説明

画像表示素子及びその製造方法

【課題】電極の引出し加工が容易であり、かつマイグレーションの発生を抑制できる画像表示素子を提供する。
【解決手段】前面パネル1と、これに対向する裏面パネル2と、前面パネル1及び裏面パネル2間に配置された複数の画素と、画素を制御する複数の電極とを有し、前面パネル1と裏面パネル2が画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成され、金属膜配線5を介して電極を駆動回路に接続する画像表示素子において、電極端子4が露出するように分割されると共に、この分割部分に断面V字型の溝部3が形成されており、金属膜配線5は、裏面パネル2の上部2aの面に形成されており、電極端子4と金属膜配線5は、溝部3を構成する傾斜面に沿って塗布された導電ペースト10により接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセント(EL)ディスプレイパネル等を多数配列して構成される大型画像表示装置に関し、特に、この装置を構成する画像表示素子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型画像表示装置(大型ディスプレイとも称す)は、低価格で高性能を実現するために、画像表示素子(又は、表示ユニット)としての平面ディスプレイ(例えば、LCDパネル、PDP、ELディスプレイパネル等)をマトリクス状に複数枚配列する方式が採用されている。
このような大型ディスプレイを構成する従来の画像表示素子の一例を図13に示す。
図13は、画像表示素子の配列の一部(2枚配列)を示す図で、図13(a)は正面図、図13(b)は側面図である。
画像表示素子30は、ガラス板などからなる前面パネル31と裏面パネル32とを有する。前面パネル31と裏面パネル32は、所定の間隔をあけて対向させ、その間に、複数の画素33と、それらを制御するための複数の電極(図示なし)とを配置して発光層(又は液晶層)を形成し、周囲を封止幅g1の封止部34で封止している。
【0003】
電極に電圧を印加するための引出線を、画像表示素子30の周囲、即ち隣接する画像表示素子30の継ぎ目部35から引き出す場合は、引出し代が必要である。継ぎ目部35における隣接する画像表示素子30の画素33の間隔Gaが、同一の画像表示素子内における画素の間隔Gbより大きくなると、継ぎ目部35が目立ってしまう。
そこで、図13(b)の拡大図に示すように、裏面パネル32を2分割して中央部にギャップ部36を設け、そのギャップ部(単に、ギャップとも称す)36に電極に対応させた端子37を備え、この端子37に電極ピンあるいは図のような引出線38を接続して裏面パネルの外側に引き出すようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に示された従来の画像表示素子では、裏面パネル32に形成したギャップ部36から電極の引出線38を引き出すようにしたので、画像表示素子30の継ぎ目部35を目立ち難くする構造としては有効であるが、狭いギャップ部36の間に存在する多数の端子37に引出線38を接続して配線層と接続するようになっているため、端子37との接続が煩雑となり、また、引出し方法が複雑で作業性が悪いという問題があった。
【0005】
特許文献2に示された従来の画像表示素子は、このような問題点を解消するために提供されたものである。
図14は、特許文献2に示された画像表示素子の構成を示す斜視図であり、図15は図14の要部拡大図である。
以下、特許文献2に示される従来の画像表示素子について説明する。
この画像表示素子がマトリクス状に多数配列されて、大画面の平面ディスプレイが構成される。
画像表示素子の表示デバイスとしては、例えば、LCDパネル、PDP、ELディスプレイパネル等である。なお、図は画像表示素子を背面から見たところを示している。
【0006】
図14に示すように、画像表示素子は、ガラス板等からなる前面パネル21と、同じくガラス板等からなり前面パネル21に対向する裏面パネル22と、両パネル間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素(図示なし)と、この画素を制御する複数の電極(図示なし)とを有し、両パネル21、22が画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成されている。
裏面パネル22は、隣り合う2つの画素列の間で分割されてその分割部に隙間(ギャップ)23が形成されている。図では、分かりやすいように隙間23を拡大して表示しているが、実際の隙間23は、例えば、幅0.30mm程度の微小隙間である。
また、画素はマトリクス状に配置されているので、画素間をいうとき、横方向の画素行間と縦方向の画素列間が存在するが、両方を含めて「隣り合う2つの画素列」とする。
【0007】
なお、裏面パネル2は中央部で2分割したものを示しているが、分割数と分割位置はこれに限定するものではない。裏面パネル22を3分割以上にしてもよく、分割する位置も、隣接する画素の間であれば他の位置であってもよい。
