説明

画像形成装置、現像装置及び現像装置の製造方法

【課題】簡単な構成でありながら、画像形成装置の機種の多様化に対応でき、且つ不適正な改変がなし得ないようにした画像形成装置、現像装置及び現像装置の製造方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置本体内部の所定部位には、1以上の識別凸部が設けられ、該本体内部の所定部位に着脱自在に装着される現像装置における現像剤貯留室の壁部の表面には、現像装置を画像形成装置の所定部位に装着する際に上記識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されている。上記壁部は該識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、ファクシミリ装置、プリンタ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置、そして該画像形成装置の本体内部の所定部位に着脱自在に装着される現像装置及び該現像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の画像形成装置としては、電子写真方式の画像記録部を備えたものが多く採用されている。この電子写真方式の画像記録部の所定部位には、消耗品としての現像装置が着脱自在に装着される。近年、画像品質、画像形成速度等の技術的観点、或いは業務用、家庭用等の用途的観点において、ニーズが多様化され、これに対応し得るよう様々な機種の画像形成装置が開発されている。この場合、現像装置も各機種に1対1で対応するよう多種類準備され、使用に当っては各画像形成装置に対し、対応する現像装置を正しく所定部位に装着することが求められる。対応しない現像装置が装着されると、画像形成装置が故障するおそれを生じ、或いは所望の画像品質が得られなくなる事態も生じる。一方、上記のように多くの機種の画像形成装置を設計する場合、画像形成装置の筐体、現像装置のケーシング、或いはその他の構成部品等は可能な限り共通化する方が、製造の合理化、製造コストの低減等を図ることができる。現像装置のケーシングも同形状とされ、その為、機種毎の区別が付き難くなり、装着間違いによる上記トラブルも起こり易くなる。
【0003】
そこで、特許文献1では、現像剤貯留室(トナーカートリッジ)の壁部に樹脂製の識別突部を貯留室の外方に突出するよう形成し、この識別突部の形成位置を所定の組合せとすることによって、画像形成装置の機種毎に適合する現像装置を特定するようにしている。これによれば、異なる機種用の現像装置を装着しようとしても、上記識別突部と画像形成装置内の突部とが干渉して、所定の部位に装着することができず、上記のような装着間違いによるトラブルの発生を未然に防止することができる。
【特許文献1】特開2005−301077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された現像器(現像装置)の場合、識別突部は着脱可能な現像器のトップケース(壁部)に溶着させているだけであり、識別突部が簡単に触れる場所に設けられているから、無理に取外し、或いは切除することができる。このように、識別突部が取外し、或いは切除された現像器は、画像形成装置内の突部と干渉しないから、いずれの画像形成装置にも装着することができる。その為、異なる機種用の現像器から識別突部を除去して画像形成装置に装着し、或いは識別突部を除去した現像器にシステムに適合しない現像剤を充填して画像形成装置に装着することも可能となる。このように不適正に改変された現像器が画像形成装置に装着されると、画像品質が低下し、或いは画像形成装置の故障の原因にもなり、ユーザに多大な不利益をもたらすことになる。
【0005】
また、上述のように、様々な機種に対応して現像器と画像形成装置本体の非互換性を確保するには、識別部材(現像器側の識別突部及び画像形成装置内の突部)が形成されている場所と形成されていない場所との組合わせパターンが多数必要となる。しかしながら、機種多様化の要請に対して、該組合わせパターンが足りない場合があった。
そこで、組合わせパターンを増やすために、現像器のトップケースに識別用の突部、或いは凹部を増設することが考えられる。しかし、画像形成装置内の突部に干渉しないように且つ現像器のトップケース上という限られた部位に突部或いは凹部等の識別部材を増設するのは、設計上の制約により限りがあった。また識別部材が増えれば増えるほど、取付け工程が複雑化するとともに、識別部材の取付け間違いも生じやすくなる。
