説明

画像形成方法、及び画像形成装置

【課題】
半導体検査において、設計データと撮影した半導体デバイスの画像を利用して、SEM画像に含まれたノイズとパターンを精度よく分離する方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】
上記目的を達成するために、試料への電子ビームの照射に基づいて得られる画像から、前記試料上に形成されたパターンを細線化した画像を形成する際に、前記パターンを形成する線分の方向ごとに、予め登録された前記パターンのホワイトバンドの輝度分布情報を用いたピーク位置の検出を行い、当該検出によって、前記パターンの細線部分を抽出し、当該抽出に基づいて前記細線化されたパターンを表した画像を形成する方法、及び装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影した半導体デバイスの画像から、半導体デバイスのパターンを抽出し、前記半導体デバイスの設計データと前記半導体デバイスの画像から抽出したパターン間のパターンマッチングを行い、パターン形状の評価や、検査位置の探索などを可能とするパターンマッチング装置又は走査型電子顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体製造プロセスでは、レチクル(露光原版)上にOPC(Optical Proximity Correction)等の補正を加えることにより、露光装置の光源波長よりも微細なパターンの加工を行っている。このような補正効果の検証は、走査型電子顕微鏡(以下、SEMとする。)で撮影した露光後の半導体デバイスの画像と、前記パターンの設計情報を示す設計データ間のマッチングを図ることによって行われる。
【0003】
また、半導体デバイス上のパターン形状の測定を行う場合には、SEMで撮影した画像から測定位置を特定するために、予め登録したテンプレートを用いたパターンマッチング処理を行っている。測定検査の工程では、前工程としてSEMで撮影した半導体デバイスの測定部付近を撮影した画像をテンプレートとして登録し、検査工程では、SEMで撮影した半導体デバイスの画像から、テンプレートと一致する位置を探索し、検査位置を特定して測定を行うのが一般的であるが、測定の際に頻繁にテンプレート登録用の撮影を行うことは検査工程全体のスループットを著しく低下させることになるため、設計データを利用してテンプレートを生成することで、検査工程の前工程を削減し、検査工程全体のスループットを向上させることが要求されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−104320号公報
【特許文献2】特開2000−293690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような設計データとSEMで撮影した半導体デバイスの画像を利用してパターンマッチングを行うものに、〔特許文献1〕特開平6−104320号公報,〔特許文献2〕特開2000−293690号公報がある。しかし、特開平6−104320号公報はSEMで撮影した半導体デバイスの画像からパターンを抽出する際に、SEM特有のノイズとパターンを分離するための閾値を設けているが、SEMのノイズは、SEMの撮像部や試料の状態によって変化するため、半導体検査の工程においては頻繁に閾値の変更が必要となり、検査工程の低下につながる可能性がある。そして、このような閾値の設定はSEM画像から直感的に決定できるものでなく、画像処理の知識,経験を有するため、SEMを扱うオペレータにとっては設定が困難であるという問題がある。
【0006】
また、特開2000−293690号公報については、マッチングにおいて重要となるSEM画像からのパターン抽出手法については具体的な記載がない。
【0007】
SEMは試料に電子ビームを照射して試料の照射面から放出された2次電子を収集,増幅,輝度変調して画像化するものであり、試料中の電子の不規則な熱運動によって発生するノイズや、周辺回路から発生されるノイズの影響から撮影画像にランダムノイズが重畳するため、ノイズとパターンを良好に分離するパターン抽出手法が必須である。
【0008】
以上説明したように、半導体検査において、設計データとSEMで撮影した半導体デバイスの画像を利用してパターンマッチングを行う場合、SEM画像に含まれたノイズとパターンを精度よく分離することが重要であり、また検査効率を考える上で、パターンマッチングに利用する画像処理パラメータの設定は画像処理による特別な知識を要さず、簡単に設定できることが重要である。
【0009】
本発明は従来の技術と比較して、半導体検査において、設計データと撮影した半導体デバイスの画像を利用して、SEM画像に含まれたノイズとパターンを精度よく分離する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、試料への電子ビームの照射に基づいて得られる画像から、前記試料上に形成されたパターンを細線化した画像を形成する際に、前記パターンを形成する線分の方向ごとに、予め登録された前記パターンのホワイトバンドの輝度分布情報を用いたピーク位置の検出を行い、当該検出によって、前記パターンの細線部分を抽出し、当該抽出に基づいて前記細線化されたパターンを表した画像を形成する方法、及び装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、ホワイトバンドの輝度分布に関連する情報を利用することにより、SEM画像に含まれたパターン形状の抽出を高精度に行い得る方法、及び装置の提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一例を示すパターンマッチング装置100の基本構成を示したブロック図である。本発明のパターンマッチング装置は、半導体デバイスを製造するための設計データ106と、製造過程における半導体デバイスを走査型電子顕微鏡(以下、SEMとする。)で撮影した画像105(以下SEM画像とする。)から半導体デバイス上のパターン画像107を抽出し、設計データと同形式のベクタデータ108に変換し、設計データ106と前記ベクタデータ108とのパターンマッチングを行い、マッチング値109を出力するものである。以下、実施例を用いて本発明のパターンマッチング装置の詳細を示す。
【0013】
本発明のパターンマッチング装置100は、半導体デバイスの検査を行うシステムに適用することができる。例えば半導体デバイスの微細加工を実現するOPCなどの検証工程では、設計データと半導体デバイス上に形成されたパターンの形状を評価する必要がある
。このため、検証を行う部位を示す設計データを利用して、前記設計データと形状が一致するパターンをSEMで撮影した画像内から探索する場合に、本発明のパターンマッチング装置を利用することが可能である。そして、このような場合は、マッチング結果(形状の一致度)を形状評価の一項目として利用することもできる。
【0014】
また、半導体デバイス上のパターン形状を計測する測長検査や、半導体デバイス上の異物や欠陥を検査する欠陥検査においては、検査対象をSEM画像上から検出する目的で本発明のパターンマッチング装置100を利用することができる。具体的には、SEMで撮影した半導体デバイスの画像内から検査対象となるパターン形状を検出するために、パターン形状の近くに存在するユニークなパターンの設計データをテンプレートとし、パターンマッチングを用いて、SEM画像内から、前記テンプレートに最も近い形状をもつパターンの位置を求める。これにより、マッチングした位置の情報と検査位置の関係から検査位置を特定し、正確な検査を行うことができるようになる。