隙間23に位置する前面パネル21側には、電極に繋がる複数の電極端子24が配置されている。電極端子24は、例えば、電極と同じ材料で同時に形成されたものであり、隙間から露出させている。
一方、裏面パネル22の裏面22a(表面パネルとの対向面の裏側を裏面と称す)と隙間(ギャップ)23の端部である端面22bには、金属膜配線25が形成されている。
金属膜配線25は、例えば、厚膜印刷等によって形成されるものである。裏面22a側の金属膜配線25の端部にコネクタ26を接続している。このコネクタ26を介して外部の駆動回路に接続される。
【0008】
配線部の詳細を図15に示す。図のように、裏面パネル22を前面パネル21に貼り合わせた状態で、裏面パネル22の端部22bの金属膜配線25が前面パネル21側の電極端子24に垂直に当接するように、電極端子24と金属膜配線25の位置を合わせて形成されている。そして、両パネル21、22を貼り合わせた状態で当接部分に半田27を塗布し、局部的に加熱して半田27を溶かして接合する。
また、図16は、前面パネル21の外周端部から電極端子24を引き出した場合の電極接続部を示す斜視図である。
裏面パネル22を前面パネル21よりわずかに小さくし、両パネルを重ねたときに端部に段差部21aを形成するようにし、この段差部21aに電極端子24を露出させ、電極端子24と裏面パネル22の端部22bに形成した金属膜配線25を当接させ、半田付けによって接合する場合の構成を示している。
【0009】
以上のように、特許文献2に示される画像表示素子は、前面パネル21と、前面パネル21に対向する裏面パネル22と、両パネル間にマトリクス状に配置されて表示または非表示の状態が選択される複数の画素(図示なし)と、この画素を制御する複数の電極とを有し、両パネルが画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成される画像表示素子において、裏面パネル22の裏面と端面(端部22bの面)とに金属膜配線25が形成され、裏面パネル22の端面に形成された金属膜配線25に対応し、電極に繋がる電極端子24が前面パネル21側に配置され、端面22bに形成された金属膜配線25と電極端子24とが半田付けにより接合されている。
従って、特許文献1に示された画像表示素子に比べて、電極の引出線を用いることなく、狭いスペースから簡単な方法で電極の引出しが可能となり、画像表示素子間の目地幅が広がるのが解消されて、画像表示素子を配列して大画面を構成する場合、目地縮小により画質が改善される。また、電極配線の引出しが簡素化され、コストが削減される。
【0010】
特許文献2に示す従来の画像表示素子は、図14に示したように、電極端子24と金属膜配線25を直接半田付けして接続するので、裏面パネル22に形成したギャップ(隙間/溝部)23から電極の引出しが可能である。
しかしながら、画像表示素子の継ぎ目部を目立ち難くする構造としては有効であるが、やはり裏面パネル22の厚みに対応して生じる端子部付近の溝部(ギャップ部)では、加工用の工具(半田付けのための工具のヘッドやニードルなど)がギャップ(溝部/隙間)23の奥にある半田付け部(即ち、電極端子24と金属膜配線25の当接部)に届き難くなる。
特に、表示装置が高解像度化するにつれて、画素ピッチが短縮され、画素ピッチの短縮に対応して電極の引出しを行うギャップ部の幅も狭くする必要があり、電極の引出し加工が更に困難になる。
従って、半田付けによる電極端子24と金属膜配線25の接続信頼性が問題になる。
また、電極端子24と金属膜配線25を接続する半田27が微小の間隔を有して配置されるので、隣接する電極端子間、金属膜配線間あるいは半田間においてマイグレーションが発生しやすく、電極引出部の絶縁性が問題となる。
【0011】
また、図16に示した従来の画像表示素子では、パネルの外周端部から容易に電極を引き出すことはできるが、電極の引出し線を設ける端子部付近のパネル形状に課題があり、電極の引出し加工が難しくなる。
加工方法は、例えば、半田付け、ワイヤボンディング、導電ペーストなどによる接続などがあるが、裏面パネル22の厚みに対応して生じる端子部付近の段差部では、加工用の工具(ヘッドなど)などが段差部の奥にある接続部に届き難い。
【0012】
また、従来の画像表示素子では、裏面パネル22は、ギャップ部23で分割されているので、この部分にストレスが集中すると強度が弱くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−251571号公報
【特許文献2】特開2008−191502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、画像表示素子の端子部付近のパネル形状を電極の引出し電極の引出し加工に必要な工具(即ち、半田コテのヘッドや導電ペースト注入用のニードルなど)の使用に適した構造にすることにより電極の引出し加工を容易に行えると共に、更に、電極引出部(電極端子と金属膜配線の接続部)におけるマイグレーションの発生を抑制できる画像表示装置及び画像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係わる画像表示素子は、前面パネルと、この前面パネルに対向する裏面パネルと、前記前面パネル及び裏面パネル間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素と、この画素を制御する複数の電極とを有し、前記前面パネルと前記裏面パネルが画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成され、金属膜配線を介して前記電極を駆動回路に接続する画像表示素子において、