更に、現像器側に凹部を形成する場合は、組合わせパターンに応じて凹部の形成位置が異なる成型金型を多種準備する必要があるため、いずれにしても製造の合理化が難しくなり、製造コストの高騰を来たす原因ともなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、簡単な構成でありながら、画像形成装置の機種の多様化に対応でき、且つ不適正な改変がなし得ないようにした画像形成装置、現像装置及び現像装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る画像形成装置は、現像剤を貯留する現像剤貯留室を有する現像装置を本体内部の所定部位に着脱自在に装着した画像形成装置であって、上記本体内部の所定部位には、1以上の識別凸部が設けられ、上記現像剤貯留室の壁部は樹脂の成型体からなり、該壁部の表面には、上記現像装置を該所定部位に装着する際に上記識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されており、上記壁部は該識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、識別凸部は、前記所定部位の前記現像装置の装着方向奥側に設けてもよい。また、識別凸部は、金属材からなり、前記所定部位には取付孔を備える板金支持フレームが設けられ、上記識別凸部は、該取付孔の周縁部に取付け固定してもよい。更に前記取付孔は複数設けられており、前記識別凸部が取り付けられてない取付孔は、シート部材で塞ぐようにしてもよい。
そして、板金支持フレームの取付孔に対応する部位には、識別符号を付してもよく、板金支持フレームを含む前記識別凸部の取付部が、前記装置本体の構成部材によって囲まれた部位に設けられていてもよい。
【0009】
第2の発明に係る現像装置は、現像剤を貯留する現像剤貯留室を有し、画像形成装置における本体内部の所定部位に着脱自在に装着される現像装置であって、現像剤貯留室の壁部は樹脂の成型体からなり、該壁部には、上記所定部位に装着する際に、該所定部位に設けられた1以上の識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されており、上記壁部は該識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明に係る現像装置の製造方法は、前記壁部を成型する為の分割金型の前記交換入れ子用凹所に所望の交換入れ子を配置し、当該分割金型に他の分割金型を合体させた後、金型キャビティ内に樹脂材料を注入成型し、脱型後所望形状の樹脂製壁部を得、該壁部を用いて現像装置を組立てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、本体内部の所定部位には、1以上の識別凸部が設けられ、現像剤貯留室の壁部の表面には、現像装置を上記所定部位に装着する際に識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されている。よって、識別凸部と識別凹部との組合せパターンにより、複数種ある現像装置のうち、適応する現像装置を特定することができ、画像形成装置の機種の多様化に対応できる。即ち、画像形成装置は、画像品質、画像形成速度等の技術的観点、或いは業務用、家庭用等の用途的観点から多様な機種が準備され、現像装置も充填される現像剤の種類或いは、印加バイアス特性の異なるものが、各画像形成装置の機種に対応するよう準備される。従って、画像形成装置本体内部の所定部位に設けられた識別凸部と、これに対応して現像剤収容室の壁部に形成される識別凹部との組合わせによって、画像形成装置の機種が多様化しても、対応する現像装置のみしか当該画像形成装置に装着することができないようにすることができる。よって、現像装置のケーシングの形状が同じであっても、異なる種類の現像装置を間違って画像形成装置本体内部の所定部位に装着してしまうような懸念がない。
【0012】
また、識別凸部が画像形成装置本体内部の所定部位に設けられているのに対し、現像剤貯留室の壁部の表面には、該識別凸部に干渉せず、且つ識別凸部を受け入れ得る識別凹部が形成されている。よって、該画像形成装置に着脱される現像装置側には、識別凸部を取付ける必要がなく、画像形成装置に比べて製造個数の多い、現像装置側の作業工数を低減することができる。
更に画像形成装置本体内部の所定部位に装着される現像装置の現像剤貯留室の壁部は、識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されている。よって、識別凹部の形成位置に対応して複数の成型金型を作成する必要がなく、識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を複数作成すれば、現像装置のケーシングにおいて共通する形状については共通の成型金型を用いることができる。また非互換性を確保するための識別凸部及び識別凹部の組合わせパターン毎に成型金型を作成する必要がなく、製造の合理化、コストの低減を図ることができる。
