説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置において、少なくとも一つの現像器については、現像モータの温度上昇をコスト上昇や現像器の大型化を招くことなく、簡単、安価に抑制する。
【解決手段】画像形成装置が機内環境温度センサと現像モータ温度上昇抑制制御部とを含んでおり、制御部は、画像形成装置動作状態と温度センサにより検出される機内環境温度の変化量とに基づいて、現像モータの温度上昇値を推定し、推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値(70〔k〕)以上であると判断すると現像モータ温度上昇抑制制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等で画像形成を行える、複写機、プリンタ、ファクシミリ機、これらのうち2以上を組み合わせた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式等の画像形成装置は、像担持体の表面に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像してトナー像を形成し、該トナー像を被転写体に転写することができる。
【0003】
ここで、「被転写体」とは、モノクロ画像形成装置では、記録紙等の記録媒体が一般的であり、カラー画像形成装置において像担持体上のトナー像を1次転写する中間転写体を採用している場合は、該中間転写体及び該中間転写体からトナー像が2次転写される記録媒体のいずれもが被転写体であると言える。なお、カラー画像形成装置の中には、像担持体上のトナー像を記録媒体へ直接転写する方式のものもある。
【0004】
いずれにしても、電子写真方式等の画像形成装置において採用される現像器には、通常、像担持体上の静電潜像の現像に用いる現像ローラが含まれており、この現像ローラは現像モータで回転駆動される。
【0005】
従来、このような現像器は、現像剤収容ホッパから供給される現像剤を貯めておき、現像ローラへ供給するバッファ部分を備えていたり、現像剤を攪拌する攪拌部材を備えているのが一般的であったが、今日の小型化、低コスト化の要請に応えるため、現像剤収容ホッパとバッファ部を相互に分割せずに一体化したり、現像剤攪拌部材を省略した現像器も提案されている。
【0006】
ところが、このように現像剤収容ホッパとバッファ部を相互に分割せずに一体化したり、現像剤攪拌部材を省略したような簡素化された現像器では、現像剤が凝集しやすく、現像器駆動にあたり、現像モータの負荷が大きくなる傾向がある。
【0007】
現像モータの負荷が大きくなると、現像モータを大型化してモータ出力を上げたり、駆動電流を増やしてモータ出力を上げればよいのであるが、現像モータを大型化することはモータコストを上昇させるので得策ではなく、現像器の小型化、低コスト化の観点からすると駆動電流を増加させる方が得策である。
【0008】
しかし駆動電流を増加させると、モータ捲線温度が上昇し易くなり、それにより絶縁不良が発生する等してモータの動作不良を招く恐れがあるので、モータ温度上昇を抑制することが求められる。対策として、現像モータ自体に温度センサを設けることが考えられるが、この場合も、それだけコストが上昇してしまう。
【0009】
モータ自体に温度センサを設けることなくモータ温度上昇を抑制する方法としては、例えば、特開2005−289626号公報に、画像形成装置における原稿自動搬送装置(ADF)の駆動モータの温度上昇をモータのオン時間とオフ時間とから推定し、推定モータ温度が閾値以上になるとモータを停止させる方法が記載されている。
【0010】
特開2006−212826号公報には、サーマルプリンタの駆動モータの温度上昇を抑制する方法として、モータのオン時間とオフ時間とからモータ温度を推定して、推定モータ温度が閾値以上になるとモータ動作を停止させ、電源がオフされた場合は、電源オフ時のサーマルヘッド温度からモータ温度を推定し、その温度を基準として動作状況に応じてモータ温度を推定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−289626号公報