前記裏面パネルは、隣り合う複数の画素列の間で前記電極に繋がる電極端子が露出するように分割されると共に、この分割部分に前記表面パネルとの対向面の裏側にある上部が底部より幅広の形状を有する溝部が形成されており、前記金属膜配線は、前記裏面パネルの前記表面パネルとの対向面の裏側の面に形成されており、前記電極端子と前記金属膜配線は、前記溝部を構成する傾斜面に沿って塗布された導電ペーストにより接続されているものである。
【0016】
また、この発明に係わる画像表示素子の製造方法は、前面パネルと、この前面パネルに対向する裏面パネルと、前記前面パネル及び裏面パネル間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素と、この画素を制御する複数の電極とを有し、前記前面パネルと前記裏面パネルが画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成され、金属膜配線を介して前記電極を駆動回路に接続する画像表示素子の製造方法において、
前記裏面パネルを、隣り合う複数の画素列の間で前記電極に繋がる電極端子が露出するように分割すると共に、この分割部分に前記表面パネルとの対向面の裏側にある上部が底部より幅広の形状を有する溝部を形成する第1の工程と、前記金属膜配線を、前記裏面パネルの前記表面パネルとの対向面の裏側の面に形成する第2の工程と、前記電極端子と前記金属膜配線を、前記溝部を構成する傾斜面に沿って塗布された導電ペーストにより接続する第3の工程を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、電極の引出し加工を容易に行えると共に、電極引出部(電極端子と金属膜配線の接続部)におけるマイグレーションの発生を抑制できる画像表示素子及びその製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1による画像表示素子の基本的な構成説明するための斜視図である。
【図2】図1の要部の断面を示す拡大図である。
【図3】溝部の幅が工具の幅寸法より小さい場合の状態を示す図である。
【図4】溝部をV字形状にしたときの状態を示す図である。
【図5】実施の形態1による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
【図6】電極の中央取出し方式を示す図である。
【図7】電極の端部取出し方式を示す図である。
【図8】実施の形態2による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
【図9】実施の形態3による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
【図10】実施の形態4による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
【図11】実施の形態5による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
【図12】実施の形態6による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
【図13】特許文献1に示された従来の画像表示素子の構造を示す図である。
【図14】特許文献2に示された従来の画像表示素子の構造を示す斜視図である。
【図15】図14の要部拡大図である。
【図16】特許文献2に示された画像表示素子において、前面パネルの外周端部から電極端子を引き出した場合の電極接続部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態例について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による画像表示素子の基本的となる構成を説明するための斜視図であり、図2は図1の要部の断面を示す拡大図である。
この画像表示素子がマトリックス状に多数配置されて、大型の平面デススプレイが構成される。
画像表示素子の表示デバイスとしては、例えば、LCDパネル、PDP、ELディスプレイパネルなどが使用される。
【0020】
図1に示すように、画像表示素子は、ガラス板などからなる前面パネル1と、同じくガラス板などからなる前面パネル1に対向する裏面パネル2と、前面パネル1と裏面パネル2の間にマトリックス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素(図示なし)と、この画素を制御する複数の電極(図示なし)とを有し、前面パネル1と裏面パネル2が画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成されている。
