説明

画像形成装置およびその制御方法

【課題】定された記録媒体の種類と実際に通紙された記録媒体の種類とが一致しない場合であっても、偽造などを好適に防止する。
【解決手段】判別部は、画像形成部へと搬送される記録媒体の種類を判別する。比較部は、指定された記録媒体の種類と判別された記録媒体の種類とを比較する。設定部は、指定された記録媒体の種類に応じて画像情報に識別情報を付加しないと判定され、かつ、指定された記録媒体の種類と判別部により判別された記録媒体の種類とが一致しない場合に、第2の画像形成条件を画像形成部に設定する.第2の画像形成条件は、判別部によって判別された記録媒体の種類に応じた第1の画像形成条件とは異なるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置(例:カラープリンタやカラー複写機など)の性能が向上し、より高画質の画像を形成できるようになってきている。その反面、高画質の画像を形成できる画像形成装置を悪意のある者が利用する可能性もある。なぜなら、このような画像形成装置は、紙幣、銀行券及び有価証券などを忠実に再現できるからであるこのような偽造の問題は、画像形成装置の性能が向上するにしたがって、より懸念される事項となっている。
【0003】
特開平10−76735号公報によれば、偽造の抑制対策として、画像形成装置の製造メーカを表すIDや画像形成装置のシリアル番号などを示す付加信号をカラー画像に付加する技術が提案されている。また、特開2000−253229号公報によれば、入力された画像から付加信号を抽出し、抽出した付加信号から画像を形成した装置を特定する発明が提案されている。
【0004】
付加信号としてのドットパターンは、通常、画像全体に付加される。また、人間の目に識別しにくくするために、イエローのプレーンのみにドットパターンが付加される。ただし、OHT(オーバヘッド・トランスペアレント)シートに付加されたイエローのドットパターンは、人間の目でも容易に識別できてしまう。これは、画質の面からは好ましくない。また、OHTシートは、紙幣、銀行券及び有価証券とは紙質が大きく異なるため、偽造か否かをたやすく見分けることができる。このような理由から、OHTシートにはドットパターンを付加する必要性が小さい。上述した特許文献1によれば、ユーザにより指定された記録媒体がOHTシートであれば、追跡パターンを付加しない発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−76735号公報
【特許文献2】特開2000−253229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特開平10−76735号公報に記載の発明によれば、ユーザにより指定された記録媒体がOHTシートであった場合には追跡パターンが付加されないため極めて有効である。しかし、ユーザにより指定された記録媒体がOHTシートであっても、実際に通紙された記録媒体が普通紙であった場合、追跡パターンが付加されずに画像が普通紙に印刷されてしまう。これでは、偽造などを好適に防止することは難しいだろう。
そこで、本発明は、このような課題および他の課題を、少なくとも1つを解決するためになされたものである。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、画像形成装置は、画像形成部、判定部、付加部、判別部及び設定部を備える。画像形成部は、画像情報にしたがって記録媒体に画像を形成する。判定部は、指定された記録媒体の種類に応じて、画像情報に識別情報を付加するか否かを判定する。付加部は、画像情報に識別情報を付加する。判別部は、画像形成部へと搬送される記録媒体の種類を判別する。設定部は、指定された記録媒体の種類に応じて、画像情報に識別情報を付加しないと判定され、かつ、指定された記録媒体の種類と判別部により判別された記録媒体の種類とが一致しない場合に、第2の画像形成条件を画像形成部に設定する。第2の画像形成条件は、判別部によって判別された記録媒体の種類に応じた第1の画像形成条件とは異なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、指定された記録媒体の種類と実際に通紙された記録媒体の種類とが一致しない場合であっても、偽造などを好適に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図2】実施形態に係る画像形成装置のブロック図である。
【図3】給紙された転写材が二次転写位置に至るまでの転写材の搬送動作と転写材判別結果に基づいて二次転写電圧の設定を変更して転写する様子を時系列に表した図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置の制御方法を示したフローチャートである。