【特許文献2】特開2006−212826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特開2005−289626号公報に記載されている方法はADF駆動モータの温度上昇抑制方法であり、特開2006−212826号公報に記載されている方法はサーマルプリンタの駆動モータの温度上昇抑制方法である。
【0013】
そこで本発明は、像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像モータで駆動される現像器で現像してトナー像を形成し、該トナー像を被転写体に転写することができる画像形成装置において、少なくとも一つの現像器については、その現像モータの温度上昇を、今日の画像形成装置の低コスト化、小型化の要請からすると負担が大きすぎるコスト上昇や現像器の大型化を招くことなく、簡単、安価に抑制できる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記課題を解決するため研究を重ね次のことに着目した。
電子写真方式、静電記録方式等の画像形成装置のように、像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像モータで駆動される現像器で現像してトナー像を形成し、該トナー像を被転写体に転写することができる画像形成装置においては、画像形成のために現像モータにて現像器を駆動し、それに伴って現像モータ温度が上昇するとき、画像形成のために他の種々の部分も駆動され、画像形成装置内には、現像器自体からの発熱だけでなく、記録媒体搬送機構運転に伴う発熱、記録媒体に転写されたトナー像をそこに加熱加圧下に定着させるための定着装置からの発熱等があり、画像形成装置内温度(以下、これを「機内温度」と言うことがある。)が上昇する。すなわち、現像モータ温度上昇と機内温度上昇には相関関係がある。
【0015】
そこで本発明は前記課題を解決するため次の画像形成装置を提供する。すなわち、
像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像モータで駆動される現像器で現像してトナー像を形成し、該トナー像を被転写体に転写することができる画像形成装置であり、 画像形成装置内環境温度を検出する機内環境温度センサと、現像モータ温度上昇抑制制御部とを含んでおり、
現像モータ温度上昇抑制制御部は、少なくとも一つの現像器について、画像形成装置動作状態と前記機内環境温度センサにより検出される温度の変化量とに基づいて、該画像形成装置動作状態における現像モータの温度上昇値を推定し、推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値以上になったと判断すると現像モータ温度上昇抑制制御を行う画像形成装置である。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像形成装置は電子写真方式のものだけでなく、静電記録方式等の画像形成装置であってもよい。また、モノクロ画像形成装置であっても、カラー画像形成装置であってもよい。モノクロ画像形成装置の場合、通常、現像器は一つであるから、その現像器について、上記制御部が現像モータ温度上昇抑制制御を行うようにすればよい。
【0017】
カラー画像形成装置の場合、それは所謂4サイクル型カラー画像形成装置のようなサイクル型カラー画像形成装置であっても、所謂タンデム型カラー画像形成装置であっても、さらに他のタイプのカラー画像形成装置であってもよい。いずれにしてもカラー画像形成装置では、それぞれが担当色トナーで静電潜像現像を行える複数の現像器を備えており、このように複数の現像器がある場合には、少なくとも一つの現像器について上記制御部が現像モータ温度上昇抑制制御を行うようにすればよい。
【0018】
本発明に係る画像形成装置によると、現像モータ温度上昇抑制制御部が、少なくとも一つの現像器については、画像形成装置動作状態と機内環境温度センサにより検出される温度の変化量とに基づいて、該画像形成装置動作状態における現像モータの温度上昇値を推定し、推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値以上になったと判断すると現像モータ温度上昇抑制制御を行う。
【0019】
