説明

画像形成装置

【課題】 ベルトの斜行を防止するために、ベルトガイド保持部材等のフランジ部材が軸方向に摺動可能に設けられたベルトユニットを備える画像形成装置において、ベルトユニットの大型化を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】 ベルトカラー21の軸受部21Bのうち軸方向一端側の少なくとも一部を、凹部16E内に嵌り込むように凹部16E内に位置させる。これにより、ベルトユニット13の軸方向寸法を大きくすることなく、軸受部21Bの長さ寸法を大きくすることができるので、ベルトユニット13の大型化を抑制しながら、ベルトカラー21の「こじれ」を防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの斜行(ベルトが軸方向に移動しながら回転する状態)を防止すべく、フランジ部材が軸方向に摺動可能に設けられたベルトユニットを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、一対のローラに架け渡された無端状のベルトの斜行を防止すべく、フランジ状のベルトガイド保持部材をアイドルローラの軸に摺動可能に装着するとともに、ベルトの斜行に伴って摺動変位するベルトガイド保持部材の変位をアイドルローラの傾動に変換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の発明では、ベルトの斜行に伴ってベルトの周縁部がベルトガイド保持部材に接触して、ベルトガイド保持部材が軸方向に摺動変位することを利用して斜行を打ち消す向きにアイドルローラを傾動させる発明であるので、ベルトガイド保持部材が滑らかに摺動可能であることが肝要である。
【0005】
しかし、ベルトガイド保持部材のうちアイドルローラの軸に摺接する軸受部が、ベルトの斜行時にベルトがベルトガイド保持部材に作用させる力の作用線上からずれているので、ベルトガイド保持部材が摺動する際にベルトガイド保持部材にモーメントが作用し、軸受部と軸との「こじれ」が生じる可能性がある。
【0006】
この「こじれ」を防止するためには、軸受部の長さ寸法(軸方向と平行な部位の寸法)を大きくすることが好ましいが、軸受部の長さ寸法を大きくすると、ベルトユニットの軸方向寸法が大きくなってしまい、ベルトユニットの大型化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、ベルトの斜行を防止するために、ベルトガイド保持部材等のフランジ部材が軸方向に摺動可能に設けられたベルトユニットを備える画像形成装置において、ベルトユニットの大型化を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、シートに画像を形成する画像形成装置であって、無端状のベルト(14)と、ベルト(14)が架け渡された第1ローラ(16)及び第2ローラ(15)と、第1ローラ(16)の軸方向一端側に配設され、軸方向と平行な方向に延びる支持軸(16A)に摺動可能に装着され、かつ、ベルト(14)が斜行したときにベルト(14)と共に軸方向に摺動変位するフランジ部材(21)と、フランジ部材(21)を軸方向に変位させる力によって第1ローラ(16)を変位させてベルトの斜行を矯正する矯正機構(20)とを備え、フランジ部材(21)は、支持軸(16A)と摺接する軸受部(21B)、及び軸受部(21B)から軸方向と直交する方向に広がるとともに、ベルト(14)から力を受ける鍔部(21E)を有して構成され、第1ローラ(16)の軸方向一端側には、軸方向他端側に向かって陥没した凹部(16E)が設けられており、さらに、軸受部(21B)のうち軸方向一端側の少なくとも一部は、凹部(16E)内に嵌り込むように凹部(16E)内に位置していることを特徴とする。
【0009】
これにより、本発明では、ベルト(14)、第1ローラ(16)及び第2ローラ(15)等からなるベルトユニット(13)の軸方向寸法を大きくすることなく、軸受部(21B)の長さ寸法を大きくすることができるので、ベルトユニット(13)の大型化を抑制しながら、フランジ部材(21)の「こじれ」を防止することが可能となる。
【0010】
なお、第1ローラ(16)に設けられた凹部(16E)は、第1ローラ(16)の軸方向一端側のみが軸方向他端側に向かって陥没した凹部は勿論のこと、第1ローラ(16)が筒状に構成されている場合も含む意味である。
【0011】
また、支持軸(16A)は、第1ローラ(16)を回転可能に支持するローラ軸の一部に設定されている場合、又はこのローラ軸と別に支持軸を設けた場合のいずれであってもよい。
