説明

画像処理装置、記録装置、及び画像処理装置の制御方法

【課題】PCI Expressアーキテクチュアを採用した記録装置において、ルートコンプレックスの消費電力が大きい場合でも消費電力の削減を実現することである。
【解決手段】ルートコンプレックスとエンドポイントの切替が可能なコントローラとルートコンプレックスであるアクセラレータコントローラを有した記録装置において、次のような処理をする。即ち、消費電力モード時にアクセラレータコントローラの電源をOFFに、コントローラをルートコンプレックスに設定する。これにより、低消費電力のモード時における消費電力の大幅な低減を実現し、低消費電力のモードからの復帰シーケンスの実行を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置、記録装置、及び画像処理装置の制御方法に関し、特に、画像データを転送するデータ転送システムにおける画像処理装置、記録装置、及び画像処理装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速シリアルインタフェースとして、PCIバス方式の後継規格に当るPCI Express(登録商標)なるインタフェースが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。シリアルバスであるPCI Expressは、パラレルバスであるPCIに比べて信号数が少ないため、ハードウェアのコストを削減する効果がある。例えば、ボード上の信号線の数を削減でき、基板面積やコネクタを小さくすることができる。また、同時にPCIの2倍以上のバンド幅を提供することができるため、高速かつ高性能化の要求を満たすことができる。
【0003】
また、PCI Expressはポイント−ツウ−ポイント・コネクションであるため、システム構成の拡張はスイッチがポートの拡張を行い、そしてパケットの転送を行うことで実現できる。
【0004】
図13はPCI Expressを用いたデータ転送システムの例を示すブロック図である。
【0005】
図13に示すように、このシステムは、CPU200、ルートコンプレックス201、RAM202、スイッチ204、エンドポイントデバイス206〜207で構成されている。ルートコンプレックス201はPCI Express階層の最上層であり、ここを介してCPU200やRAM202と接続され、またスイッチ204を介してエンドポイントデ206〜207と接続される。ルートコンプレックス201はコンピュータシステムではGMCH(Graphics Memory Controller Hub)が含まれる。また、エンドポイントデバイス206〜207はイーサネット(登録商標)コントローラ等のインタフェースコントローラデバイスやHDDコントローラ等が想定される。
【0006】
PCI Expressのルートコンプレックス側をアップストリーム、エンドポイント側をダウンストリームと呼ぶ。そして、双方からPCI Expressのプロトコルに従って初期化の送受信を行うことでリンクの確立が行われる。スイッチ204のポート204aはルートコンプレックス201と接続されるポートであるためアップストリームポート、スイッチ204のポート204b、204cはエンドポイントデバイス206〜207と接続されるためダウンストリームポートと呼ばれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“PCI Express入門講座”、電波新聞社、2007年4月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図14は図13に示した構成のエンドポイント207がCPUとメモリコントローラ、その他の処理機能を有したSOC208に変更された場合のシステム構成を示すブロックである。コンピュータ等で使用される一般的なCPUやルートコンプレックスは性能に対するコストパフォーマンスが高く、使用可能な標準的なライブラリが豊富であるので、開発期間の短縮が期待できる一方、消費電力が高いという傾向がある。
【0009】
そこで、システムを低消費電力モードで使用する時には、SOC208より消費電力が大きいCPU200やルートコンプレックス201、RAM202への電力供給を停止させる。そして、CPUを内蔵したSOC208で低消費電力モード時のシステム制御が行えると消費電力を大幅に低減できる。
【0010】
しかしながら、PCI Expressを用いたシステムでは、ルートコンプレックスデバイスが無いとコンフィグレーションアクセスが出来なくなり、電力管理や初期化が行えないため低消費電力モードへ移行できないという問題がある。
【0011】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、PCI Expressを用いても電力消費を削減可能な画像処理装置、記録装置、及び画像処理装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の画像処理装置は次のような構成を有する。
【0013】
即ち、PCI Expressのバスを有する画像処理装置であって、前記画像処理装置の制御と第1のデータ処理とを行う第1コントローラと、 電力供給を受けるとルートコンプレックスとして起動し、第2のデータ処理を行う第2コントローラと、前記第2コントローラへの電力供給を制御する電源制御手段と、前記電源制御手段によって前記第2コントローラへの電力供給が停止されると前記第1コントローラをルートコンプレックスに設定し、前記第2コントローラへの電力供給が停止された状態において前記電源制御手段によって前記第2コントローラへの電力供給が開始されると前記第1コントローラをエンドコンプレックスに設定する設定手段と、前記第1コントローラがルートコンプレックスとして動作している場合にホストから入力されたデータを前記第1コントローラへ転送し、前記第2コントローラがルートコンプレックスとして動作している場合に前記データを前記第2コントローラへ転送する転送手段とを有することを特徴とする。
【0014】
また本発明を他の側面から見れば、上記構成の画像処理装置を有し、前記第1コントローラと前記第2コントローラにより処理されたデータに基づいて記録媒体に記録を行うことを特徴とする記録装置を備える。