従って、制御対象現像モータが、例えば現像剤収容ホッパとバッファ部を相互に分割せずに一体化したり、現像剤攪拌部材を省略したような簡素化された現像器のためのものであり、現像剤が凝集しやすく、現像器駆動にあたり、現像モータの負荷が大きくなりやすく、これに対処するために駆動電流を増加させなければならない場合でも、簡単、安価に該現像モータ温度の上昇を抑制して安全に使用できる。
【0020】
ここで「画像形成装置動作状態と機内環境温度センサにより検出される温度の変化量とに基づいて、該画像形成装置動作状態における現像モータの温度上昇値を推定する」場合の「画像形成装置動作状態」としては、例えば画像形成装置の動作を予め幾つかに分類して複数定めておくことができる。
【0021】
例えば、(1) 予め定めた時間連続的に画像形成を行う状態、(2) 該予め定めた時間に満たない断続的な画像形成の状態の2種類を定めておくことができる。そして、現像モータ温度上昇抑制制御においては、そのときの画像形成装置動作状態と機内環境温度センサにより検出される温度の変化量とに基づいて、該画像形成装置動作状態における現像モータの温度上昇値を推定すればよい。
【0022】
前記現像モータ温度上昇抑制制御部は、前記機内環境温度センサにより検出される温度の変化量として、例えば、前記画像形成装置動作状態において該機内環境温度センサにより検出される温度の予め定めた単位時間当たりの変化量を採用することができる。
【0023】
この場合、前記機内環境温度センサにより検出される温度の変化量が予め定めた変化量以下になると前記推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値以上になったと判断する例を挙げることができる。
【0024】
本発明に係る画像形成装置は、前記像担持体上に形成されるトナー像を1次被転写体である中間転写体に1次転写し、該中間転写体から2次被転写体である記録媒体に2次転写部材で2次転写できるものでもよい。
【0025】
中間転写体上トナー像の記録媒体への2次転写は、通常、2次転写部材に2次転写電圧を印加して2次転写電界を形成することで行われるが、そのとき、2次転写部材の抵抗値が変動すると、転写電界も変動し、トナー像2次転写に影響がでる。そして、2次転写部材はその周囲環境温度に影響される。
【0026】
そこで、2次転写部材の周囲環境温度に応じて2次転写電圧を調整できるようにする等のために、前記機内環境温度センサを該2次転写部材近傍位置に配置して、2次転写部材の周囲環境温度も測定できる状態としてもよい。
【0027】
逆に、前記2次転写部材の温度を測定するための温度センサが設けられているのであれば、該温度センサに前記機内環境温度センサを兼ねさせてもよい。
【0028】
前記現像モータ温度上昇抑制制御部が行う前記現像モータ温度上昇抑制制御は様々に行えるが、1例として、画像生産性を予め定めた割合で低下させる画像形成装置制御を挙げることができる。
【0029】
この場合、前記画像生産性を予め定めた割合で低下させる制御として、画像形成装置に予め定めた時間間隔で画像形成と画像形成禁止とを交互に実行させる制御を例示できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によると、像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像モータで駆動される現像器で現像してトナー像を形成し、該トナー像を被転写体に転写することができる画像形成装置において、少なくとも一つの現像器については、その現像モータの温度上昇を、今日の画像形成装置の低コスト化、小型化の要請からすると負担が大きすぎるコスト上昇や現像器の大型化を招くことなく、簡単、安価に抑制できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る画像形成装置の1例の構成の概略を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置における現像装置の駆動機構を示す図である。
【図3】図1の画像形成装置の制御回路の概略を示すブロック図である。
【図4】画像形成装置動作状態に応じた現像モータ温度上昇値及び画像形成装置動作状態に応じた機内環境温度上昇の変化率の例を示す図である。
