説明

画像形成装置およびその管理方法

【課題】実際に画像形成装置が使用されるユーザー環境やジョブ設定条件などは様々であり、実験室での実験から得られたデータを全てカバーすることは困難である。
【解決手段】故障または消耗品無しのトラブルが発生した際に、診断データを基に当該トラブルが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断し、磨耗系トラブルであるときは、前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分を保存しておき、ユーザーがジョブ実施に当たって設定値を設定(ステップS21)した際に、当該設定値が上記差分の値を超えた場合(ステップS22)は、磨耗系トラブルが発生していなくてもワーニングメッセージを発生する(ステップS23)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置およびその管理方法に関し、特に故障診断や消耗品管理の機能を持つ画像形成装置およびその管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置において、使用・設定条件、使用記録紙・原稿情報、累積枚数、画像・搬送品質情報を示すロギングデータをホストに送信し、部品交換時期の予測や、メンテナンス時期の予測を行う遠隔保守支援システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、従来、画像形成装置の装置本体でのジャム(紙詰まり)などのトラブルや、消耗品消費の検知は、実験によって得られた閾値パラメータを装置本体のROMまたは不揮発性メモリに保持しておき、当該閾値パラメータと実際の検知センサの値やユーザーのプリント枚数などを比較することによって行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−305886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際に画像形成装置が使用されるユーザー環境やジョブ設定条件などは様々であり、実験室での実験から得られたデータで全てカバーすることは困難である。また、装置本体に内蔵される記憶装置のメモリ容量の制約(例えば、生産コストの低減化に伴うメモリ容量の削減など)もあり、あらゆる使用条件を考慮した閾値パラメータを装置本体にあらかじめ準備しておくことは不可能である。また、用紙サイズごとのコピー枚数や白黒/カラーのコピー回数などの使用状況を示す情報だけでトラブルや消耗品の事前予兆診断を精度良く行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、経時変化による磨耗系トラブルの発生や、消耗品消費の予兆を早期に精度良く検知可能な画像形成装置およびその管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、所定の閾値を基準として故障または消耗品無しが発生したことを検知したときに、故障診断または消耗品管理のための診断データを記憶するとともに、その記憶した前記診断データを基に故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断する。そして、前記磨耗系トラブルと判断した場合に、前回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値と今回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値との差分を保存し、ユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値が、保存した前記差分の値を超えた場合に、前記磨耗系トラブルの発生の有無に拘わらずワーニングメッセージを発するようにする。
【0008】
画像形成装置において、先ず、所定の閾値(ワーニング(予兆)検知用の閾値)を基準として、故障または消耗品無しの発生有無の検知が行われる。また、故障または消耗品無しが発生した場合には、記憶手段に記憶されている診断データを基に当該故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルか否かの判断が判断手段によって行われ、磨耗系トラブルであるときは、前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分が保存手段に保存される。そして、ユーザーがジョブ実施に当たって設定値を設定した際に、当該設定値が前記差分の値を超えた場合は、磨耗系トラブルの発生の有無に拘わらず、即ち磨耗系トラブルが発生していなくても、ワーニングメッセージを発生する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザーがジョブ実施に当たって設定値を設定した際に、当該設定値が上記差分の値を超えた場合に、磨耗系トラブルが発生していなくても、ワーニングメッセージを発生することにより、経時変化による磨耗系トラブルの発生や、消耗品消費の予兆を早期に精度良く検知できるため、装置のダウンタイムの低減が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明が適用される例えばタンデム方式のデジタルカラー複写機を示す概略構成図である。図1から明らかなように、本適用例に係るデジタルカラー複写機は、画像読取部10、画像形成部20および給紙部30などを備え、装置本体の例えば上面側には表示機能を持つ操作パネル部(ユーザI/F(インターフェース)表示部)40を有する構成となっている。