【0013】
本発明において画像形成装置本体内部に設けられる識別凸部が、所定部位の現像装置の装着方向奥側に設けられている場合、簡単に手に触れる部位ではないため、該装着方向奥側に設けられた識別凸部を切除或いは取り外しすることが極めて困難となる。また、不適正な改変がなし得ず、該装置に対応した適切な現像装置のみを装着可能なものとすることができる。よって、不適正な現像装置が装着されることによって生じる画像不良及び画像形成装置の故障等、トラブルの発生を効果的に防止することができる。
また、識別凸部は、金属材からなり、所定部位には取付孔を備える板金支持フレームが設けられ、識別凸部は、該取付孔の周縁部に取付け固定されている場合、識別凸部が樹脂材製等からなるものと比べて、切除或いは取り外しが一層困難となる。よって、効果的に識別凸部の切除或いは取り外しを抑止することができる。
更に識別凸部の取付孔は複数設けられており、前記識別凸部が取り付けられていない取付孔は、シート部材で塞がれている場合、取付孔の存在により、画像形成装置本体内部の気流に変化が生じるといった懸念がない。よって、複数取付孔を設けても支障がなく、識別凸部が設けられていない取付孔は、一律にシート部材で塞いでしまえばよいので、画像形成装置の機種によって対策を異ならせるといったような手間を省くことができる。
【0014】
本発明において、板金支持フレームの取付孔に対応する部位には、識別符号が付されているものとした場合、識別凸部の取付け間違いを防ぐことができる。また、板金支持フレームを含む識別凸部の取付部が、画像形成装置本体の構成部材によって囲まれた部位に設けられている場合、識別凸部を取り外すには、まず該構成部材を外す必要が生じ、簡単に識別凸部の取り外すことができず、不適正な改変を効果的に抑止することができる。
【0015】
本発明の現像装置によれば、現像剤貯留室の壁部は樹脂の成型体からなり、該壁部には、上記所定部位に装着する際に、該所定部位に設けられた1以上の識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されている。よって、本体内部の所定部位に設けられた識別凸部と現像剤貯留室の所定部位に設けられた識別凹部との組合せパターンによって、複数種ある現像装置のうち、適応する現像装置を特定することができ、画像形成装置の機種の多様化に対応できる。また、現像装置のケーシングの形状が同じであっても、異なる種類の現像装置を間違って画像形成装置本体内部の所定部位に装着してしまうような懸念がない。
更に現像装置の現像剤貯留室の壁部は、識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されている。よって、識別凹部の形成位置に対応して複数の成型金型を作成する必要がなく、識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を複数作成すれば、現像装置のケーシングにおいて共通する形状については共通の成型金型を用いることができる。また、非互換性を確保するための識別凸部及び識別凹部の組合わせパターン毎に成型金型を作成する必要がなく、製造の合理化、コストの低減を図ることができる。
【0016】
本発明の現像装置の製造方法は、壁部を成型する為の分割金型の交換入れ子用凹所に所望の交換入れ子を配置し、当該分割金型に他の分割金型を合体させる。合体させた後、金型キャビティ内に樹脂材料を注入成型し、脱型後所望形状の樹脂製壁部を得、該壁部を用いて現像装置を組立てるものとすることができる。よって上述のように、識別凹部を含む部分に対応する入れ子の金型を複数作成すれば、現像装置のケーシングにおいて共通する形状については共通の成型金型を用いて製造することができる。また非互換性を確保するための識別凸部及び識別凹部の組合わせパターン毎に成型金型を作成する必要がなく、製造方法の合理化、コストの低減を図ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置全体の概略的縦断面図、図2は同画像形成装置に装着される現像装置の一実施形態の外観斜視図、図3は同現像装置を画像形成装置に装着する状態を概念的に示す図、図4は同現像装置を画像形成装置に装着する状態を示す断面図、図5は同現像装置における壁部の製造方法を概念的に示す工程図、図6は画像形成装置における識別凸部の取付部の板金支持フレーム側から見た図である。
【0018】