【図5】実際の現像モータ温度上昇抑制制御における機内環境温度の求め方の例を示す図である。
【図6】図3の制御回路における制御部の現像モータ温度上昇抑制制御動作を示すフローチャートである。
【図7】現像モータ温度上昇抑制制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る画像形成装置の1例の構成の概略を示している。
図1に示す画像形成装置10は所謂4サイクル型のカラー画像形成装置である。以下の説明では記録媒体は記録紙として説明する。
【0033】
画像形成装置10は、像担持体としてドラム型の感光体1を備えており、その周囲に帯電器2、現像装置4、中間転写体6及びクリーニング装置5がこの順序で配置されている。帯電器2と現像装置4の間から感光体1へ画像露光を行なう画像露光装置3が設けられており、その下方に記録紙供給部9が設けられている。中間転写体6はここでは無端ベルト形態の中間転写ベルトである。
【0034】
感光体1は感光体駆動モータ(図示省略)により図中時計方向に回転駆動される。帯電器2には出力可変の帯電用電源(図示省略)から所定のタイミングで感光体帯電電圧が印加される。
【0035】
現像装置4は現像器ラック40にカートリッジKCの形態のブラック現像器4K、カートリッジCCの形態のシアン現像器4C、カートリッジMCの形態のマゼンタ現像器4M及びカートリッジYCの形態のイエロー現像器4Yを搭載したものである。現像器ラック40は、図2に示すように、2相励磁のステッピングモータ40mによりギア列g4〜g7を介して図中反時計方向まわり(CCW)に回転駆動可能である。現像器は90度の等中心角度間隔で、ラック回転方向に現像器4K、4C、4M、4Yの順序でラック40に搭載されている。
【0036】
各現像器は感光体1上の静電潜像を現像する現像ローラ41を備えている。各現像器は現像剤を貯えておく部分と現像ローラ41へ供給する現像剤を収容するバッファ部を一体化するとともに現像剤攪拌部材を省略した簡略化された構造のものである。
【0037】
図1に示す例では、イエロー現像器4Yが感光体上静電潜像を現像する現像位置に配置されているが、各現像器は現像位置に配置されると2相励磁のステッピングモータである現像モータ4mによりギア列g1〜g3を介して図中反時計方向に回転駆動可能となる。該ギア列のうちギアg1は現像モータ4mの回転軸に、ギアg3は現像ローラ41等の回転駆動のために現像器に搭載されている。
【0038】
現像器を次の現像器へ入れ換えたり、初期位置へ戻したりするために現像器ラック40を回転させるときには、それに同期させて現像モータ4mを回転させ、現像器ドッキングギァg2、g3の破損を防止し、両者を正常にかみ合わせる。
【0039】
各現像器はラック40を回動させることで現像位置に配置されると既述のとおり現像モータ4mにて回転駆動可能な状態となり、現像ローラ41は感光体1表面に臨み、出力可変の現像バイアス電源(図示省略)から現像バイアス印加が可能となる。
各現像器における現像剤は、本例ではトナーを主体とする1成分現像剤であり、各現像器は感光体1上の静電潜像を反転現像することができる。
【0040】
中間転写ベルト6は駆動ローラ61、これに対向する従動対向ローラ62、感光体1に対向配置された1次転写ローラ63、1次転写ローラ63と共同して中間転写ベルト6を感光体1に当接させるローラ64からなるローラ群に巻き掛けられている。
【0041】
1次転写ローラ63には図示省略の1次転写電源から1次転写電圧を印加できる。駆動ローラ61を図示省略の転写ベルト駆動モータにより図中反時計方向まわりに回転駆動することで中間転写ベルト6を反時計方向回りに回転させることができる。
【0042】
中間転写ベルト6の駆動ローラ61に巻き掛けられた部分に対して2次転写部材7が配置されている。2次転写部材7は本例では2次転写ローラである。2次転写ローラ7は所定のタイミングで中間転写ベルト6に対し接離される。2次転写ローラ7には出力可変の2次転写電源PW(図3参照)から2次転写電圧を印加できる。
【0043】
中間転写ベルト6の対向ローラ62に巻き掛けられた部分に対して2次転写残トナー等を除去清掃するクリーニング装置65が配置されている。このクリーニング装置65には、中間転写ベルト6に当接されるクリーニングブレードBLが設けられている。
