説明

画像形成装置及びその現像剤量検知システム

【課題】2つのセンサを用いて現像剤収納部内の現像剤量を検知するシステムにおいて、現像剤量の検知精度の低下を抑制する。
【解決手段】トナー容器内の現像ローラ2とプレートアンテナ10とを対向電極として有し、該電極対が挟む領域の静電容量を測定する第1のセンサと、トナー容器内の現像ローラ2とプレートアンテナ6とを対向電極として有し、該電極対が挟む領域の静電容量を測定する第2のセンサとを備え、プレートアンテナ6は、第1のセンサの電極対の挟む領域内に配置される所定領域内電極である。第1のセンサ及び第2のセンサが測定する静電容量に基づいてトナー量を検知する検知手段31と、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を導通又は遮断する切り換え手段36とを備え、検知手段31が第1のセンサにより測定される静電容量に基づいてトナー量の検知を行う場合には、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤を用いて画像形成を行う画像形成装置及びその現像剤量検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現像剤を用いて画像形成を行う画像形成装置では、ユーザーは、現像剤収納部内に現像剤が無くなった場合に、プロセスカートリッジを交換したり現像剤容器に現像剤を補充したりする必要がある。そのため、現像剤容器内の現像剤の残量に応じた測定値を出力するセンサを備え、該センサの出力から現像剤量を検知する現像剤量検知システムが開発されている。センサとしては、一対の入力側及び出力側の電極を備え、両電極間の静電容量を測定するものがある。このセンサは、電極間に存在する現像剤量に応じて電極対の挟む領域の誘電率が変化することを利用している。
【0003】
現像剤量検知システムとして、特許文献1には、プレートアンテナを用いたものが記載されている。プレートアンテナは、現像剤容器内に対向して設置される一対の板状電極であり、この電極対によりコンデンサ構造が形成される。このコンデンサの電極対の挟む領域に現像剤が収容されるように現像剤容器が構成される。一方の電極に交流電圧を印加した時に他方の電極に電流が誘起され、これを電圧値として測定し、この測定値から現像剤容器内の現像剤量を検知する。また、現像装置が備える現像ローラに現像バイアスを印加する現像方式の画像形成装置において、現像ローラに対向する位置にプレートアンテナを設けて、現像ローラとプレートアンテナとで電極対を形成することもできる。この場合、画像形成のために現像ローラに印加される現像バイアスを現像剤量検知のための印加電圧として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−255688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現像剤収納部の大きさや形状によっては、現像剤量を逐次検知するために複数のセンサが必要となる場合がある。例えば、2つのセンサを現像剤収納部内に備えた現像剤量検知システムの例を図7を参照して説明する。図7は、現像ローラ2(現像剤担持体)に交流バイアスを印加する現像方式を採用する画像形成装置のトナー容器4(現像剤収納部)の概略構成を示す図である。トナー容器4の内部には、プレートアンテナ10と現像ローラ2とで形成される第1のセンサと、プレートアンテナ6と現像ローラ2とで形成される第2のセンサと、の2つのセンサが設置されている。第1のセンサにより、プレートアンテナ10と現像ローラ2の間の領域15(破線で囲った領域)の静電容量を測定し、それに基づいてこの領域15内のトナー量を検知することができる。第2のセンサにより、現像ローラ2の近傍の領域の静電容量を測定し、それに基づいて現像ローラ2の近傍の領域におけるトナー量を検知することができる。トナー容器4内のトナー量が多い場合は、第1のセンサを用いてトナー量を検知することができる。また、トナー容器4内のトナー量が少ない場合は、第2のセンサを用いてトナー量を検知することができる。
【0006】
このように2つのセンサを備える現像剤量検知システムにおいては、一のセンサを構成する電極対の一部又は全部が、他のセンサを構成する電極対の挟む領域内に配置される場合がある。このように、他のセンサの電極対の挟む領域内に、その少なくとも一部が配置
される電極を、本明細書では所定領域内電極と称する。図7に示した例では、第1のセンサを構成する電極対(すなわちプレートアンテナ10及び現像ローラ2)が挟む領域15の中に、第2のセンサを構成する電極対の一方であるプレートアンテナ6が配置されている。ここでは、所定領域は領域15であり、プレートアンテナ6が所定領域内電極である。この場合、プレートアンテナ6の位置や形状に起因する静電遮蔽の影響で、第1のセンサから出力される静電容量の測定値が減少することがある。そうすると、第1のセンサによる測定値に基づくトナー量の検知精度が低下する恐れがある。