図1の画像形成装置1は、電子写真方式の記録部を備えたプリンタであることを示しているが、これに限らず、更に画像読取装置を備えた複写機、ファクシミリ装置或いはこれらの機能を兼ね備えた所謂複合機等であっても良い。図例の画像形成装置1においては、記録紙(用紙)の供給部11と、電子写真方式の画像記録部12と、印字後の記録紙の排出部13とにより装置本体10が構成され、これらが図に示す順序で高さ方向に積層されている。記録紙の供給部11は、多数枚の記録紙を堆積収納し得る抜差し可能な記録紙供給カセット111と、該記録紙供給カセット111の供給方向前端部に設置されたセパレートローラ112と、該セパレートローラ112の周面に弾性的に接する分離パッド113とよりなる。
【0019】
画像記録部12は、感光体ドラム2の周囲に、プラス或いはマイナス帯電方式の帯電器3、LED等からなる露光器4、現像装置5、転写ローラ6及びクリーニング装置7をこの順序で配したプロセス部と、その下流側の定着器8とより構成される。感光体ドラム2、帯電器3及びクリーニング装置7はドラムユニットとしてユニット化され、また現像装置5は現像器ユニットとしてユニット化され、各ユニットは装置本体10に対して個々に着脱可能に装着される。これら各ユニットは、図1における紙面の垂直方向に抜差し可能とされている場合の他、装置本体10の上方に取出し可能とされる場合、或いは装置本体10の他の側部より抜差し可能とされる場合もある。
尚、図例のドラムユニットと現像器ユニットとを分離可能或いは分離不能に一体化して、プロセスユニットとして構成し、本発明に係る現像装置5を、このプロセスユニットを構成する一構成部分として位置付けても良い。
【0020】
定着器8の下流側には、切替ゲート131、排出ローラ対132及び排出トレイ133が設けられ、これらによって記録紙の排出部13が構成される。上記プロセス部の上流側近傍には、レジストローラ対14が設置され、上記記録紙供給カセット111から、セパレートローラ112及び分離パッド113の作用により1枚ずつ分離され繰出された記録紙は、該レジストローラ対14によりレジストされて、前記感光体ドラム2と転写ローラ6とのニップ部に導入される。感光体ドラム2は図1の矢印方向に回転しながら、帯電器3によりその表面が一様にプラス帯電され、画像情報に基づく光学画像が露光器4によって感光体ドラム2の表面に照射され、感光体ドラム2の表面には静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光体ドラム2の表面の光導電体の特性に基づき、光の照射部分と非照射部分で生じる電位の差により形成されるものである。
【0021】
上記静電潜像は、現像装置5で逐次現像されてトナー画像とされ、このトナー画像は感光体ドラム2の回転に伴い、転写ローラ6とのニップ部に至る。上記レジストローラ対14は、感光体ドラム2の表面のトナー画像の移動に同期して記録紙が上記ニップ部に導入されるようレジスト制御されて回転駆動される。転写ローラ6は、感光体ドラム2に接し且つ矢印方向(感光体ドラム2とウイズ方向)に回転駆動されながら記録紙をニップして搬送し、この間感光体ドラム2の表面のトナー像が記録紙に転写される。トナー像が転写された記録紙は、定着器8に導入され、永久画像として定着された後、切替ゲート131を押し上げ、排出ローラ対132を経て排出トレイ133上に排出される。この一連の記録紙の搬送は、記録紙供給カセット111からの繰出し直後に略垂直(鉛直)に立ち上がり、排出ローラ対132では記録紙供給カセット111からの繰出し方向とは略180度の方向にUターンするような主搬送パスPに沿ってなされる。このようなレイアウト構成により、装置全体のコンパクト化が図られる。
【0022】
図例の画像形成装置1は、両面記録機能を備えており、上記主搬送パスPの切替ゲート131の取付け位置から、前記レジストローラ対14の上流側で上記主搬送パスPに循環して合流する反転搬送パスP1が形成されている。この反転搬送パスP1に沿って搬送ローラ対15、16が設けられている。片面記録がされ主搬送パスPに沿って搬送された記録紙は、その後端が排出ローラ対132に至ると、該排出ローラ対132の逆転により反転搬送パスP1に供給される。反転搬送パスP1に供給された記録紙は、引き続き、搬送ローラ対15、16によって反転搬送パスP1を搬送され、主搬送パスPに合流し、レジストローラ対14に至る。その後、再度感光体ドラム2と転写ローラ6とのニップ部に導入されてその裏面の記録がなされる。両面記録された記録紙は、上記同様主搬送パスPに沿って排出トレイ133上に排出される。
【0023】
また、装置本体の側面には手差し供給トレイ17が開閉自在に設けられている。この手差し供給トレイ17にセットされた記録紙は、セパレートローラ171と分離パッド172との作用により1枚ずつ分離されて供給される。分離及び供給された記録紙は、手差搬送パスP2を経て主搬送パスPに合流し、レジストローラ対14によって感光体ドラム2と転写ローラ6とのニップ部に導入され、上記同様に画像情報に基づく記録がなされる。