【0044】
クリーニング装置65には、中間転写ベルト6に対してクリーニングブレードBLを当接(圧接)させる状態と離隔させる状態とを切換える、ブレード駆動部BLDが設けられている。このブレード駆動部BLDは次のために設けられている。
【0045】
すなわち、二つ以上の現像器を用いてカラー画像形成するとき、1色目のトナー像を中間転写ベルト6上に形成した後、次の2色目のトナー像、或いはさらに3色目のトナー像、或いはさらに4色目のトナー像を中間転写ベルト6に形成している間は、中間転写ベルト6上のトナー像を乱さないように中間転写ベルト6からクリーニングブレードBLを離隔させる。そして、目的とする全トナー像が記録紙Sに多重形成された後に、中間転写ベルト6をクリーニングするタイミングでクリーニングブレードBLを中間転写ベルト6に再び圧接させる。
【0046】
2次転写ローラ7の上方には定着装置8が、さらにその下流側には記録紙排出ローラR3及び記録紙排出トレイTが順次設けられている。定着装置8は熱源により加熱される定着ローラ81とこれに対向する加圧ローラ82を含んでいる。
【0047】
2次転写ローラ7の下方にはタイミングローラ対R2及び記録紙収容部9からの記録紙Sをタイミングローラ対R2へ案内する案内ローラ対Rlが配置されている。
【0048】
なお、対向ローラ62の近傍であって中間転写ベルト6に対向する位置には、中間転写ベルト6上のトナー量を検出する画像濃度調整用センサ66が設けられている。この画像濃度調整用センサ66は、光学式センサであって、投光部と受光部とを備え、投光部から対象物である中間転写ベルト6に向けて投光した光の反射光を受光部で検出して、受光部が受光した光量に対応した電圧を出力する。
【0049】
以上ほか、中間転写ローラ7の近くに機内環境温度センサTSが配置されている。
【0050】
以上説明した画像形成装置10は図3に示す制御部Contの指示のもとに動作する。 制御部Contには操作パネルPAが接続されている。ユーザーは、操作パネルPAにおいて画像形成枚数の設定、記録紙のサイズ、モノクロ画像形成モードかカラー画像形成モードかの画像形成モードの設定等を行える。
【0051】
機内環境温度センサTSが検出する機内環境温度情報も制御部Contに入力される。 図示を省略した感光体駆動モータ及び中間転写ベルト駆動モータ、クリーニング装置65のブレード駆動部BLD、現像装置4における現像モータ4m及び現像器ラック駆動モータ40m、出力可変の2次転写電源PW、定着装置8、記録媒体搬送機構等の各部は制御部Contの指示のもとに所定のタイミングで動作するようになっている。
制御部Cont内には現像モータ温度上昇抑制制御部Ccが含まれているが、これについては後ほど詳述する。
【0052】
画像形成装置10によると、制御部Contの指示のもとに4K、4C、4M及び4Yの現像器のうち1又は2以上を用いて記録紙S上にトナー画像を形成することができる。四つの現像器を用いてフルカラー画像を形成する例を以下に説明する。
【0053】
先ず、必要に応じ、モータ40mで現像器ラック40を回動させてイエロー現像器4Yをその現像ローラ41が感光体1に臨む現像位置に配置するとともに感光体1を図中時計方向に回転させ、中間転写ベルト6も回転させる。この段階では2次転写ローラ7は中間転写ベルト6から離隔させておく。
【0054】
回転する感光体1の表面を帯電用電源から帯電用電圧が印加された帯電器2で一様に所定電位に帯電させ、その帯電域に画像露光装置3から折り返し反射ミラー31、32を経てイエロー画像のための画像露光を施してイエロー静電潜像を形成し、該潜像を現像器4Yで現像してイエロートナー像を形成する。このイエロートナー像を1次転写電圧が印加された1次転写ローラ63により中間転写ベルト6上に1次転写する。
【0055】
さらに、イエロートナー像の形成の場合と同様にして、マゼンタ現像器4Mを現像位置に配置して感光体1上にマゼンタトナー像を形成し、これを中間転写ベルト6上に転写し、次いでシアン現像器4Cを現像位置に配置して感光体1上にシアントナー像を形成し、これを中間転写ベルト6上に転写し、次いでブラック現像器4Kを現像位置に配置して感光体1上にブラックトナー像を形成し、これを中間転写ベルト6上に転写する。各色トナー像の感光体1への形成及び中間転写ベルト6への1次転写はこれらトナー像が重ねて中間転写ベルト6上に転写されるタイミングで行なう。
