説明

画像処理装置及び当該画像処理装置を備えた画像形成装置

【課題】オペレータの手を煩わせることなく、オペレータの所望の識別基準に基づいて画像データのカラー判定を行なうことができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像入力部3により原稿画像が光電変換された画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像識別部80を備えている画像処理装置8で、前記画像入力部3により予めカラー画像またはモノクロ画像と識別されるべき基準原稿が光電変換された基準画像データに対する色空間特性を算出し、当該色空間特性を識別基準データとして記憶部82に記憶する画像識別学習部81を備え、前記識別基準データに基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別するように前記画像識別部80を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像入力部により原稿画像が光電変換された画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像識別部を備えている画像処理装置及び当該画像処理装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スキャナなどの画像入力部により原稿画像が光電変換された画像データを構成する各画素の彩度を求め、当該彩度がある閾値以上の画素の存在個数が予め定められた個数以上であるか否かに基づいて当該画像データのカラー判定を行なう画像処理装置が開示されている。このように画像データのカラー判定を自動で行なう機能は、オートカラーセレクト(Auto Color Select:以下、「ACS」と記載する。)と呼ばれている。
【0003】
ところで、画像入力部で原稿画像を画像データに光電変換する際に、CCD特性やレンズ特性などに基づくノイズ成分が当該画像データに重畳し、各画素の彩度が変化することがある。画像データに施される画像処理によっても、同様に各画素の彩度が変化することがある。
【0004】
このような現象により彩度が変化して、当該彩度がACSによるカラー判定の閾値を超えた画素は、モノクロ画素として判断されるべきであるにも関わらずカラー画素であるものとして誤判断されてしまう。ACSでは、誤判断されたカラー画素と本来のカラー画素を区別できないため、画像データに含まれるカラー画素の存在個数が予め定められた個数に近い値になると、誤ったカラー判定が下されることがある。
【0005】
このような誤ったカラー判定が生じる可能性を低下させるものとして、特許文献2には、原稿画像がカラー画像かモノクロ画像か、あるいは、両者の判別が微妙な不定画像かを、所定のレベルに基づいて判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を表示する第1の表示手段とを備えた、画像判定装置が開示されている。
【0006】
特許文献1に開示された画像処理装置に特許文献2に開示された画像判定装置を備えることで、ACSによるカラー判定が困難な画像データに対する判定結果を第1の表示手段で表示して当該カラー判定に対するオペレータの判断を仰ぎ、誤判定を防止することができる。
【特許文献1】特開2002−369012号公報
【特許文献2】特開2001−83759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に開示された画像判定装置を用いる場合、オペレータは、ACSでカラー判定が困難な画像データを扱う毎に、原稿画像を確認して判断を下さねばならず、作業効率や生産性の著しい低下を招いていた。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、オペレータの手を煩わせることなく、オペレータの所望の識別基準に基づいて画像データのカラー判定を行なうことができる画像処理装置及び当該画像処理装置を備えた画像形成装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による画像処理装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、画像入力部により原稿画像が光電変換された画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像識別部を備えている画像処理装置であって、前記画像入力部により予めカラー画像またはモノクロ画像と識別されるべき基準原稿が光電変換された基準画像データに対する色空間特性を算出し、当該色空間特性を識別基準データとして記憶部に記憶する画像識別学習部を備え、前記画像識別部は前記識別基準データに基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する点にある。
