説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】予め定められた命名規則に基づき、長くても、データの送信者のみが分かるパスワードを自動的に生成し、機密保持すべきレベルが高いデータを、確実に保護する
【解決手段】画像形成装置は、ジョブに用いるデータの入力を行うためのデータ入力部と、入力されたデータを記憶する記憶部と、予め定められた命名規則に基づき、記憶部に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部と、データ選択と、そのパスワードの入力を受け付ける入力部と、パスワード生成処理部が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが入力されると、選択されたデータに基づいてジョブを実行するジョブ実行部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを記憶し、適正なパスワードが入力されると、印刷を行う画像形成装置、及び、この画像形成装置を含む画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像データや印刷設定等をまとめたデータを画像形成装置に記憶(蓄積)させておくことがある。例えば、画像形成装置は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置から受信したデータを記憶する。そして、第三者による印刷物持ち去りや、機密保持の観点から、画像形成装置での正当なパスワード入力を、記憶されたデータに基づくジョブを行うための条件とすることがある。言い換えると、パスワードにより認証できると、データに基づくジョブが実行される。
【0003】
このようなパスワードを用いる画像形成装置の一例が、特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、パスワードが付与された印刷データを受信し、印刷データに基づく認証印刷を実行し、通知先アドレスを取得する取得部と、受信した印刷データ及びパスワードと、取得された通知先アドレスとを、それぞれ対応させて記憶する印刷データ記憶部と、印刷データの受信後、所定の時間が経過すると、印刷データに対応するパスワードを新規パスワードに変更する変更部と、印刷データ記憶部から印刷データに対応する通知先アドレスを読み出して、通知先アドレスに基づき、新規パスワードを通知する通知部と、を備える画像形成装置が記載されている。この構成により、パスワードが付与された印刷データの受信後、所定の時間が経過すると、パスワードを変更し、第三者による不正な認証印刷の実行を抑止しようとする(特許文献1:請求項1、段落[0011]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−262420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、画像形成装置は、データ(画像データや、設定、属性に関するデータなど、印刷や送信等に用いられるデータ。以下、「文書データ」という)を、記憶することがある。そして、特許文献1に記載されるように、文書データに、パスワードを付すことがある。例えば、パソコンで、画像形成装置を用いるためのドライバソフトウェアを用いて、文書データにパスワードを付す設定がなされる。そして、情報処理装置からパスワード付きの文書データが送信される。
【0006】
例えば、文書データに付すパスワードは、ドライバソフトウェアで予め設定される。そのため、文書データに付されるパスワードは固定的である。尚、文書データの送信のたびにパスワードを変更することは、不可能ではないが、煩わしい。又、どの文書データにどのようなパスワードを付したかの管理も煩わしい。場合によっては、文書データにどのようなパスワードを設定したか分からなくなる。そのため、予め設定されたパスワードが、繰り返して用いられる。そうすると、付されるパスワードは、各文書データで同じとなる。
【0007】
そうすると、一度、パスワードが漏洩すると、同じパスワードの文書データを印刷できてしまう。又、従来、機密保持の必要性の大小を問わず、各文書データには同じパスワードが付される。そのため、パスワードが漏洩すると、機密保持すべきレベルが高いデータも、悪意の第三者に印刷され得るという問題がある。
【0008】
尚、特許文献1記載の画像形成装置は、所定の時間が経過すると、印刷データに対応するパスワードを新規パスワードに変更するので、情報が漏洩し難くなる場合はある。しかし、新規パスワードは、メールにより通知される(特許文献1:段落[0095]等参照)。従って、メールを確認すれば、第三者でもパスワードを容易に知ることができる。従って、パスワードの漏洩の危険性は返って高くなり得るという問題がある。
【0009】
又、特許文献1記載の画像形成装置では、新規パスワードは、乱数によって生成される(特許文献1:段落[0089]等参照)。そのため、自動的に生成されたパスワードはユーザに馴染みがなく、覚え難い。そのため、新規パスワードを長い文字列、数字列とすることが難しく、新規パスワードの解読、解析に対する堅牢性においても問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑み、予め定められた命名規則に基づき、長くても、データの送信者のみが分かるパスワードを自動的に生成し、機密保持すべきレベルが高いデータを、確実に保護することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題解決のため請求項1に係る画像形成装置は、ジョブに用いるデータの入力を行うためのデータ入力部と、前記データ入力部から入力されたデータを記憶する記憶部と、予め定められた命名規則に基づき、前記記憶部に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部と、前記記憶部に記憶されたデータを選択する入力と、選択したデータのパスワードの入力を受け付ける入力部と、前記パスワード生成処理部が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが、前記入力部に入力されると、選択されたデータに基づいてジョブを実行するジョブ実行部と、を含むこととした。
【0012】
この構成によれば、パスワード生成処理部は、予め定められた命名規則に基づき、データ名からパスワードを自動的に生成し、自動的に生成されたパスワードと同じパスワードが、入力部に入力されると、印刷などのジョブが実行される。これにより、画像形成装置にデータを入力した正当な使用者のみが知るデータ名に基づき、予め定められた命名規則により、推定可能なパスワードが自動的に生成される。従って、自動生成されたパスワードが長くても、正当な使用者にとっては、正しいパスワードを容易に入力可能とし、かつ、パスワードを堅牢なものとできる。又、自動生成により、パスワードは、データごとに異なる。従って、機密保持すべきレベルが高いデータを、従来よりも確実に保護し、権限のない者にジョブ実行がされることによる情報漏洩を防ぐことができる。