【0012】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るベルトユニット13の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るベルトユニット13の上面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るベルトユニット13の側面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るベルトカラー21の断面図である。
【図7】図3のB−B断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る矯正機構20の作動説明図である。
【図9】(a)本発明の第2実施形態に係る矯正機構20を示す図であり、(b)は図9(a)のA部拡大図である。
【0014】
【図10】本発明の第3実施形態に係る矯正機構20を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態は、本発明に係る画像形成装置を電子写真方式の画像形成装置に適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより用紙に画像を形成する電子写真方式の画像形成部5が収納されている。
【0016】
画像形成部5はダイレクトタンデム方式の画像形成手段であり、具体的には、画像形成部5は、複数(本実施形態では4個)のプロセスユニット7、転写ローラ8、露光器9及び定着器11等から構成されている。なお、本実施形態では、用紙の搬送方向上流側から順に、ブラック用のプロセスユニット7K、イエロー用のプロセスユニット7Y、マゼンタ用のプロセスユニット7M、及びシアン用のプロセスユニット7Cが用紙の搬送方向に沿って直列に配設されている。
【0017】
また、各プロセスユニット7K〜7Cは、現像剤像が担持される感光ドラム7A、及び感光ドラム7Aを帯電させる帯電器7B等から構成されている。そして、帯電した感光ドラム7Aを露光器9にて露光して感光ドラム7Aの外周面に静電潜像が形成された後、電荷を帯びた現像剤が感光ドラム7Aに供給されると、感光ドラム7Aの外周面に現像剤像が担持(形成)される。
【0018】
また、用紙を搬送する転写ベルト14を挟んで感光ドラム7Aと対向する位置には、感光ドラム7Aに担持された現像剤を用紙に転写させる転写ローラ8が設けられており、各感光ドラム7Aに担持されていた現像剤像は、転写ベルト14により搬送される用紙に転写されて用紙上で直接的に重ね合わせられた後、定着器11にて加熱されて用紙に定着する。
【0019】
2.ベルトユニット
2.1.ベルトユニットの概要
ベルトユニット13は、図2に示すように、転写ベルト14、駆動ローラ15、従動ローラ16、並びに駆動ローラ15及び従動ローラ16をその軸方向両端側で保持するフレーム17等から構成されており、このベルトユニット13は、装置本体(画像形成装置1)に対して着脱可能に組み付けられている。
【0020】
そして、転写ベルト14は、樹脂材料(本実施形態では、熱可塑性エラストマー)からなる無端状のベルトであって、駆動ローラ15と従動ローラ16との間に架け渡されている(図1参照)。なお、以下、転写ベルト14のうち駆動ローラ15と従動ローラ16との間に形成される平面部であって、プロセスユニット7(感光ドラム7A)に面する部位を張架面14A(図1参照)という。
【0021】
駆動ローラ15は、フレーム17に対する位置を不動とした状態でフレーム17に回転可能に組み付けられているとともに、装置本体に設けられた電動モータ(図示せず。)から動力を得て回転することにより転写ベルト14を回転させる。このため、駆動ローラ15が回転して転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16は転写ベルト14の回転と共に従動回転する。
【0022】
従動ローラ16は駆動ローラ15と略平行に配設されており、かつ、従動ローラ16の回転軸16A(図1参照)は、その軸方向(以下、この方向を軸方向D2(図2参照)という。)と直交する方向であって、張架面14Aに発生する張力の方向(本実施形態では、画像形成装置1の前後方向)と平行な方向に変位できるようにフレーム17に組み付けられている。
【0023】