【0015】
このように、設計データと半導体デバイスの画像とのパターンマッチングは半導体検査の目的に応じて様々な利用が可能である。
【実施例1】
【0016】
図2に本発明のパターンマッチング装置100を走査型電子顕微鏡システム200の画像処理装置202に適用した走査型電子顕微鏡システムの構成を示す。
【0017】
走査型電子顕微鏡システム200は、半導体デバイスの画像を撮影するSEM201と、SEM画像105に含まれているSEM特有のノイズを低減する処理や、本発明のパターンマッチング処理を行う画像処理装置202と、SEM201と画像処理装置202を制御する制御用計算機204と、走査型電子顕微鏡システム200を制御するための制御データ211を入力する入力手段205と、SEM201の撮影画像や、画像処理結果および、走査型電子顕微鏡システム200を制御するための表示用データ210を表示する表示装置203で構成されている。
【0018】
以下、システムを構成するそれぞれの装置について説明する。
【0019】
制御用計算機204は、SEM201の撮影条件や、半導体デバイスの検査位置,画像処理装置202の画像処理機能の設定といった、走査型電子顕微鏡システム200全般の制御を行うもので、パーソナルコンピュータや、ワークステーションに代表される情報処理装置であり、半導体デバイスの設計データ106,SEM画像105,SEM201と画像処理装置202を制御するためのプログラム等を保存するメモリ、前記制御プログラムを実行するCPU、画像処理装置202からSEM画像やパターンマッチング値109といった画像処理結果207を入力するための信号入力IF,SEM201を制御するためのSEM制御データ208や画像処理装置202の制御データ,SEM画像105といった画像処理機能に渡す画像処理用データ209を出力する信号出力IFで構成されている。
【0020】
なお、信号入力IF,信号出力IFとしてはUSB,IEEE1394,セントロニクスやメモリカード,PCI,Ethernet(登録商標)などの色々なインターフェースが利用可能であり、メモリとしてSDRAM,SRAM,DRAM,ROMやメモリカード,ハードディスク等を用いることも可能である。
【0021】
入力手段205は、SEM201の撮影条件や、半導体デバイスの検査位置,前記検査位置に相当する設計データの位置,画像処理機能の設定等を制御用計算機204に対してオペレータが指定するためのものであり、制御用計算機204に接続されたマウスやキーボードである。表示装置203は、SEM201で撮影したSEM画像105や、パターンマッチング値109,半導体デバイス上の検査位置の情報,SEM201,画像処理装置202,設計データ106等の表示用データ210を表示するものであり、制御用計算機204に接続されたCRT(Cathode Ray Tube),液晶ディスプレイなどの画像表示装置である。
【0022】
SEM201の機能は、試料表面上をラスタ走査しながら試料に電子線を照射し、試料表面から発生した二次電子及び反射電子を検出,増幅後、輝度情報に変換することによって試料のSEM画像105を取得するものである。画像処理装置202は、SEM画像105や、パターンマッチング結果や画像処理結果を格納するメモリ,制御用計算機204の指示に従って画像処理プログラムや画像処理全般を制御するCPU,画像処理を高速に実行するためのASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア,SEM画像105の入力を行うための信号入力IF1,パターンマッチングに利用するSEM画像105および画像処理機能の画像処理用データ209を制御用計算機204から入力するための信号入力IF2,SEM画像および画像処理結果207等のデータを制御用計算機204に転送するための信号出力IFで構成されている。
【0023】
なお、制御用計算機204と同様に画像処理装置202は、信号入力IF1,信号入力IF2,信号出力IFとしてUSB,IEEE1394,セントロニクスやメモリカード,PCI,Ethernet(登録商標)などの色々なインターフェースが利用可能であり、メモリとしてはSDRAM,SRAM,DRAM,ROMやメモリカード,ハードディスク等を用いることも可能である。
【0024】
本発明のパターンマッチング装置100は、前記のFPGAやASICなどのハードウェアと、CPUを利用したソフトウェア処理を組み合わせることで実現することができる。以下、図1を参照しながら本発明のパターンマッチング装置100についての詳細を説明する。
【0025】
本発明のパターンマッチング装置100は、半導体デバイスの設計データ106と、SEM画像105と、SEM画像105から半導体デバイスのパターン画像107を抽出するためのホワイトバンドの幅に関する情報104を入力することにより、SEM画像105に含まれているパターン画像107の抽出を高精度に行い、抽出したパターン画像107を設計データとマッチングを行うためのベクタデータ108に変換し、設計データ106とSEM画像105から抽出したベクタデータ108間のパターンマッチングを行って、マッチング値109を出力するものである。
【0026】
次に図3を用いて、本発明のパターンマッチング装置100による、画像情報としてホワイトバンドを用いる実施例を示す。
【0027】
ここで、図3(a)は平面的なSEMによる画像情報を示しており、図3(b)は、図3(a)のA−A断面を示したものである。そして、図3(c)は図3(a)のパターンに対応する設計データを画像化したものである。
【0028】
ここで、ホワイトバンドとは図3(a)に示すように、半導体デバイスに電子ビームを照射した際、半導体デバイス上の勾配や突起301のあるパターンの部分に発生するSEM特有の画像情報であり、この図3(a)では半導体ウエハ(以下、ウエハと称す)から上部に出ている突起301,302が後述する図5(a)のように白く映し出される。そして、ウエハの平ら部分よりも窪んでいる305,307はウエハの平らな部分309,
310,311よりも暗く写し出されるようになる。
【0029】
また、図3(a)のパターンに対応する設計データを画像化した図を図3(c)に示す。これらの図面が示すように突起301の位置と設計データ302が対応関係にある。
【0030】
また、本発明のパターンマッチング装置100が出力するマッチング値109とは設計データ106とベクタデータ108の形状に関する一致度を示す値である。例えば、図4(a)に示すような設計データと図4(b)(c)に示すSEM画像それぞれの形状を比較した場合、図4(c)に比べて図4(b)の形状が設計データの形状に近いことを示す数値である。
【0031】
