説明

画像形成装置、通信装置及びカートリッジ

【課題】回路規模を増大させることなく、複数のカートリッジと通信を行う画像形成装置を提供する。
【解決手段】本画像形成装置は、カートリッジへの送信信号を生成するためのクロック信号及びデータ信号を出力する出力端子及び前記カートリッジからの送信信号を入力する入力端子を有する制御回路を含む。本画像形成装置は、各カートリッジの第1電極面に接続される第1電極と、第2電極面に接続される第2電極とを有するN個のコネクタを含む。本画像形成装置は、入力端子とN個の第1電極とを接続するための1対Nの第1信号線と、出力端子とN個の第2電極とを接続するための1対Nの第2信号線とを含む。本画像形成装置は、第2信号線における1対Nへの分岐位置から第2電極までの間に挿入され、制御回路から出力される切り換え信号に基づいて第2電極と制御回路との接続状態を切り換えるN個の切り換え部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等の電子機器に着脱される記憶媒体を搭載したユニットとデータ通信を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、膨大な個体数の製品に対して、個別情報を記憶させ、それら製品と端末等との間での通信によって情報の書き換えを行うことにより、品質や流通等の情報管理が行われている。
【0003】
これら製品の個体数や使用される環境等を考慮すると、各製品に付加される送受信装置と端末側の送受信装置とは、小型化及び低コスト化、さらに耐久性の観点からも、内部回路の構成を簡易にすることが望ましい。
【0004】
特許文献1は、プリンタとカートリッジのメモリチップとの間において、2本の信号線で双方向のデータ通信を行う接触型受信装置を示している。この文献に記載の接触型送受信装置は、信号線の数を最小限に抑えているため、プリンタの接点コネクタ及びカートリッジの接点電極面が少なくなり、コスト的及び小型化に有利である。また、通常、プリンタとカートリッジとの通信においては、カートリッジの挿抜回数が少なく磨耗が少ないため接触型の通信が有効である。さらに、プリンタとカートリッジとの間の通信において、接触型の装置は、例えば電波を用いて通信するような非接触型の装置よりも、低コストで放射ノイズを軽減できるため有効である。
【特許文献1】特開2003−248798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラー画像を印刷するプリンタでは、例えば複数色のトナーやインクを収容するための複数のカートリッジが装置内に存在し、それらカートリッジに付加された複数のメモリチップとの通信が必要となる。しかしながら、特許文献1では、複数のメモリチップとの通信方法又は構成については言及されていない。例えば、メモリチップと同じ数の駆動回路が必要な送受信装置では、回路規模が大きくなるとともに、大幅なコストアップが予想される。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであり、回路規模を増大させることなく、複数のカートリッジと通信を行う画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、情報を記憶するメモリを有する複数のカートリッジが着脱可能であって、複数のカートリッジのメモリの夫々と2本の信号線を用いて通信する画像形成装置として実現できる。本画像形成装置は、複数のカートリッジのメモリにデータ信号を送信するためのデータ送信部と、データ送信部からのデータ信号を複数のカートリッジのメモリに出力するための複数の信号線と、データ送信部にデータ信号を出力する制御部と、制御部から出力される信号に応じて、複数の信号線のうちの1本とデータ送信部とを接続することによって、複数のカートリッジのメモリのうちの1つにデータ送信部からデータ信号を送信するための切換部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、例えば、第1接点及び第2接点を有する複数のカートリッジと接触してデータ通信を行う通信装置として実現できる。通信装置は、複数のカートリッジのメモリにデータ信号を送信するためのデータ送信部と、データ送信部からのデータ信号を複数のカートリッジのメモリに出力するための複数の信号線と、データ送信部にデータ信号を出力する制御部と、制御部から出力される信号に応じて、複数の信号線のうちの1つとデータ送信部とを接続することによって、複数のカートリッジのメモリのうちの1つにデータ送信部からデータ信号を送信する切換部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、例えば、画像形成装置に着脱可能なカートリッジとして実現できる。