【0012】
画像読取部10において、プラテンガラス11上に載置された原稿50の画像は、照明用ランプ12からの照射光に基づく原稿面からの反射光である像光として、ミラー系13を経由した後レンズ14によって光学センサ、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ15の撮像面上に結像される。すると、CCDイメージセンサ15は、原稿画像が例えばカラー画像の場合には、原稿50の反射率情報をR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の信号として読取、R,G,Bの各信号を出力する。
【0013】
画像形成部20は、画像出力装置として、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色材ごとに画像形成エンジン21Y,21M,21C,21Kを有している。これら画像形成エンジン21Y,21M,21C,21Kは、例えば、図の右側から、即ち用紙搬送方向の上流側からY,M,C,Kの順に水平にかつ直列に配置されている。
【0014】
画像形成エンジン21Yにおいて、像担持体である感光ドラム22Yの周囲には、Yの信号に応じて画素ごとにレーザビームのオンデューティ時間を決めるとともに、感光ドラム22Y上を露光して静電潜像を形成する露光源(画像書込装置)23Y、感光ドラム22Yの表面を一様に帯電させるための帯電器24Y、感光ドラム22Y上の静電潜像を電子写真プロセスによってトナー像に現像するための現像器25Y、トナー像を用紙(記録紙)に転写させるための転写器26Y、転写後の残留トナーを回収するためのクリーナー27Yなどが配置されている。現像器25Yには、トナーを格納したカートリッジ(図示せず)が収納されている。
【0015】
画像形成エンジン21Yと同様に、画像形成エンジン21Mの感光ドラム22Mの周囲には、露光源23M、帯電器24M、現像器25M、転写器26M、クリーナー27Mなどが配置され、画像形成エンジン21Cの感光ドラム22Cの周囲には、露光源23C、帯電器24C、現像器25C、転写器26C、クリーナー27Cなどが配置され、画像形成エンジン21Kの感光ドラム22Kの周囲には、露光源23K、帯電器24K、現像器25K、転写器26K、クリーナー27Kなどが配置されている。
【0016】
上記構成の画像読取部10および画素形成部20を具備するタンデム方式のデジタルカラー複写機では、先ず、露光源23YでY(イエロー)の信号が光信号に変換され、レーザビームの照射により感光ドラム22Y上に原稿画像に対応した静電潜像が形成される。このYの潜像は、現像器25Yによりトナー像に現像される。そして、給紙部30の用紙トレイ31から送り込まれ、用紙搬送ベルト60によって搬送されてくる用紙に対して、転写機26YがYの静電潜像にトナー像を転写する。
【0017】
続いて、露光源23MがM(マゼンタ)の光信号を出力し、Mの静電潜像の形成、現像の各工程を経て、搬送ベルト60によって搬送されてくる用紙に対してMのトナー像を転写機26Mによって転写する。以下同様にして、C(シアン)、K(ブラック)の潜像形成、現像、転写が行われる。このようにして、搬送ベルト60によって搬送されてくる用紙に対して4色の転写が順次行われる。そして、4色目の転写が終了すると、用紙は定着装置28に送られてトナー像の溶融定着が行われ、一連の画像形成処理が完了する。
【0018】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係るデジタルカラー複写機における制御系の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、本例に係る制御系80は、コントローラ81、記憶手段および保存手段としての不揮発性メモリ82、ジャム(用紙詰まり)検知センサ群83および積算カウンタ群84などによって構成されている。
【0019】
コントローラ81は、例えばCPUによって構成され、デジタルカラー複写機全体の制御を行うとともに、操作パネル部(ユーザインターフェース部)40においてユーザーがジョブ実施に当たって設定する種々の設定値(ジョブ実施ヴォリューム)を受け取り、また所定の閾値(ワーニング(予兆)検知用の閾値)を基準として故障または消耗品無しのトラブル発生を検知する機能、後述する診断データを基に故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断する機能(判断手段)、例えば操作パネル部40の表示画面を通してユーザーにワーニングメッセージを発する機能(告知手段)などを持っている。
【0020】
不揮発性メモリ82は、装置全体の制御を行う際に用いる各種のパラメータを格納している。このパラメータの中には、上記ワーニング検知用の閾値(所定の閾値)も含まれている。不揮発性メモリ82には、故障または消耗品無しのトラブルが発生するごとに、故障診断および消耗品管理のための診断データが格納される。