【0015】
さらに本発明を他の側面から見れば、画像処理装置の制御方法であって、前記画像処理装置は、PCI Expressのバスと、前記画像処理装置の制御と第1のデータ処理とを行う第1コントローラと、電力供給を受けるとルートコンプレックスとして起動し、第2のデータ処理を行う第2コントローラと、前記第2コントローラへの電力供給を制御する電源制御手段とを有しており、前記制御方法は、ホストから受信したデータを監視する監視工程と、前記監視工程において所定の内容のデータを一定時間、受信しなければ、前記電源制御手段へ前記第2コントローラへの電力供給が停止の指示と、前記第1コントローラをルートコンプレックスとして設定とを行う工程と、前記指示と設定とを行う工程の後、前記監視工程において所定の内容のデータを受信すれば、前記電源制御手段へ前記第2コントローラへの電力供給の開始の指示と、前記第1コントローラをエンドコンプレックスとして設定とを行う工程とを有することを特徴とする画像処理装置の制御方法を備える。
【発明の効果】
【0016】
従って本発明によれば、PCI Expressアーキテクチャを制御構成に採用した記録装置でも低消費電力のモード時における消費電力の大幅な低減を実現し、低消費電力のモードからの復帰シーケンスの実行を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の主要機構部分を示す斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】PCI Express で2つのコンポーネントを接続している様子とPCI Expressのレイヤ構造を示す図である。
【図4】トランザクション層で生成されたTLP構造がデータリンク層と物理層を通過して転送されるまでの間に修正される様子を示す図である。
【図5】LTSSMのステート図である。
【図6】デバイス電力状態(D状態)とリンク電力状態(L状態)との関係を示す図である。
【図7】アップストリームであるルートコンプレックスからダウンストリームであるエンドポイントをD3hotのデバイス電力状態に設定する手順を示す図である。
【図8】消費電力モードのステート図を示している。
【図9】通常モードからSLEEPモードへの移行処理を示すフローチャートである。
【図10】SLEEPモードから通常モードへの移行処理を示すフローチャートである。
【図11】SLEEPモードからDEEP SLEEPモードへの移行処理を示すフローチャートである。
【図12】DEEP SLEEPモードからSLEEP応答モードへの移行処理を示すフローチャートである。
【図13】PCI Expressアーキテクチャの構成例を示す概念ブロック図ある。
【図14】PCI Expressアーキテクチャの構成例を示す概念ブロック図ある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、以下の実施例で開示する構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0019】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0020】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0021】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0022】
またさらに、「記録素子」(「ノズル」という場合もある)とは、特にことわらない限りインク吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0023】
<記録装置の説明(図1〜図2)>
図1は本発明の代表的な実施例であるA0やB0サイズの記録媒体を用いるインクジェット記録装置(以下、記録装置)の外観斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示した記録装置のアッパカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【0024】
図1(a)に示されるように、記録装置2の前面に手差し挿入口88が設けられ、その下部に前面へ開閉可能なロール紙カセット89が設けられており、記録紙等の記録媒体は手差し挿入口88又はロール紙カセット89から記録装置内部へと供給される。記録装置2は、2個の脚部93に支持された装置本体94、排紙された記録媒体を積載するスタッカ90、内部が透視可能な透明で開閉可能なアッパカバー91を備えている。また、装置本体94の右側には、操作パネル12、インク供給ユニット及びインクタンクが配設されている。
【0025】
図1(b)に示されているように、記録装置2はさらに、記録媒体を矢印B方向(副走査方向)に搬送するための搬送ローラ70と、記録媒体の幅方向(矢印A方向、主走査方向)に往復移動可能に案内支持されたキャリッジ4とを備えている。記録装置2はさらに、キャリッジ4を矢印A方向に往復移動させるためのキャリッジモータ(不図示)とキャリッジベルト(以下、ベルト)270と、キャリッジ4に装着された記録ヘッド11とを備えている。またさらに、インクを供給するとともに記録ヘッド11の吐出口の目詰まりなどによるインク吐出不良を解消させるための吸引式インク回復ユニット9も備えられている。操作パネル12にはユーザ指示用の入力キー5も備える。
【0026】
この記録装置の場合、キャリッジ4には、記録媒体にカラー記録を行うために、4つのカラーインクに対応して4つのヘッドからなるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)11が装着されている。即ち、記録ヘッド11は、例えば、K(ブラック)インクを吐出するKヘッド、C(シアン)インクを吐出するCヘッド、M(マゼンタ)インクを吐出するMヘッド、Y(イエロ)インクを吐出するYヘッドで構成されている。
【0027】
以上の構成で記録媒体に記録を行う場合、搬送ローラ70によって記録媒体を所定の記録開始位置まで搬送する。その後、キャリッジ4により記録ヘッド11を主走査方向に走査させる動作と、搬送ローラ70により記録媒体を副走査方向に搬送させる動作とを繰り返すことにより、記録媒体全体に対する記録が行われる。