【0013】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記命名規則は複数種用意され、前記入力部は、複数ある前記命名規則のうち、適用する前記命名規則を予め選択する入力を受け付け、前記パスワード生成処理部は、予め前記入力部で選択された前記命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成することとした。
【0014】
この構成によれば、命名規則は複数種用意され、パスワード生成処理部は、予め入力部で選択された命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成する。これにより、命名規則を任意に変更することができ、事情を知らない第三者にとって、自動生成されたパスワードの推定が難しくなる。従って、権限のない者にジョブ実行がされることによる情報漏洩を防ぐことができる。
【0015】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、前記パスワード生成処理部は、データの内容を確認し、データのセキュリティを保護すべきレベルの高さを認定し、保護レベルの高さに合わせ、複数ある前記命名規則のうち、適用する前記命名規則を自動的に切り替えることとした。
【0016】
この構成によれば、パスワード生成処理部は、データの内容を確認し、データのセキュリティを保護すべき高さのレベルを認定し、保護レベルの高さに合わせ、複数ある命名規則のうち、適用する命名規則を自動的に切り替える。これにより、セキュリティ上保護すべきレベルが高いデータほど、より推定し難い命名規則への切替を行うことができる。
【0017】
又、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の発明において、前記パスワード生成処理部は、データ名の各文字を画数に変換した数字の羅列を生成する前記命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成することとした。
【0018】
又、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の発明において、前記パスワード生成処理部は、データ名に含まれる数を整数倍して数字の羅列を生成する前記命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成することとした。
【0019】
又、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の発明において、前記記憶部に記憶されたデータを表示する表示部を有し、前記命名規則の1つとして、データ名をパスワードとする前記命名規則があり、データ名をパスワードとする前記命名規則により、前記パスワード生成処理部が、パスワードを自動的に生成するとき、前記表示部は、前記記憶部に記憶されたデータのデータ名を表示しないこととした。
【0020】
これら請求項4乃至請求項6構成によれば、データ名に基づき、パスワードを自動的に生成することができる。
【0021】
又、請求項7に係る画像形成システムは、印刷ジョブに用いるデータを送信する情報処理装置と、前記情報処理装置から印刷ジョブに用いるデータを受信するデータ入力部と、前記データ入力部から入力されたデータを記憶する記憶部と、予め定められた命名規則に基づき、前記記憶部に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部と、前記記憶部に記憶されたデータを選択する入力と、選択したデータのパスワードの入力を受け付ける入力部と、前記パスワード生成処理部が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが、前記入力部に入力されると、選択されたデータに基づいてジョブを実行するジョブ実行部と、を含む画像形成装置を備えることとした。
【0022】
この構成によれば、請求項1と同様に、パスワードが、長くても、正当な使用者にとって、正しいパスワードを容易に入力することができる。又、パスワードの自動生成により、パスワードは、データごとに異なるので、機密保持すべきレベルが高いデータを、確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0023】
上述したように、本発明によれば、予め定められた命名規則に基づき、長くても、データを画像形成装置に入力した者のみが分かるパスワードを自動的に生成することができる。これにより、機密保持すべきレベルが高いデータを、確実に保護する画像形成装置、画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る画像形成システムの一例を示す模式図である。
【図2】実施形態に係る複合機の一例を示す模型的正面断面図である。
【図3】実施形態に係る画像形成システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係るジョブボックス画面の一例を示す説明図である。
【図5】実施形態に係るユーザボックス画面の一例を示す説明図である。
【図6】実施形態に係るソフトウェアキーボード画面の一例を示す説明図である。
【図7】実施形態に係るボックス機能の文書データ一覧画面の一例を示す説明図である。
【図8】実施形態に係るパスワード入力画面の一例を示す説明図である。
【図9】実施形態に係るパスワード自動生成の一例を示す説明図である。
【図10】実施形態に係るパスワード自動生成設定画面の一例を示す説明図である。
【図11】実施形態に係る複合機でのパスワード自動生成と認証制御の流れの一例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、まず、本発明の実施形態を図1〜図11を用いて説明する。ここで、本発明は、各種画像形成システム400に適用可能であるが、画像形成装置として複合機100を、情報処理装置としてPC200(パーソナルコンピュータ)を含む画像形成システム400を例に挙げて説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず、単なる説明例にすぎない。
【0026】
(画像形成システム400の概要)
まず、図1を用い、本発明の実施形態に係る画像形成システム400の一例を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システム400の一例を示す模式図である。
【0027】
図1に示す複合機100は、スキャナ機能、コピー機能、プリント機能、FAX機能等を備える。そして、図1に示すように、PC200が、複合機100に対し通信可能に接続される。例えば、各PC200と複合機100はネットワークにより接続される。尚、ネットワークを介さず、ケーブル(例えば、USBケーブル)を用いて、直接的にPC200と複合機100を接続することもできる。
【0028】
