説明

画像処理装置及び無線通信装置及び画像処理方法及び画像処理プログラム

【課題】能動的に電波を放射する無線通信装置を利用しつつ、無線通信装置を利用しない場合と同様の地上のレーダ画像を得て、無線通信装置の位置に基づき、レーダ画像を高精度で補正する。
【解決手段】合成開口レーダ200はチャープ率kでチャープ変調した送信パルスを送信し、地上で反射した信号を受信信号として受信する。RFIDタグ300は送信パルスを受信すると、別のチャープ率k’でチャープ変調した放射パルスを送信し、受信信号の一部として合成開口レーダ200に受信させる。画像処理装置401は、受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮する等により通常の地上のレーダ画像を再生する。また、受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮する等によりRFIDタグ300が映った画像を再生し、この画像とRFIDタグ300の位置情報とに基づいて地上のレーダ画像を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び無線通信装置及び画像処理方法及び画像処理プログラムに関するものである。本発明は、特に、同期式能動型RFID(Radio・Frequency・Identification)タグによる合成開口レーダ画像の位置情報検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成開口レーダ(SAR:Synthetic・Aperture・Radar)の再生画像から地表における特定の位置を検出する方法として、合成開口レーダからのパルス波を反射するコーナリフレクタ(反射板)を予め地表に設置し、その地点の位置を測量により特定しておくものがある(例えば、特許文献1、2参照)。また、別の方法として、再生画像から反射強度の強い地点を特定し、地図からその地点の位置情報を読み取って照合するものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
また、従来、合成開口レーダからの送信電波を受信・記録し、受信信号の特性を計算し、受信した信号の複製(レプリカ)を生成して合成開口レーダへ打ち返すARC(Active・Radar・Calibrator)という装置がある。ARCに記録された受信信号を解析することで、合成開口レーダの送信電波の性能・劣化具合等を調べることができる。また、ARCは合成開口レーダ画像上に「1点」として明るく映るが、ARCの設置は人が行うため、設置場所の正確な位置を計測することで合成開口レーダ画像上の少なくとも1画素における正確な位置を読み取ることができ、画像の補正等に利用できる。また、ARCから打ち返す電波の強度は事前の校正で判明しているため、合成開口レーダ画像上に映ったARC(1点)の明るさを基礎情報として、合成開口レーダ画像の明るさを後方散乱強度へ換算することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−91650号公報
【特許文献2】特開2004−157397号公報
【特許文献3】特開2003−173449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコーナリフレクタやARCを利用する方法では、コーナリフレクタやARCの設置のために現地調整(設置する場所を管理する行政機関、法人、個人等から許可を得る手続き等)を行ったり、GPS(全地球測位システム)等による現地測量を行ったり、コーナリフレクタやARCの向きに合わせて合成開口レーダからのパルス波の発射方向を決めたりする必要があるため、合成開口レーダ画像を得る前の準備に手間がかかるという課題があった。また、従来の地図を利用する方法では、位置情報の読み取り精度が十分でないため、合成開口レーダ画像から正確な位置を検出することが容易でないという課題があった。
【0006】
本発明は、例えば、能動的に電波を放射する無線通信装置を利用しつつ、無線通信装置を利用しない場合と同様の地上のレーダ画像を得て、無線通信装置の位置に基づき、レーダ画像を高精度で補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様に係る画像処理装置は、
飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記受信信号を取得する信号取得部と、
地上に設置された無線通信装置であって、前記レーダにより送信された第1パルス信号を受信すると、受信した第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる無線通信装置の地理上の位置を示す位置情報を取得する情報取得部と、
前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮して第1圧縮信号を生成し、生成した第1圧縮信号から地上のレーダ画像を処理装置により再生する画像再生部と、
前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮して第2圧縮信号を生成し、生成した第2圧縮信号から、前記画像再生部により再生されたレーダ画像における前記無線通信装置の相対位置を特定し、特定した相対位置と前記情報取得部により取得された位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を処理装置により補正する画像処理部とを備えることを特徴とする。
【0008】
k’=−k×A(0<A≦1)であることを特徴とする。
【0009】
前記レーダは、前記第1パルス信号を所定のパルス繰り返し間隔PRIごとに生成して送信し、
前記無線通信装置は、前記第2パルス信号をパルス繰り返し間隔PRIごとに生成し、生成した第2パルス信号のうち所定の順番N(NはN>0となる整数の部分集合)の第2パルス信号については符号を反転した後、生成した第2パルス信号を送信し、
前記画像再生部は、前記信号取得部により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率kでレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第1圧縮信号を生成し、
前記画像処理部は、前記信号取得部により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率k’でレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号のうち順番Nの第2パルス信号については符号を反転した後、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第2圧縮信号を生成することを特徴とする。
【0010】
Nは偶数又は奇数の全体集合であることを特徴とする。
【0011】
前記無線通信装置は、前記無線通信装置の識別子を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得部は、取得した位置情報を前記無線通信装置の識別子と対応付けて記憶装置に記憶し、
前記画像処理部は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記無線通信装置の識別子を取得し、取得した識別子と対応する位置情報を記憶装置から読み取り、特定した相対位置と読み取った位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を補正することを特徴とする。
【0012】
前記無線通信装置は、測位衛星からの測位信号に基づいて前記位置情報を生成し、
前記情報取得部は、前記無線通信装置により生成された位置情報を取得することを特徴とする。
【0013】
前記無線通信装置は、前記位置情報を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得部は、前記画像処理部により生成された第2圧縮信号から前記位置情報を取得することを特徴とする。
【0014】
前記無線通信装置は、周囲の環境を観測する環境センサを具備し、前記環境センサの観測結果を環境情報として示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記画像処理部は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記環境情報を取得し、取得した環境情報に基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を加工することを特徴とする。
【0015】
本発明の一の態様に係る無線通信装置は、
地上に設置された無線通信装置であり、
飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記第1パルス信号を受信する受信部と、
前記受信部により前記第1パルス信号が受信されると、受信された第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる送信部とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一の態様に係る画像処理方法は、
画像処理装置の信号取得部が、飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記受信信号を取得し、
前記画像処理装置の情報取得部が、地上に設置された無線通信装置であって、前記レーダにより送信された第1パルス信号を受信すると、受信した第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる無線通信装置の地理上の位置を示す位置情報を取得し、
