説明

画像形成装置

【課題】階調補正用の補正パラメータの更新時の手間等を削減する。
【解決手段】プロファイル作成部220は、画像入力部によって読み込まれた画質チェック用画像から、濃度補正プロファイルを作成する。プロファイル解析部230は、プロファイル作成部220によって作成された濃度補正プロファイルを解析して、更新が必要なTRCデータを判別する。例えば、新たに作成された濃度補正プロファイルと、前回作成された濃度補正プロファイルを比較し、両者が異なる画像領域に対応するTRCデータを更新が必要なTRCデータと判別する。更新が必要なTRCデータが特定されると、プロファイル解析部230は、更新が必要と特定されたTRCデータの識別情報を、TRC更新部240に渡す。TRC更新部240は、プロファイル解析部230から渡されるTRCデータの識別情報に基づいて、TRC部210に格納されているTRCデータのうち、更新が必要なものについてのみ更新を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に、画像形成装置における画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置においては、画質を調整するために、画像信号に対して各種画像処理が行われている。このような画像処理のひとつに、TRC(Tone Reproduction Curve)に基づく階調補正処理がある。この階調補正処理は、例えば、入力画像信号(色信号)に対応するアドレスに、補正パラメータ(階調補正結果)を記憶させたルックアップテーブル(LUT)を利用して行われる。
【0003】
また、このような階調補正用のLUTを複数備えた画像形成装置が存在する。例えば、画像を複数の領域に分割し、各分割領域毎に、異なるLUTを割り当てることで、画像内の位置によって、階調補正特性を変化させることができるものが存在する。
【0004】
このような階調補正処理を行っている画像形成装置においては、感光体その他の部品の交換が行われると、各種特性が変わるので、部品交換後に、補正パラメータを改めて計算して、LUTに設定し直すことが行われている。そして、従来、上述したように複数のLUTを有する画像形成装置においては、全てのLUTを作り直していたため、補正パラメータの再計算処理に手間がかかっていた。また、当該再計算処理に必要な作業用のメモリ領域についても、多くの領域が必要であった。
【0005】
なお、特開2003−78761号公報には、複数の濃度むら補正用テーブルを備えた濃度むら補正(ヘッドシェーディング)回路が開示されており、更に、上記濃度むら補正用テーブルの作成時に、テストパターンの濃度異常を検出すると、印字不良であると判断して、補正値の計算を中止すると共に、印字不良のパターン(出力の副走査方向に連続しているか否か)に応じて、部品の点検・交換をユーザに行わせるメッセージを表示したり、テストパターンの再出力をユーザに行わせるメッセージを表示したりする構成が記載されている。
【特許文献1】特開2003−78761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、階調補正用の補正パラメータの更新時の手間等を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、画像信号の階調補正を行う画像処理部と、当該画像処理部から出力される画像記録信号に基づいて画像の出力を行う画像出力部とを備えた画像形成装置であって、前記画像処理部は、入力される画像信号に応じて、階調補正された画像信号を出力する階調補正処理部と、入力される画質チェック用画像の画像信号に基づいて、当該画像信号の濃度補正プロファイルを作成するプロファイル作成部と、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、更新が必要な前記階調補正処理部の補正パラメータを判別するプロファイル解析部と、更新が必要と判別された補正パラメータの更新処理を行う補正パラメータ更新部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記プロファイル解析部は、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、交換が必要な部品を判別するようにしてもよい。また、前記階調補正処理部は、それぞれ補正パラメータを記憶する複数のルックアップテーブルによって構成されるようにしてもよい。
【0009】
また、以上の場合において、前記画質チェック用画像を読み込むための画像入力部を更に備えるようにしてもよい。更に、交換部品情報を入力するための交換情報入力部と、入力された交換部品情報の履歴を記憶する交換情報記憶部とを備えるようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、画像信号の階調補正を行う画像処理装置であって、入力される画像信号に応じて、階調補正された画像信号を出力する階調補正処理部と、入力される画質チェック用画像の画像信号に基づいて、当該画像信号の濃度補正プロファイルを作成するプロファイル作成部と、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、更新が必要な前記階調補正処理部の補正パラメータを判別するプロファイル解析部と、更新が必要と判別された補正パラメータの更新処理を行う補正パラメータ更新部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記プロファイル解析部は、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、交換が必要な部品を判別するようにしてもよい。また、前記階調補正処理部は、それぞれ補正パラメータを記憶する複数のルックアップテーブルによって構成されるようにしてもよい。
【0012】