カートリッジは、画像形成装置に含まれる通信装置と2本の信号線で接続するための第1接点及び第2接点と、第1接点及び第2接点に接続されたメモリチップとを備え、メモリチップは、カートリッジから通信装置へ送信するデータ信号に基づいて、動作状態が変化する定電流回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、回路規模を増大させることなく、複数のカートリッジと通信を行う画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に記載された発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
<画像形成装置>
図1は、比較例の画像形成装置の構成例を示す図である。ここでは、比較例の画像形成装置100に含まれる通信装置101と、画像形成装置100に着脱される1つのカートリッジ102との構成について説明する。通信装置101とカートリッジ102とは、物理的に接触され、2本の信号線によってデータ通信が行われている。
【0013】
通信装置101は、主に、制御回路103、送信回路としての駆動回路と受信回路とを含む送受信回路104及びコネクタ105を含んで構成される。カートリッジ102は、記憶メモリと、データを通信するためのインターフェースとを有するメモリチップ106を含んで構成される。制御回路103は、カートリッジ102とのデータ通信を制御する。送受信回路104は、制御回路103からの出力信号に基づいてメモリチップ106とデータ通信を行う。送受信回路104は、2本の信号線でデータ通信を行うため、メモリチップ106へ電源の供給、通信の同期のためのクロック供給及びデータの送受信の全てを行う。
【0014】
メモリチップ106には、カートリッジ102を画像形成装置100に挿入した際にコネクタ105と接触する電極面が設けてある。これにより、通信装置101とカートリッジ102との間で通信ラインが確保される。通信ラインの数が少ないほど、コネクタ105及びメモリチップ106の電極面の数が少なくなる。したがって、通信ラインの数を最小限、例えば、2本に留めることは、コスト的に非常に有利であるとともに、システム全体の小型化を図る上でも有利となる。また、メモリチップ106は、小型化したいという要望、また、バッテリーを持たせた場合にバッテリー寿命を考慮する必要がある等の問題から、電源を持たず、外部の送受信回路104により電源供給を受ける。
【0015】
しかしながら、カラー画像形成装置等では、複数(N個)のカートリッジが挿入されるため、図1の構成をそのままカラー画像形成装置に実装すると、N個の送受信回路104が必要となる。ここで、Nとは2以上の自然数を示す。実装する送受信回路104の数が増大することは、回路規模及びコストの増大を招く。以下では、N個のカートリッジが着脱される本実施形態による画像形成装置について説明する。本実施形態による画像形成装置は、実装する駆動回路の数を増やすことなく、各カートリッジとのデータ通信を2本の信号線によって実現する。
【0016】
図2は、本実施形態による画像形成装置の一例を示す図である。ここでは、本実施形態による画像形成装置200に含まれる通信装置201と、画像形成装置200に着脱可能なN個のカートリッジ202a、202b、202c、202dとの構成について説明する。なお、ここでは、着脱されるカートリッジ202の個数(N個)が4である場合について説明する。
【0017】
通信装置201は、カートリッジとの通信を制御する制御部として機能する制御回路203、データ送信のためのデータ送信部として機能する駆動回路206、データを受信するためのデータ受信部として機能する受信回路208及び4つのコネクタを含む。各カートリッジ202a、202b、202c、202dは、それぞれメモリチップ214a、214b、214c、214dを含む。各メモリチップ214a、214b、214c、214dは、不図示の2つの電極面(第1電極面、第2電極面)を有する。
【0018】