前記画像処理装置の画像再生部が、前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮して第1圧縮信号を生成し、生成した第1圧縮信号から地上のレーダ画像を処理装置により再生し、
前記画像処理装置の画像処理部が、前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮して第2圧縮信号を生成し、生成した第2圧縮信号から、前記画像再生部により再生されたレーダ画像における前記無線通信装置の相対位置を特定し、特定した相対位置と前記情報取得部により取得された位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を処理装置により補正することを特徴とする。
【0017】
本発明の一の態様に係る画像処理プログラムは、
飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記受信信号を取得する信号取得処理と、
地上に設置された無線通信装置であって、前記レーダにより送信された第1パルス信号を受信すると、受信した第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる無線通信装置の地理上の位置を示す位置情報を取得する情報取得処理と、
前記信号取得処理により取得された受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮して第1圧縮信号を生成し、生成した第1圧縮信号から地上のレーダ画像を処理装置により再生する画像再生処理と、
前記信号取得処理により取得された受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮して第2圧縮信号を生成し、生成した第2圧縮信号から、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像における前記無線通信装置の相対位置を特定し、特定した相対位置と前記情報取得処理により取得された位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像を処理装置により補正する画像処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
k’=−k×A(0<A≦1)であることを特徴とする。
【0019】
前記レーダは、前記第1パルス信号を所定のパルス繰り返し間隔PRIごとに生成して送信し、
前記無線通信装置は、前記第2パルス信号をパルス繰り返し間隔PRIごとに生成し、生成した第2パルス信号のうち所定の順番N(NはN>0となる整数の部分集合)の第2パルス信号については符号を反転した後、生成した第2パルス信号を送信し、
前記画像再生処理は、前記信号取得処理により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率kでレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第1圧縮信号を生成し、
前記画像処理は、前記信号取得処理により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率k’でレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号のうち順番Nの第2パルス信号については符号を反転した後、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第2圧縮信号を生成することを特徴とする。
【0020】
Nは偶数又は奇数の全体集合であることを特徴とする。
【0021】
前記無線通信装置は、前記無線通信装置の識別子を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得処理は、取得した位置情報を前記無線通信装置の識別子と対応付けて記憶装置に記憶し、
前記画像処理は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記無線通信装置の識別子を取得し、取得した識別子と対応する位置情報を記憶装置から読み取り、特定した相対位置と読み取った位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像を補正することを特徴とする。
【0022】
前記無線通信装置は、測位衛星からの測位信号に基づいて前記位置情報を生成し、
前記情報取得処理は、前記無線通信装置により生成された位置情報を取得することを特徴とする。
【0023】
前記無線通信装置は、前記位置情報を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得処理は、前記画像処理により生成された第2圧縮信号から前記位置情報を取得することを特徴とする。
【0024】
前記無線通信装置は、周囲の環境を観測する環境センサを具備し、前記環境センサの観測結果を環境情報として示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記画像処理は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記環境情報を取得し、取得した環境情報に基づいて、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像を加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一の態様によれば、画像処理装置が、レーダと異なるチャープ率でチャープ変調した信号を送信する無線通信装置を利用するため、レーダの受信信号をレーダと同じチャープ率でレンジ圧縮することで無線通信装置を利用しない場合と同様の地上のレーダ画像が得られ、レーダの受信信号を無線通信装置と同じチャープ率でレンジ圧縮することでレーダ画像における無線通信装置の相対位置が特定でき、特定した相対位置と無線通信装置の地理上の位置とに基づいてレーダ画像を高精度で補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1に係る画像処理システムの全体構成図である。
【図2】実施の形態1に係るRFIDタグの構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係るRFIDタグのID設定部の構成例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係るRFIDタグによる放射パルス生成処理の手順を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態1に係る画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1に係る画像処理装置による通常のSAR再生処理及びタグ情報抽出のためのSAR再生処理の手順を示す図である。
【図9】実施の形態1に係るタグ情報抽出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0028】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る画像処理システム100の全体構成図である。
【0029】
図1において、画像処理システム100は、合成開口レーダ200(SAR)、RFID(Radio・Frequency・Identification)タグ300、合成開口レーダ画像処理設備400を備える。この図では、RFIDタグ300を2つ示しているが、RFIDタグ300は1つ又は3つ以上あってもよい。
【0030】
まず、合成開口レーダ200について説明する。
【0031】
合成開口レーダ200は、人工衛星や航空機等の飛行体に搭載されたレーダの一例である。合成開口レーダ200は、飛行体の進行方向(アジマス方向)に直角(レンジ方向)にマイクロ波(波長が約1mm〜1mの電磁波)を地表面に向かって照射し、観測対象物から戻ってくる電磁波のはね返りを受信する。その受信信号からは地表面の画像を得ることができるため、合成開口レーダ200は、画像レーダ、あるいは、イメージングレーダとも呼ばれる。合成開口レーダ200は、光学センサでは困難な夜間、雨天・曇天時、火山の噴煙に地表が覆われた状況下等における情報収集に有効である。
【0032】
通常、合成開口レーダ200は、航空機に搭載されるものでは約10km、人工衛星に搭載されるものでは約60kmのビーム幅(観測幅)で地表面にパルス波を照射し、その反射波を受信することで、帯状に地表面のデータを取得する。アジマス方向の分解能はビーム幅で決まり、ビーム幅はアンテナ長に反比例するため、従前のレーダでは、アンテナの実開口長を長くして高分解能化を図っていた。しかし、プラットフォームに限界があるため、合成開口レーダ200では、信号処理により等価的にアンテナ長を増大して高分解能化を図っている。つまり、合成開口レーダ200では、信号処理によって受信信号を合成し、あたかも大きなアンテナでデータを取得したようにすることで、アジマス方向の分解能を向上させている。
【0033】
本実施の形態において、合成開口レーダ200は、飛行体の飛行中に、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調(一次関数的に周波数を変化させるため、直線状周波数変調ともいう)した送信パルス(第1パルス信号)を所定のパルス繰り返し間隔PRIごとに生成する。合成開口レーダ200は、生成した送信パルスを合成開口レーダアンテナ201から地上に送信する。合成開口レーダ200は、送信した送信パルスが地上で反射した信号を受信信号として合成開口レーダアンテナ201で受信する。地上において、合成開口レーダアンテナ201から送信パルスが送信された領域に、RFIDタグ300が設置されている場合、合成開口レーダ200は、RFIDタグ300からの放射パルス(第2パルス信号)を受信信号の一部として合成開口レーダアンテナ201で受信する。合成開口レーダ200は、RFIDタグ300からの放射パルスと、RFIDタグ300が設置された地点を含む地上からの反射波とが混ざった受信信号を合成開口レーダ観測データとして出力する。合成開口レーダ観測データは、例えば、受信信号の振幅や位相等の信号情報を時系列で記録したデータである。飛行体が人工衛星の場合、合成開口レーダ観測データは、空中伝送(いわゆるダウンリンク)により合成開口レーダ画像処理設備400へ伝送される。飛行体が航空機の場合、航空機の内部に合成開口レーダ観測データを記録するデータレコーダが搭載され、着陸後にデータレコーダが合成開口レーダ画像処理設備400へ搬送される。