また、以上の場合において、交換部品情報を入力するための交換情報入力部と、入力された交換部品情報の履歴を記憶する交換情報記憶部とを更に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、階調補正用の補正パラメータの更新処理の手間を最小限にすることができ、更新処理に必要となる作業用のメモリ領域についても少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明が適用される画像形成装置の構成を示す図である。同図に示すように、本発明が適用される画像形成装置100は、画像入力部110と、画像処理部120と、画像出力部130とを備える。
【0016】
画像入力部110は、各種画像を画像形成装置100に入力するためのもので、例えば、原稿画像情報を光学的に読み取って、デジタル画像データに変換するスキャナーユニットによって構成される。画像入力部110は、カラー画像を取り込んで、特定の色空間(例えば、RGBや、CIE−L*a*b*)の画像信号と、その画像信号(画素)の画像内での出力位置を示す出力位置信号とを出力する。
【0017】
画像処理部120は、画像入力部110から入力される画像信号に対して、様々な画像処理を行うものである。例えば、画像処理部120は、画像入力部110から入力される画像信号(例えば、RGBデータ)に対して、色変換処理(例えば、YMCKデータへの変換)を行った後に、各色成分毎に階調補正処理を行い、画像出力部130で出力するための画像記録信号として出力する。画像処理部120の詳細については後述する。
【0018】
画像出力部130は、画像処理部120から入力される画像記録信号に基づいて生成される画像を、転写紙に出力するものであり、例えば、電子写真方式のプリンタユニットによって構成される。
【0019】
図2は、本発明による画像処理部120の機能構成を示す図である。なお、同図では、本発明に関連する構成要素についてのみ示している。
【0020】
同図に示すように、画像処理部120は、TRC部(階調補正処理部)210と、プロファイル作成部220と、プロファイル解析部230と、TRC更新部240とを備える。更に、画像処理部120は、必要に応じて、交換情報入力部250と、交換情報記憶部260とを備える。
【0021】
TRC部210は、色変換処理部(不図示)によって色変換された画像信号(例えば、YMCKデータ)に対して階調補正処理を行うものであり、入力される画像信号に応じて、該当する補正パラメータ(階調補正された画像信号)を出力するものである。TRC部210は、各色成分(例えば、YMCK)毎に設けられ、入力色信号に対応するアドレスに、該当する補正パラメータ(以下、TRCデータという)を記憶するルックアップテーブル(LUT)によって構成される。また、本実施形態においては、画像を複数の領域に分割し、各分割領域毎にTRCデータ(LUT)を用意している。すなわち、TRC部210には、複数(種類)のTRCデータが格納されている。
【0022】
図3は、TRC部210の構成を模式的に示した図である。同図に示すように、TRC部210は、複数(種類)のTRCデータ1〜nによって構成されている。各TRCデータ1〜nは、例えば、画像を一次元方向(同図における縦方向)にn分割した場合における短冊状の各画像領域に対応する。
【0023】
プロファイル作成部220は、画像入力部110によって読み込まれた画質チェック用画像(テストチャート画像)の画像信号に基づいて、濃度補正プロファイルを作成する。
【0024】
図4は、画質チェック用画像と濃度補正プロファイルの関係を示す図であり、同図(a)は、画質チェック用画像を示しており、同図(b)は、画質チェック用画像の出力結果を示しており、同図(c)は、同図(b)に示した出力結果に対応して作成された濃度補正プロファイルを示している。
【0025】
同図(a)に示すように、画質チェック用画像は、濃度が全面で均一な画像である。しかしながら、同図(b)に示すように、その出力結果においては、スジやムラが発生しており、均一な画像となっていない。同図(c)に示す濃度補正プロファイルは、同図(b)に示すようなスジやムラをなくして、同図(a)に示すような本来の均一な画像を出力するために必要な各位置における補正量を示すものである。
【0026】
プロファイル解析部230は、プロファイル作成部220によって作成された濃度補正プロファイルを解析して、更新が必要なTRCデータを判別する。例えば、新たに作成された濃度補正プロファイルと、前回作成された濃度補正プロファイルとを比較し、両者が異なる画像領域に対応するTRCデータを更新が必要なTRCデータと判別する。更新が必要なTRCデータが特定されると、プロファイル解析部230は、更新が必要と判別されたTRCデータの識別情報を、TRC更新部240に渡す。
【0027】
また、プロファイル解析部230は、濃度補正プロファイルの形状から、交換が必要な部品(感光体、クリーナー、コロトロン等)を判別できる場合は、濃度補正プロファイルに基づいて、交換が必要な部品を判別し、判別された部品を、利用者等に通知する。より具体的には、プロファイル解析部230は、濃度補正プロファイルを解析して、スジ、ムラ等のディフェクトの発生位置や周期等を確認し、確認された発生位置や周期等から、該当する部品を判別し、判別した部品の情報を、画像形成装置100の表示パネル等に表示させる。例えば、図4(c)に示したような濃度補正プロファイルの場合は、補正量のピーク位置等から、交換すべき部品は、感光体であると判別する。
【0028】
TRC更新部240は、プロファイル解析部230から渡されるTRCデータの識別情報に基づいて、TRC部210に格納されているTRCデータのうち、更新が必要なものについてのみ更新を行う。TRC更新部240は、必要に応じて、更新前のTRCデータを参照して、新しいTRCデータを算出し、算出されたTRCデータをTRC部210に設定する。
【0029】
図5は、更新処理後のTRC部210の構成を模式的に示した図である。同図に示した例では、TRC部210を構成する複数(種類)のTRCデータ1〜nのうち、TRCデータ4及び5のみが修正されたTRCデータに更新され、他のTRCデータ1〜3,6〜nについては更新されない。
【0030】
交換情報入力部250は、利用者等が画像形成装置100の部品(感光体等)を交換した場合に、実際に交換した部品の情報(交換部品情報)を入力するためのインターフェイスである。交換情報記憶部260は、交換情報入力部250によって入力された交換部品情報を順次記憶するものであって、交換した部品の履歴を記憶する。交換情報記憶部260に記憶された交換履歴を確認することにより、メーカは部品ごとの性能や需要量などを把握することができる。