【0056】
このカラー画像形成において中間転写ベルト6への1次転写が行なわれているときには、制御部Contの指示のもとに、クリーニング装置65のクリーニングブレードBLは、駆動部BLDにより、中間転写ベルト6から離隔されている。
【0057】
一方、記録紙Sを記録紙供給部9から供給ローラ91により引き出してタイミングローラ対R2へ向け供給し、記録紙先端がタイミングローラ対R2の出口側にある図示省略のタイミングセンサに検出されると、タイミングローラ対R2を停止させ、記録紙Sをそこで待機させておく。
【0058】
そして、中間転写ベルト6上のトナー像が中間転写ベルト6の回転により2次転写ローラ7へ到達するに先立って該ローラ71を中間転写ベルト6へ接触させ、ベルト6上のトナー像が2次転写領域に到達するタイミングで記録紙Sもタンミングローラ対R2で2次転写領域へ送り込む。
【0059】
かくして記録紙Sに多重トナー像が2次転写される。多重トナー像が転写された記録紙Sは定着装置8でそのトナー像が定着され、記録紙排出ローラR3にて排出トレイTに排出される。かくしてフルカラー画像が形成された記録紙Sを得ることができる。
【0060】
感光体1上の1次転写残トナー等はクリーニング装置5により除去清掃され、中間転写ベルト6上の2次転写残トナー等はクリーニング装置65により除去清掃される。このとき、クリーニング装置65のクリーニングブレードBLは、ブレード駆動部BLDにより、中間転写ベルト6に圧接される。
【0061】
制御部Contに含まれる現像モータ温度上昇抑制制御部Ccは、画像形成装置動作状態と機内環境温度センサTSにより検出される温度の変化量とに基づいて、該画像形成装置動作状態における現像モータ4mの温度上昇値を推定し、推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値以上になったと判断すると現像モータ温度上昇抑制制御を行う。
【0062】
ここでは、該画像形成装置動作状態として、
(1) 4分以上の連続プリント及び
(2) 4分未満の断続的なプリント
の2種類の動作状態を設定している。
【0063】
現像モータ温度上昇抑制制御部Ccは、機内環境温度センサTSにより検出される温度の変化量として、現状の画像形成装置動作状態においてセンサTSにより検出される温度の予め定めた単位時間当たりの変化量を採用する。
そして、その単位時間当たりの変化量が予め定めた閾値変化量以下になると推定現像モータ温度上昇値が予め定めた閾値温度上昇値以上になったと判断して、現像モータ温度上昇抑制制御の動作をする。
【0064】
ここでは、「センサTSにより検出される温度の単位時間当たりの変化量が予め定めた閾値変化量以下になると推定現像モータ温度上昇値が予め定めた閾値温度上昇値以上になったと判断する」ときの該閾値変化量として、
(1) 画像形成装置動作状態が4分以上の連続プリントの場合に対して
0.08〔K/分〕を、
(2) 画像形成装置動作状態が4分未満の断続的なプリントの場合に対して
0.03〔K/分〕を、それぞれ設定してある。
【0065】
このように単位時間あたりの閾値変化量(温度上昇変化率)を設定したのは次の理由による。
図1に示すタイプの画像形成装置を用いて、画像形成装置動作状態が「4分以上の連続プリント」のとき、「4分未満の断続的なプリント」のときのそれぞれについて現像モータの温度上昇値(温度上昇分)を測定する一方、機内環境温度センサにより機内環境温度を測定するとともに検出される機内環境温度の上昇の単位時間あたりの変化量(機内環境温度上昇の変化率)を算出したところ、概ね図4に示す結果となった。
【0066】
そこで、現像モータ温度上昇値の上限を80〔K〕として10〔K〕分の安全をとって、許容上限閾値を70〔K〕とし、各画像形成装置動作状態での現像モータ温度上昇値の変化を示すラインにおいて、閾値70〔K〕以上をもたらす機内環境温度上昇変化率を求めたところ、「4分以上の連続プリント動作状態」では概ね0.08〔K/分〕が、「4分未満の断続的プリント動作状態」では概ね0.03〔K/分〕が得られた。よって、それらの変化率を各動作状態での単位時間あたりの閾値変化量として採用した。
【0067】
