説明

画像処理装置、画像表示装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記憶媒体

【課題】ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理が可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】ノイズ処理部12は、第1ノイズ低減処理部16と、ノイズ推定処理部18と、ディテイル強調処理部19とを備える。第1ノイズ低減処理部16は、ノイズ低減の対象フレーム画像と比較フレーム画像との間で相関が小さい画素を、対象フレーム画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制する第1ノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成する。ノイズ推定処理部18は、対象フレーム画像とノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果から、対象フレーム画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき対象フレーム画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行する。ディテイル強調処理部19は、ノイズ低減画像の画素毎に、ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施し、出力画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像の精細感を向上させる画像処理装置、画像表示装置、画像処理方法、コンピュータプログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を拡大表示する際、高解像度化処理を施して表示を行うと圧縮処理に伴うノイズ(ブロックノイズ、モスキートノイズ等)が目立つことがある。
【0003】
そこで、ノイズを含む画像に対して、ガウシアンフィルタなどのローパスフィルタを適用することにより、周辺画素との平滑化によりノイズの低減が可能である。しかしながら、低減しようとする高周波成分よりなる領域が、ノイズであるかディテイル(画像の詳細部分)であるか区別されていないため、ディテイルをもぼかしてしまい、画像の解像度の低下を招ねく。他方、バイラテラルフィルタを画像に適用することにより、周辺画素との輝度値の差の大小も考慮して、山の輪郭のように周辺画素との輝度値の差が大きい部分に対しては平滑化の効果を小さくすることで、エッジの保存を期待できる。しかし、草むらや波などのように輝度値の差は小さいもののエッジを多く含む領域は、ノイズとともにぼかされがちである。
【0004】
上記のような理由でぼかされたディテイルの復元のため、アンシャープマスクなどの単純な強調処理を適用すると、低減したノイズも同時に強調されて、ノイズの復元の原因となってしまう。
【0005】
ここで、特許文献1には、注目画素と他の各画素との輝度値の差より標準偏差を求め、文字や線のように標準偏差が大きい領域にはハイパスフィルタによる強調処理を行い、写真や絵のように標準偏差が小さい領域にはローパスフィルタによる平滑処理を行うことで、画像のエッジを保ったままノイズを除去できることが記載されている。特許文献1の手法では、3つのフィルタが提案されており、いずれの場合も、標準偏差の大きい場合にハイパスフィルタとしての効果が強くなり、小さい場合にローパスフィルタとしての効果が強くなるように設計されているため、上記の効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−266233号公報(2009年11月12日公開)
【特許文献2】国際公開番号WO2009/069292(2009年6月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の手法の場合、注目画素と他の各画素との輝度値の差を利用しており、エッジ部分の強度に基づいた処理であるため、ノイズとディテイルとを分類することができない。従って、ノイズがディテイルとして残り、ディテイルがノイズとして平滑化されるとういう問題を有する。また、特許文献1の手法では、エッジ周辺にモスキートノイズが発生している場合に、エッジの強調処理にモスキートノイズを巻き込んでしまい、モスキートノイズをも強調してしまうおそれもある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理が可能な画像処理装置、画像表示装置、画像処理方法、コンピュータプログラム、並びに記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
フレーム画像のある画素がディテイルであるかノイズであるかの判断は、そのフレーム画像単独の情報だけでは困難であり、フレーム間での比較を行うことが有効な手段の一つである。
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、複数のフレーム画像からなる映像のノイズを低減する画像処理装置において、ノイズ低減の対象のフレーム画像である対象画像と、当該対象画像に対して表示順序が前または後の少なくとも一方の少なくとも1以上のフレーム画像である参照用画像との間で、相関が小さい画素を、上記対象画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制するノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成するノイズ低減画像生成部と、上記対象画像と上記ノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果として、上記対象画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき上記対象画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行するノイズ推定処理部と、上記ノイズ低減画像の画素毎に、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施して、出力画像を生成する強調処理部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成では、ノイズ低減画像生成部にて、対象画像と参照用画像との間で相関が小さい画素を対象画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制するノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成する。このノイズ低減処理により、フレーム画像の間で相関が小さいノイズ(例えば、ランダムノイズやブロックノイズ)を低減することができる。ここで、ノイズ低減画像は、フレーム画像の間で相関が小さいノイズが低減された画像ということになる。
【0012】
そして、ノイズ推定処理部にて、対象画像とノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果として、対象画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき対象画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行する。さらに、強調処理部にて、ノイズ低減画像の画素毎に、ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施して、出力画像を生成する。つまり、対象画像の各画素のノイズ強度を算出して、このノイズ強度から判定された各画素のノイズである可能性を反映させて、ノイズ低減画像の画素毎に、強調処理を施す。よって、ノイズでない画素を含むノイズである可能性の低い画素に対しては、その画素を強調する処理を施すことができる。反対にノイズである画素を含むノイズである可能性の高い画素に対しては、その画素を強調する処理を行わない、あるいはその画素を弱める処理を施す、ということができる。
【0013】
以上からわかるように、本発明に係る画像処理装置の上記構成によると、映像を構成するフレーム画像に対して、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理を行うことができる。そのため、ノイズを抑制し、ディテイルを強調することができ、画質を向上させた画像を出力することができる。
【0014】
本発明に係る画像処理装置では、上記構成に加え、上記ノイズ推定処理部は、上記ノイズ推定処理として、上記対象画像の注目画素の上記ノイズ強度と、当該注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素が有する信号強度、または当該注目画素のエッジである可能性の程度を示すエッジ強度と、を比較し、当該注目画素がノイズであるか否かを判定する処理を実行し、上記強調処理部は、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理として、上記ノイズでないと判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素を強調する処理、かつ、上記ノイズであると判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素を強調しない処理、を実行してもよい。
【0015】
具体的には、上記強調処理部は、上記強調する処理として、上記ノイズ低減画像に対してアンシャープマスクを適用して輪郭強調画像を生成し、上記ノイズでないと判定された上記注目画素に対応する当該輪郭強調画像の画素を出力し、かつ、上記強調しない処理として、上記ノイズであると判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素をそのまま出力して、上記出力画像を生成してもよい。
【0016】
上記構成によると、上記ノイズ推定処理部は、注目画素がノイズであるか否かを判定する。そして、強調処理部は、ノイズでないと判定された注目画素に対応する輪郭強調画像の画素を出力し、かつ、ノイズであると判定された注目画素に対応するノイズ低減画像の画素をそのまま出力して、出力画像を生成する。よって、効果的に、ノイズが低減され、かつ、輪郭が強調された出力画像を出力することができる。
【0017】
あるいは、上記強調処理部は、上記強調する処理として、上記ノイズ低減画像に対して高周波成分のノイズを付加した輪郭強調画像を生成し、上記ノイズでないと判定された上記注目画素に対応する上記輪郭強調画像の画素を出力し、かつ、上記強調しない処理として、上記ノイズであると判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素をそのまま出力して、上記出力画像を生成してもよい。
【0018】
上記構成によると、人の視感度の低い高周波成分を持つブルーノイズを添加しているので、ノイズ添加によるノイジーさを増すことなく、精細感が向上した画像を得ることができる。
【0019】
本発明に係る画像処理装置では、上記構成に加え、上記ノイズ推定処理部は、上記ノイズ推定処理として、上記対象フレーム画像の注目画素の上記ノイズ強度と当該注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素が有する信号強度との比率から、当該注目画素のノイズである可能性の程度を算出する処理を実行し、上記強調処理部は、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理として、上記ノイズ低減画像に対して、上記算出されたノイズである可能性の程度に応じた強調処理を実行してもよい。
【0020】
具体的には、上記強調処理部は、上記強調処理として、上記ノイズ低減画像に対してアンシャープマスクを適用した輪郭強調画像を生成し、上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素と、上記注目画素に対応する上記輪郭強調画像の画素との、上記算出されたノイズである可能性の程度に応じた線形和を求めて、上記出力画像を生成してもよい。
【0021】
上記構成によると、上記ノイズ推定処理部は、注目画素のノイズである可能性の程度を算出する。そして、強調処理部は、注目画素に対応するノイズ低減画像の画素と、注目画素に対応する輪郭強調画像の画素とを用いて、これらのノイズである可能性の程度に応じた線形和として、出力画像を生成する。そのため、効果的に、ノイズが低減され、かつ、輪郭が強調された出力画像を出力することができる。
【0022】
本発明に係る画像処理装置では、上記構成に加え、上記ノイズ推定処理部は、上記ノイズ推定処理として、上記対象画像の注目画素の上記ノイズ強度と当該注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素が有する信号強度との比率から、当該注目画素のノイズである可能性の程度を算出する処理を実行し、上記強調処理部は、上記ノイズ推定処理の結果を反映させたノイズ強調処理として、上記ノイズ低減画像に対して、上記算出されたノイズである可能性の程度に応じたノイズ重畳処理を実行してもよい。
【0023】
上記構成によると、ノイズ推定処理部が、対象画像の各画素のノイズ強度を算出して、このノイズ強度から判定された各画素のノイズである可能性を判定する。そして、強調処理部が、ノイズである可能性を反映させて、ノイズ低減画像の画素毎に対して、各画素のノイズである可能性の程度に応じたノイズ重畳処理を行うことができる。よって、ノイズ重畳により画像を余計にノイジーにすることなく、精細感が向上した画像を得ることができる。
【0024】
本発明に係る画像処理装置では、上記構成に加え、上記ノイズ低減画像生成部は、上記対象画像の各画素を基準とした上記参照用画像の各画素の移動量を算出する移動量決定部と、上記参照用画像の各画素を、上記対象画像の各画素の位置と合うように、上記算出された移動量を用いて移動させた補正画像を生成する補正画像生成部と、上記補正画像と上記対象画像との差を算出し、当該算出された差が大きい程小さくなる重みを決定する重み決定部と、上記ノイズ低減処理として、上記補正画像に対して、上記決定された重みを付けたフィルタ処理を施すノイズ低減フィルタリング処理部と、を備えていてもよい。
【0025】
上記構成では、移動量決定部にて、対象画像の各画素を基準とした参照用画像の各画素の移動量を算出し、補正画像生成部にて、参照用画像の各画素を、対象画像の各画素の位置と合うように、当該移動量を用いて移動させた補正画像を生成する。また、重み決定部により、補正画像と上記対象画像との差を算出し、当該算出された差が大きい程小さくなる重みを決定する。そして、ノイズ低減フィルタリング処理部にて、ノイズ低減処理として、重みを付けたフィルタ処理を施す。
【0026】
よって、フレーム画像間の位置合わせを行った補正画像を生成した上で、補正画像と対象画像との差が大きい程小さくなるよう決定された重みを付けたフィルタ処理を、補正画像に適用する。そのため、映像が動きのあるシーンであったとしても、フィルタ処理によるボケを発生させることなく、ランダムノイズやブロックノイズといったフレーム画像間で相関のないノイズを低減することができる。
【0027】
本発明に係る画像処理装置では、上記構成に加え、上記ノイズ低減画像生成部は、上記ノイズ低減処理を実行する第1ノイズ低減処理部と、上記ノイズ低減処理を施した対象画像に対して、さらに、モスキートノイズを抑制する抑制処理を施して、上記ノイズ低減画像を生成する第2ノイズ低減処理部とを備えていてもよい。
【0028】
上記構成によると、第1ノイズ低減処理部により上記ノイズ低減処理を実行することで、ランダムノイズ、ブロックノイズといったフレーム画像間に相関のないノイズを低減することができる。加えて、第2ノイズ低減処理部により、エッジ周辺に存在するモスキートノイズを低減することができる。よって、よりノイズが低減された画像を出力することができる。
【0029】