各コネクタは、第1接点としての第1電極面に接続される第1電極210a、210b、210c、210dと、第2接点として第2電極面に接続される第2電極211a、211b、211c、211dとを含み、メモリチップ214a、214b、214c、215dの夫々に接続される。例えば、メモリチップ214aに接続されるコネクタは第1電極210a及び第2電極211aを含み、メモリチップ214bに接続されるコネクタは、第1電極210b及び第2電極211bを含む。したがって、カートリッジ202が画像形成装置200に装着されると、カートリッジ202側の電極面と、通信装置201側の電極が接触することにより通信ラインが形成(接続)される。一方、カートリッジ202が画像形成装置200から取り外されると、通信ラインは、物理的に切断される。また、本画像形成装置は、M個(Mは自然数)のカートリッジを装着することができる。そのため、本画像形成装置は、M個のコネクタを備えている。ただし、本画像形成装置には、M個以下であるN個のカートリッジだけが接続されてもよい。この場合、M−N個のコネクタは未接続の状態となる。もちろん、通常は、M=Nとなる。
【0019】
制御回路203は、カートリッジ202への送信信号を生成するためのクロック信号及びデータ信号を出力する出力端子213及びカートリッジ202からの送信信号を入力する入力端子212を有する。また、通信装置201は、制御回路203に含まれる入力端子212とN個の第1電極210とを接続するための1対Nの第1信号線204を含む。さらに、通信装置201は、出力端子213と各第2電極211とを接続するための1対Nの第2信号線205を含む。具体的に、第1信号線204は、各分岐点215b、215c、215dから分岐されて、各第1電極210へ接続される。また、第2信号線205は、各分岐点216b、216c、216dから分岐されて、各第2電極211へ接続される。
【0020】
通信装置201は、第2信号線における各分岐点216から各第2電極211までに挿入される4つの切換部207a、207b、207c、207dをさらに含む。各切換部207a、207b、207c、207dは、制御回路203から出力される切換信号S3に基づいて各第2電極211と出力端子213との接続状態を接続又は切断に切り換える。なお、切換信号は、通信相手となるカートリッジを択一的に選択するための信号でもあるため、選択信号と呼ばれてもよい。具体的に、制御回路203は、切換信号S3によって、例えば、切換部207aの接続状態を接続とし、切換部207b、207c、207dの接続状態を切断に制御する。この場合、通信装置201は、カートリッジ202aとデータ通信を行うこととなる。このように、本実施形態による通信装置201は、切換部207a〜207dのうち1つの接続状態としその他を切断状態として、複数のカートリッジ202の中から選択的にデータ通信を実行することができる。
【0021】
また、各切換部207(207a〜207d)は、電界効果トランジスタ(以下FETと称する)で実現されることが望ましい。これは、リレーなどに代表されるメカニカルなスイッチと比べて、サイズが非常に小さく、半導体素子で構成されたセレクタ回路よりも安価でかつ回路構成や回路のパターン配置において自由度の高い設計が可能となるためである。
【0022】
以下では、第2信号線205のみに各切換部207を設けることで選択的なデータ通信が可能である原理について説明する。なお、ここでは、図2において、通信装置201と、カートリッジ202aとがデータ通信を行う場合を想定する。制御回路203は、切換信号S3を出力して、切換部207aであるFETのゲート信号をオン状態とする。また、制御回路203は、切換部207b、207c、207dであるFETのゲート信号をオフ状態とする。したがって、第2信号線205が接続されるのはメモリチップ214aのみとなる。他のメモリチップ214b、214c、214dには、第1信号線204のみが接続され、第2信号線205はオープンとなる。そのため、メモリチップ214b、214c、214dの第1電極面と第2電極面との間の電位差はゼロとなる。よって、メモリチップ214aのみが動作可能な状態となり、メモリチップ214b、214c、214dは、動作しない状態となる。このように、本実施形態による画像形成装置200は、通信対象となるメモリチップ214に接続された2本の信号線のうち、1本の信号線のみに挿入された切換部207をオンオフ制御することによって、選択的なデータ通信が可能となる。
【0023】