【0007】
このように、2のセンサを用いて現像剤収納部内の現像剤量を検知する現像剤量検知システムにおいて、2つのセンサの一方を構成する電極対の少なくとも一方が所定領域内電極となっている場合、現像剤量の検知精度が低下する可能性がある。従って、本発明の目的は、2つのセンサを用いて現像剤収納部内の現像剤量を検知する現像剤量検知システム及び画像形成装置において、現像剤量の検知精度の低下を抑制可能な現像剤量検知システム及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る現像剤量検知システムは、以下の構成を備える。即ち、
現像剤を収納する現像剤収納部内の現像剤量を検知する現像剤量検知システムであって、
前記現像剤収納部内で互いに対向する一対の電極部を有し、該電極部の対の挟む領域の静電容量に応じた測定値を出力する第1のセンサと、
前記現像剤収納部内で互いに対向する一対の電極部を有し、該電極部の対の挟む領域の静電容量に応じた測定値を出力する第2のセンサと、
を備え、
前記第2のセンサの少なくとも一方の電極部は、前記第1のセンサの前記電極部の対の挟む領域内に少なくともその一部が配置される所定領域内電極部であって、
前記現像剤量検知システムは、
前記第1のセンサの少なくとも一方の電極部及び前記第2のセンサの少なくとも前記所定領域内電極部と電気的に接続され、前記第1のセンサから入力される測定値又は前記第2のセンサから入力される測定値に基づいて前記現像剤収納部内の現像剤量を検知する検知手段と、
前記第2のセンサの前記所定領域内電極部と前記検知手段との電気的接続を導通又は遮断のいずれかに切り換える切り換え手段と、
を備え、
前記検知手段が、前記第1のセンサから入力される測定値に基づいて前記現像剤量の検知を行う場合には、前記切り換え手段により、前記第2のセンサの前記所定領域内電極部と前記検知手段との電気的接続を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検知手段が第1のセンサから入力される測定値に基づいて現像剤量の検知を行う場合に、第1のセンサの出力する測定値が第2のセンサの電極部による静電遮蔽の影響を受けない。従って、第1のセンサの測定値に基づく現像剤量の検知精度の低下を抑制できる。よって、2つのセンサを備える現像剤量検知システムにおいて、精度よく現像剤量を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例に係る現像剤量検知システムの概略機能ブロック図。
【図2】実施例1に係る画像形成装置の概略構成図。
【図3】実施例1に係るプロセスカートリッジの概略構成断面図。
【図4】トナー量と第1のセンサによる静電容量の測定値との関係を示す図。
【図5】トナー量と第1及び第2のセンサによる静電容量の測定値との関係図。
【図6】実施例2に係るプロセスカートリッジの概略構成断面図。
【図7】第2のセンサの設置領域を表すトナー容器の概略構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳しく説明する。尚、以下の実施例は特許請求の範囲に係る本発明を限定する趣旨のものではなく、また、本実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決手段として必須のものとは限らない。
【0012】
(実施例1)
図2は、本実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。図2に示す画像形成装置14は、ホストコンピューター、ネットワーク等から画像情報を受け取り、それを現像剤を用いて記録紙上に画像出力するレーザービームプリンタである。本実施例においては、現像剤として絶縁性磁性一成分トナーを用いた。本実施例の画像形成装置14は、プロセスカートリッジAを本体から着脱交換可能に構成されている。
【0013】
図3は、プロセスカートリッジAの概略構成を示す図である。図3に示すように、プロセスカートリッジAは、潜像担持体である感光体1と、感光体1を均一に帯電するための帯電手段7と、感光体1に対向配置された現像装置Bと、を備える。プロセスカートリッジAは、更に、感光体1に残留した現像剤としてのトナーを感光体から除去するクリーニング手段8と、クリーニング手段8により感光体1から除去されたトナーを収容する廃トナー容器9とを備える。現像装置Bは、現像剤担持体としての現像ローラ2及びトナー規制部材5と、トナーTを収容する現像剤収納部としてのトナー容器4と、を有する。
【0014】
