画像処理装置、画像記録装置、及びプログラム
【課題】各色のインクの吐出位置を集中させない場合と比較して、インクの粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させる。
【解決手段】誤差拡散法を用いた量子化を、まず、基準となるK色の2ビットに対して行なう。次に、M色に対して誤差拡散法を用いた量子化Mを行なう。このとき、K色のインクが吐出される、すなわち、K色の階調値が1〜3の何れかの画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。次に、C色に対して誤差拡散法を用いた量子化Cを行なう。このとき、K色及びM色の少なくとも一方のインクが吐出される画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。次に、Y色に対して誤差拡散法を用いた量子化Yを行なう。このとき、K色、M色、及びC色の少なくとも一方のインクが吐出される画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【解決手段】誤差拡散法を用いた量子化を、まず、基準となるK色の2ビットに対して行なう。次に、M色に対して誤差拡散法を用いた量子化Mを行なう。このとき、K色のインクが吐出される、すなわち、K色の階調値が1〜3の何れかの画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。次に、C色に対して誤差拡散法を用いた量子化Cを行なう。このとき、K色及びM色の少なくとも一方のインクが吐出される画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。次に、Y色に対して誤差拡散法を用いた量子化Yを行なう。このとき、K色、M色、及びC色の少なくとも一方のインクが吐出される画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像記録装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを用いて画像記録を行なうインクジェットプリンタでは、画像データに応じて記録ヘッドを駆動して記録媒体上にインク滴を吐出させて画像を記録する。
【0003】
この種のインクジェットプリンタにおいては、近年、反応性の2液インクの開発が進められている。2液インクを用いた画像記録では、インクと処理液とをそれぞれ記録媒体上に吐出することにより、記録媒体上でインクと処理液とを反応させる。これによりインク中の色材が凝集して広がりを抑制することができる。
【0004】
しかし、2液インクを用いた画像記録においては、ヘッド位置等によってドットの着弾の位置ズレが起きることがあり、インクと処理液との位置ズレによって凝集に偏りが生じるという問題がある。さらに、インクと処理液とが少しでも重なれば、重なりの割合に応じて凝集効果は発揮されるが、インクと処理液とが全く重ならずに、反応を起こさないとドット形状に著しい格差が生じる。特に、ハイライト領域ではドットが離散するため影響が大きい。
【0005】
この問題を解決するために、処理液を目標量よりも多めに吐出することが考えられ、極端には全面に吐出することにより解決することが考えられる。
【0006】
一方で、2液インクを用いた画像記録においては、インク液と処理液との双方を記録媒体に吐出するために、特に普通紙に印字する場合には、記録媒体に対する溶媒量が多すぎるため、記録媒体がカールしたり、記録媒体が裏抜けしたりするという問題が生じ易い。さらに、処理液ランコストアップの問題が生じる。このため、処理液を減らすことが求められている。
【0007】
吐出するインク量が多い領域では、処理液の割合を減らすことによる問題が小さいことから、特許文献1には、所定濃度以下ではインクデータと同一箇所に処理液を吐出し、所定濃度以上ではインクデータから間引いた箇所に処理液を吐出することにより、高濃度領域における処理液の割合を減らす方法が提案されている。
【特許文献1】特許第3314031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、各色のインクの吐出位置を集中させない場合と比較して、インクの粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の画像処理装置の発明は、各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成する吐出データ作成手段と、前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成する処理液データ作成手段と、を含んで構成されている。
【0010】
請求項2の発明は請求項1に記載の画像処理装置において、前記吐出データ作成手段は、誤差拡散法によって量子化を行なうと共に、少なくとも1つの色の液滴が吐出される画素の、前記少なくとも1つの色以外の色の階調値と比較される閾値を引き下げる引下手段を含んで構成されている。
【0011】
請求項3の発明は請求項1に記載の画像処理装置において、前記吐出データ作成手段は、ドット集中型のディザ行列を用いて量子化を行なうものである。
【0012】
請求項4の発明は請求項3に記載の画像処理装置において、前記処理液データ作成手段は、前記複数の色の各々の階調値の総和が所定値に満たない場合は、前記処理液が所定量吐出されるように前記処理液データを作成するものである。
【0013】
請求項5のた画像記録装置の発明は、前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像処理装置と、前記吐出データ作成手段により作成された前記吐出データに基づいて、記録媒体に前記複数の色の各々の液滴を吐出する第1の吐出手段と、前記処理液データ作成手段により作成された前記処理液データに基づいて前記画像媒体に前記処理液を吐出する第2の吐出手段と、を備えて構成されている。
【0014】
請求項6の発明は、コンピュータに、各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成するステップと、前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項6の発明によれば、複数の色の各々の液滴の吐出位置を集中させない場合と比較して、粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させることができる、という効果が得られる。
【0016】
請求項2の発明によれば、色毎に独立して量子化する場合と比較して、色の液滴が同一の画素に吐出される確率が高くなり、粒状性の低下を防止しつつ、処理液の吐出量を減少させることができる、という効果が得られる。
【0017】
請求項3の発明によれば、ドット集中型のディザ行列を用いない場合と比較して、粒状性の低下を防止しつつ、処理液の吐出量を減少させることができる、という効果が得られる。
【0018】
請求項4の発明によれば、複数の色の液滴の吐出量が所定の量よりも少ない場合に、複数の色の液滴の吐出量に対する処理液の吐出量の比が大きくなるように調整しない集中させ場合と比較して、液滴が疎らに吐出される濃度領域での粒状性の悪化を防止できる、という効果が得られる。
【0019】
請求項5の発明によれば、複数の色の各々の液滴の吐出位置を集中させない場合と比較して、粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、インクジェットプリンタに本発明を適用した場合について説明する。
【0021】
まず、図1を参照して本実施の形態に係るインクジェットプリンタ10の全体構成を概説する。
【0022】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、用紙(記録媒体)Pが収容される給紙カセット12を備えている。この給紙カセット12の先端側(図1において左端側)の上部には、用紙P上面の先端側に圧接して給紙カセット12内から用紙Pを取り出すフィードロール14が配置されている。
【0023】
また、給紙カセット12の先端部から延出し、用紙Pに画像記録を行なう記録部16へ達する第1搬送路18が設けられている。第1搬送路18には、用紙Pを記録部16へ挟持搬送する複数の第1搬送ロール対20が設けられている。
【0024】
さらに、記録部16から上方に延出し、画像記録がされた用紙Pを収容する排出トレイ22に達する第2搬送路24が設けられている。この第2搬送路24には、用紙Pを排出トレイ22へ搬送する複数の第2搬送ロール対26が設けられている。なお、両面印字するための反転搬送路36が第2搬送路24から第1搬送路18へ接続している。
【0025】
以上の構成により、フィードロール14によって、給紙カセット12から取り出された用紙Pは、複数の搬送ロール対20によって第1搬送路18を搬送され、記録部16へ送り込まれて画像記録が行われ、画像記録がされた用紙は、複数の搬送ロール対26によって、第2搬送路24を搬送され、排出トレイ22に排出される。また、両面印字を行なう場合は、片面印字をした用紙を、第2搬送路24から反転搬送路36を介して、第1搬送路18に搬送し、再び記録部16へ送り込み、画像記録が行われる。以上のように、一連の画像記録が行われる。なお、用紙Pの保持は静電吸着力によって行う。帯電ロール(図示省略)で用紙Pを搬送路24に押圧するとともに用紙Pに電荷を与え吸着力を発生させる。