各PC200は、キーボードやマウス等(マウスは不図示)の入力装置201やディスプレイ202を有する。そして、各PC200内のHDD等の記憶装置203(図3参照)には、複合機100をプリンタとして使用するためのドライバソフトウェアがインストールされる。使用者は、ドライバソフトウェアを起動し、ドライバソフトウェアを操作し、印刷や送信に用いる文書データを複合機100に送信できる。又、使用者は、文書データの印刷や送信の条件として、複合機100がパスワード(認証用コード)の入力を求めるように設定できる。
【0029】
文書データは、印刷に用いる用紙等の設定内容を示す設定データや画像データを含む。各PC200は、複合機100に向け文書データを送信する。複合機100は、この文書データを受けて、印刷を実行する(プリンタ機能)
【0030】
(画像形成装置の概要)
次に、図2に基づき、本発明の実施形態に係る複合機100を説明する。図2は本発明の実施形態に係る複合機100の一例を示す模型的正面断面図である。
【0031】
図2に示すように、本実施形態の複合機100は、最上部に原稿カバー101を有し、複合機100本体には、操作パネル1(入力部に相当)、画像読取部2(データ入力部に相当)、給紙部3(ジョブ実行部に相当)、搬送路4(ジョブ実行部に相当)、画像形成部5(ジョブ実行部に相当)、定着部6(ジョブ実行部に相当)等が設けられる。
【0032】
操作パネル1は、複合機100の正面上方に設けられる(図2では破線で図示)。そして、操作パネル1は、複合機100の状態や各種メッセージを表示する液晶表示部11(表示部に相当)を備える。液晶表示部11は、機能の選択、設定や文字入力等を行うためのキーを1又は複数表示できる。又、液晶表示部11にタッチパネル部12(例えば、抵抗膜方式、入力部に相当)が設けられる。タッチパネル部12は、液晶表示部11で押下された部分の位置、座標を検出するためのものである。又、操作パネル1には、コピー等の各種機能の実行開始を指示するためのスタートキー13や数字等の入力用のテンキー部14も設けられる。
【0033】
又、操作パネル1には、複合機100に蓄えられた文書データを利用するためのボックスキー15が設けられる。例えば、PC200から文書データを送信した送信者は、ボックスキー15を押下し、ボックスを開く。そして、ボックスに関する操作を操作パネル1に行うことにより、使用者は、文書データの印刷を行える。尚、ボックス機能の詳細は後述する。このように、操作パネル1には、スタートキー13や、テンキー部14や、ボックスキー15等のハードとしてのキー(入力部に相当)も各種設けられる。
【0034】
原稿カバー101は、図2の紙面奥行き方向に支点を有し、紙面上下方向に開閉可能である。原稿カバー101は、原稿の複写時、載置読取用コンタクトガラス21に載置された原稿を押さえる。画像読取部2は、原稿を読み取り、原稿の画像データを形成する。又、画像読取部2内には露光ランプ、ミラー、レンズ、イメージセンサ(例えば、CCD)等の光学系部材(不図示)が設けられる。尚、原稿カバー101に変えて、原稿を1枚ずつ、自動的、連続的に、画像読取部2の読み取り位置(送り読取用コンタクトガラス22)に向けて搬送する原稿搬送装置を設けてもよい。
【0035】
そして、これらの光学系部材を用いることで、画像読取部2は、載置読取用コンタクトガラス21に載置される原稿に光を照射する。画像読取部2は、原稿の反射光を受けたイメージセンサの各画素の出力値をA/D変換し、画像データが生成される。そして。複合機100は、読み取りにより得られた画像データに基づき印刷を行うことができる(コピー機能)。
【0036】
給紙部3は、複数の用紙(例えば、コピー用紙、普通紙、再生紙、厚紙、OHPシート等の各種シート)を収容し、1枚ずつ搬送路4に送り込む。給紙部3は、収納用紙が載置されるカセット31を含む(図2で上方のものに31A、下方のものに31Bの符号を付す)。又、カセット31から搬送路4に送り出すため回転駆動する給紙ローラ32が設けられる(図2で上方のものに32A、下方のものに32Bの符号を付す)。例えば、印刷時には、給紙ローラ32が回転駆動し、印刷に要する用紙が1枚ずつ搬送路4に送り出される。
【0037】
搬送路4は、給紙部3から排出トレイ41まで用紙を搬送する通路である。尚、用紙搬送経路上には画像形成部5、定着部6等が配される。そして、搬送路4には、用紙の案内のためのガイドや、用紙搬送の際に回転駆動する搬送ローラ対42、43や、搬送されてくる用紙を画像形成部5の手前で待機させ、トナー像形成のタイミングを合わせて用紙を送り出すレジストローラ対44等が設けられる。
【0038】
画像形成部5は、画像データに基づきトナー像を形成し、搬送される用紙にトナー像を転写する。そのため、画像形成部5は、図2中に示す矢印方向に回転駆動可能に支持された感光体ドラム51、及び、感光体ドラム51の周囲に配設された帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラ55、クリーニング装置56等を備える。
【0039】
トナー像形成及び転写プロセスを説明する。まず、感光体ドラム51は、画像形成部5の略中心に設けられ、所定方向に回転駆動する。帯電装置52は、感光体ドラム51を所定電位に帯電させる。露光装置53は、画像データに基づき、レーザ光をから出力し、感光体ドラム51表面を走査露光して画像データに応じた静電潜像を形成する。尚、画像データは、画像読取部2で得られた画像データや、ネットワーク等により接続される外部のPC200や相手方FAX装置300(図3参照)から送信された画像データ等が用いられる。
【0040】
そして、現像装置54は、感光体ドラム51に形成された静電潜像にトナーを供給して現像する。転写ローラ55は感光体ドラム51に圧接し、ニップを形成する。そして、トナー像にあわせタイミングを図られつつ、用紙はニップに進入する。用紙進入時、転写ローラ55には所定の電圧が印加され、用紙に感光体ドラム51上のトナー像が転写される。クリーニング装置56は、転写後に感光体ドラム51に残留するトナーを除去する。
【0041】
定着部6は、用紙に転写されたトナー像を定着させる。本実施形態における定着部6は主として発熱体を内蔵する加熱ローラ61と加圧ローラ62で構成される。加熱ローラ61と加圧ローラ62は圧接しニップを形成する。そして、用紙が、このニップを通過することで、用紙表面のトナーが溶融・加熱され、トナー像が用紙に定着する。トナー定着後の用紙は、排出トレイ41に排出される。このようにして、コピー機能、プリンタ機能の使用時、画像形成(印刷)が行われる。
【0042】
(画像形成システム400のハードウェア構成)
次に、図3に基づき、本発明の実施形態に係る画像形成システム400のハードウェア構成の一例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る画像形成システム400の構成の一例を示すブロック図である。
【0043】
まず、画像形成システム400の情報処理装置としてのPC200を説明する。尚、PC200は、複合機100に対し、複数台接続可能であるが、便宜上、図3ではPC200を一台のみ示す。