裏面パネル2は、隣り合う複数の画素列の間でダイシングブレードを用いた切削加工(ダイシング加工)などによりV字形状を有する溝部3を形成して分割されている。
なお、図では判り易いように溝部3を拡大して表示しているが、実際は、溝部3は微小な隙間である。
また、画素はマトリックス状に配置されているので、「画素間」を言うときは、横方向の画素行列間と縦方向の画素列間が存在するが、両方を含めて「隣り合う2つの画素列」と称することとする。
【0021】
そして、溝部3に位置する前面パネル1側には、電極に繋がる複数の電極端子4が配置されている。電極端子4は、例えば、電極と同じ材料で同時に形成されたものであり、溝部3で露出させている。
一方、裏面パネル2の裏面2a(表面パネル1と対向する面の裏側)を「裏面」と称する。(以下同じ)
溝部3を構成する裏面パネル2の端部の端面(傾斜面)2bには、金属(例えば、Agなど)膜配線5が形成されている。裏面2a側の金属膜配線5の端部にコネクタ6を接続している。
このコネクタ6を介して金属膜配線5が外部の駆動回路に接続される。
なお、金属膜配線5の材料は、Agに限られるものではなく、一般的な配線材料を用いてもよい。また、金属膜配線5の配線方法にも特に制限はなく、金属膜配線5とコネクタ6の間にFPCなどの他の配線構造が含まれてもよい。
【0022】
配線部の詳細を図2に示す。図のように、裏面パネル2を前面パネル1に貼り合わせた状態で、裏面パネル2の端部傾斜面2bの金属膜配線5が前面パネル1側の電極端子4に接触するように、電極端子4と金属膜配線5の位置を合わせて形成されている。
なお、電極端子4の溝部3で露出した部分は金属膜配線5で覆われており、これにより電極端子4に金属膜配線5が確実に接触している。
また、図1においても、各電極端子4の溝部3で露出した部分は、金属膜配線5で全面覆われている。
図1では、電極端子4の溝部3で露出した部分が、金属膜配線5で覆われていることを表すために、金属膜配線5の一部を切り欠いて示している。
【0023】
裏面パネル2は、一般にガラスで構成されているため、金属膜配線5は、例えば銀(Ag)ペーストを用いて、厚膜印刷等によって塗布された後、焼成されて形成される。
この場合、厚膜印刷等を行うために必要なニードルやヘッドなどの加工用の工具を裏面パネル2の端面2bに近接して移動させる必要である。
ここで、図3に示すように、裏面パネル2の端面2bがパネル面に垂直であり、例えば、溝部3の幅0.30mm、工具7の幅寸法が0.36mmのように、溝部3の幅が工具7の幅寸法より小さい場合には、厚膜印刷を適切に行うことが困難である。
これに対して、実施の形態1においては、裏面パネル2の分割部分に、前面パネル1の
反対側となる上部が底部よりも幅広のV字形状を有する溝部3を形成しているので、図4に示すように、厚膜印刷等に必要な工具7を裏面パネル2の端面2bに近接させて移動することが可能であり、金属膜配線5を容易かつ正確に形成することができる。
なお、図2において、“g1”は溝部3の上部の幅、“g2”は底部の幅、“θ”は裏面パネル2の端部(端面)2bの傾斜角を示している。
【0024】
この発明は、図1、図2、図4に示したように、前面パネル1と、この前面パネル1に対向する裏面パネル2と、両パネル(即ち、前面パネル1及び裏面パネル2)間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素と、この画素を制御するための複数の電極とを有し、両パネルが前記画素及び前記電極を挟んで貼り合わされて構成される画像表示素子において、裏面パネル2は、隣り合う複数の画素列の間で前面パネル1の反対側となる上部が底部より幅広の形状を有する溝部を形成するように分割され、溝部3に位置する端面(傾斜面2b)に沿って電極を駆動回路に接続する金属膜配線5を形成することにより、パネルの狭い領域から電極を引き出すことができるようになり、画像表示素子をマトリックス状に複数枚表示した時に、継ぎ目部の幅を狭くして、継ぎ目が目立たない高解像度の画像表示装置を実現できると共に、更に、金属膜配線そのものの信頼性向上や隣接する金属膜配線間あるいは電極端子間でのマイグレーション発生などを抑制できる高信頼度な画像表示装置を実現するものである。
【0025】
以上は、本発明による画像表示素子の基本的な構成とその効果を説明したものであるが、以下に、実施の形態1による画像表示素子の特徴的な具体例について説明する。
図5は、実施の形態1による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図であり、電極端子4と金属膜配線5を導電ペースト(例えば、Agペースト)10を塗布して接続する場合を示している。
図1に示した例では、コネクタ6を介して電極端子4を外部の駆動回路に接続する金属膜配線5は、電極端子4の端部と直接接続されるように、V型の溝部(即ち、前面パネル1の反対側となる上部が底部より幅広の形状を有する溝部)3を構成する傾斜面である「裏面パネル2の端部2b」の領域も含めて形成されている。