【0026】
次に、記録部16の構成について説明する。
【0027】
記録部16は、用紙搬送方向上流側に配置された駆動ロール28と、下流側に配置された従動ロール30に巻回される無端状の搬送ベルト32を備えており、この搬送ベルト32は図1の矢印A方向(時計方向)に循環駆動(回転)するように構成されている。また、駆動ロール28の上部には、搬送ベルト32に表面側から摺接するニップロール38が配設されている。
【0028】
搬送ベルト32の上方には、インクジェット記録ヘッド34が配置されている。このインクジェット記録ヘッド34は、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、インク定着を促進させると共に画像濃度向上や耐水性向上を図るための処理液を吐出する処理液用ヘッド34Tと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクをそれぞれ吐出する4つのインク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kが、搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
【0029】
また、各色のインク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kは、それぞれ複数のインク吐出口(ノズル)が用紙Pの有効な記録領域の幅の全域にわたって配列されて構成されている。
【0030】
なお、インク滴の吐出は、サーマル方式、圧電方式等、公知の方式で行えばよい。
【0031】
このインクジェット記録ヘッド34は、搬送ベルト32の平坦部分32Fに対向し、この対向した領域が、インクジェット記録ヘッド34からインク滴及び処理液が吐出される吐出領域となっている。第1搬送路18を搬送された用紙Pは、搬送ベルト32で保持されて、この吐出領域に至り、インクジェット記録ヘッド34に対向した状態で、インクジェット記録ヘッド34から画像情報に応じたインク滴及び処理液が付着される。
【0032】
また、インクジェット記録ヘッド34の上方には、各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kにインクを供給するインクタンク40Y、40M、40C、40K、処理液用ヘッド34Tに処理液を供給する処理液タンク40Lが配設されている。
【0033】
さらに、インクジェット記録ヘッド34のノズル面に対向可能な位置、あるいは対向する位置に移動可能な位置に、ダミージェット受け部材、ワイピング部材、キャップ部材等を含む各色に対応したメンテナンスユニット(図示省略)を配置する。
【0034】
Y用及びM用のメンテナンスユニットは、インク用ヘッド34Y、34Mに対して図1における左側に配置する。また、C用及びK用のメンテナンスユニットは、インク用ヘッド34C、34Kに対して図1における右側に配置する。
【0035】
メンテナンス時には、インクジェット記録ヘッド34を上昇させ、メンテナンスユニットを左右からスライドさせて各々対応するノズル面に対向するよう移動させる。
【0036】
また、図2に示されるように、各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34K及び処理液用ヘッド34Tを含んだプリントエンジン50は、CPU52,ROM54,RAM56等がバス58によって接続されたシステムコントローラ60に接続されている。このシステムコントローラ60は、たとえば、画像情報に応じてインク滴及び処理液の吐出タイミングや使用するノズルを決め、駆動信号を各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34K及び処理液用ヘッド34Tに入力して、インクジェット記録ヘッド34を制御している。
【0037】
次に、以上のような構成のインクジェットプリンタ10において用いることができる処理液用ヘッド34T、及び各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kについて詳細に説明する。
【0038】
各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kは、システムコントローラ60のバス58に接続され、システムコントローラ60に制御される駆動回路(図示省略)によって、多値(大ドット・中ドット・小ドット・ドットなし)でアナログ駆動される。インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kで多値とすることで、高速・高画質を達成できる。すなわち、大ドットを吐出することで広い面積にインクを乗せられるので高速に出力でき、小ドットを吐出することで粒状性を改善させ高画質で出力できる。1つのノズルから大きさの異なるドットを吐出させるために、例えば、大ドットと中ドットと小ドットとを吐出する場合には、各々異なる波形の電圧がインク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kに印加される。
【0039】
また、処理液用ヘッド34Tは、システムコントローラ60のバス58に接続され、システムコントローラ60に制御される駆動回路(図示省略)によって、多値(大ドット吐出・中ドット吐出・小ドット吐出・ドット吐出なし)で駆動制御される。1つのノズルから大きさの異なるドットを吐出させるために、インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kと同様に、大ドットと中ドットと小ドットとを吐出する場合には、各々異なる波形の電圧がインク用ヘッド34Tに印加される。
【0040】
また、システムコントローラ60は、ネットワークインターフェース(図示省略)を介してパーソナルコンピュータ等にネットワーク接続可能になっている。
【0041】
次に、システムコントローラ60によって実施される画像処理の説明を行なう。
(第1の実施の形態)
図3〜図7を参照して、システムコントローラ60で実施される画像処理の第1の実施の形態を説明する。
【0042】
この画像処理を実行するためのプログラムは、システムコントローラ60の記憶媒体であるROM54に記憶されている。
【0043】
図3に画像データGの概念図を示す。画像を形成するための画像データGは、多数の画素gの階調値を表す画素値を表す。図3において、矢印Mは走査方向M、すなわち用紙の搬送方向を示し、矢印Nはノズルの配列方向Nを示している。以下、ノズルの配列方向Nの位置座標をx、走査方向Mの位置座標をyとして、画素g(x,y)として画像に含まれる各画素を識別する。なお、1≦x≦n(n:ノズルの配列方向Nの画素数)、1≦y≦m(m:走査方向Mの画素数)であり、n、mの値は画像データGによって異なる。また、xの値が同じ画素gは、同じノズルから吐出されるインクによって画像が形成される。
【0044】
画像処理においては、図4に示されるように、まず、記録する画像のオリジナルデータが入力される。オリジナルデータは、例えば、各画素のR,G,B色の各々の階調値を8ビットを用いて、0から255までの256階調で表したデータを用いる。以下では、256階調で表したデータを用いる場合について説明するが、階調は種々の値に定めることができる。
【0045】
システムコントローラ60は、入力されたオリジナルデータに、解像度の変換、及び色変換処理を施し、8ビットのR,G,Bの画像データを8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータに変換する。この色変換処理は、R,G,B色の各々で表される画像データをY,M,C色の各々で表される画像データに変換する処理、及び各画素に対して、Y,M,C色の各々をK色に置き換える色変換処理を含む。
【0046】
さらに、システムコントローラ60は、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータを閾値と比較することによって、例えば2ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表されたデータに変換(量子化)する。2ビットの階調値は、’0’、’1’、’2’、’3’の4値の何れかを表す。’0’はドット吐出なし(吐出量0)を表し、’1’は小ドット吐出(吐出量小)を表し、’2’は中ドット吐出(吐出量中)を表し、’3’は大ドット吐出(吐出量大)を表す。なお、量子化する際の階調値の値数は、処理液用ヘッド34T、各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34K、及び駆動回路等の仕様に応じて設定される。例えば、ドットの吐出制御を3段階(ドット吐出なし/小ドット吐出/大ドット吐出)に行なう場合は3値に設定される。
【0047】
本実施の形態では、画像データと閾値との比較による量子化に伴って発生する量子化誤差を周辺の画素に拡散させる誤差拡散法を用いて、K,M,C,Yの各々の色毎に8ビットのデータを2ビットのデータに変換する処理を行なう。
【0048】
まず、図5を参照して、量子化の閾値について説明する。なお、図5は、0〜255の256階調の画像データを、大ドット吐出、中ドット吐出、小ドット吐出、ドット吐出なしの4値に量子化する場合の閾値を示している。