【0044】
PC200は、内部に、PC200でのデータ処理や、制御を行う処理部204を有する。処理部204は、例えば、CPUや各種チップを搭載した基板である。記憶装置203は、例えば、PC200の制御プログラムや複合機100用のドライバソフトウェアを記憶する。記憶装置203は、例えば、HDDやフラッシュROMやRAMである。
【0045】
入力装置201は、PC200に対する入力インターフェイスである。入力装置201は、例えば、キーボードやマウスである。ディスプレイ202は、各種画面を表示する。ディスプレイ202は、例えば、ドライバソフトウェアを起動させたとき、複合機100での印刷設定に関する画面を表示する。データ通信部205は、通信用チップや、コネクタ等を含む通信用インターフェイスである。データ通信部205は、ネットワークや通信ケーブルにより、他のPC200や複合機100と通信可能に接続される。
【0046】
次に、複合機100を説明する。複合機100内には、制御部7(パスワード生成処理部に相当)が設けられる。制御部7は、複合機100の動作を制御し、例えば、CPU71、画像処理部72等を含む。尚、制御部7は、全体制御や画像処理を行うメイン制御部と、画像形成や各種回転体を回転させるモータ等のON/OFF等を制御するエンジン制御部等、機能ごとに分割して複数種設けられてもよい。
【0047】
CPU71は、中央演算処理装置であって、記憶部8に格納され、展開されるプログラムやデータに基づき複合機100の各部を制御する。画像処理部72は、印刷を行う画像データ(画像読取部2で読み取られた画像データやPC200やFAX装置300から受信した画像データ)に対し、各種画像処理を施す。あるいは、画像処理部72は、画像読取部2で読み取られ、PC200やFAX装置300に送信する画像データに対し、各種画像処理を施す。
【0048】
記憶部8は、例えば、ROM、RAM、HDDを含み、不揮発性と揮発性の記憶用の装置を組み合わせて構成される。そして、記憶部8は、複合機100の制御用等の各種のプログラムやデータ、設定データ、画像データ等の各種データを記憶する。例えば、各PC200から送信された文書データは、記憶部8のHDDに記憶される。
【0049】
記憶部8のHDDは、仮想的に設けられた専用の記憶領域を「ボックス」とし、「ボックス」に文書データを記憶する。言い換えると、ボックスは、記憶部8における文書データ用の記憶領域である。使用者は、ボックスを開くことで、文書データを選択して印刷を行うことができる(ボックス機能)。
【0050】
そして、制御部7は、操作パネル1、画像読取部2、給紙部3、搬送路4、画像形成部5、定着部6等の各部とバスや信号線等で接続され、各部、各装置を制御して複合機100の動作を制御する。
【0051】
本実施形態の複合機100の操作パネル1は、例えば、表示制御部10、メモリ16、液晶表示部11、タッチパネル部12を有する。表示制御部10は、CPUやIC等で構成され、液晶表示部11の表示を制御する。表示制御部10は、表示すべき画面の画像データに基づき、液晶表示部11に指示を与え、表示を行わせる。又、表示制御部10は、タッチパネル部12の出力を受け、液晶表示部11で押された位置(座標)を特定する。例えば、メモリ16がタッチパネル部12の出力と座標の対応を示すテーブル等のデータを記憶する。
【0052】
表示制御部10は、押された位置と、液晶表示部11に表示される各種画面の画像データを比較して、押されたキーを特定、認識する。このように、使用者は、液晶表示部11に表示された設定や操作用のキーを押して、コピーや送信等の各機能を使用するための設定入力を行える。例えば、表示制御部10は、設定内容を認識し、その内容を制御部7に送信する。これにより、制御部7は、操作パネル1での設定内容を反映した動作を複合機100内の各部に行わせる。
【0053】
又、液晶表示部11が表示する画面、画像の画像データは、例えば、操作パネル1内のメモリ16に記憶される。そして、表示制御部10は、液晶表示部11に表示されたキー等が押されるごとに、表示制御部10は、次に表示すべき画面、画像の画像データをメモリ16から読み出す。又、操作パネル1に設けられる各種ハードキー(スタートキー13やボックスキー15)も表示制御部10に接続される。表示制御部10は、各種キーが押されたことを認識し、その旨を制御部7に伝達する。
【0054】
更に、制御部7は、各種コネクタ、ソケット、通信制御用のチップ等を備えた通信部9(データ入力部、ジョブ実行部に相当)と接続される。通信部9は、ネットワークや公衆回線等により、PC200や、相手方FAX装置300と、複合機100を通信可能に接続する。例えば、画像データを含むデータを外部のPC200や相手方FAX装置300(インターネットFAXでもよい)に送信することができる(スキャナ機能、FAX機能)。又、FAX装置300からの画像データに基づき印刷を行うこともできる(FAX機能)。又、プリンタ機能に関し、通信部9は、PC200から文書データを受信し、印刷を行うことができる。このように、複合機100は、コピー機能、プリンタ機能、スキャン機能、FAX機能のうちの複数の機能を備える。
【0055】
(文書データの記憶・蓄積)
次に、図3〜図6に基づき、本発明の実施形態に係る複合機100、画像形成システム400での文書データの記憶を説明する。図4は、本発明の実施形態に係るジョブボックス画面S1の一例を示す説明図である。図5は、本発明の実施形態に係るユーザボックス画面S2の一例を示す説明図である。図6は、本発明の実施形態に係るソフトウェアキーボード画面S3の一例を示す説明図である。
【0056】
本実施形態の複合機100は、記憶部8を有する。記憶部8は、印刷や送信に用いるデータであり、画像データや設定データや属性情報などのデータを含む文書データを記憶するボックスという記憶領域を有する。本実施形態の複合機100では、例えば、2種類のボックスが設けられる。1つは、PC200から受信した文書データが記憶されるボックス(以下、「ジョブボックス」という。)であり、もう1つは、画像読取部2で読み取られた原稿の画像データを含む文書データが記憶されるボックス(以下、「ユーザボックス」という。)である。
【0057】
[ジョブボックス]
まず、図4を用いて、ジョブボックスを説明する。文書データの複合機100への入力方法の1つは、PC200からの文書データの送信である。PC200には、複合機100を利用するためのドライバソフトウェアがインストールされる。そして、ドライバソフトウェアは、処理部204などを動作させ、画像データや、データ名や、設定や、属性情報などを文書データとして、データ通信部205から複合機100の通信部9に送信させる。このとき、通信部9は、複合機100へのデータ入力部として機能する。
【0058】
制御部7は、文書データを送信したユーザを確認する。例えば、各PC200で、文書データに使用者を示すデータを付す処理が行われてもよい。あるいは、制御部7は、文書データを送信したPC200のアドレス(例えば、IPアドレス)に基づき、文書データの送信者名(ユーザ名)を認識してもよい。この場合、例えば、記憶部8に、アドレスと使用者を対応づけるテーブルデータが予め記憶され、制御部7は、このテーブルデータを参照して、各文書データの送信者を認識する。そして、制御部7は、通信部9で受信された文書データにユーザ名を付して、記憶部8のジョブボックスに記憶させる。