駆動回路206は、第2信号線205における出力端子213と各切換部207との間に挿入される。また、駆動回路206は、切換部207によって接続状態となっている第2電極211に対するカートリッジ202に第2信号線205を介して、電力を供給するとともに、制御回路203からのクロック信号及びデータ信号に基づいて送信信号を出力する。ここで、送信信号とは、制御回路203から出力されるクロック信号にデータ信号から取得した情報を重畳した信号となる。このように、本実施形態によれば、4つのカートリッジ202が装着された場合であっても、各切換部207により何れか1つのカートリッジ202と選択的なデータ通信が可能であるため、4つのカートリッジのメモリに対して4つの駆動回路206を実装する必要がない。
【0024】
受信回路208は、第1信号線204における入力端子212と第1電極210との間に挿入され、切換部207により接続状態にされている第2電極に対応するカートリッジ202からの送信信号を受信する。受信回路208は、第1信号線204によって各カートリッジ202に共通に接続されている。これは、各切換部207により何れか1つのカートリッジ202と選択的なデータ通信が行われるため可能となる。すなわち、常に、何れか1つのカートリッジ202のメモリチップ214のみから信号が出力されるため、4つの受信回路208を実装する必要がなく、1つの受信回路208へ共通に接続することで問題ない。
【0025】
本実施形態による通信装置201は、上述したように、切換部207によって第2信号線205の切り換えを行う。制御回路203は、通信対象以外のカートリッジ202のメモリチップ214に接続された第2信号線205の接続状態を切断とするため、各切換部207であるFETをオフ状態とする。しかしながら、実際に、FETをオフ状態としても、FETのドレイン端子とソース端子間には、寄生容量が必ず存在する。したがって、駆動回路206によってパルスを発生させた場合、オフ状態のFETであっても交流成分が通過してしまうため、通信対象ではないメモリチップ214に対しても交流電圧が印加されてしまう。通信装置201は、この問題を解決するために、一方の端が第1信号線204に接続され、他方の端が対応する第2信号線205における第2電極211と切換部207との間にそれぞれ接続される4つの電荷蓄積部を含む。本実施形態によれば、電界蓄積部としては、例えばコンデンサ209a、209b、209c、209dを用いている。コンデンサ209a、209b、209c、209dを接続することにより、以下のような近似式が成り立つ。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、例えば第2信号線205に出力される信号Aと第1信号線204に出力される信号Bとの間の電圧差をVAB、通信対象ではないメモリチップ214の第1電極面及び第2電極面の2端子間にかかる電圧をVM、コンデンサ209の容量をC1、FETのドレイン−ソース間の寄生容量をC2とする。
【0028】
厳密には図2に示す電流検出抵抗R1及びメモリチップ214の内部インピーダンスを考慮する必要があるが、それらのインピーダンスよりも、コンデンサ209のインピーダンスを小さくすることを前提として、近似計算で無視して考えている。さらに、メモリチップを確実に停止状態(オフ状態又はリセット状態)とするための端子間電圧をVOFFとすると、VM<VOFFとなるようにコンデンサ209の容量値を決定する必要がある。VOFF=0.1V、VAB=5V、C2=20pFとすると、数式1よりC1の容量値は、980pF以上と計算される。通信周波数を100kHz程度とすると、コンデンサ209のインピーダンスはおよそ1.6kΩと計算される。メモリチップ214の内部インピーダンスは少なくともこの数倍の値であり、コンデンサ209との並列接続における合成インピーダンスは、コンデンサ209のインピーダンスが支配的となる。
【0029】
この980pFのコンデンサを挿入することによって、通信対象ではないメモリチップ214の2端子間のインピーダンスは、FETのドレイン−ソース間の寄生容量によるインピーダンスよりも十分に低くなる。そのため、駆動回路206によって交流電圧が印加されても、メモリチップ214の2端子間に印加される電圧を、停止状態となる電圧以下に押さえ込むことが可能となる。実際にはこの電圧からさらに電流検出抵抗R1分の電圧降下分を差し引いた値が、メモリチップ214に印加される電圧となるため、より確実に停止状態を保持することができる。
【0030】