【0049】
図5に示されるように、本実施の形態では、例えば、大ドット吐出閾値208、中ドット吐出閾値128、小ドット吐出閾値48の3つの閾値を設定する。システムコントローラ60は、各閾値と各画素の8ビットの階調値とを比較することにより、8ビットの階調値に量子化する。すなわち、階調値が0以上かつ48以下の場合は’0(液吐出なし)’に変換し、49以上かつ128以下の場合は’96(小ドット吐出)’に変換し、129以上かつ208以下の場合は’160(中ドット吐出)’に変換し、209以上の場合は’255(大ドット吐出)’に変換する。
【0050】
次に誤差の拡散処理について説明する。
【0051】
処理対象の画素g(x,y)の量子化誤差Uは、下記の(1)式で表される。
【0052】
U = (Q + R) − S … (1)
なお、
Q:画素g(x,y)の量子化前の階調値(0〜255)
R:誤差拡散により周辺画素から拡散された量子化誤差の和
S:出力値
である。
【0053】
出力値は、量子化後の階調値であり、本実施の形態では、ドット吐出なしを’0’、小ドット吐出を’96’、中ドット吐出を’160’、大ドット吐出を’255’とする。
【0054】
図6は、量子化誤差Uの拡散処理の一例を示している。なお、同図において、太枠で示される画素gが注目画素g(x,y)であり、斜線塗りつぶしで示される画素は既に量子化された画素である。また、これら以外の画素gを示す枠内の数値は、注目画素g(x,y)の量子化誤差Uを周辺画素に拡散する際の拡散割合を示す。
【0055】
すなわち、拡散処理によって、注目画素g(x,y)の量子化誤差Uの7/16は次に量子化処理の対象となるg(x,y+1)に、量子化誤差Uの5/16は注目画素の隣の画素g(x+1,y)に、それぞれ拡散され、注目画素の斜め位置に隣接する画素g(x+1,y−1)及び画素g(x+1,y)には、それぞれ量子化誤差Uの3/16、1/16が拡散される。
【0056】
上述した誤差拡散法を用いた量子化を、図4に示されるように、まず、基準となるK色の2ビットに対して行なう。
【0057】
次に、M色に対して誤差拡散法を用いた量子化Mを行なう。このとき、K色のインクが吐出される、すなわち、K色の階調値が1〜3の何れかの画素については、図5の点線枠で示されるように、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【0058】
次に、C色に対して誤差拡散法を用いた量子化Cを行なう。このとき、K色及びM色の少なくとも一方のインクが吐出される、すなわち、K色及びM色の少なくとも一方の階調値が1〜3の何れかの画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【0059】
次に、Y色に対して誤差拡散法を用いた量子化Yを行なう。このとき、K色、M色、及びC色の少なくとも一方のインクが吐出される、すなわち、K色、M色、及びC色の少なくとも一方の階調値が1〜3の何れかの画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【0060】
なお、M,C,Yの順序は上述の順序に限らない。また、K色を基準としなくても本発明の実施は可能である。
【0061】
また、誤差拡散法においては、画素毎の閾値の変更によって求められた画素値は、周囲の画素値に伝播するため、画像データ全体としては、階調値のバランスが崩れることはない。
【0062】
次に、図7(A)を参照して、2ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から、2ビットで表されるTの階調値(T値)を求める処理を説明する。
【0063】
まず、画素毎に、2ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から、8ビットで表されるT値を求めるT算出の処理を行なう。
【0064】
T値算出の処理では、下記の式(2)を用いて8ビットのT値を求める。
【0065】
T = 255 × W(n)× n … (2)
なお、
W(n):重み
n:ドットを吐出する色の数(0〜4)
であり、W(n)は、図7(B)に示されるようにnが増えるにつれ指数関数的に減るように定める。
【0066】
また、nは、大ドット・中ドット・小ドットの液量にかかわらず、ドットを吐出する色の数を計数して求める。具体的には、各色の2ビットの階調値の1ビット目の値と2ビット目の値との論理和を求めることにより得る。
【0067】
本実施の形態では、下記の表1に示される値を用いる。
【0068】
【表1】
【0069】
すなわち、nが「0」の場合のT値は「0」、nが「1」の場合のT値は「63」、nが「2」の場合のT値は「112」、nが「3」の場合のT値は「138」、nが「4」の場合のT値は「153」となる。
【0070】
このように、1色のインクが吐出される画素においては、ドットが大ドット・中ドット・小ドットの何れであってもT値、すなわち、処理液の液適量が一定となるので、インクの液適量が増えるに従って、インクに対する処理液の割合が減ることになる。すなわち、画素毎に、インクの液適量に対する処理液の液滴量の比は、インクの液適量が多くなるに従って小さくなるように調整される。
【0071】
なお、8ビットのT値の求め方は上述の方法に限られず、インクの液適量に応じた0〜255の何れかの値が求まればよい。
【0072】
次に、誤差拡散法を用いて、8ビットのT値を2ビットのT値に変換(量子化)する量子化処理を行なう。
【0073】
上記の図5,6を参照した説明と同様に、本実施の形態では、例えば、大ドット吐出閾値208、中ドット吐出閾値128、小ドット吐出閾値48の3つの閾値と各画素の8ビットのT値との比較処理、及び誤差の拡散処理をすることにより、T値を4値に量子化し、2ビットのT値を求める。
【0074】
これにより、単色の小ドットが吐出される画素が1画素だけ孤立した場合にも、処理液が吐出されるようになる。
【0075】
このように、各色の階調値の量子化に用いる閾値を他の色のインクが吐出される画素において引き下げることで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域において同一の画素に複数の色のインクが吐出される確率を高くすることができる。
【0076】
また、重み付けを行って処理液の吐出量をを求めることで、処理液の吐出量を反応に十分な量、かつ抑制した量とすることができる。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る画像処理について説明する。
【0077】
第1の実施の形態では、誤差拡散法を用いて量子化を行なう場合について説明したが、第2の実施の形態では、ドットが行列の中心から太るように閾値を配列したドット集中型のディザ行列である網点スクリーンを用いて量子化を行なう場合について説明する。以下では、第1の実施の形態と対応する部分についての説明を省略し、第1の実施の形態との差異を主として説明する。
【0078】
図8〜図11を参照して、システムコントローラ60で実施される画像処理の第2の実施の形態を説明する。
【0079】
画像処理の流れを図8を参照して説明する。
【0080】
まず、例えば、各画素のR,G,B色の各々の階調値を8ビットを用いて、0から255までの256階調で表した記録する画像のオリジナルデータが入力される。
【0081】
システムコントローラ60は、入力されたオリジナルデータに、解像度の変換、及び色変換処理を施し、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータとする。
【0082】
次に、システムコントローラ60は、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータを、1ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表されたデータに変換(量子化)する。1ビットの階調値は、’0’、’1’の2値の何れかを表す。’0’はドット吐出なしを表し、’1’はドット吐出を表す。なお、階調値は2ビットで表してもよく、この場合の値数は4値である。
【0083】
本実施の形態では、網点スクリーンを用いることによって、K,M,C,Yの各々の色について、8ビットのデータを1ビットのデータに変換する。
【0084】
網点スクリーンは、階調再現性に優れるという特性を有すると共に、インクの吐出対象の画素を集中させるという特性を有する閾値マトリックスである。
【0085】
図9は網点スクリーンの一例を示している。本実施の形態では、網点スクリーンは、100種類の異なる値の要素が並べられた閾値マトリックスを用いる。
【0086】
本実施の形態における量子化処理では、各色毎に、10×10の画素のブロックに分割して、ブロックの単位で対応する網点スクリーンの要素と階調値とを比較して2値化する。2値化は、階調値が要素の値以上の場合は「1」にし、階調値が要素の値未満の場合は「0」にして行なう。
【0087】
なお、網点スクリーンの要素数が10×10であるのに対し、階調数が256であるので、階調値を2.55で割る除算処理、又は網点スクリーンの要素値に2.55を掛ける乗算処理を行なってから量子化を行なう。
【0088】
