画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法
【課題】複数回の画像形成を要する画像データの画像を媒体に形成できるようにする。
【解決手段】汎用色CMYKの色値で画像が表現された多層データを取得し(ステップS210)、多層データにおける汎用色CMYKの色値と3つの単層データのそれぞれにおける汎用のインク色cmykのインク量との対応関係を定めた3つの展開用LUTを用いて多層データを3つの単層データ(第1層〜第3層データ)に展開する(S220〜S250)。
【解決手段】汎用色CMYKの色値で画像が表現された多層データを取得し(ステップS210)、多層データにおける汎用色CMYKの色値と3つの単層データのそれぞれにおける汎用のインク色cmykのインク量との対応関係を定めた3つの展開用LUTを用いて多層データを3つの単層データ(第1層〜第3層データ)に展開する(S220〜S250)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用フィルムに印刷によって予め絵柄を付与する際に、成形時に伸長する部分に伸長しない部分よりも濃厚な印刷を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、成形用フィルムに印刷インキで印刷して絵柄を形成する際に、印刷方式がスクリーン印刷方式の場合には濃厚にすべき部分を重ね塗りし、印刷方式がグラビア印刷方式の場合には製版時に所望の部分のエッチングを深くすることによって伸長する部分を伸長しない部分より濃厚にして、成形時に絵柄の濃度が低下するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−104816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、こうした成形用フィルムに印刷するための絵柄をデジタルデータ(画像データ)として印刷に用いることが考えられている。この場合、濃厚にすべき部分(重ね塗りすべき部分)を含むデジタルデータを印刷用のデータにどのように変換するかが課題となる。
【0005】
本発明の画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法は、複数回の画像形成を要する画像データの画像を媒体に形成できるようにすることを主目的とする。
【0006】
本発明の画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理装置であって、
少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける前記必要形成量関連値と、全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶する記憶手段と、
前記多層データを取得する多層データ取得手段と、
前記取得した多層データと前記記憶した展開用対応関係とに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開する展開手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像処理装置では、少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける必要形成量関連値と、全ての単位領域で必要形成量関連値が最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶しておき、多層データを取得し、取得した多層データと記憶しておいた展開用対応関係とに基づいて多層データを複数の単層データに展開する。したがって、展開用対応関係を用いて多層データを複数の単層データに展開するから、各単層データの画像が所定順に重なるよう媒体への複数回の画像形成を行なうことにより、多層データの画像を媒体に形成することができる。ここで、「必要形成量関連値」および「最大形成量関連値」は、画像形成で用いられる形成剤量(例えば、最大形成量関連値に相当する形成剤量を100としたときの量)または画素値(例えば、最大形成量関連値に相当する画素値を100としたきの値)であるものとすることもできる。また、「単位領域」は、ピクセル(画素)であるものとすることもできる。ここで、「形成剤」とは、インク等の着色剤や、透明インク等の透明剤などを意味する。透明剤は、例えば、媒体の光沢や硬度などの表面特性を制御するために用いられる。
【0009】
こうした本発明の画像処理装置において、前記展開用対応関係は、前記多層データにおける画素値と、前記複数の単層データの各々における画像形成で用いられる色または汎用の色の形成剤量と、の対応関係である、ものとすることができる。即ち、多層データにおける必要形成量関連値を画素値とし、単層データにおける必要形成量関連値を画像形成で用いられる色または汎用の色の形成剤量とするのである。こうすれば、展開用対応関係を用いて多層データにおける画素値を複数の単層データの各々における形成剤量に変換することができるから、多層データから複数の単層データへの展開と画素値から形成剤量への変換とを別々に行なうものに比して処理数の低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明の画像処理装置において、前記多層データ取得手段は、汎用の表色系の色の組み合わせで画像が表現された前記多層データを取得する手段である、ものとすることができる。こうすれば、多層データの必要形成量関連値を、少なくとも一つの単位領域で必要形成量関連値が最大形成量関連値を超える点を除いて通常の画像データ(単層データに相当するデータ)と同様のものとすることができるから、多層データにより汎用性を持たせることができる。ここで、「汎用の表色系」は、CMYK表色系,RGB表色系,L*a*b*表色系のいずれかであるものとすることができる。
【0011】
さらに、本発明の画像処理装置において、前記画像データに基づいて画像を前記媒体に形成した後に該媒体を変形してなる成形物のための前記画像データを作成処理する、ものとすることができる。この場合、前記媒体の変形の程度と変形前の色と変形に伴う色変化が反映された変形後の色との対応関係である色対応関係を記憶する色対応関係記憶手段と、前記媒体の各部位における変形の程度を取得する変形程度取得手段と、前記取得した変形の程度と前記記憶した色対応関係とに基づいて前記成形物の画像の色に対する前記媒体の各部位に形成する画像の色を決定する色決定手段と、を備え、前記多層データは、前記色決定手段により前記媒体の各部位に形成する画像の色が決定されたデータである、ものとすることができる。
【0012】
本発明の画像処理システムは、
上述のいずれかの態様の本発明の画像処理装置と、画像形成用の形成剤を用いて前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、を備える画像処理システムであって、
前記画像形成装置は、前記複数の単層データの画像が所定順に重なるよう該単層データの数に相当する回数だけ画像形成を行なう画像形成手段を備える装置である、
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の画像処理システムでは、上述したいずれかの態様の本発明の画像処理装置を備えるから、本発明の画像処理装置が奏する効果、例えば、複数の単層データを用いて複数回の画像形成を行なうことによって多層データの画像を媒体に形成することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【0014】
本発明の画像処理方法は、
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理方法であって、
(a)少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データを取得するステップと、
(b)前記多層データにおける前記必要形成量関連値と全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値との対応関係である展開用対応関係と、前記取得した多層データとに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開するステップと、
を含むことを要旨とする。
【0015】
この本発明の画像処理方法では、少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける必要形成量関連値と、全ての単位領域で必要形成量関連値が最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶しておき、多層データを取得し、取得した多層データと記憶しておいた展開用対応関係とに基づいて多層データを複数の単層データに展開する。したがって、展開用対応関係を用いて多層データを複数の単層データに展開するから、各単層データの画像が所定順に重なるよう媒体への複数回の画像形成を行なうことにより、多層データの画像を媒体に形成することができる。ここで、「必要形成量関連値」および「最大形成量関連値」は、画像形成で用いられる形成剤量(例えば、最大形成量関連値に相当する形成剤量を100としたときの量)または画素値(例えば、最大形成量関連値に相当する画素値を100としたきの値)であるものとすることもできる。また、「単位領域」は、ピクセル(画素)であるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】色補償変換LUT64の一例を示す説明図。
【図3】形状補償処理の様子を示す説明図。
【図4】色補償処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】グリッド92の各格子点と各四角形とを示す説明図。
【図6】算出された各四角形の面積変化率Δsの一例を示す説明図。
【図7】画像展開処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図8】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図9】展開用LUT72a〜72cの一例を示す説明図。
【図10】多層データの色値を単層データのインク量に変換する様子を示す説明図。
【図11】多層データの色値を単層データのインク量に変換する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態の加飾成形システム10は、図示するように、樹脂製のシート(例えばポリフィルム)などの媒体Sがロール状に巻かれてなるロール36から媒体Sを引き出して画像形成用の形成剤としてのインクを吐出することにより画像を形成(印刷)するプリンター20と、画像が形成(印刷)された後の媒体Sを所望の三次元形状に立体成形する成形装置40と、プリンター20と通信可能に接続され媒体Sに形成すべき画像を入力して印刷データに処理して出力する画像処理装置の機能を有する汎用のパソコン(PC)50とを備えている。なお、本発明の画像処理システムとしては、PC50とプリンター20とが相当する。
【0018】