更にSEM画像105内から設計データ106と一致する画像位置、もしくは106設計データ内からSEM画像105と一致する位置を探索するような場合にも本発明のパターンマッチング装置100を利用することができる。このような場合には、SEM画像105内における設計データ106の座標位置、もしくは設計データ106内におけるSEM画像105の座標位置がマッチング結果となる。例えば図4(d)に示すようなSEM画像内から図4(a)の設計データと同じ形状をもつ画像位置を検出するためには、図4(e)に示すようにSEM画像を構成する各領域と、設計データとの一致度をパターンマッチングにより求めていき、最も一致度が高い座標位置の情報をマッチング結果として出力すればよい。
【0032】
以上説明したパターンマッチング処理を行うために、本発明のパターンマッチング装置100は、ホワイトバンド幅の情報104を利用してSEM画像105から半導体デバイスのパターンを抽出したパターン画像107を生成するパターン抽出部101,パターン画像107をベクタデータ108に変換するベクタライズ部102,設計データ106とSEM画像105から抽出したベクタデータ108間のマッチングを行って、マッチング値109を出力するマッチング部103によって構成されている。なお、本発明のパターンマッチング装置100を構成する各要素は画像処理装置202に搭載されたCPU,メモリ,信号入力IF,信号出力IF,ASIC,FPGAなどのハードウェアで実現する。更に、設計データ106、およびホワイトバンド幅の情報104は、走査型電子顕微鏡システム200の入力手段205の制御によって制御用計算機204を経由して画像処理装置202内のパターンマッチング装置100に入力されるものとする。以下、本発明のパターンマッチング装置100を構成する要素について説明する。
【0033】
次に、本発明のパターンマッチング装置100を構成する要素について詳細に説明する。図5はSEM画像上のホワイトバンドと、ホワイトバンドの輝度プロファイルピーク位置の対応関係を示したものであり、図5(a)はホワイトバンドの画像情報、図5(b)は図5(a)のB−B断面形状、そして図5(c)はホワイトバンドの輝度プロファイルピーク位置を示している。
【0034】
パターン抽出部101は、本発明のパターンマッチング装置100に入力されたホワイトバンドの幅の情報104を利用して、SEM画像105内の半導体デバイスのパターンを抽出したパターン画像107を生成するものである。設計データ106は、始点と終点の座標情報で連結された線分情報であるのに対し、設計データ106の形状に対応するSEM画像105上のホワイトバンドは図5(a)に示すように幅をもった画像情報であり、凸形状の輝度分布をもつ。このため、精度の高いパターンマッチングを行うには、SEM画像105内のホワイトバンドの像から、設計データ106に対応する線分を抽出する必要がある。ホワイトバンドのピーク位置付近が設計データ106の形状に対応するため、パターン抽出部101では、SEM画像105に含まれているノイズを低減し、ホワイトバンドのピーク位置付近を抽出した画像を生成する。
【0035】
以下、パターン抽出部101の処理内容を説明する。通常、SEM画像105には撮影の過程において多くのノイズ成分が含まれるため、このノイズ成分を除去しながらホワイトバンドのピーク付近を抽出する手法が必要である。このため、半導体デバイスのパターン形状が縦方向,横方向に連続的に分布していることを利用して、図6(a)(b)に示すような係数をもつホワイトバンド用の画像処理パラメータのマトリクスを縦方向,横方向毎に用いてフィルタリング処理を行う。
【0036】
この図6(a)(b)の個々のマトリクスの値は画像処理パラメータを示しており、実際にはシステムのメモリにこれらの値が入力され保持されている。
【0037】
また、画像処理パラメータのマトリクスを用いたフィルタリング処理の例を図20を用いて説明する。図20(a)はSEM画像の輝度値を記憶した画素毎の画像メモリのマトリクス(Input〔y〕〔x〕)を示し、図20(b)はフィルタ処理のための画像処理パラメータのマトリクス(K〔j〕〔i〕)を示している。
【0038】
そして、フィルタリング処理はSEM画像105の左上の画素メモリから右下の画素メモリにかけてそれぞれの画素メモリの輝度値に対して、図20(b)の3×3のマトリクスを走査して行く。この際、図20(a)のSEM画像288の各画素の輝度値と図20(b)のマトリクスの画像処理パラメータの各係数位置に対応する各係数値とを式1に示した数式に従って乗算後、加算することにより、画像処理パラメータに応じた情報(Output〔y〕〔x〕)を画素データから抽出するものである。実際の装置システムにおいては、フィルタリング処理は、各係数と各画素の輝度値を乗算するための乗算器と、各画素位置における乗算結果を加算する加算器のハードウェアで構成することができる。
【0039】
Output〔y〕〔x〕=ΣΣInput〔y+j〕〔x+i〕・K〔j〕〔i〕 …(式1)
図6(a)(b)に示すマトリクスは画像上の数画素の範囲に連続的に存在している凸形状の輝度パターンを抽出するものであり、凸形状のホワイトバンドのピーク位置の画素の輝度値と凸形状のピーク位置の両側に存在する傾斜部の画素の輝度値との差が大きいホワイトバンドの輝度パターンを強調するものである。
【0040】
そして、図6(a)の画像処理パラメータのマトリクスを利用することで、縦方向に連続した凸形状のホワイトバンドの情報を抽出することが可能であり、図6(b)の画像処理パラメータのマトリクスを利用する場合は、横方向に連続した凸形状のホワイトバンドの情報を抽出するフィルタ処理のための画像処理パラメータのマトリクスになっている。
【0041】
図5に示したように縦方向に連続するホワイトバンドにSEM特有のノイズを加えた画像の輝度プロファイル701に対して、図6(a)の画像処理パラメータのマトリクスを利用したフィルタリング処理結果の輝度プロファイル702を図7に示す。このように、SEM特有のノイズの影響を受け、ホワイトバンドの形状が崩れかけている場合においても、縦方向に連続するホワイトバンド用の画像処理パラメータのマトリクスを利用し、フィルタリング処理することで、縦方向に連続するホワイトバンドのピーク位置700を強調した結果が得られている。
【0042】
以上のような図6(a)(b)2つの画像処理パラメータのマトリクスを利用したフィルタリング処理により、縦方向と横方向のパターンを抽出した画像を生成するためのパターン画像107の構成を図8に示す。SEM画像105に対して図5(a)のマトリクスを利用したフィルタリング処理を行う0°方向検出フィルタ部801と図5(b)のマトリクスを利用したフィルタリング処理を行う90°ピーク検出フィルタ部802,各出力結果の大きい値を最終的な出力として決定する最大値検出部803で構成することにより、縦方向および横方向に連続するホワイトバンドのピーク位置を検出することができる。このようなパターン抽出部101は、ホワイトバンド幅の情報104とSEM画像105を格納するメモリと、前述した乗算器と加算器で構成された0°又は90°ピーク検出フィルタ部801,802と、2つのフィルタ結果の比較を行い、結果のパターン検出結果とする最大値検出部803を備えたハードウェアで構成される。
【0043】