さらに、8ビットで表されるTの階調値(T値)を、8ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から求めるT算出処理を行なう。
【0089】
T算出処理では、まず、下記の式(3)に従って256値のT値を求める。
【0090】
T = W(Σ)×Σ … (3)
なお、
W(Σ):重み
Σ:K,M,C,Yの各階調値の足し合わせ
であり、W(Σ)は、図10(A)に示されるようにΣが増えるにつれ指数関数的に減るように定める。すなわち、画素毎に、インクの液適量に対する処理液の液滴量の比は、インクの液適量が多くなるに従って小さくなるように調整できる。
【0091】
次に、図10(B)に示されるように、W(Σ)×Σのとりうる値の最大値を100%としたときの1〜5%の範囲の値を一律5%の値に変換すると共に、高いパーセンテージの範囲の階調値を所定の値に変換する。
【0092】
次に、網点スクリーンを用いることによって、8ビットのT値のデータを2値化して、1ビットのデータに変換する。上記の一律5%の値に変換する処理が行なわれたことによって、階調値の小さい画素の値が「1」に変換される確立が高くなっている。
【0093】
例えば、10×10の画素のブロックの各画素の階調値が、W(Σ)×Σのとりうる値の最大値を100%としたときの1%の値であるときの、一律5%の値に変換する処理を行なわない場合の2値化の結果を図11(A)に示す。有色の画素はT値が「1」の画素を示し、無色の画素はT値が「0」の画素を示している。
【0094】
一方、一律5%の値に変換する処理を行なった場合は、図11(B)に示される結果となる。
【0095】
このように、各色の階調値の量子化を網点スクリーンを用いることで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域において同一の画素に複数の色のインクが吐出される確率を高くすることができる。
【0096】
また、処理液の吐出量の量子化を網点スクリーンを用いると共に、所定の範囲の小さい値を所定の値に引き上げることで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域の画素位置にも、十分に反応が起こる量の処理液を吐出させることができる。
【0097】
さらに、所定の範囲の大きい値を所定の値に引き下げることで、処理液の吐出量を反応に十分な量、かつ抑制した量とすることができる。
(第3の実施の形態)
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る画像処理について説明する。
【0098】
第2の実施の形態では、各色の階調値、及びT値を共通の網点スクリーンを用いて求める場合について説明したが、第3の実施の形態では、各色の階調値、及びT値を各々異なる網点スクリーンを用いて求める場合について説明する。以下では、第2の実施の形態と対応する部分についての説明を省略し、第2の実施の形態との差異を主として説明する。
【0099】
図12〜図14を参照して、システムコントローラ60で実施される画像処理の第3の実施の形態を説明する。
【0100】
画像処理の流れを図12を参照して説明する。
【0101】
まず、例えば、各画素のR,G,B色の各々の階調値を8ビットを用いて、0から255までの256階調で表した記録する画像のオリジナルデータが入力される。
【0102】
システムコントローラ60は、入力されたオリジナルデータに、解像度の変換、及び色変換処理を施し、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータとする。
【0103】
次に、システムコントローラ60は、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータを、1ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表されたデータに変換(量子化)する。
【0104】
本実施の形態では、K,M,C,Yの各々の色を各々異なるディザマトリクスを用いることによって、8ビットのデータを1ビットのデータに変換する。
【0105】
K,M,C,Yの各々の色の量子化には、図13(A),(B)に示されるようなディザマトリックスを用いる。すなわち、中心の4要素の値が同一になるように設定されたディザマトリックスを用いる。このようなディザマトリックスを用いることで、各色において特にハイライトの階調値の小さい画素において、同一の画素で複数の色のドットが吐出されるようになる。
【0106】
なお、図13(A),(B)で示されるディザマトリックスを用いる場合は、要素数が4×4であるので、階調値を16で割る除算処理、又は網点スクリーンの要素値に16を掛ける乗算処理を行なってから量子化を行なう。
【0107】
さらに、8ビットで表されるTの階調値(T値)を、8ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から求めるT算出処理を行なう。
【0108】
T算出処理では、上記の式(3)に従って256値のT値を求める。すなわち、画素毎に、インクの液適量に対する処理液の液滴量の比は、インクの液適量が多くなるに従って小さくなるように調整できる。
【0109】
次に、図13(C)で示されるようなディザマトリックスを用いて、8ビットのT値のデータを1ビットのデータに変換する。T値の2値化に用いるディザマトリックスは、図13(C)に示されるように、中心の4要素の値を「1」に設定する。中心の4要素の値を「1」に設定することによって、階調値の小さい画素の値が「1」に変換される確率を高くすることができる。
【0110】
図14は、本実施の形態で用いることができる要素数が8×8のディザマトリックスの一例を示している。例えば、同図(A)のディザマトリックスでK色の階調値を2値化し、同図(B)のディザマトリックスでM色の階調値を2値化し、同図(C)のディザマトリックスでC色の階調値を2値化し、同図(D)のディザマトリックスでY色の階調値を2値化し、同図(E)のディザマトリックスでT値を2値化する。
【0111】
なお、図14で示されるディザマトリックスを用いる場合は、要素数が8×8であるので、階調値を4で割る除算処理、又は網点スクリーンの要素値に4を掛ける乗算処理を行なってから量子化を行なう。
【0112】
このように、各色の階調値の量子化に用いるディザマトリックスの中心に位置する要素の値を小さく設定すると共に、各色の階調値の量子化に用いるディザマトリックスの中心に位置する要素の値を同一に設定することで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域において同一の画素に複数の色のインクが吐出される確率を高くすることができる。
【0113】
さらに、処理液の吐出量の量子化に用いるディザマトリックスの中心に位置する要素の値を「1」に設定することで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域の画素位置にも、十分に反応が起こる量の処理液を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本実施の形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図3】画像データGの概念図である。
【図4】第1の実施の形態における画像処理の流れを示す図である。
【図5】量子化の閾値を説明する図である。
【図6】量子化誤差Uの拡散処理の一例を示す図である。
【図7】(A)はTの階調値を求める処理を説明する図であり、(B)は重みの概念図である。
【図8】第2の実施の形態における画像処理の流れを示す図である。
【図9】網点スクリーンの一例を示す図である。
【図10】(A)は重みの概念図であり、(B)はTの階調値の変換の概念図である。
【図11】(A)は図10(B)の変換を施さなかった場合の結果を示し、(B)は図10(B)の変換を施した場合の結果を示す。
【図12】第3の実施の形態における画像処理の流れを示す図である。
【図13】4×4のディザマトリックスの一例を示している。
【図14】8×8のディザマトリックスの一例を示している。
【符号の説明】
【0115】
10 インクジェットプリンタ
34 インクジェット記録ヘッド
60 システムコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像記録装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを用いて画像記録を行なうインクジェットプリンタでは、画像データに応じて記録ヘッドを駆動して記録媒体上にインク滴を吐出させて画像を記録する。
【0003】
この種のインクジェットプリンタにおいては、近年、反応性の2液インクの開発が進められている。2液インクを用いた画像記録では、インクと処理液とをそれぞれ記録媒体上に吐出することにより、記録媒体上でインクと処理液とを反応させる。これによりインク中の色材が凝集して広がりを抑制することができる。
【0004】
しかし、2液インクを用いた画像記録においては、ヘッド位置等によってドットの着弾の位置ズレが起きることがあり、インクと処理液との位置ズレによって凝集に偏りが生じるという問題がある。さらに、インクと処理液とが少しでも重なれば、重なりの割合に応じて凝集効果は発揮されるが、インクと処理液とが全く重ならずに、反応を起こさないとドット形状に著しい格差が生じる。特に、ハイライト領域ではドットが離散するため影響が大きい。