【0028】
即ち、ベルト270およびキャリッジモータ(不図示)によってキャリッジ4が図1(b)に示された矢印A方向に移動することにより、記録媒体に記録が行われる。キャリッジ4が走査される前の位置(ホームポジション)に戻されると、搬送ローラによって記録媒体が副走査方向(図1(b)に示された矢印B方向)に搬送され、その後、再び図1(b)の矢印A方向にキャリッジを走査する。このようにして、記録媒体に対する画像や文字等の記録が行なわれる。さらに上記の動作を繰り返し、記録媒体の1枚分の記録が終了すると、その記録媒体はスタッカ90内に排紙され、1枚分の記録が完了する。
【0029】
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0030】
記録装置2は、図2に示すように、アクセラレータ120とプリンタコントローラ121(第1コントローラ)とプリンタエンジン122とこれら各部への電力供給を制御する電源制御部111とから構成される。この記録装置はPCI Expressアーキテクチャを採用した制御構成を用いている。
【0031】
装置全体を制御するプリンタコントローラ121はLANコントローラ104、スイッチ103、コントローラ105で構成されている。LANコントローラ104(インタフェース回路)はLANインタフェースを介して外部機器との通信を可能にするPCI Expressのエンドポイントデバイスである。LANコントローラ104は、別の表現をするならば、外部機器からデータを受信し、そのデータをコントローラ105とアクセラレータコントローラ101へ転送する転送回路であるとも言える。スイッチ103は各処理ノードであるPCI Expressデバイスを接続するPCI Expressスイッチである。各PCI Expressデバイスと接続される伝送路は次の3つである。即ち、アクセラレータコントローラ101とスイッチ103との間の伝送路117、LANコントローラ104とスイッチ103との間の伝送路118、コントローラ105とスイッチ103との間の伝送119である。
【0032】
スイッチ103のポート103aはルートコンプレックスであるアクセラレータコントローラ101と接続しているのでアップストリームポートとして設定される。スイッチ103のポート103bと103cとは夫々、エンドポイントであるLANコントローラ104とコントローラ105に接続しているためダウンストリームポートとして設定される。スイッチ103の設定はコントローラ105からシリアルバス(SMbus)116を介して行うことができる。
【0033】
コントローラ105はCPU、PCI Expressのエンドポイント、RAM、ROM、画像処理部の機能を備え、スイッチ103とエンジンコントローラ107に接続しており、画像処理とプリンタコントローラの制御を行う。コントローラ105はCPUを内蔵したSOC(system on chip)と、RAMとROMが別のデバイスとして構成されていてもよく、その場合はSOCがPCI Expressのエンドポイントとなる。また、コントローラ105のPCI Express部はレジスタを有し、そのレジスタの設定に基づいてルートコンプレックスとエンドポイントの切替が可能である。
【0034】
アクセラレータ(第2コントローラ)120はアクセラレータコントローラ101で構成される。アクセラレータコントローラ101はCPU、PCI Expressのルートコンプレックス、RAM、ROM、暗号化処理部を備え、スイッチ103と接続している。アクセラレータコントローラ101はMCH(Memory Controller Hub)とCPU、RAM、ROMが別のデバイスとして構成されていてもよい。その場合、MCHがPCI Expressのルートコンプレックスとなる。アクセラレータコントローラ101はコントローラ105に比べてCPU性能やメモリ性能が高く、ソフトウェア制御の比率が高いインタフェース処理と画像処理を実行し、コントローラ105の処理を補助している。アクセラレータコントローラ101の実行する処理をまとめて第2のデータ処理ともいう。
【0035】
プリンタエンジン122はエンジンコントローラ107、記録ヘッド11、モータ109、センサ110などを含み、全体構成は図1に示した通りである。
【0036】
また、電源制御部111はアクセラレータ120とプリンタコントローラ121とプリンタエンジン122など装置各部への電力供給を電力線112、113、114を介して行なう。電源制御部111は、コントローラ105により電源制御線115を介して制御される。
【0037】
LANコントローラ104と電源制御部111には電力線112、113、114とは別に電力が供給されている。そして、LANコントローラ104からのWAKE#信号124はコントローラ105と電源制御部111に接続されている。
【0038】
ここで、記録装置2における記録動作の概要について説明する。
【0039】
図2において、矢印の点線125は記録データの流れを示している。ホストコンピュータ(以下、ホスト)から記録装置2に対して記録データを送信する。ホストと記録装置2はLANケーブルを介して接続され、記録データはLANコントローラ104、スイッチ103を介してアクセラレータコントローラ101へ送られる。アクセラレータコントローラ101では送られた記録データに対して受信処理、復号化処理、ページ記述言語解釈等の処理が行なわれ、その後、記録データはスイッチ103を介してコントローラ105へ送信される。
【0040】
コントローラ105ではアクセラレータコントローラ101から送られた多値のRGB各色成分データを2値のCMYK各色成分データに変換し、エンジンコントローラ107へ転送する。ここで、CMYKはシアン、マゼンダ、イエロ、ブラックインク色に対応している。モータ109は記録ヘッド11を搭載されたキャリッジ4を走査方向(図1の矢印A)に移動させるキャリッジモータや記録媒体をその搬送方向(図1の矢印B)に搬送する搬送モータを総称するものとして表している。エンジンコントローラ107はセンサ110からの情報を用い、キャリッジ4と記録媒体をモータ109により移動させながら2値の記録データを記録ヘッド11に転送して記録媒体に記録を行なう。
【0041】