本発明に係る画像処理装置では、上記構成に加え、上記第2ノイズ低減処理部は、上記ノイズ低減処理を施した対象画像の各画素について、エッジである可能性の程度を示すエッジ強度を算出するエッジ強度算出部と、上記ノイズ低減処理を施した対象画像に対して、上記モスキートノイズを低減するモスキートノイズ低減処理を施すモスキートノイズ処理部と、上記算出されたエッジ強度が所定値より大きい画素の場合、上記モスキートノイズ低減処理の効果が大きくなり、上記エッジ強度が上記所定値以下の画素の場合、上記モスキートノイズ低減処理の効果が小さくなるように調整して、上記ノイズ低減画像を生成するノイズ低減効果調整部と、を備えていてもよい。
【0030】
上記構成では、エッジ強度算出部にて、第1ノイズ低減処理部でのノイズ低減処理を施した対象画像の各画素について、エッジ強度を算出する。そして、モスキートノイズ処理部にて、上記ノイズ低減処理を施した対象画像に対して、モスキートノイズを低減するモスキートノイズ低減処理を施す。さらに、ノイズ低減効果調整部では、エッジ強度が所定値より大きい画素には、モスキートノイズ低減処理の効果が大きくなり、エッジ強度が所定値以下の画素には、モスキートノイズ低減処理の効果が小さくなるように調整して、ノイズ低減画像を生成する。
【0031】
モスキートノイズはエッジ周辺に発生する。そこで、上記構成によると、エッジ強度が所定値よりも大きい画素、つまり、モスキートノイズが発生しやすい画素に対してモスキートノイズ低減処理の効果が大きくなるよう調整できる。エッジ強度が所定値以下の画素、つまり、モスキートノイズが発生しない画素に対してモスキートノイズ低減処理の効果が小さくなるよう調整できる。よって、モスキートノイズ低減処理によるディテイルの損失を抑制して、効率よくモスキートノイズを低減することできる。
【0032】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像表示装置は、上記いずれかの画像処理装置を備えることを特徴としている。本発明に係る画像表示装置は、本発明に係る画像処理装置を備えているため、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理が施された画像を表示することができる。つまり、ノイズを抑制し、ディテイルを強調することができるので、画質を向上させた画像を表示することができる。よって、ユーザに快適な視認環境を提供することができる。
【0033】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像処理方法は、複数のフレーム画像からなる映像のノイズを低減する画像処理方法において、ノイズ低減の対象のフレーム画像である対象画像と、当該対象画像に対して表示順序が前または後の少なくとも一方の少なくとも1以上のフレーム画像である参照用画像との間で、相関が小さい画素を、上記対象画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制する第1ノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成するノイズ低減画像生成ステップと、上記対象画像と上記ノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果から、上記対象画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき上記対象画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行するノイズ推定処理ステップと、上記ノイズ低減画像の画素毎に、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施して、出力画像を生成する強調処理ステップと、を含むことを特徴としている。
【0034】
上記方法によれば、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理が可能な画像処理方法を提供することができる。
【0035】
なお、本発明に係る画像処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各部として動作させることにより上記画像処理装置をコンピュータにて実現させるプログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0036】
本発明の画像処理装置は、以上のように、ノイズ低減の対象のフレーム画像である対象画像と、当該対象画像に対して表示順序が前または後の少なくとも一方の少なくとも1以上のフレーム画像である参照用画像との間で、相関が小さい画素を、上記対象画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制するノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成するノイズ低減画像生成部と、上記対象画像と上記ノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果として、上記対象画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき上記対象画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行するノイズ推定処理部と、上記ノイズ低減画像の画素毎に、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施して、出力画像を生成する強調処理部と、を備えている。
【0037】
上記構成によると、ノイズ低減画像生成部にて、ノイズ低減処理により、フレーム画像の間で相関が小さいノイズを低減することができる。また、ノイズ推定処理部及び強調処理部にて、各画素のノイズ強度を算出して、このノイズ強度から判定された各画素のノイズである可能性を反映させて、ノイズ低減画像の画素毎に、強調処理を施すことができる。よって、ノイズである画素を含むノイズである可能性の高い画素に対しては、強調処理を施し、ノイズでない画素を含むノイズである可能性の低い画素に対しては、強調処理を行わない、あるいは弱める、といった処理を行うことができる。
【0038】
以上からわかるように、本発明に係る画像処理装置の上記構成によると、映像を構成するフレーム画像に対して、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理を行うことができる。そのため、ノイズを抑制し、ディテイルを強調することができ、画質を向上させた画像を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る一実施形態のテレビ放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記テレビ放送受信装置が有する映像信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】上記映像信号処理部が有するノイズ低減処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】上記ノイズ低減処理部が有する第1ノイズ低減処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】上記第1ノイズ低減処理部が有する第1ノイズ低減フィルタ構築部50の構成を示すブロック図である。
【図6】(a)〜(c)は、画像fkと画像fINとの間のモーションがdk = (xk, yk)である場合の画像の例を示した図である。
【図7】(a)は、WB×HB画素を含むブロックに分割したフレーム画像を示す図であり、(b)は、(a)に示すフレーム画像の各ブロックを1画素に置き換えた図である。
【図8】モーション推定処理の流れを示す図である。
【図9】上記ノイズ低減処理部が有する第2ノイズ低減処理部の構成を示すブロック図である。
【図10】ガウシアンフィルタの例を示す図である。
【図11】上記ノイズ低減処理部が有するノイズ推定処理部で実行される第1の処理形態の流れを示す図である。
【図12】上記ノイズ推定処理部が上記第1の処理形態を実行した場合の、上記ノイズ低減処理部が有するディテイル強調処理部で実行される処理の流れを示す図である。
【図13】上記ノイズ低減処理部が有するノイズ推定処理部で実行される第2の処理形態の流れを示す図である。
【図14】ノイズらしさの程度γ (i, j)のグラフを表す図である。
【図15】上記ノイズ推定処理部が上記第2の処理形態を実行した場合の、上記ノイズ低減処理部が有するディテイル強調処理部で実行される処理を示す図である。
【図16】上記ノイズ低減処理部が有するノイズ推定処理部で実行される第3の処理形態の流れを示す図である。
【図17】マルチディスプレイを示す図である。
【図18】本発明に係る別の実施形態のノイズ低減処理部の構成を示すブロック図である。
【図19】上記別の実施形態のノイズ低減処理部が有するノイズ推定処理部で実行される第1の処理形態の流れを示す図である。
【図20】上記別の実施形態のノイズ低減処理部が有するノイズ推定処理部で実行される第2の処理形態の流れを示す図である。
【図21】上記別の実施形態のノイズ低減処理部が有するノイズ推定処理部で実行される第3の処理形態の流れを示す図である。
【図22】上記別の実施形態のノイズ推定処理部が第1または第3の処理形態を実行した場合の、上記別の実施形態のノイズ低減処理部が有するディテイル強調処理部で実行される処理の流れを示す図である。
【図23】上記別の実施形態のノイズ推定処理部が第2の処理形態を実行した場合の、上記別の実施形態のノイズ低減処理部が有するディテイル強調処理部で実行される処理を示す図である。
【図24】本発明に係るさらに別の実施形態の映像信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図25】上記さらに別の実施形態の映像信号処理部が有するノイズ処理部の構成を示すブロック図である。
【図26】上記さらに別の実施形態のノイズ処理部が有する付加ノイズ生成部が生成する付加用ノイズデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。以下に記す実施の形態では、本発明に係る画像表示装置として、テレビ放送受信装置を例に用いて説明を行う。また、本発明に係る画像処理装置として、テレビ放送受信装置が有する映像信号処理部を例に用いて説明する。なお、以下の実施の形態では、映像とは動画像を示すものとする。
【0041】
〔実施の形態1〕
(テレビ放送受信装置)
図1は、本実施形態のテレビ放送受信装置(画像表示装置)1の構成を示すブロック図である。テレビ放送受信装置1は、図1に示すように、インタフェース2、チューナー3、制御部4、電源ユニット5、表示部6、音声出力部7、及び、操作部8とを備える。
【0042】
インタフェース2は、TVアンテナ21と、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)方式でシリアル通信するためのDVI(Digital Visual Interface)端子22およびHDMI(High - Definition multimedia Interface)端子23と、TCP(Transmission Control Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルで通信するためのLAN端子24とを含む。インタフェース2は、統括制御部41からの指示に従って、DVI端子22、HDMI端子23またはLAN端子24に接続された外部の機器との間でデータを送受信する。
【0043】
チューナー3は、TVアンテナ21と接続されており、TVアンテナ21が受信する放送信号がチューナー3に入力される。放送信号には、映像データ、音声データ等が含まれる。本実施形態では、チューナー3は、地上波デジタルチューナー31及びBS/CSデジタルチューナー32を備えているが、これらに限定されない。
【0044】
制御部4は、テレビ放送受信装置1が有する各ブロックを統括的に制御する統括制御部41、映像信号処理部42、音声信号処理部43およびパネルコントローラ44を備える。
【0045】
映像信号処理部42は、インタフェース9を介して入力される映像データに所定の処理を施し、表示部6にて表示するための映像データ(映像信号)を生成する。
【0046】
音声信号処理部43は、インタフェース9を介して入力される音声データに所定の処理を施し音声信号を生成する。
【0047】
パネルコントローラ44は、表示部6を制御して、映像信号処理部42が出力する映像データの映像を表示部6に表示する。
【0048】
電源ユニット5は、外部から供給される電力を制御する。統括制御部41は、操作部8が有する電源スイッチから入力される操作指示に応じて、電源ユニット5に電力を供給させる、または、電力の供給を遮断させる。電源スイッチから入力される操作指示が電源オンに切り替える操作指示である場合、テレビ放送受信装置1の全体に電力が供給され、電源スイッチから入力される操作指示が電源オフに切り替える操作指示である場合、テレビ放送受信装置1に供給される電力が遮断される。
【0049】
表示部6は、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル等であり、映像信号処理部42が出力する映像データの映像を表示する。
【0050】
音声出力部7は、音声信号処理部43で生成された音声信号を統括制御部41の指示の下で出力する。
【0051】
操作部8は、電源スイッチと、切替スイッチとを少なくとも含む。電源スイッチは、テレビ放送受信装置1の電源のオンとオフの切り替えを指示する操作指示を入力するためスイッチである。切替スイッチは、テレビ放送受信装置1で受像する放送チャンネルを指定する操作指示を入力するためのスイッチである。操作部8は、電源スイッチおよび切替スイッチが押下されることに応じて、各スイッチに対応する操作指示を統括制御部41に出力する。
【0052】
なお、ここでは、テレビ放送受信装置1が備える操作部8が操作される場合を例に説明したが、テレビ放送受信装置1と無線で通信することが可能なリモートコントローラに操作部8を備えるようにして、各スイッチに対応する操作指示をテレビ放送受信装置1に送信するようにしてもよい。この場合、リモートコントローラがテレビ放送受信装置1と通信する通信媒体は、赤外光であってもよいし、電磁波であってもよい。
【0053】
(映像信号処理部)
図2は、映像信号処理部42の構成を示すブロック図である。図2に示すように、映像信号処理部42は、デコーダ10と、IP変換処理部11と、ノイズ処理部(画像処理装置)12と、シャープネス処理部13と、カラー調整処理部14と、スケーラー処理部15とを含む。
【0054】
デコーダ10は、圧縮された映像ストリームを復号して映像データを生成し、IP変換処理部11に出力する。IP変換処理部11は、必要に応じて、デコーダ10から入力される映像データをインタレース方式からプログレッシブ方式に変換する。ノイズ処理部12は、IP変換処理部11が出力する映像データに含まれるノイズを低減(抑制)するためのノイズ低減処理を実行する。ノイズ低減処理の詳細については、後段で詳細に説明する。
【0055】
シャープネス処理部13は、ノイズ処理部12が出力する映像データの映像を鮮鋭化するシャープネス処理を実行する。カラー調整処理部14は、シャープネス処理部13出力する映像データに対して、コントラストや彩度等を調整するカラー処理を実行する。スケーラー処理部15は、カラー調整処理部14が出力する映像データに対して、表示部6の画素数に応じたスケーリング処理を実行する。なお、統括制御部41、図示しない記憶部に、映像信号処理部42により各種の処理が実行される際の映像データを適宣記憶させる。
【0056】
本実施形態では、映像信号処理部42に入力される映像データを構成する画像データとしてRGBデータを扱うものとする。但し、RGB全てのチャネルに対して同じ処理を適用する代わりに、入力されるRGBデータを、3×3マトリックスを用いてYCbCrデータに変換し、そのうちのY信号に対する処理結果を用いてRGBデータにノイズ低減処理を施してもよい。例えば、後述するモーション推定処理(動き予測処理)のみY信号に対してのみ行ってもよい。
【0057】
各処理の前に画像データを、例えば、以下の式(1)に示すマトリックス演算を用いてYCbCrデータに変換することができる。
【0058】
【数1】