【0005】
この問題を解決するために、処理液を目標量よりも多めに吐出することが考えられ、極端には全面に吐出することにより解決することが考えられる。
【0006】
一方で、2液インクを用いた画像記録においては、インク液と処理液との双方を記録媒体に吐出するために、特に普通紙に印字する場合には、記録媒体に対する溶媒量が多すぎるため、記録媒体がカールしたり、記録媒体が裏抜けしたりするという問題が生じ易い。さらに、処理液ランコストアップの問題が生じる。このため、処理液を減らすことが求められている。
【0007】
吐出するインク量が多い領域では、処理液の割合を減らすことによる問題が小さいことから、特許文献1には、所定濃度以下ではインクデータと同一箇所に処理液を吐出し、所定濃度以上ではインクデータから間引いた箇所に処理液を吐出することにより、高濃度領域における処理液の割合を減らす方法が提案されている。
【特許文献1】特許第3314031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、各色のインクの吐出位置を集中させない場合と比較して、インクの粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の画像処理装置の発明は、各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成する吐出データ作成手段と、前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成する処理液データ作成手段と、を含んで構成されている。
【0010】
請求項2の発明は請求項1に記載の画像処理装置において、前記吐出データ作成手段は、誤差拡散法によって量子化を行なうと共に、少なくとも1つの色の液滴が吐出される画素の、前記少なくとも1つの色以外の色の階調値と比較される閾値を引き下げる引下手段を含んで構成されている。
【0011】
請求項3の発明は請求項1に記載の画像処理装置において、前記吐出データ作成手段は、ドット集中型のディザ行列を用いて量子化を行なうものである。
【0012】
請求項4の発明は請求項3に記載の画像処理装置において、前記処理液データ作成手段は、前記複数の色の各々の階調値の総和が所定値に満たない場合は、前記処理液が所定量吐出されるように前記処理液データを作成するものである。
【0013】
請求項5のた画像記録装置の発明は、前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像処理装置と、前記吐出データ作成手段により作成された前記吐出データに基づいて、記録媒体に前記複数の色の各々の液滴を吐出する第1の吐出手段と、前記処理液データ作成手段により作成された前記処理液データに基づいて前記画像媒体に前記処理液を吐出する第2の吐出手段と、を備えて構成されている。
【0014】
請求項6の発明は、コンピュータに、各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成するステップと、前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項6の発明によれば、複数の色の各々の液滴の吐出位置を集中させない場合と比較して、粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させることができる、という効果が得られる。
【0016】
請求項2の発明によれば、色毎に独立して量子化する場合と比較して、色の液滴が同一の画素に吐出される確率が高くなり、粒状性の低下を防止しつつ、処理液の吐出量を減少させることができる、という効果が得られる。
【0017】
請求項3の発明によれば、ドット集中型のディザ行列を用いない場合と比較して、粒状性の低下を防止しつつ、処理液の吐出量を減少させることができる、という効果が得られる。
【0018】
請求項4の発明によれば、複数の色の液滴の吐出量が所定の量よりも少ない場合に、複数の色の液滴の吐出量に対する処理液の吐出量の比が大きくなるように調整しない集中させ場合と比較して、液滴が疎らに吐出される濃度領域での粒状性の悪化を防止できる、という効果が得られる。
【0019】
請求項5の発明によれば、複数の色の各々の液滴の吐出位置を集中させない場合と比較して、粒状性の悪化の防止と、処理液の吐出量の減少とを両立させることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、インクジェットプリンタに本発明を適用した場合について説明する。
【0021】
まず、図1を参照して本実施の形態に係るインクジェットプリンタ10の全体構成を概説する。
【0022】
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、用紙(記録媒体)Pが収容される給紙カセット12を備えている。この給紙カセット12の先端側(図1において左端側)の上部には、用紙P上面の先端側に圧接して給紙カセット12内から用紙Pを取り出すフィードロール14が配置されている。
【0023】
また、給紙カセット12の先端部から延出し、用紙Pに画像記録を行なう記録部16へ達する第1搬送路18が設けられている。第1搬送路18には、用紙Pを記録部16へ挟持搬送する複数の第1搬送ロール対20が設けられている。
【0024】
さらに、記録部16から上方に延出し、画像記録がされた用紙Pを収容する排出トレイ22に達する第2搬送路24が設けられている。この第2搬送路24には、用紙Pを排出トレイ22へ搬送する複数の第2搬送ロール対26が設けられている。なお、両面印字するための反転搬送路36が第2搬送路24から第1搬送路18へ接続している。
【0025】
以上の構成により、フィードロール14によって、給紙カセット12から取り出された用紙Pは、複数の搬送ロール対20によって第1搬送路18を搬送され、記録部16へ送り込まれて画像記録が行われ、画像記録がされた用紙は、複数の搬送ロール対26によって、第2搬送路24を搬送され、排出トレイ22に排出される。また、両面印字を行なう場合は、片面印字をした用紙を、第2搬送路24から反転搬送路36を介して、第1搬送路18に搬送し、再び記録部16へ送り込み、画像記録が行われる。以上のように、一連の画像記録が行われる。なお、用紙Pの保持は静電吸着力によって行う。帯電ロール(図示省略)で用紙Pを搬送路24に押圧するとともに用紙Pに電荷を与え吸着力を発生させる。
【0026】
次に、記録部16の構成について説明する。
【0027】
記録部16は、用紙搬送方向上流側に配置された駆動ロール28と、下流側に配置された従動ロール30に巻回される無端状の搬送ベルト32を備えており、この搬送ベルト32は図1の矢印A方向(時計方向)に循環駆動(回転)するように構成されている。また、駆動ロール28の上部には、搬送ベルト32に表面側から摺接するニップロール38が配設されている。
【0028】
搬送ベルト32の上方には、インクジェット記録ヘッド34が配置されている。このインクジェット記録ヘッド34は、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、インク定着を促進させると共に画像濃度向上や耐水性向上を図るための処理液を吐出する処理液用ヘッド34Tと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクをそれぞれ吐出する4つのインク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kが、搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
【0029】
また、各色のインク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kは、それぞれ複数のインク吐出口(ノズル)が用紙Pの有効な記録領域の幅の全域にわたって配列されて構成されている。
【0030】
なお、インク滴の吐出は、サーマル方式、圧電方式等、公知の方式で行えばよい。
【0031】
このインクジェット記録ヘッド34は、搬送ベルト32の平坦部分32Fに対向し、この対向した領域が、インクジェット記録ヘッド34からインク滴及び処理液が吐出される吐出領域となっている。第1搬送路18を搬送された用紙Pは、搬送ベルト32で保持されて、この吐出領域に至り、インクジェット記録ヘッド34に対向した状態で、インクジェット記録ヘッド34から画像情報に応じたインク滴及び処理液が付着される。
【0032】
また、インクジェット記録ヘッド34の上方には、各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kにインクを供給するインクタンク40Y、40M、40C、40K、処理液用ヘッド34Tに処理液を供給する処理液タンク40Lが配設されている。
【0033】
さらに、インクジェット記録ヘッド34のノズル面に対向可能な位置、あるいは対向する位置に移動可能な位置に、ダミージェット受け部材、ワイピング部材、キャップ部材等を含む各色に対応したメンテナンスユニット(図示省略)を配置する。
【0034】