【0034】
なお、本実施の形態では、上記のような送信パルスを生成して送信できるものであれば、合成開口レーダ200に代えて、他の種類のレーダを利用しても構わない。
【0035】
次に、RFIDタグ300について説明する。
【0036】
RFIDタグ300は、地上に設置された無線通信装置の一例である。RFIDタグ300は、ID情報(識別子)等が埋め込まれたタグである。通常、タグは、電磁界や電波等を用いた近距離(周波数帯によって異なるが、数cm〜数m)の無線通信によりRFIDリーダ/ライタと情報のやり取りをするものである。タグには、パッシブタグと呼ばれる受動型のタグとアクティブタグと呼ばれる能動型のタグとの2種類がある。本実施の形態では、RFIDタグ300は、能動型のタグである。RFIDタグ300は、無線局の免許を受ける必要のない特定小電力無線局であることが望ましい。
【0037】
本実施の形態において、RFIDタグ300は、合成開口レーダ200により送信された送信パルス(第1パルス信号)をアンテナ部301で受信する。RFIDタグ300は、合成開口レーダ200からの送信パルスを受信すると、受信した送信パルスのチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した放射パルス(第2パルス信号)を、合成開口レーダ200と同じパルス繰り返し間隔PRIごとに生成する。RFIDタグ300は、生成した放射パルスをアンテナ部301から合成開口レーダ200に送信する。前述したように、合成開口レーダ200は、RFIDタグ300からの放射パルスを受信信号の一部として受信する。即ち、RFIDタグ300は、送信した放射パルスを受信信号の一部として合成開口レーダ200に受信させる。例えば、放射パルスの中心周波数を送信パルスの中心周波数とほぼ一致するように設定すれば、放射パルスを合成開口レーダ200に否応なく受信させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、上記のような放射パルスを生成して送信できるものであれば、RFIDタグ300に代えて、他の種類の無線通信装置を利用しても構わない。
【0039】
RFIDタグ300は、複数のGPS(全地球測位システム)衛星からなるGPS衛星群101からGPS信号(測位信号)をGPS受信機302で受信する。RFIDタグ300は、受信したGPS信号に基づいて、自己の地理上の位置を測定する。RFIDタグ300は、測定した位置を示す位置情報を生成し、生成した位置情報を出力する。位置情報は、例えば、RFIDタグ300が設置された地点の緯度・経度、高度等を示す情報である。
【0040】
図2は、RFIDタグ300の構成を示すブロック図である。
【0041】
図2において、RFIDタグ300は、前述したアンテナ部301のほか、ID設定部303、信号処理部304、外部装置インタフェース部305、ネットワークインタフェース部306、RFフィルタ部307、送受信切替部308、受信部309、タイマ部310、給電制御部311、送信部312、増幅部313、電源部314を備える。また、RFIDタグ300は、前述したGPS受信機302等の外部装置321、ルータ322を具備する。
【0042】
ID設定部303は、RFIDタグ300のID情報を設定する。ID設定部303は、例えば図3に示すようなディップスイッチで構成することができる。この例では、ID情報を12ビットとし、1つのディップスイッチにつきID情報の1ビットが設定できるようにID設定部303を構成している。
【0043】
信号処理部304は、CPU(Central・Processing・Unit)やメモリ等から構成される。信号処理部304は、ID設定部303で設定されたID情報をCPUにより読み取ってメモリに記憶する。また、信号処理部304は、外部装置インタフェース部305を介して外部装置321から情報を取得し、その情報を必要に応じてCPUにより加工等した上でメモリに記憶する。例えば、信号処理部304は、外部装置インタフェース部305を介してGPS受信機302からGPS信号を取得し、取得したGPS信号(即ち、航法データ)に基づいて、前述した位置情報をCPUにより生成し、生成した位置情報をメモリに記憶する。信号処理部304は、ネットワークインタフェース部306、ルータ322を介して、メモリに記憶した位置情報等の情報を合成開口レーダ画像処理設備400に送信(出力)する。また、信号処理部304は、合成開口レーダ200により送信された送信パルスをアンテナ部301から、RFフィルタ部307、送受信切替部308、受信部309、タイマ部310を介して受信する。信号処理部304は、送信パルスを受信すると、後述する放射パルス生成処理をCPUにより実行して放射パルスを生成する。このとき、信号処理部304は、メモリから任意の情報を読み出し、読み出した情報を載せた放射パルスを生成することができる。信号処理部304は、生成した放射パルスを、給電制御部311、送信部312、増幅部313、送受信切替部308、RFフィルタ部307を介して、アンテナ部301から送信する。
【0044】
本実施の形態では、信号処理部304は、メモリからID情報をCPUにより読み出し、読み出したID情報を載せた放射パルスを生成するものとする。つまり、本実施の形態では、RFIDタグ300は、RFIDタグ300のID情報を示す信号を放射パルスとして送信する。このとき、RFIDタグ300は、例えば、最初にID情報を載せていない放射パルスを送信し、その後に、ID情報を載せた放射パルスを送信する。ID情報が12ビットであれば、RFIDタグ300は、最初の放射パルスの後に、各ビットを載せた12個の放射パルスを送信する。最初の放射パルスは、RFIDタグ300の位置を知らせるために送信されるものであり、他の放射パルスよりも信号強度が高く設定される。一方、ID情報の各ビットを載せた放射パルスは、ビット値を知らせるために送信されるものであり、ビット値に応じて信号強度が設定される(例えば、信号強度を、ビット値が0ならば弱又は強とし、ビット値が1ならば逆とする)。なお、RFIDタグ300は、複数ビットを1つの放射パルスに載せて送信してもよいし、ID情報を載せた放射パルスのみを送信してもよい。また、信号強度の高低以外によってビット値を表すようにしてもよい。
【0045】
電源部314は、各部に電力を供給する。
【0046】
図4は、RFIDタグ300による放射パルス生成処理の手順を示す図である。
【0047】
図4のステップS101(ベースバンド変換)において、信号処理部304は、合成開口レーダ200から送信された送信パルスを、受信部309でベースバンド変換する。ベースバンド変換とは、中心周波数を0Hz(ヘルツ)へ変換する処理のことをいう。この処理により元は実数であった信号が複素数となる。ベースバンド変換された送信パルスは、下式のように表すことができる。
g(t)=A×[cos{πk(t−τ)}+i×sin{πk(t−τ)}](ただし0≦t≦τ)
ここで、tは時刻であり、送信パルスが信号処理部304に入着した時刻を0とする。τは送信パルスのパルス幅である。iは虚数単位である。即ち、i=√(−1)である。前述したように、kは送信パルスのチャープ率である。k>0の場合をアップチャープ(一次関数的に周波数を増加させること)、k<0の場合をダウンチャープ(一次関数的に周波数を減少させること)という。
【0048】
ステップS102(パラメータ計測)において、信号処理部304は、上記の式から、以下のように位相φ(t)をCPUにより計算する。
φ(t)=arctan(g(t)の虚部/g(t)の実部)
ここで、arctanはtangentの逆関数である。ただし、ここでのarctan関数は象限を考慮して−πから+πラジアンの値を出力する関数とする(C言語のatan2関数と同じ)。
【0049】
arctan関数で得られる位相φ(t)は−πから+πラジアンの値しかとり得ない。これを連続化(位相アンラッピング)することで、位相φ(t)は以下のように二次関数となる。
φ(t)=πk(t−τ)+C(Cは定数)
【0050】
信号処理部304は、φ(t)に対して最小二乗近似等を用いることで、未知変数のk、τ、CをCPUにより決定する。
【0051】
ステップS103(パルス数カウント)において、信号処理部304は、合成開口レーダ200からの送信パルスが入着する度に、パルス数Nをカウントしておく。Nは後述するステップS111(パルス反転)にて使用する。
【0052】
ステップS104(参照関数パラメータ決定)及びステップS105(レンジ逆参照関数生成)において、信号処理部304は、ステップS102で計測されたチャープ率kとパルス幅τにより、レンジ逆参照関数r(t)を作成する。
r(t)=A×[cos{πk’(t−τ)}+i×sin{πk’(t−τ)}](ただし0≦t≦τ)
ここで、k’=−kとする。即ち、信号処理部304は、合成開口レーダ200の送信パルスのチャープ率kとは逆の符号をもつチャープ率k’をCPUにより設定する。あるいは、符号のみならず、大きさも変えて、k’=−k×A(Aは1以下の定数)とする。あるいは、k’をk’≠kとなる任意の値に設定する。本実施の形態では、k’≠kとすることで、後述するように、通常のSAR再生処理により得られる画像上に、RFIDタグ300からの放射パルスが鮮明に映らないようにしている(放射パルスがレンジ圧縮されないようにしている)。つまり、k’≠kとすることによって、放射パルスを、後述する通常のSAR再生処理にてレンジ圧縮処理が実行されたときに振幅が一定以上にならないように制御する。