また、縦方向,横方向に加えて例えば斜め方向(45°,135°)に連続するホワイトバンドのピーク位置を検出する場合には、フィルタ部にその方向を検出するような係数をもつマトリクスを用意し、図8(b)に示すような構成とすることで、縦方向,横方向,斜め方向のパターンを抽出することが可能である。また、縦方向のパターンのみを抽出する場合については、図5(a)のマトリクス係数を利用したフィルタリングのみを実施すればよい。抽出したい方向を任意に操作する場合は、例えば図8(b)の構成をパターン画像107に用意しておき、各フィルタ部801,802,803,804にフィルタリング処理の出力を制御する仕組みを設ければよい。例えば、走査型電子顕微鏡システム200の入力手段205から検出したいパターンの方向の情報を入力し、制御用計算機204経由で本発明の画像処理装置202のメモリに保存する。各フィルタ部は、前記の検出方向に関する設定値を参照し、検出設定されていないフィルタ部はフィルタリング結果を常に0にする。これにより、検出設定されていないフィルタ結果は出力されなくなり、任意の方向に連続するホワイトバンドのみを抽出することが実現できる。
【0044】
次に、ホワイトバンドの幅の大きさと、フィルタリング処理用の画像処理パラメータのマトリクスの大きさとの関係について説明する。
【0045】
フィルタリング処理を行う場合に画像処理パラメータのマトリクスサイズを固定してしまうと、良好にパターンを検出できない場合がある。これは、ホワイトバンドの幅が大きくなるに従って、ピーク位置の凸形状の勾配が緩やかになる傾向があるためである。例えば、図6(a)(b)で示したマトリクスを利用したフィルタ処理は、ホワイトバンドのピーク位置の輝度値とピークの両側に存在する傾斜部の輝度値との勾配情報を利用してピーク位置の検出を行うため、例えば図6(a)のパラメータで横方向のマトリクスサイズを画素数=5に固定してフィルタ係数K(0〜2,1)及びK(0〜2,3)の値をK=0として固定してしまうと、ホワイトバンドが広い、即ちホワイトバンドが画素値として広い場合に、ピーク位置付近の傾斜部の勾配が小さいホワイトバンドの画像については、ピーク位置の検出ができなくなる。
【0046】
図9(a)は、SEM画像の輝度プロファイル901に対して、マトリクスサイズを変更した2種類のフィルタを用いた例を示している。
【0047】
第1のフィルタとして、縦方向に連続した凸形状のホワイトバンドの情報を抽出するために、図6(a)に示されたフィルタの変形として、横方向のマトリクスサイズを画素数=9とし、フィルタ係数K(0〜2,1),K(0〜2,2),K(0〜2,3),K(0〜2,5),K(0〜2,6)及びK(0〜2,7)の値をK=0とし、フィルタ係数K(0〜2,0),フィルタ係数K(0〜2,8)の値をK=−1とし、フィルタ係数K(0〜2,4)の値をK=2としたものであり、この場合の輝度プロファイル902をグラフに示す。
【0048】
第2のフィルタとして、図6(a)に示されたフィルタ係数(横方向のマトリクスサイズの画素数=5)を用いたものであり、この場合の輝度プロファイル903をグラフに示す。
【0049】
マトリクスサイズの画素数=5では、ホワイトバンドの幅に比べてフィルタサイズが小さいため、フィルタ結果の反応が小さくなっているが、マトリクスサイズの画素数=9では、ホワイトバンドの幅とフィルタサイズの大きさが近いため、ピーク位置が良好に抽出されている。
【0050】
また、フィルタサイズに比べてホワイトバンド幅が小さい場合、例えば、図9(b)に示すように、ホワイトバンド幅の小さいパターンが縦方向に連続して狭い間隔で並んでいるホワイトバンドのSEM画像の輝度プロファイル904の場合に、上述したマトリクスサイズの画素数=9のフィルタを適用した場合、輝度プロファイル902のグラフに示すように、ホワイトバンドに比べてフィルタサイズが大きいため、パターン形状の干渉が生じてしまい、良好なピーク位置が検出できなくなってしまう。これに対して、上述したマトリクスサイズの画素数=5のフィルタを適用した場合、ホワイトバンドの幅とフィルタサイズの大きさが近いため、輝度プロファイル903のグラフに示すように良好にピーク位置が検出できるようになる。
【0051】
このようなことから、ホワイトバンドの幅に関する情報104については、パターンマッチング装置100の操作者が設定を行える構成とする。パターン抽出部101では、このホワイトバンドの幅の情報104に従ってマトリクスのサイズを変更し、フィルタ処理を行う。ホワイトバンドの幅の情報104は、SEM画像を参照することにより直感的に得られる情報であり、画像処理の特別な知識を要さないため、容易に決定することができる。
【0052】
図10にホワイトバンド幅の情報からマトリクスサイズを設定する実施例を示す。
【0053】
ホワイトバンド幅の情報からフィルタリング処理のフィルタのマトリクスサイズを設定する手順としては、図10(a)に示すように走査型電子顕微鏡システム200の表示装置203の一部にSEM画像105を表示し、走査型電子顕微鏡システム200の操作者がSEM画像からホワイトバンド像のおおよその画素幅を決定し、入力手段205により入力して、制御用計算機204、経由で画像処理装置のメモリに登録することで可能である。
【0054】
また、図10(b)に示すように特定のホワイトバンドの基準パターン1001を基準としたカーネルサイズを表示装置203の一部に表示し、操作者が、そのパターンと実パターンとの大小関係によってマトリクスサイズを決定し、制御用計算機204経由で画像処理装置202内のメモリに設定することで可能である。
【0055】
更に、図10(a)(b)ではホワイトバンド像の画素幅を単位として入力しているが、表示,入力する単位としては画素幅を用いずに、実際のホワイトバンド像の幅の大きさを表示し、操作者が大きさの値を入力するようにしても可能である。この場合、装置がフィルタリング処理を行う際に実際のホワイトバンド像の大きさを画素を単位する画素の大きさに変換することで、前述した処理を適用することが可能になる。
【0056】
ホワイトバンドの幅の設定は、図19のフローチャートに従った制御用計算機204のホワイトバンド幅の登録プログラムで実行する。
【0057】
操作者によるホワイトバンド幅登録プログラム起動後、パターンマッチングの対象となるSEM画像105を表示装置203に表示する(ステップ1901)。また、ホワイトバンドの基準値を操作者に提供する場合は、ホワイトバンドと、幅の基準値を表示装置203に表示する(ステップ1902)。操作者が入力したホワイトバンド幅の設定値をメモリに保存する(ステップ1903)。ホワイトバンド幅の設定値を画像処理装置202のメモリに設定し(ステップ1904)、プログラムを終了する。また、以上説明したようなSEM画像105の表示を行わなくても、ホワイトバンドの幅が想定できる場合は、1901,1902の手順を省いたプログラムでもよい。
【0058】
次に本発明のパターンマッチング装置のベクタライズ部を以下に説明する。
【0059】
ベクタライズ部102はパターン抽出部101によりフィルタリング処理されたパターン画像107をベクタデータ108に変換するものである。ここで、ベクタデータ108とは、パターンを構成する線分の情報である。ベクタデータ108は図11(a)のようなパターン抽出後の画像から、各直線の始点,終点の座標情報を検出し、最終的に図11(b)のようなデータを出力する。設計データはベクタデータの形で供給されるので、ベクタライズ部102でSEM画像105のパターンのベクタデータを生成することにより、マッチング部103においてベクタデータ間のパターンマッチングを行うことが可能となる。
【0060】
図12にベクタライズの手法を示す。
【0061】