【0059】
(ノイズ処理部)
図3は、ノイズ処理部12の構成を示すブロック図である。ノイズ処理部12は、映像を構成する画像に付加されているランダムノイズやブロックノイズを低減する第1ノイズ低減処理部16と、モスキートノイズを低減する第2ノイズ低減処理部17と、画像に含まれる各画素がノイズであるか否かを判断するノイズ推定処理部18と、ノイズ推定処理部18の推定結果に従い、第1および第2ノイズ低減処理部16,17において失われたディテイル(ディテイル成分)を選択的に強調するディテイル強調処理部19とを含む。
【0060】
映像データを構成する画像データはフレーム単位で構成されており、フレーム単位の画像をフレーム画像と称する。よって、映像は複数のフレーム画像から構成されている。ノイズ処理部12では、映像を構成する各フレーム画像f0, f1, …, fN-1について、1枚(1フレーム)ずつノイズ低減処理を実行する。フレーム画像f0, f1, …, fN-1の添え字の数字は、フレーム画像の番号を示しており、表示される順番を示すものである。本実施の形態では第0番から始まるものとする。つまり、フレーム画像f0, f1, …, fN-1は、現在入力された映像データにおける第0番目、第1番目、…第N-1番目のフレーム画像である。本実施の形態では、映像データはシーン毎に入力される、つまり、映像を構成する各フレーム画像f0, f1, …, fN-1は同じシーンに含まれていることが望ましい。また、以下では、フレーム画像fは単に画像fと称する。なお、各フレーム画像f0, f1, …, fN-1が、同じシーンに含まれていない場合であっても、同じシーンに含まれていると仮定して処理を継続することができる。
【0061】
ノイズ処理部12でのノイズ低減処理の対象となるフレーム画像の番号をINとするとき、IN = 0のフレーム画像から順に、第1ノイズ低減処理部16からディテイル強調処理部19までの処理を行う。そして、ディテイル強調処理部19での処理が終了すると、次のフレーム画像に進む。すなわち、IN = IN + 1として、第1ノイズ低減処理部16から処理を実行する。以下では、第1ノイズ低減処理部16での現在(今回)のノイズ低減処理対象のフレーム画像(対象画像)を画像fINとして説明する。
【0062】
(第1ノイズ低減処理部)
第1ノイズ低減処理部16は、ランダムノイズやブロックノイズのような規則性のないノイズを低減する処理を行う。そこで、第1ノイズ低減処理部16では、ランダムノイズが近接するフレーム画像間において相関がないことを利用し、複数のフレーム画像の画素を用いて、相関が小さい画素をノイズと見做して、時間軸方向にフィルタ処理を適用してこのノイズを低減する。但し、フレーム画像間にはモーション(動き)が存在するため、フレーム画像間におけるモーションを推定(移動量を算出)し、ノイズ低減処理対象のフレーム画像の画素位置に合わせてから、所定の重み係数で時間軸方向にフィルタ処理を適用する。
【0063】
図4は、第1ノイズ低減処理部16の構成を示すブロック図である。第1ノイズ低減処理部16は、第1ノイズ低減フィルタ構築部50と第1ノイズ低減フィルタリング部51とを備えている。第1ノイズ低減フィルタ構築部50は、ノイズ低減の対象画像である画像fINに対して、時間軸方向に展開する重み付きフィルタを構築する。第1ノイズ低減フィルタリング部51は、第1ノイズ低減フィルタ構築部50にて構築されたフィルタを用いて、画像fINと、画像fINに対して時間軸方向で順序が前後のフレーム画像(参照用画像)である画像fIN-1, fIN+1, fIN+2に対して適用することで、画像fINのランダムノイズやブロックノイズの低減を行う。なお、画像fIN-1は、時間軸方向で画像fINの1枚前のフレーム画像であり、画像fIN+1は、時間軸方向で画像fINの1枚後のフレーム画像であり、画像fIN+2は、時間軸方向で画像fINの2枚後のフレーム画像である。
【0064】
本実施の形態では、画像fIN+2まで適用するが、画像fIN、画像fIN-1及び画像fIN+1の3枚のみを用いてもよい。ただし、画像fIN-1は画像fINより前のフレーム画像であり、ノイズ低減処理後のフレーム画像であるため、これを用いることで、それ以前のフレーム情報も加味してノイズを低減することができる。それに対し、画像fIN+1及び画像fIN+2はノイズ低減処理前のフレーム画像であり、そのまま使用するしかないため、画像fINより後のフレーム画像は、より多くの枚数を用いた方がよい。なお、画像fINの前後で用いるフレーム画像の枚数に制限はない。
【0065】
図5は、第1ノイズ低減フィルタ構築部50の構成を示すブロック図である。第1ノイズ低減フィルタ構築部50は、モーション推定部52、モーション算出部53、モーション補正部54、及び重み決定部55を有している。
【0066】
フィルタを適用するフレーム画像の集合(画像群)をFT = {fIN-1, fIN, fIN+1, fIN+2}とする。第1ノイズ低減フィルタ構築部50では、FTに含まれるフレーム画像の数NT(本実施形態では、NT = 4)と同数の成分を持つ重み付きフィルタを構築する。フィルタの各成分は重みを意味し、画像fINに対してFTに含まれる画像fk(kはフレーム番号であり、IN-1, IN, IN+1, IN+2のいずれか)が類似している程、大きな重みを与える。なお、画像fkのkがINの場合、画像fINそのものであるので、成分の大きさは4つのうち最大となる。
【0067】
画像fkの画像fINに対する類似度を正確に評価するため、予めモーション推定部52で、画像fINを基準とした画像fkのモーション(移動量)を推定し、モーション補正部54で画像群FTの各画像fkのモーション補正処理を行う。モーション補正処理についての詳細は後述する。
【0068】
図6(a)〜(c)は、画像fkと画像fINとの間の移動量がdk = (xk, yk)である場合の画像の例を示した図である。図6(a)の黒丸で表される位置でサンプリングした画像が、図6(b)に示す画像fkであり、図6(a)の黒三角で表される位置でサンプリングした画像が、図6(c)に示す画像fINである。画像fkと画像fINとの差異が最小となる画像fkの移動量dk = (xk, yk)を求めて、これを画像fkのモーションとする。詳細には、フレーム画像間の差異を表すために、統計量m(x, y)を移動量(x, y)ごとに計測し、m (x, y)を最小にする移動量dk = (xk, yk)を画像fkのモーションとする。
【0069】
実際には、図6に示すようにフレーム画像の全ての画素(領域)で同じモーションをとるとは限らず、領域毎に異なると考えられる。そこで、本実施の形態では、図7(a)に示すように1枚のフレーム画像を、WB×HB画素を含むブロックに分割し、ブロック単位でモーションの推定を行う。簡単のため、図7(a)のフレーム画像の各ブロックを1画素に置き換えた図7(b)に示すような画像を、画像fINと画像fkとに対して夫々得る。そして、得られた2つの画像間からモーションの推定を行う。
【0070】
1つのフレーム画像に含まれる各ブロックを1画素に置き換えた画像は、任意の補間手法を用いて、このフレーム画像を水平方向に1/WB倍、垂直方向に1/HB倍に縮小して得られる。なお、任意の補間手法として、例えば、近傍の4画素のうち最も近い画素の値を参照する最近傍補間法が挙げられる。このような方法により得られた、画像fINと画像fkとに対応する画像(縮小画像)を、夫々、画像fB0、画像fB1とする。縮小後の画像fB0、画像fB1における画素(I, J)は、縮小前の画像fIN、画像fkの水平方向I番目, 垂直方向J番目のブロックに該当する。ブロックのサイズは通常WB = HB = 2とするが、画素単位での推定を行いたい場合は、WB = HB = 1(つまりfB0 = fIN、fB1=fk)としてもよい。また、処理時間を短縮したい場合はWB 、HBともに2より大きな値としてもよい。
【0071】
モーション推定部52では、ブロック単位でモーションの推定を行う。1つのブロック内の画素は全て同じモーションを持つとして、予め、画像fIN及び画像fkの各ブロックを1画素に置き換えた画像fB0及び画像fB1間のモーションを画素単位で求める。そして、画像fIN及び画像fkの対応するブロックに含まれる画素に、このモーションを割り当てる。このとき、画像fB0及び画像fB1の1画素は、画像fIN及び画像fkの1ブロック、すなわちWB×HB画素に対応する。そのため、画像fB0及び画像fB1間のモーションも画像fIN及び画像fk間では水平方向にWB倍、垂直方向にHB倍とする。
【0072】
モーション推定部52での画像fINに対する画像fkのモーションを推定するモーション推定処理の流れを、図8のフローチャートを用いて説明する。初めに、統計量の最小値mMINを+∞、整数精度の移動量(XB, YB)を(0, 0)に初期化する(S1)。ここで、XB、YBは画像fIN、画像fk間の移動量である。続いて、画像fB0を(x, y)だけ平行移動した画像と、画像fB1との間の統計量m (I, J, x, y)を算出し(S2)、S2で算出した統計量m (I, J, x, y)と統計量の最小値mMINとの大小を比較する(S3)。この比較でS2で算出した統計量m (I, J, x, y)が統計量の最小値mMINより小さい場合(S3でYES)、統計量の最小値mMINをS2で算出した統計量m (I, J, x, y)に置き換え、整数精度の移動量(XB, YB)を(x, y)に置き換える(S4)。
【0073】
S2からS4を、モーション推定許容範囲M内の全ての整数の組(x, y)で行い、m (I, J, x, y)を最小にする移動量を画像fB1のモーションを求める。そして、モーション推定許容範囲M内の全ての整数の組で、統計量m (I, J, x, y)を最小にする整数の移動量(XB, YB)を求める。ここで、モーション推定許容範囲Mは、入力データの解像度、及び、フレームレートに応じて定める。基本的には処理量対精度のトレードオフ関係にあり、一般的に1フレーム画像間に動く画素数を許容範囲とする。例えば、30fps(frame per second)FHD(Full High Definition)画像であれば−15〜15等である。
【0074】
最後に、画像fIN及び画像fkのブロックに合わせるため、dk = (WB×XB, HB×YB)を求める(S5)。この移動量dkを、画像fB1の画素(I, J)に該当する画像fk上のブロックに含まれる各画素のモーションとする。モーション推定部52では、上記のブロック単位のモーション推定をフレーム画像の全てのブロックに対して実行する。
【0075】
本実施の形態では、2つの画像の差異を評価する統計量として、特に簡単な例として、画像fB0を(x, y)平行移動した画像と、画像fB1との差分絶対値和(以下、SAD(Sum of Absolute Difference)と称する)を使用している。SADは、2つの画像のうち、画素(I, J)を中心とする近傍画素集合BIJに含まれる全ての画素における差分絶対値の総和を求めるものである。画素(I, J)における、SADは下記の式(2)から求めることができる。
【0076】
【数2】

