説明

画像表示装置及びそのための光学部材

【課題】指向性画像表示と非指向性画像表示とを切り替えて実行可能な画像表示装置を実現する技術を提供する。
【解決手段】指向性表示/非指向性表示を切替え可能な画像表示装置は、画像形成部と、表示モード切替用の光学部材と、を備え、光学部材は、透光性を有する2つの板状部材と、2つの板状部材間に配置された所定屈折率のレンズ部材と、レンズ部材と2つの板状部材との間に充填された屈折率可変媒質と、屈折率可変媒質の屈折率を調整する屈折率調整部と、を備え、屈折率調整部は、指向性表示モードとするために、屈折率可変媒質の屈折率を所定屈折率と異なる屈折率にして、光学部材をレンズ作用を有する第1の使用状態とし、非指向性表示モードとするために、屈折率可変媒質の屈折率を所定屈折率と同一にして、光学部材をレンズ作用を有さない透光性板材として機能する第2の使用状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性画像表示と非指向性画像表示とを切り替え可能な画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の方向から見た場合に、それぞれの視方向ごとに異なる画像(映像)を表示(以下、「指向性画像表示」と呼ぶ)する画像表示装置が提案されている。指向性画像表示装置としては、1人の観察者の両眼に異なる画像光を入射させることによって立体的な画像表示を行う3D画像表示装置がある。また、2人の観察者に別々の画像を視認させる指向性画像表示装置も存在する。このような指向性画像表示装置においては、表示部の有する全画素のうち、半分の画素で第1画像を表示し、残りの画素で第2画像を表示する。そして、表示部の手前(観察者側)に画像光の射出方向を制限する光学部材(パララックスバリアやレンチキュラレンズ等)を配置して、一方の視方向には第1画像のみを表示し、他方の視方向には第2画像のみを表示する(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−106608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指向性画像表示装置において、指向性表示モードと、いずれの視方向にも同一の画像を表示(「非指向性画像表示」と呼ぶ)する非指向性表示モードとを切り替えられれば便利である。しかしながら、従来は、同一の画像表示装置で指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えられるものは知られていなかった。
【0005】
本発明は、指向性画像表示と非指向性画像表示とを切り替えて実行可能な画像表示装置を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1の視方向には第1の画像を表示し、第2の視方向には第2の画像を表示する指向性表示モードと、前記第1の視方向と前記第2の視方向の双方に同一の画像を表示する非指向性表示モードと、を切り替え可能な画像表示装置であって、画像を形成して前記画像を表す画像光を射出する画像形成部と、前記画像形成部の射出側に配置され、表示モードの切り替えのために用いられる光学部材と、を備え、光学部材は、透光性を有する2つの板状部材と、前記2つの板状部材の間に配置された所定の屈折率のレンズ部材と、前記レンズ部材と前記2つの板状部材との間に充填された屈折率可変媒質と、前記屈折率可変媒質の屈折率を調整するための屈折率調整部と、を備え、前記屈折率調整部は、(i)前記画像表示装置の表示モードを前記指向性表示モードとするために、前記屈折率可変媒質の屈折率を前記所定の屈折率と異なる屈折率となるように調整することによって、前記光学部材を、レンズ作用を有する第1の使用状態とすると共に、(ii)前記画像表示装置の表示モードを前記非指向性表示モードとするために、前記屈折率可変媒質の屈折率を前記所定の屈折率と同一となるように調整することによって、前記光学部材を、前記レンズ作用を有さない透光性板材として機能する第2の使用状態とすることを特徴とする画像表示装置。
【0008】
適用例1の画像表示装置では、指向性表示モードにおいて、屈折率可変媒質の屈折率がレンズ部材の屈折率と異なる屈折率となり、光学部材においてレンズ作用が働くので、第1の視方向には第1の画像を表示し、第2の視方向には第2の画像を表示することが可能となる。また、非指向性表示モードにおいて、屈折率可変媒質の屈折率がレンズ部材の屈折率と同一となるために光学部材においてレンズ作用が働かず、1つの透光性板材として機能するので、いずれの視方向にも同一の画像を表示することが可能となる。また、非指向性表示モードでは、指向性表示モードに比べて高い解像度での画像表示が可能となる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の画像表示装置において、前記レンズ部材は、前記2つの板状部材にそれぞれ接触する2つの接触面を有すると共に、前記2つの接触面間の側面部分が曲面で構成され、前記光学部材は、前記第1の使用状態において、前記側面部分を透過する光について前記レンズ作用が働くと共に、前記2つの接触面をいずれも透過する光について前記レンズ作用が働かないように構成されている画像表示装置。