なお、この金属膜配線5は、前述したように、例えばAgペーストを厚膜に塗布した後に焼成されて形成されおり、各電極に対応して配置されている。
【0026】
これに対して、図5では、V型の溝部3の底部に位置する電極端子4と裏面パネル2の裏面2aに形成されている金属膜配線5との間を導電ペースト(例えば、Agペースト)10を塗布して接続している。
なお、導電ペースト10は各電極端子4の上面に塗布されているが、この状態を表すために、図5では、導電ペースト10の一部を切り欠いて示している。
後掲する図8、図9、図11、図12において、同様の理由により、導電ペースト10の一部を切り欠いて示している。
また、図5では、金属膜配線5の端部と導電ペースト10の端部が当接して接続されているように描かれているが、実際には金属膜配線5の端部の上にまで導電ペースト10が塗布されている。このことは、後掲する図8、図9、図10、図11および図12においても同様である。
導電ペースト10による配線では、加工が容易になり、導電ペースト10の厚みの調整も容易である。
従って、電極端子4と金属膜配線5の接続部の性能(例えば、接続抵抗の均一化)や接続の信頼性が改善される。
更に、配線である導電ペースト10をカバーガラスである裏面パネル2の裏面2a及び端部(傾斜面)2bに密着させるので、耐震性や膨張・収縮に対する強度が改善される。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態による画像表示素子は、前面パネル1と、この前面パネル1に対向する裏面パネル2と、前面パネル1及び裏面パネル2間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素と、この画素を制御する複数の電極とを有し、前面パネル1と裏面パネル2が画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成され、金属膜配線5を介して電極を駆動回路に接続する画像表示素子において、
裏面パネル2は、隣り合う複数の画素列の間で電極に繋がる電極端子4が露出するように分割されると共に、この分割部分に表面パネル1との対向面の裏側にある上部が底部より幅広の形状を有する溝部3が形成されており、金属膜配線5は、裏面パネル2の上部の面(即ち、表面パネル1との対向面の裏側の面2a)に形成されており、電極端子4と金属膜配線5は、溝部3を構成する傾斜面に沿って塗布された導電ペースト10により接続されている。
これにより、パネルの狭い領域から電極を容易に引き出すことが可能となり、パネルの継ぎ目が目立たない高解像度の画像表示装置を容易に実現できると共に、更に、電極端子と金属膜配線との接続部の性能、信頼性、強度が改善される。
【0028】
なお、前述の説明では、裏面パネル2は、中央部で2分割されたものを想定しているが、分割数と分割位置はこれに限定されるものではない。裏面パネル2を3分割以上に分割してもよく、分割する位置も画素の間であれば他の位置であってもよい。
例えば、図6に示すように、裏面パネル2を十字状の溝部3により4分割し、画像表示素子の中央から電極を取出す中央取出し方式の構造にも適用できる。
また、前面パネルの外周の端部から電極端子4を取出す場合や、図7に示すような画像表示素子の水平、垂直両端部から電極を取出す端部取出し方式の構造にも適用できる。
これは、後述する各実施の形態の画像表示素子においても同様である。
【0029】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
本実施の形態は、図8に示すように、前掲した図5の構成において、更に、裏面パネル2の端部(傾斜面)2bの表面を荒らした(粗にした)ことを特徴とする。
なお、端部2bの表面は荒れていればよく、また、表面を荒らす方法は特に制限しないが、例えば、表面研削やサンドブラストなどの方法がある。また、表面の粗さは、例えば、砥石の粒度で規定される#2000〜#100程度である。
これにより、配線である導電ペースト10の裏面パネル2の端部(傾斜面)2bへの密着性が向上する。
更に、裏面パネル2の端部(傾斜面)2bの表面を荒らしたので、裏面パネル2の端部(傾斜面)2bでの配線(即ち、導電ペースト10)間の沿面距離が長くなり、マイグレーションの発生が抑制され、マイグレーション発生による短絡故障が軽減され、信頼性が改善される。
【0030】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
本実施の形態は、図9に示すように、実施の形態1における図5の構成において、隣接する導電ペースト10の間にディスペンサにて樹脂材を塗布して隔壁11を設けたことを特徴とする。
これにより、配線である導電ペースト10間の沿面距離が長くなり、マイグレーションなどによる短絡故障が軽減され、信頼性が改善される。
なお、隣接する電極端子の間にも樹脂材を塗布して隔壁を設けることにより、更にマイグレーションの発生は軽減される。
【0031】
実施の形態4.