すなわち、一対のフレーム17は、図2に示すように、転写ベルト14を軸方向両側から挟むような位置され、かつ、張架面14Aに発生する張力の方向(以下、張架方向D1という。)と平行な方向に延びている。そして、フレーム17の長手方向端部のうち従動ローラ16側には、図4に示すように、長径方向(長辺方向)が張架方向D1と一致するような矩形状の長穴17Aが設けられている。
【0024】
また、長穴17Aには、回転軸16Aを回転可能に支持する軸受ブロック18が変位可能に組み付けられており、この軸受ブロック18は、長穴17Aの内壁面のうち張架方向D1と平行な一対の内壁面17Bにより、その変位方向が規制されている。このため、軸受ブロック18、つまり従動ローラ16は、張架方向D1と平行な方向のみに変位することができる。
【0025】
そして、軸受ブロック18は、張架方向D1と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fsをコイルバネ19から受けている。このため、本実施形態では、従動ローラ16は、張架面14A(転写ベルト14)に所定の張力を発生させるテンションローラとして機能し、転写ベルト14は、転写ベルト14と駆動ローラ15との接触部で発生する摩擦力により、駆動ローラ15に対して滑ることなく一体的に回転する。
【0026】
ところで、従動ローラ16は、図5に示すように、アルミニウム等の軽金属からなる円筒状のローラ本体16C、及び鋼等の高剛性金属からなる回転軸16A等から構成されており、回転軸16Aはローラ本体16Cの軸方向両端に圧入固定された大径部16Dに一体形成されている。
【0027】
なお、従動ローラ16のうち軸方向一端側(矯正機構20側)は、回転軸16Aに装着したE型止め輪等の止め輪16Bと軸受ブロック18とを摺接させることにより位置決めされ、一方、軸方向他端側は、回転軸16Aの大径部16Dと軸受ブロック18とを摺接させることにより位置決めされている。
【0028】
そして、従動ローラ16のうち軸方向一端側(矯正機構20側)の大径部16Dは、ローラ本体16Cの長手方向端部より軸方向他端側(図5の右側)に配置されており、従動ローラ16の軸方向一端側には、軸方向他端側に向かって陥没した凹部16Eが形成されている。
【0029】
2.2.矯正機構の概要
例えば、コイルバネ19による付勢力(弾性力)が軸方向D2一端側と他端側とで異なる等を原因として、転写ベルト14に発生する張力が軸方向D2において不均一である場合には、転写ベルト14は回転しながら軸方向D2に移動するように斜行する。
【0030】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、転写ベルト14が軸方向D2に移動しようとする力を利用して、転写ベルト14を斜行させようとする力(以下、斜行力という。)を減衰させる矯正機構20を設けている。
【0031】
なお、矯正機構20は、軸方向D2において少なくとも一端側に設けられていれば十分であるので、本実施形態では、従動ローラ16の軸方向一端側のみに矯正機構20を設けている。
【0032】
2.3.矯正機構の構造
本実施形態に係る矯正機構20は、図5に示すように、回転軸16Aの軸端側に組み付けられたベルトカラー21、及びベルトカラー21が設けられた紙面左端側の軸受ブロック18を張架方向D1に変位させるためのテコアーム22等から構成されている。
【0033】
すなわち、ベルトカラー21は、転写ベルト14が軸方向D2に変位したときに、転写ベルト14と共に軸方向D2に変位することが可能な樹脂(本実施形態では、POM)製のフランジ部材である。
【0034】
そして、ベルトカラー21の中心部には、図6に示すように、回転軸16Aが摺動可能に挿入される軸穴21Aが設けられた略円筒状の軸受部21Bが設けられ、一方、軸受部21Bの外周部には、軸受部21Bから軸方向D2と直交する方向に広がって転写ベルト14の端面14B(図2参照)に接触可能な鍔状のフランジ部21Eが設けられている。
【0035】
なお、転写ベルト14の端面14Bとは、転写ベルト14のうち軸方向D2と平行な方向(幅方向)における端部(周縁部)をいう。
また、軸受部21Bは、フランジ部21Eから凹部16E内に向けて突出する内側軸受部21C、及びフランジ部21Eから内側軸受部21Cと反対側(後述するテコアーム22側)に向けて突出する外側軸受部21Dが一体形成されている。
【0036】
そして、軸受部21Bのうち軸方向D2一端側、つまり内側軸受部21Cの少なくとも一部は、図5に示すように、凹部16E内に嵌り込むように凹部16E内に位置している。このため、軸方向D2と直交する方向からベルトカラー21を見ると、内側軸受部21Cの少なくとも一部は、図3に示すように、ローラ本体16Cと重なった状態となる。
