このインクジェット記録装置は、装置本体1に対して着脱可能な両面ユニット7を備え、両面印刷を行なうときには、一面(表面)印刷終了後、搬送機構5によって用紙3を逆方向に搬送しながら両面ユニット7内に取り込み、反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ6に用紙3を排紙する。
【0030】
ここで、画像形成部2は、ガイドシャフト11、12にキャリッジ13を摺動可能に保持し、図示しない主走査モータでキャリッジ13を用紙3の搬送方向と直交する方向に移動(主走査)させる。このキャリッジ13には、液滴を吐出する複数の吐出口であるノズル孔14n(図3参照)を配列した液滴吐出ヘッドで構成した4つのヘッド14a〜14dで構成した記録ヘッド14を搭載し、また、この記録ヘッド14に液体を供給するインクカートリッジ15を着脱自在に搭載している。なお、インクカートリッジ15に代えてサブタンクを搭載し、メインタンクからインクをサブタンクに補充供給する構成とすることもできる。
【0031】
記録ヘッド14を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0032】
給紙トレイ4の用紙3は、給紙コロ(半月コロ)21と図示しない分離パッドによって1枚ずつ分離され装置本体1内に給紙され、搬送機構5に送り込まれる。
【0033】
搬送機構5は、給紙された用紙3をガイド面23aに沿って上方にガイドし、また両面ユニット7から送り込まれる用紙3をガイド面23bに沿ってガイドする搬送ガイド部23と、用紙3を搬送する搬送ローラ24と、この搬送ローラ24に対して用紙3を押し付ける加圧コロ25と、用紙3を搬送ローラ24側にガイドするガイド部材26と、両面印刷時に戻される用紙3を両面ユニット7に案内するガイド部材27と、搬送ローラ24から送り出す用紙3を押圧する押し付けコロ28とを有している。
【0034】
さらに、搬送機構5は、記録ヘッド14で用紙3の平面性を維持したまま搬送するために、駆動ローラ31と従動ローラ32との間に掛け渡した搬送ベルト33と、この搬送ベルト33を帯電させるための帯電ローラ34と、この帯電ローラ34に対向するガイドローラ35と、図示しないが、搬送ベルト33を画像形成部2に対向する部分で案内するガイド部材(プラテンプレート)と、搬送ベルト33に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなるクリーニングローラなどを有している。
【0035】
ここで、搬送ベルト33は、無端状ベルトであり、駆動ローラ31と従動ローラ(テンションローラ)32との間に掛け渡されて、図1の矢示方向(用紙搬送方向)に周回するように構成している。
【0036】
帯電ローラ34は、搬送ベルト33の表層に接触し、搬送ベルト33の回動に従動して回転するように配置されている。この帯電ローラ34には図示しない高圧回路(高圧電源)から高電圧が所定のパターンで印加される。
【0037】
また、搬送機構5から下流側には画像が記録された用紙3を排紙トレイ6に送り出すための排紙ローラ38を備える。
【0038】
このように構成した画像形成装置において、搬送ベルト33は矢示方向に周回し、高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ34と接触することで正に帯電される。この場合、帯電ローラ34からは所定の時間間隔で極性を切り替えることによって、所定の帯電ピッチで帯電させる。
【0039】
ここで、この高電位に帯電した搬送ベルト33上に用紙3が給送されると、用紙3内部が分極状態になり、搬送ベルト33上の電荷と逆極性の電荷が用紙3のベルト33と接触している面に誘電され、ベルト33上の電荷と搬送される用紙3上に誘電された電荷同士が互いに静電的に引っ張り合い、用紙3は搬送ベルト33に静電的に吸着される。このようにして、搬送ベルト33に強力に吸着した用紙3は反りや凹凸が校正され、高度に平らな面が形成される。
【0040】
そこで、搬送ベルト33を周回させて用紙3を移動させ、キャリッジ13を片方向又は双方向に移動走査しながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動し、図4(a)、(b)に示すように、記録ヘッド14から液滴14iを吐出(噴射)させて、停止している用紙3に液滴であるインク滴を着弾させてドットDiを形成することにより、1行分を記録し、用紙3を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。なお、図4(b)は図4(a)のドットDi形成部分を拡大したものである。
【0041】
このようにして、画像が記録された用紙3は排紙ローラ38によって排紙トレイ6に排紙される。
【0042】
ここで、双方向印刷における色差(双方向色差)について図5ないし図8を参照して説明する。
【0043】
まず、ここでは、図5に示すように、主走査の順記録方向に対して、K、C、M、Yの順で記録ヘッド14k、14c、14m、14yを配置してヘッドユニットを構成しているものとする。なお、前述したように、必ずしもこの並び順や色数に限定されるものではなく、インクの特性や設計思想により、異なった並び順やより多くの色が加わったユニットであっても良い。
【0044】
双方向印刷(記録)は、キャリッジの往復移動の両方で印字を行うことで、用紙1枚あたりの記録に要するキャリッジ移動回数を減らし、記録時間の短縮を図ることができる。その代わり、往復動作に伴う記録位置のズレが発生し易く、色重ね順に伴う色差の発生といった画像品質を低下させる問題が発生するため、主に画像品質よりも記録速度が優先される記録モードで採用されている記録方法である。
【0045】
図5のヘッド配置構成の場合、往路記録(往路印刷)では同一箇所においてK→C→M→Yの順でインク滴が吐出され、復路記録(復路印刷)では逆順のY→M→C→Kの順でインク滴が吐出されて記録が行われることになる。インクジェットの色剤定着特性として、異なる色のインク滴が同一箇所に打ち込まれた場合、先に用紙表面に着弾した色インクの方が支配的になるという特性がある。
【0046】
図6は、染料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の用紙内部の色剤分布を説明する図である。図6(a)に示すように、用紙PにA色の滴、B色の滴を順次打ち込む場合、図6(b)に示すように、先に打ち込んだA色の滴の方が用紙Pに浸透して、ここにB色の滴を打ち込むと、図6(c)に示すように、B色の滴はA色の浸透領域内で浸透するだけであり、先に打ち込んだA色の滴が後に打ち込んだB色の滴よりも広い範囲に拡がり、色剤の定着範囲に差が生じる。このため、2次色(C+MやM+Y等)においては先に打ち込んだ滴の色の方がより支配的な色成分となる。
【0047】
また、図7は、顔料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の用紙内部の色分布を説明する図である。図7(a)に示すように、用紙PにA色の滴、B色の滴を順次打ち込む場合、図7(b)に示すように、先に打ち込んだA色の滴の方が用紙Pに浸透して、ここにB色の滴を打ち込むと、図7(c)に示すように、B色の滴はA色の浸透領域を抜けて浸透するというように、先に打ち込んだインクに含まれる色剤は用紙表面に留まり、後から打ち込まれた方の色剤は用紙内部に沈んでしまう。結果として、用紙表面に近い側(先に打ち込んだ滴の方)の色剤の特性が強くなり、支配的な色成分となる。
【0048】
そのため、上述した図5に示すヘッド構成においては、往路印刷時にはK→C→M→Yの順でインク滴が打ち込まれるので、予想される色調支配強度はK>C>M>Yとなり、復路印刷では逆順のY→M→C→Kの順でインク滴が打ち込まれるので、予想される色調支配強度はY>M>C>Kとなる。
【0049】
また、記録速度を向上させるために双方向記録を採用する場合、この特性に起因する2次色、3次色(C+M+Y等)の色調変化を考慮する必要がある。特に、往路と復路の両主走査移動毎に大きく用紙をフィードする場合は、図8に示すように、色調の変化が横縞となって現れるおそれがある。
【0050】
このような双方向色差に対しては、ヘッド構成として図9に示すような完全対象配置、あるいは、図10に示すような不完全対称配置を採用することで対応することができる。
【0051】
つまり、図9に示す完全対象配置のヘッド構成では、副走査方向に配列した複数のノズルからなるノズル列を主走査方向に複数列配列し、同一色のインクを吐出するノズル列を2列以上有し、同一色のインクを吐出するノズル列の間に異なる色のインクを吐出するノズル列を1列以上配列する構成をとることができる。ここでは、Yインクを吐出するノズル列Y1、Mインクを吐出するノズル列M1、Cインクを吐出するノズル列C1、Kインクを吐出するノズル列K1、Kインクを吐出するノズル列K2、Cインクを吐出するノズル列C2、Mインクを吐出するノズル列M2、Yインクを吐出するノズル列Y1の順に配置している。
【0052】
なお、図示しないが、完全対称配置の記録ヘッドの別の形態として、副走査方向に配列した複数のノズルからなるノズル列を主走査方向に複数列配列し、同一色のインクを吐出するノズル列を2列以上有し、該同一色のインクを吐出するノズル列の間に異なる色のインクを吐出するノズル列を1列以上配列し、主走査方向に直行する軸を中心に、同一色のインクを吐出するノズル列を左右対称に配列する構成をとることができる。
【0053】
このように、同一色のインクを吐出するノズル列を2列以上配列し、その間に重ねたい別の色インクを吐出するノズル列を1列以上配列させることで双方向色差は解消できる。上述した図9に示すように、Yインクを吐出するノズル列の間にM、C、Kインクを吐出するノズル列を配置することによって、往路、復路に関わらず、C→Yの順で重ね合わせることもできるし、Y→Cの順で重ね合わせることもできる。また、往路、復路に関わらずM→Yの順で重ね合わせることもできるし、Y→Mの順で重ね合わせることもできる。これによって、色再現域を拡大しながら双方向印字することができ、色再現域が広いカラー印刷物を高速で印刷することが可能となる。
【0054】
また、図10に示す不完全対称配置のヘッドでは、Kインクを吐出するノズル列K1、K2がカラーインクを吐出するノズル列に対して対称となっていない。ここでは、Yインクを吐出するノズル列Y1、Mインクを吐出するノズル列M1、Kインクを吐出するノズル列K1、Kインクを吐出するノズル列K2、Cインクを吐出するノズル列C1、Cインクを吐出するノズル列C2、Mインクを吐出するノズル列M2、Yインクを吐出するノズル列Y1の順に配置している。
【0055】
この例では、Y,M、Kを使用する場合、あるいは、Y、M、Cを使用する場合には、往路でも復路でも、着弾順序は同じになって双方向色差が生じない。しかしながら、KとC組合せにおいて対称配置とはなっていないことから、KとCを使用する場合、往路ではKインクが先に着弾し支配色となるのに対し、逆に、復路ではCインクが先に着弾して支配色となるため、CインクもしくはCインクとの組合せで作成される2次色に対して、Kが混ざる色を使用した場合、前述した図8と同様な双方向色差となって画像上に現れることになる。
【0056】
このように不完全対称配置では、KとCを対称構成から除外している。これは、次の理由による。オフィスで一般的に使用される普通紙は、インクジェット記録装置向けの処理は何も施されていないため、色剤が用紙内部に沈降し、非常に濃度が出にくい用紙となっている。この対策として、インク処方の面から低浸透性インクの開発や顔料インクの開発が進められている。特に黒文字をくっきりと表現するためにKインクに対して適用されるのが殆どである。その一方で、残りのカラーインクに対しては、専用紙上での画像品質を確保するための処方(高浸透性インクや染料インク)が主に適用されている。このため、ノズル面のコンディションを整える維持/回復機構を介して特性の異なるインク同士が混じり合わないよう、Kとカラーノズルが切り離される。なお、図10のヘッド構成において、Cは組合せ上除外されただけで、他のカラーインクの場合もあり得る。
【0057】
ただし、低浸透インクや顔料インクをもってしても、普通紙上で充分な濃度を得ることは難しく、実際には、Kに加えてCMYのインクを重ね打ちすることで、濃度の不足を補う方式が良く採用されている。このような場合では、KとCが対称配置から外れていることに起因する双方向色差が発生することになる。
【0058】
次に、この画像形成装置の制御部の構成について図11を参照して説明する。
【0059】
この制御部100は、装置全体を制御するCPU101と、CPU101が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM102と、画像データ等を一時格納するRAM103と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)104と、各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理(場合によっては後述する画像処理の一部の処理を含む)やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC105とを備える。
【0060】
また、この制御部100は、本発明に係る画像処理装置を含むパーソナルコンピュータ(PC)等のホスト90側とのデータ、信号の送受を行なうためのI/F106と、記録ヘッド14を駆動制御するためのヘッド駆動制御部107及びヘッドドライバ108と、主走査モータ110を駆動するための主走査モータ駆動部111と、副走査モータ112を駆動するための副走査モータ駆動部113と、環境温度及び/又は環境湿度を検出する環境センサ118、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O116などを備える。
【0061】
また、この制御部100には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル117が接続されている。さらに、制御部100は、帯電ローラ34に対する高電圧を印加する高圧回路(ACバイアス供給部)114のオン/オフの切り替え及び出力極性の切り替え制御を行なう。
【0062】
ここで、制御部100は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト90側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F106で受信する。なお、この制御部100に対する印刷データの生成出力は、ホスト90側の本発明に係るプリンタドライバ91によって行なう。
【0063】
CPU101は、I/F106に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にてデータの並び替え処理(その他の後述する画像処理の一部の処理を含む構成とすることもできる。)等を行ってヘッド駆動制御部107に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータへの変換は、前述したようにホスト90側のプリンタドライバ91で画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしているが、例えばROM102にフォントデータを格納して行っても良い。