【図5】給紙された転写材が二次転写位置に至るまでの転写材の搬送動作を示したタイミングチャートである。
【図6】実施形態に係る画像形成装置の制御方法を示したフローチャートである。
【図7】給紙された転写材が二次転写位置に至るまでの転写材の搬送動作を示したタイミングチャートである。
【図8】実施形態に係る画像形成装置の制御方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態を示す。以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0011】
図1は、実施形態1に係る画像形成装置の概略断面図である。ここでは、画像形成装置100の一例としてレーザプリンタを採用している。ただし、本発明の画像形成方式は、例えば、電子写真方式、静電記録方式、磁気記録方式、インクジェット方式、昇華方式、オフセット印刷方式のいずれであってもよい。
【0012】
画像形成部101は、入力された画像信号(画像情報)にしたがって記録媒体に画像を形成する画像形成部の一例であり、主に次のユニットから構成されている。感光体5Y、5M、5C、5K。一次帯電部としての注入帯電器7Y、7M、7C、7K。現像器8Y、8M、8C、8K、トナーカートリッジ、中間転写体12、給紙部1、転写部9および定着部13によって構成されている。なお、感光体、注入帯電器及び現像器は、画像形成装置100の本体に着脱可能なプロセスカートリッジ22Y、22M、22C、22Kに搭載されている。
【0013】
感光体5Y、5M、5C、5Kは、いわゆる感光ドラムであり、図示しない駆動モータの駆動力が伝達されて回転する。注入帯電器7Y、7M、7C、7Kは、それぞれスリーブを備え、対応する感光体5Y、5M、5C、5Kの表面を一様に帯電する。スキャナ部10Y、10M、10C、10Kは、入力された画像信号に応じて変調した露光光を、対応する感光体5Y、5M、5C、5Kへ照射し、静電潜像を形成する。
【0014】
現像器8Y、8M、8C、8Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の現像剤をトナーカートリッジ内に収納している。さらに、現像器8Y、8M、8C、8Kは、感光体上に形成された静電潜像を現像剤像へと現像する。
【0015】
中間転写体12は、感光体5Y、5M、5C、5Kに接触しながら回転する。これにより、各感光体5Y、5M、5C、5Kから可視画像(現像剤像)が中間転写体12へ一次転写される。転写部9が備える二次転写ローラは、給紙部1から搬送されてきた転写材2へ中間転写体12上に重畳した各色の現像剤像を二次転写する。このように、転写部9は、現像剤像を記録媒体に転写する転写部の一例である。
【0016】
転写材2は、記録材、記録媒体、用紙、シート、転写紙と呼ばれることもある。なお、転写部9の二次転写ローラには、カラー可視画像の二次転写を促進するために、所定の転写電圧が印加される。
【0017】
定着部13は、未定着のカラー可視画像を定着させる装置である。定着部13は、例えば、転写材2を加熱する定着ローラと、転写材2を定着ローラに圧接させるための加圧ローラとを備えている。
【0018】
ところで、画像形成部へと至る搬送路の途中には、転写材2の到着を検知するためのレジストセンサ19や、搬送されてきた転写材2の種類を判別するためのメディアセンサ4が設けられている。メディアセンサ4は、例えば、転写材2の裏面から光を照射する発光素子と、転写材2の透過光量を検出する受光素子を備えている。メディアセンサ4は、記録媒体の種類に依存して透過光量が異なるといった特性を利用して、記録媒体の種類を判別する。
【0019】
図2は、実施形態1に係る画像形成装置のブロック図である。コントローラ201は、ホストコンピュータ200及びエンジン制御部203と相互に通信する。コントローラ201は、ホストコンピュータ200から画像情報と印刷命令を受信し、画像情報を解析してビットデータ(画像信号)に変換する。さらに、コントローラ201は、転写材毎に印刷予約コマンド、印刷開始コマンドおよび画像信号をエンジン制御部203に送信する。エンジン制御部203のCPU211は、ビデオインターフェイス部210を介して、画像信号やコマンドをコントローラ201から受信する。なお、ホストコンピュータ200からコントローラ201への指示には、転写材の種類(例:材質や紙質)の指定も含まれる。
【0020】