【0010】
任意の基準画像を画像入力部で光電変換させることで、画像識別部が画像データを識別する際の基準となる識別基準データを任意に変更することができ、所望の識別結果を得ることができる。
【0011】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記基準画像データの構成画素が所定の色空間を分割した複数の領域の何れに属するかを示すヒストグラムで前記色空間特性が定義され、前記画像識別部は前記画像データに対する色空間特性と前記基準画像データに対する色空間特性の類似度に基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する点にある。
【0012】
ヒストグラムで色空間特性を定義することで、画像データの色空間特性と基準画像データの色空間特性の類似度を容易に識別することができる。
【0013】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記識別基準データの何れを採用するかを選択する識別基準データ選択部を備えている点にある。
【0014】
画像識別学習部により予め複数の識別基準データを記憶部に記憶し、識別基準データ選択部で任意の識別基準データを選択することで、画像識別部で所望の識別結果を得ることができる。
【0015】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記画像識別部は、前記画像データを構成する所定画素がカラー画素であるかモノクロ画素であるかを識別し、識別されたカラー画素数またはモノクロ画素数に基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別するように構成され、前記カラー画素数またはモノクロ画素数に基づいて識別できないときに、前記識別基準データに基づいて識別する点にある。
【0016】
カラー画素数またはモノクロ画素数に基づいてカラー画像であるのかモノクロ画像であるのかを識別することが困難な画像データであっても、画像識別部で確実に識別することができる。
【0017】
本発明による画像形成装置の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた画像処理装置を備え、前記画像識別部による識別結果に基づいて前記画像データをカラープリントするかモノクロプリントするかを切り替えて出力する画像出力部を備えている点にある。
【0018】
例えば、カラー画像とモノクロ画像が混在した複数の画像データを画像出力部で出力するようなときに、画像出力部で各画像データをカラープリントするかモノクロプリントするかを手動で切り替える必要はなく、作業効率や生産性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
上述のように、本発明によれば、オペレータの手を煩わせることなく、オペレータの所望の識別基準に基づいて画像データのカラー判定を行なうことができる画像処理装置及び当該画像処理装置を備えた画像形成装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の画像処理装置を備えた画像形成装置の一例としてのデジタル
複写機(以下、単に「複写機」と記載する。)について説明する。
【0021】
図1に示すように、複写機1は、原稿画像を光電変換して画像データを入力するスキャナ3と、マンマシンインタフェースである操作部6と、スキャナ3から入力された画像データを操作部6で設定された画像処理条件に基づいて変換処理する画像処理部4と、画像処理部4で画像処理された画像データをプリントするプリントエンジン7を備えている。
【0022】
スキャナ3は、原稿に光束を照射する光源と、原稿からの反射光を集光してCCDに導く複数のミラーとレンズと、反射光を受光してRGB成分を有するアナログ画像データを生成するCCDを備えている。画像処理部4は、画像処理用ASICで構成されている。
【0023】
操作部6は、コピー枚数を設定する数値キーやコピー動作の開始時などに操作するコピーキーなどのハードウェアキーと、拡縮設定や濃度設定などの画像処理条件を設定する操作画面を表示する液晶パネルなどで構成される表示部を備えている。プリントエンジン7は、電子写真方式を採用し、感光体と露光装置と現像装置などを備えた感光体ユニットと、定着装置などを備えている。
【0024】
複写機1はシステム制御部2を備えている。システム制御部2は、コマンドデータを伝送するコマンドバス10または画像データを伝送する画像バス11を介して、スキャナ3を制御するスキャナ制御部30と、画像処理部4と、半導体メモリなどでなるメモリ5への画像データの記憶を制御するメモリ制御部5と、操作部6を制御する操作制御部60と、プリントエンジン7を制御するエンジン制御部70と接続されている。