【0077】
ここで、BIJの形状は固定(例えば、15×15の正方形)でもよいし、ブロックサイズが固定でない場合、画像fINおよび画像fk上で固定サイズとなるように所定係数をWBおよびHBで除算したときの商を一辺の画素数とする矩形としても良い。
【0078】
統計量m (x, y)は、他に差分2乗和のような、差異が小さいほど小さな値をとる統計量を利用してもよい。あるいは、相互相関係数のような、差異が小さいほど大きな値をとる評価値を用いて評価する場合は、m (x, y)がその評価値と負の相関を持つように設定した値を利用してもよい。
【0079】
モーション算出部53では、上記のようにモーション推定部52で推定されたあるフレーム画像間のモーションを利用して、他のフレーム間のモーションを算出する。本実施の形態では、簡単のために、画像群FTに含まれる画像はフレーム毎に同じモーションで変化していると仮定する。また、モーション推定部52では、fk = fIN-1とし、画像fINに対する画像fIN-1のモーション(移動量)dIN-1を求めたものとする。モーション推定部52で推定された画像fINに対する画像fIN-1のモーションdIN-1を1フレーム間のモーションとすると、画像fIN+1に対する画像fINのモーション、画像fIN+2に対する画像fIN+1のモーションはdIN-1と等しくなる。よって、画像fINに対する画像fINのモーションdIN、画像fINに対する画像fIN+1のモーションdIN+1、画像fIN+2のモーションdIN+2は夫々次式(3)〜(5)となる。本実施の形態では、画像fINを基準とした移動量を算出するため、dINは画像fIN自身を基準としているので、算出する必要は無く、(0, 0)である。
【0080】
dIN = (0, 0)・・・・・(3)
dIN+1 = -dIN-1・・・・・(4)
dIN+2 = -2dIN-1・・・・・(5)
なお、上述のように画像fINに対する画像fIN-1のモーションを推定した結果を用いて、画像fINに対する画像fIN+1、及び、画像fINに対する画像fIN+2のモーションを算出する代わり、フレーム画像それぞれについてモーション推定処理を行ってもよい。この場合、全てのフレーム画像のモーション推定処理をモーション推定部52にて行うことになるため、モーション算出部53は不要となる。
【0081】
また、画像群FTに含まれるフレーム画像はフレーム毎に同じモーションで変化していると仮定する場合には、画像群FTに含まれるフレーム画像のどの2枚を用いてモーション推定処理してもよい。例えば、画像fIN-1と画像fIN+2とを用いて、画像fIN-1に対する画像fIN+2のモーションを推定すると、この推定値の-1/3倍、1/3倍、2/3倍が、それぞれ、画像fINに対する画像fIN-1のモーション、画像fINに対する画像fIN-1のモーション、画像fINに対する画像fIN+2のモーションとなる。
【0082】
いずれにせよ、モーション推定部52及びモーション算出部53での処理にて、画像群FTに含まれるフレーム画像の、対象画像である画像fINを基準とした移動量を、決定できればよい。
【0083】
モーション補正部54では、モーション推定部52及びモーション算出部53で得られた画像fkのモーションdk = (xk, yk)に従って、画像fINを基準として、画像fkのモーション補正を行う。画像fkのモーション補正とは、画像fINの各画素の位置と合うように、画像fkの各画素を推定あるいは算出されたモーション分移動する処理のことである。よって、画像fkをモーション補正した画像は、画像fkのモーションの逆ベクトル-dkだけ画像fkを平行移動することによって得られる。この補正した画像、つまり画像fINを基準として画像fkをモーション補正した画像を、画像(補正画像)gkとする。
【0084】
本実施の形態では、移動量を整数精度としているが、図6(a)で示すように、モーションdkの成分(xk, yk)が整数値でない場合には、画像fkからそのまま参照することはできない。そのため、近傍画素からの補間値を求める。簡単な例では、近傍の4画素のうち最も近い画素の値を参照する最近傍補間法や、近傍の4画素から下記の式(6)によって求められる線形補間法が挙げられる。
【0085】
【数3】

【0086】
上記方法によりモーション補正された画像群をGT = {gIN-1, gIN, gIN+1, gIN+2}とする。なお、画像fINのモーションに変化はない(dIN = (0, 0))ため、画像gINは画像fINと同じものである。
【0087】
重み決定部55では、第1ノイズ低減フィルタ構築部50で構築する重み付きフィルタの各成分を決定する。重み付きフィルタωTのk番目の成分は、画像gkと画像gINとの差異の大きさに対して、負の相関を持つように設定する。これにより、画像gINとの差異が小さい画像ほど画像gINに対する重みが最も大きくなり、画像gINとの差異が大きい画像ほど画像gINに対する重みが小さくなる。差異の大きさを表す評価値としては、例えば、画素(i, j)及びその周辺領域における画像gkと画像gINとの誤差の標準偏差が挙げられる。
【0088】
例えば、画素(i, j)の近傍3×3画素における誤差を用いて誤差の分散Vを、以下の式(7)から算出する。
【0089】
【数4】

【0090】
ここで、例えば、全てのフレーム画像において分散Vが十分小さければ、ωT (i,j,IN-1) = ωT (i, j, IN) = ωT (i, j, IN+1) =ωT (i, j, IN+2) = 0.25になり、全てのフレーム画像において分散Vが十分大きければ、ωT (i, j, IN) = 1.0、ωT (i, j, IN-1) = ωT (i, j, IN+1) = ωT (i, j, IN+2) = 0.0となる。
【0091】
図4に戻り、第1ノイズ低減フィルタリング部51では、第1ノイズ低減フィルタ構築部50で構築された重み付きフィルタωTを、モーション補正された画像群GTに対して適用しフィルタ処理を行うことで、ノイズ低減処理されたフレーム画像である画像(ノイズ低減画像)Tを得る。画像Tは以下の式(8)から求められる。
【0092】
【数5】

【0093】
以上の処理により、ランダムノイズやブロックノイズがフレーム間で相関のない特徴を利用して、時間軸方向に適応的にフィルタ処理を施すことにより、ノイズを低減することができる。画像Tはランダムノイズやブロックノイズを低減した画像である。
【0094】
なお、ランダムノイズやブロックノイズは規則性がなく、隣り合うフレーム画像間においても相関がなく、重みが小さくなるのでフィルタ処理後の画素値は小さくなり、複数のフレーム画像を足し合わせることにより低減することができる。但し、その際、フレーム画像間で動きがあるためモーション補正部54でフレーム画像の画素位置を合わせてから足し合わせる。
【0095】
(第2ノイズ低減処理部)
次に、図3に示す第2ノイズ低減処理部17について説明する。図9は、第2ノイズ低減処理部17の構成を示すブロック図である。第2ノイズ低減処理部17は、エッジ強度算出部60と、第2ノイズ低減フィルタ構築部61と、第2ノイズ低減フィルタリング部62と、ノイズ低減効果調整部63とを備える。第2ノイズ低減処理部17では、第1ノイズ低減処理部16によりランダムノイズやブロックノイズが低減された画像Tが入力されると、モスキートノイズの低減を行う。
【0096】
エッジ強度算出部60は、入力された画像Tにおいて、エッジである可能性(エッジらしさ)の程度であるエッジ強度の大きい画素ほどモスキートノイズの低減効果が得られるよう、エッジ強度を算出する。ここではエッジ強度は、輝度値のばらつき(変動量)として算出するが、明度や濃度値(画素値)を用いてエッジ強度を算出してもよい。
【0097】
エッジ強度算出部60では、画像における各画素の輝度値のばらつきを求める。画素(i, j)における輝度値のばらつきを示す統計量として、画素(i, j)を中心とした近傍画素集合Wの輝度値の分散σ2(i, j)を求める。
【0098】
第2ノイズ低減フィルタ構築部61では、モスキートノイズを低減するフィルタを構築する。例えば、次の式(9)に示すバイラテラルフィルタを構築する。
【0099】
【数6】

【0100】
なお、上式(9)ではバイラテラルフィルタの一般形として入力画像をfとしているが、第2ノイズ低減フィルタ構築部61での構築時には、fには、第1ノイズ低減処理部16で処理された後の画像Tが入力される。
【0101】
バイラテラルフィルタは、2つのガウシアンフィルタの積からなり、第1番目のガウシアンフィルタは画素間距離、第2番目のガウシアンフィルタは画素間の輝度値の差に依存する。標準偏差σrおよびσsは夫々第1番目、第2番目のガウシアンフィルタの規模を示す係数であり、固定値(例えば、σr = 2.0, σs =2.0)としてもよい。あるいは、画像f(ここでは、第1ノイズ低減処理部16で処理された後の画像T)の特徴に応じて設定してもよい。後者の場合、例えば、画素間距離が所定値RのときにK倍になるように設定したい場合、exp {-R2/(2σr2)} = Kを満たすσrを求め、画素間の輝度値の差が所定値DfのときにK倍になるように設定したい場合、exp {-Df2/(2σs2)} = Kを満たすσsを求める。
【0102】
第2ノイズ低減フィルタリング部62では、上式で構築されたバイラテラルフィルタωBLFを画像Tに対して適用して、画像TBLFを得る。フィルタリングは画像TとバイラテラルフィルタωBLFとのコンボリューションとする。コンボリューションの適用範囲は、注目画素(i, j)を中心とする近傍画素集合Wijに含まれる画素とする。画像TBLFは以下の式(10)から得られる。
【0103】
【数7】

【0104】
Wijの形状は固定(例えば、9×9の正方形フィルタ)としてもよい。あるいは、全空間(−∞〜∞とするが、結果的には有効画素に絞られるため画像全体となる)を範囲としたガウシアンフィルタに対して所定の割合c(例えば、1.0以下の正定数とする)以上を占めるように決定してもよい。なお、許容誤差は5%以下、すなわちc≧0.95であることが望ましい。上記の条件は次式(11)のように表される。なお、本来ガウシアンフィルタは−∞〜∞に分布しており、設計したガウシアンフィルタと同等の周波数特性を得るためには、ある程度のウインドウサイズが必要である。すなわち、フィルタ係数の総和が2πσrに近いほど所望の周波数特性に近づく。
【0105】
【数8】

【0106】
例えば、図10に示すような、標準偏差σr = 2.0のガウシアンフィルタについて、7×7(図10の最も内側の濃いグレーの部分)、9×9(図10の7×7の部分及びその外側の薄いグレー部分)、11×11(図10に示す範囲全て)の部分を使用する場合、上式(11)の左辺、すなわちフィルタ係数の和は夫々およそ0.852×2πσr、0.955×2πσr、0.989×2πσrとなり、c≧0.95を満たすには9×9の正方形フィルタを用いればよいことが判る。
【0107】
第2ノイズ低減フィルタリング部62は、第2ノイズ低減フィルタ構築部61で構築されるフィルタを用いたフィルタリング処理(第2ノイズ低減フィルタリング処理)を行う。フィルタは、現在ノイズ低減処理の対象となっている画像T1つ(1枚)に対して適用する。
【0108】
ノイズ低減効果調整部63では、エッジ強度算出部60にて求めた分散σ2(i, j)に基づき、第2ノイズ低減フィルタリング部62でのフィルタリング処理の効果の調整を行う。分散σ2(i, j)が大きいほど、画素(i, j)における輝度値の変動量が大きいため、エッジである可能性が高い。従って、エッジに対しては第2ノイズ低減フィルタリング処理の効果が大きく、そうでない部分に対しては第2ノイズ低減フィルタリング処理の効果が小さくなるよう調整を行う。画像Tの座標のうち分散σ2が取り得る最大値をσ2maxとするとき、第2ノイズ低減フィルタリング処理前の画像Tと、第2ノイズ低減フィルタリング後の画像TBLFとを、σ2max−σ2:σ2の比で線形和をとり、σ2が大きいとき画像TBLF、小さいとき画像Tの割合を大きくする。すなわち、分散が大きいエッジ周辺ほど第2ノイズ低減フィルタリングの効果が高くなるように制御し、エッジ周辺にだけバイラテラルフィルタ処理効果を適用する。よって、モスキートノイズを低減することができる。
【0109】
こうして得られた画像を、第2ノイズ低減処理の結果画像S (i, j)とする。画像S (i, j)は以下の式(12)にて求められる。
【0110】
【数9】