ベクタライズの方法としては図12に示すように、2値化処理1201,細線化処理1202,直線近似処理1203を行うことによりベクタデータを生成することができる。
【0062】
2値化処理1201は、フィルタリング処理されたパターン抽出後のパターン画像107を2値化画像1204に変換するものである。パターン抽出後のパターン画像107は図9で示したように例えば0〜255の輝度値をもつ多階調画像であり、このままではベクタデータ108に変換できないため、ある閾値を設けて0〜255の階調を0と1の2階調画像、すなわち2値化画像1204に変換する。2値化方法については、予め閾値を決定しておき、2値化を行う手法がある。2値化処理部は閾値と各画素の輝度値との比較を行い、閾値よりも高い値であれば1、閾値よりも小さい値であれば0を出力するような比較器のハードウェアで構成することが可能であり、2値化の手法としては例えば、特開平6−104320号公報〔特許文献1〕に示されたよう手法を用いることが可能である。
【0063】
次に、細線化処理1202は、2値化によって得たパターンの中心線を検出する目的で利用する。ホワイトバンドの幅は、2値化後においても2値化画像1206に示すように複数画素の広がりをもっている場合があるため、細線化画像1207に示すようなホワイトバンド幅の中心線を検出することにより、中心線のベクタライズを行うことができるようになり、一本のホワイトバンドに対応する一本の直線を求めることができる。
【0064】
細線化の方法については、ホワイトバンドと背景1214,1216(図中の黒色の部分)との境界の形状を局所的に示したテンプレート画像を利用して、テンプレート画像と一致するパターン画像の領域を検出し、ホワイトバンド像の2値化画像1206を背景1214,1216側から線分の中心に向って黒色の画素に置き換えていくという作業を最後の中心の画素が残るまで繰り返すことにより、最終的に残る中心線を検出する手法がある。細線化部は、テンプレート画像とパターン画像の各画素を比較し、テンプレート画像とパターン画像が一致した場合、パターン画像の輝度値を黒画素に置き換え、一致しない場合は、パターン画像の輝度値をそのまま出力するような比較器のハードウェアで構成することが可能である。
【0065】
直線近似処理1203,細線化により得られた細線化画像1205を形成する各画素の位置関係を利用して、直線近似を行い、細線化画像1205を直線情報で構成されたベクタデータ108に変換するものである。例えば、図13に示すようなパターンが細線化処理1202によって得られた場合、始点の部分から連結したパターンを参照する。図13(a)のように連結している画素が2画素の場合は、ベクタデータの始点,終点が2つの画素の座標情報となる。また、図13(b)に示すように連結した画素が3画素以上の場合、始点と終点を結ぶ直線1301の式を求め、始点,終点間に存在する画素1302との距離1303を求める。始点,終点を結ぶ直線1301と、その間に存在する画素1302との距離1302が許容範囲であれば、その画素は直線上に存在するもの判定し、始点と終点の座標値を出力する。始点,終点間の直線と始点,終点間にある画素の距離が許容範囲を外れた場合は、直線上のものでないと判定し、その画素を始点として新たに直線近似を行うという処理を行うことで、パターン形状の直線近似を行うことができる。
【0066】
このような直線近似処理を行う場合、以下に示す制御を行うことにより、パターンマッチングの機能に柔軟性を持たせることが可能である。
(1)連結画素数の制御
ベクタライズの対象となる連結したパターンの最小連結画素数を設定することにより、例えば、3画素以下の連結エッジはノイズとみなしてベクタライズを行わないという制御を行うことで、ベクタライズ部102からのベクタデータ数の削減を行うことができる。後述するマッチング処理は、処理内容から、ベクタデータ数が多くなるに従い、処理時間が増加する傾向にある。このため、ベクタデータ数を削減することにより、マッチング時間を短縮することができる。
(2)始点,終点間の直線と始点,終点間に存在する画素間の距離の制御
パターンの始点,終点を結ぶ直線と始点,終点間に存在する画素との距離の許容範囲を設定することにより、許容範囲を小さくすることで、パターン形状の検出精度を高くすることができるし、許容範囲を大きくすることで、パターン形状の検出精度を低くしてベクタデータ数を削減し、マッチング時間を短縮することができる。
(3)始点,終点間を結ぶ直線の角度の制御
ベクタライズの対象となるパターンを、始点,終点を結ぶ直線の角度で設定することにより、例えば、生成した直線式の傾きが45度の場合は、ベクタライズしないという設定が可能となり、パターンの形状に応じたベクタライズを行うことができる。
【0067】
以上のようなパラメータの設定は、図14に示すような画面を表示装置203に表示させ、走査型電子顕微鏡システム200の操作者に上記(1)(2)(3)のパラメータを入力手段205から入力させるようなプログラムを制御用計算機204に備えることで可能となる。この図14の例では、操作者がホワイトバンド幅として「20画素」、連結画素数として「3」、許容距離として「2.0」そして、角度として「0度」を入力している例を示している。
【0068】
制御用計算機204は、入力された(1)(2)(3)のパラメータを制御用計算機204内のメモリに保存した後、画像処理装置202内のメモリに登録することで、以上示した(1)(2)(3)のベクタライズを行うことが可能となる。
【0069】
ベクタライズ部102の構成としては、パターン画像107内からパターンの始点となる輝度値を検出するための比較器と、検出したパターンの始点の画素数を順次カウントしていくカウンタ器と、カウンタの値をパターン画像のパターンの座標位置に格納するメモリと、パターンを検出した際に、前記メモリを参照し、パターンの周辺座標位置に、以前検出したパターンが存在していた場合、以前検出したパターンのカウンタ値を付加する比較器のハードウェアで実現することができる。前記メモリ内のパターン座標の近似については、CPUを利用したソフトウェア処理で行う。CPUは、メモリに格納された同一のカウンタ値をもつパターンを対象に前述した直線近似を行い、結果をメモリに格納する。全てのパターンの直線近似が終了した場合、ベクタライズ処理を終了する。なお、上記(1)(2)(3)のパラメータを用いたベクタライズ処理の制御は、ベクタライズ部の各構成部において、設定値との比較を行って処理結果を変更するような構成をとることが可能である。
【0070】
マッチング部103は、設計データ106とベクタライズ後のベクタデータ(以下、パターンベクタデータとする。)108のマッチングを行い、マッチング値109を出力するものである。設計データ106およびパターンベクタデータ108は、直線の始点と終点の座標情報としてマッチング部103に供給する。マッチング部は、パターンベクタデータ108の始点,終点の情報から線分の位置と、角度情報を算出する。線分の位置と角度情報の算出は、パターンベクタデータ108に含まれている全ての線分情報に対して行う。
【0071】
次に設計データ106も同様にして、設計データ106の始点,終点の情報から線分の位置と、角度情報を算出する。直線位置と角度情報の算出は、設計データ106に含まれている全ての線分情報に対して行う。
【0072】