CPU211は、画像形成条件の1つである転写電圧の値を決定し転写電圧制御部212に設定する転写電圧決定部230と、実際に通紙された転写材の種類を判別する転写材判別部240を備えている。転写電圧決定部230と、転写材判別部240は、CPU211内にハードウエアとして実装されてもよいし、ソフトウエアを実行することで実現される機能であってもよい。
【0021】
転写材判別部240は、読み取り値取得部214から出力される読み取り値にしたがって転写材の種類を判別する。読み取り値取得部214は、メディアセンサ4から出力される信号の値を読み取る。メディアセンサ4は、透過光量に応じた信号を読み取り値取得部214に出力する。例えば、OHTシートの透過光量は、普通紙の透過光量よりも多くなる。よって、転写材判別部240は、透過光量に相当する読み取り値と閾値とを比較し、読み取り値と閾値を超えていれば、転写材の種類をOHTシートと判別する。一方、転写材判別部240は、読み取り値が閾値以下であれば、転写材の種類を普通紙と判別する。
転写電圧制御部212は、転写電圧決定部230により設定された転写電圧を転写部9の転写ローラに印加する。なお、転写電圧制御部212は、正負の転写用高電圧を発生するインバータを含む。このように、転写電圧制御部212は、転写部に転写電圧を印加する印加部の一例である。また、転写電圧決定部230は、画像形成条件にしたがって転写電圧を調整する調整部の一例である。
【0022】
ドットパターン信号制御部213は、メインの画像とともに付加的に中間転写体12へ形成される付加画像(例:ドットパターンなどの識別情報)の画像データを保持している。ドットパターンは、例えば、偽造追跡用の画像である。例えば、画像形成装置の識別情報などであれば、偽造された印刷物の画像から画像形成装置が特定できる。なお、画像形成装置の識別情報に限らず、印刷に使用した画像形成装置を特定できる情報であればよい。その情報とは、例えば、画像形成装置に画像情報を送信したコンピュータ名や使用者名を含む情報であっても良い。ドットパターン信号制御部213は、CPU211からの要求に応じてドットパターンの信号をCPU211に出力する。CPU211は、コントローラ201から入力された画像信号と、ドットパターンの信号とを加算してスキャナ部に出力する。
【0023】
図3は、給紙された転写材が二次転写位置に至るまでの転写材の搬送動作と転写材判別結果に基づいて二次転写電圧の設定を変更して転写する様子を時系列に表した図である。タイミングt0で、エンジン制御部203のCPU211は、給紙部1に転写材の給紙を開始するよう指示する。タイミングt1で、レジストセンサ19が転写材2の先端を検出すると、CPU211は、転写材の搬送を一旦停止する。これは、中間転写体12によって搬送されてくる現像剤像の到着タイミングと、転写材の到着タイミングとを同期させるためである。転写材は、タイミングt1からt3まで待機位置で待機することになる。なお、本実施形態では、転写材判別部240がメディアセンサ4の読み取り結果に基づいて転写材の種類を判別する期間としても、転写材の一時停止期間が利用される。例えば、判別に要する時間は、T_wait[秒]である。メディアセンサ4は、転写材が待機している際に転写材の種類を判別できる位置(例:レジストセンサの近く)に配置されている。
【0024】
タイミングt2で、CPU211は、画像信号の出力の基準タイミングとなる/TOP信号をコントローラ201に出力する。コントローラ201は、/TOP信号を基準として、画像信号をエンジン制御部203へ出力する。エンジン制御部203は、受信した画像信号に応じてスキャナ部を駆動する。これにより、画像形成部が備える4つの感光体にそれぞれ現像剤像が形成され、中間転写体12に現像剤像が1次転写される。なお、転写材判別部240が転写材の種類を判別している間にTOP信号が出力されるのは、転写材判別結果を待ってからTOP信号を出力すると、転写材の搬送に対して画像形成が間に合わなくなってしまうためである。このように、中間転写体12への画像形成と転写材判別を並行的に行うことで印刷スループットを極力下げないようにしている。
【0025】
タイミングt3で、転写材の搬送が再開される。また、タイミングt3以降で、転写材の種類が確定することになる。ここでは、コントローラ201がOHTシートを指定し、かつ、実際に給紙された転写材もOHTシートであったものとする。
【0026】
タイミングt4で、転写電圧制御部212は、転写電圧決定部230により設定された転写電圧を転写部9の転写ローラに印加する。ここでは、指定された種類と判別された種類とが一致しているため、通常の画像形成条件(転写電圧)が採用される。なお、コントローラ201によってOHTシートが指定されているため、ドットパターン信号制御部213は、偽造追跡用のドットパターンを出力しない。
【0027】