【0111】
第2ノイズ低減処理部17では、以上のように、モスキートノイズがエッジ周辺に発生する特徴を利用して、エッジ周辺ではエッジ保存の効果を持つバイラテラルフィルタ処理を施す。よって、エッジを保存しながらノイズを低減して、エッジが周辺にない領域では、バイラテラルフィルタの効果を小さくすることで、ディテイルをぼかさずに残すことができる。
【0112】
(ノイズ推定処理部及びディテイル強調処理部)
次に、図3に示すノイズ推定処理部18、ディテイル強調処理部19について説明する。ノイズ推定処理部18で実行される処理には、以下で説明する第1〜第3の処理形態がある。それぞれの処理形態毎に、後段のディテイル強調処理部19での処理も異なる。
【0113】
いずれの処理形態においても、ノイズ推定処理部18には、現在のノイズ低減処理の対象の画像(対象画像)fINと、画像fINを第1ノイズ低減処理部16にて処理して得られた画像(ノイズ低減画像)Tと、画像Tを第2ノイズ低減処理部17にて処理して得られた画像(ノイズ低減画像)Sとが入力される。そして、画素単位でノイズの強度を算出する。ここで、画像Tは画像fINからランダムノイズやブロックノイズを低減した画像(第1ノイズ低減処理結果)であり、画像Sは画像Tからモスキートノイズを低減した画像(第2ノイズ低減処理結果)である。従って、画像fINと画像Tとの差分、画像fINと画像Sとの差分が、各種ノイズのノイズ強度を表す。
【0114】
ノイズ推定処理部18で実行される処理について、第1の処理形態から順に説明する。第1の処理形態では、ノイズ推定処理部18は、画素毎にノイズ強度を算出し、かつ、画素毎に画像自体が持つ信号強度を求め、これらを基に、各画素がディテイル(ノイズではない)かノイズかを判定する。これは、ノイズ推定処理部18の後段のディテイル強調処理部19にてディテイル(ノイズではない)と判定された画素に対してのみ強調処理を行うためである。
【0115】
図11は、ノイズ推定処理部18で実行される第1の処理形態を示すフローチャートである。まず、画像fINと画像Tとの差分絶対値をノイズ強度N1、画像fINと画像Sとの差分絶対値をノイズ強度N2として算出する(S11、S12)。そして、注目画素(i, j)を中心とした近傍画素の集合ηijの範囲におけるノイズ強度N1, N2の最大値Dmax N1, Dmax N2を、夫々以下の式(13)、(14)から求める(S13,S14)。
【0116】
【数10】

【0117】
集合ηijの形状は固定(例えば、7×7の正方形)でもよいし、上記のバイラテラルフィルタと同じサイズとしてもよい。これら最大値のうち、より大きな値を画像fINの最大ノイズ強度Dmaxとする(S15)。Dmaxは以下の式(15)から求められる。
【0118】
【数11】

【0119】
ここで、S13及び14での処理を行わず、S15ではN1, N2のうち大きい方をDmaxとすることも可能である。しかし、この場合、後述のディテイルと判定された場合のアンシャープマスクによる輪郭強調処理(S22)において、周囲にノイズの強い画素が含まれていると、その画素も利用して強調処理を行う可能性があり、ノイズが復活してしまうことがある。そこで、ある注目画素の近傍画素の集合ηijの範囲で強いノイズが出ている場合、強いノイズに合わせることで、アンシャープマスクによるノイズの復活を抑えることができる。これが、S13〜S15の処理において、近傍画素集合を使うことの狙いである。なお、集合のサイズを小さく(最小1×1、すなわち注目画素のみ)することで、影響を受ける範囲を小さくし、強調を優先することもできる。
【0120】
他方で、画像自体が持つ信号強度を画素毎に算出する(S16)。例えば、画像自体が持つ信号強度を、画像SのダイナミックレンジRANGEとして求める。なお、画像SのRANGE(i, j)は、画素集合ηijの範囲における輝度値の最大値と最小値の差から、つまり、以下の式(16)から、求めることができる。
【0121】
【数12】

【0122】
なお、本実施の形態では、画像自体が持つ信号強度をダイナミックレンジとして求めているが、例えば、画像自体が元来持つ画素値の範囲(例えば255)を用いてもよい。ただし、ノイズの強さが同程度であっても、平坦な画像で発生している場合と、テキスチャのある画像で発生している場合とで、人が感じるノイズの強さは大きく異なる。そのため、ダイナミックレンジが狭いほど、ノイズが目立ちやすい特性を考慮して、ダイナミックレンジを使うのが好ましい。
【0123】
そして、画像自体が持つ信号強度と最大ノイズ強度Dmaxとの比率がαDより大きいか否かを判定する(S17)。判定には以下の式(17)が用いられる。ここで、αDは比率の閾値を示す定数(規定値)であり、本実施の形態ではαD = 2とする。なお、例えば、画像全体において、画像自体が持つ信号強度と最大ノイズ強度との比率を表すヒストグラムを生成し、ヒストグラム分布の谷における比率をαDの値として設定してもよい。
【0124】
【数13】

【0125】
上記比率がαD以上である場合(S17でYES)、つまり、上記式(17)を満たす場合には、注目画素(i, j)はディテイルと判定する(S18)。上記比率がαDよりも小さい場合(S17でNO)、つまり、上記式(17)を満たさない場合、注目画素(i, j)はノイズであると判定する(S19)。
【0126】
図12は、図3に示すノイズ推定処理部18が、図11に示す第1の処理形態を実行した場合の、図3に示すディテイル強調処理部19で実行される処理のフローチャートである。ディテイル強調処理部19では、前段のノイズ推定処理部18における判定結果から、画素毎に異なる処理を行う。まず、注目画素(i, j)がディテイルであるか否か(言い換えれば、ノイズでないか否か)を判定する(S21)。ディテイルである場合(S21でYES)、ノイズ低減処理されたノイズ低減画像S(i, j)に更に輪郭強調処理を施した輪郭強調画像U(i, j)を算出し(S22)、この輪郭強調画像U(i, j)を出力する(S23)。他方、注目画素(i, j)がディテイルでない場合(S21でNO)、言い換えれば、注目画素(i, j)がノイズである場合、ノイズ低減画像S(i, j)をそのまま出力する(S24)。上記の選択処理を全ての画素に対して実行して得られた画像(出力画像)が、ノイズ処理部12でのノイズ低減処理結果である。よって、対象画像fINをこの出力画像に置き換え、ノイズ処理部12から出力する。
【0127】
ディテイル強調処理部19では、ノイズ低減画像Sから輪郭強調画像Uを算出するために、例えば、ノイズ低減画像Sに対してアンシャープマスクを適用する。アンシャープマスクは、一旦画像をガウシアンフィルタなどにより平滑化し、原画像とその平滑化画像との差分に所定倍率(例えば、0.3倍)をかけて原画像に加算することにより、エッジ強度(例えば、輝度値の変動量)の大きな画素(領域)を更に強調するためのマスクである。
【0128】
ディテイル強調処理部19では、輪郭強調処理をディテイルと判定された画素にのみ適用することで、一度低減したノイズを再度強調することなくディテイルのみを強調することができる。
【0129】
次に、ノイズ推定処理部18で実行される第2の処理形態について説明する。図13は、ノイズ推定処理部18で実行される第2の処理形態を示すフローチャートである。第2の処理形態では、ノイズ推定処理部18は、画素毎にノイズの強度を算出して、これを基に各画素のノイズである可能性(ノイズらしさ)の程度を数値として算出する。これは、ノイズ推定処理部18の後段のディテイル強調処理部19にて、ノイズらしさの程度に基づき、各画素の強調処理の程度を決定するからである。
【0130】
まず、上述のノイズ推定処理部18で実行される第1の処理形態の場合と同様に、画像fINと画像Tとの差分絶対値、画像fINと画像Sとの差分絶対値を、それぞれ、ノイズ強度N1、ノイズ強度N2として算出する。そして、ノイズ強度N1, N2の最大値Dmax N1, Dmax N2から画像fINの最大ノイズ強度Dmaxを求める(S11〜S15)。
【0131】
他方で、ノイズ推定処理部18で実行される第1の処理形態の場合と同様に、画像自体が持つ信号強度を画素毎に算出する(S16)。第2の処理形態でも、画像自体が持つ信号強度を、画像SのダイナミックレンジRANGEとして求める。
【0132】
そして、最大ノイズ強度Dmaxと画像(画素)自体が持つ信号の強度(ここでは、画像SのダイナミックレンジRANGE)との比率LIN (i, j)を算出する(S31)。比率LIN (i, j)は、以下の式(18)から求めることができる。
【0133】
【数14】

【0134】
さらに、第IN番目のフレーム画像である画像fINと、これより前のn-1枚のフレーム画像との計n枚のフレーム画像の、比率の重みつき平均Lμ (i, j)を算出する(S35)。Lμ (i, j)は、以下の式(19)から求めることができる。
【0135】
【数15】

【0136】
ただし、画像fINとn-1枚の他のフレーム画像との間には、モーションが存在するため、比率の重みつき平均Lμ (i, j)を算出する前に、画像fINより前のn-1枚のフレーム画像の比率を、画像fINを基準にモーション補正した値に更新しておく。この更新は、次のように行う。
【0137】
まず、第IN番目より前のn-1枚のフレーム画像の比率をバッファ(図示せず)から参照し(S32)、画像fINを基準に各フレーム画像の比率をモーション補正する(S33)。そしてS31で求めた比率と、S33でモーション補正した比率をバッファに書き込む(S34)。S34では、第(IN - (n-1))番目から第IN番目までの比率、つまりn個の比率が、バッファに書き込まれる。
【0138】
S33のモーション補正は、第1ノイズ低減処理部16のモーション補正部54で実行した処理と同様に、画像fINを基準としたときの画像fkのモーションの逆ベクトル-dkだけ比率Lkをシフトすることで得られる。モーションは、第1ノイズ低減フィルタ構築部50で推定された値を使用してもよい。また、比率のモーション補正の結果をバッファに保存して、次のフレーム画像の処理時に参照することで、参照する過去の比率が予め1枚前のフレーム画像を基準にモーション補正されたものとなる。そのため、過去の比率のいずれについても、1枚前のフレーム画像との間のモーション補正を行うのみでよい。
【0139】
S35の比率の重みつき平均Lμ (i, j)の算出で用いる重み係数ωL (k)は、第(IN-1)番目のフレーム画像に与える重みとし、第IN番目のフレーム画像である画像fINを基準として、画像fINに類似している程大きな重みを与えるよう(例えば、ωL (k) = 2-k)設定する。もしくは、ωL (k) = 1として、単純な平均を求めてもよい。
【0140】
そして、得られた比率の重みつき平均Lμからノイズらしさの程度を求める(S36)。Lμ (i, j)が大きいほど画素(i, j)がノイズである可能性が高いとして、Lμ (i, j)と正の相関を持ち、最大値1、最小値0となる関数を設定し、得られる数値をノイズらしさの程度とする。関数の例として、次式(20)で表される関数が挙げられる。
【0141】
【数16】

【0142】
式(20)において、αLおよびβLは正の固定値(例えば、αL = 8, βL = 0.5)をとる所定係数である。これらの係数は、画像fINの画質に合わせて最適化した値を設定しておく。上式(20)をグラフで表した図14に示す通り、ノイズらしさの程度γ (i, j)は、Lμ (i, j) = βLのとき0.5、すなわち、ノイズらしさの程度とディテイルらしさの程度が同等となる。また、αLが大きいほど、収束は高速となり、少しのノイズ強度でもノイズらしさの程度は大きい(高い)値をとるようになる。ノイズらしさの程度γ(i, j)は、Lμ (i, j)と正の相関を持ち、0から1の範囲をとり得る別の関数を利用してもよい。簡単な例では、Lμ (i, j) が閾値LTH未満のとき0, Lμ (i, j) が閾値LTH以上のとき1をとるステップ関数を利用することができる。
【0143】
以上の処理により、画像自体が持つ信号の強度に比べて、最大ノイズ強度が第IN番目のフレーム画像及びその前の数枚のフレーム画像との間で平均的に大きい場合、ノイズらしさの程度を表す数値は大きくなり、注目画素の近傍領域において継続的にノイズが発生している可能性が高いと判断できる。よって、ノイズらしさを表す数値が大きい領域では、後段のディテイル強調処理の効果を抑制することができる。
【0144】
図15は、図3に示したノイズ推定処理部18にて第2の処理形態が実行される場合のディテイル強調処理部19での処理を示す図である。ディテイル強調処理部19では、前段のノイズ推定処理部18にて求めたノイズらしさの程度γ(i, j)から、画素毎に異なる処理を行う。ディテイル強調処理部19では、ノイズ低減画像S(i, j)と、それに輪郭強調処理を施した輪郭強調画像U(i, j)を用意して、ノイズらしさの程度γ(i, j)の値に応じた線形和を求める。線形和は、以下の式(21)から求められる。
【0145】
【数17】