【0064】
ヘッド駆動制御部107は、記録ヘッド14の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ108にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ108に送出する。
【0065】
このヘッド駆動制御部107は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM102で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を備える。
【0066】
また、ヘッドドライバ108は、ヘッド駆動制御部107からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部107からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッド14のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動する。
【0067】
次に、この画像形成装置によって画像を形成するために画像データを転送するホスト側のパーソナルコンピュータ(PC)に設けた、本発明に係る画像処理装置の構成例について図12及び図13を参照して説明する。なお、これらの画像処理装置と画像形成装置とにより本発明に係る画像形成システムが構成される。
【0068】
図12の構成では、画像処理装置120がホスト90のプリンタドライバ91に構成される。この画像処理装置120は、アプリケーションプログラムなどから与えられた画像データ130を、モニタ表示用の色空間から画像形成装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行なうCMM(Color Management Module)処理部131と、CMYの値から黒生成/下色除去を行なってブラック(K)の成分を加えたKCYM値に変換する本発明に係る墨入れ処理であるBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部132と、記録制御信号となるCMYK信号に対し画像形成装置が画像形成できる記録色材の最大総量値に応じてCMYK信号を補正する総量規制部133と、画像形成装置の特性やユーザの嗜好を反映した入出力補正を行なうγ補正部134と、画像形成装置の解像度に合わせて拡大処理を行なうズーミング(Zooming)部135と、画像データを画像形成装置から噴射するドットのパターン配置に置き換える多値・少値マトリクスを含む中間調処理部136とを備える。
【0069】
図13の構成では、画像処理装置140が、ホスト90のプリンタドライバ91に構成される。この画像処理装置140は、アプリケーションプログラムなどから与えられた画像データ130をモニタ表示用の色空間から画像形成装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行なうCMM(Color Management Module)処理部131と、CMYの値から黒生成/下色除去を行なう本発明に係る墨入れ処理であるBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部132と、総量規制を行う総量規制部133と、画像形成装置の特性やユーザの嗜好を反映した入出力補正を行なうγ補正部134とを備える。
【0070】
また、図13の構成の場合、画像処理装置140内に設けていない、一部の画像処理機能が画像形成装置側の制御部100に構成される。この制御部100は、γ補正処理を行なった後の出力データを受信して、このデータに対して画像形成装置の解像度に合わせて拡大処理を行なうズーミング(Zooming)部135と、画像データを画像形成装置から噴射するドットのパターン配置に置き換える多値・少値マトリクスを含む中間調処理部136とを備える。
【0071】
図12の構成は全ての画像処理をPC側で処理するいわば「廉価機」であり、図13の構成は一部の画像処理機能を画像形成装置に内蔵したASICで分担するいわば「高速機」である。図13の構成例では、画像処理をホスト側と画像形成装置側で分担して処理することができるために、画像処理にかかる時間を短縮できるだけでなく、ホストPCの開放を早めることができる。ただし、より高性能なASICの(場合によっては大容量のメモリも)搭載が必要となるため、一般的に「廉価機」よりも価格が高くなる。
【0072】
次に、ホスト側のプリンタドライバ91による画像処理の流れについて図14に示すブロック図を参照して説明する。
【0073】
パーソナルコンピュータなどのデータ処理装置上で動作するアプリケーションプログラムから「印刷」指示が出されると、プリンタドライバ91においては、入力200に対してオブジェクト判定処理201でオブジェクトの種類を判定し、オブジェクト毎、つまり文字の画像データ202、線画の画像データ203、グラフィックスの画像データ204、イメージの画像データ205毎にデータが渡され、それぞれのルートを通って処理が行われる。
【0074】
つまり、文字202、線画203、グラフィックス204については、カラー調整処理206を行ない。そして、文字についてはカラーマッチング処理207、BG/UCR処理209、総量規制処理211、γ補正処理213を行い、更に文字ディザ処理(中間調処理)215を行なう。また、線画及グラフィックスについてカラーマッチング処理208、BG/UCR処理210、総量規制処理212、γ補正処理214を行い、更にグラフィックスディザ処理(中間調処理)216を行なう。
【0075】
一方、イメージ205については、色判定及び圧縮方式判定処理221を行って、通常の場合には、カラー調整処理222、カラーマッチング処理223を行なった後、BG/UCR処理224、総量規制処理225、γ補正処理226を行い、更に誤差拡散処理(中間調処理)227を行なう。また、2色以下の場合には、イメージ間引き処理231、カラー調整処理232、カラーマッチング処理233a又はインデックスレス処理(カラーマッチングを行なわない処理)233bを行なった後、BG/UCR処理224、総量規制処理225、γ補正処理226を行い、更に誤差拡散処理(中間調処理)227を行なう。
【0076】
なお、線画及びグラフィックスについてはカラー調整処理206に至る前に分岐してROP処理241を経てイメージの場合のカラーマッチング処理232に移行することもある。
【0077】
このようにしてオブジェクト毎に処理された画像データは、また元の一つの画像データに合成され、画像形成装置へと渡されることになる。
【0078】
ここで、各処理について図15ないし図18を参照して説明する。
【0079】
CMM処理(カラーマッチング処理)は、RGB系の色空間からCMY系の色空間への変換を行う処理である。この処理は、例えば、図15に示すような3次元立体格子を用い、入力されたRGBデータを補間演算にて最も近い座標の格子点へ当てはめ、その格子点で定義されるCMYデータに置き換えを行う処理となる。なお、図15では立方体の格子を示しているが、この他、六角柱や四面体等の立体格子などを用いることも知られている。
【0080】
BG/UCR処理は、CMYデータの重複するレベルをKの成分に置き換えることで、Kの成分を作成する。これは、CMY3色分のインク量を1色のKインクで賄うことができるため、インクの消費量を抑える効果があり、また、暗色に所謂「しまり」を加えることにもつながる。
【0081】
総量規制処理は、記録を行う用紙に対して使用可能なインク付着量であるかを計算し、許容量を超えていると判断された場合には、許容内に収まるようにデータに補正をかける処理である。例えば図16に総量規制処理の一例を示している。例えば、1次色の最大階調でのインク付着が許容される最大値であった場合、2色や3色で形成される2次色や3次色では、単純計算で2〜3倍のインク付着量となり、許容値をオーバーすることになる。そこで、許容値内に収まるように入力値を補正する。この図16の例では、2次色を構成する色の最大値が184階調に、3次色を構成する色では139階調に抑えられている。もちろん、この補正量は、用紙とインク、出力条件により変化し、この図16の例に限定されるものではない。
【0082】
中間調処理では、画素の値をドットのON/OFFに置き換える処理を行う。基本的には画素の階調レベルと閾値を比較し、閾値を超える階調レベルの画素位置にはドットを発生させ、下回る画素にはドットを発生させないことで、階調レベルのドットへの置き換え(量子化)を行う。
【0083】
中間調処理としては、一般的に、閾値マトリクスを使用するディザ法と、量子化の際の誤差を後続の画素計算に反映する誤差拡散法とが主流となっている。近年は粒状感を改善するため、図10に示すようにサイズの異なるドットと組み合わせる、同相色で明度の異なるインクを組み合わせることによって、モニタ並みの多値というには少ないが、1bitから2bit(4階調)程度へ階調再現性を向上させている。
【0084】
図17では、ドットサイズ変調型の画像形成装置において、階調再現のための閾値割り振りを示している。形成されるドットサイズに応じて、各ドットが使用される階調区間の幅が調整され、中間調処理におけるディザの閾値や誤差拡散の閾値設定に反映されることになる。図17は、各ドットサイズが理想的な大きさで形成された場合を示す。すなわち、0〜85階調までは小ドットと空白のみで階調表現が行われ、86〜170階調までは小ドットと中ドットのみで階調表現が行われ、171〜255階調までは中ドットと大ドットのみで階調表現が行われる。
【0085】
この場合、記録ヘッドの性能によっては、必ずしも理想のドットサイズが実現できるとは限らないが、図18(a)、(b)に示すように、適用する階調区間を調整することで所望の特性、例えば、階調レベルに応じた明度が線形となる(明度リニア)特性等を実現することが可能となる。CMYKの単色階調表現に関しては中間調処理そのものの特性が階調再現に反映されるため、単色のみが使用される場合は、階調拡張処理が不要か、最小限の拡張で済むことになる。
【0086】
これは、ドットサイズ変調方式だけでなく、同相色で濃度の異なるインク、例えばLightインク(淡インク)やdarkインク(濃インク)を使用した明度変調方式の場合も同様である。Lightインクやdarkインクは、CMYK各色の粒状感やインク付着量を改善することが目的であり、基本的にノーマルなCMYKインクと同一色相上に連なって階調を表現することには変わりがない。
【0087】
本発明は、この画像処理の中のBG/UCR処理によって、Kとカラーとの双方向色差を低減する。
【0088】
図19は、基本的な100%BG/UCR処理を行う場合を示す。100%BG/UCR処理では、CMY3色が重なった場合、減法混色により黒となることを利用して、図19(a)のCMYを図19(b)のように重複部分をKインクへ置き換え、重複部分をC、M、Y(カラー)から引く処理を行う。
【0089】
ただし、実際のBG/UCR処理では、Kインクをハイライト部分に使用するとドットが目立ち、粒状感が悪化するため、Kの入る階調(墨入れ階調)を遅らせ、黒のハイライト部分はドットの目立たないCMYのコンポジットブラックで形成する、図20に示すようなBG/UCR処理を行なっている。図20の例では、BG量とUCR量とは異なっている。Kインクだけでは充分な濃度が確保できないので、CMYで形成されるコンポジットブラックを用いて濃度を補っているためである。
【0090】
本発明の課題としているKインクとカラーインクの双方向色差は、このCMYコンポジットブラックとK(ブラック)との間で発生している。そのため、100%BG/UCR処理を適用すれば,理論上この問題を回避できるが、粒状感や黒濃度等の画像特性が大きく低下してしまう。
【0091】
そこで、本発明に係る画像処理方法では、墨入れ階調を可能な限り遅らせたBG/UCR処理を双方向印刷時に適用することにより、Kインクとカラーインク間の双方向色差を低減している。墨入れ階調を遅らせることで、CMYによるコンポジットブラックのみで表現される階調区間が長くなるため、この階調区間では双方向色差は発生しない。更に、Kインクが使われ始める暗色の高階調部は実質的に黒に近くなるため、色差が目立ちにくいという特性を利用することができる。
【0092】
ただし、墨入れ階調を単純に遅らせれば良いというわけではない。図21は、上述した図17の多値処理(4値)におけるKインクとカラーインクのドットの組合せを示したものである。図21の例では、無、小、中、大の4段階のドットサイズを形成可能であり、Kインクとカラーインクの組合せとしては、A〜Iの組合せが考えられる。
【0093】
しかし、墨入れ階調を遅らせることで、実質的にD、G、Hの組合せは発生しない。また、普通紙はインクの水分によって膨潤し、コックリングやジャムといった障害が発生しやすいため、大ドット同士(300〜400%相当)の組合せとなるF、Iも総量規制の観点から発生しない組合せと言える。残った組合せについて、双方向色差を測定した結果の一例を図22に示している。図22から分かるように、Kドットとカラードットのサイズが同等、もしくは1段階以上差がつくと、双方向色差が大きくなる傾向にある。「小−小」の組合せは、階調レベルが低いため、色差としては値が低いが、延長上にある「中−中」が色差大のため、やはり同等のサイズは組合せ不可(NG)と考えられる。なお、図22において、ペーパAはTYPE6200(商品名)、ペーパBはマイペーパ(商品名)、ペーパCはCopy Plus(商品名)をそれぞれ示す。
【0094】
また、図23は、K、Cの組合せにて、黒データに対する明度特性を測定した結果を示す。ある程度以上階調レベルが高くなると、CMYによるコンポジットブラックの明度が飽和し始めるため、Kの組合せ条件下では明度の変化が目立たなくとも、Cの組合せ条件下では、墨入れによる明度変化が劇的に現れてしまうことになる。つまり、墨入れ階調を遅らせすぎても、階調特性的に問題となることが分かる。
【0095】
以上の実験結果に基づいて、本実施形態では、BG/UCRにおける墨入れ階調位置を次のようにしている。
(1)墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーインクの多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせる。
(2)表現可能な多値レベルがn値(n>3)の場合、墨入れ開始位置が(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側とする。
【0096】
この場合、多値レベルをn>3としているのは、n=3の場合、切り替えは1回のみとなるが、切り替えが行われる階調レベル自体が、明度バランス的にn≧4の時よりもハイライト側にシフトし、CMYによるコンポジットブラックの明度飽和が始まる前に墨入れを開始できるためである。
【0097】
つまり、墨入れの階調レベルに対して規制を設けることで、CMYのコンポジットブラックで表現する階調区間と、黒インクが混じってCMYKで表現する階調区間の明度特性のズレを最小に抑えることができる。特に、普通紙上で許容出来るインク総量には限界があり、最大滴同士の組合せによるコンポジットブラックは通常あり得ないため、墨入れ階調レベルを遅くし過ぎると、CMYで表現するコンポジットブラックが総量規制で頭打ちとなり、BG後のCMYKによるコンポジットブラックとの差が大きくなりすぎるのを防止できる。