このような接触型の通信装置には、信号線の本数により様々な通信方式が存在する。しかしながら、信号線の本数の増加とともに、束線やコネクタを含めた総コストが上昇するため、最も小型で低コストなシステムを実現するには最小本数が2本の2線式が有効である。本実施形態による通信装置201は、複数のカートリッジ202が装着される場合であっても、駆動回路206及び受信回路208を増大させることなく、2線式のデータ通信を実現しうる。また、本通信装置201は、2本の信号線のうち1本の信号線のみに切換部207を設けることで選択的なデータ通信が可能である。よって、切換部207は、1メモリチップ214あたり1素子でよく、回路規模を増大させることなく、コスト的にも有利である。
【0031】
<通信方式の詳細>
ここでは、通信方式の詳細について記述する。なお、以下では、駆動回路206とメモリチップ214との間で行われるダウンリンク及びアップリンクでのデータ通信について説明する。「ダウンリンク」とは、制御回路203からメモリチップ214へのデータ送信を示す。また、「アップリンク」とは、メモリチップ214から制御回路203へのデータ送信を示す。
(1)ダウンリンクの動作
図3は、本実施形態による通信装置から出力される信号の一例を示す図である。ここでは、ダウンリンク時に第1信号線204及び第2信号線205に出力される信号について説明する。
図3に示す信号A301は、ダウンリンク時において、第2信号線205に出力される信号を示す。信号B302は、ダウンリンク時において、第1信号線204に出力される信号を示す。内部CLK303は、各メモリチップ214内で信号A301の立ち上がりエッジに同期して生成されるクロック信号を示す。
【0032】
まず、信号B302は、図2に示す電流検出抵抗R1で接地されている。後述するが、電流検出抵抗R1は、受信信号検出用の数十Ω前後の小さい抵抗値である。そのため、信号B302は、ほぼゼロボルトとなる接地信号となる。一方、信号A301は、駆動回路206によって出力され、クロック信号にデータ信号から取得した情報を重畳した信号である。具体的に、図3に示すように、信号A301は、一定周期T1(通信周波数)にてVHとVLの2値変化を行う変調信号であり、常にVL以上の電圧となる。
【0033】
内部CLK303は、信号A301の立ち上がりエッジからある一定の遅延T2を加えたONデューティーの信号である。信号A301は、出力するデータ(”H”又は”L”)に基づき、電圧VHとなる時間、すなわち、パルス幅が調整される。図3に示すように、信号A301は、データ”H”のときパルス幅T3と調整され、データ“L”のときパルス幅T4と調整される。このとき、T4<T2<T3となる関係を成立させることが重要となる。これにより、各メモリチップ214は、内部CLK303の立ち下がり時に、信号A301のレベルがVHであるかVLであるかを判別することによって、データの受信が可能となる。
【0034】
次に、図4を参照して、ダウンリンク時のメモリチップ214の内部動作例について説明する。図4は、本実施形態によるカートリッジに含まれるメモリチップの構成例を示す図である。なお、ここでは、各メモリチップ214a、214b、214c、214dが同様の構成であるため、メモリチップ214aの構成を一例に説明する。
【0035】
メモリチップ214aは、電圧レベルを検出するための検出回路401、内部CLKを発生するためのクロック生成回路402、データを検出するための検出回路403、制御回路404、レギュレータ回路405、定電流回路406及びメモリ407を含む。レギュレータ回路405は、一定の電圧を出力するための回路である。また、定電流回路406についての説明は、アップリンク時のデータ通信を説明する中で記載する。
【0036】
検出回路401は、VHとVLとの間で2値変化する信号A301の電圧レベルを検知する。クロック生成回路402は、検出回路401から出力される検知信号の変化によって、内部CLK303を生成する。内部CLK303は、図3に示すように、VLからVHへの立ち上がりエッジにT2の遅延分を付加したパルス幅を有する。検出回路403は、内部CLK303の立ち下がりエッジで、検出回路401の出力がVHなのかVLなのかを判定する。具体的に、検出回路403は、信号A301のパルス幅がT3のときはデータ”H”と検出し、パルス幅T4のときはデータ”L”と検出する。検出回路403は、その検出結果を受信データとして制御回路404へ出力する。
(2)アップリンクの動作
次に、図4及び図5を参照して、アップリンク時のデータ通信について説明する。図5は、比較例のメモリチップの構成例を示す図である。
【0037】