プリンター20は、装置全体を制御するコントローラー21と、インクを媒体Sに吐出する印刷機構25と、ロール36から媒体Sを引き出しながら搬送する搬送機構32とを備えている。コントローラー21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュメモリー23と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM24などを備えている。このコントローラー21は、PC50からの印刷データを受信すると共に印刷処理を実行するよう印刷機構25や搬送機構32を制御する。印刷機構25は、キャリッジベルト31によりキャリッジ軸30に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ26と、インクに圧力をかけノズル27からインク滴を吐出する印刷ヘッド28と、各色のインクを収容したカートリッジ29とを備えている。印刷ヘッド28は、キャリッジ26の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により、印刷ヘッド28の下面に設けられたノズル27から各色のインクを吐出して媒体S上にドットを形成するものである。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。カートリッジ29は、本体側に装着され、シアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のcmykの各色のインクを個別に収容しており、この収容したインクを図示しないチューブを介して印刷ヘッド28へ供給する。搬送機構32は、駆動モーター33により駆動されて媒体Sを搬送する搬送ローラー35などを備えている。
【0019】
成形装置40は、媒体Sの上方側に配置される上型部41と、媒体Sの下方側に配置される下型部42とを備えている。上型部41や下型部42には、図示しない金型がセットされており、上下の金型で媒体Sを挟み込むことにより媒体Sを三次元形状に成形する。なお、成形装置40による成形は、加熱成形であってもよいし、加圧成形であってもよい。また、この成形装置40にセットされる金型は、複数種の異なる金型を交換可能なものとした。なお、媒体Sは、成形前あるいは成形後に、プリンター20と成形装置40との間に配置された切断機37により所定長さに切断される。
【0020】
PC50は、装置全体の制御を司るコントローラー51と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD55と、プリンター20などの外部機器とのデータの入出力を行うネットワークインターフェイス(I/F)56と、ユーザーが各種指令を入力するキーボードやマウスなどの入力装置57と、各種情報を表示するディスプレイ58とを備えている。コントローラー51は、各種制御を実行するCPU52や各種制御プログラムを記憶するフラッシュメモリー53、データを一時的に記憶するRAM54などを備えている。このPC50は、ディスプレイ58に表示されたカーソルなどをユーザーが入力装置57を介して入力操作すると、その入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。コントローラー51やHDD55、I/F56、入力装置57、ディスプレイ58などは、バス59によって電気的に接続され、各種制御信号やデータのやり取りができるよう構成されている。
【0021】
このPC50のHDD55には、図示しないアプリケーションプログラムや変形画像処理プログラム60,印刷ドライバー70などが格納されている。変形画像処理プログラム60は、媒体Sの成形に伴う変形により成形品(成形後の媒体S)の表面に形成されている画像(文字や模様などを含む)に生じる形状ずれや色ずれを補正するために用いられるプログラムである。この変形画像処理プログラム60は、三次元の画像(絵柄)モデルを編集する3D絵柄編集部61と、成形に伴う形状ずれを補償する形状補償部62と、成形に伴う色ずれを補償する色補償部63と、を有している。
【0022】
3D絵柄編集部61は、成形前の媒体Sに形成した画像の編集と成形後の媒体Sに形成した画像の編集とを実行する機能を有している。形状補償部62は、媒体Sの成形時の外形の変形によって生じる成形品表面の意匠(文字や模様)の形状変化を、目的の形状に補正する形状補償を実行する機能を有している。
【0023】
色補償部63は、媒体Sの成形時の変形によって生じる画像の色合いの変化を反映させるために色補償変換ルックアップテーブル(LUT)64を用いて目的の色合いに補正する色補償を実行する機能を有している。色補償変換LUT64は、媒体Sの変形後の成形品で発色すべき目標色の色値(例えば画素値など)と、媒体Sの変形率(面積変化率(%))と、媒体Sの変形前に媒体S上に形成する色の色値(例えば画素値など)との関係を経験的に定めた対応関係テーブルである。図2に色補償変換LUT64の一例を示す。図2では、色補償変換LUT64の一部のみを示した。また、図2では、目標色の色値は、明度,色相,彩度を表すL*a*b*表色系の値(以下、Lab値という)を用いるものとし、媒体Sに形成する色の色値は、汎用の表色系としてのCMYK表色系(以下、汎用色と称することがある、また、プリンター20のインク色cmykと区別するために大文字で表記する)の値を用いるものとした。ここで、汎用色CMYKの色値(例えば画素値など)としてのCMYK値は、1回の印刷処理で画像を媒体Sに印刷可能な通常の画像データ(以下、単層データという)の色値の最大値である最大色値を100%として、0〜300%の範囲で設定するものとした。図2に示すように、色補償変換LUT64において、色値(目標色)と媒体Sの面積変形率(%)とが指定されると、指定された面積変形率(%)で媒体Sが変形したのちに指定した目標色の色値になる各色の色値としてのCMYK値が導き出される。色補償変換LUT64では、同一の目標色の色値において、変形後の面積変形率(%)が大きいほど変形前の媒体Sに形成する色の色値としてのCMYK値が大きくなる傾向に設定されている。また、この色補償変換LUT64は、Lab値のそれぞれを所定値(例えば、10など)ずつ変化させたテーブルとして構成されており、格納されている各値の間のデータを周知の補間処理を行うことによって利用されるものとした。
【0024】
印刷ドライバー70は、アプリケーションプログラム側から受けた印刷ジョブをプリンター20で直接印刷処理可能な印刷データに変換してプリンター20に出力(送信)するプログラムである。この印刷ドライバー70は、変形画像処理プログラム60で作成された画像データ(版下データ)と画像データの展開に用いるための3つの展開用ルックアップテーブル(LUT)72a〜72cとに基づいて印刷データを作成してプリンター20に出力する機能を有している。なお、3つの展開用LUT72を用いるのは、CMYKの色値としてのCMYK値を0〜300%の範囲で設定するものとしたことに基づく。したがって、展開用LUT72の数は、色値としてのCMYK値の範囲に応じた数とすればよい。また、以下の説明では、3つの展開用LUT72をそれぞれ第1層用〜第3層用LUT72a〜72cと称することがある。この3つの展開用LUT72a〜72cやこれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態の加飾成形システム10の処理、特に、変形画像処理プログラム60による処理について、形状補償処理、色補償処理の順に説明する。図3は、変形画像処理プログラム60により実行される形状補償処理の様子の一例を示す説明図である。この形状補償処理では、コントローラー51のCPU52は、まず、縦横に等間隔の複数の格子点を有する四角形(正方形)を要素とするグリッド92を平面状の媒体に構成した画像を作成する(図3(a))。なお、図示の都合上、グリッド92の格子点は実際よりも少ない(間引いた)状態で図示し、格子点の間隔はプリンター20のドットの形成間隔(例えば、720dpiや1440dpiなど)よりも広いものとした。また、これらの各格子点の初期位置(変形前の位置)の位置情報は保持されるものとした。次に、目的の製品の形状に成形されるように媒体を変形させる処理を行ない、変形前後のグリッド92の各格子点の位置情報を入力して変形後の各格子点の三次元座標位置や各格子点の歪み方向や歪み量を算出する。そして、この算出結果に基づいて、成形後の立体物の三次元の画像モデルを作成し、作成した三次元の画像モデルをディスプレイ58へ表示処理する(図3(b))。次に、使用者の入力操作によって三次元の画像モデル上で絵柄の位置が指定されると、指定された位置に絵柄としての印刷対象の画像を配置し(図3(c))、二次元変換指示が入力されると、三次元での座標値を二次元の座標値に変換して変換後の画像を表示する(図3(d))。このようにして、成形後に目的とする絵柄となる形状の画像が成形前の媒体上に形成され、成形前に媒体Sに印刷すべき形状補償データを作成することができる。なお、図3(d)の形状補償データの画像が媒体Sに印刷されて成形された結果の実成形品を図3(e)に示す。
【0026】
次に、色補償変換LUT64を用いた色補償処理について説明する。図4は、コントローラー51のCPU52により実行される色補償処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、HDD55に記憶され、形状補償処理がなされた後に色補償の実行指示が入力されたときに実行される。なお、色補償の実行指示は、例えば、形状補償処理後に、変形画像処理プログラム60の図示しない編集画面がディスプレイ58に表示された状態で、編集画面上の色補償実行ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。
【0027】
この色補償処理ルーチンが実行されると、CPU52は、まず、変形加工前後のグリッド92の各格子点の位置情報を取得する(ステップS100)。この位置情報の取得は、上述した形状補償処理で説明した変形前後の格子点の三次元座標をそれぞれ取得することにより行なう。次に、取得した各格子点の位置情報からグリッド92の各要素としての各四角形の面積変化率Δsを算出する(ステップS110)。ここで、グリッド92の各格子点と各四角形とを図5に示す。なお、図5では、グリッド92の一部を拡大して示しており、図5中の対象画像(文字A)は、上述した形状補償処理後の画像(図3(d)参照)が配置されたものである。各四角形の面積変化率Δsの算出は、ステップS100で取得した各格子点の変形前後の位置情報から変形前後の四角形の面積をそれぞれ算出して、変形後の四角形の面積を変形前の面積で除することにより行なう。なお、変形前の各四角形の面積はすべて同一であるため一定値を用いてもよい。こうして算出される各四角形の面積変化率Δsの一例を図6に示す。なお、要素No.は、グリッド92の左上の四角形を起点として左から右へ、上から下へと順に付すものとした。続いて、グリッド92の各格子点のLab値を取得する(ステップS120)。このLab値の取得は、入力された画像のRGB値やCMYK値などの色の情報に基づいて各格子点に対応する位置の形状補償処理後の画像の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。あるいは、図3(d)や図5のような形状補償処理後の画像を含む図示しない編集画面をディスプレイ58上に表示して入力装置57を用いた画像の色の指定を受け付け、受け付けた色に基づいて各格子点に対応する位置の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。
【0028】