【0010】
このような構成とすることで、レンズ部材が、2つの板状部材のいずれかと接触していない構成に比べて、レンズ部材と2つの板状部材との間に充填される屈折率可変媒質の量を減らすことができ、画像表示装置の製造コストの上昇を抑制することができる。また、指向性表示モードにおいて、レンズ部材の側面部分によってレンズ作用を働かせることができ、指向性画像表示を行うことができる。また、2つ接触面のいずれも透過する光についてはレンズ作用が働かないものの、これら2つの接触面によって透過する画像光の射出方向を制限することができ、指向性画像表示が可能となる。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の画像表示装置において、前記屈折率変化媒質は液晶である、画像表示装置。
【0012】
このような構成とすることで、液晶の屈折率を変化させて指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えることができる。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の画像表示装置において、前記レンズ部材は、前記2つの板状部材のうち、すくなくとも一方と一体形成されている画像表示装置
【0014】
このような構成とすることで、レンズ部材を、2つの板状部材の間の適当な位置に配置する工程を省くことが可能となり、画像表示装置の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、画像表示装置において用いられる光学部材としても実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1の実施例:
B.第2の実施例:
C.第3の実施例:
D.第4の実施例:
E.第5の実施例:
F.変形例:
【0017】
A.第1の実施例:
図1は、本発明の一実施例としての画像表示装置の外観を示す説明図である。この画像表示装置1000は、立体視を可能とする立体ディスプレイとして機能することができ、また、通常のディスプレイ(2次元ディスプレイ)としても機能することができる。画像表示装置1000は、立体ディスプレイとして機能する場合には、ユーザの左目方向(第1の視方向)と右目方向(第2の視方向)とで異なる画像を表示する指向性表示モードで動作する。一方、画像表示装置1000は、2次元ディスプレイとして機能する場合には、第1の視方向及び第2の視方向のいずれの方向にも同一の画像を表示する非指向性表示モードで動作する。
【0018】
図2は、図1に示す画像表示装置1000の内部構成を模式的に示すブロック図である。画像表示装置1000は、液晶表示部100と、バックライト150と、液晶レンズ200と、第1駆動回路10と、第2駆動回路20と、後述する制御部(図示省略)を備えている。液晶レンズ200は、液晶表示部100に対してユーザ側に配置されている。液晶レンズ200は、下部ガラス板材240と、上部ガラス板材230と、複数のレンズ部材210と、複数の液晶層220と、を備えている。2つのガラス板材230,240は、表面に透明電極(図示省略)を備え、基板全体として透光性を有している。
【0019】
レンズ部材210は、透光性を有する物質からなる。透光性物質としては、紫外線硬化樹脂であるウレタンアクリレート等の合成樹脂や、ガラスなど、屈折率がほぼ一定である物質を採用することができる。レンズ部材210は、図1にも示すように、シリンドリカルレンズがX軸方向に並んだレンチキュラレンズの先端部分を削除した形状を有している。各レンズ部材210は、上部ガラス板材230に接する第1の底面部212と、下部ガラス板材240に接する第2の底面部214を有している。なお、これらの底面部212,214を「平面部」とも呼ぶ。第1の底面部212の大きさは、例えば、第2の平面部214のおよそ30%程度とすることができる。図2の例では、液晶レンズ200が備えるレンズ部材210の数は3つであるものとして描いているが、実際には、多数のレンズ部材がX軸方向に並んで配置されている(図1参照)。
【0020】
液晶層220(図2)は、レンズ部材210と上部ガラス板材230との間に充填された液晶からなる。この液晶は、2つのガラス板材230,240が備える透明電極(図示省略)間の印加電圧に応じて配向方向が変化することで屈折率が変化する。具体的には、印加電圧が0Vの場合には屈折率がN1となり、印加電圧が所定の電圧V1の場合には屈折率がN2(>N1)となる特性を有している。ここで、所定の電圧V1を印加した場合の屈折率N2は、レンズ部材210を構成する透光性物質の屈折率(N2)と同一となる。なお、液晶層220を構成する液晶としては、例えば、ターフェニル系液晶やトラン系液晶等を採用することができる。そして、これら複数種類の液晶の中から、屈折率の変化範囲内に屈折率N1,N2を含む光学特性の液晶を選択する。屈折率がN2となる場合の電圧V1は、実験により求めて設定することができる。