【0053】
ステップS106(送信情報生成)において、信号処理部304は、送信するID情報(あるいは、後述するように、位置情報、その他の情報を含む任意の情報)をメモリから読み出して、必要に応じてCPUにより変換処理を行い、ビット列(送信時系列データ)を得る。
【0054】
ステップS107(フーリエ変換)において、信号処理部304は、ステップS105で作成したr(t)をCPUによりフーリエ変換する。ここで、r(t)をフーリエ変換したものをR(f)と記す。
【0055】
ステップS108(フーリエ変換)において、信号処理部304は、ステップS106で得たID情報のビット列をCPUによりフーリエ変換する。ここで、ID情報のビット列をx(t)と記す。x(t)をフーリエ変換したものをX(f)と記す。
【0056】
ステップS109(乗算)において、信号処理部304は、ステップS108で得たX(f)にステップS107で得たR(f)をCPUにより乗ずる。ここで、下記のように、X(f)にR(f)を乗じたものをY(f)と記す。
Y(f)=X(f)×R(f)
【0057】
ステップS110(逆フーリエ変換)において、信号処理部304は、ステップS109で得たY(f)をCPUにより逆フーリエ変換する。ここで、Y(f)を逆フーリエ変換したものをy(t)と記す。
【0058】
ステップS111(パルス反転)において、信号処理部304は、以下のように、1パルスおきに、y(t)の符号をCPUにより反転させ、y’(t)とする。
y’(t)=S(N)×y(t)
ここで、S(N)はNが偶数の場合に+1、奇数の場合に−1となる(逆に奇数の場合に+1、偶数の場合に−1でもよい)。このように、放射パルスを1パルスおきに反転させることで、後述するように、通常のSAR再生処理により得られる画像上に、RFIDタグ300からの放射パルスが鮮明に映らないようにしている(放射パルスがアジマス圧縮されないようにしている)。なお、放射パルスを交互に反転させる代わりに、ランダムに反転させてもよい。あるいは、放射パルスのうち、予め決まった順番のパルスのみを反転させてもよい。いずれの場合も、放射パルスが反転される率と反転されない率とがほぼ等しくなることが望ましい(交互に反転させる場合は、等しくなる)。これによって、放射パルスを、後述する通常のSAR再生処理にてアジマス圧縮処理が実行されたときに振幅が一定以上にならないように制御することができる。言い換えれば、後述する通常のSAR再生処理にて、放射パルスがアジマス圧縮されにくくなる。
【0059】
このように、本実施の形態では、RFIDタグ300は、生成した放射パルスのうち、所定の順番Nの放射パルスについては符号を反転した後、生成した放射パルスを送信する。Nは、N>0となる整数の部分集合であるが、例えば、偶数又は奇数の全体集合とする(この場合、放射パルスが1パルスずつ交互に反転される)。
【0060】
ステップS111の後、信号処理部304は、上記y’(t)を送信部312へ伝達し、ベースバンド変換して(中心周波数を合成開口レーダ200で受信可能な値に変換して)合成開口レーダ200へ放射する。
【0061】
次に、合成開口レーダ画像処理設備400について説明する。
【0062】
合成開口レーダ画像処理設備400は、地上に設置され、画像処理装置401を具備している。なお、合成開口レーダ画像処理設備400は、合成開口レーダ200が搭載された飛行体に設置されても構わない。
【0063】
図5は、画像処理装置401の構成を示すブロック図である。
【0064】
図5において、画像処理装置401は、信号取得部402、情報取得部403、画像再生部404、画像処理部405を備える。各部の動作については後述する。
【0065】
また、画像処理装置401は、処理装置411、記憶装置412、入力装置413、出力装置414等のハードウェアを備える。ハードウェアは画像処理装置401の各部によって利用される。例えば、処理装置411は、画像処理装置401の各部でデータや情報の演算、加工、読み取り、書き込み等を行うために利用される。記憶装置412は、そのデータや情報を記憶するために利用される。また、入力装置413は、そのデータや情報を入力するために、出力装置414は、そのデータや情報を出力するために利用される。
【0066】
図6は、画像処理装置401のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0067】
図6において、画像処理装置401は、コンピュータであり、LCD901(Liquid・Crystal・Display)、キーボード902(K/B)、マウス903、FDD904(Flexible・Disk・Drive)、CDD905(Compact・Disc・Drive)、プリンタ906といったハードウェアデバイスを備えている。これらのハードウェアデバイスはケーブルや信号線で接続されている。LCD901の代わりに、CRT(Cathode・Ray・Tube)、あるいは、その他の表示装置が用いられてもよい。マウス903の代わりに、タッチパネル、タッチパッド、トラックボール、ペンタブレット、あるいは、その他のポインティングデバイスが用いられてもよい。
【0068】
画像処理装置401は、プログラムを実行するCPU911を備えている。CPU911は、処理装置411の一例である。CPU911は、バス912を介してROM913(Read・Only・Memory)、RAM914(Random・Access・Memory)、通信ボード915、LCD901、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905、プリンタ906、HDD920(Hard・Disk・Drive)と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。HDD920の代わりに、フラッシュメモリ、光ディスク装置、メモリカードリーダライタ又はその他の記憶媒体が用いられてもよい。
【0069】
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、HDD920は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置412の一例である。通信ボード915、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905は、入力装置413の一例である。また、通信ボード915、LCD901、プリンタ906は、出力装置414の一例である。
【0070】
通信ボード915は、LAN(Local・Area・Network)等に接続されている。通信ボード915は、LANに限らず、IP−VPN(Internet・Protocol・Virtual・Private・Network)、広域LAN、ATM(Asynchronous・Transfer・Mode)ネットワークといったWAN(Wide・Area・Network)、あるいは、インターネットに接続されていても構わない。LAN、WAN、インターネットは、ネットワークの一例である。
【0071】
HDD920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。プログラム群923には、本実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが含まれている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。ファイル群924には、本実施の形態の説明において、「〜データ」、「〜情報」、「〜ID(識別子)」、「〜フラグ」、「〜結果」として説明するデータや情報や信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」や「〜テーブル」の各項目として含まれている。「〜ファイル」や「〜データベース」や「〜テーブル」は、RAM914やHDD920等の記憶媒体に記憶される。RAM914やHDD920等の記憶媒体に記憶されたデータや情報や信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出、検索、参照、比較、演算、計算、制御、出力、印刷、表示といったCPU911の処理(動作)に用いられる。抽出、検索、参照、比較、演算、計算、制御、出力、印刷、表示といったCPU911の処理中、データや情報や信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0072】
本実施の形態の説明において用いるブロック図やフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示す。データや信号は、RAM914等のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク(FD)、CDD905のコンパクトディスク(CD)、HDD920の磁気ディスク、光ディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)、あるいは、その他の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912、信号線、ケーブル、あるいは、その他の伝送媒体により伝送される。
【0073】