タイミングt5で、2枚目の転写材について給紙が開始される。タイミングt6で、転写材の搬送が一時停止される。ここで、転写材判別部240が転写材の種類の判別を開始する。タイミングt7で、/TOP信号が出力される。タイミングt8で、転写材の種類の判別が完了し、転写材の搬送が再開される。ただし、ここでは、OHTシートが指定されたにもかかわらず、普通紙が判別されたものとする。
【0028】
タイミングt9で、転写電圧決定部230は、通常の画像形成条件とは異なる画像形成条件(例:通常の極性とは逆極性の電圧)を転写電圧制御部212に設定する。これは、OHTシートが指定されたにもかかわらず、普通紙が通紙されると、偽造防止用のドットパターンが付加されることなく、印刷が実行されてしまうからである。よって、転写電圧制御部212が通常の極性とは逆極性の電圧を転写ローラに印加することで、形成される画像の濃度を通常とは異なるようにすることができる。つまり、画質を低下させることができる。これによって、偽造などを防止できよう。なお、転写電圧制御部212が通常の極性とは逆極性の電圧を転写ローラに印加すると、転写材に転写されるトナーの量を大幅に少なくすることができる。すなわち、画像の濃度が通常の濃度よりも低くなる。
【0029】
図4は、実施形態1に係る画像形成装置の制御方法を示したフローチャートである。ステップS401で、コントローラ201は、ホストコンピュータ200又は操作パネル等から入力された指示に基づいて、転写材の種類をエンジン制御部203に指定する。よって、コントローラ201は、記録媒体の種類を指定する指定部の一例である。
【0030】
ステップS402で、エンジン制御部203のCPU211は、指定された転写材の種類が特定の種類(例:OHTシート)であるか否かを判定する。特定の種類でなければ、ステップS403に進む。この判定処理は、偽造を防止するための付加画像(例:イエローのドットパターン)をメインの画像に付加するか否かを判定する処理である。よって、CPU211は、指定された記録媒体の種類に応じて、入力された画像信号に付加画像を加算するか否かを判定する判定部の一例である。
【0031】
ステップS403で、CPU211は、偽造を防止するための付加画像(例:イエローのドットパターン)をメインの画像に追加するようドットパターン信号制御部213に命令する。これにより、ドットパターン信号制御部213は、ドットパターンを形成するための信号を出力し、この信号と入力された画像信号とが加算される。これにより、ドットパターンが付加された画像が中間転写体12上に形成される。よって、ドットパターン信号制御部213は、入力された画像信号に付加画像の信号を加算して画像形成部に供給する付加部の一例である。
【0032】
ステップS404で、CPU211は、通常の画像形成条件を画像形成部に設定する。例えば、CPU211の転写電圧決定部230は、正常に画像を再現できる転写電圧(通常時の転写電圧)を転写電圧制御部212に設定する。転写電圧制御部212は、設定された転写電圧を転写部9の転写ローラに印加する。
【0033】
ステップS405で、エンジン制御部203は、転写材の搬送タイミングを調整し、転写部9は、搬送されてきた転写材2に中間転写体12上の現像剤像を二次転写する。
【0034】
一方、ステップS402で、指定された種類が特定の種類(例:OHTシート)でないと判定されると、ステップS410に進む。ステップS410で、CPU211は、付加画像(例:イエローのドットパターン)をメインの画像に追加しないよう、ドットパターン信号制御部213に命令する。これにより、ドットパターン信号制御部213は、ドットパターンを形成するための信号の出力を停止する。よって、ドットパターンが付加されていない画像が中間転写体12上に形成される。なおメディアセンサ4によって普通紙、厚紙、薄紙、光沢紙などの記録媒体の種類を判別することができる。メディアセンサ4で判別された記録媒体の種類に応じて画像形成条件が設定される。本実施例において、指定された種類が特定の種類(例:OHTシート)であるが、メディアセンサ4によって判別された紙種が普通紙の場合は、画像形成条件は普通紙に対応した画像形成条件に設定される。
【0035】
ステップS411で、CPU211の転写材判別部240は、メディアセンサ4を用いて搬送されてきた転写材の種類を判別する。このように、転写材判別部240やメディアセンサ4は、画像形成部へと搬送される記録媒体の種類を判別する判別部の一例である。例えば記録媒体の表面性を判別するセンサとして記録媒体の表面の映像を撮像して、その表面状態を検知するセンサや、記録媒体からの反射光に基づいて、その光沢度を検知するセンサが使用できる。また、記録媒体の厚み、または坪量を判別するためのセンサとして記録媒体を透過する光量を検知するセンサを使用できる。