実際に機内環境温度センサTSにより機内環境温度を検出する際には、該センサの分解能がそれほど良くないこともあり得ることを考慮して、制御部Ccでは、図5に示すように、機内環境温度を200〔ms(ミリ秒)〕間隔でサンプリングして5回の平均値を算出し、その平均値をさらに1000〔ms〕間隔でサンプリングしてその5回の平均値を算出することで得られる値から、単位時間あたりの温度変化率を求め、現像モータ温度上昇値を推定する。
【0068】
また、機内環境温度は、画像形成装置で画像形成を開始した当初からしばらくの間は冷えた状態から上昇することになり、緩やかにしか温度上昇せず、従って、機内環境温度上昇の変化率から推定すべき現像モータ温度上昇が未だ十分許容範囲にあるときでも、閾値変化率が算出されてしまうことがあり得る。
【0069】
そこで制御部Ccでは、機内環境温度センサTSにより検出される機内環境温度の単位時間あたりの変化量(変化率)を、
(1) 画像形成装置動作状態が4分以上の連続プリントの場合には変化量検出単位時間を4 分に設定し、それにより得られる4分あたりの変化量から1分あたりの変化量を算出し 、それが0.08〔K/分〕以下(4分当たりでみると0.32〔K/4分〕以下)に なったか否かをみて、0.08〔K/分〕以下になると現像モータ温度上昇値が閾値上 昇値(70〔K〕)以上になったと判断し、
(2) 画像形成装置動作状態が4分未満の断続的なプリントの場合には変化量検出単位時間 を2分に設定し、それにより得られる2分あたりの変化量から1分あたりの変化量を算 出し、それが0.03〔K/分〕以下(2分当たりでみると0.06〔K/2分〕以下 )になったか否かをみて、0.03〔K/分〕以下になると現像モータ温度上昇値が閾 値上昇値(70〔K〕)以上になったと判断し、
現像モータ温度上昇抑制制御を実行する。
【0070】
現像モータ温度上昇抑制制御は、本例では、60秒プリントしたら60秒間強制的にプリントを中断して待機して画像生産性を低下させる制御である。この現像モータ温度上昇抑制制御により、簡単、安価に、現像モータ温度上昇値を、安全をみた許容範囲内に抑制できる。
【0071】
図6はそのような制御を行う制御部Ccの動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、プログラムがスタートすると、プリントが2分以上連続したか否かを判断し(ステップS1)、2分以上連続すると、先ず、センサTS検出温度の変化量検出単位時間を2分に設定し(ステップS2)、センサTS検出温度の上昇率が0.03〔K/分〕より大きいか否かを判断し(ステップS3)、大きいと(まだ推定現像モータ温度上昇値が閾値上昇値(70K)に達していない状態であると)、プリントが4分以上連続している否かを判断し(ステップS4)、4分以上連続していると、センサTS検出温度の変化量検出単位時間を4分に切り換え設定し(ステップS5)、次いでセンサTS検出温度の上昇率が0.08〔K/分〕より大きいか否かを判断し(ステップS6)、大きいと(まだ推定現像モータ温度上昇値が閾値上昇値(70K)に達していない状態であると)、プリントジョブが終了か否かを判断し(ステップS7)、終了していないと、ステップS1へ戻る。
【0072】
ステップS3で、センサTS検出温度の上昇率が0.03〔K/分〕以下であると、推定現像モータ温度上昇値が閾値上昇値(70K)以上になったと判断し、ステップS8で現像モータ温度上昇抑制制御を実行する。
【0073】
ステップS6で、センサTS検出温度の上昇率が0.08〔K/分〕以下であると、推定現像モータ温度上昇値が閾値上昇値(70K)以上になったと判断し、ステップS8で現像モータ温度上昇抑制制御を実行する。
【0074】
図7はこのように現像モータ温度上昇抑制制御を行った場合の二つの例を示している。上側の制御例において現像モータ冷却&プリントと記されている部分が、現像モータ温度上昇抑制制御を行っている部分である。
なお、図7において「待機」とは定着装置8が温調制御下にあり、次のプリントを待ち受けている状態であり、
「スリープ」とは定着装置8がオフである、画像形成装置スリープ状態である。
【0075】