画像形成装置14には、図2に示すようにプロセスカートリッジAの上方に、画像情報に対応してレーザー光Lを照射するレーザースキャナー11が設置されている。又、プロセスカートリッジAの下方には、感光体1に対向する転写手段12が設置されている。上記のように構成された画像形成装置14では、プロセスカートリッジA内にて感光体1が帯電手段7によって均一に帯電され、その表面上に、レーザースキャナー11から照射されるレーザー光Lによって走査露光がなされる。これにより、感光体1に目的の画像情報の静電潜像が形成される。
【0015】
現像装置Bの現像ローラ2の作用によって、トナー容器4内(現像剤収納部内)のトナーTが感光体1に担持搬送されると、感光体1上の静電潜像にトナーが付着し、トナー像として顕像化される。感光体1上に形成されたトナー像は、転写手段12によって、シートカセット26より搬送される記録紙へ転写される。記録紙が定着手段13を通過することによって記録紙上に転写されたトナー像が記録紙上に定着する。トナー像の定着した記録紙は本体排紙トレイ25へ排出される。記録紙上にトナー像を転写した後は、クリーニング手段8によって感光体1上に残留したトナーが感光体1から除去される。クリーニング手段8により除去されたトナーは廃トナー容器9に集められる。
【0016】
トナー容器4の底面は、図3に示すように、1つの凹形状になっている。図示していない本体のモータによって駆動する搬送部材3の作用する領域は、トナー容器4の凹部の形状に対応して設定されており、この搬送部材3が回転することで、トナー容器4内のトナーTが攪拌され、現像ローラ2へ搬送され、供給される。搬送部材3には、攪拌翼部材3aが設けられており、その先端部が底面の凹部形状を擦るように攪拌翼部材3aの回転半径が設定される。これにより、トナー容器4の底面にトナーTを残すことなく、トナーTを現像ローラ2へ搬送することができる。
【0017】
本実施例に係る画像形成装置14は、トナー容器4内のトナー量(現像剤量)を逐次検知することが可能な現像剤量検知システムを備えている。以下、本実施例に係る現像剤量検知システムを説明する。
【0018】
トナー容器4内には、トナー容器4内のトナー量に応じた測定値を出力可能な2つのセンサが設置されている。第1のセンサは、トナー容器4の底面に設置されたプレートアンテナ10と現像ローラ2とを一対の電極部として有する構成である。プレートアンテナ10は導電性を有する金属板で、現像ローラ2の長手方向に沿って、トナー容器4の凹部形状の全域に形成されている。プレートアンテナ10は、搬送部材3の作用領域の一部を現像ローラ2との間に挟むように設置されている。第2のセンサは、トナー容器4内の現像ローラ2の近傍に設置されたプレートアンテナ6と現像ローラ2とを一対の電極部として有する構成である。プレートアンテナ6も導電性を有する金属板で、現像ローラ2の長手方向に沿って設置されている。プレートアンテナ6は、プレートアンテナ10と現像ローラ2とが挟む領域15内に配置されている。すなわち、本実施例では、プレートアンテナ6は所定領域内電極である。プレートアンテナ6は、搬送部材3の作用領域の一部を現像ローラ2との間に挟むように設置されている。第1のセンサ及び第2のセンサは、ともに現像ローラ2を電極部の対の一方として共有している。現像ローラ2には現像バイアスとして交流電圧が印加される。現像ローラ2に現像バイアスが印加されると、現像ローラ2とプレートアンテナ6との間の空間の静電容量に応じた電流が、電極部の対の他方であるプレートアンテナ6に誘起される。また、同様に、現像ローラ2に現像バイアスが印加されると、現像ローラ2とプレートアンテナ10との間の空間の静電容量に応じた電流が、電極部の対の他方であるプレートアンテナ10に誘起される。
【0019】
トナー容器4内のトナー量の変化に伴って現像ローラ2とプレートアンテナ6との間の空間に存在するトナー量が変化すると、この空間の誘電率が変化し、従ってこの空間の静電容量が変化する。静電容量の変化に応じて、現像ローラ2に現像バイアスを印加した時にプレートアンテナ6に誘起される電流が変化する。この誘起される電流から、現像ローラ2とプレートアンテナ6との間の空間の静電容量を測定する。この空間に存在するトナー量と静電容量との関係を予め調べておくことにより、静電容量の測定値からトナー量を検知することができる。同様に、現像ローラ2に現像バイアスを印加して現像ローラ2とプレートアンテナ10との間の空間の静電容量を測定することにより、この空間のトナー量を検知することができる。第1のセンサを用いて、トナー容器4内のトナー量が比較的多い状態(使用初期からトナー残量約10%〜約80%程度まで)におけるトナー量を検知することができる。また、第2のセンサを用いて、トナー容器4内のトナー量が比較的少ない状態(約10%〜約30%の間からトナーが無くなるまで)におけるトナー量を検知することができる。このように、トナー容器4内の異なる位置に2つのセンサを備え、それぞれ独立してトナー量を測定することにより、初期状態からトナーが無くなるまで逐次トナー量を検知することができる。
【0020】