【0024】
現像装置(現像器ユニット)5は、樹脂成型されたケーシング50の内部に現像剤を貯留する現像剤貯留室51を備えている。該貯留室51内には、樹脂フィルム製の攪拌羽根を備えた3個の回転攪拌部材52と、供給ローラ53と、バイアス印加される現像ローラ54とが設けられている。貯留室51内のこれら機構部52,53,54は、現像装置5を画像形成装置1内の後記する所定部位に装着した際、画像形成装置1内の駆動伝達機構(不図示)に連結され、その回転駆動が可能な状態とされる。また、現像ローラ54は、バイアス印加電源(不図示)に電気的に接続される。
尚、図例のような回転攪拌部材52に代えて、スクリュー或いはパドル等の攪拌及び搬送部材を用いることもできる。
【0025】
画像形成装置1の装置本体10内には、現像装置5を装着し保持する為の空所(所定部位)101が設けられ、該空所101は装置本体10の前面側(図1の紙面手前側)が開口し、この開口部に開閉扉102が取付けられている。現像装置5は、この開閉扉102を開け、図3の白抜矢印方向に沿って(図1の紙面奥側に向け)水平状態で上記空所101内に挿入され、装着される。現像装置5のケーシング50は、図2に示すようにケーシング本体部501と、その上面開口部に一体に溶着されるトップケース(壁部)503とよりなり、ケーシング本体部501には、装着方向後側面に把手502が設けられている。この把手502の操作によって、上記空所101内への現像装置5の装着、或いは空所101からの現像装置5の取出しがなされる。現像装置5のトップケース503は、ケーシング本体部501の上部開口を密封する板状の蓋体であり、トップケース503より一段下がった鍔状基板509と、現像装置5の装着方向に沿ってトップケース503の表面より突出した段差部508とを備えている。段差部508から現像ローラ54側へと下方に傾斜した傾斜部507が形成されている。尚、ここでは図示していないが、この段差部508の形状に応じて画像形成装置1の空所101及び天板部103を構成すれば、該段差部508によっても特定の画像形成装置1とこれに適合する現像装置5を特定することができる。
【0026】
上記ケーシング50におけるトップケース503の表面の前記装着方向先側(図3の白抜矢印方向)には、識別凹部94が段部切欠形状に形成されており、平面視すると凹形状となっている(図2、図3参照)。現像装置5を装着及び保持する為の前記空所101を構成する天板部103(支持フレーム)は板金で構成されている。画像形成装置1の機種を特定するために、前記装着方向先側には金属材からなる第1の識別凸部104が1個下向きに設けられているとともに、前記装着方向手前側には、第2の識別凸部105が2個下向きに形成されている。尚、第1の識別凸部104の取付要領については、図6に基づき後に詳述する。
【0027】
またトップケース503の表面には、前記装着方向(図3の白抜矢印方向)に直交する方向に並列状態で且つ前記装着方向手前側(開閉扉102側)には、複数個(図例では5個)の取付孔504…が形成されている。この取付孔504…は略方形状とされ、識別部材9及び閉塞部材90が、トップケース503の裏面から(貯留室51側から)該取付孔504…に挿入され、取付孔504…の各周縁部に溶着によって取付け固定されている。このように、識別部材9及び閉塞部材90は、取付孔504…の周縁部に対してトップケース503の裏面側より溶着することにより取付け固定されているから、これらをトップケース503の表面側に引き抜くことは困難なものとすることができる。識別部材9及び閉塞部材90と、ケーシング50(トップケース503)とは、同質の熱可塑性樹脂、望ましくは現像剤を構成する樹脂トナーと同じポリスチレンの成型体からなる。これにより、上記溶着が強固になされると共に、リサイクル処理の合理化が図られる。
【0028】
図4に示すように、識別凹部94の底面941はトップケース503の上記鍔状基板509の表面と同一面をなしている。そして、識別凹部94は現像装置5を前記空所101内に図4の白抜矢印方向に沿って挿入する際、第1の識別凸部104に干渉せず且つ識別凸部104を受け入れ得るように形成される。よって、現像装置5を空所101内に水平状態で装着すると(図4上段参照)、天板部103の所定部位に設けられた第1の識別凸部104が鍔状基板509の表面に沿い、この平面視凹形状の識別凹部94内に受け入れられるようになされている(図4下段参照)。このとき、識別凹部94が、第1の識別凸部104に対応する位置に形成されていない場合は、トップケース503の鍔状基板509の段部が識別凸部104に干渉することになり、それ以上挿入することができないから、装着しようとする現像装置5は当該画像形成装置1には適合しないものであると簡易に判断することができる。