【0025】
システム制御部2は、スキャナ制御部30とメモリ制御部5と操作制御部60とエンジン制御部70を介して、複写機1を統括制御する。システム制御部2とスキャナ制御部30とメモリ制御部5と操作制御部60とエンジン制御部70は、CPUとCPUの動作プログラムが格納されたROMとCPUの作業領域となるRAMとインタフェース回路などの周辺回路を備えた制御基板で構成されている。
【0026】
原稿画像を複写するため操作部6に備えられたコピーキーが操作されると、当該操作を検出した操作制御部60からシステム制御部2に複写動作開始要求のコマンドが入力される。また、操作部6で設定された画像処理条件が操作制御部60からシステム制御部2に入力される。
【0027】
システム制御部2は、スキャナ制御部30にスキャナ3からの画像データの入力を要求するコマンドを出力する。画像処理部4にスキャナ3から入力された画像データに実行すべき画像処理条件をセットする。エンジン制御部70に画像処理部4で画像処理された画像データのプリントを要求するコマンドを出力する。
【0028】
スキャナ制御部30は、原稿画像をスキャナ3で光電変換したアナログデータでなる画像データを画像処理部4に入力する。
【0029】
図2に示すように、画像処理部4は、複数の画像処理ブロックを備えている。夫々の画像処理ブロックは、スキャナ3から入力された画像データをA/D変換してデジタルデータでなる画像データを生成する。当該画像データにシェーディング補正、ライン補正及び空間周波数などを補正するMTF補正を施す。また、写真領域、文字領域、網点領域に当該画像データを像域分離するとともに、ACS機能により当該画像データがカラー画像であるかモノクロ画像であるかを自動判別する。
【0030】
ACS機能による判別結果に基づいて、画像データの色空間をRGBからKまたはCMYKに変換し、当該画像データをモアレ除去し、変倍処理し、墨入れ処理し、ガンマ補正し、像域分離した各領域に応じてフィルタ処理し、2値化処理してメモリ50へDMA転送する。
【0031】
エンジン制御部70は、画像処理部4で画像処理された画像データをメモリ50から読み出し、当該画像データに基づいて、感光体ユニットで用紙にトナー画像を転写し、定着部で当該用紙にトナー画像を熱定着して当該用紙を排紙する。
【0032】
図3に示すように、複写機1は画像処理装置8を備えている。画像処理装置8は、スキャナ3により原稿画像が光電変換された画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像識別部80を備えている。具体的に、画像識別部80は、画像処理部4に備えられた画像処理ブロックで構成されている。
【0033】
画像識別部80は、画像データを構成する所定画素がカラー画素であるかモノクロ画素であるかを識別し、識別されたカラー画素数に基づいて画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する。
【0034】
図4(a)に示すように、画像識別部80は、画像データを同一サイズの複数領域に分割する。なお、図4(a)は、同一サイズの36個の領域に分割された画像データを示しているが、分割数は36個に限定するものではなく、任意の数でよい。
【0035】
画像識別部80は、画像データを構成する各画素のRGB成分の最大値と最小値の差分値を求め、当該差分値が所定閾値以上の画素をカラー画素と識別し、当該差分値が所定閾値未満の画素をモノクロ画素と識別する。
【0036】
所定個数以上のカラー画素を含む領域をカラー領域と識別し、カラー画素数が所定個数未満である領域をモノクロ領域と識別する。画像データが所定数を超えるカラー領域を含んでいるとき、当該画像データはカラー画像として処理する画像データであると識別する。カラー領域数が所定数未満である画像データはモノクロ画像として処理する画像データであると識別する。
【0037】
このとき、画像データに含まれるカラー領域数が所定数と同一であると、画像識別部80は、上述の方法に従って当該画像データを識別することができない。そこで、このような画像データを識別する際の基準となる基準原稿をスキャナ3で光電変換して生成した基準画像データに基づいて、画像識別部80は、当該画像データの識別を行なうように構成されている。
【0038】
図3に示すように、画像処理装置8は、スキャナ3により予めカラー画像と識別されるべき基準原稿が光電変換された基準画像データに対する色空間特性を算出し、当該色空間特性を識別基準データとして記憶部82に記憶する画像識別学習部81を備えている。画像識別学習部81は、画像処理部4に備えられた画像処理ブロックで構成され、記憶部82はメモリ50で構成されている。
【0039】