図1に本実施例に係る現像剤量検知システムのブロック図を示す。プロセスカートリッジAは、現像ローラ2及びプレートアンテナ10で構成される第1のセンサ、現像ローラ2及びプレートアンテナ6で構成される第2のセンサ、後述する切り換え手段36及び記憶手段20を備える。画像形成装置14は、現像ローラ2に現像バイアスを印加する電源34、第1及び第2のセンサの測定値からトナー量を検知する検知手段31、統計処理等の演算を制御する演算制御手段32、記憶手段35及び検知したトナー量を表示する表示手段33を備える。表示手段33としては、例えば画像形成装置14に設けられる情報表示用ディスプレイを用いることができる。また、検知したトナー量を表示する手段として、画像形成装置14と通信可能に接続されたパソコン等の外部端末の外部表示装置51を用いることもできる。なお、必ずしも表示手段33及び外部表示装置51の両方を備えている必要はない。
【0021】
第2のセンサのプレートアンテナ6と検知手段31との間には、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を導通又は遮断のいずれかに切り換える切り換え手段36が備えられる。本実施例では、切り換え手段36はFETにより構成される。FETのゲートは演算制御手段32に接続され、ドレインはプレートアンテナ6に接続され、ソースは検知手段31に接続される。演算制御手段32からFETのゲートにオン電圧を超える電圧を入力することにより、FETのドレイン−ソース間に電流が流れ、プレートアンテナ6と検知手段31とが導通状態となる。また、演算制御手段32からFETのゲートに印加する電圧をオン電圧より低くすることにより、FETのドレイン−ソース間に電流が流れなくなり、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続が遮断される。すなわち、演算制御手段32から切り換え手段36のFETに入力するゲート電圧を制御することにより、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を導通又は遮断のいずれかに切り換えることができる。
【0022】
電源34から現像ローラ2に現像バイアスを印加すると、プレートアンテナ6と現像ローラ2との間の空間に存在するトナー量に応じた静電容量に応じた電流がプレートアンテナ6に誘起する。同様に、電源34から現像ローラ2に所定の現像バイアスを印加すると、プレートアンテナ10と現像ローラ2との間の空間に存在するトナー量に応じた静電容量に応じた電流がプレートアンテナ10に誘起する。検知手段31においてこれらの誘起電流から静電容量への変換が行われ、演算制御手段32に出力される。静電容量の測定値は演算制御手段32を介して画像形成装置14の記憶手段35に記憶され、所定数の測定値が得られると演算制御手段32で平均化等の統計処理が行われる。この統計処理により、搬送部材3によってトナーが攪拌されることに起因する静電容量の変動等のノイズが除去される。統計処理を経た測定値に基づいて、第1のセンサの電極間(現像ローラ2とプレートアンテナ10との間)のトナー量T1及び第2のセンサの電極間(現像ローラ2とプレートアンテナ6との間)のトナー量T2が検知される。検知したトナー量T1及びT2は、プロセスカートリッジAの記憶手段20に記憶される。
【0023】
本実施例に係る現像剤量検知システムでは、使用初期状態では第1のセンサによる測定値に基づいてトナー量を検知する。すなわち、上記のようにして得られたトナー量T1に基づいて、表示手段33及び/又は外部表示装置51に表示させるトナー残量情報を演算する。第1のセンサによる測定値に基づいて検知されるトナー量が所定の閾値(20%)を下回った場合に、第2のセンサによる測定値に基づいてトナー量を検知する。すなわち、上記のようにして得られたトナー量T2に基づいて、表示手段33及び/又は外部表示装置51に表示させるトナー残量情報を演算する。これにより、使用初期からトナーが無くなるまでの広いトナー量範囲にわたってトナー量の逐次検知を行うことができる。
【0024】
ここで、トナー容器4内に2つのセンサを備えていることによって生じる問題点について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、トナー容器4内のトナー残量と、第1のセンサから出力される静電容量の測定値の、使用初期状態における測定値からの変化量と、の関係を示す図である。横軸のスケールは、使用初期状態におけるトナー残量を100%、トナーが無くなった状態におけるトナー残量を0%として規格化したものである。縦軸のスケールは、プレートアンテナ6が存在しない構成で、使用初期状態における変化量を0%、トナーが無くなった状態における測定値の使用初期状態における測定値からの変化量を100%として規格化したものである。
【0025】