こうしてグリッド92の各格子点のLab値や各四角形の面積変化率Δsを取得すると、処理対象の格子点を設定して(ステップS130)、処理対象の格子点のLab値と処理対象の格子点に対応する四角形の面積変化率Δsとをそれぞれ読み込む(ステップS140)。なお、処理対象の格子点は、グリッド92の左上隅の格子点を起点として左から右へ、上から下へと順に設定する。また、処理対象の格子点に対応する四角形は、例えば、処理対象の格子点を左上の頂点にもつ四角形に定めることができ、グリッド92の右端や下端に位置する格子点のように処理対象の格子点を左上の頂点にもつ四角形が存在しない場合には、処理対象の格子点を右上の頂点にもつ四角形や処理対象の格子点を左下の頂点や右下の頂点にもつ四角形を定めるものとすればよい。
【0029】
次に、読み込んだLab値を変形後の色値として用いると共に面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT64から得られる変形前の色値としてのCMYK値を処理対象の格子点のCMYK値に設定する(ステップS150)。ここで、読み込んだLab値と面積変化率Δsとが色補償変換LUT64に登録されている場合には、色補償変換LUT64から対応する値を導出して処理対象の格子点のCMYK値に設定する。一方、読み込んだLab値や面積変化率Δsが色補償変換LUT64に登録されていない場合には、色補償変換LUT64から近似するCMYK値を抽出して補間処理により求めた値を処理対象の格子点のCMYK値に設定する。こうしてインク量としてのCMYK値を設定すると、グリッド92のすべての格子点のCMYK値を設定したか否かを判定し(ステップS160)、未設定の格子点があるときには、ステップS130に戻り各格子点を順次処理対象に設定して処理を繰り返す。一方、すべての格子点のインク量としてのCMYK値を設定したときには、各格子点のCMYK値を色補償データとしてHDD55に保存して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。こうして作成された色補償データは対象画像の色として定めることができ、上述した形状補償処理により形状が補償された形状補償データは対象画像の形状として定めることができる。そして、これらを合わせたデータを版下データとして出力して、画像の表示や印刷に用いるものとした。このように、本実施形態では、各格子点の変形後の色値としてのLab値と各四角形の面積変化率Δsとを用いて色補償変換LUT64から各格子点の変形前の色値としてのCMYK値を設定して色補償データを作成するのである。これにより、媒体Sのグリッド92の各要素(四角形)の面積変化に伴う色の変化の影響を精度よく反映させて各格子点のCMYK値を設定することができ、ひいては、媒体S全体の変形による色の変化の影響を精度よく反映させて色補償データを作成することができる。また、本実施形態では、汎用の表色系としてのCMYK表色系の色値としてのCMYK値を用いることにより、作成した版下データを画像編集ツールなどのアプリケーションソフト上で広く用いることができるようにすることができる。
【0030】
次に、本実施形態の加飾成形システム10の処理、特に、版下データの画像を媒体Sに印刷する際の処理について説明する。なお、版下データは、汎用色CMYKの色値としてのCMYK値の少なくとも一つが最大色値を超える部分が存在するデータとした。図7は、PC50のコントローラー21により実行される画像展開処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図8は、プリンター20のコントローラー21により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。図7の画像展開処理ルーチンは、HDD55に記憶されており、版下データの画像の印刷指示がなされたときに印刷ドライバー70による処理として実行される。また、図8の印刷処理ルーチンは、フラッシュメモリー23に記憶されており、PC50から印刷データを受信したときに実行される。なお、版下データの画像の印刷指示は、例えば、図示しない印刷画面がディスプレイ58に表示された状態で、印刷指示ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。
【0031】
画像展開処理ルーチンが実行されると、コントローラー21のCPU22は、まず、版下データを取得し(ステップS200)、取得した版下データを画像処理用の単位領域(実施形態ではピクセル)毎の汎用色CMYKの色値としてのCMYK値に変換して多層データを作成する(ステップS210)。この多層データは、版下データと同様に、色値としてのCMYK値の少なくとも一つが最大色値を超えるピクセルが存在する。
【0032】
続いて、変数iに値1を設定し(ステップS220)、展開用(第1層用〜第3層用)LUT72a〜72cのうち第i層用LUTと多層データとを用いて、多層データにおける各ピクセルの汎用色CMYKの色値としてのCMYK値を第i層データにおける各ピクセルのプリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値に変換することによって単層データ(第i層データ)を作成し(ステップS230)、変数iを値3(展開用LUT72a〜72cの数)と比較し(ステップS240)、変数iが値3未満のときには、変数iをインクリメントして(ステップS250)、ステップS220に戻る。このようにしてステップS240で変数iが値3に等しいと判定されるまで多層データから第i層データを作成するのである。ここで、単層データ(第i層データ)は、全てのピクセルでcmyk値の全てが通常の印刷範囲における最大値としての最大インク量以下となるデータ、即ち、最大インク量を100%としたときに100%以下となるデータである。また、展開用LUT72a〜72cは、それぞれ、汎用色CMYKの色値としてのCMYK値と、プリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値と、の関係を定めた対応関係テーブルである。図9は、展開用(第1層〜第3層用)LUT72a〜72cの一例を示す説明図である。図9では、展開用LUT72a〜72cの一部のみを示した。また、展開用LUT72a〜72cは、それぞれ、CMYK値のそれぞれを所定値(例えば、10など)ずつ変化させたテーブルとして構成されている。さらに、本実施形態では、展開用LUT72a〜72cにおいて、第1層〜第3層データのそれぞれのインク量としてのcmyk値は、通常の印刷範囲おける最大値(最大インク量)以下となり、且つ、第1層〜第3層データのそれぞれにおけるインク量としてのcmyk値の積算値がCMYK値に対応するcmyk値(画素値を分解せずにそのままインク量に置き換えたもの)に等しくなるよう定められるものとした。以下、展開用LUT72a〜72cを用いた多層データの展開処理について具体的に説明する。
【0033】
まず、第1層用LUT72aを用いて多層データから第1層データを作成する処理について説明する。図10は、多層データにおける色値としてのCMYK値から第1層データにおけるインク量としてのcmyk値に変換する様子の一例を示す説明図である。図10の例では、多層データのあるピクセルでCMYK値が102,98,125,2の場合を示している。この場合、C値,M値,Y値,K値と4つのパラメータがあるため、それぞれのパラメータを挟むように、C値は100と110,M値は90と100,Y値は120と130,K値は0と10の2つの値の組み合わせ、即ち、2の4乗として16個の格子点P1〜P16のそれぞれのCMYK値を設定する。そして、第1層用LUT72aを用いて16個の各格子点P1〜P16のそれぞれの入力CMYK値に対応する出力cmyk値を導出し、導出した16個の格子点のcmyk値に対して周知の補間処理を行なうことによって多層データにおけるCMYK値の102,98,125,2に対応する第1層データにおけるcmyk値の92,94,100,1を求める。こうした処理を多層データの各ピクセルに対して行なうことにより、第1層用LUT72aを用いて多層データを第1層データに展開することができる。そして、同様に、第2層用,第3層用LUT72b,72cを用いて多層データから第2層データ,第3層データを作成することができる。また、多層データのあるピクセルに着目すると、そのピクセルでCMYK値が102,98,125,2の場合、図11に示すように、第1層データでは第1層用LUT72aを用いてcmyk値の92,94,100,1を求め、第2層データでは第2層用LUT72bを用いてcmyk値の0,0,20,0を求め、第3層データでは第3層用LUT72cを用いてcmyk値の0,0,0,0を求めることになる。このようにして多層データを3つの単層データに展開することができる。しかも、展開用LUT72a〜72cを用いて多層データの各ピクセルの色値としてのCMYK値を第1層〜第3層データの各ピクセルのインク量としてのcmyk値に変換するから、CMYK値からcmyk値への変換と多層データから3つの単層データへの展開とを同時に行なうことができ、処理数の低減や処理の迅速化を図ることができる。また、多層データを汎用の表色系CMYKの色で画像が表現されたものとするから、多層データの編集や画像の表示などに汎用性を持たせることができる。さらに、3つの展開用(第1層用〜第3層用)LUT72a〜72cのうち第i層データに応じた第i層用LUTを用いて多層データから第i層データを作成するから、通常の印刷において画像データを媒体Sの種類(例えば、普通紙,厚紙,印画紙など)に応じたルックアップテーブルを用いて色変換する場合などと同様に、多層データを展開することができる。
【0034】
そして、ステップS240で変数iが値3(展開用LUT72a〜72cの数)に等しいと判定されると、第1層〜第3層データのそれぞれに対して中間調処理、例えば、ハーフトーン処理やパルス幅変調処理などを行なって印刷データとしてプリンター20に出力して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。
【0035】
次に、印刷処理について説明する。図8の印刷処理ルーチンが実行されると、プリンター20のコントローラー21のCPU22は、まず、次に印刷する単層データの番号を示す変数iに値1を設定し(ステップS300)、第i層データを用いて印刷処理が行なわれるよう、即ち、第i層データの画像が媒体Sに印刷されるよう印刷機構25と搬送機構32とを制御する(ステップS310)。
【0036】
こうして第i層データの画像を媒体Sに印刷すると、変数iを値3(単層データ数)と比較し(ステップS320)、変数iが値3未満のときには、印刷機構25の印刷ヘッド28や媒体Sがホームポジション(印刷処理の実行開始前の位置)に戻るよう印刷機構25や搬送機構32を制御し(ステップS330)、変数iをインクリメントして(ステップS340)、ステップS310に戻る。こうしてステップS310〜S340の処理を繰り返し実行することによって第1層〜第3層データの画像を順に重ねて印刷する多層印刷を行なう。ステップS320で変数iが値3(単層データ数)に等しいと判定されると、全ての層についての印刷処理が完了した(画像形成が完了した)と判断し、媒体Sが成形装置40側に搬送されるよう搬送機構32を制御して(ステップS350)、本ルーチンを終了する。このように3つの単層データを用いて多層印刷を行なうことにより、多層データの画像を媒体Sに印刷することができる。しかも、多層データを展開して作成した3つの単層データを用いて多層印刷を行なうことにより、媒体Sをホームポジションに戻す処理を要する点を除いて通常の印刷(単層印刷)と同様に媒体Sに画像を印刷することができるから、プリンター20を多層印刷専用とする必要がなく、より汎用性を持たせることができる。なお、単層データのうち全てのピクセルでインク色cmykのインク量としてのcmyk値の全てが値0のデータ(印刷すべき画像がないデータ)については印刷処理を行なわないものとしてもよく、例えば、第3層データの全てのピクセルでcmyk値の全てが値0の場合には、第2層データの印刷後に媒体Sをホームポジションに戻さずに媒体Sを成形装置40側に搬送するものとしてもよい。