【0059】
図4は、ジョブボックスに蓄積された文書データを扱うためのジョブボックス画面S1である。表示制御部10は、ボックスキー15が押され、ジョブボックスタブTB1が押されると、ジョブボックス画面S1を液晶表示部11に表示させる。
【0060】
ジョブボックス画面S1には、文書データの送信者(ユーザ名)等を一覧表示するユーザ名一覧表示領域F1が設けられる。制御部7は、ジョブボックスに蓄積された文書データの送信者や、文書数を示すデータを表示制御部10に与える。表示制御部10は、このデータを受けて、ユーザ名一覧表示領域F1の表示を液晶表示部11に行わせる。
【0061】
PC200から複合機100に送信した文書データに基づき、ジョブを実行しようとする使用者は、液晶表示部11を押し、自分のユーザ名を選択する。例えば、表示制御部10は、選択されたユーザ名を反転表示させる。そして、ユーザ名を選択した状態で、開くキーK1を押すと、表示制御部10は、文書データを選択するための画面(文書データ一覧画面S4、詳細は後述)を液晶表示部11に表示させる。
【0062】
[ユーザボックス]
文書データの複合機100への入力に、画像読取部2を用いることもできる。記憶部8は、画像読取部2で原稿を読み取ることにより得られた画像データと、画像データに付随してデータ名や、設定や、属性情報などを文書データとしてボックスに蓄積してもよい。このとき、画像読取部2は、複合機100へのデータ入力部として機能する。
【0063】
画像読取部2を用いた文書データの蓄積を、図5を用いて説明する。図5は、画像読取部2を用いて蓄積された文書データを扱うためのユーザボックス画面S2である。表示制御部10は、ボックスキー15が押され、ユーザボックスタブTB2が押されると、ユーザボックス画面S2を液晶表示部11に表示させる。
【0064】
ユーザボックス画面S2には、使用者が予め登録したユーザボックスを一覧表示するユーザボックス表示領域F2が設けられる。制御部7は、設けられているユーザボックスのボックス名や、使用者を示すデータを表示制御部10に与える。表示制御部10は、このデータを受けて、ユーザボックス表示領域F2の表示を液晶表示部11に行わせる。尚、使用者は、ユーザボックス表示領域F2の右方に設けられるボックス登録/編集キーK2を押して、ユーザボックスの新設や削除を行える。
【0065】
液晶表示部11を押すことで、ユーザボックスを選択することができる。例えば、表示制御部10は、選択されたユーザボックスを反転表示する。そして、ユーザボックスを選択した状態で、文書保存キーK3を押すと、画像読取部2を用いて、文書データを保存することができる。
【0066】
このユーザボックスに、画像読取部2の読み取りで得られた画像データなどの文書データを記憶させるとき、制御部7が、読み取り日時に基づき、自動的にデータ名を文書データに付すようにしてもよい。あるいは、制御部7は、画像読取部2での読み取り完了に伴い、図6に示すようなソフトウェアキーボード画面S3を液晶表示部11に表示させ、文書データに名前を付す入力を行えるようにしてもよい。そして、記憶部8は、文書データを、データ名と共に記憶する。
【0067】
又、ユーザボックスを選択した状態で、開くキーK4を押すと、表示制御部10は、文書データを選択するための画面(文書データ一覧画面S4、詳細は後述)を液晶表示部11に表示させる。
【0068】
(蓄積した文書データの利用)
次に、図4、図5、図7を用い、本発明の実施形態に係るボックス機能の一例を説明する。図7は、本発明の実施形態に係るボックス機能での文書データ一覧画面S4の一例を示す説明図である。
【0069】
蓄積した文書データを利用するには、記憶部8に記憶された文書データを選ぶ必要がある。本実施形態ではジョブを実行する文書データを文書データ一覧画面S4で選択する。
【0070】
具体的に、ジョブボックス画面S1で、ユーザ名が選択された状態で、開くキーK1が押されたとき、表示制御部10は、文書データ一覧画面S4を液晶表示部11に表示させる。又、ユーザボックス画面S2でユーザボックスが選択された状態で、開くキーK4が押されたときも、表示制御部10は、文書データ一覧画面S4を液晶表示部11に表示させる。
【0071】
各種の文書データ一覧画面S4には、文書データ一覧表示領域F3が設けられる。文書データ一覧表示領域F3では、選択された送信者のジョブボックス内や、選択されたユーザボックス内の文書データのデータ名や、受付日時が表示される。制御部7は、選択された送信者やユーザボックスにあわせ、記憶部8に記憶された文書データのデータ名や、受付日時を示すデータを表示制御部10に送信する。そして、表示制御部10は、受信したデータに基づき、図7に示すように、文書データの一覧を液晶表示部11に表示させる。
【0072】
一覧において、各文書データの左側には、チェックボックスCBが設けられる。使用者は、印刷や送信しようとする文書データのチェックボックスCBにチェックを入れる。これにより、ジョブの対象となるデータが選択される。
【0073】
そして、一覧の下方には、削除キーK5、印刷キーK6、送信キーK7が配される。削除キーK5は、チェックを入れた文書データを一覧から削除するときに押される。印刷キーK6は、チェックを入れた文書データを印刷するときに押される。送信キーK7は、チェックを入れた文書データを送信するときに押される。
【0074】
(パスワードの入力)
次に、図6、図8に基づき、本発明の実施形態に係る複合機100でのパスワードの入力を説明する。図8は、本発明の実施形態に係るパスワード入力画面S5の一例を示す説明図である。
【0075】
本実施形態の複合機100では、文書データ一覧画面S4で文書データを選択し、印刷キーK6や送信キーK7を押して印刷や送信が実際に行われる前に、パスワードの入力が求められる。このパスワードによる認証によって、第三者による送信や、印刷物の持ち去りや、権限のない者による機密書類の閲覧を防ぐことができる。
【0076】
入力すべきパスワードは、数字に限ってもよい。この場合、使用者は、操作パネル1のテンキー部14を用いてパスワードの入力を行う。あるいは、図8に示すパスワード入力画面S5内のパスワード入力欄L1が押されると、表示制御部10は、図6に示すようなソフトウェアキーボード画面S3を表示して、文字(例えば、アルファベット)、記号、数字をパスワードとして入力可能としてもよい。
【0077】
パスワード入力画面S5で、OKキーK8が押されると、入力されたパスワードは、制御部7に送信される。そして、制御部7は、入力されたパスワードが正しいか否かを確認する。パスワードが正しければ、制御部7は画像形成部5などを制御して、文書データに基づき印刷を行わせる。送信を行う設定であれば、制御部7は、通信部9から文書データに基づき画像データ等の送信を行わせる。
【0078】