<PCI Express規格の概要説明>
上述した記録装置まずは高速シリアルバスの一つであるPCI Express(登録商標)を利用する。従って、この実施例の前提としてPCI Express規格の概要について、非特許文献1の記載を参照しつつ説明する。
【0042】
PCI Expressの特徴として以下のような内容がある。即ち、
・point-to-point接続のシリアル通信
・差動低電圧シグナリング
・きめ細かい電力管理
・パケット・ベースのプロトコル
・スイッチ・デバイスによる複数デバイス間の接続
・高いデータ帯域幅、拡張性と柔軟性
・CRCやデータコーディングによるエラー検出
・PCI互換のソフトウェアモデルとアドレススペース
である。
【0043】
図3はPCI Express で2つのコンポーネントを接続している様子とPCI Expressのレイヤ構造を示す図である。
【0044】
物理層では、リンク上の2つのコンポーネント間のリンクを初期化し、データ転送と省電力機能の低レベル動作を管理する。データリンク層は、信頼性の高いデータ転送サービスと、フロー制御および電力のリンク管理をわずかなオーバヘッドで行える通信メカニズムをトランザクション層に提供する。データリンク層で生成および消費されるデータパケットを、データリンク・レイヤ・パケット (DLLP) という。トランザクション層は、ロード/ストア・データ転送メカニズムの実装に使用されるデータパケットを生成および消費し、さらにリンク上の2つのコンポーネント間におけるこれらのパケットのフロー制御を管理する。トランザクション層で生成および消費されるデータパケットを、トランザクション層パケット (TLP) という。
【0045】
図4はトランザクション層で生成されたTLP構造がデータリンク層と物理層を通過して転送されるまでの間に修正される様子を示す図である。
【0046】
図4において、ヘッダはパケットの種類を示す。一部のTLPではヘッダの後にデータが続き、データの後にECRCが付加される場合もある。トランザクション層でヘッダとECRCが付加されたパケットがデータリンク層に渡されるとそこでシーケンス番号とLCRCが付加される。
【0047】
シーケンス番号はすべてのパケットが届いたかどうかを、LCRCはパケットの中身が変わっていないかどうかを、受信側データリンク層で確認するためのものである。最後に、TLPは物理層に渡されて、8ビット単位のバイト・シーケンスから10ビット単位のシンボル・シーケンスに変換され、先頭と末尾にフレーミング・シンボルが付加される。
【0048】
次に、このシンボルシーケンスはリンクを介して別のコンポーネントまで送信され、TLPに付加された情報が送信側とは逆の順番で取り除かれていく。また、電源投入やリセットなどによるリンクの確立時には、物理層においてトレーニングシーケンスと呼ばれる初期化を行い、次にデータリンク層におけるフロー制御の初期化が行われる。
【0049】
図5はLTSSM(Link Training and Status State Machine)のステート図である。このステートマシーンを組み込んだ記録装置はリンク初期化やリンクトレーニング、エラーからの復旧といった状態管理を行う。リンクトレーニングはレーン数とリンクの確立を目的に行い。接続デバイスのDetectステートから始まり、リンクナンバ、レーン数、レーンナンバーを決定する。
【0050】
トレーニング・シーケンスは物理層間の信号であるオーダードセットの転送を行い、リンク幅、リンクのデータレート等がソフトを介さずに自動的に決定する。例えば、トレーニング・シーケンスは、“Detect”ステートから開始する。
【0051】
リンクトレーニングが正常に終了するとフロー制御の初期化が自動的に開始される。フロー制御の初期化ではリンク間のクレジットを通知し合い、互いのバッファ容量を認識する。そして、このシーケンスが終了するとリンクアップ状態となり、TLPの通信が可能となる。
【0052】
以下、各ステートについて略述する。
【0053】
・“Detect”ステート
“Detect”ステートでは遠端側のレシーバ検出を行う。レシーバが検出された場合は“Polling”ステートに遷移する。
【0054】
・“Polling”ステート
オーダードセットを送受信し、ビット同期,シンボル同期を確立する。またレーン極性の検出が行われて、データレートが確定する。
【0055】
・“Configuration”ステート
オーダードセットを送受信することによりリンクのレーン構成を確立する。レーンの停止(disable)、ループバックが指示された場合は、そのステート(“Disabled”ステート)に遷移する。正常な場合は“L0”ステートに遷移する。
【0056】
・“Recovery”ステート
リンクの復旧を行う。
【0057】
・“L0”ステート
通常のオペレーション状態で、制御パケットやデータパケットを送受信することができる。すべての電力管理ステート(“L0s”/“L1”/“L2”)は“L0”ステートから遷移する。
【0058】
・“L0s”ステート
消費電力を削減するためにあり、“Recovery”ステートを経由することなく短時間で“L0”ステートとの間を遷移することが可能である。
【0059】
・“L1”ステート
“L0s”ステートよりも消費電力を削減することが可能であるが、L0ステートへ復帰するためには“Recovery”ステートを経由する必要がある。“L1”ステートへの遷移はデータリンク層からの指示とオーダードセットにより行われる。
【0060】
・“L2”ステート
“L1”ステートよりもさらに消費電力を削減することが可能である。トランスミッタやレシーバは機能を停止し、主電源やクロックも保証されない状態であるので、“L0”ステートへの遷移は“Detect”ステートから開始することになる。“L2”ステートへの遷移はデータリンク層からの指示とオーダードセットにより行われる。
【0061】
・“Disabled”ステート
リンクが使用不可能に設定された場合で、上位層から停止を指示された場合やオーダードセットで“Link Disabled”が設定された場合に遷移する。
【0062】
・“Loopback”ステート
試験や障害切り分けのためのものである。
【0063】