以上説明した画像形成装置10はプリンタであったが、本発明はプリンタ、複写機、ファクシミリ機、これらのうち2以上を組み合わせた複合機等の画像形成装置に適用できる。また、既述のとおり、本発明はモノクロ画像形成装置にも、タンデム型等のカラー画像形成装置にも適用できる。また、本発明は電子写真方式だけでなく、静電記録方式の画像形成装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、電子写真方式等の画像形成装置において、現像モータの温度上昇をコスト上昇や現像器の大型化を招くことなく、簡単、安価に抑制することに利用できる。
【符号の説明】
【0077】
10 画像形成装置
1 感光体
2 帯電器
3 画像露光装置
4 現像装置
40 現像器ラック
40m モータ
g4〜g7 ラック回転駆動用ギア列
4Y イエロー現像器
4M マゼンタ現像器
4C シアン現像器
4K ブラック現像器
41 現像ローラ
4m 現像モータ
g1〜g3 現像器駆動用ギア列
5、65、クリーニング装置
BL クリーニングブレード
BLD ブレード駆動部
6 中間転写ベルト
61 駆動ローラ
62 従動対向ローラ
63 1次転写ローラ
64 ローラ
66 画像濃度調整用センサ
7 2次転写ローラ
8 定着装置
9 記録紙供給部
TS 機内環境温度センサ
Cont 制御部
PW 2次転写電源
PA 操作パネル
Cc 現像モータ温度上昇抑制制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像モータで駆動される現像器で現像してトナー像を形成し、該トナー像を被転写体に転写することができる画像形成装置であり、 画像形成装置内環境温度を検出する機内環境温度センサと、現像モータ温度上昇抑制制御部とを含んでおり、
現像モータ温度上昇抑制制御部は、画像形成装置動作状態と前記機内環境温度センサにより検出される温度の変化量とに基づいて、該画像形成装置動作状態における使用現像モータの温度上昇値を推定し、推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値以上になったと判断すると現像モータ温度上昇抑制制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像モータ温度上昇抑制制御部は、前記機内環境温度センサにより検出される温度の変化量として、前記画像形成装置動作状態において該機内環境温度センサにより検出される温度の予め定めた単位時間当たりの変化量を採用する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像モータ温度上昇抑制制御部は、前記機内環境温度センサにより検出される温度の変化量が予め定めた変化量以下になると前記推定現像モータ温度上昇値が予め定めた温度上昇値以上になったと判断する請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記像担持体上に形成されるトナー像は、1次被転写体である中間転写体に1次転写し、該中間転写体から2次被転写体である記録媒体に2次転写部材で2次転写でき、前記機内環境温度センサは該2次転写部材近傍に配置されている請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記機内環境温度センサは、前記2次転写部材の温度を測定するための温度センサを兼ねている請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像モータ温度上昇抑制制御部が行う前記現像モータ温度上昇抑制制御は、画像生産性を予め定めた割合で低下させる画像形成装置制御である請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像生産性を予め定めた割合で低下させる制御は、画像形成装置に予め定めた時間間隔で画像形成と画像形成禁止とを交互に実行させる制御である請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197812(P2010−197812A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43822(P2009−43822)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】