次に、設計データ106内にパターンベクタデータ108の位置,角度が同じ線分が存在している場合に、マッチング値を加算する。線分の位置と傾きが一致しない場合は、マッチング値の加算はしない。パターンベクタデータ108内の全ての線分と設計データ106内の全ての線分の比較が終了した場合に、マッチング処理を終了する。マッチング処理終了時の最終結果のマッチング値109が設計データ106とSEM画像105に含まれているパターンの一致度を示す。
【0073】
また、図4に示したように、SEM画像105内から設計データ106と一致する座標位置を検出する目的でパターンマッチングを行う場合については、設計データ106と同サイズの領域に存在するパターンベクタデータ108内の線分を、線分の座標情報を利用して抽出し、前記領域内におけるパターンベクタデータ108の線分と設計データ106との一致度を求める。以上の処理をパターンベクタデータ108内の全ての領域に対して行い、各領域の中心座標に各領域の一致度を登録する。パターンベクタデータ108内の全ての領域についてマッチングが終了した後、パターンベクタデータ108内で最もマッチング値が高い座標位置を設計データ106との一致する座標位置として出力する。
【0074】
マッチング部103の構成としては、メモリに格納された設計データ106内の線分の始点,終点情報,パターンベクタデータ108内の線分の始点,終点情報から一般的な公式を利用してそれぞれの線分の座標位置と、角度を求め、設計データ106内に、パターンベクタデータ108の線分の座標位置と角度が一致する線分が存在した場合、マッチング値を加算していくソフトウェアをCPUで実行することにより実現できる。また、SEM画像105内から設計データ106と一致する座標位置を検出する場合や、設計データ106内からSEM画像105と一致する座標位置を検出する場合については、上記のようなマッチング値を検出対象となるデータ内の座標位置毎に求めていき、各座標位置におけるマッチング値の算出が終了した後、マッチング値の最大値を求め、マッチング値の最大値をもつ座標位置を出力する機能を前述したマッチング処理のソフトウェアに追加すればよい。以上のような線分を利用したマッチング処理は上記処理以外にも一般化ハフ変換など様々な技術が提案されており、このような技術も用いることが可能である。
【0075】
以上、説明したように本発明のパターンマッチング装置100は、走査型電子顕微鏡システム200の画像処理装置202に搭載することができ、ホワイトバンドの幅,直線近似の方法などの画像処理パラメータを利用することにより、SEM画像105に含まれたパターンの抽出を高精度に行い、パターンのベクタライズ後、設計データ106とのマッチングを行うことで、高精度に設計データ106と、半導体デバイス上のパターン形状の一致度を求めたり、検査位置を特定するために、設計データ106内からSEM画像105と一致する位置を高精度に検出したり、SEM画像105内から設計データ106と一致する領域を高精度に検出することができる。
【実施例2】
【0076】
また、本発明のパターンマッチング装置は、図15に示すように、設計データ106の線分情報を画像化し、画像間のマッチングを行う構成としても本発明の目的を達成することができる。
【0077】
本発明のパターンマッチング装置1500は、ホワイトバンド幅に関連する情報104を利用して、SEM画像105内のパターン画像107を抽出するパターン抽出部101,設計データ106から設計データの画像データ1503を生成する像形成部1501,SEM画像105から抽出したパターン画像107の画像と設計データ106の画像データ1503を利用してマッチング処理を行い、マッチング結果1504を出力するマッチング部1502で構成されており、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡システム200の画像処理装置202に搭載することができる。なお、本発明のパターンマッチング装置1500は、設計データ106,SEM画像105,画像処理パラメータや画像処理プログラムなどを格納するメモリ,画像処理機能の制御,画像処理プログラムを実行するCPU,画像処理を高速に実行するためのASIC,FPGAなどのハードウェアで構成されている。
【0078】
像形成部1501,マッチング部1502以外は実施例1で示したパターンマッチング装置100と同等のため、説明を省略する。
【0079】
像形成部1501は、メモリ内の設計データ106から、設計データの画像データ1503を生成するものであり、設計データ106の線分の始点,終点の座標情報から一般的な公式を用いて始点,終点を結ぶ直線式を生成し、直線の始点,終点座標を結ぶ直線画像を画像上に描画して、メモリに格納するものである。像形成部1501は、上記機能をCPUを利用したソフトウェア処理で実現する。
【0080】
マッチング部1502は、SEM画像105から抽出したパターン画像107の画像と設計データの画像データ1503間のマッチング処理を行い、マッチング結果1504を生成するものである。画像間のマッチング処理としては正規化相関法,輝度差分法などが一般的であるが、これを限定したものでない。
【0081】
輝度差分法を適用する場合には、設計データの画像データ1503を構成する各画素の輝度値と、パターン画像107の画像を構成する各画素の輝度値の差を求める減算器と、減算結果を加算して蓄積する、加算器,メモリと、画像を構成する各画素の輝度差の算出が全て終了した際に、前記メモリの値が小さいほど、大きい値となるように変換するためのテーブルメモリと、前記メモリの値からテーブルメモリを参照し、マッチング結果1504を出力するテーブル参照器のハードウェアで構成できる。
【0082】
以上、説明したように本発明のパターンマッチング装置100は、走査型電子顕微鏡システム200の画像処理装置202に搭載することができ、ホワイトバンドの幅などの画像処理パラメータを利用することにより、SEM画像105に含まれたパターンの抽出を高精度に行い、設計データ106から生成した画像データ1503とのマッチングを行うことで、高精度に設計データ106と、半導体デバイス上のパターン形状の一致度を求めたり、検査位置を特定するために、設計データ106内からSEM画像105と一致する位置を高精度に検出したり、SEM画像105内から設計データ106と一致する領域を高精度に検出することができる。
【実施例3】
【0083】
また、本発明のパターンマッチング装置は、実施例1,実施例2で示したような走査型電子顕微鏡システムとは独立した環境、すなわち、図16に示すようなSEM201で撮影した画像がローカルエリアネットワーク経由、もしくは、外部接続型のメモリ等で入力されるような計算機1601に搭載することもできる。計算機1601は、パーソナルコンピュータやワークステーションに代表される情報処理装置であり、ネットワーク経由や、外部接続型メモリ等で走査型電子顕微鏡システム1602や他の計算機等とデータの入出力を行うための信号入出力IFと、SEM画像や設計データ,パターンマッチングを実行するためのプログラム,マッチング結果を格納するメモリと、前記プログラムを実行し、マッチング結果を生成するCPUと、SEM画像,ホワイトバンドの幅といったマッチング処理のパラメータを設定するための画面を表示する表示装置1603と、前記パラメータ等を入力する入力手段1604で構成されている。
【0084】