図4において、実線のグラフAは、第1のセンサのみを備えた従来技術に係る構成における、トナー残量と第1のセンサによる静電容量の測定値との関係を示す。破線のグラフBは、第1及び第2のセンサを備え、且つ、切り換え手段36を備えない構成、すなわちプレートアンテナ6が常時導通状態である従来技術に係る構成における、トナー残量と第
1のセンサによる静電容量の測定値との関係を示す。グラフAとグラフBとの条件の差は、導通状態のプレートアンテナ6の有無である。導通状態のプレートアンテナ6が存在する条件(グラフB)では、プレートアンテナ6が存在しない条件(グラフA)よりも、トナー量が少ない領域において、トナー残量の変化に対する第1のセンサによる静電容量の測定値の変化量が減少している。また、グラフBには、トナー残量の変化に対する第1のセンサによる静電容量の測定値の変化が滑らかではない箇所が存在する。これは、プレートアンテナ6の存在に起因する静電遮蔽の影響で、プレートアンテナ6が存在しない場合よりも、第1のセンサによる静電容量の測定値が減少し、また導通状態のプレートアンテナ6がノイズ源となっているためと考えられる。そのため、プレートアンテナ6が存在する構成では、プレートアンテナ6が存在しない構成と比較して、特にトナー量の少ない領域において第1のセンサによる測定値に基づくトナー量の検知精度が低い。
【0026】
図5は、図4と同様、トナー容器4内のトナー残量と、第1のセンサから出力される静電容量の測定値の、使用初期状態からの変化量との関係を示す図である。また図5には、トナー容器4内のトナー残量と、第2のセンサから出力される静電容量の測定値の、使用初期状態からの変化量との関係も同時に示した。横軸のスケールは、図4と同様、使用初期状態におけるトナー残量を100%、トナーが無くなった状態におけるトナー残量を0%として規格化したものである。縦軸の、第1のセンサによる静電容量の測定値の変化量用のスケールは、図4と同様である。すなわち、プレートアンテナ6が存在しない構成で、使用初期状態における変化量を0%、トナーが無くなった状態における測定値の当該使用初期状態における測定値からの変化量を100%として規格化したものである。縦軸の、第2のセンサによる静電容量の測定値の変化量用のスケールは、使用初期状態における変化量を0%、トナーが無くなった状態における測定値の当該使用初期状態における測定値からの変化量を100%として規格化したものである。
【0027】
図5において、破線のグラフBは、第1及び第2のセンサを備え、且つ、切り換え手段36を備えない構成、すなわちプレートアンテナ6が常時導通状態である従来技術に係る構成における、トナー残量と第1のセンサによる静電容量の測定値との関係を示す。図5のグラフBは図4のグラフBと同じものである。実線のグラフDは、トナー残量と第2のセンサによる静電容量の測定値との関係を表している。第2のセンサの電極対(現像ローラ2及びプレートアンテナ6)が挟む領域は、トナー残量が20%程度になるまではトナーに埋まっているため、グラフDに示すように、トナー残量の変化に対して第2のセンサによる測定値の変化はほとんど無い。なお、搬送部材3の攪拌作用等の影響で若干の変化が測定される場合もある。グラフBは、図4のグラフBと同様、トナー残量の少ない領域において、トナー残量の変化に対する第1のセンサによる静電容量の測定値の変化が鈍くなる傾向があることを示している。ここで、上述しように、本実施例の現像剤量検知システムでは、使用初期は第1のセンサによる測定値に基づいてトナー残量を検知し、該トナー残量の検知値が20%を下回った場合に、第2のセンサによる測定値に基づくトナー残量検知に切り換える。従って、第1のセンサによる測定値に基づくトナー残量の検知精度が低い、トナー残量の少ない領域では、トナー残量の検知には第2のセンサが用いられることになる。しかしながら、図5のグラフDに示されるように、第1のセンサから第2のセンサへの切り換えが行われる閾値であるトナー残量20%付近では、トナー残量の変化に対する第2のセンサによる測定値の変化もグラフBの第1のセンサと同様に鈍くなっている。すなわち、閾値の20%付近では、第1のセンサ及び第2のセンサのいずれによっても、精度良くトナー残量の検知を行うことが困難という問題があった。
【0028】
これに対し、本実施例に係る現像剤量検知システムでは、切り換え手段36により、第2のセンサのプレートアンテナ6と検知手段31との電気的な接続を遮断することができる。切り換え手段36によってプレートアンテナ6と検知手段31との電気的な接続を遮断することにより、所定領域内電極部であるプレートアンテナ6を電気的にフロートにす
ることができる。第1のセンサによる測定値に基づいてトナー量の検知を行う場合に、切り換え手段36によってプレートアンテナ6を電気的にフロートにすることで、第1のセンサによる測定値にプレートアンテナ6による静電遮蔽の影響が現れないようにすることができる。
【0029】