【0037】
また、本実施形態に係るベルトカラー21では、軸方向のバランスが取れるように、図6に示すように、内側軸受部21Cのうち軸方向と平行な部位の寸法L1と、外側軸受部21Dのうち軸方向と平行な部位の寸法L2とが等しくなるように軸受部21Bの寸法が設定されている。さらに、凹部16Eの内周直径寸法φ1が、図5に示すように、軸受部21Bの外周直径寸法φ2より大きい寸法に設定され、転写ベルト14と軸受部21Bとが接触することがない構成となっている。
【0038】
因みに、本実施形態では、フランジ部21Eのうち転写ベルト14(端面14B)と接触する部位に相当する箇所を基準として、軸受部21Bを内側軸受部21Cと外側軸受部21Dと区分している。
【0039】
そして、ベルトカラー21は、回転軸16Aに摺接することにより回転しながら回転軸16A上を軸方向D2に摺動変位することができるので、転写ベルト14が軸方向D2に移動して転写ベルト14の端部14Bがフランジ部21Eに接触したときには、図5に示すように、ベルトカラー21は転写ベルト14から軸方向D2の力を受けて転写ベルト14と共に軸方向D2に変位する。
【0040】
また、テコアーム22は、ベルトカラー21を軸方向D2に変位させる力(以下、この力を変位力F1という。)を、軸方向D2と交差する方向の力であって張架面14Aに発生する張力の大きさを変化させるための力(以下、この力を張力調整力F2という。)に変換する軸力変換手段である。
【0041】
なお、張力調整力F2の方向は、本実施形態では、張架方向D1及びコイルバネ19の弾性力の向きと平行な方向であり、変位力F1の向き及び大きさは、通常、斜行力と同一である。
【0042】
すなわち、テコアーム22は、第1アーム部22A及び第2アーム部22Bからなるアーム部材であり、第1アーム部22Aは、ベルトカラー21の外側軸受部21Dの先端部が接触することにより、ベルトカラー21から軸方向D2の力(変位力F1)を受けるものである。
【0043】
また、第2アーム部22Bは、第1アーム部22Aの延び方向と交差する方向に延びて軸受ブロック18を介して従動ローラ16に張力調整力F2を作用させるものであり、この第2アーム部22Bと第1アーム部22Aとは、樹脂(例えば、POM)又は金属にて一体成形されて一体化されている。
【0044】
そして、第1アーム部22Aと第2アーム部22Bとの連結部には、テコアーム22をフレーム17に対して揺動自在に組み付けるための軸穴22Cが設けられ、一方、フレーム17には、軸穴22Cに挿入される揺動軸17Cを装着するための軸受部が設けられている。
【0045】
なお、揺動軸17Cの軸方向は、コイルバネ19による弾性力の向き及び軸方向D2と交差する方向(本実施形態では、張架面14Aと直交する方向と平行な方向)に設定されている。
【0046】
このため、テコアーム22は、変位力F1を揺動軸17C周りのモーメントに変換して張力調整力F2を軸受ブロック18に作用させることとなるので、変位力F1の大きさに対する張力調整力F2の大きさの比は、テコアーム22の揺動中心O1から軸受ブロック18に張力調整力F2を作用させる作用点P2までの距離(以下、第2アーム部22Bの長さという。)L4に対する揺動中心O1から変位力F1が作用する力点P1までの距離(以下、第1アーム部22Aの長さという。)L3の比となる。
【0047】
そこで、本実施形態では、第1アーム部22Aの長さL3を第2アーム部22Bの長さL4より大きくして、第2アーム部22Bの長さL4に対する第1アーム部22Aの長さL3の比(=L3/L4)を大きくすることにより、小さな変位力F1で大きな張力調整力F2が発生するような設定としている。
【0048】
また、第1アーム部22Aのうちベルトカラー21の外側軸受部21D(軸受部21B)と接触する当接部22Dは、変位力F1が作用する力点P1となる。そして、当接部22Dは、A矢視方向(図7参照)から見て、力点P1が従動ローラ16の回転軸16Aと重なり、かつ、図7に示すように、A矢視方向において回転軸16Aを挟んで対称の位置に力点P1が位置するように設定されている。なお、A矢視方向とは、テコアーム22の揺動軸17Cに沿った方向をいう。
【0049】
2.4.矯正機構の作動
転写ベルト14が軸方向D2に移動する際に発生する変位力F1の大きさは、転写ベルト14の移動方向(軸方向D2)一端側における張力の大きさと他端側における張力の大きさとの差が大きくなるほど大きくなり、かつ、変位力F1の向きは、張力が大きい側から張力が小さい側に向かう向きである。