【0098】
以上の点を前述した図17を参照して説明すると、(1)墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーインクの多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせるとは、図17の例で小ドットだけの階調レベルから小及び中ドットを含む階調レベルへの切り替えレベルである85階調よりも1段階以上シャドー側、すなわち、86階調以降に遅らせるということである。同様に、図17の例で中ドットだけになる階調レベルから中及び大ドットを含む階調レベルへの切り替えレベルである170階調よりも1段階以上シャドー側、すなわち、171階調以降に遅らせるということである。
【0099】
また、(2)の表現可能な多値レベルがn値(n>3)の場合、墨入れ開始位置が(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側とするとは、中ドットだけになる階調レベルである170階調よりもハイライト側、すなわち、169階調以前を墨入れ開始位置とするということである。上記(1)と(2)との関係から、図17の例では小及び中ドットを含む86階調〜169階調の間に、墨入れ開始位置を設定することになる。
【0100】
前述したように、双方向色差の発生は用紙とインクの特性によるところが大きい。例えば、光沢紙やコート紙等の、双方向色差の発生しない、もしくは目立ちにくい用紙の場合には、墨入れ階調を遅らせる必要はない。各用紙の種類に応じて最適化したBG/UCR処理を行なうことが良好な画質を得ることにつながる。したがって、使用する用紙種に応じて、BG/UCR処理(パラメータ)を切り替えることが好ましい。
【0101】
また、双方向印刷の場合に墨入れの開始タイミングを遅らせたことによって、黒の締まりという点では、片方向印刷と双方向印刷とで画像品質に差が出ることになる。そこで、片方向印刷時にも双方向印刷用のBG/UCRを選択できるようにする(例えばプリンタドライバの印刷プロパティで指定できるようにする。)ことで、片方向印刷時と双方向印刷時の画像品質を揃えることができる。また、コントラストが過剰に感じる画像に関しては、双方向印刷用のBG/UCR処理を選択することによって、コントラストをやや抑えた出力画像を得ることができ、この点でも、片方向印刷時にも双方向印刷用のBG/UCRを選択できるようにすることによる効果が得られる。
【0102】
さらに、前述したように、CMM処理とBG/UCR処理とは別処理であるが、BG/UCRの処理をCMM処理に統合することもできる。例えば、図15の変換関係式を用いると、n(R,G,B)略=n´(C,M,Y)=n´´(C,M,Y,K)、と表わすことができ、BG/UCR後のKのデータをも直接CMM変換テーブルの中に入れ込むことができる。この場合、結果的に墨入れ開始位置を遅らせたことになるCMM処理を行なうことになり、墨入れ開始位置に関する説明は前述したBG/UCR処理と同様であるので、説明を省略する。
【0103】
次に、本発明の一実施形態に係る画像処理方法について図24を参照して説明する。
【0104】
図24に示すように、まず、画像データが入力される(S11)。次に,色空間処理変換テーブルを用いて入力画像データに対しCMM処理を行う(S12)。次に、入力画像データに双方向印刷が指定されているか否かを判別する(S13)。双方向印刷が指定されている場合には、上述したように、墨入れ開始位置を片方向印刷の場合に比べてシャドー側に遅らせた双方向用BG/UCR処理を行う(S14)。一方、双方向印刷でなく、片方向印刷が指定されている場合には、墨入れ開始位置を遅らせない(最適化した)片方向用BG/UCR処理を行う(S15)。次の総量規制処理(S16)以降の処理は、前述した図12の画像処理装置に設けた総量規制部133、γ補正部134、ズーミング部135、中間調処理部136が行う各画像処理と同様であるので、説明を省略する。
【0105】
このように、双方向印刷の場合には、墨入れの階調レベルをシャドー側に遅らせることにより、双方向色差の発生原因となる黒インクの使用タイミングを色差自体が目立ち難くなるシャドー側へ限定することとなり、黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を低減することができる。
【0106】
次に、本発明の他の実施形態に係る画像処理方法について図25を参照して説明する。
【0107】
図25に示すように、まず、画像データが入力される(S11)。次に,色空間処理変換テーブルを用いて入力画像データに対しCMM処理を行う(S12)。次に、使用する用紙(媒体)が上述したように黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を生じにくい用紙であるか否かを判別する(S20)。
【0108】
ステップS20で黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を生じにくい用紙でないと判別された場合、上記の図24と同様に、入力画像データに双方向印刷が指定されているか否かを判別する(S13)。双方向印刷が指定されている場合には、墨入れ開始位置を片方向印刷の場合に比べてシャドー側に遅らせた双方向用BG/UCR処理を行う(S14)。
【0109】
一方、ステップS20で黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を生じにくい用紙であると判別された場合、あるいは、ステップS13で双方向印刷でなく、片方向印刷が指定されている場合には、墨入れ開始位置を遅らせない(最適化した)片方向用BG/UCR処理を行う(S15)。次の総量規制処理(S16)以降の処理は、前述した図12の画像処理装置に設けた総量規制部133、γ補正部134、ズーミング部135、中間調処理部136が行う各画像処理と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
このように、用紙種別に応じてBG/UCR処理を切り替えることで、光沢紙やコート紙の一部などのように滴着弾順による双方向色差が発生しない(目立たない)用紙と普通紙とを混在して使用する環境下で、用紙種別に応じて最適なBG/UCR処理を行なうことができ、どの用紙種別に対しても良好な画像品質を得ることができる。
【0111】
図24及び図25のフロー図において、双方向印刷/片方向印刷を判別する手順(S13)、あるいは、色差を生じにくい用紙/生じ易い用紙を判別する手順(S20)が説明されているが、これらの判別は、予めプリンタドライバや処理モジュール上のデータベースに登録された組合せ情報を元に判断を行うものである。
【0112】
例えば、双方向印刷/片方向印刷の判別は、色差の他にドットの位置精度にも影響するため、高速に記録するモードでは「双方向印刷」、高画質に記録するモードでは「片方向印刷」というように、要求される特性に合わせた組合せで登録される。用紙に関しても同様であり、用紙の特性(双方向記録用BG/UCRが必要/不要)と記録モードに要求される特性(速度優先/画質優先)を組み合わせた記録モードを複数持つ画像処理方法が一般的である。
【0113】
記録を行う際には、これらのモードが自動的に、あるいはユーザからの指示により一意的に決まるため、判別処理は、モード情報に応じて切替を行えばよいことになる。
【0114】
更に、これらデータベース上にデフォルトの値として組み込まれた組合せに対して、ユーザからの指示により、強制的に「双方向/片方向」を切り換える場合もある。その場合は、指示された「双方向/片方向」を優先的な判断条件として、BG/UCRを自動的に切り換えることになる。
【0115】
なお、上記の実施形態においては、本発明に係るプログラムとしてのプリンタドライバが本発明に係る画像処理方法をコンピュータに実行させるようにして画像処理装置を構成したが、画像形成装置自体が上述した画像処理方法を実行する手段を備えるようにすることもできる。また、本発明に係る画像処理方法を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)を画像形成装置に搭載することもできる。
【0116】
次に、図26を用いて、インクジェット記録装置の機能と複写機能とを複合した画像形成装置(複合機)の一例について説明する。
【0117】
図26に示すように、この画像形成装置は、装置本体701の内部(筺体内)に、画像を形成するための画像形成部702と副走査搬送部703を有する。画像形成部702と副走査搬送部703を併せてプリンタエンジンユニットという。
【0118】
装置本体701の底部に設けた給紙部704から被記録媒体(用紙)705を1枚ずつ給紙して、副走査搬送部703によって用紙705を画像形成部702に対向する位置で搬送しながら、画像形成部702によって用紙705に液滴を吐出して所要の画像を形成(記録)した後、排紙搬送部706を通じて装置本体701の上面に形成した排紙トレイ707上に用紙705を排紙する。また、両面印刷のときには、片面印刷が終了した用紙705を排紙搬送部706を通じて装置本体701の側面から下方の両面ユニット710に送り込み、両面ユニット710でスイッチバックして再度用紙705を副搬送部703に送り込んで他面に印刷をした後、排紙トレイ707上に用紙705を排紙する。
【0119】
また、この画像形成装置は、画像形成部702で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として、装置本体701の上部で排紙トレイ707の上方には画像を読み取るための画像読取部(スキャナ部)711を備える。この画像読取部711は、照明光源713とミラー714とを含む走査光学系715と、ミラー716、717を含む走査光学系718とが移動して、コンタクトガラス712上に載置された原稿の画像の読み取りを行い、走査された原稿画像がレンズ719の後方に配置した画像読み取り素子720で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理され、画像処理した印刷データを印刷することができる。なお、コンタクトガラス712上には原稿を押えるための圧板710を備える。
【0120】
さらに、この画像形成装置は、画像形成部702で形成する画像のデータ(印刷画像データ)の入力系として、外部のパーソナルコンピュータ等の画像処理装置である情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷画像データを含むデータ等をケーブル或いはネットワークを介して受信可能であり、受信した印刷データを処理して印刷することができる。
【0121】
ここで、画像形成部702は、前述したインクジェット記録装置と略同様に、ガイドロッド721で案内されて主走査方向(用紙搬送方向と直交する方向)に移動可能なキャリッジ723上に、それぞれ異なる複数の色の液滴を吐出する記録ヘッド724を搭載し、キャリッジ723をキャリッジ走査機構によって主走査方向に移動させ、副走査搬送部703によって用紙705を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド724から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。
【0122】
記録ヘッド724は、前述した記録ヘッド14と同様に、黒インクのノズルがカラーインクのノズルに対して対称配置になっていない非対称配置のヘッドであり、キャリッジ723に搭載したサブタンク725からそれぞれ各色のインクが供給される。サブタンク725には装置本体701内に着脱自在に装着されるメインタンクである各色のインクカートリッジ726から図示しないチューブを介してインクが補充供給される。
【0123】
副走査搬送部703は、下方から給紙された用紙705を略90度搬送方向を転換させて画像形成部702に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ732と従動ローラ733間に架け渡した無端状の搬送ベルト731と、この搬送ベルト731の表面を帯電させるためのACバイアスが印加される帯電ローラ734と、搬送ベルト731を画像形成部702の対向する領域でガイドするガイド部材735と、用紙705を搬送ローラ732に対向する位置で搬送ベルト731に押し付ける押さえコロ(加圧コロ)736と、画像形成部702によって画像が形成された用紙705を排紙搬送部706に送り出すための搬送ローラ737を備える。
【0124】
この副走査搬送部703の搬送ベルト731は、副走査モータ831からタイミングベルト832及びタイミングローラ833を介して搬送ローラ732が回転されることで、副走査方向に周回するように構成している。
【0125】
給紙部704は、装置本体701に抜き差し可能で、多数枚の用紙705を積載して収納する給紙カセット741と、給紙カセット741内の用紙705を1枚ずつ分離して送り出すための給紙コロ742及びフリクションパッド743と、給紙される用紙705を副走査搬送部703に対して搬送する給紙搬送ローラ744とを有している。給紙コロ742は図示しない給紙クラッチを介してHB型ステッピングモータからなる給紙モータ841によって回転され、また給紙搬送ローラ44も給紙モータ141によって回転駆動される。
【0126】
排紙搬送部706は、画像形成が行われた用紙705を搬送する排紙搬送ローラ対761、762と、用紙705を排紙トレイ707へ送り出すための排紙搬送ローラ対763及び排紙ローラ対764とを備える。
【0127】
次に、図27を用いて、図26の画像形成装置の制御部の構成について説明する。
【0128】
図27に示すように、制御部900は、装置全体を制御する主制御部910を有する。主制御部910は、CPU901と、CPU901が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM902と、画像データ等を一時格納するRAM903と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)904と、入力画像に対して中間調処理を含む本発明に係る画像処理を施すASIC905とを備える。
【0129】
また、制御部900は、ホスト側と主制御部910との間に介在して、データ、信号の送受を行なうための外部I/F911と、記録ヘッド724を駆動制御するためのヘッドドライバを含む印刷制御部912と、キャリッジ923を移動走査する主走査モータ927を駆動するための主走査駆動部(モータドライバ)913と、副走査モータ731を駆動するための副走査駆動部914と、給紙モータ841を駆動するための給紙駆動部915と、排紙部706の各ローラを駆動する排紙モータ803を駆動するための排紙駆動部916と、両面ユニット710の各ローラを駆動する両面再給紙モータ804を駆動するための両面駆動部917と、維持回復機構を駆動する維持回復モータ805を駆動するための回復系駆動部918と、帯電ローラ734にACバイアスを供給するACバイアス供給部919とを備える。
【0130】
さらに、制御部900は、各種のソレノイド(SOL)類806を駆動するソレノイド類駆動部(ドライバ)922と、給紙関係の電磁クラック類323などを駆動するクラッチ駆動部924と、画像読取部711を制御するスキャナ制御部925とを備える。
【0131】