【0037】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の図7の画像展開処理ルーチンのステップS210の処理を実行するコントローラー51が本発明の「取得手段」に相当し、図7の画像展開処理ルーチンのステップS220〜S250の処理を実行するコントローラー51が「展開手段」に相当する。また、図8の印刷処理ルーチンを実行するコントローラー21が「画像形成手段」に相当する。なお、本実施形態では、画像処理装置の動作を説明することにより本発明の画像処理方法の一例も明らかにしている。
【0038】
以上説明した本実施形態の加飾成形システム10のプリンター20によれば、3つの展開用LUT72a〜72cを用いて多層データを3つの単層データ(第1層〜第3層データ)に展開するから、展開した3つの単層データの画像を重ねて印刷することによって多層データの画像を媒体Sに印刷することができる。しかも、多層データにおける汎用色CMYKの色値としてのCMYK値と複数の単層データのそれぞれのプリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値との対応関係を定めた3つの展開用LUT72a〜72cを用いて多層データから3つの単層データを作成するから、CMYK値からプリンター20のcmyk値への変換と多層データから3つの単層データへの展開とを別々に行なうものに比して、処理数の低減や処理の迅速化を図ることができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
上述した実施形態では、3つの展開LUT72a〜72cを用いて多層データから3つの単層データを作成するものとしたが、展開LUT72a〜72cの数や単層データの数は3つに限定されるものではなく、印刷すべき多層データにおける色値としてのCMYK値の範囲に応じた数とすればよい。
【0041】
上述した実施形態では、多層データは、単位領域(ピクセル)毎に、汎用色CMYKの色値としてのCMYK値で画像が表現されたものとしたが、RGB表色系やL*a*b*表色系などの色値(例えば、画素値など)で画像が表現されたものとしてもよいし、プリンター20のインク色(上述した実施形態ではcmyk)のインク量で画像が表現されたものとしてもよい。また、単層データは、プリンター20のインク色のインク量で画像が表現されたものとしたが、汎用のインク色cmykのインク量としてのcmyk値で画像が表現されたものとしてもよいし、CMYK表色系やRGB表色系,L*a*b*表色系などの色値で画像が表現されたものとしてもよい。なお、これらの場合、展開用LUT72a〜72cは、多層データと複数の単層データとに応じた関係、例えば、多層データおよび単層データが共に汎用のインク色cmykのインク量としてのcmyk値の場合には多層データにおけるcmyk値と複数の単層データのそれぞれにおけるcmyk値との関係とすればよい。また、本例のように、多層データが汎用色のCMYKの色値としてのCMYK値で画像が表現されたものであり、単層データがプリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値で画像が表現されたものである場合、CMYK値からcmyk値への変換と多層データから複数の単層データへの展開とを同時に行なうことができる。
【0042】
上述した実施形態では、グリッド92の各格子点に汎用色CMYKの色値としてのCMYK値が設定された版下データを画像処理用の単位領域(ピクセル)毎のCMYK値に変換して多層データを作成するものとしたが、版下データをそのまま多層データとして用いて複数の単層データに展開するものとしてもよい。なお、この場合、単位領域はグリッド92の各格子点に応じた領域となり、複数の単層データは、それぞれグリッド92の格子点に相当する位置にインク量としてのcmyk値が設定されたものとなる。
【0043】
上述した実施形態では、複数の単層データの画像を媒体Sに重ねて印刷する多層印刷を行なうことによって多層データの画像を媒体Sに印刷してその後に媒体Sを変形するもの、即ち、画像形成後に変形が施される媒体Sに変形前に形成する画像を処理するものとしたが、複数の単層データの画像を媒体Sに重ねて印刷することによって多層データの画像を媒体Sに印刷した後にその媒体Sを変形しないもの、即ち、変形が施されない媒体Sに形成する画像を処理するものとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、媒体Sの変形の程度としては、グリッド92により形成される四角形の変形の前後における面積の比である面積変化率Δsを用いたが、グリッド92により形成される格子点のうち近接する3つの格子点からなる三角形の変形の前後における面積の比である面積変化率を用いるものとしてもよいし、グリッド92により形成される四角形を更に分割した形状における変形の前後における面積の比である面積変化率を用いるものとしてもよいし、グリッド92により形成される各格子点間の変形の前後における長さの比である線的な変化率を用いるものとしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、格子点に対応する四角形における変化の程度としての四角形の面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT64から得られる汎用色CMYKの色値としてのCMYK値を処理対象の格子点のCMYK値に設定するものとしたが、画像の形成については媒体Sの変形を考慮しないものとしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、プリンター20がインク色としてcmykの4色を有するものとしたが、これに限られず、例えば、cmykの4色にオレンジやパープルを加えた6色を有するものとしてもよいし、cmykの4色にライトシアンやライトマゼンタを加えた6色を有するものとしてもよいし、6色以上の複数色を有するものなどとしてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、画像形成用の形成剤は、インクであるものとしたが、媒体S上に画像を形成可能なものであれば特にこれに限定されない。例えば、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体、トナーなどの粉体などとしてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、プリンター20は、インクを吐出するインクジェット式の印刷機構25を備えたものとしたが、特にこれに限定されず、レーザープリンターとしてもよいし、熱転写プリンターとしてもよいし、ドットインパクトプリンターとしてもよい。また、PC50のような画像処理装置としたが、画像処理方法としてもよいし、これを実行可能なプログラムとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 加飾成形システム、20 プリンター、21 コントローラー、22 CPU、23 フラッシュメモリー、24 RAM、25 印刷機構、26 キャリッジ、27 ノズル、28 印刷ヘッド、29 カートリッジ、30 キャリッジ軸、31 キャリッジベルト、32 搬送機構、33 駆動モーター、34 搬送ローラー、36 ロール、37 切断機、40 成形装置、41 上型部、42 下型部、50 PC、51 コントローラー、52 CPU、53 フラッシュメモリー、54 RAM、55 HDD、56 I/F、57 入力装置、58 ディスプレイ、59 バス、60 変形画像処理プログラム、61 3D絵柄編集部、62 形状補償部、63 色補償部、64 色補償変換ルックアップテーブル(LUT)、70 印刷ドライバー、72 展開用ルックアップテーブル(LUT)、92 グリッド、S 媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形用フィルムに印刷によって予め絵柄を付与する際に、成形時に伸長する部分に伸長しない部分よりも濃厚な印刷を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、成形用フィルムに印刷インキで印刷して絵柄を形成する際に、印刷方式がスクリーン印刷方式の場合には濃厚にすべき部分を重ね塗りし、印刷方式がグラビア印刷方式の場合には製版時に所望の部分のエッチングを深くすることによって伸長する部分を伸長しない部分より濃厚にして、成形時に絵柄の濃度が低下するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−104816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、こうした成形用フィルムに印刷するための絵柄をデジタルデータ(画像データ)として印刷に用いることが考えられている。この場合、濃厚にすべき部分(重ね塗りすべき部分)を含むデジタルデータを印刷用のデータにどのように変換するかが課題となる。
【0005】
本発明の画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法は、複数回の画像形成を要する画像データの画像を媒体に形成できるようにすることを主目的とする。
【0006】
本発明の画像処理装置および画像処理システム並びに画像処理方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理装置であって、
少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける前記必要形成量関連値と、全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶する記憶手段と、
前記多層データを取得する多層データ取得手段と、
前記取得した多層データと前記記憶した展開用対応関係とに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開する展開手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像処理装置では、少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける必要形成量関連値と、全ての単位領域で必要形成量関連値が最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶しておき、多層データを取得し、取得した多層データと記憶しておいた展開用対応関係とに基づいて多層データを複数の単層データに展開する。したがって、展開用対応関係を用いて多層データを複数の単層データに展開するから、各単層データの画像が所定順に重なるよう媒体への複数回の画像形成を行なうことにより、多層データの画像を媒体に形成することができる。ここで、「必要形成量関連値」および「最大形成量関連値」は、画像形成で用いられる形成剤量(例えば、最大形成量関連値に相当する形成剤量を100としたときの量)または画素値(例えば、最大形成量関連値に相当する画素値を100としたきの値)であるものとすることもできる。また、「単位領域」は、ピクセル(画素)であるものとすることもできる。ここで、「形成剤」とは、インク等の着色剤や、透明インク等の透明剤などを意味する。透明剤は、例えば、媒体の光沢や硬度などの表面特性を制御するために用いられる。