図6はデバイス電力状態(D状態)とリンク電力状態(L状態)との関係を示す図である。図6に示すように、コンポーネントの電力状態を完全ON状態から完全OFF状態までの数段階(D0〜D3cold)に分けて制御することがPCI Express規格で定義されている。以下、各状態について略述する。
【0064】
(D0状態)
デバイスは完全にアクティブで応答可能。これに対応するリンク電力状態はL0、L0sまたはL1である。
【0065】
(D1,D2状態)
D0とD3coldとの間の省電力効果が期待でき、リンク電力状態はL1である。
【0066】
(D3hot状態)
主電源は切らずに単にオフしただけの状態である。CLKREQ#信号を用いたクロック停止がサポートされリンク電力状態はL1である。TLPはコンフィグレーションとメッセージのみ受け付け可能である。
【0067】
(D3cold状態)
主電源をOFFした状態である。ウェイク可能ロジックをサポートしているデバイスに補助電源がつながれている場合、リンク電力状態はL2に対応する。ウェイク可能ロジックをサポートするには、サイドバンドWAKE#の使用が推奨されている。
【0068】
図7はアップストリームであるルートコンプレックスからダウンストリームであるエンドポイントをD3hotのデバイス電力状態に設定する手順を示す図である。
【0069】
ルートコンプレックスからPowerStateビットをD3hotに設定したコンフィグレーション・ライト・リクエストのTLPを発行する(701)。
【0070】
エンドポイントは前記コンフィグレーション・ライト・リクエストのTLPを受信し、コンフィグレーションレジスタのPowerStateビットをD3hotに設定する(702)。
【0071】
エンドポイントはL1への移行を開始し、コンフィグレーション・ライト・リクエストに対する応答パケットを送信し、新たなTLP送信をブロックする(703)。
【0072】
エンドポイントは最後のTLP応答を待ってから、電力制御のDLLPであるPM_Enter_L1をルートコンプレックスへ送信する(704)。
【0073】
PM_Enter_L1のDLLPを受信したルートコンプレックスは、新たなTLP送信をブロックし、最後のTLP応答を待ってから、電力制御のDLLPであるPM_Request_Ackをエンドポイントへ送信する(705)。
【0074】
PM_Request_AckのDLLPを受信したエンドポイントはTLP,DLLPを使用不可にして、Electrical Idleオーダードセットを送信する(706)。
【0075】
Electrical Idleオーダードセットを受信したルートコンプレックスは、TLP、DLLPを使用不可にして、Electrical Idle オーダードセットを送信する(707)。
【0076】
このようにしてエンドポイントのデバイス電力状態 はD3hotとリンク電力状態はL1に移行する。
【0077】
次にエンドポイントが前記のようなD3hotの状態からD0の状態に遷移する場合について説明する。
【0078】
まずエンドポイントにD3hotからD0の状態に遷移する条件が発生する。
エンドポイントからオーダードセットを発信し、ルートコンプレックス側も対応するオーダードセットを発信することで図5のようにL状態をL1ステートからRecoveryステートを経由して、L0ステートにする。エンドポイントからルートコンプレックスへパワーマネジメントに関するメッセージ(TLP)を送信する。ルートコンプレックスからエンドポイントへPowerStateビットをD0に設定したコンフィグレーション・ライト・リクエストのTLPを発行することでエンドポイントはD0の状態になる。
【0079】
図8は消費電力モードのステート図を示している。
【0080】
図8に示すように、消費電力モードには通常モード(第1のモード)、SLEEP応答モード、SLEEPモード(第2のモード)、DEEP SLEEPモード(第3のモード)、電源OFFの電力状態がある。AC電源ケーブルから記録装置2に電力が供給された状態で、操作パネル12に設けられたパワースイッチをONにすると電源OFFから通常モードへ移行する。パワースイッチをOFFにすると通常モードから電源OFFへ移行する。このパワースイッチをONにすると、電源制御部111は、コントローラ105、アクセラコントローラ101への電力供給を行う。
【0081】
<動作モードの変更>
(1)通常モード→SLEEP応答モード→SLEEPモード(図9)
フローチャートを用いて通常モードからSLEEP応答モードを経由してSLEEPモードに入る移行時シーケンスを説明する。図9は通常モードからSLEEP応答モードを経由してSLEEPモードに入るシーケンスを示すフローチャートである。
【0082】
ステップS901では、記録装置2に設定が行われている一定の時間内に印刷データやARPパケット等の応答すべきパケットの受信や記録装置2における操作が無い場合、SLEEPモードへの移行条件を満たしたと判断する。そして、記録装置2はSLEEPモードに入る処理を開始する。
【0083】
次に、ステップS902では、アクセラレータコントローラ101からコントローラ105へ、イーサネット(登録商標)のIPアドレス等やアドレステーブルの情報を転送する。ステップS903では、アクセラレータコントローラ101においてPCI Expressの伝送路117のリンク状態をdisableに設定する。スイッチ103のアップストリームポートがdisableに移行することで、ダウンストリームポートもdisableに移行する。従ってPCI Expressの伝送路118、119のリンク状態もdisableに移行する。
【0084】
ステップS904では、アクセラレータ120、プリンタエンジン122において電源OFFシーケンスを実行する。そして、コントローラ105から電源制御線115を介して電源制御部111の制御を行い、電力線112、114からの電力供給を止めることでアクセラレータ120とプリンタエンジン122は電源OFFの状態となる。
【0085】
ステップS905では、コントローラ105は自身のPCI Express部のレジスタに対して、ルートコンプレックスへの設定を行う。さらに、ステップS906では、コントローラ105からスイッチ103に対して、シリアルバス116を介してスイッチ103のポート103cの設定をアップストリームポート、ポート103aの設定をダウンストリームポートに変更する。また、スイッチ103のアドレスルーティングの設定を変更することで、LANコントローラ104からのTLPをコントローラ105で受信可能にする。