画像識別部80は、カラー画素数に基づいて識別できないときに、識別基準データに基づいて画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する。つまり、カラー領域数が所定数と同一である画像データについて、画像識別部80は、識別基準データに基づいて画像データを識別するように構成されている。
【0040】
図4(b)に示すように、画像識別学習部81は、RGB色空間を同一サイズの複数のブロックに分割し、画像データを構成する各画素が何れのブロックに属するか判断して、各画素をブロック毎に分類する。図4(b)では、各RGB成分を夫々8ビットで表現し、RGB色空間を同一サイズの64個のブロックに分割している。例えば、ブロックCxには、(R<191〜255>,G<191〜255>,B<191〜255>)の色成分を有する画素が分類される。
【0041】
カラー画像として識別すべき画像データの基準となる識別基準データを記憶部82に記憶するため、オペレータがスキャナ3で基準原稿を読み取らせると、画像識別学習部81は、当該基準原稿がスキャナ3で光電変換された基準画像データの構成画素が所定の色空間を分割した複数の領域の何れに属するかを示すヒストグラムで当該基準画像データの色空間特性を定義する。
【0042】
つまり、図5(a)に示すように、画像識別学習部81は、図4(b)に示すRGB色空間の各ブロックのブロック番号と、各ブロックに属する基準画像データの構成画素数の関係を示すヒストグラムを生成し、当該ヒストグラムを基準画像データの色空間特性として定義する。そして、当該色空間特性を識別基準データとして記憶部82に記憶する。
【0043】
画像識別部80は、図4(b)に示すRGB色空間の各ブロックのブロック番号と、各ブロックに属する画像データの構成画素数の関係を示すヒストグラムを画像データの色空間特性として生成し、当該画像データに対する色空間特性と基準画像データに対する色空間特性の類似度に基づいて画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する。
【0044】
図5(b)に示すように、画像識別部80は、識別基準データ及び識別すべき画像データのヒストグラムの夫々から、画素数が多い上位二つのブロックのブロック番号を夫々の特徴ブロック番号として求める。なお、図5(b)は識別基準データから求めた特徴ブロック番号を示している。特徴ブロック番号が一致するとき、画像識別部80は、基準画像データと識別すべき画像データは類似していると判別し、当該識別すべき画像データをカラー画像として処理するものとして識別する。
【0045】
画像データの色空間を変換する画像処理部4の画像処理ブロックは、画像識別部80の識別結果に基づいて、画像データの色空間をRGBからKまたはCMYKを変換する。エンジン制御部70は、プリントエンジン7を制御して、当該画像データをプリントする。
【0046】
つまり、プリントエンジン7は本発明の画像出力部であり、画像識別部80による識別結果に基づいて画像データをカラープリントするかモノクロプリントするかを切り替えて出力する。
【0047】
以下、図6に示すフローチャートを用いて、画像処理装置8による画像データの識別動作について説明する。
【0048】
複写機1で一連の原稿の複写を行なうに際して、識別基準データを設定するための操作が操作部6で行われて基準原稿がスキャナ3で読み取られ、当該基準原稿が光電変換された基準画像データがスキャナ3から入力されるとともに、画像識別学習部81が起動する(S1)。
【0049】
画像識別学習部81は、当該基準画像データに対する色空間特性を示すヒストグラムを生成し、当該ヒストグラムを識別基準データとして記憶部82に記憶する(S2)。画像識別学習部81は、当該記憶作業が完了すると停止する。
【0050】
不図示の原稿載置部に一連の原稿がセットされて、コピーキーが操作されると(S3)、画像識別部80が起動するとともに、スキャナ3により原稿画像が光電変換された画像データが入力される(S4)。
【0051】
画像識別部80は、画像データの構成画素のカラー識別を行い、カラー画素数に基づいてカラー領域数を計数する(S5)。画像識別部80は、カラー領域数が所定数より多いとき(S6)、当該画像データをカラー画像として処理すべき画像データと識別する(S7)。カラー領域数が所定数より少ないとき(S8)、当該画像データをモノクロ画像として処理すべき画像データと識別する(S9)。
【0052】
画像識別部80は、カラー領域数が所定数と同数であるとき(S8)、当該画像データの色空間特性を示すヒストグラムを生成する(S10)。画像識別部80は、当該ヒストグラムと記憶部82に記憶された識別基準データが類似するとき(S11)、当該画像データをカラー画像として処理すべき画像データと識別する(S7)。類似しないとき(S11)、当該画像データをモノクロ画像として処理すべき画像データと識別する(S9)。
【0053】