本実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜工程」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。即ち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアのみ、あるいは、素子、デバイス、基板、配線といったハードウェアのみで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、あるいは、ソフトウェアとハードウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されていても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。即ち、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0074】
図7は、画像処理装置401の動作(本実施の形態に係る画像処理方法、本実施の形態に係る画像処理プログラムの処理手順)を示すフローチャートである。なお、画像処理装置401の動作は、オフラインのバッチ処理として実行されてもよいし、リアルタイム処理として実行されてもよい。
【0075】
図7のステップS201(信号取得処理)において、信号取得部402は、合成開口レーダ200から、合成開口レーダ200により出力される合成開口レーダ観測データ(受信信号)を取得して記憶装置412に記憶する。ここで、合成開口レーダ200が搭載された飛行体が人工衛星の場合、信号取得部402は、人工衛星から合成開口レーダ画像処理設備400へ伝送される合成開口レーダ観測データを直接受信する。合成開口レーダ200が搭載された飛行体が航空機の場合、信号取得部402は、合成開口レーダ画像処理設備400へ搬送されるデータレコーダから合成開口レーダ観測データを読み取る。
【0076】
ステップS202(情報取得処理)において、情報取得部403は、RFIDタグ300から、ネットワーク経由で、RFIDタグ300によりルータ322を介して送信される位置情報等の情報を受信(取得)して記憶装置412に記憶する。このとき、情報取得部403は、例えばRFIDタグ300から位置情報とあわせてRFIDタグ300のID情報を受信する等により、RFIDタグ300のID情報を取得し、取得した位置情報をRFIDタグ300のID情報と対応付けて記憶装置412に記憶する。
【0077】
ステップS203(画像再生処理)において、画像再生部404は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データを記憶装置412から読み取る。画像再生部404は、読み取った合成開口レーダ観測データに対して、後述する通常のSAR再生処理を処理装置411により実行して地上のレーダ画像を再生する。
【0078】
ステップS204(画像処理)において、画像処理部405は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データを記憶装置412から読み取る。画像処理部405は、読み取った合成開口レーダ観測データに対して、後述するタグ情報抽出のためのSAR再生処理を処理装置411により実行して、画像再生部404により再生されたレーダ画像におけるRFIDタグ300の相対位置を特定する。このとき、画像処理部405は、タグ情報抽出の結果としてRFIDタグ300のID情報を取得し、取得したID情報と対応する位置情報を記憶装置412から読み取る。画像処理部405は、特定したRFIDタグ300の相対位置と、読み取った位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、画像再生部404により再生されたレーダ画像を処理装置411により補正する。
【0079】
図8は、画像処理装置401による通常のSAR再生処理及びタグ情報抽出のためのSAR再生処理の手順を示す図である。
【0080】
まず、通常のSAR再生処理におけるレンジ圧縮処理について説明する。
【0081】
図8のステップS301(レンジ参照関数生成)において、画像再生部404は、下記のレンジ参照関数を処理装置411により作成する。
r(t)=A×[cos{πk(t−τ)}+i×sin{πk(t−τ)}](ただし0≦t≦τ)
ここで、前述したように、kは送信パルスのチャープ率、τは送信パルスのパルス幅である。その他についても、前述したものと同様である。
【0082】
ステップS302(フーリエ変換、複素共役)において、画像再生部404は、ステップS301で作成したr(t)を処理装置411によりフーリエ変換し、R(f)を作成する。
【0083】
ステップS303(レンジ方向のフーリエ変換)において、画像再生部404は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データx(t,s)を処理装置411によりレンジ方向にフーリエ変換し、X(f,s)とする。ここで、tはレンジ方向(合成開口レーダ200の電波送信方向)の時間変数、sはアジマス方向(合成開口レーダ200の進行方向)の時間変数である。
【0084】
ステップS304(乗算)において、画像再生部404は、以下のように、ステップS303で得たX(f,s)にステップS302で得たR(f)の複素共役を処理装置411により乗じて、Y(f,s)とする。
Y(f,s)=X(f,s)×R(f)*(*は複素共役)
【0085】
ステップS305(レンジ方向の逆フーリエ変換)において、画像再生部404は、ステップS304で得たY(f,s)を処理装置411によりレンジ方向に逆フーリエ変換し、第1観測信号y(t,s)を得る。
【0086】
RFIDタグ300から送信された放射パルスはチャープ率kと異なるチャープ率k’を用いて作成されている。このため、上記のレンジ圧縮処理ではパルス圧縮されず、広がりのある信号のままである。他方、地上からの反射波(第1観測信号)はチャープ率kの信号が地表からはね返ったものであり、上記のレンジ圧縮処理によりパルス圧縮され、S/N(信号対雑音)比が格段に向上する。
【0087】
次に、タグ情報を抽出するためのSAR再生処理におけるレンジ圧縮処理について説明する。
【0088】
図8のステップS401(レンジ参照関数生成)において、画像処理部405は、下記のレンジ参照関数を処理装置411により作成する。
r’(t)=A×[cos{πk’(t−τ)}+i×sin{πk’(t−τ)}}(ただし0≦t≦τ)
ここで、前述したように、k’はRFIDタグ300の放射パルスのチャープ率であり、既知であるか、又は、既知の計算方法によりkから求められるものとする。τは放射パルスのパルス幅(送信パルスと同じ)である。その他についても、前述したものと同様である。
【0089】
ステップS402(フーリエ変換、複素共役)において、画像処理部405は、ステップS401で作成したr’(t)を処理装置411によりフーリエ変換し、R’(f)を作成する。
【0090】
ステップS403(レンジ方向のフーリエ変換)において、画像処理部405は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データx(t,s)を処理装置411によりレンジ方向にフーリエ変換し、X(f,s)とする。ここで、前述したように、tはレンジ方向(合成開口レーダ200の電波送信方向)の時間変数、sはアジマス方向(合成開口レーダ200の進行方向)の時間変数である。
【0091】
ステップS404(乗算)において、画像処理部405は、以下のように、ステップS403で得たX(f,s)にステップS402で得たR’(f)の複素共役を処理装置411により乗じて、Y’(f,s)とする。
Y’(f,s)=X(f,s)×R’(f)*(*は複素共役)
【0092】
ステップS405(レンジ方向の逆フーリエ変換)において、画像処理部405は、ステップS404で得たY’(f,s)を処理装置411によりレンジ方向に逆フーリエ変換し、第2観測信号y’(t,s)を得る。
【0093】
RFIDタグ300から送信された放射パルスはチャープ率kと異なるチャープ率k’を用いて作成されている。このため、上記のように、チャープ率k’を用いてレンジ圧縮処理を行うと、RFIDタグ300からの放射パルス(第2観測信号)はパルス圧縮され、S/N比が向上する。一方、地上からの反射波はチャープ率kの信号が地表からはね返ったものであるため、上記のレンジ圧縮処理ではパルス圧縮されず、広がりをもった信号のままである。
【0094】
次に、通常のSAR再生処理におけるアジマス圧縮処理について説明する。
【0095】
ステップS306(アジマス参照関数生成)において、画像再生部404は、アジマス参照関数u(s)を処理装置411により作成する。式は省略する。
【0096】
ステップS307(フーリエ変換、複素共役)において、画像再生部404は、ステップS306で作成したu(s)を処理装置411によりフーリエ変換し、U(f)を作成する。
【0097】
ステップS308(アジマス方向のフーリエ変換)において、画像再生部404は、ステップS305で得た第1観測信号y(t,s)を処理装置411によりアジマス方向にフーリエ変換し、V(t,f)とする。
【0098】
ステップS309(乗算)において、画像再生部404は、以下のように、ステップS308で得たV(t,f)にステップS307で得たU(f)の複素共役を処理装置411により乗じて、W(t,f)とする。
W(t,f)=V(t,f)×U(f)*(*は複素共役)
【0099】
ステップS310(アジマス方向の逆フーリエ変換)において、画像再生部404は、ステップS309で得たW(t,f)を処理装置411によりアジマス方向に逆フーリエ変換し、w(t,s)を得る。これが通常の再生画像となる。
【0100】
RFIDタグ300から送信された放射パルスは1パルスおきに符号を反転させているため、上記のアジマス圧縮処理では全くアジマス圧縮されず、広がりのある信号のままである。他方、地表面からの反射波はアジマス圧縮され、S/N比が格段に向上する。
【0101】
次に、タグ情報を抽出するためのSAR再生処理におけるアジマス圧縮処理について説明する。
【0102】
ステップS406(パルス数カウント)において、画像処理部405は、ステップS405で第2観測信号y’(t,s)が得られる度に、パルス数Nをカウントしておく。
【0103】