また、主制御部910は、前述した搬送ベルト731の温度を検出する温度センサ808の検出信号を入力する。なお、主制御部910には、その他の図示しない各種センサの検出信号も入力されるが図示を省略している。また、主制御部910は、装置本体701に設けたテンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部809との間で必要なキー入力の取り込み、表示情報の出力を行なう。
【0132】
さらに、この主制御部910には、キャリッジ723の移動量及び移動速度を検出するためのリニアエンコーダ801からの出力信号(パルス)と、搬送ベルト731に移動速度及び移動量を検出ためのロータリエンコーダ802からの出力信号(パルス)とが入力され、主制御部910は、これらの各出力信号及び各出力信号の相関関係に基づいて主操作駆動部913、副走査駆動部914を介して主走査モータ727、副走査モータ731を駆動制御することでキャリッジ723を移動させ、搬送ベルト731を移動させて用紙705を搬送する。
【0133】
このように構成した画像形成装置における画像形成動作について簡単に説明する。ACバイアス供給部919から帯電ローラ734に交番電圧である正負極の矩形波の高電圧を印加することによって、帯電ローラ734は搬送ベルト731の絶縁層(表層)に当接しているので、搬送ベルト731の表層には、正と負の電荷が搬送ベルト731の搬送方向に対して交互に帯状に印加され、搬送ベルト731上に所定の帯電幅で帯電が行われて不平等電界が生成される。
そこで、給紙部704などから用紙705が給紙されて搬送ローラ732と押えコロ736との間の、正負極の電荷が形成されることによって不平等電界が発生している搬送ベルト731上へと送り込まれると、用紙705は電界の向きにならって瞬時に分極し、静電吸着力で搬送ベルト731上に吸着され、搬送ベルト731の移動に伴って搬送される。
【0134】
そして、この搬送ベルト731で用紙705を間歇的に搬送しながら、用紙705上に印刷データに応じて記録ヘッド724から記録液の液滴を吐出して画像を形成(印刷)し、画像形成が行なわれた用紙705の先端側を分離爪で搬送ベルト731から分離して排紙搬送部706によって、排紙トレイ707に排紙する。
【0135】
このような画像形成装置においてもスキャナ部711で読み取った原稿画像を入力画像として、前述したように双方向印刷の時には、墨入れ開始位置をシャドー側に遅らせたBG/UCR処理を行なうので、双方向色差の発生原因となる黒インクの使用タイミングを色差自体が目立ち難くなるシャドー側へ限定することとなり、黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を低減することができる。この場合、特定用途向け集積回路を備えて画像処理を行なわせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】インクジェット記録装置の機構部の構成を示す図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の機構部を示す平面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置のヘッドユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図3のヘッドユニットによる画像形成動作を説明するための図である。
【図5】双方向色差の発生を説明するための図である。
【図6】染料系インクの用紙への浸透を説明するための図である。
【図7】顔料系インクの用紙への浸透を説明するための図である。
【図8】双方向色差が発生した記録画像の例を示す図である。
【図9】完全対称配置のヘッド構成の例を示す図である。
【図10】不完全対称配置のヘッド構成の例を示す図である。
【図11】図1のインクジェット記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明に係るプリンタドライバの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明に係るプリンタドライバの構成を示すブロック図である。
【図14】プリンタドライバ内での画像処理の手順を説明するためのブロック図である。
【図15】CMM処理によるRGB→CMYのテーブル変換を説明するための図である。
【図16】総量規制処理の例を説明するための図である。
【図17】ドットサイズ変調での多値表現における各サイズのドットによる階調再現範囲を説明するための図である。
【図18】ドットサイズのばらつきに対する階調区間の調整を説明するための図である。
【図19】100%BG/UCR処理を説明するための図である。
【図20】実際のBG/UCR処理の例を説明するための図である。
【図21】Kインクとカラーインクのドットサイズの組合せを示す図である。
【図22】各ドットサイズの組合せによる色差の比較例を説明するための図である。
【図23】墨入れ階調を遅らせたときの明度特性を説明するための図である。
【図24】本発明の一実施形態に係る画像処理方法を説明するためのフロー図である。
【図25】本発明の一実施形態の係る画像処理方法を説明するためのフロー図である。
【図26】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図27】図26の画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0137】
2 画像形成部
3 用紙
5 搬送機構部
14 記録ヘッド
33 搬送ベルト
90 ホスト(画像処理装置)
91 プリンタドライバ(プログラム)
131 CMM処理(色空間変換処理)
132 BG/UCR処理
133 総量規制処理
207、208、233a、223 カラーマッチング処理
209、210、224 BG/UCR処理
211、212、225 総量規制処理
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴吐出ヘッドを記録ヘッドに用いたインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、インク記録ヘッドから用紙(紙に限定するものではなく、OHP、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙等も含む)に記録液としてのインクを吐出して画像形成を行なう。
【0003】
このようなインクジェット記録装置がパーソナル領域からオフィス領域に広がるためには、次の2つの課題を解決しなければならない。1つの課題は、記録速度である。工業用の特殊なタイプを除いて、一般的なインクジェット記録装置では、記録用紙よりもかなり小さい記録ヘッドが繰り返し用紙上を走査してインク滴を吹き付けることで記録を行っている。これはいわば「線」で記録する方式である。用紙(ページ)単位、すなわち「面」で記録を行なう電子写真方式の画像形成装置に比べると、記録速度の点で不利になる。
【0004】
この印刷速度面の不利を解消するために、インク滴を噴射する周期を高めて走査速度の向上を図る方式や、記録ヘッドの大型化や双方向記録による走査回数の削減、画像データを記録する部位にのみ走査を行なう最短制御の走査方式が採用されている。これにより、小〜中部数の印刷では、電子写真方式を上回る記録速度を実現できる。
【0005】
もう1つの課題は、コストに関係する問題として、普通紙対応が挙げられる。専用紙を用いた場合には、インクジェット記録画像は極めて高品質な画像再現が可能であり、昨今のパーソナル用途のインクジェット記録装置では、写真と見間違えるばかりの画像品質が得られるようになってきている。
【0006】
しかし、これらの専用紙は一般に高価であり、企業等において厳しいコスト管理が要求される場合には導入が難しい。また、オフィス用途で出力される画像では、高い画像品質は要求されないため、専用紙でしか品質の高い画像を形成できないのではデメリットが大きくなる。
【0007】
そこで、普通紙に対応するために、インクの組成に改良を加えることが必要となる。例えば、低浸透な染料インクの開発や、定着補助剤の利用、顔料系インクの開発等が試みられ、最新の機種では、オフィスで一般的に利用される普通紙、一般にコピー用紙として利用される用紙でも、電子写真方式の画像形成装置と同等の品質の画像を形成できる。
【0008】
このように、走査速度や画像品質の改善により、インクジェット記録装置はオフィスにおいても非常に魅力的な製品となってきている。特に、レーザープリンタに比べてコスト面で有利であり、小型化が容易なために、デスクトップでの利用も進んでいる。
【0009】
しかし、色剤を用紙表面に定着させる機構を持つレーザープリンタやオフセット印刷等の画像形成装置と異なり、用紙中へ色剤を浸透させて定着を行なうインクジェット記録では、この浸透プロセスに伴う問題や制約がある。
【0010】
その一つが、先に用紙に付着したインクの色が、後から同一箇所に付着したインクよりも強く発色してしまうという問題である。特に、オフィス向けのインクジェット記録装置では、記録速度を高めるために、印字ヘッドの往路及び復路で記録を行う双方向印刷(双方向記録)が採用されるが、双方向印刷を行なうと、往路印字と復路印字でインクの着弾順が逆転し、往路と復路の走査バンド毎に異なった発色を呈することになる。現象としては、本来記録したい画像の上に、あたかも薄い横縞模様が乗ったように見えてしまい、画像品質が低下することになる。
【0011】
このような双方向印刷に伴う色差(双方向色差)に対する対策の一つとして、特許文献1、2に記載されているように、各色のノズル配置が、主走査方向に対して対称配置となるヘッドユニットを使用することがある。このような構成のヘッドでは、解像度1ピッチ分、2つのユニットをずらすことで、正逆双方の重ね順で形成される画像が1ドットライン置きに形成されるため、片方向だけの記録も双方向での記録も、理論上、発色そのものに違いは生じなくなる。しかし、各色対称構成のヘッドを実現するにあたっても幾つかの課題が残されており、必ずしも完全対称なノズル配置が実現できない場合がある。
【0012】
例えば、各色それぞれ別ユニットのヘッド構成とすると、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色ヘッドでも7〜8ユニットが必要となり、対称配置を取らない場合のユニットに比べてコストアップにつながってしまう。
【0013】
特に、圧電素子の変位によって加圧液室の一部を構成する振動板を変形させ、体積変化による圧力でインクを噴射するタイプのヘッドでは、元々ユニット自体の小型化が難しいところに加えて、ユニット数の増加に伴い、ヘッドモジュールの大型化、キャリッジの大型化、すなわち装置本体の大型化にも繋がることになる。また、個々のユニットを組み付けるときにも、異なる色のユニットだけでなく同色のユニットの組み付け精度にも注意する必要があり、製造の難易度が高くなるといったデメリットにも繋がる。
【0014】
また、加圧液室に充填したインクを急加熱し膜沸騰による体積変化を利用してインクを噴射するタイプのヘッドでは、フォトリソグラフィー技術を応用し、一体のユニットとして対称構成のヘッドを製造することも容易であるため、組み付けの難易度を軽減することが可能である。その代わり、ノズル面の状態を常に一定に保つための維持回復機構も各色共通のものを使用することになり、ノズル面上での混色が発生しやすくなる。特に、近年では黒文字の品質を向上させるため、カラーインクは染料インク、黒インクは顔料インク等、異なる特性のインクを搭載するケースが増えており、維持回復機構による混色が画像品質を落とすだけでなく、凝固した副生成物によるノズル詰まり等、噴射安定性の低下に繋がるおそれがある。
【0015】
そこで、実際には、特許文献3,4に記載されているように、黒インクを吐出するノズルを対称配置から切り離した不完全対称配置が採用されている。黒をカラーインクから切り離すことで、カラーの内、もう一色も1ユニット化が可能となるため、組み付け時の難易度も軽減することが可能となる。
【特許文献1】特開平11−320926号公報
【特許文献2】特開平07−242036号公報
【特許文献3】特開2005−001337号公報
【特許文献4】特開2005−001336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献3、4に記載されているように黒インクを切り離すことによって、対称配置によって解消したはずの双方向色差が、黒とカラーインクの間でまた発生することになるという課題がある。
【0017】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、黒(又はグレー)を切り離した不完全対称配置のヘッドによって発生する双方向色差を低減する画像処理方法、この画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム、この画像処理方法を実行する画像処理装置、この画像処理方法を実行する画像形成装置、及びこれらの画像処理装置と画像形成装置とを組み合わせた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像処理方法は、入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成処理する画像処理方法において、入力データに対して墨入れ処理を行うとき、双方向印刷を行なうときには片方向印刷を行なうときよりもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた処理を行う構成とした。なお、「入力データ」とは入力されたデータそのものだけでなく、入力されたデータに対して所要の処理を施したデータも含むものとする。
【0019】
ここで、双方向印刷の墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーの記録液を用いた場合の多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせることが好ましい。また、表現可能な多値レベルがn値(n>3)のとき、墨入れ開始位置は(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側であることが好ましい。さらに、片方向印刷のときにもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた墨入れ処理を選択可能とすることができる。さらにまた、用紙の種類に応じて双方向印刷を行なうときに墨入れ開始位置を遅らせた墨入れ処理を行なうか否かを切り替えることができる。また、入力データに対して色変換処理を行なう色変換処理に含ませることができる。
【0020】
本発明に係るプログラムは、入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理をコンピュータに行なわせるプログラムにおいて、コンピュータに本発明に係る画像処理方法を実行させる構成とした。
【0021】
本発明に係る画像処理装置は、入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理を行う画像処理装置において、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段を備える構成とした。