一連の原稿の複写が完了するまで(S12)、ステップS5からS11までの動作を繰り返し、当該複写が完了すると(S12)、画像識別部80は停止する。
【0054】
以下に別実施形態を説明する。
【0055】
上述の実施形態では、画像識別部80は、スキャナ3から入力された基準画像データから画像識別学習部81が算出して記憶部82に記憶した色空間特性に基づいて、画像データの識別を行なうものとして説明したが、画像処理装置8に識別基準データの何れを採用するかを選択する識別基準データ選択部を備え、当該識別基準データ選択部が記憶部82から選択した識別基準データに基づいて、画像識別部80が画像データを識別するものであってもよい。以下に詳述する。
【0056】
識別基準データ選択部は、例えば、システム制御部2に備えられる。当該識別基準データ選択部は、CPUが動作プログラムを実行してシステム制御部2に具現化される機能ブロックである。
【0057】
識別基準データを記憶部82に記憶する操作画面が操作されると、当該操作を検出した操作制御部60からの指令によって画像識別学習部81が起動する。当該操作は、任意のタイミングで行えばよい。
【0058】
複写機1で複写を行なうに際して、識別基準データを選択する操作画面を呼び出す操作が操作部6で行われると、識別基準データ選択部が起動する。識別基準データ選択部は、記憶部82に記憶された識別基準データの一覧を表示する操作画面を、操作制御部60を介して操作部6に表示し、当該操作画面に対する操作に基づいて識別基準データを選択する。
【0059】
画像識別部80は、識別基準データ選択部が選択した識別基準データを記憶部82から読み出し、当該識別基準データに基づいて画像データを識別する。当該構成によれば、複写機1で複写を行う度に基準画像をスキャナ3で読み取らせる必要がなく、操作性や生産性が向上する。
【0060】
さらに、各オペレータに対して記憶部82に区画された領域が指定され、画像識別学習部81は、オペレータに対して指定された領域に当該識別基準データを記憶し、識別基準データ選択部は、オペレータに対応する領域から採用する識別基準データを選択するように画像処理装置8が構成されていてもよい。
【0061】
この場合、画像識別学習部81及び識別基準データ選択部は、複写機1に備えられたオペレータを認証する認証部の認証結果に基づいて、操作を行なうオペレータを把握する。画像識別学習部81は、把握したオペレータに指定された領域に識別基準データを記憶し、識別基準データ選択部は、当該領域に記憶された識別基準データから採用する識別基準データを選択する。
【0062】
この構成により、不要な識別基準データに目を通すことなく、オペレータに指定された記憶部82の領域に記憶した識別基準データの中から、容易に採用する識別基準データを選択することができる。
【0063】
上述の実施形態では、画像識別部80は、スキャナ3により予めカラー画像と識別されるべき基準原稿が光電変換された基準画像データに対する色空間特性に基づいて、画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するか識別するものとして説明したが、スキャナ3により予めモノクロ画像と識別されるべき基準原稿が光電変換された基準画像データに対する色空間特性に基づいて、画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するか識別するものであってもよい。
【0064】
上述の実施形態では、画像識別部80は、画像データを構成する所定画素がカラー画素であるかモノクロ画素であるかを識別し、識別されたカラー画素数またはモノクロ画素数に基づいて画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別できないときに、識別基準データに基づいて識別するものとしたが、常に識別基準データに基づいて識別するものであってもよい。
【0065】
上述の実施形態では、RGB色空間を同一サイズの複数のブロックに分割し、画像データを構成する画素が何れのブロックに属するかに基づいて、当該画像データに対する色空間特性として定義するヒストグラムを生成するものとしたが、RGB色空間以外の色空間を複数のブロックに分割して、当該色空間に変換した画像データを構成する画素が当該ブロックの何れに属するかに基づいて、当該画像データに対する色空間特性として定義するヒストグラムを生成するものであってもよい。
【0066】
例えば、HSB色空間や、CMY色空間、YUV色空間などであってもよい。具体的に、HSB色空間を用いる場合には、画像データを構成する画素が、図7に示すようなマンセル表色系の色立体を構成する各ブロックの何れに属するかに基づいて、当該画像データに対する色空間特性として定義するヒストグラムを生成するものであってもよい。
【0067】