【0050】
このため、例えば、転写ベルト14(張架面14A)に発生する張力のうち、ベルトカラー21が設けられた側の張力(以下、この張力を左側張力T1という。)が、ベルトカラー21が設けられていない側の張力(以下、この張力を右側張力T2という。)より小さい場合には、転写ベルト14は回転しながらベルトカラー21側に移動するので、ベルトカラー21は転写ベルト14と共に軸方向一端側に移動してテコアーム22に変位力F1を作用させる。
【0051】
このため、テコアーム22は、図8の実線で示す状態から二点鎖線に示すよう状態となるように揺動軸17C周りに揺動するので、軸受ブロック18は、テコアーム22から張力調整力F2を受けて駆動ローラ15から離間する向きに変位する。
【0052】
なお、図8では、テコアーム22の揺動量を強調して描いているが、実際の揺動量は目視では確認することができない程度の微量である。このため、軸受ブロック18が変位した場合であっても、従動ローラ16の軸方向は、駆動ローラ15の軸方向に対して略平行な状態を保持し、かつ、転写ベルト14に発生する張力を変化させるのみであるので、張架面14Aと感光ドラム7A等との距離は変化しない。
【0053】
したがって、軸受ブロック18が駆動ローラ15から離間する向きに変位し始めると、左側張力T1が、矯正機構20(テコアーム22)が作動する以前に比べて大きくなるので、変位力F1の大きさが、それ以前に比べて小さくなり、斜行力が減衰されて転写ベルト14の移動が抑制されることにより、転写ベルト14の斜行が矯正される。
【0054】
ところで、上述の作動説明からも明らかなように、本実施形態では、初期時(矯正機構20が作動する前)において転写ベルト14が反カラー側に移動した場合には、矯正機構20が作動しない。
【0055】
そこで、本実施形態では、工場出荷時(設計時)において、右側張力T2が左側張力T1より大きくなるように、コイルバネ19による初期荷重を調整することにより、初期時においては、転写ベルト14がベルトカラー21側に移動するような構成としている。
【0056】
3.本実施形態に係る画像形成装置(特に、ベルトユニット)の特徴
本実施形態に係る矯正機構20は、上述したように、左側張力T1の大きさを大きくしているが、これは換言すれば、矯正機構20は、転写ベルト14に発生する張力のうち、転写ベルト14の移動方向前進側で発生する張力Tfに対する移動方向後退側で発生する張力Tbの比である張力比(Tb/Tf)が、張力を変化させる以前に比べて小さくなるように、転写ベルト14に発生する張力を変化させていることになる。
【0057】
このため、転写ベルト14が軸方向D2に移動し、これに伴って変位力F1がテコアーム22により張力調整力F2に変換された場合において、転写ベルト14の移動方向前進側で発生する張力Tf(左側張力T1)が張力を変化させる以前に比べて大きくなると、張力比がそれ以前に比べて小さくなるので、張力差Tdが小さくなって変位力F1の大きさが小さくなり、転写ベルト14の斜行を抑制して転写ベルト14の回転軌道を安定させることができる。
【0058】
したがって、本実施形態では、従動ローラ16又は駆動ローラ15の回転軸を張架面14Aと直交する方向に変位させることなく、転写ベルト14の斜行を抑制できるので、転写ベルト14の斜行を抑制して転写ベルト14の回転軌道を安定させることができ、転写ベルト14の周縁部14Bが大きく損傷してしまうことを防止できる。
【0059】
また、本実施形態では、軸受部21Bのうち軸方向一端側の少なくとも一部は、図5に示すように、凹部16E内に嵌り込むように凹部16E内に位置しているので、こじれない程度の長さの外側軸受部21Dだけを設ける場合に比べてベルトユニット13の軸方向寸法を大きくすることなく、軸受部21Bの長さ寸法(L1+L2)を大きくすることができ、ベルトユニット13の大型化を抑制しながら、ベルトカラー21の「こじれ」を防止することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係るベルトカラー21は、フランジ部21Eから凹部16E内に向けて突出する内側軸受部21C、及びフランジ部21Eから内側軸受部21Cと反対側に向けて突出する外側軸受部21Dを有して構成されているので、フランジ部21Eは、軸受部21Bの長さ方向一端側と他端側との間に位置することとなり、ベルトカラー21の摺動変位を安定させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、コイルバネ19は、従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの付勢力を従動ローラ16に作用させることにより転写ベルト14に張力を発生させているので、本実施形態では、従動ローラ16は、いわゆるテンションローラの機能も兼ね備えたローラとなる。