【0009】
こうした本発明の画像処理装置において、前記展開用対応関係は、前記多層データにおける画素値と、前記複数の単層データの各々における画像形成で用いられる色または汎用の色の形成剤量と、の対応関係である、ものとすることができる。即ち、多層データにおける必要形成量関連値を画素値とし、単層データにおける必要形成量関連値を画像形成で用いられる色または汎用の色の形成剤量とするのである。こうすれば、展開用対応関係を用いて多層データにおける画素値を複数の単層データの各々における形成剤量に変換することができるから、多層データから複数の単層データへの展開と画素値から形成剤量への変換とを別々に行なうものに比して処理数の低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明の画像処理装置において、前記多層データ取得手段は、汎用の表色系の色の組み合わせで画像が表現された前記多層データを取得する手段である、ものとすることができる。こうすれば、多層データの必要形成量関連値を、少なくとも一つの単位領域で必要形成量関連値が最大形成量関連値を超える点を除いて通常の画像データ(単層データに相当するデータ)と同様のものとすることができるから、多層データにより汎用性を持たせることができる。ここで、「汎用の表色系」は、CMYK表色系,RGB表色系,L*a*b*表色系のいずれかであるものとすることができる。
【0011】
さらに、本発明の画像処理装置において、前記画像データに基づいて画像を前記媒体に形成した後に該媒体を変形してなる成形物のための前記画像データを作成処理する、ものとすることができる。この場合、前記媒体の変形の程度と変形前の色と変形に伴う色変化が反映された変形後の色との対応関係である色対応関係を記憶する色対応関係記憶手段と、前記媒体の各部位における変形の程度を取得する変形程度取得手段と、前記取得した変形の程度と前記記憶した色対応関係とに基づいて前記成形物の画像の色に対する前記媒体の各部位に形成する画像の色を決定する色決定手段と、を備え、前記多層データは、前記色決定手段により前記媒体の各部位に形成する画像の色が決定されたデータである、ものとすることができる。
【0012】
本発明の画像処理システムは、
上述のいずれかの態様の本発明の画像処理装置と、画像形成用の形成剤を用いて前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、を備える画像処理システムであって、
前記画像形成装置は、前記複数の単層データの画像が所定順に重なるよう該単層データの数に相当する回数だけ画像形成を行なう画像形成手段を備える装置である、
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の画像処理システムでは、上述したいずれかの態様の本発明の画像処理装置を備えるから、本発明の画像処理装置が奏する効果、例えば、複数の単層データを用いて複数回の画像形成を行なうことによって多層データの画像を媒体に形成することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【0014】
本発明の画像処理方法は、
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理方法であって、
(a)少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データを取得するステップと、
(b)前記多層データにおける前記必要形成量関連値と全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値との対応関係である展開用対応関係と、前記取得した多層データとに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開するステップと、
を含むことを要旨とする。
【0015】
この本発明の画像処理方法では、少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける必要形成量関連値と、全ての単位領域で必要形成量関連値が最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶しておき、多層データを取得し、取得した多層データと記憶しておいた展開用対応関係とに基づいて多層データを複数の単層データに展開する。したがって、展開用対応関係を用いて多層データを複数の単層データに展開するから、各単層データの画像が所定順に重なるよう媒体への複数回の画像形成を行なうことにより、多層データの画像を媒体に形成することができる。ここで、「必要形成量関連値」および「最大形成量関連値」は、画像形成で用いられる形成剤量(例えば、最大形成量関連値に相当する形成剤量を100としたときの量)または画素値(例えば、最大形成量関連値に相当する画素値を100としたきの値)であるものとすることもできる。また、「単位領域」は、ピクセル(画素)であるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】色補償変換LUT64の一例を示す説明図。
【図3】形状補償処理の様子を示す説明図。
【図4】色補償処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】グリッド92の各格子点と各四角形とを示す説明図。
【図6】算出された各四角形の面積変化率Δsの一例を示す説明図。
【図7】画像展開処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図8】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図9】展開用LUT72a〜72cの一例を示す説明図。
【図10】多層データの色値を単層データのインク量に変換する様子を示す説明図。
【図11】多層データの色値を単層データのインク量に変換する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態の加飾成形システム10は、図示するように、樹脂製のシート(例えばポリフィルム)などの媒体Sがロール状に巻かれてなるロール36から媒体Sを引き出して画像形成用の形成剤としてのインクを吐出することにより画像を形成(印刷)するプリンター20と、画像が形成(印刷)された後の媒体Sを所望の三次元形状に立体成形する成形装置40と、プリンター20と通信可能に接続され媒体Sに形成すべき画像を入力して印刷データに処理して出力する画像処理装置の機能を有する汎用のパソコン(PC)50とを備えている。なお、本発明の画像処理システムとしては、PC50とプリンター20とが相当する。
【0018】
プリンター20は、装置全体を制御するコントローラー21と、インクを媒体Sに吐出する印刷機構25と、ロール36から媒体Sを引き出しながら搬送する搬送機構32とを備えている。コントローラー21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュメモリー23と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM24などを備えている。このコントローラー21は、PC50からの印刷データを受信すると共に印刷処理を実行するよう印刷機構25や搬送機構32を制御する。印刷機構25は、キャリッジベルト31によりキャリッジ軸30に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ26と、インクに圧力をかけノズル27からインク滴を吐出する印刷ヘッド28と、各色のインクを収容したカートリッジ29とを備えている。印刷ヘッド28は、キャリッジ26の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により、印刷ヘッド28の下面に設けられたノズル27から各色のインクを吐出して媒体S上にドットを形成するものである。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。カートリッジ29は、本体側に装着され、シアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のcmykの各色のインクを個別に収容しており、この収容したインクを図示しないチューブを介して印刷ヘッド28へ供給する。搬送機構32は、駆動モーター33により駆動されて媒体Sを搬送する搬送ローラー35などを備えている。
【0019】
成形装置40は、媒体Sの上方側に配置される上型部41と、媒体Sの下方側に配置される下型部42とを備えている。上型部41や下型部42には、図示しない金型がセットされており、上下の金型で媒体Sを挟み込むことにより媒体Sを三次元形状に成形する。なお、成形装置40による成形は、加熱成形であってもよいし、加圧成形であってもよい。また、この成形装置40にセットされる金型は、複数種の異なる金型を交換可能なものとした。なお、媒体Sは、成形前あるいは成形後に、プリンター20と成形装置40との間に配置された切断機37により所定長さに切断される。
【0020】
PC50は、装置全体の制御を司るコントローラー51と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD55と、プリンター20などの外部機器とのデータの入出力を行うネットワークインターフェイス(I/F)56と、ユーザーが各種指令を入力するキーボードやマウスなどの入力装置57と、各種情報を表示するディスプレイ58とを備えている。コントローラー51は、各種制御を実行するCPU52や各種制御プログラムを記憶するフラッシュメモリー53、データを一時的に記憶するRAM54などを備えている。このPC50は、ディスプレイ58に表示されたカーソルなどをユーザーが入力装置57を介して入力操作すると、その入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。コントローラー51やHDD55、I/F56、入力装置57、ディスプレイ58などは、バス59によって電気的に接続され、各種制御信号やデータのやり取りができるよう構成されている。
【0021】
このPC50のHDD55には、図示しないアプリケーションプログラムや変形画像処理プログラム60,印刷ドライバー70などが格納されている。変形画像処理プログラム60は、媒体Sの成形に伴う変形により成形品(成形後の媒体S)の表面に形成されている画像(文字や模様などを含む)に生じる形状ずれや色ずれを補正するために用いられるプログラムである。この変形画像処理プログラム60は、三次元の画像(絵柄)モデルを編集する3D絵柄編集部61と、成形に伴う形状ずれを補償する形状補償部62と、成形に伴う色ずれを補償する色補償部63と、を有している。
【0022】
3D絵柄編集部61は、成形前の媒体Sに形成した画像の編集と成形後の媒体Sに形成した画像の編集とを実行する機能を有している。形状補償部62は、媒体Sの成形時の外形の変形によって生じる成形品表面の意匠(文字や模様)の形状変化を、目的の形状に補正する形状補償を実行する機能を有している。
【0023】