また、円柱状に表現され、H成分を円柱の外周に沿って変化させ、S成分を円柱の軸心からの距離によって変化させ、B成分を軸芯に沿って変化させるHSB色空間を各成分で等間隔に分割してブロックを形成し、画像データを構成する画素が各ブロックの何れに属するかに基づいて、当該画像データに対する色空間特性として定義するヒストグラムを生成するものであってもよい。
【0068】
CMY色空間やYUV色空間を用いる場合にもHSB色空間と同様に、夫々の空間を各成分で等間隔に分割してブロックを形成し、画像データを構成する画素が各ブロックの何れに属するかに基づいて、当該画像データに対する色空間特性として定義するヒストグラムを生成するものであってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、画像識別部80は、識別基準データ及び識別すべき画像データのヒストグラムの夫々から、画素数が多い上位二つのブロックのブロック番号を夫々の特徴ブロック番号として求め、特徴ブロック番号が一致するとき、基準画像データと識別すべき画像データは類似していると判別するものとしたが、これに限定するものではない。
【0070】
例えば、閾値画素数を超える画素を含み、かつ、画素数が多い上位二つのブロックのブロック番号を夫々の特徴ブロック番号として求めるものであってもよい。この場合、画像データと基準画像データの類似度がより厳密に判断される。
【0071】
上述の実施形態では、本発明の画像処理装置8を備えた画像形成装置の一例としてのデジタル複写機1について説明したが、画像処理装置8はデジタル複写機以外の画像形成装置(例えば、スキャナ機能を備えた所謂複合機など)に対して搭載可能である。
【0072】
なお、上述した実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】デジタル複写機の機能ブロック図
【図2】画像処理部の説明図
【図3】画像処理装置の説明図
【図4】(a)は複数の領域に分割した画像データの説明図、(b)は複数のブロックに分割したRGB色空間の説明図
【図5】色空間特性を示すヒストグラム
【図6】画像処理装置の動作を説明するフローチャート
【図7】別実施形態の色空間を分割した各ブロックの説明図
【符号の説明】
【0074】
1:画像形成装置(複写機)
3:画像入力部(スキャナ)
7:プリントエンジン
8:画像処理装置
80:画像識別部
81:画像識別学習部
82:記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像入力部により原稿画像が光電変換された画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像識別部を備えている画像処理装置であって、
前記画像入力部により予めカラー画像またはモノクロ画像と識別されるべき基準原稿が光電変換された基準画像データに対する色空間特性を算出し、当該色空間特性を識別基準データとして記憶部に記憶する画像識別学習部を備え、前記画像識別部は前記識別基準データに基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像処理装置。
【請求項2】
前記基準画像データの構成画素が所定の色空間を分割した複数の領域の何れに属するかを示すヒストグラムで前記色空間特性が定義され、前記画像識別部は前記画像データに対する色空間特性と前記基準画像データに対する色空間特性の類似度に基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別する画像処理装置。
【請求項3】
前記識別基準データの何れを採用するかを選択する識別基準データ選択部を備えている請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像識別部は、前記画像データを構成する所定画素がカラー画素であるかモノクロ画素であるかを識別し、識別されたカラー画素数またはモノクロ画素数に基づいて前記画像データをカラー画像として処理するかモノクロ画像として処理するかを識別するように構成され、前記カラー画素数またはモノクロ画素数に基づいて識別できないときに、前記識別基準データに基づいて識別する請求項1から3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の画像処理装置を備え、前記画像識別部による識別結果に基づいて前記画像データをカラープリントするかモノクロプリントするかを切り替えて出力する画像出力部を備えている画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−41349(P2010−41349A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201420(P2008−201420)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】