【0021】
不揮発性メモリ82にはさらに、コントローラ81によって故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルであると判定された場合、前回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値(以下、「ユーザー設定値」と記す)と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分が保存される。ここで言う「前回」、「今回」は、磨耗系トラブルの発生時を基準としている。
【0022】
すなわち、ジョブ実施中に経時変化による磨耗系トラブルが発生したら、そのときのユーザー設定値が今回の設定値として不揮発性メモリ82に格納されるとともに、前回磨耗系トラブルが発生したとき不揮発性メモリ82に格納されている前回のユーザー設定値との差分がコントローラ81によって算出されて、当該差分が不揮発性メモリ82に保存されることになる。
【0023】
ジャム検知センサ群83は、用紙搬送ベルト60や搬送ローラなどによる紙送り経路中の適当な箇所に設けられる複数のジャム検知センサからなり、各ジャム検知センサごとの用紙の搬送タイミングの情報を、故障診断および消耗品管理のための診断データとしてコントローラ81に与える。積算カウンタ群84は、用紙サイズごとのプリント枚数を積算する積算カウンタ、紙質ごとのプリント枚数を積算する積算カウンタ、用紙トレイごとのプリント枚数を積算する積算カウンタなどからなり、各積算カウンタのカウント値を、故障診断および消耗品管理のための診断データとしてコントローラ81に与える。
【0024】
なお、ここでは、診断データとして、用紙サイズ、紙質、用紙トレイのユーザー環境情報を例に挙げたが、これら限られるものではなく、濃度、解像度、温湿度などのユーザー環境情報も可能である。
【0025】
続いて、故障または消耗品無しのトラブル発生時にコントローラ81による制御の下に実行される一連の処理手順について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0026】
コントローラ81は、先ず、所定の閾値(ワーニング検知用の閾値)を基準にして、故障または消耗品無しのトラブルが発生したか否かを判断する(ステップS11)。ここでは、トラブルとしてジャムが発生した場合を例に挙げて説明するものとする。トラブルがジャムの場合には、ジャム検知センサ群83から与えられる各ジャム検知センサごとの搬送タイミングの情報に基づいてジャム発生の検知が行われることになる。
【0027】
具体的には、ジャム検知センサ群83の各ジャム検知センサごと、各センサ位置を用紙(記録紙)が通過するタイミングに時間的な閾値が設定されており、当該閾値内に用紙がセンサ位置を通過しない場合にジャムが発生したと検知される。したがって、ジャム発生した場合には、センサ位置を用紙が通過するタイミングに対する閾値がワーニング検知用の閾値となる。
【0028】
コントローラ81は、故障または消耗品無しのトラブルが発生したと判断すると、故障診断または消耗品管理のための診断データを不揮発性メモリ82に格納し(ステップS12)、次いで不揮発性メモリ82に格納した診断データを基に、故障または消耗品無しのトラブルが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断する(ステップS13)。この判断結果についても診断データと共に不揮発性メモリ82に格納する。
【0029】
ここで、トラブルとしてジャムが発生した場合には、診断データとして、図4に示すように、ジャムID=1、磨耗系ジャム=Yes、過去のジャム検知センサ間の用紙搬送時間の履歴1〜n(nはジャム検知センサの数で決まる)が不揮発性メモリ82に格納される。なお、プリント動作ごと(ジョブ実施ごと)に、図5に示すように、積算カウンタ群85の各積算カウンタがカウント動作を行っていることから、各積算カウンタのカウント値も診断データとして不揮発性メモリ82に格納される。
【0030】
コントローラ81は、故障または消耗品無しのトラブルが磨耗系トラブルであると判断すると、今回のトラブル発生時のユーザー設定値、即ち今回のジョブ実施に当たってユーザーが操作パネル部40で設定した用紙サイズ、プリント枚数、画質などの設定値を不揮発性メモリ82に保存し(ステップS14)、次いで前回のトラブル発生時に不揮発性メモリ82に保存されている前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分を求めて、当該差分を不揮発性メモリ82に保存する(ステップS15)。
【0031】
以上により、故障または消耗品無しのトラブル発生時に実行される一連の処理が終了する。一方、上述した一連の処理による処理結果を基に、ジョブ実施ごとに故障または消耗品無しのトラブル発生のワーニング検知(予兆検知)が行われる。
【0032】
トラブル発生のワーニング検知のための処理手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。このトラブル発生のワーニング検知のための処理についても、コントローラ81の制御の下に実行される。
【0033】