色補償部63は、媒体Sの成形時の変形によって生じる画像の色合いの変化を反映させるために色補償変換ルックアップテーブル(LUT)64を用いて目的の色合いに補正する色補償を実行する機能を有している。色補償変換LUT64は、媒体Sの変形後の成形品で発色すべき目標色の色値(例えば画素値など)と、媒体Sの変形率(面積変化率(%))と、媒体Sの変形前に媒体S上に形成する色の色値(例えば画素値など)との関係を経験的に定めた対応関係テーブルである。図2に色補償変換LUT64の一例を示す。図2では、色補償変換LUT64の一部のみを示した。また、図2では、目標色の色値は、明度,色相,彩度を表すL*a*b*表色系の値(以下、Lab値という)を用いるものとし、媒体Sに形成する色の色値は、汎用の表色系としてのCMYK表色系(以下、汎用色と称することがある、また、プリンター20のインク色cmykと区別するために大文字で表記する)の値を用いるものとした。ここで、汎用色CMYKの色値(例えば画素値など)としてのCMYK値は、1回の印刷処理で画像を媒体Sに印刷可能な通常の画像データ(以下、単層データという)の色値の最大値である最大色値を100%として、0〜300%の範囲で設定するものとした。図2に示すように、色補償変換LUT64において、色値(目標色)と媒体Sの面積変形率(%)とが指定されると、指定された面積変形率(%)で媒体Sが変形したのちに指定した目標色の色値になる各色の色値としてのCMYK値が導き出される。色補償変換LUT64では、同一の目標色の色値において、変形後の面積変形率(%)が大きいほど変形前の媒体Sに形成する色の色値としてのCMYK値が大きくなる傾向に設定されている。また、この色補償変換LUT64は、Lab値のそれぞれを所定値(例えば、10など)ずつ変化させたテーブルとして構成されており、格納されている各値の間のデータを周知の補間処理を行うことによって利用されるものとした。
【0024】
印刷ドライバー70は、アプリケーションプログラム側から受けた印刷ジョブをプリンター20で直接印刷処理可能な印刷データに変換してプリンター20に出力(送信)するプログラムである。この印刷ドライバー70は、変形画像処理プログラム60で作成された画像データ(版下データ)と画像データの展開に用いるための3つの展開用ルックアップテーブル(LUT)72a〜72cとに基づいて印刷データを作成してプリンター20に出力する機能を有している。なお、3つの展開用LUT72を用いるのは、CMYKの色値としてのCMYK値を0〜300%の範囲で設定するものとしたことに基づく。したがって、展開用LUT72の数は、色値としてのCMYK値の範囲に応じた数とすればよい。また、以下の説明では、3つの展開用LUT72をそれぞれ第1層用〜第3層用LUT72a〜72cと称することがある。この3つの展開用LUT72a〜72cやこれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態の加飾成形システム10の処理、特に、変形画像処理プログラム60による処理について、形状補償処理、色補償処理の順に説明する。図3は、変形画像処理プログラム60により実行される形状補償処理の様子の一例を示す説明図である。この形状補償処理では、コントローラー51のCPU52は、まず、縦横に等間隔の複数の格子点を有する四角形(正方形)を要素とするグリッド92を平面状の媒体に構成した画像を作成する(図3(a))。なお、図示の都合上、グリッド92の格子点は実際よりも少ない(間引いた)状態で図示し、格子点の間隔はプリンター20のドットの形成間隔(例えば、720dpiや1440dpiなど)よりも広いものとした。また、これらの各格子点の初期位置(変形前の位置)の位置情報は保持されるものとした。次に、目的の製品の形状に成形されるように媒体を変形させる処理を行ない、変形前後のグリッド92の各格子点の位置情報を入力して変形後の各格子点の三次元座標位置や各格子点の歪み方向や歪み量を算出する。そして、この算出結果に基づいて、成形後の立体物の三次元の画像モデルを作成し、作成した三次元の画像モデルをディスプレイ58へ表示処理する(図3(b))。次に、使用者の入力操作によって三次元の画像モデル上で絵柄の位置が指定されると、指定された位置に絵柄としての印刷対象の画像を配置し(図3(c))、二次元変換指示が入力されると、三次元での座標値を二次元の座標値に変換して変換後の画像を表示する(図3(d))。このようにして、成形後に目的とする絵柄となる形状の画像が成形前の媒体上に形成され、成形前に媒体Sに印刷すべき形状補償データを作成することができる。なお、図3(d)の形状補償データの画像が媒体Sに印刷されて成形された結果の実成形品を図3(e)に示す。
【0026】
次に、色補償変換LUT64を用いた色補償処理について説明する。図4は、コントローラー51のCPU52により実行される色補償処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、HDD55に記憶され、形状補償処理がなされた後に色補償の実行指示が入力されたときに実行される。なお、色補償の実行指示は、例えば、形状補償処理後に、変形画像処理プログラム60の図示しない編集画面がディスプレイ58に表示された状態で、編集画面上の色補償実行ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。
【0027】
この色補償処理ルーチンが実行されると、CPU52は、まず、変形加工前後のグリッド92の各格子点の位置情報を取得する(ステップS100)。この位置情報の取得は、上述した形状補償処理で説明した変形前後の格子点の三次元座標をそれぞれ取得することにより行なう。次に、取得した各格子点の位置情報からグリッド92の各要素としての各四角形の面積変化率Δsを算出する(ステップS110)。ここで、グリッド92の各格子点と各四角形とを図5に示す。なお、図5では、グリッド92の一部を拡大して示しており、図5中の対象画像(文字A)は、上述した形状補償処理後の画像(図3(d)参照)が配置されたものである。各四角形の面積変化率Δsの算出は、ステップS100で取得した各格子点の変形前後の位置情報から変形前後の四角形の面積をそれぞれ算出して、変形後の四角形の面積を変形前の面積で除することにより行なう。なお、変形前の各四角形の面積はすべて同一であるため一定値を用いてもよい。こうして算出される各四角形の面積変化率Δsの一例を図6に示す。なお、要素No.は、グリッド92の左上の四角形を起点として左から右へ、上から下へと順に付すものとした。続いて、グリッド92の各格子点のLab値を取得する(ステップS120)。このLab値の取得は、入力された画像のRGB値やCMYK値などの色の情報に基づいて各格子点に対応する位置の形状補償処理後の画像の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。あるいは、図3(d)や図5のような形状補償処理後の画像を含む図示しない編集画面をディスプレイ58上に表示して入力装置57を用いた画像の色の指定を受け付け、受け付けた色に基づいて各格子点に対応する位置の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。
【0028】
こうしてグリッド92の各格子点のLab値や各四角形の面積変化率Δsを取得すると、処理対象の格子点を設定して(ステップS130)、処理対象の格子点のLab値と処理対象の格子点に対応する四角形の面積変化率Δsとをそれぞれ読み込む(ステップS140)。なお、処理対象の格子点は、グリッド92の左上隅の格子点を起点として左から右へ、上から下へと順に設定する。また、処理対象の格子点に対応する四角形は、例えば、処理対象の格子点を左上の頂点にもつ四角形に定めることができ、グリッド92の右端や下端に位置する格子点のように処理対象の格子点を左上の頂点にもつ四角形が存在しない場合には、処理対象の格子点を右上の頂点にもつ四角形や処理対象の格子点を左下の頂点や右下の頂点にもつ四角形を定めるものとすればよい。
【0029】
次に、読み込んだLab値を変形後の色値として用いると共に面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT64から得られる変形前の色値としてのCMYK値を処理対象の格子点のCMYK値に設定する(ステップS150)。ここで、読み込んだLab値と面積変化率Δsとが色補償変換LUT64に登録されている場合には、色補償変換LUT64から対応する値を導出して処理対象の格子点のCMYK値に設定する。一方、読み込んだLab値や面積変化率Δsが色補償変換LUT64に登録されていない場合には、色補償変換LUT64から近似するCMYK値を抽出して補間処理により求めた値を処理対象の格子点のCMYK値に設定する。こうしてインク量としてのCMYK値を設定すると、グリッド92のすべての格子点のCMYK値を設定したか否かを判定し(ステップS160)、未設定の格子点があるときには、ステップS130に戻り各格子点を順次処理対象に設定して処理を繰り返す。一方、すべての格子点のインク量としてのCMYK値を設定したときには、各格子点のCMYK値を色補償データとしてHDD55に保存して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。こうして作成された色補償データは対象画像の色として定めることができ、上述した形状補償処理により形状が補償された形状補償データは対象画像の形状として定めることができる。そして、これらを合わせたデータを版下データとして出力して、画像の表示や印刷に用いるものとした。このように、本実施形態では、各格子点の変形後の色値としてのLab値と各四角形の面積変化率Δsとを用いて色補償変換LUT64から各格子点の変形前の色値としてのCMYK値を設定して色補償データを作成するのである。これにより、媒体Sのグリッド92の各要素(四角形)の面積変化に伴う色の変化の影響を精度よく反映させて各格子点のCMYK値を設定することができ、ひいては、媒体S全体の変形による色の変化の影響を精度よく反映させて色補償データを作成することができる。また、本実施形態では、汎用の表色系としてのCMYK表色系の色値としてのCMYK値を用いることにより、作成した版下データを画像編集ツールなどのアプリケーションソフト上で広く用いることができるようにすることができる。
【0030】
次に、本実施形態の加飾成形システム10の処理、特に、版下データの画像を媒体Sに印刷する際の処理について説明する。なお、版下データは、汎用色CMYKの色値としてのCMYK値の少なくとも一つが最大色値を超える部分が存在するデータとした。図7は、PC50のコントローラー21により実行される画像展開処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図8は、プリンター20のコントローラー21により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。図7の画像展開処理ルーチンは、HDD55に記憶されており、版下データの画像の印刷指示がなされたときに印刷ドライバー70による処理として実行される。また、図8の印刷処理ルーチンは、フラッシュメモリー23に記憶されており、PC50から印刷データを受信したときに実行される。なお、版下データの画像の印刷指示は、例えば、図示しない印刷画面がディスプレイ58に表示された状態で、印刷指示ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。
【0031】