【0036】
ステップS412で、CPU211は、指定された転写材の種類と搬送されてきた転写材の種類とを比較し、両者が一致するか否かを判定する。両者が一致していれば、上述したステップS404に進む。一方、両者が一致していなければ、ステップS413に進む。このように、CPU211は、指定された記録媒体の種類と判別された記録媒体の種類とを比較する比較部の一例である。
【0037】
ステップS413で、CPU211は、通常適用される第1の画像形成条件とは異なる第2の画像形成条件を画像形成部に設定する。例えば、第2の画像形成条件に含まれる転写電圧の極性は、第1の画像形成条件に含まれる転写電圧の極性に対して逆極性である。すなわち、転写電圧決定部230は、ステップS404で設定される通常時の転写電圧の極性とは逆の極性の転写電圧を転写電圧制御部212に設定する。これにより、第2の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度は、第1の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度よりも低いものとなる。このように、CPU211や転写電圧決定部230は、画像信号に付加画像を加算しないと判定され、かつ、指定された記録媒体の種類と判別された記録媒体の種類とが一致しない場合に第2の画像形成条件を画像形成部に設定する設定部の一例である。第2の画像形成条件は、判別部によって判別された記録媒体の種類に応じた第1の画像形成条件とは異なるものである。ステップS413が終了すると、ステップS405に進む。
【0038】
本実施形態によれば、指定された転写材の種類と実際に通紙された転写材の種類とが一致しない場合には、通常適用される第1の画像形成条件とは異なる第2の画像形成条件を画像形成部に設定される。よって、指定された転写材の種類と実際に通紙された転写材の種類とが一致しない場合であっても、偽造などを好適に防止することが可能となる。
【0039】
一般にOHTシートは偽造用の転写材としては不向きであるため偽造防止用の付加画像が転写されない。そのため、従来は、OHTシートが指定されたにもかかわらず普通紙が搬送されてしまうと、偽造防止用の付加画像が転写されずに、普通紙に紙幣の画像が印刷されてしまうことになる。それに対し、本実施形態では、OHTシートが指定されて画像形成が開始された後に、OHTシート以外の記録媒体が搬送されてきたときには、画像形成条件を変更する。例えば、OHTシートが指定されたにもかかわらず普通紙が搬送されてきたときに、第2の画像形成条件を画像形成部に設定することで、偽造などを好適に防止することが可能となる。このよう場合には、画質の低下した画像が印刷されるからである。
【0040】
また、第2の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度は、第1の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度よりも低い。よって、オリジナル画像の再現性が低下するため、偽造されたものであるか否かを判定しやすくなろう。なお、偽造以外にも著作権に保護された画像についても同様に不正利用を抑制できよう。
【0041】
本実施形態では、電子写真方式を一例としているため、画像の濃度を薄くする手法として、転写電圧を通常の逆極性とする手法を採用している。画像の濃度を薄くする手法は様々であり、本発明は、他のどのような手法を採用することもできる。
【0042】
実施形態1では、画像濃度を薄くするために、転写電圧の極性を通常の逆極性とする手法が採用されていた。実施形態2では、他の例として、転写電圧を通常よりも低下させることで、画像濃度を薄くする手法について説明する。
【0043】
図5は、給紙された転写材が二次転写位置に至るまでの転写材の搬送動作を示したタイミングチャートである。図5と図3とを比較するとわかるように、指定された種類と判別された種類とが異なっている2枚目の転写材に対しては、転写電圧が通常の値よりも低い値に変更されている。
【0044】
図6は、実施形態2に係る画像形成装置の制御方法を示したフローチャートである。なお、図4と共通するステップには同一の参照符号を付与することで説明を簡潔にする。図4と図6とを比較するとわかるように、ステップS413がステップS613に置換されている。
【0045】