【0031】
また、交換情報記憶部260が存在する場合、プロファイル解析部230は、プロファイル作成部220によって作成された濃度補正プロファイルに加えて、交換情報記憶部260に記憶された交換履歴を利用して、交換が必要な部品を判別することもできる。
【0032】
次に、以上のような構成を有する画像処理部120におけるTRCデータ更新処理について説明する。
【0033】
図6は、画像処理部120におけるTRCデータ更新処理の流れを示す図である。
【0034】
同図に示すように、まず、画像出力部130によって所定のテストチャート(例えば、図4(a)に示したような濃度が全面で均一な画像データ)を出力する(S601)。
【0035】
次に、画像出力部130によって出力されたテストチャートの画像を、画像入力部110によって読み込む(S602)。
【0036】
次に、プロファイル作成部220によって、読み込んだテストチャートの画像を解析して、濃度補正プロファイルを作成する(S603)。
【0037】
次に、プロファイル解析部230によって、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、更新すべきTRCデータを特定する(S604)。
【0038】
次に、TRC更新部240によって、更新すべきTRCデータとして特定されたTRCデータについてのみ再計算を行い、再計算されたTRCデータをTRC210部に設定する(S605)。
【0039】
以上説明したように、本実施形態においては、TRC部210を構成する複数(種類)のTRCデータのうち、更新が必要なTRCデータについてのみ更新処理を行うので、TRCデータの更新処理の手間を最小限にすることができ、また、TRCデータの更新処理に必要となる作業用のメモリ領域についても小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明による画像処理部120の機能構成を示す図である。
【図3】TRC部210の構成を模式的に示した図である。
【図4】画質チェック用画像と濃度補正プロファイルの関係を示す図である。
【図5】更新処理後のTRC部210の構成を模式的に示した図である。
【図6】画像処理部120におけるTRCデータ更新処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
100 画像形成装置
110 画像入力部
120 画像処理部
130 画像出力部
210 TRC部
220 プロファイル作成部
230 プロファイル解析部
240 TRC更新部
250 交換情報入力部
260 交換情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号の階調補正を行う画像処理部と、当該画像処理部から出力される画像記録信号に基づいて画像の出力を行う画像出力部とを備えた画像形成装置であって、
前記画像処理部は、
入力される画像信号に応じて、階調補正された画像信号を出力する階調補正処理部と、
入力される画質チェック用画像の画像信号に基づいて、当該画像信号の濃度補正プロファイルを作成するプロファイル作成部と、
作成された濃度補正プロファイルに基づいて、更新が必要な前記階調補正処理部の補正パラメータを判別するプロファイル解析部と、
更新が必要と判別された補正パラメータの更新処理を行う補正パラメータ更新部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記プロファイル解析部は、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、交換が必要な部品を判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記階調補正処理部は、それぞれ補正パラメータを記憶する複数のルックアップテーブルによって構成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画質チェック用画像を読み込むための画像入力部を更に備えた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
交換部品情報を入力するための交換情報入力部と、入力された交換部品情報の履歴を記憶する交換情報記憶部とを更に備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像信号の階調補正を行う画像処理装置であって、
入力される画像信号に応じて、階調補正された画像信号を出力する階調補正処理部と、
入力される画質チェック用画像の画像信号に基づいて、当該画像信号の濃度補正プロファイルを作成するプロファイル作成部と、
作成された濃度補正プロファイルに基づいて、更新が必要な前記階調補正処理部の補正パラメータを判別するプロファイル解析部と、
更新が必要と判別された補正パラメータの更新処理を行う補正パラメータ更新部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記プロファイル解析部は、作成された濃度補正プロファイルに基づいて、交換が必要な部品を判別する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記階調補正処理部は、それぞれ補正パラメータを記憶する複数のルックアップテーブルによって構成される
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
交換部品情報を入力するための交換情報入力部と、入力された交換部品情報の履歴を記憶する交換情報記憶部とを更に備えた
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−30301(P2007−30301A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215739(P2005−215739)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】