画像展開処理ルーチンが実行されると、コントローラー21のCPU22は、まず、版下データを取得し(ステップS200)、取得した版下データを画像処理用の単位領域(実施形態ではピクセル)毎の汎用色CMYKの色値としてのCMYK値に変換して多層データを作成する(ステップS210)。この多層データは、版下データと同様に、色値としてのCMYK値の少なくとも一つが最大色値を超えるピクセルが存在する。
【0032】
続いて、変数iに値1を設定し(ステップS220)、展開用(第1層用〜第3層用)LUT72a〜72cのうち第i層用LUTと多層データとを用いて、多層データにおける各ピクセルの汎用色CMYKの色値としてのCMYK値を第i層データにおける各ピクセルのプリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値に変換することによって単層データ(第i層データ)を作成し(ステップS230)、変数iを値3(展開用LUT72a〜72cの数)と比較し(ステップS240)、変数iが値3未満のときには、変数iをインクリメントして(ステップS250)、ステップS220に戻る。このようにしてステップS240で変数iが値3に等しいと判定されるまで多層データから第i層データを作成するのである。ここで、単層データ(第i層データ)は、全てのピクセルでcmyk値の全てが通常の印刷範囲における最大値としての最大インク量以下となるデータ、即ち、最大インク量を100%としたときに100%以下となるデータである。また、展開用LUT72a〜72cは、それぞれ、汎用色CMYKの色値としてのCMYK値と、プリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値と、の関係を定めた対応関係テーブルである。図9は、展開用(第1層〜第3層用)LUT72a〜72cの一例を示す説明図である。図9では、展開用LUT72a〜72cの一部のみを示した。また、展開用LUT72a〜72cは、それぞれ、CMYK値のそれぞれを所定値(例えば、10など)ずつ変化させたテーブルとして構成されている。さらに、本実施形態では、展開用LUT72a〜72cにおいて、第1層〜第3層データのそれぞれのインク量としてのcmyk値は、通常の印刷範囲おける最大値(最大インク量)以下となり、且つ、第1層〜第3層データのそれぞれにおけるインク量としてのcmyk値の積算値がCMYK値に対応するcmyk値(画素値を分解せずにそのままインク量に置き換えたもの)に等しくなるよう定められるものとした。以下、展開用LUT72a〜72cを用いた多層データの展開処理について具体的に説明する。
【0033】
まず、第1層用LUT72aを用いて多層データから第1層データを作成する処理について説明する。図10は、多層データにおける色値としてのCMYK値から第1層データにおけるインク量としてのcmyk値に変換する様子の一例を示す説明図である。図10の例では、多層データのあるピクセルでCMYK値が102,98,125,2の場合を示している。この場合、C値,M値,Y値,K値と4つのパラメータがあるため、それぞれのパラメータを挟むように、C値は100と110,M値は90と100,Y値は120と130,K値は0と10の2つの値の組み合わせ、即ち、2の4乗として16個の格子点P1〜P16のそれぞれのCMYK値を設定する。そして、第1層用LUT72aを用いて16個の各格子点P1〜P16のそれぞれの入力CMYK値に対応する出力cmyk値を導出し、導出した16個の格子点のcmyk値に対して周知の補間処理を行なうことによって多層データにおけるCMYK値の102,98,125,2に対応する第1層データにおけるcmyk値の92,94,100,1を求める。こうした処理を多層データの各ピクセルに対して行なうことにより、第1層用LUT72aを用いて多層データを第1層データに展開することができる。そして、同様に、第2層用,第3層用LUT72b,72cを用いて多層データから第2層データ,第3層データを作成することができる。また、多層データのあるピクセルに着目すると、そのピクセルでCMYK値が102,98,125,2の場合、図11に示すように、第1層データでは第1層用LUT72aを用いてcmyk値の92,94,100,1を求め、第2層データでは第2層用LUT72bを用いてcmyk値の0,0,20,0を求め、第3層データでは第3層用LUT72cを用いてcmyk値の0,0,0,0を求めることになる。このようにして多層データを3つの単層データに展開することができる。しかも、展開用LUT72a〜72cを用いて多層データの各ピクセルの色値としてのCMYK値を第1層〜第3層データの各ピクセルのインク量としてのcmyk値に変換するから、CMYK値からcmyk値への変換と多層データから3つの単層データへの展開とを同時に行なうことができ、処理数の低減や処理の迅速化を図ることができる。また、多層データを汎用の表色系CMYKの色で画像が表現されたものとするから、多層データの編集や画像の表示などに汎用性を持たせることができる。さらに、3つの展開用(第1層用〜第3層用)LUT72a〜72cのうち第i層データに応じた第i層用LUTを用いて多層データから第i層データを作成するから、通常の印刷において画像データを媒体Sの種類(例えば、普通紙,厚紙,印画紙など)に応じたルックアップテーブルを用いて色変換する場合などと同様に、多層データを展開することができる。
【0034】
そして、ステップS240で変数iが値3(展開用LUT72a〜72cの数)に等しいと判定されると、第1層〜第3層データのそれぞれに対して中間調処理、例えば、ハーフトーン処理やパルス幅変調処理などを行なって印刷データとしてプリンター20に出力して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。
【0035】
次に、印刷処理について説明する。図8の印刷処理ルーチンが実行されると、プリンター20のコントローラー21のCPU22は、まず、次に印刷する単層データの番号を示す変数iに値1を設定し(ステップS300)、第i層データを用いて印刷処理が行なわれるよう、即ち、第i層データの画像が媒体Sに印刷されるよう印刷機構25と搬送機構32とを制御する(ステップS310)。
【0036】
こうして第i層データの画像を媒体Sに印刷すると、変数iを値3(単層データ数)と比較し(ステップS320)、変数iが値3未満のときには、印刷機構25の印刷ヘッド28や媒体Sがホームポジション(印刷処理の実行開始前の位置)に戻るよう印刷機構25や搬送機構32を制御し(ステップS330)、変数iをインクリメントして(ステップS340)、ステップS310に戻る。こうしてステップS310〜S340の処理を繰り返し実行することによって第1層〜第3層データの画像を順に重ねて印刷する多層印刷を行なう。ステップS320で変数iが値3(単層データ数)に等しいと判定されると、全ての層についての印刷処理が完了した(画像形成が完了した)と判断し、媒体Sが成形装置40側に搬送されるよう搬送機構32を制御して(ステップS350)、本ルーチンを終了する。このように3つの単層データを用いて多層印刷を行なうことにより、多層データの画像を媒体Sに印刷することができる。しかも、多層データを展開して作成した3つの単層データを用いて多層印刷を行なうことにより、媒体Sをホームポジションに戻す処理を要する点を除いて通常の印刷(単層印刷)と同様に媒体Sに画像を印刷することができるから、プリンター20を多層印刷専用とする必要がなく、より汎用性を持たせることができる。なお、単層データのうち全てのピクセルでインク色cmykのインク量としてのcmyk値の全てが値0のデータ(印刷すべき画像がないデータ)については印刷処理を行なわないものとしてもよく、例えば、第3層データの全てのピクセルでcmyk値の全てが値0の場合には、第2層データの印刷後に媒体Sをホームポジションに戻さずに媒体Sを成形装置40側に搬送するものとしてもよい。
【0037】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の図7の画像展開処理ルーチンのステップS210の処理を実行するコントローラー51が本発明の「取得手段」に相当し、図7の画像展開処理ルーチンのステップS220〜S250の処理を実行するコントローラー51が「展開手段」に相当する。また、図8の印刷処理ルーチンを実行するコントローラー21が「画像形成手段」に相当する。なお、本実施形態では、画像処理装置の動作を説明することにより本発明の画像処理方法の一例も明らかにしている。
【0038】
以上説明した本実施形態の加飾成形システム10のプリンター20によれば、3つの展開用LUT72a〜72cを用いて多層データを3つの単層データ(第1層〜第3層データ)に展開するから、展開した3つの単層データの画像を重ねて印刷することによって多層データの画像を媒体Sに印刷することができる。しかも、多層データにおける汎用色CMYKの色値としてのCMYK値と複数の単層データのそれぞれのプリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値との対応関係を定めた3つの展開用LUT72a〜72cを用いて多層データから3つの単層データを作成するから、CMYK値からプリンター20のcmyk値への変換と多層データから3つの単層データへの展開とを別々に行なうものに比して、処理数の低減や処理の迅速化を図ることができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
上述した実施形態では、3つの展開LUT72a〜72cを用いて多層データから3つの単層データを作成するものとしたが、展開LUT72a〜72cの数や単層データの数は3つに限定されるものではなく、印刷すべき多層データにおける色値としてのCMYK値の範囲に応じた数とすればよい。
【0041】
上述した実施形態では、多層データは、単位領域(ピクセル)毎に、汎用色CMYKの色値としてのCMYK値で画像が表現されたものとしたが、RGB表色系やL*a*b*表色系などの色値(例えば、画素値など)で画像が表現されたものとしてもよいし、プリンター20のインク色(上述した実施形態ではcmyk)のインク量で画像が表現されたものとしてもよい。また、単層データは、プリンター20のインク色のインク量で画像が表現されたものとしたが、汎用のインク色cmykのインク量としてのcmyk値で画像が表現されたものとしてもよいし、CMYK表色系やRGB表色系,L*a*b*表色系などの色値で画像が表現されたものとしてもよい。なお、これらの場合、展開用LUT72a〜72cは、多層データと複数の単層データとに応じた関係、例えば、多層データおよび単層データが共に汎用のインク色cmykのインク量としてのcmyk値の場合には多層データにおけるcmyk値と複数の単層データのそれぞれにおけるcmyk値との関係とすればよい。また、本例のように、多層データが汎用色のCMYKの色値としてのCMYK値で画像が表現されたものであり、単層データがプリンター20のインク色cmykのインク量としてのcmyk値で画像が表現されたものである場合、CMYK値からcmyk値への変換と多層データから複数の単層データへの展開とを同時に行なうことができる。
【0042】
上述した実施形態では、グリッド92の各格子点に汎用色CMYKの色値としてのCMYK値が設定された版下データを画像処理用の単位領域(ピクセル)毎のCMYK値に変換して多層データを作成するものとしたが、版下データをそのまま多層データとして用いて複数の単層データに展開するものとしてもよい。なお、この場合、単位領域はグリッド92の各格子点に応じた領域となり、複数の単層データは、それぞれグリッド92の格子点に相当する位置にインク量としてのcmyk値が設定されたものとなる。
【0043】