【0062】
そして、本実施形態では、テンションローラの機能を兼ね備える従動ローラ16に張力調整力F2を作用させて転写ベルト14で発生する張力を変化させる(調整する)ので、別途、テンションローラを設ける必要がなく、画像形成装置の部品点数を削減しながら画像形成装置の設計自由度を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態では、長穴17Aの内壁面17Bにより、従動ローラ16が付勢力の方向と平行な方向のみに変位するように規制されているので、テコアーム22により変換された張力調整力F2を効率よく利用して転写ベルト14に発生する張力を調整することができる。
【0064】
すなわち、付勢力の方向と平行な方向の力は、転写ベルト14(張架面14A)で発生する張力の大きさを支配する力であるので、仮に従動ローラ16の変位が規制されていない場合には、張力調整力F2が張力を発生させるために寄与せず、無駄に摩擦抵抗として消費されてしまうおそれが高い。
【0065】
これに対して、本実施形態では、従動ローラ16が付勢力の方向と平行な方向のみに変位するように従動ローラ16の変位を規制するので、張力調整力F2の多くを張力の発生に寄与させることができる。したがって、無駄に摩擦抵抗として消費されてしまう分を抑制でき、張力調整力を効率よく利用して転写ベルト14に発生する張力を調整することができる。
【0066】
また、本実施形態では、テコアーム22が従動ローラ16に作用させる力の方向は、コイルバネ19による弾性力と平行な方向であるので、張力調整力F2の多くを張力の発生に寄与させることができる。したがって、無駄に摩擦抵抗として消費されてしまう分を抑制でき、張力調整力を効率よく利用して転写ベルト14に発生する張力を調整することができる。
【0067】
また、本実施形態では、くの字状又はL字状に屈曲したテコアーム22により、変位力F1が張力調整力F2に変換されるので、簡素な構成にて変位力F1を張力調整力F2に変換することができる。
【0068】
また、本実施形態では、第2アーム部22Bの長さL4対する第1アーム部22Aの長さL3(以下、レバー比という。)を調節することにより、容易に張力調整力F2を変更することができるので、テコアーム22(矯正機構20)の設計自由度を高めることができる。
【0069】
また、本実施形態では、軸受ブロック18を介して従動ローラ16に力を作用させるので、従動ローラ16に対して直接的に付勢力を作用させる場合とほぼ同等となる。したがって、従動ローラ16に対して間接的に付勢力を作用させる場合に比べて、張力調整力F2を効率よく利用して転写ベルト14に発生する張力を調整することができる。
【0070】
また、本実施形態では、レバー比を1より大きくしているので、変位力F1が小さい場合であっても大きな張力調整力F2を発生させることができ、容易に転写ベルト14で発生する張力を変更することができる。
【0071】
また、本実施形態では、テコアーム22のうちベルトカラー21から力を受ける力点P1は、図5に示すように、揺動軸17Cの軸方向に沿ったA矢視方向から見て、従動ローラ16の回転軸16Aと重なっているので、力点P1がA矢視方向から見て回転軸16Aからずれた位置にある場合に比べて、従動ローラ16の回転中心軸線から力点P1までの距離を小さくすることができ、力点P1で発生する摩擦力に起因する回転中心軸線周りのモーメントを小さくすることができる。
【0072】
一方、このモーメントは、ベルトカラー21の作動を阻害する力となるので、このモーメントは小さいほどよい。したがって、本実施形態では、力点P1で発生する摩擦力に起因する回転中心軸線周りのモーメントを小さくすることができるので、ベルトカラー21の作動が阻害されることを抑制できる。
【0073】
また、A矢視方向から見て、力点P1が回転軸16Aと重なっているので、テコアーム22が揺動した場合であっても、テコアーム22の揺動中心から力点P1までの距離の変化を小さくすることができる。
【0074】
さらに、本実施形態では、テコアーム22のうち変位力F1を受ける当接部22Dが曲面状に形成されているので(図5参照)、テコアーム22が揺動してテコアーム22とベルトカラー21との接触角度が変化しても、テコアーム22とベルトカラー21とを滑らかに摺接させることができ、力点P1で発生する摩擦力が過度に大きくなることを抑制できる。