ステップS407(パルス反転)において、画像処理部405は、以下のように、1パルスおきに、y’(t,s)の符号をCPUにより反転させ、y’’(t,s)とする。
y’’(t,s)=S(N)×y’(t,s)
ここで、前述したように、S(N)はNが偶数の場合に+1、奇数の場合に−1となる(逆に奇数の場合に+1、偶数の場合に−1でもよい)。このように、タグ情報抽出のためのレンジ圧縮結果である第2観測信号の符号を1パルスおきに反転させる。
【0104】
ステップS408〜S412において、画像処理部405は、ステップS306〜S310の通常のアジマス圧縮処理と同じ処理を処理装置411により行い、w’(t,s)を得る。これがタグ情報を抽出した再生画像となる。
【0105】
RFIDタグ300から送信された放射パルスは1パルスおきに符号が反転しており、これを元に戻してから上記のアジマス圧縮処理を行うことで、RFIDタグ300からの放射パルスはアジマス圧縮され、S/N比が向上する。一方、地表面からの反射波は1パルスおきに符号が反転されることで波形が壊されるため、アジマス圧縮されず、広がりをもっと信号のままである。
【0106】
このように、本実施の形態では、通常のSAR再生処理(レンジ圧縮、アジマス圧縮)を行うと、地表面からの反射波は画像化されるが、RFIDタグ300からの放射パルスはレンジ圧縮においてもアジマス圧縮においてもパルス圧縮されず(S/N比が向上せず)、広がりをもつ暗いノイズ状態となる。また、RFIDタグ300のチャープ率がkではなくk’であること、及び、放射パルスの符号が1パルスずつ反転していることを考慮してSAR再生処理を行うことで、RFIDタグ300からの放射パルスはパルス圧縮され(S/N比が向上し)、今度は地表面からの反射波がパルス圧縮されずに広がりをもつ暗いノイズ状態となる。
【0107】
上記のように、画像再生部404は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データ(受信信号)を、合成開口レーダ200と同じパルス繰り返し間隔PRIごとに、合成開口レーダ200と同じチャープ率kでレンジ圧縮して第1観測信号y(t,s)を生成する。画像再生部404は、レンジ圧縮した受信信号である第1観測信号y(t,s)をアジマス圧縮して第1圧縮信号w(t,s)を生成する。画像再生部404は、生成した第1圧縮信号w(t,s)から地上のレーダ画像(RFIDタグ300が映っていない画像)を再生する。一方、画像処理部405は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データ(受信信号)を、合成開口レーダ200と同じ(RFIDタグ300とも同じである)パルス繰り返し間隔PRIごとに、RFIDタグ300と同じで合成開口レーダ200とは異なるチャープ率k’でレンジ圧縮して第2観測信号y’(t,s)を生成する。画像処理部405は、レンジ圧縮した受信信号である第2観測信号y’(t,s)をアジマス圧縮して第2圧縮信号w’(t,s)を生成する。画像処理部405は、生成した第2圧縮信号w’(t,s)からRFIDタグ300が映っている画像を再生する。
【0108】
本実施の形態では、合成開口レーダ200が送信パルスを送信する間隔と、RFIDタグ300が放射パルスを送信する間隔が同じ(パルス繰り返し間隔PRI)である。即ち、RFIDタグ300は、合成開口レーダ200と同期している。そして、画像再生部404と画像処理部405は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データ(受信信号)を、同じパルス繰り返し間隔PRIごとにレンジ圧縮する。このようにすることで、高精度にSAR再生処理を行うことが可能となる。
【0109】
図9は、タグ情報抽出のためのSAR再生処理の結果(タグ情報を抽出した再生画像)、即ち、タグ情報抽出結果の一例を示す図である。
【0110】
図9に示すように、図8のステップS412で得られる画像には、RFIDタグ300からの放射パルスが輝点として映る。図9に示した画像は、前述した例のように、RFIDタグ300が、最初にID情報を載せていない放射パルスを送信し、その後に、12ビットのID情報を載せた放射パルスを送信する場合のものである。したがって、一番左の輝点がRFIDタグ300の位置(レーダ画像における相対位置)を示している。図7のステップS204において、画像処理装置401の画像処理部405は、このようにRFIDタグ300からの放射パルスが輝点として映った画像を、ステップS203で画像再生部404により再生された地上のレーダ画像(図8のステップS310で得られる画像)と重ね合わせ(比較し)、地上のレーダ画像のどの画素(あるいは画素群)がRFIDタグ300の設置された地点であるか(レーダ画像における相対位置)を特定する。また、画像処理部405は、図9のように画像上に表されたRFIDタグ300のID情報を読み取り(例えば、輝度によってビット値が判定できる)、読み取ったID情報で識別されるRFIDタグ300の位置情報を記憶装置412から抽出する。画像処理部405は、抽出した位置情報を参照することで、地上のレーダ画像においてRFIDタグ300の設置された地点にあたる画素(あるいは画素群)が地理上のどの位置に対応するかを判定する。そして、その判定結果に応じて、地上のレーダ画像を補正する(例えば、レーダ画像に緯度経度情報を付加すること等も含む)。
【0111】
以上説明したように、本実施の形態において、合成開口レーダ200(SAR)から送信される送信パルスはRFIDタグ300のアンテナ部301(送受信アンテナ)にて受信される。RFIDタグ300では放射パルス生成処理が行われる。生成される放射パルスにはID情報(識別子)が含まれる。放射パルスは通常のSAR再生処理では画像化されないよう、合成開口レーダ200と異なるチャープ率を使用するとともに1パルスずつ符号を反転させる。RFIDタグ300は放射パルスを合成開口レーダ200へ向けて発射する。合成開口レーダ200はRFIDタグ300の放射パルスを受信する。SAR観測データは合成開口レーダ画像処理設備400(地上設備)へ伝送される。SAR観測データには地表面からの後方散乱電波に加えて、RFIDタグ300から送信された放射パルスが重畳(加算)されている。合成開口レーダ画像処理設備400では(1)通常のSAR再生処理、(2)RFIDタグ300から送信された放射パルスを復元する(元のビット列に戻す)ための画像処理(チャープ率が合成開口レーダ200と異なること、及び、1パルスずつ符号が反転していることを考慮したSAR再生処理)が行われる。上記(1)により生成される画像には、RFIDタグ300の情報(個々のRFIDタグ300を識別するビット列、即ち、ID情報等)は映っていない(正確には微弱なノイズとして画像の広い範囲に広がっている)。逆に、上記(2)により生成される画像には、RFIDタグ300の情報(ビット列)は表示されるが、地表面を示す画像は映っていない(正確には微弱なノイズとして広い範囲に広がっている)。上記(2)の画像上の点列(ID情報を表すビット列に相当)を読み取ることで、点列の発信源であるRFIDタグ300を特定することができる。このように、本実施の形態によれば、能動的に電波を放射するRFIDタグ300を利用して、合成開口レーダ200の再生画像から特定の位置を容易に検出することができる。これによりSAR画像に対して高精度な幾何学的補正を行うことが可能となる。
【0112】
従来のARC(Active・Radar・Calibrator)はSAR画像上に単なる「1点」としてしか映らなかった。本実施の形態では、RFIDタグ300側にて、RFIDタグ300から送信したい情報(ビット列)を逆レンジ圧縮処理(図4のステップS107〜S110)して放射パルスを生成し、この放射パルスをRFIDタグ300から送信する。これにより、RFIDタグ300からの放射パルスが、単なる「1点」としてではなく、「ビット列」として画像化される。つまり、本実施の形態によれば、RFIDタグ300から意味のある情報を送信することができる。
【0113】
また、従来のARCはSAR画像上に小さな輝点として映ってしまう。本実施の形態では、上記の逆レンジ圧縮に用いるチャープ率は、合成開口レーダ200の送信パルスとは逆符号とする。これにより、通常のSAR再生処理ではRFIDタグ300からの放射パルスがレンジ圧縮されない。さらに、本実施の形態では、RFIDタグ300が合成開口レーダ200からの送信パルスを受信した後、放射パルスを打ち返す際に信号を1パルスずつ符号反転させる(−1を乗ずる)。これにより、通常のSAR再生処理ではRFIDタグ300からの放射パルスがアジマス圧縮されない。このような処理を行うことで、本実施の形態では、RFIDタグ300がSAR画像上に映らないようにすることができる。
【0114】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0115】
本実施の形態では、RFIDタグ300の信号処理部304は、メモリからID情報のほかに位置情報をCPUにより読み出し、読み出した位置情報を載せた放射パルスを生成する。つまり、本実施の形態では、RFIDタグ300は、RFIDタグ300の位置情報を示す信号を放射パルスとして送信する。そのため、信号処理部304は、ネットワークインタフェース部306、ルータ322を介して、メモリに記憶した位置情報を合成開口レーダ画像処理設備400に送信しなくてもよい。
【0116】
図7を用いて、本実施の形態に係る画像処理装置401の動作を説明する。
【0117】
図7のステップS201、S203、S204については、実施の形態1と同様である。ステップS202は、ステップS204でタグ情報抽出のためのSAR再生処理が実行された後に実行される。
【0118】