図4において、一点鎖線のグラフCは、第1のセンサ及び第2のセンサを備え、且つ、切り換え手段36によってプレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を遮断した場合の、トナー残量と第1のセンサによる静電容量の測定値との関係を表す。図4に示すように、グラフCと、プレートアンテナ6が存在しない場合のグラフAとは、トナー量の変化に対して同様の変化を示す。また、グラフBと比較すると、トナー残量の変化に対する第1のセンサによる静電容量の変化が滑らかになっている。すなわち、第1のセンサの電極対の挟む領域内にプレートアンテナ6が存在している場合であっても、プレートアンテナ6を電気的にフロートにすることによって、プレートアンテナ6の存在に起因する静電遮蔽の影響を抑制できる。これにより、トナー残量の少ない領域においても、トナー残量の変化に対する第1のセンサによる静電容量の測定値の変化量が減少することを抑制できる。その結果、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を遮断できない従来構成の場合(グラフB)と比較して、特にトナー残量が少ない領域におけるトナー残量の検知精度が向上する。
【0030】
図5において、一点鎖線のグラフCは、第1のセンサ及び第2のセンサを備え、且つ、切り換え手段36によってプレートアンテナ6を検知手段31から電気的に遮断した場合の、トナー残量と第1のセンサによる静電容量の測定値との関係を表す。図5のグラフCに示されるように、第1のセンサから第2のセンサへの切り換えが行われる閾値であるトナー残量20%付近において、第1のセンサによる静電容量の測定値の変化がグラフBのように鈍化していない。従って、本実施例に係る現像剤量検知システムによれば、第1のセンサから第2のセンサへの切り換えが行われるトナー残量20%付近も含めて、使用初期からトナーが無くなるまでの広いトナー量の範囲で高精度の逐次トナー量検知を行うことが可能となる。
【0031】
(実施例2)
次に、実施例2について図6を参照して説明する。以下の説明では、実施例1と共通する構成要素については実施例1と同一の名称及び符号を用いることとし、詳細な説明を割愛する。図6は、本実施例に係る画像形成装置のプロセスカートリッジCの概略構成を示す図である。本実施例に係る現像装置は、トナー容器4内のトナーを現像ローラ2に供給するとともに現像ローラ2に残留するトナーを現像ローラ2から除去するRSローラ47(Remove and Supplyローラ)を備えている。RSローラ47は、導電性を有する回転軸48により現像ローラ2と近接して回転可能に支持された回転体であり、現像ローラ2とトナー容器4との間に配置される。更に、RSローラ47の回転軸48に交流電圧を印加する電源46を備えている。本実施例では、第1のセンサ及び第2のセンサを構成する電極部の対の一方をこのRSローラ47の回転軸48とし、この回転軸48に交流電圧を印加することによりプレートアンテナ6及びプレートアンテナ10に電流を誘起させて静電容量を測定するようにした。
【0032】
すなわち、本実施例に係る現像剤量検知システムは、RSローラ47の回転軸48及びプレートアンテナ10を電極対とする第1のセンサと、RSローラ47の回転軸48及びプレートアンテナ6を電極対とする第2のセンサと、を有する。プレートアンテナ10は導電性を有する金属板で、搬送部材3の作用領域の一部をRSローラ47との間に挟むように、トナー容器4の底面の凹部形状に沿うようにRSローラ47の長手方向全域に設置される。プレートアンテナ6は導電性を有する金属板で、搬送部材3の作用領域の一部をRSローラ47との間に挟むようにトナー容器4内のRSローラ47近傍に配置される。
プレートアンテナ6は、プレートアンテナ10とRSローラ47が挟む領域内に配置されている。すなわち、プレートアンテナ6は所定領域内電極である。
【0033】
RSローラ47とプレートアンテナ10の挟む領域内に存在するトナー量に応じて、RSローラ47の回転軸48とプレートアンテナ10との間の静電容量が変化する。RSローラ47の回転軸48に電源46から交流電圧を印加すると、RSローラ47の回転軸48とプレートアンテナ10との間の空間の静電容量に応じた電流がプレートアンテナ10に誘起される。従って、RSローラ47の回転軸48に交流電圧を印加した時にプレートアンテナ10に誘起される電流からRSローラ47とプレートアンテナ10との間の空間の静電容量を測定し、それに基づいてこの空間のトナー量を検知することができる。同様に、RSローラ47の回転軸48に交流電圧を印加した時にプレートアンテナ6に誘起される電流からRSローラ47の回転軸48とプレートアンテナ6との間の空間の静電容量を測定し、それに基づいてこの空間のトナー量を検知することができる。
【0034】