【0029】
また図4に示すように識別部材9はトップケース503の表面より突出するよう取付けられ、閉塞部材90は、これに対応する位置に設けられた第2の識別凸部105に干渉しないよう設けられる。よって、現像装置5を空所101内に水平状態で装着すると(図4上段参照)、天板部103の所定部位に設けられた第2の識別凸部105が識別部材9に干渉せず、またトップケース503の表面にも干渉しないで、閉塞部材90の上に位置することになる。このとき、識別部材9が第2の識別凸部105に干渉する場合には、それ以上挿入することができないから、装着しようとする現像装置5は、当該画像形成装置1には適合しないものであると簡易に判断することができる。
【0030】
以上のように識別凹部94の形成パターンは、現像装置5を図3の白抜矢印方向に沿って空所101内に挿入する際、識別凹部94が第1の識別凸部104に干渉しないように設定されており、識別部材9及び閉塞部材90の組合せパターンは、識別部材9が第2の識別凸部105に干渉しないよう設定されている。
従って、第1の識別凸部104と識別凹部94の組合わせパターン、そして第2の識別凸部105と識別部材9及び閉塞部材90の組合せパターンとにより、複数機種の各画像形成装置1に1対1に対応する複数の現像装置5が特定される。これにより、現像装置5の装着間違いを生じる懸念がなく、装着間違いによる画像形成装置1の故障、或いは画像品質の低下と言ったトラブルの発生を未然に防止することができる。またトップケース503の表面という限られた部位において、現像装置5の装着方向先側及び手前側に上述のような組合わせパターンを構成することができるので、非互換性の組合わせパターンを飛躍的に増やすことができる。よって、トップケース503を大型化することなく、機種多様化の要請に対応することができる。
【0031】
図2、図3に示すように該識別凹部94の近傍には、上方開口で略方形状の凹部を複数備えた格子部95が形成されている。尚、該格子部95はなくてもよいが、このような薄型の樹脂成型体からなるトップケース503を形成する際に、格子部95を備えたものとすれば、トップケース503の板厚を均一なものとすることができ、樹脂成型体特有のそり或いはひけ等の成型欠陥の出現を低減することができる。
トップケース503の表面に形成される識別凹部94及び格子部95は、交換入れ子を備える成型金型によって形成されており、識別凹部94の形成位置に対応して複数の成型金型を作成する必要がない。即ち、識別凹部94を含む部分に対応する交換入れ子の金型を複数パターン作成すれば、識別凹部94の形成位置が異なるトップケース503を共通の成型金型によって製造することができる。この製造方法については、後に図5に基づいて詳述する。
【0032】
次に、トップケース503及びこのトップケース503を用いた現像装置5の製造方法について説明する。図5ではトップケース503を形成する上下分割金型のうち、下型520のみを示しているが、この上に上型(不図示)が載置されて成型されることは言うまでもなく、成型方法は射出成型について説明するがこれに限定されるものではない。また、以下では交換入れ子510〜513が4種用意された例について説明するが、図示の4種に限定されるものではない。
下型520と、上型(不図示)とにより成型金型が構成され、両分割型はラム等の伸張に伴う可動盤(不図示)の上昇により合体するようになっている。下型520のトップケース503を模ったキャビティ521内には、トップケース503の段差部508及び傾斜部507を形成する凹所523と、交換入れ子510〜513が配置可能な交換入れ子用凹所522とが形成されている。
交換入れ子510〜513は、トップケース503に形成される識別凹部94及び格子部95に対応して所望の形状に準備作成されており、例えば傾斜部507側に識別凹部94が形成される交換入れ子512、トップケース503の角部側(傾斜部507とは反対側)に識別凹部94が形成される交換入れ子510等が用意される。
【0033】
まず所定温度に加熱された下型520の交換入れ子用凹所522に所望の交換入れ子510を配置し、下型520と上型(不図示)とを可動盤の上昇により合体させた後、キャビティ521内に樹脂材料を注入充填していく。そして、樹脂材料を冷却して成型した後、脱型すれば、所望形状のトップケース503(図5の下段参照)を得ることができる。
例えば図2に示すようなトップケース503の角部側に識別凹部94が形成されたものを所望する場合は、4種ある交換入れ子のうち、510の交換入れ子を下型520の交換入れ子用凹所522に配置して成型すれば、トップケース503の角部側に識別凹部94が形成されたトップケース503を得ることができる。
【0034】