図17は本発明のパターンマッチング処理を実行するための各種パラメータの入力画面1701である。パターンマッチングの対象とするSEM画像のファイル名と、設計データのファイル名,エッジ検出を行うためのホワイトバンド幅に関連する情報を入力するための画面である。この他、図14で示したような画面を表示させてベクタライズのパラメータを入力させることにより、検査目的に応じたパターンマッチング処理を行うことができる。計算機1601は、このような入力情報に応じて、SEM画像と設計データの画面表示や、画像処理プログラムへのパラメータ設定を行う。また、計算機1601の操作者の指定により、設計データ内のパターンマッチング範囲や、SEM画像内のパターンマッチング範囲を設定する。パターンマッチングの実行後、マッチング結果のメモリへの保存や、表示装置1603への表示、または、ネットワークや外部接続型メモリを利用した他装置への転送を行う。
【0085】
図18に本発明のパターンマッチングを計算機1601のCPUを利用したソフトウェア処理で実行するためのフローチャートを示す。パターンマッチングプログラム起動後、パラメータ設定画面を表示装置1603に表示する(ステップ1801)。操作者による各種画像処理のパラメータとSEM画像,設計データファイルの情報をメモリに登録する(ステップ1802)。設計データおよびSEM画像のパターンマッチング範囲が操作者によって指定された場合には、その範囲情報からパターンマッチング処理を実行する領域を決定し、メモリに登録する(ステップ1803,ステップ1804)。メモリ内のSEM画像ファイルのデータからホワイトバンド幅の情報を利用してパターン抽出を行う(ステップ1805)。パターン抽出では、フィルタリング処理を実行する。パラメータ設定(ステップ1802)において、抽出するホワイトバンドの方向が複数指定された場合には、その方向に従ったマトリクスを利用してフィルタリングを実行し、各方向のフィルタリング結果をメモリに格納する。各方向のフィルタリング結果の中で最も大きい方向のフィルタリング結果を求め、メモリに出力する。パターン検出終了後、ベクタライズを行う(ステップ1806)。ベクタライズでは、メモリ上のパターン検出画像に対して閾値を利用した2値化を行い、2値化結果をメモリに格納する。2値化終了後、メモリ上の2値画像に対して細線化を行う。ホワイトバンドと背景の境界部分を示す複数のマトリクスと一致する領域を2値画像内から探索し、一致する部分を背景画像に置き換える。一致しない部分は、元の2値画像の輝度値を残す。全てのホワイトバンドが一画素幅の中心線になった場合、細線化処理を打ち切り、細線化処理後のパターン画像をメモリに格納する。細線化処理後、メモリ上の細線化後の画像から連結しているパターンの座標位置を検出し、各連結パターンの情報をメモリに格納する。連結パターンの検出終了後、連結パターンを構成するパターンの始点,終点を結ぶ直線式を求め、近似処理を始点,終点間のパターン画素の近似処理を行い、連結パターンの始点,終点の座標値をメモリに出力する。全ての連結パターンについて始点と終点の検出が終了した場合、ベクタライズ処理を終了する。ベクタライズ処理終了後、メモリ上のSEM画像から抽出したベクタデータと、メモリ上の設計データからそれぞれの線分の位置や傾きを求め、マッチング処理を行う(ステップ1807)。全ての線分情報のマッチング処理が終了した際に、パターンマッチング処理を終了する。また、実施例2で示したようにSEM画像から抽出したパターンに対してベクタライズを行わず、設計データを画像化し、設計データの画像とSEM画像から抽出したパターンの画像間でパターマッチングを行う場合は、ベクタライズの機能1806を、設計データの線分情報を直線情報に変換し、直線を画像に描画する像形成機能に置き換え、マッチング処理(ステップ1807)を正規化相関,輝度差分法といった、画像を構成する各画素の輝度間の一致度を検出するようなマッチング機能に置き換えることで可能である。
【0086】
以上、説明したように本発明のパターンマッチング装置は、ローカルエリアネットワークや、外部設置型のメモリなどによって設計データやSEM画像を入力することができる計算機1601にソフトウェアプログラムとして搭載することができ、ホワイトバンドの幅などの画像処理パラメータを利用することにより、SEM画像に含まれたパターンの抽出を高精度に行い、設計データとのマッチングを行うことで、高精度に設計データと、半導体デバイス上のパターン形状の一致度を求めたり、検査位置を特定するために、設計データ内からSEM画像と一致する位置を高精度に検出したり、SEM画像内から設計データと一致する領域を高精度に検出することができる。
【0087】
尚、上述した実施例では、半導体デバイスの画像を得るためにSEMを用いているが、このSEM以外の装置を用いることも可能であり、例えば光学的な撮影手段を用いて半導体デバイスの画像を得る装置を用いても同様の作用,効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例1に記載の本発明の本パターンマッチング装置を示すブロック図である。
【図2】本発明のパターンマッチング装置を搭載した走査型電子顕微鏡システムの構成図である。
【図3】SEM画像におけるホワイトバンドと設計データのパターンの関係を示したものである。
【図4】本発明のパターンマッチング装置で利用するSEM画像と設計データを示した図である。
【図5】ホワイトバンドの輝度プロファイルを示したものである。
【図6】パターン抽出に利用するマトリクス係数を示した図である。
【図7】SEM画像と、SEM画像のパターン抽出結果の輝度プロファイルを示した図である。
【図8】パターン抽出部の構成を示したブロック図である。
【図9】ホワイトバンドの幅とマトリクスのサイズによるパターン抽出結果の変化を示した輝度プロファイルである。
【図10】ホワイトバンドに関する情報を入力するための画面を示した図である。
【図11】ベクタライズの概要を説明した図である。
【図12】ベクタライズ部の機能ブロックを示した図である。
【図13】直線近似の概要を示した図である。
【図14】本発明のパターンマッチングで利用する画像処理パラメータの入力画面を示した図である。
【図15】実施例2に記載の本発明の本パターンマッチング装置を示すブロック図である。
【図16】実施例3に記載の本発明の本パターンマッチング機能をもつ計算機を示した図である。
【図17】実施例3に記載の本発明の本パターンマッチング機能を実行するための画像処理パラメータ等を入力する画面を示した図である。
【図18】実施例3に記載の本発明の本パターンマッチング機能を示すフローチャートである。
【図19】ホワイトバンドの幅に関する情報を本発明のパターンマッチングに登録する機能を示すフローチャートである。
【図20】画像処理パラメータのマトリクスを用いたフィルタリング処理の例を示す。
【符号の説明】
【0089】