【0075】
以上により、本実施形態では、ベルトカラー21がテコアーム22から反作用として受ける力の変動を小さくすることができるので、ベルトカラー21の作動が阻害されることを抑制できる。
【0076】
また、本実施形態では、力点P1は、図7に示すように、A矢視方向において、回転軸16Aを挟んで両側に設定されているので、ベルトカラー21がテコアーム22から反作用として受ける力が、回転軸16Aに対して対称となり、ベルトカラー21を滑らかに軸方向に変位させることができる。
【0077】
つまり仮に、ベルトカラー21がテコアーム22から反作用として受ける力が、回転軸16Aに対して非対称であると、ベルトカラー21に偶力が発生するので、ベルトカラー21を滑らかに軸方向に変位させることが難しくなる。
【0078】
これに対して、本実施形態では、ベルトカラー21がテコアーム22から反作用として受ける力が、回転軸16Aに対して対称となり、ベルトカラー21に偶力が発生しないので、ベルトカラー21を滑らかに軸方向に変位させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、ベルトカラー21には、幅方向端面14Bに接触可能な鍔状のフランジ部21Eが設けられているので、転写ベルト14が斜行することにより発生する軸方向の力(変位力F1)を確実にベルトカラー21に伝達することができ、転写ベルト14の斜行を適切に抑制することができる。
【0080】
4.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、ベルトカラー21が特許請求の範囲に記載されたフランジ部材に相当する。
【0081】
(第2実施形態)
本実施形態は、図9(a)及び図9(b)に示すように、フランジ部21Eのうち転写ベルト14の端部(周縁部)14Bと面する部位に、回転軸16Aから離れるほど周縁部14Bから離れるように、軸方向D2と直交する仮想平面S1に対して傾斜したテーパ部21Fを設けたものである。
【0082】
なお、本実施形態に係るテーパ部21Fは、少なくとも転写ベルト14の厚み寸法tより大きな範囲に設けられ、かつ、その傾斜角θは45°以下である。
これにより、本実施形態では、転写ベルト14の周縁部14Bがフランジ部21E(テーパ部21F)に接触したときに、周縁部14Bに作用する力を分散させることができるので、転写ベルト14の周縁部14Bが大きく損傷してしまうことを防止できる。
【0083】
(第3実施形態)
本実施形態は、図10に示すように、外側軸受部21Dを廃止するとともに、テコアーム22の当接部22Dをベルトカラー21側に突出した形状としたものである。
【0084】
これにより、ベルトユニット13の軸方向寸法を大きくすることなく、軸受部21B(内側軸受部21C)の長さ寸法を大きくすることができるので、ベルトユニット13の大型化を抑制しながら、ベルトカラー21の「こじれ」を防止することが可能となる。
【0085】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、矯正機構として、従動ローラ16を変位させて転写ベルト14に発生する張力を変化させる機構であって、かつ、転写ベルト14に発生する張力のうち、転写ベルト14の移動方向前進側で発生する張力に対する移動方向後退側で発生する張力の比が、張力を変化させる以前に比べて小さくなるように、転写ベルト14に発生する張力を変化させる機構を採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許文献1に記載の発明と同様に、転写ベルト14の斜行を打ち消すように従動ローラ16を傾動させる機構を矯正機構として採用してもよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、矯正機構20が従動ローラ16の軸方向一端側のみに設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、従動ローラ16の軸方向両端側に矯正機構20を設けてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、矯正機構20は張力を増大させる向きのみに軸受ブロック18を変位させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、張力を増大させる向き及び張力を減少させる向きのいずれの向きにも軸受ブロック18を変位