コントローラ81は、ジョブ実施に当たって用紙サイズ、プリント枚数、画質などの設定値(ユーザー設定値)がユーザーによって操作パネル部40から入力されたか否かを判断し(ステップS21)、ユーザー設定値が入力されたら、当該ユーザー設定値が不揮発性メモリ82に格納されている差分の値、即ちステップS15で求めた前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分の値を超えるか否かを判断する(ステップS22)。
【0034】
そして、今回のユーザー設定値が前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分の値を超えた場合には、磨耗系トラブルの発生の有無に拘わらず、即ち磨耗系トラブルが発生していなくても、例えば磨耗系トラブルが発生しやすい状況にある旨のワーニングメッセージを発生し、当該ワーニングメッセージを例えば操作パネル部40の表示画面上に表示することによってその旨をユーザーに知らせる(ステップS23)。
【0035】
なお、ここでは、ワーニングメッセージを操作パネル部40の表示画面上に表示することにより、磨耗系トラブルが発生しやすい状況にある旨をユーザーに知らせるとしたが、複数のデジタルカラー複写機などがネットワークを介してサービスセンターで管理する管理システムが構築されている場合には、当該ネットワークを通してサービスセンターにワーニングメッセージを送り、磨耗系トラブルが発生しやすい状況にある旨を知らせるようにすることも可能である。
【0036】
コントローラ81は、今回のユーザー設定値が前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分の値を超えた場合はさらに、不揮発性メモリ82に格納されているワーニング検知用閾値を、ステップS11での故障または消耗品無しの発生の検知が早まる側に、即ち次回からのワーニングの検知条件を厳しくするように所定量変更する(ステップS24)。
【0037】
トラブルとしてジャムが発生した場合を例に挙げると、図7に示すように、ワーニング検知用閾値として不揮発性メモリ82に格納されているジャム1ワーニング検知閾値データ〜ジャムNワーニング検知閾値データのうち、今回ジャムが発生したジャム検知センサに対応する閾値データを、次回からのワーニングの検知条件が厳しくなるように所定量調整する。
【0038】
なお、ここでは、今回のユーザー設定値が前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分の値を超えた場合に、ワーニング検知用閾値を次回からのワーニングの検知条件が厳しくなるように変更するとしたが、不揮発性メモリ82に格納されている上記差分の値を、ワーニングメッセージの発生が早まる側に、即ち次回からの磨耗系トラブルの発生予兆の検知条件が厳しくなるように所定量変更することも可能である。
【0039】
上述したように、故障または消耗品無しが発生した場合に、診断データを基に当該故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断し、磨耗系トラブルであるときは、前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分を保存しておき、ユーザーがジョブ実施に当たって設定値を設定した際に、当該設定値が上記差分の値を超えた場合は、磨耗系トラブルが発生していなくてもワーニングメッセージを発生するようにしたことで、経時変化による磨耗系トラブルの発生や、消耗品消費の予兆を早期に精度良く検知できるため、デジタルカラー複写機のダウンタイムの低減が可能になる。
【0040】
特に、今回のユーザー設定値が前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分の値を超えた場合に、ワーニング検知用閾値を次回からのワーニングの検知条件が厳しくなるように、あるいは上記差分の値を次回からの磨耗系トラブルの発生予兆の検知条件が厳しくなるように変更することで、経時変化による磨耗系トラブルの発生や、消耗品消費の予兆をより早期に検知できることになる。
【0041】
ところで、デジタルカラー複写機などの画像形成装置が設置されている環境やジョブモードなどユーザー環境によって磨耗系のトラブルの発生時期が異なるため、ユーザー個々の装置に対してトラブル予兆(ワーニング)を適切なタイミングで検知することが難しいい言える。この点に鑑みてなされたのが、以下に説明する本発明の第2実施形態に係るデジタルカラー複写機である。
【0042】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係るデジタルカラー複写機を含む画像形成システムを示す概念図である。図8において、装置1が上記第1実施形態に係るデジタルカラー複写機に相当し、装置2が当該デジタルカラー複写機以外の他の装置に相当するものとする。なお、第1実施形態では、記憶手段としての不揮発性メモリ82(図2を参照)を本体メモリとして装置本体に固定的に設けていることを前提としたが、本実施形態では、本体メモリとは別に装置本体に対して取り付け/取り外し可能な拡張メモリ85を有する構成を採っている。この拡張メモリ85も不揮発性メモリである。
【0043】