Y用及びM用のメンテナンスユニットは、インク用ヘッド34Y、34Mに対して図1における左側に配置する。また、C用及びK用のメンテナンスユニットは、インク用ヘッド34C、34Kに対して図1における右側に配置する。
【0035】
メンテナンス時には、インクジェット記録ヘッド34を上昇させ、メンテナンスユニットを左右からスライドさせて各々対応するノズル面に対向するよう移動させる。
【0036】
また、図2に示されるように、各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34K及び処理液用ヘッド34Tを含んだプリントエンジン50は、CPU52,ROM54,RAM56等がバス58によって接続されたシステムコントローラ60に接続されている。このシステムコントローラ60は、たとえば、画像情報に応じてインク滴及び処理液の吐出タイミングや使用するノズルを決め、駆動信号を各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34K及び処理液用ヘッド34Tに入力して、インクジェット記録ヘッド34を制御している。
【0037】
次に、以上のような構成のインクジェットプリンタ10において用いることができる処理液用ヘッド34T、及び各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kについて詳細に説明する。
【0038】
各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kは、システムコントローラ60のバス58に接続され、システムコントローラ60に制御される駆動回路(図示省略)によって、多値(大ドット・中ドット・小ドット・ドットなし)でアナログ駆動される。インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kで多値とすることで、高速・高画質を達成できる。すなわち、大ドットを吐出することで広い面積にインクを乗せられるので高速に出力でき、小ドットを吐出することで粒状性を改善させ高画質で出力できる。1つのノズルから大きさの異なるドットを吐出させるために、例えば、大ドットと中ドットと小ドットとを吐出する場合には、各々異なる波形の電圧がインク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kに印加される。
【0039】
また、処理液用ヘッド34Tは、システムコントローラ60のバス58に接続され、システムコントローラ60に制御される駆動回路(図示省略)によって、多値(大ドット吐出・中ドット吐出・小ドット吐出・ドット吐出なし)で駆動制御される。1つのノズルから大きさの異なるドットを吐出させるために、インク用ヘッド34Y、34M、34C、34Kと同様に、大ドットと中ドットと小ドットとを吐出する場合には、各々異なる波形の電圧がインク用ヘッド34Tに印加される。
【0040】
また、システムコントローラ60は、ネットワークインターフェース(図示省略)を介してパーソナルコンピュータ等にネットワーク接続可能になっている。
【0041】
次に、システムコントローラ60によって実施される画像処理の説明を行なう。
(第1の実施の形態)
図3〜図7を参照して、システムコントローラ60で実施される画像処理の第1の実施の形態を説明する。
【0042】
この画像処理を実行するためのプログラムは、システムコントローラ60の記憶媒体であるROM54に記憶されている。
【0043】
図3に画像データGの概念図を示す。画像を形成するための画像データGは、多数の画素gの階調値を表す画素値を表す。図3において、矢印Mは走査方向M、すなわち用紙の搬送方向を示し、矢印Nはノズルの配列方向Nを示している。以下、ノズルの配列方向Nの位置座標をx、走査方向Mの位置座標をyとして、画素g(x,y)として画像に含まれる各画素を識別する。なお、1≦x≦n(n:ノズルの配列方向Nの画素数)、1≦y≦m(m:走査方向Mの画素数)であり、n、mの値は画像データGによって異なる。また、xの値が同じ画素gは、同じノズルから吐出されるインクによって画像が形成される。
【0044】
画像処理においては、図4に示されるように、まず、記録する画像のオリジナルデータが入力される。オリジナルデータは、例えば、各画素のR,G,B色の各々の階調値を8ビットを用いて、0から255までの256階調で表したデータを用いる。以下では、256階調で表したデータを用いる場合について説明するが、階調は種々の値に定めることができる。
【0045】
システムコントローラ60は、入力されたオリジナルデータに、解像度の変換、及び色変換処理を施し、8ビットのR,G,Bの画像データを8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータに変換する。この色変換処理は、R,G,B色の各々で表される画像データをY,M,C色の各々で表される画像データに変換する処理、及び各画素に対して、Y,M,C色の各々をK色に置き換える色変換処理を含む。
【0046】
さらに、システムコントローラ60は、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータを閾値と比較することによって、例えば2ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表されたデータに変換(量子化)する。2ビットの階調値は、’0’、’1’、’2’、’3’の4値の何れかを表す。’0’はドット吐出なし(吐出量0)を表し、’1’は小ドット吐出(吐出量小)を表し、’2’は中ドット吐出(吐出量中)を表し、’3’は大ドット吐出(吐出量大)を表す。なお、量子化する際の階調値の値数は、処理液用ヘッド34T、各インク用ヘッド34Y、34M、34C、34K、及び駆動回路等の仕様に応じて設定される。例えば、ドットの吐出制御を3段階(ドット吐出なし/小ドット吐出/大ドット吐出)に行なう場合は3値に設定される。
【0047】
本実施の形態では、画像データと閾値との比較による量子化に伴って発生する量子化誤差を周辺の画素に拡散させる誤差拡散法を用いて、K,M,C,Yの各々の色毎に8ビットのデータを2ビットのデータに変換する処理を行なう。
【0048】
まず、図5を参照して、量子化の閾値について説明する。なお、図5は、0〜255の256階調の画像データを、大ドット吐出、中ドット吐出、小ドット吐出、ドット吐出なしの4値に量子化する場合の閾値を示している。
【0049】
図5に示されるように、本実施の形態では、例えば、大ドット吐出閾値208、中ドット吐出閾値128、小ドット吐出閾値48の3つの閾値を設定する。システムコントローラ60は、各閾値と各画素の8ビットの階調値とを比較することにより、8ビットの階調値に量子化する。すなわち、階調値が0以上かつ48以下の場合は’0(液吐出なし)’に変換し、49以上かつ128以下の場合は’96(小ドット吐出)’に変換し、129以上かつ208以下の場合は’160(中ドット吐出)’に変換し、209以上の場合は’255(大ドット吐出)’に変換する。
【0050】
次に誤差の拡散処理について説明する。
【0051】
処理対象の画素g(x,y)の量子化誤差Uは、下記の(1)式で表される。
【0052】
U = (Q + R) − S … (1)
なお、
Q:画素g(x,y)の量子化前の階調値(0〜255)
R:誤差拡散により周辺画素から拡散された量子化誤差の和
S:出力値
である。
【0053】
出力値は、量子化後の階調値であり、本実施の形態では、ドット吐出なしを’0’、小ドット吐出を’96’、中ドット吐出を’160’、大ドット吐出を’255’とする。
【0054】
図6は、量子化誤差Uの拡散処理の一例を示している。なお、同図において、太枠で示される画素gが注目画素g(x,y)であり、斜線塗りつぶしで示される画素は既に量子化された画素である。また、これら以外の画素gを示す枠内の数値は、注目画素g(x,y)の量子化誤差Uを周辺画素に拡散する際の拡散割合を示す。
【0055】
すなわち、拡散処理によって、注目画素g(x,y)の量子化誤差Uの7/16は次に量子化処理の対象となるg(x,y+1)に、量子化誤差Uの5/16は注目画素の隣の画素g(x+1,y)に、それぞれ拡散され、注目画素の斜め位置に隣接する画素g(x+1,y−1)及び画素g(x+1,y)には、それぞれ量子化誤差Uの3/16、1/16が拡散される。
【0056】
上述した誤差拡散法を用いた量子化を、図4に示されるように、まず、基準となるK色の2ビットに対して行なう。
【0057】
次に、M色に対して誤差拡散法を用いた量子化Mを行なう。このとき、K色のインクが吐出される、すなわち、K色の階調値が1〜3の何れかの画素については、図5の点線枠で示されるように、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【0058】
次に、C色に対して誤差拡散法を用いた量子化Cを行なう。このとき、K色及びM色の少なくとも一方のインクが吐出される、すなわち、K色及びM色の少なくとも一方の階調値が1〜3の何れかの画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【0059】
次に、Y色に対して誤差拡散法を用いた量子化Yを行なう。このとき、K色、M色、及びC色の少なくとも一方のインクが吐出される、すなわち、K色、M色、及びC色の少なくとも一方の階調値が1〜3の何れかの画素については、小ドット吐出の閾値を48から8に引き下げる。