図10は、実施の形態4による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
本実施の形態は、図10に示すように、前掲の図5の構成において、導電ペースト10を、複数本の導電ペースト(例えば、導電ペースト10a、10b、10cの3本の導電ペースト)で構成したことを特徴とする。
導電ペースト10を複数の導電ペーストで構成することにより、導電ペーストの塗布幅あるいは厚みを拡大することができる。
なお、図では、3本の導電ペースト10a、10b、10cは、互いに離れて形成されているが、これらは密着して形成されてもよい。
これにより導電ペースト10の電気抵抗を低減できると共に、電極端子と金属膜配線との接続部の信頼性が改善される。
【0032】
実施の形態5.
図11は、実施の形態5による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
本実施の形態は、図11に示すように、電極端子4と金属膜配線5とを接続する導電性ペースト10は、溝部3を構成する2つの端部(傾斜面)2b、2b′において、交互に形成されている。
電極端子4は、溝部3の底部において、端部(傾斜面)2b及び2b′に対応して交互に配置されている。
即ち、裏面パネル2の端部(傾斜面)2bにおいて、隣接する導電性ペースト10の間隔は、図5の場合と比較すると約2倍となっている。
従って、隣接する導電性ペースト10の間隔が大きくなり、導電性ペースト10の幅を広くして、配線部である導電性ペースト10の電気抵抗を低減できる。
また、隣接する導電性ペースト10間の沿面距離が長くなり、マイグレーションの発生が抑制され、配線間の絶縁信頼性が改善される。
【0033】
実施の形態6.
図12は、実施の形態6による画像表示素子の特徴的な構造を説明するための概念図である。
本実施の形態は、図12に示すように、導電性ペースト10、該導電性ペースト10に接続する電極端子4及び金属膜配線5が形成されている領域において、これらを保護するための保護コーティングを施したしたものである。図において、12は保護コーティングを示す。
これにより、塵埃等の付着やマイグレーションの発生が抑制され、接続の信頼性が改善されるる。
【0034】
実施の形態7.
前述の実施の形態6では、導電性ペースト10、該導電性ペースト10に接続する電極端子4及び金属膜配線5が形成されている領域において、これらを保護するための保護コーティングを施したが、この保護コーティングとして硬化型接着剤を使用して、溝部3を硬化型接着剤で埋めてもよい。
これによって、塵埃等の付着やマイグレーションの発生が抑制されると共に、溝部3の部分に対するストレスの集中が緩和されるので、パネルの強度を増すことができる。
【0035】
実施の形態8.
本発明の大型ディスプレイの画像表示素子1における電極端子4と画素との関係を説明するために、画像表示素子の一例としてELディスプレイパネルを用いたケースを利用して以下に記載する。図1の画像表示素子をELディスプレイパネルで形成する例である。
なお、本発明の画像表示素子はこれに限定されるものではなく、液晶パネル、PDP等にも応用可能である。
【0036】
前面パネル1上に画素pである有機EL素子を複数配列し、画素の発光/非発光を制御する(図6の画素pが一つの有機EL素子である)通常の有機EL素子は、ITO等の透明電極と、正孔輸送材層、発光層及び電子輸送層等からなる有機層と、反射電極(例えばAl等)が順次形成されて、発光層から光が透明電極を透過して、前面パネル1側から出射している。
電極端子4と透明電極および反射電極を電気的に接続させ、電極端子4を溝部3まで引き出している。
金属膜配線5を介して(透明電極および反射電極を)コネクタ6と電気的に接続させ、外部の駆動制御回路から有機EL素子の発光/非発光の制御信号が送られる。
【0037】
電極端子は、透明電極と同じITOで形成しても良く、抵抗を下げるためにAl、Cr、Ag等の低抵抗金属で形成しても良く、これらを積層して形成しても良い。
裏面パネル2は、前面パネル1と同様にガラスで形成し、裏面パネル2の有機EL素子と対向側にエッチングやサンドブラスト等で凹部を形成する。裏面パネル2の凹部の形成面と前面パネル1の有機EL素子形成面とを対向するように貼り合わせる。UV硬化接着剤等により前記両基板を封止接合し、前記凹部による封止空間には、水分等の有機EL素子の劣化因子から保護するため乾燥剤を設置する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
電極の引出し加工を容易に行えると共に、電極引出部におけるマイグレーションの発生を抑制できる画像表示素子の実現に有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 前面パネル 2 裏面パネル
2a 裏面パネルの裏面(上部) 2b 端面(傾斜面)
3 溝部 4 電極端子
5 金属膜配線 7 工具
10 導電ペースト 11 隔壁