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置において、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段を備える構成とした。ここで、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段は特定用途向け集積回路で構成することができる。
【0023】
本発明に係る画像形成システムは、本発明に係る画像処理装置と、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルをカラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る画像形成システムは、本発明に係る画像形成装置とこの画像形成装置に画像データを送出する画像処理装置とで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システムによれば、入力データに対して墨入れ処理を行うとき、双方向印刷を行なうときには片方向印刷を行なうときよりもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた処理を行う構成としたので、黒又はグレーを切り離した不完全対称配置のヘッドによって発生する双方向色差を低減することができ、出力された画像の画像品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
まず、画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一例について図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の機構部全体の概略構成図、図2は同記録装置の要部平面説明図、図3は同記録装置のヘッド構成を説明する斜視説明図である。
【0028】
このインクジェット記録装置は、装置本体1の内部に画像形成部2等を有し、装置本体1の下方側に多数枚の記録媒体(以下「用紙」という。)3を積載可能な給紙トレイ4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙3を取り込み、搬送機構5によって用紙3を搬送しながら画像形成部2によって所要の画像を記録した後、装置本体1の側方に装着された排紙トレイ6に用紙3を排紙する。
【0029】
また、このインクジェット記録装置は、装置本体1に対して着脱可能な両面ユニット7を備え、両面印刷を行なうときには、一面(表面)印刷終了後、搬送機構5によって用紙3を逆方向に搬送しながら両面ユニット7内に取り込み、反転させて他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ6に用紙3を排紙する。
【0030】
ここで、画像形成部2は、ガイドシャフト11、12にキャリッジ13を摺動可能に保持し、図示しない主走査モータでキャリッジ13を用紙3の搬送方向と直交する方向に移動(主走査)させる。このキャリッジ13には、液滴を吐出する複数の吐出口であるノズル孔14n(図3参照)を配列した液滴吐出ヘッドで構成した4つのヘッド14a〜14dで構成した記録ヘッド14を搭載し、また、この記録ヘッド14に液体を供給するインクカートリッジ15を着脱自在に搭載している。なお、インクカートリッジ15に代えてサブタンクを搭載し、メインタンクからインクをサブタンクに補充供給する構成とすることもできる。
【0031】
記録ヘッド14を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0032】
給紙トレイ4の用紙3は、給紙コロ(半月コロ)21と図示しない分離パッドによって1枚ずつ分離され装置本体1内に給紙され、搬送機構5に送り込まれる。
【0033】
搬送機構5は、給紙された用紙3をガイド面23aに沿って上方にガイドし、また両面ユニット7から送り込まれる用紙3をガイド面23bに沿ってガイドする搬送ガイド部23と、用紙3を搬送する搬送ローラ24と、この搬送ローラ24に対して用紙3を押し付ける加圧コロ25と、用紙3を搬送ローラ24側にガイドするガイド部材26と、両面印刷時に戻される用紙3を両面ユニット7に案内するガイド部材27と、搬送ローラ24から送り出す用紙3を押圧する押し付けコロ28とを有している。
【0034】
さらに、搬送機構5は、記録ヘッド14で用紙3の平面性を維持したまま搬送するために、駆動ローラ31と従動ローラ32との間に掛け渡した搬送ベルト33と、この搬送ベルト33を帯電させるための帯電ローラ34と、この帯電ローラ34に対向するガイドローラ35と、図示しないが、搬送ベルト33を画像形成部2に対向する部分で案内するガイド部材(プラテンプレート)と、搬送ベルト33に付着した記録液(インク)を除去するためのクリーニング手段である多孔質体などからなるクリーニングローラなどを有している。
【0035】
ここで、搬送ベルト33は、無端状ベルトであり、駆動ローラ31と従動ローラ(テンションローラ)32との間に掛け渡されて、図1の矢示方向(用紙搬送方向)に周回するように構成している。
【0036】
帯電ローラ34は、搬送ベルト33の表層に接触し、搬送ベルト33の回動に従動して回転するように配置されている。この帯電ローラ34には図示しない高圧回路(高圧電源)から高電圧が所定のパターンで印加される。
【0037】
また、搬送機構5から下流側には画像が記録された用紙3を排紙トレイ6に送り出すための排紙ローラ38を備える。
【0038】
このように構成した画像形成装置において、搬送ベルト33は矢示方向に周回し、高電位の印加電圧が印加される帯電ローラ34と接触することで正に帯電される。この場合、帯電ローラ34からは所定の時間間隔で極性を切り替えることによって、所定の帯電ピッチで帯電させる。
【0039】
ここで、この高電位に帯電した搬送ベルト33上に用紙3が給送されると、用紙3内部が分極状態になり、搬送ベルト33上の電荷と逆極性の電荷が用紙3のベルト33と接触している面に誘電され、ベルト33上の電荷と搬送される用紙3上に誘電された電荷同士が互いに静電的に引っ張り合い、用紙3は搬送ベルト33に静電的に吸着される。このようにして、搬送ベルト33に強力に吸着した用紙3は反りや凹凸が校正され、高度に平らな面が形成される。
【0040】
そこで、搬送ベルト33を周回させて用紙3を移動させ、キャリッジ13を片方向又は双方向に移動走査しながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動し、図4(a)、(b)に示すように、記録ヘッド14から液滴14iを吐出(噴射)させて、停止している用紙3に液滴であるインク滴を着弾させてドットDiを形成することにより、1行分を記録し、用紙3を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。なお、図4(b)は図4(a)のドットDi形成部分を拡大したものである。
【0041】
このようにして、画像が記録された用紙3は排紙ローラ38によって排紙トレイ6に排紙される。
【0042】
ここで、双方向印刷における色差(双方向色差)について図5ないし図8を参照して説明する。
【0043】
まず、ここでは、図5に示すように、主走査の順記録方向に対して、K、C、M、Yの順で記録ヘッド14k、14c、14m、14yを配置してヘッドユニットを構成しているものとする。なお、前述したように、必ずしもこの並び順や色数に限定されるものではなく、インクの特性や設計思想により、異なった並び順やより多くの色が加わったユニットであっても良い。
【0044】
双方向印刷(記録)は、キャリッジの往復移動の両方で印字を行うことで、用紙1枚あたりの記録に要するキャリッジ移動回数を減らし、記録時間の短縮を図ることができる。その代わり、往復動作に伴う記録位置のズレが発生し易く、色重ね順に伴う色差の発生といった画像品質を低下させる問題が発生するため、主に画像品質よりも記録速度が優先される記録モードで採用されている記録方法である。
【0045】
図5のヘッド配置構成の場合、往路記録(往路印刷)では同一箇所においてK→C→M→Yの順でインク滴が吐出され、復路記録(復路印刷)では逆順のY→M→C→Kの順でインク滴が吐出されて記録が行われることになる。インクジェットの色剤定着特性として、異なる色のインク滴が同一箇所に打ち込まれた場合、先に用紙表面に着弾した色インクの方が支配的になるという特性がある。
【0046】
図6は、染料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の用紙内部の色剤分布を説明する図である。図6(a)に示すように、用紙PにA色の滴、B色の滴を順次打ち込む場合、図6(b)に示すように、先に打ち込んだA色の滴の方が用紙Pに浸透して、ここにB色の滴を打ち込むと、図6(c)に示すように、B色の滴はA色の浸透領域内で浸透するだけであり、先に打ち込んだA色の滴が後に打ち込んだB色の滴よりも広い範囲に拡がり、色剤の定着範囲に差が生じる。このため、2次色(C+MやM+Y等)においては先に打ち込んだ滴の色の方がより支配的な色成分となる。
【0047】
また、図7は、顔料系インクを同一箇所に打ち込んだ時の用紙内部の色分布を説明する図である。図7(a)に示すように、用紙PにA色の滴、B色の滴を順次打ち込む場合、図7(b)に示すように、先に打ち込んだA色の滴の方が用紙Pに浸透して、ここにB色の滴を打ち込むと、図7(c)に示すように、B色の滴はA色の浸透領域を抜けて浸透するというように、先に打ち込んだインクに含まれる色剤は用紙表面に留まり、後から打ち込まれた方の色剤は用紙内部に沈んでしまう。結果として、用紙表面に近い側(先に打ち込んだ滴の方)の色剤の特性が強くなり、支配的な色成分となる。
【0048】
そのため、上述した図5に示すヘッド構成においては、往路印刷時にはK→C→M→Yの順でインク滴が打ち込まれるので、予想される色調支配強度はK>C>M>Yとなり、復路印刷では逆順のY→M→C→Kの順でインク滴が打ち込まれるので、予想される色調支配強度はY>M>C>Kとなる。
【0049】
また、記録速度を向上させるために双方向記録を採用する場合、この特性に起因する2次色、3次色(C+M+Y等)の色調変化を考慮する必要がある。特に、往路と復路の両主走査移動毎に大きく用紙をフィードする場合は、図8に示すように、色調の変化が横縞となって現れるおそれがある。
【0050】
このような双方向色差に対しては、ヘッド構成として図9に示すような完全対象配置、あるいは、図10に示すような不完全対称配置を採用することで対応することができる。
【0051】
つまり、図9に示す完全対象配置のヘッド構成では、副走査方向に配列した複数のノズルからなるノズル列を主走査方向に複数列配列し、同一色のインクを吐出するノズル列を2列以上有し、同一色のインクを吐出するノズル列の間に異なる色のインクを吐出するノズル列を1列以上配列する構成をとることができる。ここでは、Yインクを吐出するノズル列Y1、Mインクを吐出するノズル列M1、Cインクを吐出するノズル列C1、Kインクを吐出するノズル列K1、Kインクを吐出するノズル列K2、Cインクを吐出するノズル列C2、Mインクを吐出するノズル列M2、Yインクを吐出するノズル列Y1の順に配置している。
【0052】
なお、図示しないが、完全対称配置の記録ヘッドの別の形態として、副走査方向に配列した複数のノズルからなるノズル列を主走査方向に複数列配列し、同一色のインクを吐出するノズル列を2列以上有し、該同一色のインクを吐出するノズル列の間に異なる色のインクを吐出するノズル列を1列以上配列し、主走査方向に直行する軸を中心に、同一色のインクを吐出するノズル列を左右対称に配列する構成をとることができる。
【0053】
このように、同一色のインクを吐出するノズル列を2列以上配列し、その間に重ねたい別の色インクを吐出するノズル列を1列以上配列させることで双方向色差は解消できる。上述した図9に示すように、Yインクを吐出するノズル列の間にM、C、Kインクを吐出するノズル列を配置することによって、往路、復路に関わらず、C→Yの順で重ね合わせることもできるし、Y→Cの順で重ね合わせることもできる。また、往路、復路に関わらずM→Yの順で重ね合わせることもできるし、Y→Mの順で重ね合わせることもできる。これによって、色再現域を拡大しながら双方向印字することができ、色再現域が広いカラー印刷物を高速で印刷することが可能となる。
【0054】
また、図10に示す不完全対称配置のヘッドでは、Kインクを吐出するノズル列K1、K2がカラーインクを吐出するノズル列に対して対称となっていない。ここでは、Yインクを吐出するノズル列Y1、Mインクを吐出するノズル列M1、Kインクを吐出するノズル列K1、Kインクを吐出するノズル列K2、Cインクを吐出するノズル列C1、Cインクを吐出するノズル列C2、Mインクを吐出するノズル列M2、Yインクを吐出するノズル列Y1の順に配置している。
【0055】
この例では、Y,M、Kを使用する場合、あるいは、Y、M、Cを使用する場合には、往路でも復路でも、着弾順序は同じになって双方向色差が生じない。しかしながら、KとC組合せにおいて対称配置とはなっていないことから、KとCを使用する場合、往路ではKインクが先に着弾し支配色となるのに対し、逆に、復路ではCインクが先に着弾して支配色となるため、CインクもしくはCインクとの組合せで作成される2次色に対して、Kが混ざる色を使用した場合、前述した図8と同様な双方向色差となって画像上に現れることになる。
【0056】
このように不完全対称配置では、KとCを対称構成から除外している。これは、次の理由による。オフィスで一般的に使用される普通紙は、インクジェット記録装置向けの処理は何も施されていないため、色剤が用紙内部に沈降し、非常に濃度が出にくい用紙となっている。この対策として、インク処方の面から低浸透性インクの開発や顔料インクの開発が進められている。特に黒文字をくっきりと表現するためにKインクに対して適用されるのが殆どである。その一方で、残りのカラーインクに対しては、専用紙上での画像品質を確保するための処方(高浸透性インクや染料インク)が主に適用されている。このため、ノズル面のコンディションを整える維持/回復機構を介して特性の異なるインク同士が混じり合わないよう、Kとカラーノズルが切り離される。なお、図10のヘッド構成において、Cは組合せ上除外されただけで、他のカラーインクの場合もあり得る。
【0057】
ただし、低浸透インクや顔料インクをもってしても、普通紙上で充分な濃度を得ることは難しく、実際には、Kに加えてCMYのインクを重ね打ちすることで、濃度の不足を補う方式が良く採用されている。このような場合では、KとCが対称配置から外れていることに起因する双方向色差が発生することになる。
【0058】
次に、この画像形成装置の制御部の構成について図11を参照して説明する。
【0059】
この制御部100は、装置全体を制御するCPU101と、CPU101が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM102と、画像データ等を一時格納するRAM103と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)104と、各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理(場合によっては後述する画像処理の一部の処理を含む)やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC105とを備える。