第1のセンサを用いて、トナー容器4内のトナー量が比較的多い状態(使用初期からトナー残量約10%〜約80%程度まで)におけるトナー量を検知することができる。また、第2のセンサを用いて、トナー容器4内のトナー量が比較的少ない状態(約10%〜約30%からトナーが無くなるまで)におけるトナー量を検知することができる。そして、実施例1と同様、使用初期においては第1のセンサによる静電容量の測定値に基づいてトナー量を検知し、検知されるトナー量が20%を下回った場合に、トナー量の検知のために用いるセンサを第2のセンサに切り換えてトナー量の検知を行う。
【0035】
このように構成されたプロセスカートリッジCには、実施例1で図1に基づいて説明したものと同様の切り換え手段36及び記憶手段20が備えられる。また、プロセスカートリッジCが着脱可能に構成された画像形成装置には、検知手段31、演算制御手段32、記憶手段35及び表示手段33が備えられる。また、検知したトナー量を表示する外部表示装置51が画像形成装置に接続される構成であっても良い。本実施例に係る切り換え手段36は、実施例1と同様FETにより構成され、演算制御手段32からゲート電極に印加される電圧に応じて、プレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を導通又は遮断する。
【0036】
第1のセンサによる静電容量の測定値に基づいてトナー量を検知する場合には、切り換え手段36により、第2のセンサのプレートアンテナ6と検知手段31との電気的接続を遮断する。これにより、プレートアンテナ6を電気的にフロートにすることができ、実施例1と同様、第1のセンサによる静電容量の測定に際し、プレートアンテナ6による静電遮蔽の影響で第1のセンサによる静電容量の測定値が減少することを抑制できる。その結果、第1のセンサから第2のセンサに切り換えられる閾値であるトナー残量20%付近のトナー量が少ない領域においても、第1のセンサによる静電容量の測定値に基づいて精度良くトナー量を検知することが可能になる。
【0037】
上記各実施例においては、本発明に係る現像剤として絶縁性の磁性一成分トナーを用いたが、電極部の対の間の空間における存在量が電極部の対の間の静電容量の変化に反映し得る現像剤であれば、これに限られない。また、本発明に係るセンサは、現像ローラ及びプレートアンテナを電極部の対として有する構成や、RSローラの回転軸及びプレートアンテナを電極部の対として有する構成に限られない。例えば、トナー容器内に配置される2枚のプレートアンテナを電極対として構成されるセンサを用いることもできる。その場合、当該2枚のプレートアンテナの挟む領域内に他のセンサを構成する電極の一部又は全部が配置される構成であれば、本発明を適用することによってトナー残量検知精度の向上を図ることが可能である。交流電圧を印加する電極は現像ローラやRSローラの回転軸に限られない。上記各実施例では、本発明に係る切り換え手段としてFETを用いたが、第
1のセンサによる静電容量の測定が行われる場合に第2のセンサの所定領域内電極と検知手段との電気的接続を遮断できるものであれば、これに限られない。プロセスカートリッジAやプロセスカートリッジCにおいて、帯電手段7及びクリーニング手段8の両方又はいずれか一方を除いた構成としても良い。また、トナー容器がプロセスカートリッジに一体形成されていない構成であっても良い。プロセスカートリッジ式でない画像形成装置ついても、現像剤を用いて画像形成する装置であって、現像剤容器内に静電容量を測定するセンサを複数備える構成の装置であれば、本発明を適用することによって同様の作用効果が得られる。また、上記各実施例では、トナー容器内にセンサが2つ備えられた構成に本発明を適用した例について説明したが、センサの数はこれに限られない。3つ以上のセンサが備えられた構成において、一のセンサの電極対の少なくとも一方が、その少なくとも一部が他のセンサの電極対が挟む領域内に配置される所定領域内電極である場合には、本発明の課題が生じる。すなわち、該所定領域内電極の存在に起因する静電遮蔽の影響で該他のセンサから出力される静電容量の測定値が減少する。この場合も、本発明を適用し、該一のセンサにより静電容量を測定する場合に該他のセンサの所定領域内電極を電気的にフロートにすることにより、静電遮蔽の影響を抑制して、トナー量の検知精度の向上を達成できる。また、第1のセンサから第2のセンサに切り換えるトナー量の閾値は、第1のセンサによって検知可能なトナー量の範囲と第2のセンサによって検知可能なトナー量の範囲との関係に応じて定められるものであり、上記実施例で採用した20%に限られない。
【符号の説明】
【0038】
2…現像ローラ、6…プレートアンテナ、10…プレートアンテナ、31…検知手段、36…切り換え手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収納する現像剤収納部内の現像剤量を検知する現像剤量検知システムであって、