(パスワードの自動生成)
次に、図9、図10を用いて、本発明の実施形態に係る複合機100でのパスワードの自動生成を説明する。図9は、本発明の実施形態に係るパスワード自動生成の一例を示す説明図である。図10は、本発明の実施形態に係るパスワード自動生成設定画面S6の一例を示す説明図である。
【0079】
従来、パスワードを用いた文書データの印刷では、各使用者がPC200でパスワードを付したうえで文書データを送信していた。そして、文書データを受信した複合機100は、直ちに印刷せず、記憶部8に記憶して蓄える。そして、複合機100は、パスワードの入力を受けて印刷を行う。これにより、複合機100の近くに文書データの送信者がいる状態で印刷が行われ、第三者による印刷物の持ち去り等が防がれる。
【0080】
このような印刷方式では、使用者は、PC200で予めパスワードを設定する。そして、予め設定されたパスワードが、それぞれの文書データに付される。そのため、パスワードが漏洩すると、同じパスワードが付された文書データは全て印刷等が可能となる。又、セキュリティ保護の観点から見て、パスワードは長いほど好ましいところ、複合機100に入力する際に忘れるので、長いパスワードが予め設定されることは、ほとんど無い。
【0081】
そこで、本実施形態の複合機100、画像形成システム400では、文書データのデータ名に基づき、制御部7が、一定の命名規則のもと、使用者のみが分かるパスワードを自動生成する。これにより、無権限者による文書データの印刷や送信を防ぐ。ここで、自動生成されるパスワードの強度を高めるため、本実施形態の複合機100では、複数の命名規則が用意される。
【0082】
[命名規則の具体例1]
まず、命名規則の第1具体例を説明する。本命名規則では、制御部7が、文書データのデータ名を確認する。そして、制御部7は、データ名に含まれる各文字を全て画数に直す。そして、制御部7は、画数に直した数字をパスワードとする。例えば、データ名が「testfile.txt」であったとき、制御部7は、拡張子以外の「testfile」部分に基づき「21122211」のパスワードを自動生成する。又、例えば、データ名が「会議資料.pdf」であったとき、制御部7は、拡張子以外の「会議資料」部分に基づき「6201310(会=6画、議=20画、資=13画、料=10画)」のパスワードを自動生成する。尚、例えば、記憶部8に漢字の画数リストを記憶させておき、制御部7は、データ名の各文字の画数を確認できるようにしてもよい。
【0083】
即ち、パスワード生成処理部(制御部7)は、データ名の各文字を画数に変換した数字の羅列を生成する命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成する。
【0084】
[命名規則の具体例2]
次に、命名規則の第2具体例を説明する。本命名規則では、制御部7が、文書データのデータ名を確認する。そして、制御部7は、データ名に含まれる数字を2倍する。そして、制御部7は、2倍した数字をパスワードとする。データ名として、よく文書データの作成日時を付すことがある点を考慮したものである。
【0085】
例えば、データ名が「20101010.txt」であったとき、制御部7は、拡張子以外の「20101010」部分を2倍し、「40202020」のパスワードを自動生成する。又、例えば、データ名が「080808.pdf」であったとき、制御部7は、拡張子以外の「080808」に基づき「016016016」のパスワードを自動生成する。尚、倍数は「2」と限られない。又、倍数を異ならせることで、命名規則を容易に複数種とすることができる。
【0086】
即ち、パスワード生成処理部(制御部7)は、データ名に含まれる数を整数倍して数字の羅列を生成する命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成する。
【0087】
[命名規則の具体例3]
次に、命名規則の第3具体例を説明する。本命名規則では、制御部7は、文書データのデータ名そのものを、パスワードとする。そこで、本命名規則によりパスワードを自動生成するとき、文書データ一覧画面S4には、データ名が表示されない。
【0088】
例えば、データ名が「testfile.txt」である文書データについては、本来図9の上段の図に示すように、表示制御部10は、「testfile.txt」というデータ名が記された文書データ一覧画面S4を、液晶表示部11に表示させる。しかし、本命名規則によりパスワードを自動生成するとき、表示制御部10は、「testfile.txt」というデータ名を「********.txt」のように記した文書データ一覧画面S4を、液晶表示部11に表示させる。
【0089】
このように、制御部7は、本命名規則によりパスワードを自動生成するとき(データ名をそのままパスワードとするとき)、表示制御部10にデータ名を表示させない。この場合、制御部7は、例えば、文書データ一覧画面S4に表示制御部10に表示すべきデータ名として「*」やスペースからなるデータを与える。
【0090】
即ち、記憶部8に記憶されたデータを表示する表示部(液晶表示部11)を有し、命名規則の1つとして、データ名をパスワードとする命名規則があり、データ名をパスワードとする命名規則により、パスワード生成処理部(制御部7)が、パスワードを自動的に生成するとき、表示部は、記憶部8に記憶されたデータのデータ名を表示しない。
【0091】
そして、複合機100の管理者は、パスワードを自動生成するうえでの設定を行うことができる。図10は、本発明の実施形態に係るパスワード自動生成設定画面S6の一例である。
【0092】
上述したように、パスワードの自動生成では、命名規則は、複数用意される。そこで、管理者は、パスワード自動生成において、適用される命名規則の優先順位を固定的に定めることができる。具体的に、命名規則選択の欄に示されたプルダウンメニュー形式の命名規則設定欄L2により、管理者は、適用される命名規則の優先順位を定めることができる。そして、制御部7は、パスワードの自動生成での命名規則を、定められた優先順位順に適用する。即ち、命名規則は複数種用意され、入力部(操作パネル1)は、複数ある命名規則のうち、適用する命名規則を予め選択する入力を受け付け、パスワード生成処理部(制御部7)は、予め入力部で選択された命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成する。
【0093】
例えば、上記の具体例2の命名規則は、データ名が文字のみであり、数字が含まれていないとき、パスワードを生成することができない。例えば、具体例2の命名規則が優先順位で第1順位であり、数字が含まれていないデータ名に基づきパスワードを自動生成するとき、制御部7は、第2順位の命名規則によりパスワードを自動生成する。
【0094】
又、パスワードの自動生成の設定では、文書データのセキュリティ設定にあわせ命名規則の自動変更に関する設定を行うこともできる。PC200にインストールされる複合機100のドライバソフトウェアでは、文書データの印刷に関し、各種の設定を行うことができる。そして、ドライバソフトウェアでは、文書データのセキュリティ設定を行うことができる場合もある。