【0086】
ステップS907では、コントローラ105がルートコンプレックスとなり、トレーニングシーケンスとフロー制御の初期化を行うことでPCI Expressの伝送路118、119はリンクアップが行われ、リンク状態はL0となる。この状態で、一旦SLEEP応答モードとなる。
【0087】
ステップS908では、図8で説明したようにコントローラ105からLANコントローラ104に対してデバイス状態をD3hotにする制御を行う。そして、伝送路118はLANコントローラ104とスイッチ103との間の処理により、リンク状態はL1へ移行する。そして、コントローラ105からスイッチ103へD3hotにする制御を行うことでスイッチ103はデバイス状態をD3hotとなり、伝送路119はL1へ移行する。この状態でSLEEPモードとなる。
【0088】
このようにSLEEPモードに移行することで、記録装置のアクセラレータとプリンタエンジンには電力が供給されなくなり、記録装置の消費電力を削減することができる。
【0089】
(2)SLEEPモード→SLLEP応答モード→通常モードと
SLEEPモード→SLLEP応答モード→SLEEPモード(図10)
SLEEPモード時におけるホストインタフェースへの応答処理と印刷ジョブへの対応について、フローチャートを参照して説明する。図10はSLEEPモードからの復帰時におけるホストインタフェースへの応答処理を示すフローチャートである。
【0090】
まず、ステップS1001で、伝送路118、119はL1であり、スイッチ103とLANコントローラ104のデバイス状態はD3hotである。このとき、LANコントローラは自機宛てまたはWAKEUPのパケットであればD3hotから復帰する設定がされているとする。ここで、ホストからLANパケットをLANコントローラ104で受信すると、そのパケットが自機宛て、もしくはWAKEUPパケットであれば、処理はステップS1002へ移行し、そうでなければ、そのパケットを無視し、該当するパケットを待ち合わせる。
【0091】
ステップS1002では、LANコントローラ104からの要求により伝送路118のリンク状態がL1からL0へ、スイッチ103からの要求により伝送路119のリンク状態がL1からL0へ移行する。そして、LANコントローラ104からコントローラ105へ電力管理に関するメッセージTLPであるPMEメッセージを送信する。
【0092】
ステップS1003では、PMEメッセージを受信したコントローラ105はコンフィグレーションアクセスによりLANコントローラ104のデバイス状態をD0へ移行する。この状態で動作モードはSLEEP応答モードに移行する。
【0093】
ステップS1004において、コントローラ105はLANコントローラ104で受信したパケットに含まれるデータやコマンドの内容を確認する。ここで、パケットの内容が印刷ジョブであれば、処理はステップS1008へ移行し、印刷ジョブ以外であればステップS1005へ移行する。なお、図2の点線の矢印126はSLEEP応答モード時のLANパケットのデータの流れを示している。
【0094】
ステップS1004で確認したパケットに含まれるデータやコマンドの内容が印刷ジョブ以外(アドレス解決を行うARPパケットやLANに接続された通信機器の監視・制御を行うSNMPパケット等)の場合、処理はステップS1005に進む。そして、ステップS1005においてコントローラ105は応答パケットを返信する。次に、ステップS1006では、一定の時間内にLANパケットの受信や記録装置2における操作があるかどうか、即ち、SLEEPモードに戻る条件が満たされたかどうかを判断する。この条件が満たされた場合、記録装置2は処理はステップS1007に進み、SLEEPモードに入る処理を開始する。ステップS1007では、ステップS907やステップS908と同様に、LANコントローラ104をデバイス状態はD3hotへ、伝送路118、119はリンク状態をL1へ移行させる。その後、処理はステップS1001に戻る。
【0095】
ステップS1004で確認したパケットに含まれるデータの内容が印刷ジョブの場合、処理はステップS1008に進む。そして、ステップS1008でコントローラ105はLANコントローラ104のデバイス状態をD3coldへ、PCI Expressの伝送路119のリンク状態をdisableに設定する。スイッチ103のアップストリームポートがdisableに移行することで、ダウンストリームポートもdisableに移行する。従って、PCI Expressの伝送路118のリンク状態もdisableに移行する。
【0096】
ステップS1009では、コントローラ105からスイッチ103に対して、シリアルバス116を介して設定をスイッチ103のポート103aの設定をアップストリームポート、ポート103b、103cの設定をダウンストリームポートに変更する。また、スイッチ103のアドレスルーティングの設定を変更することで、LANコントローラ104からのTLPをアクセラレータ制御部101で受信可能にする。
【0097】
ステップS1010では、コントローラ105は自身のPCI Express部のレジスタに対してエンドポイントの設定を行う。この設定により、コントローラ105は、エンドポイントとなる。さらにステップS1011では、コントローラ105から電源制御線115を介して電源制御部111の制御を行うことで電力線112、114による電力供給が開始され、アクセラレータ120とプリンタエンジン122が電源ONとなる。そして、アクセラレータ120とプリンタエンジン122はそれぞれ、初期化シーケンスを実行する。アクセラレータ120は、電源ONのために初期化することで、ルートコンプレックスとなる。
【0098】
ステップS1012では、アクセラレータ120は電源立ち上げ時と同様に伝送路117、118、119のリンク状態をL0へ移行させる。さらに、ステップS1013ではコントローラ105からアクセラレータ制御部101へ、イーサネット(登録商標)のIPアドレス等やアドレステーブルの情報と受信パケットを転送する。ステップS1014では、アクセラレータ120はLANコントローラ104に対してコンフィギュレーションアクセスを行い初期化を行うことでLANコントローラ104のデバイス状態はD0となる。そして、ステップS1015ではアクセラレータコントローラ101にて印刷ジョブのLANパケットの処理を行い印刷処理を行う。