【0146】
上記の線形和を全ての画素に対して求めて得られた画像(出力画像)が、ノイズ処理部12でのノイズ低減処理結果である。よって、画像fINをこの出力画像に置き換え、ノイズ処理部12から出力する。
【0147】
なお、第2の処理形態における輪郭強調画像Uは、上記した第1の処理形態の場合と同様の手段を用いることで得ることができる。
【0148】
ディテイル強調処理部19では、ノイズらしさの程度γ(i, j)の値に応じた線形和を求めることで、一度低減したノイズを再度強調することなくディテイル成分のみを強調することができる。
【0149】
次に、ノイズ推定処理部18で実行される第3の処理形態について説明する。図16は、ノイズ推定処理部18で実行される第3の処理形態を示すフローチャートである。第3の処理形態では、画素毎にノイズ強度を算出し、かつ、画素毎に第2ノイズ低減処理された画像Sのエッジ強度DE(i, j)を求めて、これらを基に、各画素がディテイル(ノイズではない)かノイズかを判定する。これは、ノイズ推定処理部18の後段のディテイル強調処理部19にてディテイル(ノイズではない)と判定された画素に対してのみ強調処理を行うためである。
【0150】
まず、上述のノイズ推定処理部18で実行される第1の処理形態の場合と同様に、画像fINと画像Tとの差分絶対値、画像fINと画像Sとの差分絶対値を、それぞれ、ノイズ強度N1、ノイズ強度N2として算出する。そして、ノイズ強度N1, N2の最大値Dmax N1, Dmax N2から画像fINの最大ノイズ強度Dmaxを求める(S11〜S15)。
【0151】
他方で、画素毎に画像Sのエッジ強度DE(i, j)を求める(S41)。本実施の形態では、エッジ強度DE(i, j)は、画像Sと画像Sにローパスフィルタを適用した画像SLPFとの差分の絶対値として求める。エッジ強度DE(i, j)は、これ以外の方法で求めてもよい。
【0152】
そして、エッジ強度DE(i, j)と最大ノイズ強度Dmaxとの比率がαEより大きいか否かを判定する(S42)。判定には以下の式(22)が用いられる。ここで、αEは比率の閾値を示す定数(例えば、20)である。
【0153】
【数18】

【0154】
上記比率がαE以上である場合(S42でYES)、つまり、上記式(22)を満たす場合には、注目画素(i, j)はディテイルと判定する(S43)。上記比率がαEよりも小さい場合(S42でNO)、つまり、上記式(22)を満たさない場合、注目画素(i, j)はノイズであると判定する(S44)。
【0155】
ノイズ推定処理部18が第3の処理形態を実施する場合、ディテイル強調処理部19は、ノイズ推定処理部18が第1の処理形態を実施された場合に行う、図12を用いて説明した上記処理と同様の処理を行う。
【0156】
以上の処理により、ノイズであるかどうか判定しながらノイズを低減して、ディテイル成分のみに対して選択的に強調処理を実行する。よって、ノイズを低減しつつ、ディテイル成分のぼけを抑制することができる。
【0157】
ノイズ推定処理部18で実行される処理は、以上の第1〜第3の処理形態の何れであっても構わない。
【0158】
ノイズ処理部12では、第IN番目の画像fINに対して、第1ノイズ低減処理部16からディテイル強調処理部19までの一連のノイズ低減処理を終えると、IN = IN + 1として次のフレームに進む。全てのフレーム画像、つまり全ての映像データ、に対してノイズ処理部12での処理が完了すると、図2に示すように、次のシャープネス処理部13に進む。
【0159】
以上からわかるように、ノイズ処理部12では、上記構成により、映像を構成するフレーム画像に対して、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理を行うことができる。そのため、ノイズを抑制し、ディテイルを強調することができ、画質を向上させた画像(出力画像)を出力することができる。また、テレビ放送受信装置1は、ノイズ処理部12を有しているため、ノイズを抑制し、ディテイルを強調させて、画質を向上させた画像を表示することができる。よって、ユーザに快適な視認環境を提供することができる。
【0160】
(変形例)
本実施形態では、本発明に係る画像処理装置を、チューナー3を有するテレビ放送受信装置1の映像信号処理部42に適用した場合を例に説明した。しかし、本発明に係る画像処理装置を、例えば、チューナー3を有していないモニタ(インフォメーションディスプレイ)の映像信号処理を実行する処理部に適用してもよい。この場合は、モニタが、本発明に係る画像表示装置であり、モニタの概略構成は、例えば、図1に示す構成からチューナー3を除いたものとなる。本発明に係る画像処理装置がモニタの映像信号処理を実行する処理部に適用されているため、モニタにおいて、高品質に映像のノイズ低減処理を実行することができる。
【0161】
また、本実施形態では、本発明に係る画像処理装置を、表示部6を1つ有するテレビ放送受信装置1の映像信号処理部42に適用した場合を例に説明した。しかし、本発明に係る画像処理装置を、例えば図17に示すように表示部6が垂直方向および水平方向に複数台配置されたマルチディスプレイ100の映像信号処理を実行する処理部に適用してもよい。この場合は、マルチディスプレイ100が、本発明に係る画像表示装置である。本発明に係る画像処理装置がマルチディスプレイ100の映像信号処理を実行する処理部に適用されているため、例えば、マルチディスプレイ100にFHD映像を再生するような場合において、高品質に映像のノイズ低減処理を実行することができる。
【0162】
〔実施の形態2〕
本実施の形態の映像信号処理部は、図2に示す実施の形態1の映像信号処理部42のノイズ処理部12が、図18に示すノイズ処理部(画像処理装置)12’に置き換わったものである。ノイズ処理部12’以外の構成は実施の形態1の映像信号処理部42と同じである。よって、実施の形態1で説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、実施の形態1で説明した処理については説明を省略する。
【0163】
ノイズ処理部12’は、図18に示すように、第1ノイズ低減処理部16と、ノイズ推定処理部18’と、ディテイル強調処理部19’とを有する。
【0164】
ノイズ処理部12’は、ノイズ処理部12が有していた第2ノイズ低減処理部17を有していない。そこで、本実施の形態では、例えば、デコーダ10にて映像ストリームのデコードを行う際に、特許文献2に記載のような1枚のフレーム画像(シングルフレーム画像)を用いたノイズ低減処理を行い、できる限り圧縮ノイズを除去しておく。圧縮ノイズとは、シングルフレーム画像でも除去できるノイズ、特にモスキートノイズである。なお、圧縮ノイズの除去はデコーダ10で実施されてもよいが、例えば、圧縮ノイズ除去部がノイズ処理部12’より前段に設けられていてもよい。
【0165】
第1ノイズ低減処理部16は、実施の形態1で説明した構成と同じであり、同じ処理を行う。つまり、複数のフレーム画像を用いて、フレーム間で相関が小さい画素をノイズと見做して低減する。
【0166】
ノイズ推定処理部18’での処理には、実施の形態1と同様に、第1〜第3の処理形態がある。そして、それぞれの処理形態毎に、後段のディテイル強調処理部19’での処理も異なる。いずれの処理形態においても、ノイズ推定処理部18’には、現在のノイズ低減処理の対象の画像(対象画像)fINと、画像fINを第1ノイズ低減処理部16にて処理して得られた画像(ノイズ低減画像)Tが入力される。そして、画素単位でノイズの強度を算出する。
【0167】
図19は、ノイズ推定処理部18’での第1の処理形態を示すフローチャートである。この第1の処理形態では、まず、実施の形態1のノイズ推定処理部18で実行される第1の処理形態の場合と同様に、画像fINと画像Tとの差分絶対値をノイズ強度Nとして算出する(S11)。そして、ノイズ強度Nの最大値Dmax Nを求める(S13)。本実施の形態では、画像Sを用いない(算出しない)ので、最大値Dmax Nが画像fINの最大ノイズ強度Dmaxとなる。
【0168】
他方で、画像自体が持つ信号強度を画素毎に算出する(S16’)。本実施の形態では、画像自体が持つ信号強度を、画像TのダイナミックレンジRANGEとして求める。
【0169】
そして、画像自体が持つ信号強度(ここでは、画像TのダイナミックレンジRANGE)と最大ノイズ強度Dmaxとの比率がαDより大きいか否かを判定し(S17)、注目画素(i, j)がディテイルかノイズかを判定する(S18、19)。
【0170】
図20は、ノイズ推定処理部18’での第2の処理形態を示すフローチャートである。この第2の処理形態では、まず、実施の形態1のノイズ推定処理部18で実行される第2の処理形態の場合と同様に、画像fINと画像Tとの差分絶対値をノイズ強度Nとして算出し(S11)、ノイズ強度Nの最大値Dmax Nを求める(S13)。この最大値Dmax Nが画像fINの最大ノイズ強度Dmaxとなる。
【0171】
他方で、画像自体が持つ信号強度を画素毎に算出する(S16’)。ただし、本実施の形態では、画像自体が持つ信号の強度を、画像TのダイナミックレンジRANGEとして求める。
【0172】
そして、実施の形態1のノイズ推定処理部18で実行される第2の処理形態の場合と同様に、最大ノイズ強度Dmaxと画像(画素)自体が持つ信号の強度(ここでは、画像TのダイナミックレンジRANGE)との比率LIN (i, j)を算出する(S31)。
【0173】
さらに、実施の形態1のノイズ推定処理部18で実行される第2の処理形態の場合と同様に、第IN番目より前のn-1枚のフレーム画像の比率をバッファから参照し(S32)、画像fINを基準に各フレーム画像の比率をモーション補正する(S33)。そして、S31で求めた比率と、S33でモーション補正した比率をバッファに書き込む(S34)。そして、比率の重みつき平均Lμ (i, j)を算出して(S35)、得られた比率の重みつき平均Lμからノイズらしさの程度を求める(S36)。
【0174】
図21は、ノイズ推定処理部18’での第3の処理形態を示すフローチャートである。この第3の処理形態では、まず、実施の形態1のノイズ推定処理部18で実行される第3の処理形態の場合と同様に、画像fINと画像Tとの差分絶対値をノイズ強度Nとして算出し(S11)、ノイズ強度Nの最大値Dmax Nを求める(S13)。この最大値Dmax Nが画像fINの最大ノイズ強度Dmaxとなる。
【0175】
他方で、画素毎に画像Tのエッジ強度エッジ強度DE(i, j)を求める(S41’)。本実施の形態では、エッジ強度DE(i, j)は、画像Tと画像Tにローパスフィルタを適用した画像TLPFとの差分の絶対値として求める。エッジ強度DE(i, j)は、これ以外の方法で求めてもよい。
【0176】
そして、実施の形態1のノイズ推定処理部18で実行される第3の処理形態の場合と同様に、エッジ強度DE(i, j)と最大ノイズ強度Dmaxとの比率がαEより大きいか否かを判定し(S42)、注目画素(i, j)がディテイルかノイズかを判定する(S43、44)。
【0177】
ディテイル強調処理部19’は、ノイズ推定処理部18’が、第1もしくは第3の処理形態にてノイズ推定処理を行う場合、次の処理を行う。図22に示すように、まず、注目画素(i, j)がディテイルであるか否か(言い換えれば、ノイズでないか否か)を判定する(S51)。ディテイルである場合(S51でYES)、ノイズ低減処理されたノイズ低減画像T(i, j)に更に輪郭強調処理を施した輪郭強調画像U(i, j)を算出し(S52)、この輪郭強調画像U(i, j)を出力する(S53)。他方、注目画素(i, j)がディテイルでない場合(S51でNO)、言い換えれば、注目画素(i, j)がノイズである場合、ノイズ低減画像T(i, j)をそのまま出力する(S54)。上記の選択処理を全ての画素に対して実行して得られた画像(出力画像)が、ノイズ処理部12’でのノイズ低減処理結果である。よって、対象画像fINをこの出力画像に置き換え、ノイズ処理部12’から出力する。
【0178】
ディテイル強調処理部19’は、ノイズ推定処理部18’が、第2の処理形態にてノイズ推定処理を行う場合、次の処理を行う。図23に示すように、前段のノイズ推定処理部18’にて求めたノイズらしさの程度γ(i, j)から、画素毎に異なる処理を行う。ディテイル強調処理部19’では、ノイズ低減画像T(i, j)と、それに輪郭強調処理を施した輪郭強調画像U(i, j)を用意して、ノイズらしさの程度γ(i, j)の値に応じた線形和を求める。線形和は、線形和は、以下の式(23)から求められる。
【0179】
【数19】