そしてこのように識別凹部94及び格子部95が形成されたトップケース503の所定位置(現像装置5装着方向手前側)に識別部材9及び閉塞部材90の取付孔504を形成し、所定の組合わせで取付孔504の周縁部に対してトップケース503の裏面側より識別部材9及び閉塞部材90を溶着一体とする。
そして識別部材9及び閉塞部材90が取付け固定されたトップケース503を、前記各機構部52〜54等が組み付けられたケーシング本体部501の上面開口部を塞ぐように溶着一体に固定することにより、ケーシング50が構成され、不図示の現像剤注入口より現像剤が貯留室51内に注入及び充填される。現像剤注入口は、ケーシング本体部501における把手502の取付け面に設けられており、把手502をネジ等により取付け固定することにより閉塞される。以上の要領により、現像装置5を組立て製造することができる。
【0035】
この製造方法によれば、トップケース503を成型するための分割金型1種に対して、交換入れ子を4種用意すれば、4パターンのトップケース503を成型することができるので、非互換性を確保するための組合わせパターン毎に成型金型を作成する必要がなく、現像装置5の製造方法の合理化、コストの低減を図ることができる。
ここで図2に示すようにトップケース503の表面に、点線状に連なる多数の凹部505…による方形の区画域部506を更に形成したものとすれば、この凹部505…の形成部位では、トップケース503の厚みが薄くなっているため、区画域部506を強く押せば、凹部505…において破断され区画域部506を取り除くことができる。従って、リサイクル処理等の際に、この区画域部506を除去して貯留室51内の前記機構部52〜54等を取外して分別することにより、リサイクル処理の合理化を図ることができる。
【0036】
次に、画像形成装置1に設けられる第1の識別凸部104を取付け固定する要領について説明する。図6の図中、白抜矢印は現像装置5の装着方向を示している。
図6に示すように、天板部103(板金支持フレーム)の取付孔109に対応する部位には、1〜4の識別符号が付されている。ここでは識別符号として番号が付されているがこれに限定されず、アルファベット或いは記号であってもよい。第1の識別凸部104を固定するためのネジ孔108が取付孔109の周縁部に2個ずつ形成されており、この例では、現像装置5の装着方向に対して取付孔109を挟んだ前後に2個ずつのネジ孔108が形成されている。画像形成装置1の製品仕様に基づき、第1の識別凸部104がいずれかの取付孔109の周縁部に対してネジ107によって取付け固定される。第1の識別凸部104の取付要領は、ネジで固定するだけでなく、溶接によって取付けてもよく、天板部103を所定位置に取り付けた後に、天板部103の上方から取付孔109に第1の識別凸部104を挿入し、ネジ或いは溶接によって固定する。
【0037】
第1の識別凸部104は、図6の一点鎖線で囲んだ拡大図に示すように、略長方形の平板状圧延鋼板の両端を折曲し、鍔部100が形成されたものであり、該鍔部100には取付孔109の両側に形成されたネジ孔108と整合するよう孔部106がそれぞれ2箇所形成されている。
図6の例はトップケース503の角部側(傾斜部507とは反対側)に形成された識別凹部94に対応して、識別番号1が付された取付孔109に第1の識別凸部104が取付け、固定されたものを示している。そして第1の識別凸部10が取り付けられていない取付孔109(図6では識別符号2〜4)は、PET等のシート部材110で塞がれている。
【0038】
このように、第1の識別凸部104は、金属材からなり、簡単に取り外しのできない場所に設けられているため、不適正な改変を効果的に抑止することができる。即ち、第1の識別凸部104の取付けられた天板部103は、排出トレイ等の構成部材に取り囲まれた部位に設けられているため、第1の識別凸部104を取り外すには、このような構成部材を取り外さなければならない。また現像装置5の装着方向奥側に設けられているため、簡単に手が届かず、空所101側から第1の識別凸部104を切除することも極めて困難である。尚、ここでは図示していないが、画像形成装置1がファクシミリ装置等であり、FBS(フラットベットスキャナ)を備えたものである場合は、上記構成部材としてFBSを取り外す必要が生じることになる。
【0039】