【0060】
また、この制御部100は、本発明に係る画像処理装置を含むパーソナルコンピュータ(PC)等のホスト90側とのデータ、信号の送受を行なうためのI/F106と、記録ヘッド14を駆動制御するためのヘッド駆動制御部107及びヘッドドライバ108と、主走査モータ110を駆動するための主走査モータ駆動部111と、副走査モータ112を駆動するための副走査モータ駆動部113と、環境温度及び/又は環境湿度を検出する環境センサ118、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O116などを備える。
【0061】
また、この制御部100には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル117が接続されている。さらに、制御部100は、帯電ローラ34に対する高電圧を印加する高圧回路(ACバイアス供給部)114のオン/オフの切り替え及び出力極性の切り替え制御を行なう。
【0062】
ここで、制御部100は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト90側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してI/F106で受信する。なお、この制御部100に対する印刷データの生成出力は、ホスト90側の本発明に係るプリンタドライバ91によって行なう。
【0063】
CPU101は、I/F106に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC105にてデータの並び替え処理(その他の後述する画像処理の一部の処理を含む構成とすることもできる。)等を行ってヘッド駆動制御部107に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータへの変換は、前述したようにホスト90側のプリンタドライバ91で画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしているが、例えばROM102にフォントデータを格納して行っても良い。
【0064】
ヘッド駆動制御部107は、記録ヘッド14の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータを、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ108にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ108に送出する。
【0065】
このヘッド駆動制御部107は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM102で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を備える。
【0066】
また、ヘッドドライバ108は、ヘッド駆動制御部107からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部107からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に記録ヘッド14のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動する。
【0067】
次に、この画像形成装置によって画像を形成するために画像データを転送するホスト側のパーソナルコンピュータ(PC)に設けた、本発明に係る画像処理装置の構成例について図12及び図13を参照して説明する。なお、これらの画像処理装置と画像形成装置とにより本発明に係る画像形成システムが構成される。
【0068】
図12の構成では、画像処理装置120がホスト90のプリンタドライバ91に構成される。この画像処理装置120は、アプリケーションプログラムなどから与えられた画像データ130を、モニタ表示用の色空間から画像形成装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行なうCMM(Color Management Module)処理部131と、CMYの値から黒生成/下色除去を行なってブラック(K)の成分を加えたKCYM値に変換する本発明に係る墨入れ処理であるBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部132と、記録制御信号となるCMYK信号に対し画像形成装置が画像形成できる記録色材の最大総量値に応じてCMYK信号を補正する総量規制部133と、画像形成装置の特性やユーザの嗜好を反映した入出力補正を行なうγ補正部134と、画像形成装置の解像度に合わせて拡大処理を行なうズーミング(Zooming)部135と、画像データを画像形成装置から噴射するドットのパターン配置に置き換える多値・少値マトリクスを含む中間調処理部136とを備える。
【0069】
図13の構成では、画像処理装置140が、ホスト90のプリンタドライバ91に構成される。この画像処理装置140は、アプリケーションプログラムなどから与えられた画像データ130をモニタ表示用の色空間から画像形成装置用の色空間への変換(RGB表色系→CMY表色系)を行なうCMM(Color Management Module)処理部131と、CMYの値から黒生成/下色除去を行なう本発明に係る墨入れ処理であるBG/UCR(black generation/ Under Color Removal)処理部132と、総量規制を行う総量規制部133と、画像形成装置の特性やユーザの嗜好を反映した入出力補正を行なうγ補正部134とを備える。
【0070】
また、図13の構成の場合、画像処理装置140内に設けていない、一部の画像処理機能が画像形成装置側の制御部100に構成される。この制御部100は、γ補正処理を行なった後の出力データを受信して、このデータに対して画像形成装置の解像度に合わせて拡大処理を行なうズーミング(Zooming)部135と、画像データを画像形成装置から噴射するドットのパターン配置に置き換える多値・少値マトリクスを含む中間調処理部136とを備える。
【0071】
図12の構成は全ての画像処理をPC側で処理するいわば「廉価機」であり、図13の構成は一部の画像処理機能を画像形成装置に内蔵したASICで分担するいわば「高速機」である。図13の構成例では、画像処理をホスト側と画像形成装置側で分担して処理することができるために、画像処理にかかる時間を短縮できるだけでなく、ホストPCの開放を早めることができる。ただし、より高性能なASICの(場合によっては大容量のメモリも)搭載が必要となるため、一般的に「廉価機」よりも価格が高くなる。
【0072】
次に、ホスト側のプリンタドライバ91による画像処理の流れについて図14に示すブロック図を参照して説明する。
【0073】
パーソナルコンピュータなどのデータ処理装置上で動作するアプリケーションプログラムから「印刷」指示が出されると、プリンタドライバ91においては、入力200に対してオブジェクト判定処理201でオブジェクトの種類を判定し、オブジェクト毎、つまり文字の画像データ202、線画の画像データ203、グラフィックスの画像データ204、イメージの画像データ205毎にデータが渡され、それぞれのルートを通って処理が行われる。
【0074】
つまり、文字202、線画203、グラフィックス204については、カラー調整処理206を行ない。そして、文字についてはカラーマッチング処理207、BG/UCR処理209、総量規制処理211、γ補正処理213を行い、更に文字ディザ処理(中間調処理)215を行なう。また、線画及グラフィックスについてカラーマッチング処理208、BG/UCR処理210、総量規制処理212、γ補正処理214を行い、更にグラフィックスディザ処理(中間調処理)216を行なう。
【0075】
一方、イメージ205については、色判定及び圧縮方式判定処理221を行って、通常の場合には、カラー調整処理222、カラーマッチング処理223を行なった後、BG/UCR処理224、総量規制処理225、γ補正処理226を行い、更に誤差拡散処理(中間調処理)227を行なう。また、2色以下の場合には、イメージ間引き処理231、カラー調整処理232、カラーマッチング処理233a又はインデックスレス処理(カラーマッチングを行なわない処理)233bを行なった後、BG/UCR処理224、総量規制処理225、γ補正処理226を行い、更に誤差拡散処理(中間調処理)227を行なう。
【0076】
なお、線画及びグラフィックスについてはカラー調整処理206に至る前に分岐してROP処理241を経てイメージの場合のカラーマッチング処理232に移行することもある。
【0077】
このようにしてオブジェクト毎に処理された画像データは、また元の一つの画像データに合成され、画像形成装置へと渡されることになる。
【0078】
ここで、各処理について図15ないし図18を参照して説明する。
【0079】
CMM処理(カラーマッチング処理)は、RGB系の色空間からCMY系の色空間への変換を行う処理である。この処理は、例えば、図15に示すような3次元立体格子を用い、入力されたRGBデータを補間演算にて最も近い座標の格子点へ当てはめ、その格子点で定義されるCMYデータに置き換えを行う処理となる。なお、図15では立方体の格子を示しているが、この他、六角柱や四面体等の立体格子などを用いることも知られている。
【0080】
BG/UCR処理は、CMYデータの重複するレベルをKの成分に置き換えることで、Kの成分を作成する。これは、CMY3色分のインク量を1色のKインクで賄うことができるため、インクの消費量を抑える効果があり、また、暗色に所謂「しまり」を加えることにもつながる。
【0081】
総量規制処理は、記録を行う用紙に対して使用可能なインク付着量であるかを計算し、許容量を超えていると判断された場合には、許容内に収まるようにデータに補正をかける処理である。例えば図16に総量規制処理の一例を示している。例えば、1次色の最大階調でのインク付着が許容される最大値であった場合、2色や3色で形成される2次色や3次色では、単純計算で2〜3倍のインク付着量となり、許容値をオーバーすることになる。そこで、許容値内に収まるように入力値を補正する。この図16の例では、2次色を構成する色の最大値が184階調に、3次色を構成する色では139階調に抑えられている。もちろん、この補正量は、用紙とインク、出力条件により変化し、この図16の例に限定されるものではない。
【0082】
中間調処理では、画素の値をドットのON/OFFに置き換える処理を行う。基本的には画素の階調レベルと閾値を比較し、閾値を超える階調レベルの画素位置にはドットを発生させ、下回る画素にはドットを発生させないことで、階調レベルのドットへの置き換え(量子化)を行う。
【0083】
中間調処理としては、一般的に、閾値マトリクスを使用するディザ法と、量子化の際の誤差を後続の画素計算に反映する誤差拡散法とが主流となっている。近年は粒状感を改善するため、図10に示すようにサイズの異なるドットと組み合わせる、同相色で明度の異なるインクを組み合わせることによって、モニタ並みの多値というには少ないが、1bitから2bit(4階調)程度へ階調再現性を向上させている。
【0084】
図17では、ドットサイズ変調型の画像形成装置において、階調再現のための閾値割り振りを示している。形成されるドットサイズに応じて、各ドットが使用される階調区間の幅が調整され、中間調処理におけるディザの閾値や誤差拡散の閾値設定に反映されることになる。図17は、各ドットサイズが理想的な大きさで形成された場合を示す。すなわち、0〜85階調までは小ドットと空白のみで階調表現が行われ、86〜170階調までは小ドットと中ドットのみで階調表現が行われ、171〜255階調までは中ドットと大ドットのみで階調表現が行われる。
【0085】
この場合、記録ヘッドの性能によっては、必ずしも理想のドットサイズが実現できるとは限らないが、図18(a)、(b)に示すように、適用する階調区間を調整することで所望の特性、例えば、階調レベルに応じた明度が線形となる(明度リニア)特性等を実現することが可能となる。CMYKの単色階調表現に関しては中間調処理そのものの特性が階調再現に反映されるため、単色のみが使用される場合は、階調拡張処理が不要か、最小限の拡張で済むことになる。
【0086】
これは、ドットサイズ変調方式だけでなく、同相色で濃度の異なるインク、例えばLightインク(淡インク)やdarkインク(濃インク)を使用した明度変調方式の場合も同様である。Lightインクやdarkインクは、CMYK各色の粒状感やインク付着量を改善することが目的であり、基本的にノーマルなCMYKインクと同一色相上に連なって階調を表現することには変わりがない。
【0087】
本発明は、この画像処理の中のBG/UCR処理によって、Kとカラーとの双方向色差を低減する。
【0088】
図19は、基本的な100%BG/UCR処理を行う場合を示す。100%BG/UCR処理では、CMY3色が重なった場合、減法混色により黒となることを利用して、図19(a)のCMYを図19(b)のように重複部分をKインクへ置き換え、重複部分をC、M、Y(カラー)から引く処理を行う。
【0089】
ただし、実際のBG/UCR処理では、Kインクをハイライト部分に使用するとドットが目立ち、粒状感が悪化するため、Kの入る階調(墨入れ階調)を遅らせ、黒のハイライト部分はドットの目立たないCMYのコンポジットブラックで形成する、図20に示すようなBG/UCR処理を行なっている。図20の例では、BG量とUCR量とは異なっている。Kインクだけでは充分な濃度が確保できないので、CMYで形成されるコンポジットブラックを用いて濃度を補っているためである。
【0090】
本発明の課題としているKインクとカラーインクの双方向色差は、このCMYコンポジットブラックとK(ブラック)との間で発生している。そのため、100%BG/UCR処理を適用すれば,理論上この問題を回避できるが、粒状感や黒濃度等の画像特性が大きく低下してしまう。
【0091】
そこで、本発明に係る画像処理方法では、墨入れ階調を可能な限り遅らせたBG/UCR処理を双方向印刷時に適用することにより、Kインクとカラーインク間の双方向色差を低減している。墨入れ階調を遅らせることで、CMYによるコンポジットブラックのみで表現される階調区間が長くなるため、この階調区間では双方向色差は発生しない。更に、Kインクが使われ始める暗色の高階調部は実質的に黒に近くなるため、色差が目立ちにくいという特性を利用することができる。
【0092】
ただし、墨入れ階調を単純に遅らせれば良いというわけではない。図21は、上述した図17の多値処理(4値)におけるKインクとカラーインクのドットの組合せを示したものである。図21の例では、無、小、中、大の4段階のドットサイズを形成可能であり、Kインクとカラーインクの組合せとしては、A〜Iの組合せが考えられる。
【0093】