【0180】
上記の線形和を全ての画素に対して求めて得られた画像(出力画像)が、ノイズ処理部12’でのノイズ低減処理結果である。よって、画像fINをこの出力画像に置き換え、ノイズ処理部12’から出力する。
【0181】
〔実施の形態3〕
図24は、実施の形態3の映像信号処理部を示すブロック図である。本実施の形態では、実施の形態1で説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、実施の形態1で説明した処理については説明を省略し、異なる構成のみ説明する。
【0182】
本実施の形態の映像信号処理部420は、図2に示す実施の形態1の映像信号処理部42のシャープネス処理部13が無く、実施の形態1のノイズ処理部12がノイズ処理部(画像処理装置)120に置き換わったものである。これら以外の構成は実施の形態1の映像信号処理部42と同じである。
【0183】
ノイズ処理部120は、IP変換処理部11が出力する映像データに含まれるノイズを低減(抑制)するためのノイズ低減処理を実行する。さらに、IP変換処理部11が出力する映像データのディテイルを向上させる処理(ディテイル強調処理)を実行する。ノイズ低減処理、ディテイル強調処理については、後段で詳細に説明する。
【0184】
カラー調整処理部14は、ノイズ処理部120が出力する映像データに対して、コントラストや彩度等を調整するカラー処理を実行する。
【0185】
(ノイズ処理部)
図25は、ノイズ処理部120の構成を示すブロック図である。ノイズ処理部120は、第1ノイズ低減処理部16と、第2ノイズ低減処理部17と、ノイズ推定処理部18と、ノイズ推定処理部18の推定結果に従い、第1および第2ノイズ低減処理部16,17において失われたディテイル(ディテイル成分)に選択的にノイズを重畳するディテイル強調処理部190とを含む。つまり、ノイズ処理部120は、図3に示す実施の形態1のディテイル強調処理部19が、ディテイル強調処理部190に置き換わったものである。ディテイル強調処理部190以外の構成は実施の形態1のノイズ処理部12と同じである。
【0186】
ノイズ処理部120でのノイズ低減処理の対象となるフレーム画像の番号をINとするとき、IN = 0のフレーム画像から順に、第1ノイズ低減処理部16からディテイル強調処理部190までの処理を行う。そして、ディテイル強調処理部190での処理が終了すると、次のフレーム画像に進む。すなわち、IN = IN + 1として、第1ノイズ低減処理部16から処理を実行する。以下では、実施の形態1と同様に、第1ノイズ低減処理部16での現在(今回)のノイズ低減処理対象のフレーム画像(対象画像)を画像fINとして説明する。
【0187】
第1ノイズ低減処理部16、第2ノイズ低減処理部17、ノイズ推定処理部18での処理は実施の形態1と同様である。第2ノイズ低減処理部17のエッジ強度算出部60(図9参照)は、入力された画像Tにおいて、エッジである可能性(エッジらしさ)の程度であるエッジ強度の大きい画素ほどモスキートノイズの低減効果が得られるよう、エッジ強度を算出する。ここではエッジ強度は、輝度値のばらつき(変動量)として算出するが、明度や濃度値(画素値)を用いてエッジ強度を算出してもよい。輝度値は、式(1)のY成分を用いる。また、エッジ強度DE(i, j)は、画像Tと画像Tにローパスフィルタを適用した画像TLPFとの差分の絶対値として求める。一例として、エッジ強度は、以下の式(24)より算出する。
【0188】
【数20】

【0189】
(ノイズ推定処理部及びディテイル強調処理部)
次に、図25に示すノイズ推定処理部18、ディテイル強調処理部190について説明する。ノイズ推定処理部18で実行される処理には、以下で説明する第1及び第2の処理形態がある。それぞれの処理形態毎に、後段のディテイル強調処理部190での処理も異なる。
【0190】
いずれの処理形態においても、ノイズ推定処理部18には、現在のノイズ低減処理の対象の画像(対象画像)fINと、画像fINを第1ノイズ低減処理部16にて処理して得られた画像(ノイズ低減画像)Tと、画像Tを第2ノイズ低減処理部17にて処理して得られた画像(ノイズ低減画像)Sとが入力される。そして、画素単位でノイズの強度を算出する。ここで、画像Tは画像fINからランダムノイズやブロックノイズを低減した画像(第1ノイズ低減処理結果)であり、画像Sは画像Tからモスキートノイズを低減した画像(第2ノイズ低減処理結果)である。従って、画像fINと画像Tとの差分、画像fINと画像Sとの差分が、各種ノイズのノイズ強度を表す。
【0191】
ノイズ推定処理部18で実行される処理について、第1の処理形態から順に説明する。第1の処理形態では、ノイズ推定処理部18は、画素毎にノイズ強度を算出し、かつ、画素毎に画像自体が持つ信号強度を求め、これらを基に、各画素がディテイル(ノイズではない)かノイズかを判定する。これは、ノイズ推定処理部18の後段のディテイル強調処理部190にて(ノイズではない)と判定された画素に対してのみノイズを重畳する処理を行うためである。
【0192】
本実施の形態でのノイズ推定処理部18での第1の処理形態は、図11で示す実施の形態1のノイズ推定処理部18の第1の処理形態と同様である。
【0193】
図12は、図25に示すノイズ推定処理部18が、図11に示す第1の処理形態を実行した場合の、図25に示すディテイル強調処理部190で実行される処理のフローチャートである。ディテイル強調処理部190では、前段のノイズ推定処理部18における判定結果から、画素毎に異なる処理を行う。まず、注目画素(i, j)がディテイルであるか否か(言い換えれば、ノイズでないか否か)を判定する(S21)。ディテイルである場合(S21でYES)、ノイズ低減処理されたノイズ低減画像S(i, j)にノイズ重畳処理を施した輪郭強調画像U(i, j)を算出し(S22)、この輪郭強調画像U(i, j)を出力する(S23)。他方、注目画素(i, j)がディテイルでない場合(S21でNO)、言い換えれば、注目画素(i, j)がノイズである場合、ノイズ低減画像S(i, j)をそのまま出力する(S24)。なお、ノイズ重畳処理の詳細は後述する。
【0194】
上記の選択処理を全ての画素に対して実行して得られた画像(出力画像)が、ノイズ処理部120でのノイズ低減処理結果である。よって、対象画像fINをこの出力画像に置き換え、ノイズ処理部120から出力する。
【0195】
ディテイル強調処理部190では、ノイズ低減画像Sから輪郭強調画像Uを算出するために、例えば、ノイズ低減画像Sに対してノイズを重畳する。重畳するノイズは、高周波成分で構成されたノイズを原画像に加算することにより、ノイズ低減処理で失われた高周波成分を補うことが可能となり、精細感を向上させるものである。
【0196】
ディテイル強調処理部190では、ノイズ重畳処理をディテイルと判定された画素にのみ適用することで、一度低減したノイズを再度強調することなく精細感を向上させることができる。
【0197】
本実施の形態でのノイズ推定処理部18での第2の処理形態は、図13で示す実施の形態1のノイズ推定処理部18での第2の処理形態と同様である。本実施の形態でのノイズ推定処理部18での第2の処理形態では、ノイズ推定処理部18は、画素毎にノイズの強度を算出して、これを基に各画素のノイズである可能性(ノイズらしさ)の程度を数値として算出する。これは、ノイズ推定処理部18の後段のディテイル強調処理部190にて、ノイズらしさの程度に基づき、各画素に添加するノイズ重畳処理の程度を決定するからである。
【0198】
本実施の形態でのノイズ推定処理部18での処理により、画像自体が持つ信号の強度に比べて、最大ノイズ強度が第IN番目のフレーム画像及びその前の数枚のフレーム画像との間で平均的に大きい場合、ノイズらしさの程度を表す数値は大きくなり、注目画素の近傍領域において継続的にノイズが発生している可能性が高いと判断できる。よって、ノイズらしさを表す数値が大きい領域では、後段のノイズ重畳処理の効果を抑制することができる。
【0199】
図15は、図25に示したノイズ推定処理部18にて第2の処理形態が実行される場合のディテイル強調処理部190での処理を示す図である。ディテイル強調処理部190では、前段のノイズ推定処理部18にて求めたノイズらしさの程度γ(i, j)から、画素毎に異なる処理を行う。ディテイル強調処理部190では、ノイズ低減画像S(i, j)と、それにノイズ重畳処理を施した輪郭強調画像U(i, j)を用意して、ノイズらしさの程度γ(i, j)の値に応じた線形和を求める。線形和は、上記した式(21)から求められる。ノイズ重畳処理の詳細は後述する。
【0200】
上記の線形和を全ての画素に対して求めて得られた画像(出力画像)が、ノイズ処理部120でのノイズ低減処理結果である。よって、画像fINをこの出力画像に置き換え、ノイズ処理部120から出力する。
【0201】
なお、本実施の形態の第2の処理形態におけるノイズが重畳された輪郭強調画像Uは、上記した本実施の形態の第1の処理形態の場合と同様の手段を用いることで得ることができる。
【0202】
ディテイル強調処理部190では、ノイズらしさの程度γ(i, j)の値に応じた線形和を求めることで、精細感を向上させることができる。
【0203】
ノイズ推定処理部18で実行される処理は、以上の第1または第2の処理形態の何れであっても構わない。
【0204】
ノイズ処理部120では、第IN番目の画像fINに対して、第1ノイズ低減処理部16からディテイル強調処理部190までの一連のノイズ低減処理を終えると、IN = IN + 1として次のフレームに進む。全てのフレーム画像、つまり全ての映像データ、に対してノイズ処理部120での処理が完了すると、図24に示すように、次のカラー調整処理部14に進む。
【0205】
以上からわかるように、本実施の形態のノイズ処理部120では、上記構成により、映像を構成するフレーム画像に対して、ノイズの低減とディテイルの復元とを両立した画像処理を行うことができる。そのため、ノイズを抑制し、精細感を向上させることができ、画質を向上させた画像(出力画像)を出力することができる。また、テレビ放送受信装置1は、ノイズ処理部120を有しているため、ノイズを抑制し、精細感を向上させて、画質を向上させた画像を表示することができる。よって、ユーザに快適な視認環境を提供することができる。
(ディテイル強調処理部におけるノイズ重畳処理)
次に、ディテイル強調処理部190におけるノイズ重畳処理の詳細について説明する。
ディテイル強調処理部190は、付加ノイズ生成部191と付加ノイズ重畳部192とで構成されている。
【0206】
付加ノイズ生成部191は、画像の精細感を向上させるために、高周波成分で構成されるノイズ(一般的にブルーノイズという名称で呼ばれている)を発生させるためのものである。ここでは、処理の高速化のために、既に発生させたブルーノイズを図示しないメモリに保存しておき、そのデータを画素ごとに読み出し付加用ノイズデータとして用いる。付加用ノイズデータの一例を図26に示す。付加用ノイズの適用方法としては、図26のデータそれぞれを1画素の付加用ノイズデータとして用いる。すなわち、画素(i, j)の輝度値V(i,j)に対して、付加用ノイズデータBN(i,j)を加算する。このとき、付加用ノイズデータBN(i,j)に、第2ノイズ低減処理部17のエッジ強度算出部60で求めたエッジ強度DE(i, j)と調整用パラメータαを乗算し、画素(i, j)の輝度値V(i,j)に加算し、以下の式(25)で示す新たな輝度値Vnew(I,j) を得る。
【0207】
Vnew(i,j)=V(i,j)+ DE(i, j)×α×BN(i,j) (0≦α≦1)・・・(25)
ここでαは、画質により決定される値であり、実験により求めることができる。エッジ強度DE(i, j)を規格化して使用し、付加用ノイズデータBN(i,j)を±127までの値に設定した場合は、画像がノイジーになるのを避けるためにαの値は0≦α≦0.25程度に設定する。ここでは、付加用ノイズデータのサイズとして、256×256のサイズを使用している。これが、表示部に表示される画像データサイズ(例えば、920×1080画素)よりも小さいサイズである場合、256×256のサイズごとに水平方向、垂直方向に繰り返し適用する。
【0208】
この付加用ノイズは、256×256のサイズで例示しているが、表示部6に応じてより大きいサイズの付加用ノイズを使用することも可能である。
【0209】
付加ノイズ重畳部192は、第IN番目の画像fINに対して、付加用ノイズを画素ごとに重畳する。付加用ノイズを画素ごとに重畳する際、画素値が0以下、または、255以上になる場合には、それぞれ0および255に制限する処理を行う。
【0210】
付加用ノイズデータは、ここでは1プレーンのみ示しており、画像データが構成されているR、G、Bの各プレーンに同じ付加用ノイズデータを適用することができる。また、R、G、Bのプレーン毎に異なる付加用ノイズデータを適用することも可能である。プレーン毎に異なる付加用ノイズデータを適用する場合は、1プレーンのみ付加用ノイズデータを生成したときと同様に、3プレーン分のノイズデータを生成し、R、G、Bの各プレーンにそれぞれ異なるノイズデータを適用する。さらに、映像データは、1フレームごとに更新されていくが、上記と同様に、1フレームごとに付加用ノイズを変更してもよいし、変更せずに使用することも可能である。
【0211】
プレーン毎に付加用ノイズデータを、変更しない、あるいは、変更することによる効果を以下に説明する。R、G、Bの各プレーンに同じ付加用ノイズデータを付加する利点としては、同じ付加用ノイズデータが重畳されることにより、主にグレー成分の信号に対して、効果的に精細感を向上させる効果を有する。
【0212】
反対にR、G、Bの各プレーンに異なる付加用ノイズデータを付加する利点としては、各プレーンで異なるノイズ成分強度を有することにより、種々の色成分に対して精細感を持たせることが可能となる。従って、R、G、Bの各プレーンに異なる付加用ノイズデータを付加することで、グレー成分以外の種々の色成分に対して、効果的に精細感を向上させる効果を有する。
【0213】
次に、フレーム毎に付加用ノイズデータを変更することによる効果を以下に説明する。ノイズデータを付加する画素位置と付加するノイズの組み合わせによっては、付加用ノイズの振幅が十分ではない場合が存在する可能性がある。そのため、精細感を向上させたい画素位置において、精細感の向上度合いが少なくなる恐れがある。そこで、フレーム毎に付加用ノイズを変更することで、異なる振幅を持つノイズが付加されることになり、精細感を向上させることが可能となる。異なるノイズデータを付加することで、フレームによっては、上記精細感が逆に低下する可能性も存在する。しかし、人間の眼は、1フレームごとの変化を認識するほどの高速応答性はなく、数十フレーム程度を積分した画像を認識する特性を有している。このことから、これらの連続したフレームは常に更新されており、精細感の向上したフレームが存在することで、連続した動画として、あたかも精細感が向上しているかのような感覚を与えることができる。
【0214】
ブルーノイズの生成は、簡略的には以下の方法で行うことができる。まず、ランダムノイズ発生器でランダムノイズを生成する。生成したノイズデータをFFT(Fast Fourier Transform)を用いて、周波数空間に変更した後、ハイパスフィルタを通して、低周波成分をカットする。次に、逆FFT変換し、実空間のデータに戻す。以上の処理によりブルーノイズデータを得ることができる。これらの変換は、例えば、アメリカ合衆国のMathWorks社が開発している数値解析ソフトウェアMATLAB(登録商標)など既存のソフトウェアを用いることで実現可能である。
【0215】
(エッジ強度の算出の変形例)
上記において、エッジ強度に基づいてノイズを付加する方法について記載した。エッジ強度の算出には、Sobal法、Prewitt法、Robert法、Canny法など一般的なエッジ検出方法を用いて行うことも可能である。それぞれエッジ検出方法として特徴を有するが、Canny法はノイズを間違って採用する可能性が他の方法と比べて少なく、真の弱いエッジをより検出することで知られている。Canny法でエッジを求める方法は、インテルが開発・公開したオープンソースであるOpenCVのコンピュータビジョン向けライブラリを用いることが可能である。方法の詳細は、OpenCVを参照することで容易に理解することができる。
【0216】
Canny法を用いて画像データからエッジ情報を抽出すると、エッジ情報はエッジであるか否かの2値のデータで表される、例えば、エッジである場合Vcanny (i, j)=255、
エッジでない場合Vcanny (i, j)=0と表わすことができる。
【0217】
次に、エッジ強度を求めるために、Vcanny (i, j)をガウシアンフィルタを用いてぼかし処理を行う。例えば、ガウシアンフィルタのフィルタ係数LPFGaussianとして、以下の行列を用いることができる。
【0218】
【数21】