拡張メモリ85を装置1に取り付けた状態でジョブを実施することで、当該拡張メモリ85には、ワーニング検知用閾値と共に、故障または消耗品無しのトラブルが発生するごとに、故障診断および消耗品管理のための診断データが、さらに磨耗系トラブルが発生したときには、前回のユーザー設定値と今回のユーザー設定値との差分の値(磨耗系トラブルの発生履歴)などが格納されることになる。
【0044】
この拡張メモリ85を装置1から取り外して装置2に取り付け、当該拡張メモリ85に格納されているデータを読み出して装置2内の本体メモリに格納することで、拡張メモリ85に格納されたデータを異なる装置1,2間で共有できることになる。具体的には、例えばオフィスにデジタルカラー複写機が複数台設置されている場合を例に挙げると、同じオフィスではデジタルカラー複写機が設置されている環境やジョブモードなどユーザー環境が基本的に同じであるものと考えることができるため、複数のデジタルカラー複写機間での情報の共有が可能となる。
【0045】
これにより、トラブル発生の履歴やその解析、診断データを保存するに当たり、複数のデジタルカラー複写機に対して1つの拡張メモリ85を用意すれば良いことになるため、デジタルカラー複写機個々の生産コストを低減でき、ひいては複数のデジタルカラー複写機を導入するに当たってのユーザーの費用負担を軽減できることになる。
【0046】
また、装置1で得た情報を拡張メモリ85を経由して装置2に読み込んで保存した後、当該装置2でジョブを実施する場合は、拡張メモリ85から読み込んだデータを基に、第1実施形態で述べた手順にしたがってトラブル発生のワーニング検知が行われることになる。
【0047】
そして、装置2でのユーザー設定値が、拡張メモリ85から読み込んで保存しておいた差分(装置1での前回のトラブル発生時のユーザー設定値と今回のトラブル発生時のユーザー設定値との差分)の値を超えた場合には、磨耗系トラブルが発生していなくてもワーニングメッセージを発生するとともに、拡張メモリ85から読み込んで保存しておいたワーニング検知用閾値を次回からのワーニングの検知条件が厳しくなるように変更する。また、装置2でのユーザー設定値が、拡張メモリ85から読み込んで保存しておいた差分の値を超えた場合に、当該差分の値を次回からの磨耗系トラブルの発生予兆の検知条件が厳しくなるように所定量変更することも可能である。
【0048】
なお、本実施形態では、装置本体に対して取り付け/取り外し可能な拡張メモリ85を経由して複数の装置間で診断データを共有するとしたが、図9に示すように、例えば装置1と装置2がネットワークを介して相互に接続されたシステムが構築されている場合は、装置1の診断データ記憶メモリ86(図2の不揮発性メモリ82に相当)に格納されている診断データを、ネットワークを介して装置2との間で共有することも可能である。
【0049】
上述したように、同一のユーザーや、同じような環境で使用されるデジタルカラー複写機の診断データを、複写機同士で共有することで、デジタルカラー複写機が設置されている環境やジョブモードなどユーザー環境に発生時期が影響される磨耗系トラブル、消耗品無しのワーニング検知を精度良く行うことができるため、デジタルカラー複写機のダウンタイムを低減することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、タンデム方式のデジタルカラー複写機に適用した場合を例に挙げて説明したが、この適用例に限られるものではなく、多重転写方式など、他の方式の複写機、さらには複写機に限らず、プリンタ、ファクシミリ装置など、画像形成装置全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明が適用されるタンデム方式のデジタルカラー複写機を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るデジタルカラー複写機における制御系の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】故障または消耗品無しのトラブル発生時の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】ジャム発生ごとに記録される診断データの一例を示す図である。
【図5】プリントごとにカウントさせる積算カウンタの内容を示す図である。
【図6】トラブル発生のワーニング検知のための処理手順を示すフローチャートである。
【図7】ジャム発生のワーニング検知のための閾値データを示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るデジタルカラー複写機を含む画像形成システムを示す概念図である。
【図9】第2実施形態の変形例に係るシステムの概念図である。
【符号の説明】
【0052】