100,1500…パターンマッチング装置、101…パターン抽出部、102…ベクタライズ部、103,1502…マッチング部、104…ホワイトバンド幅に関する情報、105…SEM画像、107…パターン画像、108…パターンベクタデータ、109…マッチング値、200…走査型電子顕微鏡システム、201…SEM、202…画像処理装置、203,1603,1605…表示装置、204…制御用計算機、205,1604…入力手段、207…画像処理結果、208…SEM制御データ、209…画像処理用データ、210…表示用データ、211…制御データ、301…突起、302…設計データ、700…ホワイトバンドのピーク位置、701…SEM画像の輝度プロファイル、702,902,903,904…輝度プロファイル、801…0°ピーク検出フィルタ部、802…90°ピーク検出フィルタ部、803…最大値検出部、804…45°ピーク検出フィルタ部、805…135°ピーク検出フィルタ部、901…SEM画像の輝度プロファイル、1001…ホワイトバンドの基準パターン、1201…2値化処理、1202…細線化処理、1203…直線近似処理、1204,1206…2値化画像、1205,1207…細線化画像、1301…直線、1302…画素、1303…距離、1501…像形成部、1503…画像データ、1504…マッチング結果、1601…計算機、1602…走査型電子顕微鏡システム、1701…入力画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料への電子ビームの照射に基づいて得られる画像から、前記試料上に形成されたパターンを細線化した画像を形成する画像形成方法であって、
前記パターンを形成する線分の方向ごとに、予め登録された前記パターンのホワイトバンドの輝度分布情報を用いたピーク位置の検出を行い、
当該検出によって、前記パターンの細線部分を抽出し、当該抽出に基づいて前記細線化されたパターンを表した画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ピーク位置の検出は、前記ホワイトバンドの幅に関する情報に応じた異なる輝度分布情報を用いて行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記輝度分布情報は、マトリクス状に配列された複数の画素の輝度情報であって、当該複数の画素の輝度情報は、異なる大きさのものが複数用意され、当該輝度情報の中で、前記大きさが前記ホワイトバンドの幅に近いものを用いて、ピーク位置の検出を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記細線化されたパターンを表した画像をベクタライズして、ベクタデータを生成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記ピーク位置の検出が行われた画像を2値化し、当該2値化された輝度情報の中心を前記細線とすることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
請求項1において、前記細線化されたパターンと、当該パターンの設計データとの間でパターンマッチングを行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
試料への電子ビームの照射に基づいて得られる画像から、前記試料上に形成されたパターンを細線化した画像を形成する画像形成方法であって、
前記パターンを形成する線分の方向ごとに、前記ホワイトバンドの輝度分布情報を有するフィルタを用意し、当該ホワイトバンドの幅に関する情報を用いて、当該フィルタの大きさを調整し、当該調整されたフィルタを用いて、前記ホワイトバンドのピーク位置の検出を行い、
当該検出によって、前記パターンの細線部分を抽出し、当該抽出に基づいて前記細線化されたパターンを表した画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記ピーク位置の検出は、前記ホワイトバンドの幅に関する情報に応じた異なる輝度分布情報を用いて行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項7において、
前記輝度分布情報は、マトリクス状に配列された複数の画素の輝度情報であって、当該複数の画素の輝度情報は、異なる大きさのものが複数用意され、当該輝度情報の中で、前記大きさが前記ホワイトバンドの幅に近いものを用いて、ピーク位置の検出を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項7において、
前記細線化されたパターンを表した画像をベクタライズして、ベクタデータを生成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
請求項7において、
前記ピーク位置の検出が行われた画像を2値化し、当該2値化された輝度情報の中心を前記細線とすることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項7において、
前記細線化されたパターンと、当該パターンの設計データとの間でパターンマッチングを行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
試料への電子ビームの照射に基づいて得られる画像の処理を行う画像処理装置を備えた画像形成装置において、
当該画像処理装置は、前記試料への電子ビームの照射に基づいて得られる画像に表されたパターンを形成する線分ごとに、予め登録された前記パターンのホワイトバンドの輝度分布情報を用いたピーク検出を行い、当該検出によって、前記パターンを細線化した細線部分を抽出し、当該抽出に基づいて前記細線化されたパターンを表した画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記画像処理装置は、前記ピーク位置の検出を、前記ホワイトバンドの幅に関する情報に応じた異なる輝度分布情報を用いて行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記輝度分布情報は、マトリクス状に配列された複数の画素の輝度情報であって、
前記画像処理装置は、当該輝度情報について、異なる大きさのものを複数用意し、当該輝度情報の中で、前記大きさが前記ホワイトバンドの幅に近いものを用いて、ピーク位置の検出を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項13において、
前記画像処理装置は、前記細線化されたパターンを表した画像をベクタライズして、ベクタデータを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項13において、
前記画像処理装置は、前記ピーク位置の検出が行われた画像を2値化し、当該2値化された輝度情報の中心を前記細線とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項13において、
前記画像処理装置は、前記細線化されたパターンと、当該パターンの設計データとの間でパターンマッチングを行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−294451(P2008−294451A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150029(P2008−150029)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【分割の表示】特願2004−244555(P2004−244555)の分割
【原出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】