ステップS613で、CPU211は、通常適用される第1の画像形成条件とは異なる第2の画像形成条件を画像形成部に設定する。例えば、第2の画像形成条件に含まれる転写電圧は、第1の画像形成条件に含まれる転写電圧よりも低いのである。すなわち、転写電圧決定部230は、ステップS404で設定される通常時の転写電圧よりも値の低い転写電圧を転写電圧制御部212に設定する。これにより、第2の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度は、第1の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度よりも低いものとなる。その後、ステップS405に進む。
【0046】
本実施形態によれば、指定された転写材の種類と実際に通紙された転写材の種類とが一致しない場合には、通常の転写電圧よりも低い転写電圧が転写部9に印加されるため、画像濃度を通常よりも低くすることができる。よって、オリジナル画像の再現性が低下するため、偽造されたものであるか否かを判定しやすくなろう。なお、偽造以外にも著作権に保護された画像についても同様に不正利用を抑制できよう。
【0047】
実施形態1では、画像濃度を薄くするために、転写電圧の極性を通常の逆極性とする手法が採用されていた。実施形態3では、他の例として、転写電圧の印加を中止させることで、画像濃度を薄くする手法について説明する。
【0048】
図7は、給紙された転写材が二次転写位置に至るまでの転写材の搬送動作を示したタイミングチャートである。図7と図3とを比較するとわかるように、指定された種類と判別された種類とが異なっている2枚目の転写材に対しては、転写電圧の印加が中止されている。
【0049】
図8は、実施形態3に係る画像形成装置の制御方法を示したフローチャートである。なお、図4と共通するステップには同一の参照符号を付与することで説明を簡潔にする。図4と図8とを比較するとわかるように、ステップS413がステップS813に置換されている。
【0050】
ステップS813で、CPU211は、通常適用される第1の画像形成条件とは異なる第2の画像形成条件を画像形成部に設定する。例えば、第2の画像形成条件に含まれる転写電圧はゼロであり、これは、転写電圧の印加を停止することを意味する。すなわち、転写電圧決定部230は、転写電圧の印加を中止するよう転写電圧制御部212に設定する。これにより、第2の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度は、第1の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度よりも低いものとなる。その後、ステップS405に進む。
【0051】
本実施形態によれば、指定された転写材の種類と実際に通紙された転写材の種類とが一致しない場合には、転写電圧の印加が停止されるため、画像濃度を通常よりも低くすることができる。よって、オリジナル画像の再現性が低下するため、偽造されたものであるか否かを判定しやすくなろう。なお、偽造以外にも著作権に保護された画像についても同様に不正利用を抑制できよう。
【0052】
上述した各実施形態では電子写真方式の画像形成装置が採用されていた。しかし、本発明は、電子写真方式以外の画像形成装置にも適用できる。例えば、静電記録方式、磁気記録方式、インクジェット方式、昇華方式、オフセット印刷方式においても、指定された転写材の種類と実際に通紙された転写材の種類とが一致しない場合には、画像濃度が薄くなるような制御を行えばよい。
【0053】
また、第2の画像形成条件は、偽造や著作権により保護された画像の不正利用を防止できるような画像形成条件であれば十分である。例えば、通常よりも極端に画像濃度を濃くするような画像形成条件が第2の画像形成条件として採用されてもよい。ただし、現像剤を節約する観点からは、画像濃度を薄くする手法が相対的に優れていると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
画像情報にしたがって記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
指定された記録媒体の種類に応じて、前記画像情報に識別情報を付加するか否かを判定する判定部と、
前記画像情報に前記識別情報を付加する付加部と、
前記画像形成部へと搬送される記録媒体の種類を判別する判別部と、
指定された記録媒体の種類に応じて、前記画像情報に前記識別情報を付加しないと判定され、かつ、前記指定された記録媒体の種類と前記判別部により判別された記録媒体の種類とが一致しない場合に、前記判別部によって判別された記録媒体の種類に応じた第1の画像形成条件とは異なる第2の画像形成条件を前記画像形成部に設定する設定部と