10…画像読取部、11…プラテンガラス、14…レンズ、15…CCDイメージセンサ、20…画像形成部、21Y,21M,21C,21K…画像形成エンジン、22Y,22M,22C,22K…感光ドラム、23Y,23M,23C,23K…露光源、24Y,24M,24C,24K…帯電器、25Y,25M,23C,25K…現像器、26Y,26M,26C,26K…転写器、28…定着装置、30…給紙部、40…操作パネル部(ユーザI/F表示部)、50…原稿、60…用紙搬送ベルト、80…制御系、81…コントローラ、82…不揮発性メモリ、83…ジャム検知センサ群、84…積算カウンタ群、85…拡張メモリ、86…診断データ記憶メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の閾値を基準として故障または消耗品無しが発生したことを検知したときに、故障診断または消耗品管理のための診断データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記診断データを基に故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が前記磨耗系トラブルと判断した場合に、前回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値と今回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値との差分を保存する保存手段と、
ユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値が前記保存手段に保存されている前記差分の値を超えた場合に、前記磨耗系トラブルの発生の有無に拘わらずワーニングメッセージを発する告知手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記今回の設定値が前記差分の値を超えた場合に、前記所定の閾値を故障または消耗品無しの発生の検知が早まる側に変更する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記今回の設定値が前記差分の値を超えた場合に、当該差分の値を前記ワーニングメッセージの発生が早まる側に変更する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記所定の閾値および前記診断データと共に、ジョブ実施時のユーザー環境情報についての積算値を記憶する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶手段に記憶されている前記所定の閾値および前記診断データ、並びに前記保存手段に保存されている前記差分の値を他の装置との間で共有する
ことを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶手段および前記保存手段は、装置本体に対して取り付け/取り外し可能な拡張メモリであり、
前記他の装置は、装置本体から取り外された前記拡張メモリから前記所定の閾値、前記診断データおよび前記差分の値を読み出して保存しておき、ユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値が、前記拡張メモリから読み出して保存しておいた前記差分の値を超えた場合に、前記拡張メモリから読み出して保存しておいた前記所定の閾値を故障または消耗品無しの発生の検知が早まる側に変更する
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記憶手段および前記保存手段は、装置本体に対して取り付け/取り外し可能な拡張メモリからなり、
前記他の装置は、装置本体から取り外された前記拡張メモリから前記所定の閾値、前記診断データおよび前記差分の値を読み出して保存しておき、ユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値が、前記拡張メモリから読み出して保存しておいた前記差分の値を超えた場合に、当該差分の値を前記ワーニングメッセージの発生が早まる側に変更する
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記憶手段に記憶されている前記所定の閾値および前記診断データ、並びに前記保存手段に保存されている前記差分の値を、ネットワークを介して他の装置との間で共有する
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項9】
所定の閾値を基準として故障または消耗品無しが発生したことを検知したときに、故障診断または消耗品管理のための診断データを記憶する第1のステップと、
前記第1のステップで記憶した前記診断データを基に故障または消耗品無しが経時変化による磨耗系トラブルか否かを判断する第2のステップと、
前記第2のステップで前記磨耗系トラブルと判断した場合に、前回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値と今回のトラブル発生時のユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値との差分を保存する第3のステップと、
ユーザーによるジョブ実施に当たっての設定値が前記第3のステップで保存した前記差分の値を超えた場合に、前記磨耗系トラブルの発生の有無に拘わらずワーニングメッセージを発する第4のステップと
を有することを特徴とする画像形成装置の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−15519(P2006−15519A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193223(P2004−193223)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】