前記現像剤収納部内で互いに対向する一対の電極部を有し、該電極部の対の挟む領域の静電容量に応じた測定値を出力する第1のセンサと、
前記現像剤収納部内で互いに対向する一対の電極部を有し、該電極部の対の挟む領域の静電容量に応じた測定値を出力する第2のセンサと、
を備え、
前記第2のセンサの少なくとも一方の電極部は、前記第1のセンサの前記電極部の対の挟む領域内に少なくともその一部が配置される所定領域内電極部であって、
前記現像剤量検知システムは、
前記第1のセンサの少なくとも一方の電極部及び前記第2のセンサの少なくとも前記所定領域内電極部と電気的に接続され、前記第1のセンサから入力される測定値又は前記第2のセンサから入力される測定値に基づいて前記現像剤収納部内の現像剤量を検知する検知手段と、
前記所定領域内電極部と前記検知手段との電気的接続を導通又は遮断のいずれかに切り換える切り換え手段と、
を備え、
前記検知手段が、前記第1のセンサから入力される測定値に基づいて前記現像剤量の検知を行う場合には、前記切り換え手段により、前記所定領域内電極部と前記検知手段との電気的接続を遮断することを特徴とする現像剤量検知システム。
【請求項2】
前記検知手段は、前記第1のセンサから入力される測定値に基づいて検知される現像剤量が所定の閾値を下回った場合には、前記切り換え手段によって前記所定領域内電極部と前記検知手段との電気的接続を導通状態として、前記第2のセンサによる測定値に基づいて現像剤量の検知を行うことを特徴とする請求項1に記載の現像剤量検知システム。
【請求項3】
前記第1のセンサの前記電極部の対の一方及び前記第2のセンサの前記電極部の対の一方に交流電圧を印加する印加手段を備え、
前記第1のセンサの前記電極部の対の他方及び前記第2のセンサの前記電極部の対の他方は前記検知手段に接続され、
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、前記印加手段により交流電圧が印加される時に、それぞれの前記電極部の対の挟む領域の静電容量に応じた測定値を前記検知手段に出力可能に構成され、
前記第2のセンサの前記電極部の対の他方は、前記所定領域内電極部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像剤量検知システム。
【請求項4】
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、各々の電極部の対のうち前記印加手段により交流電圧が印加される方の電極部を共有することを特徴とする請求項3に記載の現像剤量検知システム。
【請求項5】
画像情報に対応する潜像を担持する感光体と、
現像剤を収納する現像剤収納部と、前記現像剤収納部内の現像剤を前記感光体に担持搬送する現像剤担持体と、を有し、前記潜像に現像剤を付着させることによって前記潜像を現像する現像装置と、
前記現像剤収納部内の現像剤量を検知する請求項4に記載の現像剤量検知システムと、を備えた画像形成装置であって、
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが共有する、前記印加手段により交流電圧が印加される方の電極部は、前記現像剤担持体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は、前記現像剤担持体に現像バイアスを印加することにより画像形成を行う装置であり、
前記印加手段により前記現像剤担持体に印加される交流電圧は前記現像バイアスであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像情報に対応する潜像を担持する感光体と、
現像剤を収納する現像剤収納部と、前記現像剤収納部内の現像剤を前記感光体に担持搬送する現像剤担持体と、を有し、前記潜像に現像剤を付着させることによって前記潜像を現像する現像装置と、
前記現像剤収納部内の現像剤量を検知する請求項4に記載の現像剤量検知システムと、を備えた画像形成装置であって、
前記現像装置は、前記現像剤担持体に近接して配置され、前記現像剤収納部内の現像剤を前記現像剤担持体に供給するとともに前記現像剤担持体に残留する現像剤を除去する回転体を更に備え、
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが共有する、前記印加手段により交流電圧が印加される方の電極部は、前記回転体における導電性を有する回転軸であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−13638(P2011−13638A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160108(P2009−160108)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】