図5に示すように、メモリチップ500は、受信回路を含む駆動回路501と2つのコネクタ502、503により接続される。メモリチップ500は、内部CLK生成回路504、データ検出回路505、制御回路507、レギュレータ回路508、メモリ509、スイッチ510及び抵抗511を含む。なお、内部CLK生成回路504、データ検出回路505、制御回路507、レギュレータ回路508及びメモリ509は、図4に示す各要素と同様の動作を行う。
【0038】
図5に示すように、スイッチ510と抵抗511とは、メモリチップ500内の信号Aと信号Bとが伝達される2本の信号線のライン間に直列に接続されて挿入される。メモリチップ500から駆動回路501へ送信したいデータに基づき、制御回路507がスイッチ510をオンオフ制御する。これにより、メモリチップ500での消費電流が2値変化し、通信装置201側で電流検出することによってデータ受信が可能となる。
【0039】
本実施形態においては、図4に示すように、メモリチップ214は、電流I2の定電流回路406を含む。そして、メモリチップ214の制御回路404によって送信データに基づいて定電流回路406の動作状態をオンオフすることで信号を出力する。定電流回路406の消費電流I2以外に、メモリチップ214内でロジック動作やメモリアクセス動作によって定常的に電流が消費される。この電流値をI1とすると、信号A及び信号Bに流れる電流は、I1とI2との間で2値変化することとなる。受信回路208は、これらの電流を電流検出抵抗R1で電圧として取り出す。これにより、通信装置201は、カートリッジ202から出力されるデータを受信する。
【0040】
本実施形態では、複数のメモリチップ214との通信を行うために、FETを用いて2本の信号線の片側の信号線の状態のみをオンオフすることで通信対象となるメモリチップを選択している。このとき、図2に示すように、2本の信号線のうちFETによって遮断されないほうの信号線側に、受信回路208を設ける。これにより、通信対象となるメモリチップ214によって切り換える必要がなく、通信装置201は、共通の受信回路208を1つ含むだけでよい。よって、通信装置201は、回路規模を増大させることなく、低コストで複数のカートリッジとのデータ通信を行うことができる。
【0041】
さらに、電流検出による受信を行う上で重要となるのは、図1に示すように、コンデンサ209を接地電位V1に接続することである。コンデンサ209を接地電位V1ではなく、電流検出抵抗R1の2端子のうちメモリチップ214側に接続した場合を想定する。この場合、対象通信でないメモリチップ214及び対応する切換部207によって形成される容量成分経路から通過してきた交流電流が、電流検出抵抗R1を通過してしまうため、コンパレータCMP1での電圧検出マージンを低下させることとなる。また、切り換え時の電流検出抵抗R1による電圧ドロップが大きくなるため、通信波形を歪ませる結果となり通信に悪影響を与えることとなる。
【0042】
コンデンサ209を接地電位V1に接続することで、電流検出抵抗R1を通過する不必要な電流成分を軽減させることが可能となり、受信回路208の検出精度を向上させることができる。本実施形態では、伝送する2つの信号のうち電位の低い方を固定電圧(図2に記載の接地電位V1)とし、電位の高い方を変調する方式について述べた。しかしながら、詳細に述べるまでもなく、電位の高い方を固定電圧(V1を接地電位ではなく基準電位とする)とし、電位の低い方を変調しても同様の効果が得られる。また、本実施形態では2つの信号のうち駆動回路側の信号をFETでオンオフする構成としているが、これを受信回路側の信号をFETでオンオフする構成をとっても同様の効果を得られる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態による画像形成装置は、通信装置と複数のカートリッジとのデータ通信において、第1信号線と第2信号線との2本の信号線でデータ通信を行う。また、本画像形成装置は、第2信号線の接続状態を接続又は切断に切り換える切換部を含む。これにより、本画像形成装置は、2本の信号線により、選択的にデータ通信を行うことができ、さらに、複数のカートリッジに対応する複数の駆動回路を必要としない。したがって、本画像形成装置は、回路規模を増大させることなく、複数のカートリッジとデータ通信を行うことができる。また、本画像形成装置は、片側の信号線のみに切換部を有することで、選択的なデータ通信を可能としている。よって、本画像形成装置は、より回路規模の増大を防止するとともに、低コスト化を実現しうる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず様々な変形が可能となる。一方の端が第1信号線に接続され、他方の端が第2電極と切換部との間の分岐された第2信号線に接続されるN個の電荷蓄積部をさらに含んでもよい。これにより、本画像形成装置は、切換部による切り換えの精度をさらに向上しうる。したがって、本画像形成装置は、2本の信号線により、選択的にデータ通信を行うことができる。よって、本画像形成装置は、回路規模を増大させることなく、複数のカートリッジとデータ通信を行うことができる。