させることができるように矯正機構20を構成してもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、従動ローラ16はテンションローラを兼ねるローラであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、従動ローラ16とは別にテンションローラを設け、このテンションローラの軸方向一端側又は両端側に矯正機構20を設ける、又はテンションローラは転写ベルト14に張力を付与する機能のみ有し、矯正機構20を従動ローラ16の軸方向一端側又は両端側に設けてもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、用紙搬送用のベルトユニット13に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、中間転写ベルト用のベルトユニットに本発明を適用してもよい。
【0090】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0091】
1…画像形成装置、5…画像形成部、7…プロセスユニット、8…転写ローラ、
9…露光器、11…定着器、13…ベルトユニット、14…転写ベルト、
14A…張架面、14B…周縁部(端部)、15…駆動ローラ、16…従動ローラ、
16A…回転軸、16B…止め輪、16C…ローラ本体、16D…大径部、
16E…凹部、20…矯正機構、21…ベルトカラー、21A…軸穴、
21B…軸受部、21C…内側軸受部、21D…外側軸受部、21E…フランジ部、
21F…テーパ部、22…テコアーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成装置であって、
無端状のベルトと、
前記ベルトが架け渡された第1ローラ及び第2ローラと、
前記第1ローラの軸方向一端側に配設され、軸方向と平行な方向に延びる支持軸に摺動可能に装着され、かつ、前記ベルトが斜行したときに前記ベルトと共に軸方向に摺動変位するフランジ部材と、
前記フランジ部材を軸方向に変位させる力によって前記第1ローラを変位させて前記ベルトの斜行を矯正する矯正機構とを備え、
前記フランジ部材は、前記支持軸と摺接する軸受部、及び前記軸受部から軸方向と直交する方向に広がるとともに、前記ベルトから前記力を受ける鍔部を有して構成され、
前記第1ローラの軸方向一端側には、軸方向他端側に向かって陥没した凹部が設けられており、
さらに、前記軸受部のうち前記軸方向一端側の少なくとも一部は、前記凹部内に嵌り込むように前記凹部内に位置していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記矯正機構は、前記第1ローラを変位させて前記ベルトに発生する張力を変化させる機構であって、かつ、前記ベルトに発生する張力のうち、前記ベルトの移動方向前進側で発生する張力に対する前記移動方向後退側で発生する張力の比が、張力を変化させる以前に比べて小さくなるように、前記ベルトに発生する張力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1ローラを回転可能に支持するローラ軸により前記支持軸が構成されており、
さらに、前記凹部の内周直径寸法は、前記軸受部の外周直径寸法より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記鍔部のうち前記ベルトの周縁部と面する部位には、前記支持軸から離れるほど前記周縁部から離れるように、軸方向と直交する仮想平面に対して傾斜したテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記軸受部は、前記鍔部から前記凹部内に向けて突出する内側軸受部、及び前記鍔部から前記内側軸受部と反対側に向けて突出する外側軸受部を有して構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記内側軸受部のうち軸方向と平行な部位の寸法は、前記外側軸受部のうち軸方向と平行な部位の寸法と等しいことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−32437(P2012−32437A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169316(P2010−169316)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】