【0219】
エッジ強度DE(i, j)は、DE(i, j)=Vcanny (i, j)・LPFGaussianで表される。このエッジ強度DE(i, j)には、Canny法でのエッジ抽出結果にガウシアンフィルタが適用されているため、エッジから離れるに従って、エッジ強度が弱くなっていく特性を持たせることができる。
【0220】
上記処理により、最初にCannyの方法で求めたエッジ位置が最大のエッジ強度を持ち、画素位置が離れるに従って、エッジ強度は弱くなっていく特性を得ることができる。上記エッジ強度を用いて、上記新たな輝度値Vnew(i,j)を算出することができる。
【0221】
なお、本実施形態では、シャープネス処理を行っていない。しかし、上記ノイズ付加処理の後段にシャープネス処理を追加して、つまり、図24に示すノイズ処理部120と、カラー調整処理部14との間にシャープネス処理部を設けて、更に強調効果を持たせるようにしてもよい。
【0222】
本実施形態の映像信号処理部420は、例えば、チューナーを有するテレビ放送受信装置、あるいは、チューナーを有していないモニタ(インフォメーションディスプレイ)、あるいは、マルチディスプレイ、の映像信号処理を実行する処理部に適用可能である。
【0223】
〔実施の形態4〕
実施の形態1〜3のノイズ処理部12、12’,120は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0224】
すなわち、ノイズ処理部12、12’,120(または映像信号処理部42,420、またはテレビ放送受信装置1)は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるノイズ処理部12,12’ ,120の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、ノイズ処理部12,12’,120に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0225】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0226】
また、ノイズ処理部12、12’,120(または映像信号処理部42,420、またはテレビ放送受信装置1)を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0227】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明は、複数のフレーム画像からなる映像のノイズを低減する画像処理装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0229】
1 テレビ放送受信装置(画像表示装置)
12,12’,120 ノイズ処理部(画像処理装置)
16,16’ 第1ノイズ低減処理部(ノイズ低減画像生成部)
17 第2ノイズ低減処理部(ノイズ低減画像生成部)
18 ノイズ推定処理部
19 ディテイル強調処理部(強調処理部)
42,420 映像信号処理部(画像処理装置)
50 第1ノイズ低減フィルタ構築部
51 第1ノイズ低減フィルタリング部(ノイズ低減フィルタリング処理部)
52 モーション推定部(移動量決定部)
53 モーション算出部(移動量決定部)
54 モーション補正部(補正画像生成部)
55 重み決定部
60 エッジ強度算出部
61 第2ノイズ低減フィルタ構築部
62 第2ノイズ低減フィルタリング部(モスキートノイズ処理部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレーム画像からなる映像のノイズを低減する画像処理装置において、
ノイズ低減の対象のフレーム画像である対象画像と、当該対象画像に対して表示順序が前または後の少なくとも一方の少なくとも1以上のフレーム画像である参照用画像との間で、相関が小さい画素を、上記対象画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制するノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成するノイズ低減画像生成部と、
上記対象画像と上記ノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果から、上記対象画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき上記対象画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行するノイズ推定処理部と、
上記ノイズ低減画像の画素毎に、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施して、出力画像を生成する強調処理部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記ノイズ推定処理部は、上記ノイズ推定処理として、上記対象画像の注目画素の上記ノイズ強度と、当該注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素が有する信号強度、または当該注目画素のエッジである可能性の程度を示すエッジ強度と、を比較し、当該注目画素がノイズであるか否かを判定する処理を実行し、
上記強調処理部は、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理として、上記ノイズでないと判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素を強調する処理、かつ、上記ノイズであると判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素を強調しない処理、を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記強調処理部は、上記強調する処理として、上記ノイズ低減画像に対してアンシャープマスクを適用した輪郭強調画像を生成し、上記ノイズでないと判定された上記注目画素に対応する上記輪郭強調画像の画素を出力し、かつ、上記強調しない処理として、上記ノイズであると判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素をそのまま出力して、上記出力画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記強調処理部は、上記強調する処理として、上記ノイズ低減画像に対して高周波成分のノイズを付加した輪郭強調画像を生成し、上記ノイズでないと判定された上記注目画素に対応する上記輪郭強調画像の画素を出力し、かつ、上記強調しない処理として、上記ノイズであると判定された上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素をそのまま出力して、上記出力画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記ノイズ推定処理部は、上記ノイズ推定処理として、上記対象画像の注目画素の上記ノイズ強度と当該注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素が有する信号強度との比率から、当該注目画素のノイズである可能性の程度を算出する処理を実行し、
上記強調処理部は、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理として、上記ノイズ低減画像に対して、上記算出されたノイズである可能性の程度に応じた強調処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記強調処理部は、上記強調処理として、上記ノイズ低減画像に対してアンシャープマスクを適用した輪郭強調画像を生成し、上記注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素と、上記注目画素に対応する上記輪郭強調画像の画素との、上記算出されたノイズである可能性の程度に応じた線形和を求めて、上記出力画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記ノイズ推定処理部は、上記ノイズ推定処理として、上記対象画像の注目画素の上記ノイズ強度と当該注目画素に対応する上記ノイズ低減画像の画素が有する信号強度との比率から、当該注目画素のノイズである可能性の程度を算出する処理を実行し、
上記強調処理部は、上記ノイズ推定処理の結果を反映させたノイズ強調処理として、上記ノイズ低減画像に対して、上記算出されたノイズである可能性の程度に応じたノイズ重畳処理を実行することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
上記ノイズ低減画像生成部は、
上記対象画像の各画素を基準とした上記参照用画像の各画素の移動量を算出する移動量決定部と、
上記参照用画像の各画素を、上記対象画像の各画素の位置と合うように、上記算出された移動量を用いて移動させた補正画像を生成する補正画像生成部と、
上記補正画像と上記対象画像との差を算出し、当該算出された差が大きい程小さくなる重みを決定する重み決定部と、
上記ノイズ低減処理として、上記補正画像に対して、上記決定された重みを付けたフィルタ処理を施すノイズ低減フィルタリング処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
上記ノイズ低減画像生成部は、上記ノイズ低減処理を実行する第1ノイズ低減処理部と、上記ノイズ低減処理を施した対象画像に対して、さらに、モスキートノイズを抑制する抑制処理を施して、上記ノイズ低減画像を生成する第2ノイズ低減処理部とを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
上記第2ノイズ低減処理部は、
上記ノイズ低減処理を施した対象画像の各画素について、エッジである可能性の程度を示すエッジ強度を算出するエッジ強度算出部と、
上記ノイズ低減処理を施した対象画像に対して、上記モスキートノイズを低減するモスキートノイズ低減処理を施すモスキートノイズ処理部と、
上記算出されたエッジ強度が所定値より大きい画素には、上記モスキートノイズ低減処理の効果が大きくなり、上記エッジ強度が上記所定値以下の画素には、上記モスキートノイズ低減処理の効果が小さくなるように調整して、上記ノイズ低減画像を生成するノイズ低減効果調整部と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
複数のフレーム画像からなる映像のノイズを低減する画像処理方法において、
ノイズ低減の対象のフレーム画像である対象画像と、当該対象画像に対して表示順序が前または後の少なくとも一方の少なくとも1以上のフレーム画像である参照用画像との間で、相関が小さい画素を、上記対象画像のノイズと見做し、当該ノイズを抑制する第1ノイズ低減処理を施して、ノイズ低減画像を生成するノイズ低減画像生成ステップと、
上記対象画像と上記ノイズ低減画像とを対応画素毎に比較した結果から、上記対象画像の各画素のノイズ強度を算出し、当該ノイズ強度に基づき上記対象画像の各画素についてノイズである可能性を判定するノイズ推定処理を実行するノイズ推定処理ステップと、
上記ノイズ低減画像の画素毎に、上記ノイズ推定処理の結果を反映させた強調処理を施して、出力画像を生成する強調処理ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載の画像処理装置を動作させるプログラムであって、コンピュータを上記の各部として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−41565(P2013−41565A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273892(P2011−273892)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】