しかし、墨入れ階調を遅らせることで、実質的にD、G、Hの組合せは発生しない。また、普通紙はインクの水分によって膨潤し、コックリングやジャムといった障害が発生しやすいため、大ドット同士(300〜400%相当)の組合せとなるF、Iも総量規制の観点から発生しない組合せと言える。残った組合せについて、双方向色差を測定した結果の一例を図22に示している。図22から分かるように、Kドットとカラードットのサイズが同等、もしくは1段階以上差がつくと、双方向色差が大きくなる傾向にある。「小−小」の組合せは、階調レベルが低いため、色差としては値が低いが、延長上にある「中−中」が色差大のため、やはり同等のサイズは組合せ不可(NG)と考えられる。なお、図22において、ペーパAはTYPE6200(商品名)、ペーパBはマイペーパ(商品名)、ペーパCはCopy Plus(商品名)をそれぞれ示す。
【0094】
また、図23は、K、Cの組合せにて、黒データに対する明度特性を測定した結果を示す。ある程度以上階調レベルが高くなると、CMYによるコンポジットブラックの明度が飽和し始めるため、Kの組合せ条件下では明度の変化が目立たなくとも、Cの組合せ条件下では、墨入れによる明度変化が劇的に現れてしまうことになる。つまり、墨入れ階調を遅らせすぎても、階調特性的に問題となることが分かる。
【0095】
以上の実験結果に基づいて、本実施形態では、BG/UCRにおける墨入れ階調位置を次のようにしている。
(1)墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーインクの多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせる。
(2)表現可能な多値レベルがn値(n>3)の場合、墨入れ開始位置が(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側とする。
【0096】
この場合、多値レベルをn>3としているのは、n=3の場合、切り替えは1回のみとなるが、切り替えが行われる階調レベル自体が、明度バランス的にn≧4の時よりもハイライト側にシフトし、CMYによるコンポジットブラックの明度飽和が始まる前に墨入れを開始できるためである。
【0097】
つまり、墨入れの階調レベルに対して規制を設けることで、CMYのコンポジットブラックで表現する階調区間と、黒インクが混じってCMYKで表現する階調区間の明度特性のズレを最小に抑えることができる。特に、普通紙上で許容出来るインク総量には限界があり、最大滴同士の組合せによるコンポジットブラックは通常あり得ないため、墨入れ階調レベルを遅くし過ぎると、CMYで表現するコンポジットブラックが総量規制で頭打ちとなり、BG後のCMYKによるコンポジットブラックとの差が大きくなりすぎるのを防止できる。
【0098】
以上の点を前述した図17を参照して説明すると、(1)墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーインクの多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせるとは、図17の例で小ドットだけの階調レベルから小及び中ドットを含む階調レベルへの切り替えレベルである85階調よりも1段階以上シャドー側、すなわち、86階調以降に遅らせるということである。同様に、図17の例で中ドットだけになる階調レベルから中及び大ドットを含む階調レベルへの切り替えレベルである170階調よりも1段階以上シャドー側、すなわち、171階調以降に遅らせるということである。
【0099】
また、(2)の表現可能な多値レベルがn値(n>3)の場合、墨入れ開始位置が(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側とするとは、中ドットだけになる階調レベルである170階調よりもハイライト側、すなわち、169階調以前を墨入れ開始位置とするということである。上記(1)と(2)との関係から、図17の例では小及び中ドットを含む86階調〜169階調の間に、墨入れ開始位置を設定することになる。
【0100】
前述したように、双方向色差の発生は用紙とインクの特性によるところが大きい。例えば、光沢紙やコート紙等の、双方向色差の発生しない、もしくは目立ちにくい用紙の場合には、墨入れ階調を遅らせる必要はない。各用紙の種類に応じて最適化したBG/UCR処理を行なうことが良好な画質を得ることにつながる。したがって、使用する用紙種に応じて、BG/UCR処理(パラメータ)を切り替えることが好ましい。
【0101】
また、双方向印刷の場合に墨入れの開始タイミングを遅らせたことによって、黒の締まりという点では、片方向印刷と双方向印刷とで画像品質に差が出ることになる。そこで、片方向印刷時にも双方向印刷用のBG/UCRを選択できるようにする(例えばプリンタドライバの印刷プロパティで指定できるようにする。)ことで、片方向印刷時と双方向印刷時の画像品質を揃えることができる。また、コントラストが過剰に感じる画像に関しては、双方向印刷用のBG/UCR処理を選択することによって、コントラストをやや抑えた出力画像を得ることができ、この点でも、片方向印刷時にも双方向印刷用のBG/UCRを選択できるようにすることによる効果が得られる。
【0102】
さらに、前述したように、CMM処理とBG/UCR処理とは別処理であるが、BG/UCRの処理をCMM処理に統合することもできる。例えば、図15の変換関係式を用いると、n(R,G,B)略=n´(C,M,Y)=n´´(C,M,Y,K)、と表わすことができ、BG/UCR後のKのデータをも直接CMM変換テーブルの中に入れ込むことができる。この場合、結果的に墨入れ開始位置を遅らせたことになるCMM処理を行なうことになり、墨入れ開始位置に関する説明は前述したBG/UCR処理と同様であるので、説明を省略する。
【0103】
次に、本発明の一実施形態に係る画像処理方法について図24を参照して説明する。
【0104】
図24に示すように、まず、画像データが入力される(S11)。次に,色空間処理変換テーブルを用いて入力画像データに対しCMM処理を行う(S12)。次に、入力画像データに双方向印刷が指定されているか否かを判別する(S13)。双方向印刷が指定されている場合には、上述したように、墨入れ開始位置を片方向印刷の場合に比べてシャドー側に遅らせた双方向用BG/UCR処理を行う(S14)。一方、双方向印刷でなく、片方向印刷が指定されている場合には、墨入れ開始位置を遅らせない(最適化した)片方向用BG/UCR処理を行う(S15)。次の総量規制処理(S16)以降の処理は、前述した図12の画像処理装置に設けた総量規制部133、γ補正部134、ズーミング部135、中間調処理部136が行う各画像処理と同様であるので、説明を省略する。
【0105】
このように、双方向印刷の場合には、墨入れの階調レベルをシャドー側に遅らせることにより、双方向色差の発生原因となる黒インクの使用タイミングを色差自体が目立ち難くなるシャドー側へ限定することとなり、黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を低減することができる。
【0106】
次に、本発明の他の実施形態に係る画像処理方法について図25を参照して説明する。
【0107】
図25に示すように、まず、画像データが入力される(S11)。次に,色空間処理変換テーブルを用いて入力画像データに対しCMM処理を行う(S12)。次に、使用する用紙(媒体)が上述したように黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を生じにくい用紙であるか否かを判別する(S20)。
【0108】
ステップS20で黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を生じにくい用紙でないと判別された場合、上記の図24と同様に、入力画像データに双方向印刷が指定されているか否かを判別する(S13)。双方向印刷が指定されている場合には、墨入れ開始位置を片方向印刷の場合に比べてシャドー側に遅らせた双方向用BG/UCR処理を行う(S14)。
【0109】
一方、ステップS20で黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を生じにくい用紙であると判別された場合、あるいは、ステップS13で双方向印刷でなく、片方向印刷が指定されている場合には、墨入れ開始位置を遅らせない(最適化した)片方向用BG/UCR処理を行う(S15)。次の総量規制処理(S16)以降の処理は、前述した図12の画像処理装置に設けた総量規制部133、γ補正部134、ズーミング部135、中間調処理部136が行う各画像処理と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
このように、用紙種別に応じてBG/UCR処理を切り替えることで、光沢紙やコート紙の一部などのように滴着弾順による双方向色差が発生しない(目立たない)用紙と普通紙とを混在して使用する環境下で、用紙種別に応じて最適なBG/UCR処理を行なうことができ、どの用紙種別に対しても良好な画像品質を得ることができる。
【0111】
図24及び図25のフロー図において、双方向印刷/片方向印刷を判別する手順(S13)、あるいは、色差を生じにくい用紙/生じ易い用紙を判別する手順(S20)が説明されているが、これらの判別は、予めプリンタドライバや処理モジュール上のデータベースに登録された組合せ情報を元に判断を行うものである。
【0112】
例えば、双方向印刷/片方向印刷の判別は、色差の他にドットの位置精度にも影響するため、高速に記録するモードでは「双方向印刷」、高画質に記録するモードでは「片方向印刷」というように、要求される特性に合わせた組合せで登録される。用紙に関しても同様であり、用紙の特性(双方向記録用BG/UCRが必要/不要)と記録モードに要求される特性(速度優先/画質優先)を組み合わせた記録モードを複数持つ画像処理方法が一般的である。
【0113】
記録を行う際には、これらのモードが自動的に、あるいはユーザからの指示により一意的に決まるため、判別処理は、モード情報に応じて切替を行えばよいことになる。
【0114】
更に、これらデータベース上にデフォルトの値として組み込まれた組合せに対して、ユーザからの指示により、強制的に「双方向/片方向」を切り換える場合もある。その場合は、指示された「双方向/片方向」を優先的な判断条件として、BG/UCRを自動的に切り換えることになる。
【0115】
なお、上記の実施形態においては、本発明に係るプログラムとしてのプリンタドライバが本発明に係る画像処理方法をコンピュータに実行させるようにして画像処理装置を構成したが、画像形成装置自体が上述した画像処理方法を実行する手段を備えるようにすることもできる。また、本発明に係る画像処理方法を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)を画像形成装置に搭載することもできる。
【0116】
次に、図26を用いて、インクジェット記録装置の機能と複写機能とを複合した画像形成装置(複合機)の一例について説明する。
【0117】
図26に示すように、この画像形成装置は、装置本体701の内部(筺体内)に、画像を形成するための画像形成部702と副走査搬送部703を有する。画像形成部702と副走査搬送部703を併せてプリンタエンジンユニットという。
【0118】
装置本体701の底部に設けた給紙部704から被記録媒体(用紙)705を1枚ずつ給紙して、副走査搬送部703によって用紙705を画像形成部702に対向する位置で搬送しながら、画像形成部702によって用紙705に液滴を吐出して所要の画像を形成(記録)した後、排紙搬送部706を通じて装置本体701の上面に形成した排紙トレイ707上に用紙705を排紙する。また、両面印刷のときには、片面印刷が終了した用紙705を排紙搬送部706を通じて装置本体701の側面から下方の両面ユニット710に送り込み、両面ユニット710でスイッチバックして再度用紙705を副搬送部703に送り込んで他面に印刷をした後、排紙トレイ707上に用紙705を排紙する。
【0119】
また、この画像形成装置は、画像形成部702で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として、装置本体701の上部で排紙トレイ707の上方には画像を読み取るための画像読取部(スキャナ部)711を備える。この画像読取部711は、照明光源713とミラー714とを含む走査光学系715と、ミラー716、717を含む走査光学系718とが移動して、コンタクトガラス712上に載置された原稿の画像の読み取りを行い、走査された原稿画像がレンズ719の後方に配置した画像読み取り素子720で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理され、画像処理した印刷データを印刷することができる。なお、コンタクトガラス712上には原稿を押えるための圧板710を備える。
【0120】
さらに、この画像形成装置は、画像形成部702で形成する画像のデータ(印刷画像データ)の入力系として、外部のパーソナルコンピュータ等の画像処理装置である情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの印刷画像データを含むデータ等をケーブル或いはネットワークを介して受信可能であり、受信した印刷データを処理して印刷することができる。
【0121】
ここで、画像形成部702は、前述したインクジェット記録装置と略同様に、ガイドロッド721で案内されて主走査方向(用紙搬送方向と直交する方向)に移動可能なキャリッジ723上に、それぞれ異なる複数の色の液滴を吐出する記録ヘッド724を搭載し、キャリッジ723をキャリッジ走査機構によって主走査方向に移動させ、副走査搬送部703によって用紙705を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド724から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。
【0122】
記録ヘッド724は、前述した記録ヘッド14と同様に、黒インクのノズルがカラーインクのノズルに対して対称配置になっていない非対称配置のヘッドであり、キャリッジ723に搭載したサブタンク725からそれぞれ各色のインクが供給される。サブタンク725には装置本体701内に着脱自在に装着されるメインタンクである各色のインクカートリッジ726から図示しないチューブを介してインクが補充供給される。
【0123】
副走査搬送部703は、下方から給紙された用紙705を略90度搬送方向を転換させて画像形成部702に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ732と従動ローラ733間に架け渡した無端状の搬送ベルト731と、この搬送ベルト731の表面を帯電させるためのACバイアスが印加される帯電ローラ734と、搬送ベルト731を画像形成部702の対向する領域でガイドするガイド部材735と、用紙705を搬送ローラ732に対向する位置で搬送ベルト731に押し付ける押さえコロ(加圧コロ)736と、画像形成部702によって画像が形成された用紙705を排紙搬送部706に送り出すための搬送ローラ737を備える。
【0124】
この副走査搬送部703の搬送ベルト731は、副走査モータ831からタイミングベルト832及びタイミングローラ833を介して搬送ローラ732が回転されることで、副走査方向に周回するように構成している。
【0125】