ステップS202(情報取得処理)において、情報取得部403は、画像処理部405により生成された第2圧縮信号からRFIDタグ300の位置情報を抽出(取得)して記憶装置412に記憶する。具体的には、情報取得部403は、図9の画像におけるID情報と同様に、図8のステップS412で得られる画像(RFIDタグ300が映っている画像)上に表されたRFIDタグ300の位置情報を読み取り(例えば、輝度によって位置情報のビット値が判定できる)、記憶装置412に記憶する。このとき、情報取得部403は、取得した位置情報を、画像処理部405によりタグ情報抽出の結果として取得された(即ち、同じく第2圧縮信号から抽出された)RFIDタグ300のID情報と対応付けて記憶装置412に記憶する。
【0119】
以上説明したように、本実施の形態において、RFIDタグ300はGPS受信機302を具備し、ID情報とともにGPS受信機302により得られる位置情報もあわせて放射パルスに載せて合成開口レーダ200へ送信する。つまり、RFIDタグ300による放射パルス生成処理で生成される放射パルスにはID情報のほか、位置情報が含まれる。これにより、RFIDタグ300の位置情報を合成開口レーダ画像処理設備400にて特定できる。
【0120】
実施の形態3.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0121】
本実施の形態では、RFIDタグ300は、電子基準点に付設されている。電子基準点は、GPS衛星群101からのGPS信号(測位信号)に基づいて、位置を観測する。電子基準点としては、例えば、国土地理院が管理する日本全国約1200ヵ所に設置されたGPS連続観測点を利用することができる。
【0122】
例えば、電子基準点は、GPS受信機、ルータを具備する。電子基準点は、GPS受信機でGPS衛星群101からのGPS信号を受信し、当該GPS信号に基づいて位置を観測する。そして、電子基準点は、位置の観測結果を示す位置情報を、RFIDタグ300の位置情報としてルータにより電子基準点網(ネットワーク)を介して合成開口レーダ画像処理設備400へ送信する。そのため、RFIDタグ300は、GPS受信機302やルータを具備していなくてもよい。電子基準点は、任意の情報をRFIDタグ300との間で送受信し、RFIDタグ300から受信した情報を合成開口レーダ画像処理設備400へ転送してもよい。
【0123】
図7を用いて、本実施の形態に係る画像処理装置401の動作を説明する。
【0124】
図7のステップS201、S203、S204については、実施の形態1と同様である。ステップS202は、ステップS204でタグ情報抽出のためのSAR再生処理が実行された後に実行される。
【0125】
ステップS202(情報取得処理)において、情報取得部403は、RFIDタグ300が付設された電子基準点から、電子基準点網経由で、電子基準点によりルータを介して送信される位置情報等の情報を受信(取得)して記憶装置412に記憶する。このとき、情報取得部403は、例えば電子基準点から位置情報とあわせてRFIDタグ300のID情報を受信する等により、RFIDタグ300のID情報を取得し、取得した位置情報をRFIDタグ300のID情報と対応付けて記憶装置412に記憶する。
【0126】
以上説明したように、本実施の形態において、RFIDタグ300はGPS受信機302を具備する代わりに、電子基準点の近傍に設置される。各電子基準点の位置情報は国土地理院からオンライン公開されているため、電子基準点の番号とRFIDタグ300個々のID情報を照合することでRFIDタグ300の位置情報を合成開口レーダ画像処理設備400にて特定できる。
【0127】
実施の形態4.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0128】
本実施の形態では、RFIDタグ300は、外部装置321として環境センサを具備する。環境センサは、周囲の環境として、例えば、気温、気圧、湿度、気象を観測するものである。気象を観測するものとしては、例えば、気象庁地域観測システム(AMeDAS:Automated・Meteorological・Data・Acquisition・System)の観測点を利用することができる。
【0129】
RFIDタグ300の信号処理部304は、外部装置インタフェース部305を介して環境センサから観測値を取得し、取得した観測値を環境情報としてメモリに記憶する。信号処理部304は、メモリからID情報のほかに環境情報をCPUにより読み出し、読み出した環境情報を載せた放射パルスを生成する。つまり、本実施の形態では、RFIDタグ300は、環境センサの観測結果を環境情報として示す信号を放射パルスとして送信する。
【0130】
図7を用いて、本実施の形態に係る画像処理装置401の動作を説明する。
【0131】
図7のステップS201〜S203については、実施の形態1と同様である。
【0132】
ステップS204(画像処理)において、画像処理部405は、信号取得部402により取得された合成開口レーダ観測データを記憶装置412から読み取る。画像処理部405は、読み取った合成開口レーダ観測データに対して、実施の形態1と同様に、タグ情報抽出のためのSAR再生処理を処理装置411により実行して、画像再生部404により再生されたレーダ画像におけるRFIDタグ300の相対位置を特定する。このとき、画像処理部405は、タグ情報抽出の結果としてRFIDタグ300のID情報を取得するとともに、前述した環境情報を取得する(即ち、第2圧縮信号からID情報及び環境情報を抽出する)。画像処理部405は、取得したID情報と対応する位置情報を記憶装置412から読み取る。画像処理部405は、特定したRFIDタグ300の相対位置と、読み取った位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、画像再生部404により再生されたレーダ画像を処理装置411により補正する。そして、画像処理部405は、さらに、取得した環境情報に基づいて、そのレーダ画像を加工する。例えば、RFIDタグ300が具備する環境センサが気象を観測するものであれば、画像処理部405は、環境情報として気象の観測値を取得するため、地上のレーダ画像に、RFIDタグ300が設置された地点周辺の天気図を重ねた画像を生成することができる。。
【0133】
以上説明したように、本実施の形態において、RFIDタグ300による放射パルス生成処理で生成される放射パルスにはID情報のほか、温度や気象等の各種付属センサ(外部装置321)の観測値が含まれる。これにより、SAR画像に対して温度や気象等の付加情報を合成開口レーダ画像処理設備400にてマッピングできる。
【0134】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。あるいは、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0135】
100 画像処理システム、101 GPS衛星群、200 合成開口レーダ、201 合成開口レーダアンテナ、300 RFIDタグ、301 アンテナ部、302 GPS受信機、303 ID設定部、304 信号処理部、305 外部装置インタフェース部、306 ネットワークインタフェース部、307 RFフィルタ部、308 送受信切替部、309 受信部、310 タイマ部、311 給電制御部、312 送信部、313 増幅部、314 電源部、321 外部装置、322 ルータ、400 合成開口レーダ画像処理設備、401 画像処理装置、402 信号取得部、403 情報取得部、404 画像再生部、405 画像処理部、411 処理装置、412 記憶装置、413 入力装置、414 出力装置、901 LCD、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 HDD、921 オペレーティングシステム、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記受信信号を取得する信号取得部と、
地上に設置された無線通信装置であって、前記レーダにより送信された第1パルス信号を受信すると、受信した第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる無線通信装置の地理上の位置を示す位置情報を取得する情報取得部と、
前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮して第1圧縮信号を生成し、生成した第1圧縮信号から地上のレーダ画像を処理装置により再生する画像再生部と、
前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮して第2圧縮信号を生成し、生成した第2圧縮信号から、前記画像再生部により再生されたレーダ画像における前記無線通信装置の相対位置を特定し、特定した相対位置と前記情報取得部により取得された位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を処理装置により補正する画像処理部とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
k’=−k×A(0<A≦1)であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記レーダは、前記第1パルス信号を所定のパルス繰り返し間隔PRIごとに生成して送信し、
前記無線通信装置は、前記第2パルス信号をパルス繰り返し間隔PRIごとに生成し、生成した第2パルス信号のうち所定の順番N(NはN>0となる整数の部分集合)の第2パルス信号については符号を反転した後、生成した第2パルス信号を送信し、
前記画像再生部は、前記信号取得部により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率kでレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第1圧縮信号を生成し、