【0095】
本実施形態のPC200では、インストールされたドライバソフトウェアを用いて、「社内秘」、「極秘」、「Confidential」といったウォータマークを付す設定を行うことができる。又、文書データを作成するアプリケーションソフトウェアでもウォータマークを付すことができる場合もある。ウォータマークを付す設定がなされると、制御部7は、ウォータマークを埋め込んだ画像データを生成する。例えば、画像形成部5はウォータマークが埋め込まれた画像データに基づき印刷する(ウォータマークも印刷される)。又、PC200では、複合機100のドライバソフトウェアや、アプリケーションソフトウェアで、文書データのセキュリティを保護するうえでのレベル(セキュリティレベル)を設定可能としてもよい。
【0096】
管理者は、機密情報を保持するためセキュリティに関する設定が文書データになされているときと、なされていないときで、用いる命名規則を自動的に変えるか否かを設定することができる。即ち、パスワード生成処理部(制御部7)は、データの内容を確認し、データのセキュリティを保護すべきレベルの高さを認定し、保護レベルの高さに合わせ、複数ある命名規則のうち、適用する命名規則を自動的に切り替える。
【0097】
具体的に、パスワード自動生成の命名規則を、優先順位を定めつつ固定的とするか、セキュリティ設定にあわせ命名規則の自動変更を行うかを選択するためのラジオボタンRB1、RB2が、パスワード自動生成設定画面S6に設けられる。
【0098】
そして、文書データで、セキュリティを高める設定がなされているときに適用される命名規則を設定するための高レベル設定欄L3と、別段、セキュリティを高める設定がないときに適用される命名規則を設定する通常レベル設定欄L4が設けられる。例えば、高レベル設定欄L3と通常レベル設定欄L4のいずれも、プルダウンメニュー形式で、命名規則を設定することができる。
【0099】
そして、表示制御部10は、OKキーK8が押されたときのパスワード自動生成設定画面S6の設定内容を制御部7に伝える。制御部7は、設定内容を記憶部8に記憶させ、パスワードの自動生成を行うときに参照し、適用する命名規則を確定する。
【0100】
(パスワード自動生成と認証制御の流れ)
次に、図11に基づき、本発明の実施形態に係る複合機100でのパスワード自動生成制御の流れの一例を説明する。図11は、本発明の実施形態に係る複合機100でのパスワード自動生成と認証制御の流れの一例を説明する。
【0101】
まず、図11のスタートは、ボックスキー15が押され、印刷等を行う文書データが使用者により選択された時点である。
【0102】
そして、制御部7は、ジョブ実行対象の文書データのパスワードを自動生成するうえで、用いる命名規則を決定する(ステップ♯1)。
【0103】
具体的には、制御部7は、用いる命名規則が固定的に定められているか、文書データのセキュリティに関する設定により命名規則の自動変更を行う設定とされているか、を確認する。用いる命名規則が固定されているとき、制御部7は、固定された命名規則を用いると決定する。但し、文書データ名からパスワード自動生成できない命名規則のとき、制御部7は、優先順位を繰り下げつつ命名規則を定める。又、文書データでのセキュリティを高める設定(ウォータマーク等)に応じて、命名規則の自動変更を行う設定がなされているとき、制御部7は、文書データでのセキュリティを高める設定の有無に応じて命名規則を定める。
【0104】
次に、制御部7は、印刷や送信を行う文書データと、命名規則に基づき、パスワードを自動生成する(ステップ♯2)。そして、制御部7は、表示制御部10に指示して、パスワード入力画面S5を液晶表示部11に表示させる(ステップ♯3)。
【0105】
そして、印刷や送信を行う使用者によって、パスワードの入力がなされるので、操作パネル1(表示制御部10)は、パスワードの入力を受け付ける(ステップ♯4)。具体的に、表示制御部10は、パスワード入力画面S5でOKキーが押されたとき、パスワード入力欄L1に入力されている数字、文字、記号等をパスワードと認識する。
【0106】
そして、操作パネル1(表示制御部10)から制御部7に入力されたパスワードが送信され、制御部7は、入力されたパスワードを認識する(ステップ♯5)。そして、制御部7は、入力されたパスワードと、自動生成したパスワードを比較し、入力されたパスワードが正しいか(一致するか)を確認する(ステップ♯6)。
【0107】
もし、入力されたパスワードが正しければ(ステップ♯6のYes)、制御部7は、文書データに基づくや印刷や送信を、画像形成部5や通信部9等に行わせる(ステップ♯7→エンド)。即ち、本発明の画像形成装置(例えば、複合機100)は、ジョブに用いるデータの入力を行うためのデータ入力部(通信部9や画像読取部2)と、データ入力部から入力されたデータを記憶する記憶部8と、予め定められた命名規則に基づき、記憶部8に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部(制御部7)と、記憶部8に記憶されたデータを選択する入力と、選択したデータのパスワードの入力を受け付ける入力部(操作パネル1)と、パスワード生成処理部(制御部7)が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが、入力部(操作パネル1)に入力されると、選択されたデータに基づいて印刷や送信ジョブを実行するジョブ実行部(画像形成部5や通信部9など)と、を含む。尚、印刷ジョブであれば、給紙部3、搬送路4、画像形成部5、定着部6などがジョブ実行部に該当する。又、送信ジョブであれば、制御部7や通信部9などがジョブ実行部に該当する。
【0108】
又、本発明は、印刷ジョブに用いるデータを送信する情報処理装置(PC200)と、情報処理装置から印刷ジョブに用いるデータを受信するデータ入力部(通信部9や画像読取部2)と、データ入力部から入力されたデータを記憶する記憶部8と、予め定められた命名規則に基づき、記憶部8に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部(制御部7)と、記憶部8に記憶されたデータを選択する入力と、選択したデータのパスワードの入力を受け付ける入力部(操作パネル1)と、パスワード生成処理部が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが、入力部に入力されると、選択されたデータに基づいてジョブを実行するジョブ実行部(画像形成部5や通信部9など)と、を含む画像形成装置(例えば、複合機100)を備える、画像形成システム400と捉えることもできる。
【0109】
一方、入力されたパスワードが正しくなければ(自動生成したパスワードと不一致ならば、(ステップ♯6のNo)、例えば、制御部7は、表示制御部10に指示して、入力されたパスワードが正しくない旨を液晶表示部11に表示させる(ステップ♯8)。その後、ステップ♯3に戻る。
【0110】