給紙部704は、装置本体701に抜き差し可能で、多数枚の用紙705を積載して収納する給紙カセット741と、給紙カセット741内の用紙705を1枚ずつ分離して送り出すための給紙コロ742及びフリクションパッド743と、給紙される用紙705を副走査搬送部703に対して搬送する給紙搬送ローラ744とを有している。給紙コロ742は図示しない給紙クラッチを介してHB型ステッピングモータからなる給紙モータ841によって回転され、また給紙搬送ローラ44も給紙モータ141によって回転駆動される。
【0126】
排紙搬送部706は、画像形成が行われた用紙705を搬送する排紙搬送ローラ対761、762と、用紙705を排紙トレイ707へ送り出すための排紙搬送ローラ対763及び排紙ローラ対764とを備える。
【0127】
次に、図27を用いて、図26の画像形成装置の制御部の構成について説明する。
【0128】
図27に示すように、制御部900は、装置全体を制御する主制御部910を有する。主制御部910は、CPU901と、CPU901が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM902と、画像データ等を一時格納するRAM903と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)904と、入力画像に対して中間調処理を含む本発明に係る画像処理を施すASIC905とを備える。
【0129】
また、制御部900は、ホスト側と主制御部910との間に介在して、データ、信号の送受を行なうための外部I/F911と、記録ヘッド724を駆動制御するためのヘッドドライバを含む印刷制御部912と、キャリッジ923を移動走査する主走査モータ927を駆動するための主走査駆動部(モータドライバ)913と、副走査モータ731を駆動するための副走査駆動部914と、給紙モータ841を駆動するための給紙駆動部915と、排紙部706の各ローラを駆動する排紙モータ803を駆動するための排紙駆動部916と、両面ユニット710の各ローラを駆動する両面再給紙モータ804を駆動するための両面駆動部917と、維持回復機構を駆動する維持回復モータ805を駆動するための回復系駆動部918と、帯電ローラ734にACバイアスを供給するACバイアス供給部919とを備える。
【0130】
さらに、制御部900は、各種のソレノイド(SOL)類806を駆動するソレノイド類駆動部(ドライバ)922と、給紙関係の電磁クラック類323などを駆動するクラッチ駆動部924と、画像読取部711を制御するスキャナ制御部925とを備える。
【0131】
また、主制御部910は、前述した搬送ベルト731の温度を検出する温度センサ808の検出信号を入力する。なお、主制御部910には、その他の図示しない各種センサの検出信号も入力されるが図示を省略している。また、主制御部910は、装置本体701に設けたテンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部809との間で必要なキー入力の取り込み、表示情報の出力を行なう。
【0132】
さらに、この主制御部910には、キャリッジ723の移動量及び移動速度を検出するためのリニアエンコーダ801からの出力信号(パルス)と、搬送ベルト731に移動速度及び移動量を検出ためのロータリエンコーダ802からの出力信号(パルス)とが入力され、主制御部910は、これらの各出力信号及び各出力信号の相関関係に基づいて主操作駆動部913、副走査駆動部914を介して主走査モータ727、副走査モータ731を駆動制御することでキャリッジ723を移動させ、搬送ベルト731を移動させて用紙705を搬送する。
【0133】
このように構成した画像形成装置における画像形成動作について簡単に説明する。ACバイアス供給部919から帯電ローラ734に交番電圧である正負極の矩形波の高電圧を印加することによって、帯電ローラ734は搬送ベルト731の絶縁層(表層)に当接しているので、搬送ベルト731の表層には、正と負の電荷が搬送ベルト731の搬送方向に対して交互に帯状に印加され、搬送ベルト731上に所定の帯電幅で帯電が行われて不平等電界が生成される。
そこで、給紙部704などから用紙705が給紙されて搬送ローラ732と押えコロ736との間の、正負極の電荷が形成されることによって不平等電界が発生している搬送ベルト731上へと送り込まれると、用紙705は電界の向きにならって瞬時に分極し、静電吸着力で搬送ベルト731上に吸着され、搬送ベルト731の移動に伴って搬送される。
【0134】
そして、この搬送ベルト731で用紙705を間歇的に搬送しながら、用紙705上に印刷データに応じて記録ヘッド724から記録液の液滴を吐出して画像を形成(印刷)し、画像形成が行なわれた用紙705の先端側を分離爪で搬送ベルト731から分離して排紙搬送部706によって、排紙トレイ707に排紙する。
【0135】
このような画像形成装置においてもスキャナ部711で読み取った原稿画像を入力画像として、前述したように双方向印刷の時には、墨入れ開始位置をシャドー側に遅らせたBG/UCR処理を行なうので、双方向色差の発生原因となる黒インクの使用タイミングを色差自体が目立ち難くなるシャドー側へ限定することとなり、黒インク用ノズルの非対称配置による双方向色差を低減することができる。この場合、特定用途向け集積回路を備えて画像処理を行なわせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】インクジェット記録装置の機構部の構成を示す図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の機構部を示す平面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置のヘッドユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図3のヘッドユニットによる画像形成動作を説明するための図である。
【図5】双方向色差の発生を説明するための図である。
【図6】染料系インクの用紙への浸透を説明するための図である。
【図7】顔料系インクの用紙への浸透を説明するための図である。
【図8】双方向色差が発生した記録画像の例を示す図である。
【図9】完全対称配置のヘッド構成の例を示す図である。
【図10】不完全対称配置のヘッド構成の例を示す図である。
【図11】図1のインクジェット記録装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明に係るプリンタドライバの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明に係るプリンタドライバの構成を示すブロック図である。
【図14】プリンタドライバ内での画像処理の手順を説明するためのブロック図である。
【図15】CMM処理によるRGB→CMYのテーブル変換を説明するための図である。
【図16】総量規制処理の例を説明するための図である。
【図17】ドットサイズ変調での多値表現における各サイズのドットによる階調再現範囲を説明するための図である。
【図18】ドットサイズのばらつきに対する階調区間の調整を説明するための図である。
【図19】100%BG/UCR処理を説明するための図である。
【図20】実際のBG/UCR処理の例を説明するための図である。
【図21】Kインクとカラーインクのドットサイズの組合せを示す図である。
【図22】各ドットサイズの組合せによる色差の比較例を説明するための図である。
【図23】墨入れ階調を遅らせたときの明度特性を説明するための図である。
【図24】本発明の一実施形態に係る画像処理方法を説明するためのフロー図である。
【図25】本発明の一実施形態の係る画像処理方法を説明するためのフロー図である。
【図26】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図27】図26の画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0137】
2 画像形成部
3 用紙
5 搬送機構部
14 記録ヘッド
33 搬送ベルト
90 ホスト(画像処理装置)
91 プリンタドライバ(プログラム)
131 CMM処理(色空間変換処理)
132 BG/UCR処理
133 総量規制処理
207、208、233a、223 カラーマッチング処理
209、210、224 BG/UCR処理
211、212、225 総量規制処理
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成処理する画像処理方法において、
前記入力データに対して墨入れ処理を行うとき、双方向印刷を行なうときには片方向印刷を行なうときよりもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理方法において、前記双方向印刷の墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーの記録液を用いた場合の多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理方法において、表現可能な多値レベルがn値(n>3)のとき、墨入れ開始位置は(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理方法において、片方向印刷のときにも前記シャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた前記墨入れ処理を選択可能であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理方法において、前記用紙の種類に応じて双方向印刷を行なうときに墨入れ開始位置を遅らせた墨入れ処理を行なうか否かを切り替えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理方法において、前記墨入れ処理が前記入力データに対して色変換処理を行なう色変換処理に含まれていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理をコンピュータに行なわせるプログラムにおいて、コンピュータに前記請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理を行う画像処理装置において、前記請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理方法を実行させる手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置において、前記請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理方法を実行させる手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置において、前記手段が特定用途向け集積回路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8に記載の画像処理装置と、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置とで構成されることを特徴とする画像形成システム。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の画像形成装置とこの画像形成装置に画像データを送出する画像処理装置とで構成されることを特徴とする画像形成システム。
【請求項1】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成処理する画像処理方法において、
前記入力データに対して墨入れ処理を行うとき、双方向印刷を行なうときには片方向印刷を行なうときよりもシャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理方法において、前記双方向印刷の墨入れ開始位置は、双方向色差発生対象となるカラーの記録液を用いた場合の多値切り替えレベルに対して1段階以上シャドー側に遅らせることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理方法において、表現可能な多値レベルがn値(n>3)のとき、墨入れ開始位置は(n−1)値目の切り替えレベルよりもハイライト側であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理方法において、片方向印刷のときにも前記シャドー部側の階調方向に墨入れ開始位置を遅らせた前記墨入れ処理を選択可能であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理方法において、前記用紙の種類に応じて双方向印刷を行なうときに墨入れ開始位置を遅らせた墨入れ処理を行なうか否かを切り替えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理方法において、前記墨入れ処理が前記入力データに対して色変換処理を行なう色変換処理に含まれていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理をコンピュータに行なわせるプログラムにおいて、コンピュータに前記請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置に対して送出する画像データを生成する処理を行う画像処理装置において、前記請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理方法を実行させる手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
入力データに基づいて、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置において、前記請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理方法を実行させる手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置において、前記手段が特定用途向け集積回路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8に記載の画像処理装置と、カラーの記録液滴を吐出するノズルを往復走査方向に対して対称配置とし、黒又はグレーの記録液滴を吐出するノズルを前記カラーの記録液滴を吐出するノズルに対して非対称配置とした記録ヘッドを搭載して、双方向印刷が可能で、かつ、滴サイズを切り替え又は濃度の異なる同色相の記録液を使用することで多値表現が可能な画像形成装置とで構成されることを特徴とする画像形成システム。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の画像形成装置とこの画像形成装置に画像データを送出する画像処理装置とで構成されることを特徴とする画像形成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2007−137049(P2007−137049A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182201(P2006−182201)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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