上述した実施形態では、複数の単層データの画像を媒体Sに重ねて印刷する多層印刷を行なうことによって多層データの画像を媒体Sに印刷してその後に媒体Sを変形するもの、即ち、画像形成後に変形が施される媒体Sに変形前に形成する画像を処理するものとしたが、複数の単層データの画像を媒体Sに重ねて印刷することによって多層データの画像を媒体Sに印刷した後にその媒体Sを変形しないもの、即ち、変形が施されない媒体Sに形成する画像を処理するものとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、媒体Sの変形の程度としては、グリッド92により形成される四角形の変形の前後における面積の比である面積変化率Δsを用いたが、グリッド92により形成される格子点のうち近接する3つの格子点からなる三角形の変形の前後における面積の比である面積変化率を用いるものとしてもよいし、グリッド92により形成される四角形を更に分割した形状における変形の前後における面積の比である面積変化率を用いるものとしてもよいし、グリッド92により形成される各格子点間の変形の前後における長さの比である線的な変化率を用いるものとしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、格子点に対応する四角形における変化の程度としての四角形の面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT64から得られる汎用色CMYKの色値としてのCMYK値を処理対象の格子点のCMYK値に設定するものとしたが、画像の形成については媒体Sの変形を考慮しないものとしてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、プリンター20がインク色としてcmykの4色を有するものとしたが、これに限られず、例えば、cmykの4色にオレンジやパープルを加えた6色を有するものとしてもよいし、cmykの4色にライトシアンやライトマゼンタを加えた6色を有するものとしてもよいし、6色以上の複数色を有するものなどとしてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、画像形成用の形成剤は、インクであるものとしたが、媒体S上に画像を形成可能なものであれば特にこれに限定されない。例えば、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体、トナーなどの粉体などとしてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、プリンター20は、インクを吐出するインクジェット式の印刷機構25を備えたものとしたが、特にこれに限定されず、レーザープリンターとしてもよいし、熱転写プリンターとしてもよいし、ドットインパクトプリンターとしてもよい。また、PC50のような画像処理装置としたが、画像処理方法としてもよいし、これを実行可能なプログラムとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 加飾成形システム、20 プリンター、21 コントローラー、22 CPU、23 フラッシュメモリー、24 RAM、25 印刷機構、26 キャリッジ、27 ノズル、28 印刷ヘッド、29 カートリッジ、30 キャリッジ軸、31 キャリッジベルト、32 搬送機構、33 駆動モーター、34 搬送ローラー、36 ロール、37 切断機、40 成形装置、41 上型部、42 下型部、50 PC、51 コントローラー、52 CPU、53 フラッシュメモリー、54 RAM、55 HDD、56 I/F、57 入力装置、58 ディスプレイ、59 バス、60 変形画像処理プログラム、61 3D絵柄編集部、62 形状補償部、63 色補償部、64 色補償変換ルックアップテーブル(LUT)、70 印刷ドライバー、72 展開用ルックアップテーブル(LUT)、92 グリッド、S 媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理装置であって、
少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける前記必要形成量関連値と、全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶する記憶手段と、
前記多層データを取得する多層データ取得手段と、
前記取得した多層データと前記記憶した展開用対応関係とに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開する展開手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記展開用対応関係は、前記多層データにおける画素値と、前記複数の単層データの各々における画像形成で用いられる色または汎用の色の形成剤量と、の対応関係である、
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像処理装置であって、
前記多層データ取得手段は、汎用の表色系の色の組み合わせで画像が表現された前記多層データを取得する手段である、
画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の画像処理装置であって、
前記画像データに基づいて画像を前記媒体に形成した後に該媒体を変形してなる成形物のための前記画像データを作成処理する、
画像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像処理装置であって、
前記媒体の変形の程度と変形前の色と変形に伴う色変化が反映された変形後の色との対応関係である色対応関係を記憶する色対応関係記憶手段と、
前記媒体の各部位における変形の程度を取得する変形程度取得手段と、
前記取得した変形の程度と前記記憶した色対応関係とに基づいて前記成形物の画像の色に対する前記媒体の各部位に形成する画像の色を決定する色決定手段と、
を備え、
前記多層データは、前記色決定手段により前記媒体の各部位に形成する画像の色が決定されたデータである、
画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の画像処理装置と、画像形成用の形成剤を用いて前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、を備える画像処理システムであって、
前記画像形成装置は、前記複数の単層データの画像が所定順に重なるよう該単層データの数に相当する回数だけ画像形成を行なう画像形成手段を備える装置である、
画像処理システム。
【請求項7】
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理方法であって、
(a)少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データを取得するステップと、
(b)前記多層データにおける前記必要形成量関連値と全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値との対応関係である展開用対応関係と、前記取得した多層データとに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開するステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項1】
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理装置であって、
少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データにおける前記必要形成量関連値と、全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値と、の対応関係である展開用対応関係を記憶する記憶手段と、
前記多層データを取得する多層データ取得手段と、
前記取得した多層データと前記記憶した展開用対応関係とに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開する展開手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記展開用対応関係は、前記多層データにおける画素値と、前記複数の単層データの各々における画像形成で用いられる色または汎用の色の形成剤量と、の対応関係である、
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像処理装置であって、
前記多層データ取得手段は、汎用の表色系の色の組み合わせで画像が表現された前記多層データを取得する手段である、
画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の画像処理装置であって、
前記画像データに基づいて画像を前記媒体に形成した後に該媒体を変形してなる成形物のための前記画像データを作成処理する、
画像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像処理装置であって、
前記媒体の変形の程度と変形前の色と変形に伴う色変化が反映された変形後の色との対応関係である色対応関係を記憶する色対応関係記憶手段と、
前記媒体の各部位における変形の程度を取得する変形程度取得手段と、
前記取得した変形の程度と前記記憶した色対応関係とに基づいて前記成形物の画像の色に対する前記媒体の各部位に形成する画像の色を決定する色決定手段と、
を備え、
前記多層データは、前記色決定手段により前記媒体の各部位に形成する画像の色が決定されたデータである、
画像処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の画像処理装置と、画像形成用の形成剤を用いて前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、を備える画像処理システムであって、
前記画像形成装置は、前記複数の単層データの画像が所定順に重なるよう該単層データの数に相当する回数だけ画像形成を行なう画像形成手段を備える装置である、
画像処理システム。
【請求項7】
媒体への画像形成で用いられる画像データを作成処理する画像処理方法であって、
(a)少なくとも一つの単位領域で画像形成に要する形成量に関連する値としての必要形成量関連値が1回の画像形成で用いられる最大形成量に関連する値としての最大形成量関連値を超える画像データである多層データを取得するステップと、
(b)前記多層データにおける前記必要形成量関連値と全ての単位領域で前記必要形成量関連値が前記最大形成量関連値以下となる複数の画像データである複数の単層データの各々における前記必要形成量関連値との対応関係である展開用対応関係と、前記取得した多層データとに基づいて前記取得した多層データを前記複数の単層データに展開するステップと、
を含む画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−190420(P2012−190420A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55779(P2011−55779)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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