【0099】
このように印刷ジョブを受信したときや応答すべきパケットを受信したときにはSLEEPモードから速やかに通常モードに復帰できる。また、一定時間、印刷ジョブや応答すべきパケットがない場合には、再び、SLEEPモードに移行して消費電力を削減することができる。
【0100】
以上をまとめると、プリンタコントローラ121は、電源制御部111によってアクセラレータ120への電力供給が停止されるとコントローラ105をルートコンプレックスに設定する。また、アクセラレータ120への電力供給が停止された状態において、電源制御部111によってアクセラレータ120への電力供給が開始されるとコントローラ105をエンドコンプレックスに設定する設定手段を備えている。
【0101】
また、プリンタコントローラ121は、コントローラ105がルートコンプレックスとして動作している場合にホストから入力されたデータをコントローラ105へ転送する。また、アクセラコントローラ101がルートコンプレックスとして動作している場合にホストから入力されたデータをアクセラコントローラ101へ転送する。このような転送手段を備えている。このような設定処理や転送処理をまとめて第1のデータ処理ともいう。
【0102】
(3)SLEEPモード→DEEP SLEEPモード(図11)
図11はSLEEPモードからDEEP SLEEPモードに入るシーケンスを示すフローチャートである。
【0103】
ステップS1201では、SLEEPモード時に、一定の時間内に自機宛てまたはWAKEUPのパケットの受信や記録装置2における操作がないかどうか、即ち、DEEP SLEEPモードに移行できる条件を満足したかどうかを調べる。ここで、その条件が満たされたならば、処理はステップS1202に進み、記録装置2はDEEP SLEEPモードに入る処理を開始する。
【0104】
ステップS1202では、PCI Expressの伝送路118、119のリンク状態をL0に移行する。ステップS1203では、コントローラ105からLANコントローラ104に対してデバイス状態をD3coldにする制御を行う。
【0105】
ステップS1204では、コントローラ105からスイッチ103に対して、DLLPパケットであるPM_Enter_L2を発行し、スイッチ103がDLLPパケットの応答パケットであるPM_Request_Ackを返信する。これにより、PCI Expressの伝送路119のリンク状態がL2に移行する。同様にスイッチ103からLANコントローラ104に対して前記と同様の処理を行うことでPCI Expressの伝送路118のリンク状態がL2に移行する。
【0106】
ステップS1205では、コントローラ105から電源制御線115を介して電源制御部111の制御を行い、コントローラ121への電源供給を止める。この状態で記録装置2はDEEP SLEEPモードとなる。このときLANコントローラ104の一部はコントローラ121への電力線113とは分離された電源で供給されており、DEEP SLEEPモード時にLANパケットの受信が可能となっている。
【0107】
このように、LANパケット受信に対応するためのLANコントローラの一部を除くコントローラ各部への電力供給は停止されるので、DEEP SLEEPモードではSLEEPモードと比べてさらに一層の消費電力の削減を実現する。DEEP SLEEPモードでは電源制御部111も電力が供給されている。
【0108】
(4)DEEP SLEEPモード→SLEEP応答モード(図12)
図12はDEEP SLEEPモード時におけるホストインタフェースへの応答処理と印刷ジョブへの対応を示すフローチャートである。
【0109】
まず、伝送路119はL2であり、スイッチ103とLANコントローラ104のデバイス状態はD3coldである。このとき、LANコントローラ104は自機宛てまたはWAKEUPのパケットであればD3coldから復帰する設定がされているとする。そのような環境下でステップS1301は、ホストからLANパケットの受信を待ち合わせる。ここで、LANコントローラ104が受信したパケットが、自機宛て、もしくはWAKEUPパケットであれば処理はステップS1302へ移行し、そうでなければそのパケットを無視し、該当するパケットを待ち合わせる。
【0110】
ステップS1302では、LANコントローラ104からコントローラ105と電源制御部111へPCI Express信号とは別の信号であるWAKE#信号124がアサートされる。なお、上述のように、DEEP SLEEPモードでも電源制御部111はLANコントローラ104の一部と同様にDEEP SLEEPモード時に電力供給を受けている。ステップS1303では、WAKE#信号124がアサートされると電源制御部111はコントローラ121へ電力線113を介して電力を供給する。WAKE#信号124が転送されるラインは電力線とは区別して信号線とも呼ばれる。
【0111】
ステップS1304では、コントローラ121は初期化シーケンスを実行し、コントローラ105はWAKE#信号124がアサートされているとDEEP SLEEPモードからの復帰であることを認識する。そして、コントローラ105はルートコンプレックスとして起動する。この状態で記録装置2はSLEEP応答モードに移行する。
【0112】
なお、WAKE#信号124がアサートされていなければ、コントローラ105はエンドポイントとして起動する。例えば、操作パネル12に設けられたパワースイッチがオンされた場合には、WAKE#信号124がアサートされない。補足すると、DEEP SLEEPモードにおいて、パワースイッチがオンされた場合には、WAKE#信号124がアサートされない。従って、コントローラ105はエンドポイントとして起動する。
【0113】
なお、実際にはDEEP SLEEPモードからSLEEP応答モードへの復帰は図10のステップS1002から同じシーケンスを実行することでDEEP SLEEPモードからSLEEP応答モードへ移行する。このとき、ステップS1301で受信したパケットが印刷ジョブであれば、図10のステップS1008からの同じシーケンスを実行することで印刷ジョブに対応することができる。