【0045】
また、本画像形成装置は、第1信号線に挿入され、カートリッジから出力された信号を受信する受信回路をさらに含んでもよい。これにより、本画像形成装置は、複数のカートリッジとデータ通信を行う場合であっても、第1信号線に挿入される1つの受信回路のみで各カートリッジから出力される信号を受信できる。よって、本画像形成装置は、回路規模を増大させることなく、複数のカートリッジとデータ通信を行うことができる。
【0046】
また、受信回路は、受信回路内の基準電位又は接地電位に接続される電流検出抵抗を含んでもよい。この場合、電荷蓄積部は、電流検出抵抗が接続された基準電位又は接地電位に接続されてもよい。これにより、本画像形成装置は、2つの信号のうち、電位の低い方を固定電圧とし、電位の高い方を変調してもよい。さらに、本画像形成装置は、電位の高い方を固定電圧とし、電位の低い方を変調してもよい。したがって、本画像形成装置は、汎用性の高い設計が可能であるといえよう。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、切換部は、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。FETは、リレーなどに代表されるメカニカルスイッチと比べて、サイズが非常に小さく、半導体素子で構成されたセレクタ回路よりも安価でかつ回路構成やパターン配置において自由度の高い設計が可能である。これにより、本画像形成装置は、複数のカートリッジとデータ通信を行う場合であっても、回路規模をより縮小しうる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】比較例の画像形成装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態による画像形成装置の一例を示す図である。
【図3】本実施形態による通信装置から出力される信号の一例を示す図である。
【図4】本実施形態によるカートリッジに含まれるメモリチップの構成例を示す図である。
【図5】比較例のメモリチップの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
200:画像形成装置
201:通信装置
202a〜d:カートリッジ
203:制御回路
204:第1信号線
205:第2信号線
206:駆動回路
207a〜d:切り換え部
208:受信回路
209a〜d:コンデンサ
210a〜d:第1電極
211a〜d:第2電極
212:入力端子
213:出力端子
214a〜d:メモリチップ
215b〜d:分岐位置
216b〜d:分岐位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶するメモリを有する複数のカートリッジが着脱可能であって、複数の前記カートリッジのメモリの夫々と2本の信号線を用いて通信する画像形成装置であって、
複数の前記カートリッジのメモリにデータ信号を送信するためのデータ送信部と、
前記データ送信部からのデータ信号を複数の前記カートリッジのメモリに出力するための複数の信号線と、
前記データ送信部にデータ信号を出力する制御部と、
前記制御部から出力される信号に応じて、複数の前記信号線のうちの1本と前記データ送信部とを接続することによって、複数の前記カートリッジのメモリのうちの1つに前記データ送信部からデータ信号を送信するための切換部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
更に、複数の前記カートリッジのメモリのうちの1つから送信されたデータ信号を受信するデータ受信部を備え、
前記制御部は、前記データ送信部によるデータ信号の出力と前記データ受信部によるデータ信号の受信とを選択的に実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カートリッジは、第1接点及び第2接点を有し、