このようにして、本発明によれば、パスワード生成処理部(制御部7)は、予め定められた命名規則に基づき、データ名からパスワードを自動的に生成し、自動的に生成されたパスワードと同じパスワードが、入力部(操作パネル1)に入力されると、印刷などのジョブの実行がなされる。これにより、画像形成装置(例えば、複合機100)にデータを入力した正当な使用者のみが知るデータ名に基づき、予め定められた命名規則により、推定可能なパスワードが自動的に生成される。従って、自動生成されたパスワードが長くても、正当な使用者にとって、正しいパスワードを容易に入力することができ、パスワード自体の堅牢性を高めることができる。又、パスワードの自動生成により、パスワードは、データごとに異なる。従って、機密保持すべきレベルが高いデータを、従来よりも確実に保護し、権限のない者にジョブ実行がされることによる情報漏洩を防ぐことができる。
【0111】
又、命名規則は複数種用意され、パスワード生成処理部(制御部7)は、予め入力部(操作パネル1)で選択された命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成する。これにより、命名規則を任意に変更することができ、事情を知らない第三者にとって、自動生成されたパスワードの推定が難しくなる。従って、権限のない者にジョブ実行がされることによる情報漏洩を防ぐことができる。
【0112】
又、パスワード生成処理部(制御部7)は、データの内容を確認し、データのセキュリティを保護すべき高さのレベルを認定し、保護レベルの高さに合わせ、複数ある命名規則のうち、適用する命名規則を自動的に切り替える。これにより、セキュリティ上保護すべきレベルが高いデータほど、より推定し難い命名規則への切替を行うことができる。又、複数の命名規則に基づき、データ名に基づき、パスワードを自動的に生成することができる。
【0113】
又、パスワードが、長くても、正当な使用者にとって、正しいパスワードを容易に入力することができる。又、パスワードの自動生成により、パスワードは、データごとに異なるので、機密保持すべきレベルが高いデータを、確実に保護することができる。
【0114】
次に、他の実施形態を説明する。上記の実施形態では、制御部7がパスワードを自動生成し、入力されたパスワードが正しいか判断する例を説明した。しかし、例えば、表示制御部10がパスワードを自動生成し、入力されたパスワードが正しいか判断してもよい。このように、制御部7以外の部分をパスワード生成処理部として用いることができる。
【0115】
又、用いる命名規則や、文書データのセキュリティに関する設定に応じ、命名規則を自動変更する設定について説明したが、これらの設定は、使用者ごとになされ、記憶部8がなされた設定を使用者ごとに記憶するようにしてもよい。
【0116】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、操作パネル等の表示部と入力部を有する画像形成装置や、画像形成装置と情報処理装置を含む画像形成システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
100 複合機(画像形成装置) 1 操作パネル(入力部)
11 液晶表示部(表示部) 2 画像読取部(データ入力部)
3 給紙部(ジョブ実行部) 4 搬送路(ジョブ実行部)
5 画像形成部(ジョブ実行部) 6 定着部(ジョブ実行部)
7 制御部(パスワード生成処理部)
8 記憶部 9 通信部(データ入力部、ジョブ実行部)
200 PC(情報処理装置) 400 画像形成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョブに用いるデータの入力を行うためのデータ入力部と、
前記データ入力部から入力されたデータを記憶する記憶部と、
予め定められた命名規則に基づき、前記記憶部に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部と、
前記記憶部に記憶されたデータを選択する入力と、選択したデータのパスワードの入力を受け付ける入力部と、
前記パスワード生成処理部が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが、前記入力部に入力されると、選択されたデータに基づいてジョブを実行するジョブ実行部と、を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記命名規則は複数種用意され、
前記入力部は、複数ある前記命名規則のうち、適用する前記命名規則を予め選択する入力を受け付け、
前記パスワード生成処理部は、予め前記入力部で選択された前記命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記パスワード生成処理部は、データの内容を確認し、データのセキュリティを保護すべきレベルの高さを認定し、保護レベルの高さに合わせ、複数ある前記命名規則のうち、適用する前記命名規則を自動的に切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記パスワード生成処理部は、データ名の各文字を画数に変換した数字の羅列を生成する前記命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記パスワード生成処理部は、データ名に含まれる数を整数倍して数字の羅列を生成する前記命名規則に基づき、パスワードを自動的に生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶部に記憶されたデータを表示する表示部を有し、
前記命名規則の1つとして、データ名をパスワードとする前記命名規則があり、
データ名をパスワードとする前記命名規則により、前記パスワード生成処理部が、パスワードを自動的に生成するとき、前記表示部は、前記記憶部に記憶されたデータのデータ名を表示しないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
印刷ジョブに用いるデータを送信する情報処理装置と、
前記情報処理装置から印刷ジョブに用いるデータを受信するデータ入力部と、前記データ入力部から入力されたデータを記憶する記憶部と、予め定められた命名規則に基づき、前記記憶部に記憶されたデータのデータ名からパスワードを自動的に生成するパスワード生成処理部と、前記記憶部に記憶されたデータを選択する入力と、選択したデータのパスワードの入力を受け付ける入力部と、前記パスワード生成処理部が自動的に生成したパスワードと同じパスワードが、前記入力部に入力されると、選択されたデータに基づいてジョブを実行するジョブ実行部と、を含む画像形成装置を備えることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−126042(P2012−126042A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280369(P2010−280369)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】