尚、天板部103に形成される取付孔109及びトップケース503に形成される取付孔504の個数は上述の例に限定されず、また段差部508及び傾斜部507が形成されていないものであってもよく、画像形成装置1の機種数に応じて適宜設定される。更に第1の識別凸部104と識別凹部94の組合わせパターン、識別部材9及び閉塞部材90の組合せパターンは、画像形成装置1の多様な機種に応じた現像装置5の1対1の対応パターンの設定を行うことができる。そして、識別凹部94、格子部95及び取付孔504の形成部位はトップケース503に限定されず、ケーシング本体部501の側部或いは前端部であっても良い。また、現像装置5を、画像形成装置1に対してその長手方向に沿って装着する例を示しているが、現像装置5の幅方向に沿って装着するようにしても良い。加えて、現像装置5としては、一成分現像方式或いは二成分現像方式のいずれであっても良い。後者の場合には、現像装置の一構成部分として、画像形成措置に着脱自在に装着されるトナー供給コンテナ(トナーカートリッジ)にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置全体の概略的縦断面図である。
【図2】同画像形成装置に装着された現像装置の一実施形態の外観斜視図である。
【図3】同現像装置を画像形成装置に装着する状態を概念的に示す図である。
【図4】同現像装置を画像形成装置に装着する状態を示す断面図である。
【図5】同現像装置における壁部の製造方法を概念的に示す工程図である。
【図6】同画像形成装置における識別凸部の取付部の板金支持フレーム側から見た図である。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置
10 装置本体
101 空所(所定部位)
103 天板部(板金支持フレーム)
104 第1の識別凸部(識別凸部)
109 取付孔
110 シート部材
5 現像装置
51 現像剤貯留室
503 トップケース(壁部)
94 識別凹部
510〜513 交換入れ子
520 下型(分割金型)
521 キャビティ
522 交換入れ子用凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を貯留する現像剤貯留室を有する現像装置を本体内部の所定部位に着脱自在に装着した画像形成装置であって、
上記本体内部の所定部位には、1以上の識別凸部が設けられ、上記現像剤貯留室の壁部は樹脂の成型体からなり、該壁部の表面には、上記現像装置を該所定部位に装着する際に上記識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されており、上記壁部は該識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記識別凸部は、前記所定部位の前記現像装置の装着方向奥側に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記識別凸部は、金属材からなり、前記所定部位には取付孔を備える板金支持フレームが設けられ、上記識別凸部は、該取付孔の周縁部に取付け固定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記取付孔は複数設けられており、前記識別凸部が取り付けられていない取付孔は、シート部材で塞がれていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置において、
前記板金支持フレームの取付孔に対応する部位には、識別符号が付されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記板金支持フレームを含む前記識別凸部の取付部が、前記装置本体の構成部材によって囲まれた部位に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
現像剤を貯留する現像剤貯留室を有し、画像形成装置における本体内部の所定部位に着脱自在に装着される現像装置であって、
上記現像剤貯留室の壁部は樹脂の成型体からなり、該壁部には、上記所定部位に装着する際に、該所定部位に設けられた1以上の識別凸部に干渉せず、且つ該識別凸部を受け入れ得る1以上の識別凹部が形成されており、上記壁部は該識別凹部を含む部分に対応する交換入れ子を備える成型金型によって形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の現像装置の製造方法において、
前記壁部を成型する為の分割金型の前記交換入れ子用凹所に所望の交換入れ子を配置し、当該分割金型に他の分割金型を合体させた後、金型キャビティ内に樹脂材料を注入成型し、脱型後所望形状の樹脂製壁部を得、該壁部を用いて現像装置を組立てることを特徴とする現像装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−9003(P2009−9003A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171937(P2007−171937)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】