前記制御部は、
前記カートリッジへの送信信号を生成するために、前記データ送信部にクロック信号及び前記データ信号を出力する出力端子と、前記データ受信部から送信された信号を入力する入力端子とを備え、
複数の前記カートリッジの夫々の前記第1接点に接続される第1電極と、前記第2接点に接続される第2電極とを有する複数のコネクタと、
前記2本の信号線は、前記入力端子と複数の前記第1電極とを接続するための第1信号線と、
前記出力端子と複数の前記第2電極とを接続するための第2信号線とから構成され、
前記切換部は、
前記第2信号線における複数の前記カートリッジのメモリの夫々の前記第2電極までの間に挿入され、前記制御部から出力される切換信号に基づいて複数の前記第2電極と前記データ送信部との接続状態を切り換え、
前記データ送信部は、
前記第2信号線において前記出力端子と各切換部との間に挿入され、前記切換部によって接続状態となっている前記第2電極に対応する前記カートリッジのメモリに前記第2信号線を介して、電力を供給するとともに、前記クロック信号及び前記データ信号に基づいて送信信号を出力する駆動回路であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
一方の端が前記第1信号線に接続され、他方の端が対応する前記第2信号線における前記第2電極と前記切換部との間にそれぞれ接続される複数の電荷蓄積部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記データ受信部は、
前記第1信号線における前記入力端子と前記第1電極との間に挿入され、前記切換部により接続状態にされている前記第2電極に対応するカートリッジから信号を受信する受信回路であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記受信回路は、
前記第1電極と、前記受信回路内の基準電位又は接地電位との間に、前記カートリッジから前記第1信号線に出力される送信信号の電流を検出するための電流検出抵抗を含み、
各電荷蓄積部の一方の端は、前記電流検出抵抗が接続された前記基準電位又は前記接地電位に接続されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記切換部は、前記切換信号がゲートに入力される電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項8】
第1接点及び第2接点を有する複数のカートリッジと接触してデータ通信を行う通信装置であって、
複数の前記カートリッジのメモリにデータ信号を送信するためのデータ送信部と、
前記データ送信部からのデータ信号を複数の前記カートリッジのメモリに出力するための複数の信号線と、
前記データ送信部にデータ信号を出力する制御部と、
前記制御部から出力される信号に応じて、複数の前記信号線のうちの1つと前記データ送信部とを接続することによって、複数の前記カートリッジのメモリのうちの1つに前記データ送信部からデータ信号を送信する切換部と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項9】
更に、複数の前記カートリッジのメモリのうちの1つから送信されたデータ信号を受信するデータ受信部を備え、
前記制御部は、前記データ送信部によるデータ信号の出力と前記データ受信部によるデータ信号の受信とを選択的に実行することを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
画像形成装置に着脱可能なカートリッジであって、
前記画像形成装置に含まれる通信装置と2本の信号線で接続するための第1接点及び第2接点と、
前記第1接点及び前記第2接点に接続されたメモリチップとを備え、
前記メモリチップは、
前記カートリッジから前記通信装置へ送信するデータ信号に基づいて、動作状態が変化する定電流回路を備えることを特徴とするカートリッジ。
【請求項11】
更に、前記定電流回路の動作状態を制御する制御回路を備えることを特徴とする請求項10に記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−159035(P2008−159035A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297205(P2007−297205)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】