【0060】
なお、M,C,Yの順序は上述の順序に限らない。また、K色を基準としなくても本発明の実施は可能である。
【0061】
また、誤差拡散法においては、画素毎の閾値の変更によって求められた画素値は、周囲の画素値に伝播するため、画像データ全体としては、階調値のバランスが崩れることはない。
【0062】
次に、図7(A)を参照して、2ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から、2ビットで表されるTの階調値(T値)を求める処理を説明する。
【0063】
まず、画素毎に、2ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から、8ビットで表されるT値を求めるT算出の処理を行なう。
【0064】
T値算出の処理では、下記の式(2)を用いて8ビットのT値を求める。
【0065】
T = 255 × W(n)× n … (2)
なお、
W(n):重み
n:ドットを吐出する色の数(0〜4)
であり、W(n)は、図7(B)に示されるようにnが増えるにつれ指数関数的に減るように定める。
【0066】
また、nは、大ドット・中ドット・小ドットの液量にかかわらず、ドットを吐出する色の数を計数して求める。具体的には、各色の2ビットの階調値の1ビット目の値と2ビット目の値との論理和を求めることにより得る。
【0067】
本実施の形態では、下記の表1に示される値を用いる。
【0068】
【表1】
【0069】
すなわち、nが「0」の場合のT値は「0」、nが「1」の場合のT値は「63」、nが「2」の場合のT値は「112」、nが「3」の場合のT値は「138」、nが「4」の場合のT値は「153」となる。
【0070】
このように、1色のインクが吐出される画素においては、ドットが大ドット・中ドット・小ドットの何れであってもT値、すなわち、処理液の液適量が一定となるので、インクの液適量が増えるに従って、インクに対する処理液の割合が減ることになる。すなわち、画素毎に、インクの液適量に対する処理液の液滴量の比は、インクの液適量が多くなるに従って小さくなるように調整される。
【0071】
なお、8ビットのT値の求め方は上述の方法に限られず、インクの液適量に応じた0〜255の何れかの値が求まればよい。
【0072】
次に、誤差拡散法を用いて、8ビットのT値を2ビットのT値に変換(量子化)する量子化処理を行なう。
【0073】
上記の図5,6を参照した説明と同様に、本実施の形態では、例えば、大ドット吐出閾値208、中ドット吐出閾値128、小ドット吐出閾値48の3つの閾値と各画素の8ビットのT値との比較処理、及び誤差の拡散処理をすることにより、T値を4値に量子化し、2ビットのT値を求める。
【0074】
これにより、単色の小ドットが吐出される画素が1画素だけ孤立した場合にも、処理液が吐出されるようになる。
【0075】
このように、各色の階調値の量子化に用いる閾値を他の色のインクが吐出される画素において引き下げることで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域において同一の画素に複数の色のインクが吐出される確率を高くすることができる。
【0076】
また、重み付けを行って処理液の吐出量をを求めることで、処理液の吐出量を反応に十分な量、かつ抑制した量とすることができる。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る画像処理について説明する。
【0077】
第1の実施の形態では、誤差拡散法を用いて量子化を行なう場合について説明したが、第2の実施の形態では、ドットが行列の中心から太るように閾値を配列したドット集中型のディザ行列である網点スクリーンを用いて量子化を行なう場合について説明する。以下では、第1の実施の形態と対応する部分についての説明を省略し、第1の実施の形態との差異を主として説明する。
【0078】
図8〜図11を参照して、システムコントローラ60で実施される画像処理の第2の実施の形態を説明する。
【0079】
画像処理の流れを図8を参照して説明する。
【0080】
まず、例えば、各画素のR,G,B色の各々の階調値を8ビットを用いて、0から255までの256階調で表した記録する画像のオリジナルデータが入力される。
【0081】
システムコントローラ60は、入力されたオリジナルデータに、解像度の変換、及び色変換処理を施し、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータとする。
【0082】
次に、システムコントローラ60は、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータを、1ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表されたデータに変換(量子化)する。1ビットの階調値は、’0’、’1’の2値の何れかを表す。’0’はドット吐出なしを表し、’1’はドット吐出を表す。なお、階調値は2ビットで表してもよく、この場合の値数は4値である。
【0083】
本実施の形態では、網点スクリーンを用いることによって、K,M,C,Yの各々の色について、8ビットのデータを1ビットのデータに変換する。
【0084】
網点スクリーンは、階調再現性に優れるという特性を有すると共に、インクの吐出対象の画素を集中させるという特性を有する閾値マトリックスである。
【0085】
図9は網点スクリーンの一例を示している。本実施の形態では、網点スクリーンは、100種類の異なる値の要素が並べられた閾値マトリックスを用いる。
【0086】
本実施の形態における量子化処理では、各色毎に、10×10の画素のブロックに分割して、ブロックの単位で対応する網点スクリーンの要素と階調値とを比較して2値化する。2値化は、階調値が要素の値以上の場合は「1」にし、階調値が要素の値未満の場合は「0」にして行なう。
【0087】
なお、網点スクリーンの要素数が10×10であるのに対し、階調数が256であるので、階調値を2.55で割る除算処理、又は網点スクリーンの要素値に2.55を掛ける乗算処理を行なってから量子化を行なう。
【0088】
さらに、8ビットで表されるTの階調値(T値)を、8ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から求めるT算出処理を行なう。
【0089】
T算出処理では、まず、下記の式(3)に従って256値のT値を求める。
【0090】
T = W(Σ)×Σ … (3)
なお、
W(Σ):重み
Σ:K,M,C,Yの各階調値の足し合わせ
であり、W(Σ)は、図10(A)に示されるようにΣが増えるにつれ指数関数的に減るように定める。すなわち、画素毎に、インクの液適量に対する処理液の液滴量の比は、インクの液適量が多くなるに従って小さくなるように調整できる。
【0091】
次に、図10(B)に示されるように、W(Σ)×Σのとりうる値の最大値を100%としたときの1〜5%の範囲の値を一律5%の値に変換すると共に、高いパーセンテージの範囲の階調値を所定の値に変換する。
【0092】
次に、網点スクリーンを用いることによって、8ビットのT値のデータを2値化して、1ビットのデータに変換する。上記の一律5%の値に変換する処理が行なわれたことによって、階調値の小さい画素の値が「1」に変換される確立が高くなっている。
【0093】
例えば、10×10の画素のブロックの各画素の階調値が、W(Σ)×Σのとりうる値の最大値を100%としたときの1%の値であるときの、一律5%の値に変換する処理を行なわない場合の2値化の結果を図11(A)に示す。有色の画素はT値が「1」の画素を示し、無色の画素はT値が「0」の画素を示している。
【0094】
一方、一律5%の値に変換する処理を行なった場合は、図11(B)に示される結果となる。
【0095】
このように、各色の階調値の量子化を網点スクリーンを用いることで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域において同一の画素に複数の色のインクが吐出される確率を高くすることができる。
【0096】
また、処理液の吐出量の量子化を網点スクリーンを用いると共に、所定の範囲の小さい値を所定の値に引き上げることで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域の画素位置にも、十分に反応が起こる量の処理液を吐出させることができる。
【0097】
さらに、所定の範囲の大きい値を所定の値に引き下げることで、処理液の吐出量を反応に十分な量、かつ抑制した量とすることができる。
(第3の実施の形態)
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る画像処理について説明する。
【0098】
第2の実施の形態では、各色の階調値、及びT値を共通の網点スクリーンを用いて求める場合について説明したが、第3の実施の形態では、各色の階調値、及びT値を各々異なる網点スクリーンを用いて求める場合について説明する。以下では、第2の実施の形態と対応する部分についての説明を省略し、第2の実施の形態との差異を主として説明する。
【0099】
図12〜図14を参照して、システムコントローラ60で実施される画像処理の第3の実施の形態を説明する。
【0100】