前記画像処理部は、前記信号取得部により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率k’でレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号のうち順番Nの第2パルス信号については符号を反転した後、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第2圧縮信号を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
Nは偶数又は奇数の全体集合であることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記無線通信装置は、前記無線通信装置の識別子を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得部は、取得した位置情報を前記無線通信装置の識別子と対応付けて記憶装置に記憶し、
前記画像処理部は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記無線通信装置の識別子を取得し、取得した識別子と対応する位置情報を記憶装置から読み取り、特定した相対位置と読み取った位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を補正することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記無線通信装置は、測位衛星からの測位信号に基づいて前記位置情報を生成し、
前記情報取得部は、前記無線通信装置により生成された位置情報を取得することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記無線通信装置は、前記位置情報を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得部は、前記画像処理部により生成された第2圧縮信号から前記位置情報を取得することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記無線通信装置は、周囲の環境を観測する環境センサを具備し、前記環境センサの観測結果を環境情報として示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記画像処理部は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記環境情報を取得し、取得した環境情報に基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を加工することを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
地上に設置された無線通信装置において、
飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記第1パルス信号を受信する受信部と、
前記受信部により前記第1パルス信号が受信されると、受信された第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる送信部とを備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
画像処理装置の信号取得部が、飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記受信信号を取得し、
前記画像処理装置の情報取得部が、地上に設置された無線通信装置であって、前記レーダにより送信された第1パルス信号を受信すると、受信した第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる無線通信装置の地理上の位置を示す位置情報を取得し、
前記画像処理装置の画像再生部が、前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮して第1圧縮信号を生成し、生成した第1圧縮信号から地上のレーダ画像を処理装置により再生し、
前記画像処理装置の画像処理部が、前記信号取得部により取得された受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮して第2圧縮信号を生成し、生成した第2圧縮信号から、前記画像再生部により再生されたレーダ画像における前記無線通信装置の相対位置を特定し、特定した相対位置と前記情報取得部により取得された位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生部により再生されたレーダ画像を処理装置により補正することを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
飛行体に搭載されたレーダであって、所定のチャープ率k(−1≦k<0又は0<k≦1)でチャープ変調した第1パルス信号を生成して地上に送信し、送信した第1パルス信号が地上で反射した信号を受信信号として受信するレーダから、前記受信信号を取得する信号取得処理と、
地上に設置された無線通信装置であって、前記レーダにより送信された第1パルス信号を受信すると、受信した第1パルス信号のチャープ率kと異なるチャープ率k’(−1≦k’<0又は0<k’≦1)でチャープ変調した第2パルス信号を生成して送信し、送信した第2パルス信号を前記受信信号の一部として前記レーダに受信させる無線通信装置の地理上の位置を示す位置情報を取得する情報取得処理と、
前記信号取得処理により取得された受信信号をチャープ率kでレンジ圧縮して第1圧縮信号を生成し、生成した第1圧縮信号から地上のレーダ画像を処理装置により再生する画像再生処理と、
前記信号取得処理により取得された受信信号をチャープ率k’でレンジ圧縮して第2圧縮信号を生成し、生成した第2圧縮信号から、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像における前記無線通信装置の相対位置を特定し、特定した相対位置と前記情報取得処理により取得された位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像を処理装置により補正する画像処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項12】
k’=−k×A(0<A≦1)であることを特徴とする請求項11に記載の画像処理プログラム。
【請求項13】
前記レーダは、前記第1パルス信号を所定のパルス繰り返し間隔PRIごとに生成して送信し、
前記無線通信装置は、前記第2パルス信号をパルス繰り返し間隔PRIごとに生成し、生成した第2パルス信号のうち所定の順番N(NはN>0となる整数の部分集合)の第2パルス信号については符号を反転した後、生成した第2パルス信号を送信し、
前記画像再生処理は、前記信号取得処理により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率kでレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第1圧縮信号を生成し、
前記画像処理は、前記信号取得処理により取得された受信信号をパルス繰り返し間隔PRIごとにチャープ率k’でレンジ圧縮し、レンジ圧縮した受信信号のうち順番Nの第2パルス信号については符号を反転した後、レンジ圧縮した受信信号をアジマス圧縮して前記第2圧縮信号を生成することを特徴とする請求項11又は12に記載の画像処理プログラム。
【請求項14】
Nは偶数又は奇数の全体集合であることを特徴とする請求項13に記載の画像処理プログラム。
【請求項15】
前記無線通信装置は、前記無線通信装置の識別子を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得処理は、取得した位置情報を前記無線通信装置の識別子と対応付けて記憶装置に記憶し、
前記画像処理は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記無線通信装置の識別子を取得し、取得した識別子と対応する位置情報を記憶装置から読み取り、特定した相対位置と読み取った位置情報が示す地理上の位置とに基づいて、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像を補正することを特徴とする請求項11から14までのいずれかに記載の画像処理プログラム。
【請求項16】
前記無線通信装置は、測位衛星からの測位信号に基づいて前記位置情報を生成し、
前記情報取得処理は、前記無線通信装置により生成された位置情報を取得することを特徴とする請求項11から15までのいずれかに記載の画像処理プログラム。
【請求項17】
前記無線通信装置は、前記位置情報を示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記情報取得処理は、前記画像処理により生成された第2圧縮信号から前記位置情報を取得することを特徴とする請求項11から16までのいずれかに記載の画像処理プログラム。
【請求項18】
前記無線通信装置は、周囲の環境を観測する環境センサを具備し、前記環境センサの観測結果を環境情報として示す信号を前記第2パルス信号として送信し、
前記画像処理は、生成した第2圧縮信号から、さらに、前記環境情報を取得し、取得した環境情報に基づいて、前記画像再生処理により再生されたレーダ画像を加工することを特徴とする請求項11から17までのいずれかに記載の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−236871(P2010−236871A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81901(P2009−81901)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】