12 保護コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面パネルと、この前面パネルに対向する裏面パネルと、前記前面パネル及び裏面パネル間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素と、この画素を制御する複数の電極とを有し、前記前面パネルと前記裏面パネルが画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成され、金属膜配線を介して前記電極を駆動回路に接続する画像表示素子において、
前記裏面パネルは、隣り合う複数の画素列の間で前記電極に繋がる電極端子が露出するように分割されると共に、この分割部分に前記表面パネルとの対向面の裏側にある上部が底部より幅広の形状を有する溝部が形成されており、
前記金属膜配線は、前記裏面パネルの前記表面パネルとの対向面の裏側の面に形成されており、
前記電極端子と前記金属膜配線は、前記溝部を構成する傾斜面に沿って塗布された導電ペーストにより接続されていることを特徴とする画像表示素子。
【請求項2】
前記導電パネルが塗布される前記溝部の傾斜面の表面は、荒く処理されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示素子。
【請求項3】
隣接する前記導電ペーストの間に樹脂材を塗布して隔壁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像表示素子。
【請求項4】
前記導電ペーストの個々は、複数本の導電ペーストで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示素子。
【請求項5】
前記導電性ペーストは、溝部を構成する2つの傾斜面において、交互に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示素子。
【請求項6】
前記導電性ペースト、該導電性ペーストに接続する電極端子及び金属膜配線が形成されている領域は、保護コーティングが施されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示素子。
【請求項7】
前記保護コーティングは硬化型接着剤を使用しており、前記溝部は硬化型接着剤で埋められていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示素子。
【請求項8】
前面パネルと、この前面パネルに対向する裏面パネルと、前記前面パネル及び裏面パネル間にマトリクス状に配置されて表示又は非表示の状態が選択される複数の画素と、この画素を制御する複数の電極とを有し、前記前面パネルと前記裏面パネルが画素及び電極を挟んで貼り合わされて構成され、金属膜配線を介して前記電極を駆動回路に接続する画像表示素子の製造方法において、
前記裏面パネルを、隣り合う複数の画素列の間で前記電極に繋がる電極端子が露出するように分割すると共に、この分割部分に前記表面パネルとの対向面の裏側にある上部が底部より幅広の形状を有する溝部を形成する第1の工程と、
前記金属膜配線を、前記裏面パネルの前記表面パネルとの対向面の裏側の面に形成する第2の工程と、
前記電極端子と前記金属膜配線を、前記溝部を構成する傾斜面に沿って塗布された導電ペーストにより接続する第3の工程を有することを特徴とする画像表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記導電パネルが塗布される前記溝部の傾斜面の表面を荒く処理することを特徴とする請求項8に記載の画像表示素子の製造方法。
【請求項10】
隣接する前記導電ペーストの間に樹脂材を塗布して隔壁を設けることを特徴とする請求項8に記載の画像表示素子。
【請求項11】
前記導電ペーストの個々を、複数本の導電ペーストで構成することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の画像表示素子の製造方法。
【請求項12】
前記導電性ペーストを、前記溝部を構成する2つの傾斜面において交互に形成いることを特徴とする請求項8に記載の画像表示素子の製造方法。
【請求項13】
前記導電性ペースト、該導電性ペーストに接続する電極端子及び金属膜配線が形成されている領域に、保護コーティングを施すことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の画像表示素子の製造方法。
【請求項14】
前記保護コーティングは硬化型接着剤を使用しており、前記溝部を硬化型接着剤で埋めることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の画像表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−8092(P2011−8092A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152432(P2009−152432)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】