【0114】
従って以上説明した実施例に従えば、PCI Expressアーキテクチャを採用した記録装置でも低消費電力モードへの移行とそこからの復帰を実現することができる。特に、図1に図示したような大きな記録媒体に記録を行う記録装置では消費電力が大きいので、この実施例のような構成を採用することは電力削減の点から大きな効果がある。
【0115】
なお、前述の実施例では、印刷ジョブを受信した場合に、SLEEPモードから通常モードに移行する制御構成であった。しかし、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。例えば、パケットに含まれるデータの内容が多値のRGBのデータであると判断した場合には、アクセラコントローラ101への電力供給は行わない。パケットに含まれるデータの内容がページ記述言語のデータであると判断した場合には、アクセラコントローラ101への電力供給を行う。なぜなら、データの内容が多値のRGBのデータであれば、コントローラ105はデータ処理を実行できるからである。この場合には、コントローラ105はルートコンプレックスとして動作を行い、多値のRGBのデータを2値のCMYKのデータに変換を行い、エンジンコントローラ107へ転送する。
【0116】
また、前述の実施例では、記録装置としてインクジェット記録方式を採用し、A0やB0の大きな記録媒体に記録を行うカラープリンタとしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、レーザビームプリンタ等の他の記録方式による記録装置や複写装置等に置き換えることも可能であるし、A4やA3の記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置を用いても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCI Expressのバスを有する画像処理装置であって、
前記画像処理装置の制御と第1のデータ処理とを行う第1コントローラと、
電力供給を受けるとルートコンプレックスとして起動し、第2のデータ処理を行う第2コントローラと、
前記第2コントローラへの電力供給を制御する電源制御手段と、
前記電源制御手段によって前記第2コントローラへの電力供給が停止されると前記第1コントローラをルートコンプレックスに設定し、前記第2コントローラへの電力供給が停止された状態において前記電源制御手段によって前記第2コントローラへの電力供給が開始されると前記第1コントローラをエンドコンプレックスに設定する設定手段と、
前記第1コントローラがルートコンプレックスとして動作している場合にホストから入力されたデータを前記第1コントローラへ転送し、前記第2コントローラがルートコンプレックスとして動作している場合に前記データを前記第2コントローラへ転送する転送手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記転送手段は、前記データを含むパケットを受信するインタフェース手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記データの内容を監視し、所定の内容のデータを一定時間、受信しなければ、前記電源制御手段へ前記第2コントローラへの電力供給が停止の指示を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記データの内容を監視し、所定の内容のデータを受信すると、前記電源制御手段へ前記第2コントローラへの電力供給の開始の指示を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理装置は、前記転送手段を、前記第1コントローラと前記第2コントローラと前記PCI Expressのバスを介して接続するスイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理装置は、前記第1コントローラ、第2コントローラへの電力供給を指示するパワースイッチの操作がなされた場合には、前記設定手段は前記第1コントローラをエンドコンプレックスに設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記PCI Expressのバスと異なる信号線を介して前記スイッチの設定を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置を有し、前記第1コントローラと前記第2コントローラにより処理されたデータに基づいて記録媒体に記録を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
画像処理装置の制御方法であって、
前記画像処理装置は、PCI Expressのバスと、前記画像処理装置の制御と第1のデータ処理とを行う第1コントローラと、電力供給を受けるとルートコンプレックスとして起動し、第2のデータ処理を行う第2コントローラと、前記第2コントローラへの電力供給を制御する電源制御手段とを有しており、
前記制御方法は、
ホストから受信したデータを監視する監視工程と、
前記監視工程において所定の内容のデータを一定時間、受信しなければ、前記電源制御手段へ前記第2コントローラへの電力供給が停止の指示と、前記第1コントローラをルートコンプレックスとして設定とを行う工程と、
前記指示と設定とを行う工程の後、前記監視工程において所定の内容のデータを受信すれば、前記電源制御手段へ前記第2コントローラへの電力供給の開始の指示と、前記第1コントローラをエンドコンプレックスとして設定とを行う工程とを有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−176611(P2012−176611A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17273(P2012−17273)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】