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記識別情報は、前記画像形成装置を特定するための情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記識別情報とは、前記画像形成装置に前記画像情報を送信したコンピュータに関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定部は、OHTシートが指定されたにもかかわらず普通紙が搬送されてきたときに、前記第2の画像形成条件を前記画像形成部に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2の画像形成条件が適用されて前記記録媒体に形成された画像の濃度は、前記第1の画像形成条件が適用されて形成された画像の濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成部は、
現像剤像を前記記録媒体に転写する転写部と、
前記転写部に転写電圧を印加する印加部と
を含み、
前記設定部は、画像形成条件にしたがって前記転写電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の画像形成条件に含まれる転写電圧の極性は、前記第1の画像形成条件に含まれる転写電圧の極性に対して逆極性であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2の画像形成条件に含まれる転写電圧は、前記第1の画像形成条件に含まれる転写電圧よりも低いことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記設定部は、前記第2の画像形成条件が適用されると、前記印加部による転写電圧の印加を中止することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像情報にしたがって記録媒体に画像を形成する画像形成部を備えた画像形成装置の制御方法であって、
指定された記録媒体の種類に応じて、前記画像情報に識別情報を付加して前記記録媒体に画像を形成するか否かを判定し、
前記画像情報に前記識別情報を付加しないと判定され、かつ、指定された前記記録媒体の種類と搬送された記録媒体の種類とが一致しない場合に、前記記録媒体への画像形成条件を変更して前記記録媒体に画像を形成する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
指定された前記記録媒体がOHTシートの場合に前記画像情報に前記識別情報を付加しないと判定され、かつ、該OHTシートが指定されたにもかかわらず搬送された記録媒体が普通紙であった場合に、前記画像形成条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成条件の変更とは、前記記録媒体に形成される画像の濃度が低くなるように前記画像形成条件を変更する処理であることを特徴とする請求項10に記載の制御方法。
【請求項13】
特定の記録媒体に画像を形成する際に、画像情報に識別情報を付加することなく前記特定の記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
指定された記録媒体が前記特定の記録媒体であって、搬送された記録媒体が前記特定の記録媒体とは種類の異なる記録媒体の場合に、前記搬送された記録媒体に対する画像形成条件を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記識別情報とは、前記画像形成装置を特定するための情報であることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記識別情報とは、前記画像形成装置に前記画像情報を送信したコンピュータに関する情報であることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記特定の記録媒体とはOHTシートであって、OHTシートが指定されて画像形成が開始された後に、OHTシート以外の記録媒体が搬送されてきたときに、前記画像形成条件を変更することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記画像形成条件の変更とは、前記搬送された記録媒体に形成される画像の濃度が低くなるように前記画像形成条件を変更する処理であることを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282506(P2009−282506A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96458(P2009−96458)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】