画像処理の流れを図12を参照して説明する。
【0101】
まず、例えば、各画素のR,G,B色の各々の階調値を8ビットを用いて、0から255までの256階調で表した記録する画像のオリジナルデータが入力される。
【0102】
システムコントローラ60は、入力されたオリジナルデータに、解像度の変換、及び色変換処理を施し、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータとする。
【0103】
次に、システムコントローラ60は、8ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表された画素毎のデータを、1ビットのK,M,C,Yの各々の階調値で表されたデータに変換(量子化)する。
【0104】
本実施の形態では、K,M,C,Yの各々の色を各々異なるディザマトリクスを用いることによって、8ビットのデータを1ビットのデータに変換する。
【0105】
K,M,C,Yの各々の色の量子化には、図13(A),(B)に示されるようなディザマトリックスを用いる。すなわち、中心の4要素の値が同一になるように設定されたディザマトリックスを用いる。このようなディザマトリックスを用いることで、各色において特にハイライトの階調値の小さい画素において、同一の画素で複数の色のドットが吐出されるようになる。
【0106】
なお、図13(A),(B)で示されるディザマトリックスを用いる場合は、要素数が4×4であるので、階調値を16で割る除算処理、又は網点スクリーンの要素値に16を掛ける乗算処理を行なってから量子化を行なう。
【0107】
さらに、8ビットで表されるTの階調値(T値)を、8ビットで表されたK,M,C,Yの各々の階調値から求めるT算出処理を行なう。
【0108】
T算出処理では、上記の式(3)に従って256値のT値を求める。すなわち、画素毎に、インクの液適量に対する処理液の液滴量の比は、インクの液適量が多くなるに従って小さくなるように調整できる。
【0109】
次に、図13(C)で示されるようなディザマトリックスを用いて、8ビットのT値のデータを1ビットのデータに変換する。T値の2値化に用いるディザマトリックスは、図13(C)に示されるように、中心の4要素の値を「1」に設定する。中心の4要素の値を「1」に設定することによって、階調値の小さい画素の値が「1」に変換される確率を高くすることができる。
【0110】
図14は、本実施の形態で用いることができる要素数が8×8のディザマトリックスの一例を示している。例えば、同図(A)のディザマトリックスでK色の階調値を2値化し、同図(B)のディザマトリックスでM色の階調値を2値化し、同図(C)のディザマトリックスでC色の階調値を2値化し、同図(D)のディザマトリックスでY色の階調値を2値化し、同図(E)のディザマトリックスでT値を2値化する。
【0111】
なお、図14で示されるディザマトリックスを用いる場合は、要素数が8×8であるので、階調値を4で割る除算処理、又は網点スクリーンの要素値に4を掛ける乗算処理を行なってから量子化を行なう。
【0112】
このように、各色の階調値の量子化に用いるディザマトリックスの中心に位置する要素の値を小さく設定すると共に、各色の階調値の量子化に用いるディザマトリックスの中心に位置する要素の値を同一に設定することで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域において同一の画素に複数の色のインクが吐出される確率を高くすることができる。
【0113】
さらに、処理液の吐出量の量子化に用いるディザマトリックスの中心に位置する要素の値を「1」に設定することで、特にインクの吐出量が少ないハイライト領域の画素位置にも、十分に反応が起こる量の処理液を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本実施の形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図3】画像データGの概念図である。
【図4】第1の実施の形態における画像処理の流れを示す図である。
【図5】量子化の閾値を説明する図である。
【図6】量子化誤差Uの拡散処理の一例を示す図である。
【図7】(A)はTの階調値を求める処理を説明する図であり、(B)は重みの概念図である。
【図8】第2の実施の形態における画像処理の流れを示す図である。
【図9】網点スクリーンの一例を示す図である。
【図10】(A)は重みの概念図であり、(B)はTの階調値の変換の概念図である。
【図11】(A)は図10(B)の変換を施さなかった場合の結果を示し、(B)は図10(B)の変換を施した場合の結果を示す。
【図12】第3の実施の形態における画像処理の流れを示す図である。
【図13】4×4のディザマトリックスの一例を示している。
【図14】8×8のディザマトリックスの一例を示している。
【符号の説明】
【0115】
10 インクジェットプリンタ
34 インクジェット記録ヘッド
60 システムコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成する吐出データ作成手段と、
前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成する処理液データ作成手段と、
を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記吐出データ作成手段は、誤差拡散法によって量子化を行なうと共に、少なくとも1つの色の液滴が吐出される画素の、前記少なくとも1つの色以外の色の階調値と比較される閾値を引き下げる引下手段を含む請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記吐出データ作成手段は、ドット集中型のディザ行列を用いて量子化を行なう請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記処理液データ作成手段は、前記複数の色の各々の階調値の総和が所定値に満たない場合は、前記処理液が所定量吐出されるように前記処理液データを作成する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像処理装置と、
前記吐出データ作成手段により作成された前記吐出データに基づいて、記録媒体に前記複数の色の各々の液滴を吐出する第1の吐出手段と、
前記処理液データ作成手段により作成された前記処理液データに基づいて前記画像媒体に前記処理液を吐出する第2の吐出手段と、
を備えた画像記録装置。
【請求項6】
コンピュータに、
各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成するステップと、
前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成する吐出データ作成手段と、
前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成する処理液データ作成手段と、
を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記吐出データ作成手段は、誤差拡散法によって量子化を行なうと共に、少なくとも1つの色の液滴が吐出される画素の、前記少なくとも1つの色以外の色の階調値と比較される閾値を引き下げる引下手段を含む請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記吐出データ作成手段は、ドット集中型のディザ行列を用いて量子化を行なう請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記処理液データ作成手段は、前記複数の色の各々の階調値の総和が所定値に満たない場合は、前記処理液が所定量吐出されるように前記処理液データを作成する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像処理装置と、
前記吐出データ作成手段により作成された前記吐出データに基づいて、記録媒体に前記複数の色の各々の液滴を吐出する第1の吐出手段と、
前記処理液データ作成手段により作成された前記処理液データに基づいて前記画像媒体に前記処理液を吐出する第2の吐出手段と、
を備えた画像記録装置。
【請求項6】
コンピュータに、
各画素の複数の異なる色の各々の階調値を、複数の液滴が重なって吐出されるように量子化して、前記複数の異なる色の各々の液滴を吐出するための吐出データを作成するステップと、
前記各色の吐出データに基づいて、前記複数の色の各々の階調値の総和に対する吐出された液滴に混合されることで色材を凝集する処理液が吐出される量の比が、前記総和が大きくなるに従って小さくなるように前記処理液を吐出するための処理液データを作成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−159116(P2009−159116A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333024(P2007−333024)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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