【0021】
液晶表示部100は、下部偏光板116と、下部ガラス基板115と、液晶層114と、カラーフィルタ層113と、上部ガラス基板112と、上部偏光板111と、を備えており、それぞれが積層された構成を有する。下部ガラス基板115には画素電極(図示省略)が設けられている。また、上部ガラス基板112には共通電極(図示省略)が設けられている。そして、これら2つのガラス基板112,115によって挟まれた液晶層114において、第1駆動回路10が出力する駆動信号の変化(画素電極と共通電極との間の電圧の変化)に応じて液晶分子の配向が変化する。ここで、第1駆動回路10は、後述する制御部から与えられた画像信号FSに基づいて駆動信号を生成して液晶表示部100に出力し、これに応じて液晶表示部100に画像が表示される。なお、液晶表示部100において、各画素電極(図示省略)に対応したZ軸方向の領域を「画素」と呼ぶ。図2の例では、6つの画素(第1画素〜第6画素)をそれぞれ破線の矩形で示しているが、実際には、より多数の画素がX−Y平面上にマトリクス状に配置されている。
【0022】
図3は、画像表示装置1000が備える制御部の概略構成を示すブロック図である。この制御部160は、CPU11と、ユーザインタフェース(UI)処理部12と、操作パネル13と、リモコン14と、画像処理部15と、入力インタフェース部16と、を備えている。入力インタフェース部16は、図示せざる画像再生装置(DVDプレーヤやコンピュータ等)から入力される画像信号を所定フォーマットの画像データとして画像処理部15に渡す。入力インタフェース部16には、立体表示用の画像信号(左目用の第1画像と右目用の第2画像との合成画像の画像信号)または通常表示用(2次元表示用)の画像信号が入力され得る。画像処理部15は、入力した画像データについて、リサイズを行ったり明るさやコントラスト等の調整を行った上で、画像信号FSを第1駆動回路10に出力する。UI処理部12は、操作パネル13やリモコン14から入力されるユーザからの指示をCPU11に伝える。そして、CPU11は、ユーザからの指示に従って、画像処理部15や第2駆動回路20等を制御する。
【0023】
操作パネル13及びリモコン14には、指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えるための表示モード切替スイッチ(図示省略)が設けられている。ユーザは、この表示モード切替スイッチ(図示省略)を操作することで、入力される画像の種類(立体表示用画像/通常表示用画像)に応じて表示モードを切り替える(指定する)ことができる。ユーザが表示モードを切り替えると、指定された表示モードの情報がUI処理部12からCPU11に通知される。そして、CPU11は、指定された表示モードを示す表示モード信号MSを第2駆動回路20に送信する。第2駆動回路20は、受信した表示モード信号MSの示す表示モードに応じて、2つのガラス板材230,240が備える透明電極(図示省略)に駆動信号を出力する。具体的には、指向性表示モードの場合には電圧0Vを印加し、非指向性表示モードの場合には電圧V1を印加する。
【0024】
なお、前述の液晶表示部100が請求項における画像形成部に相当する。また、液晶レンズ200が請求項における光学部材に、2つのガラス板材230,240が請求項における2つの板状部材に、CPU11及び第2駆動回路20が請求項における屈折率調整部に、それぞれ相当する。
【0025】
図4は、指向性表示モードにおける画像表示装置1000の状態を示す説明図である。なお、図4では、制御部160を省略して描いている。指向性表示モードでは、第1,3,5画素には第1画像が表示され、第2,4,6画素には第2画像が表示される。このとき、液晶層220の屈折率はN1に設定される。この屈折率(N1)はレンズ部材210の屈折率(N2)よりも小さいので、液晶レンズ200は、レンズ作用を有する状態(屈折力のある状態)となる。
【0026】
図5は、指向性表示モードにおいてレンズ部材210を透過する画像光を模式的に示す説明図である。上述したように、レンズ部材210はシリンドリカルレンズの先端部を削除した形状を有しているので、側面の曲面部分はシリンドリカルレンズとして作用することとなる。具体的には、レンズ部材210は、その曲面部分において第3画素から射出された画像光SL1を屈折させ、第3画素の表す像の結像点がユーザの左目の位置となるように作用する。同様に、レンズ部材210は、その曲面部分において第4画素から射出された画像光SR1を屈折させ、第4画素の表す像の結像点がユーザの右目の位置となるように作用する。なお、図示は省略しているが、同様にして、第1画素及び第3画素の表す像の結像点は左目の位置となり、第2画素及び第6画素の表す像の結像点は右目の位置となる。上述したように、第1,3,5画素には第1画像が表示され、第2,4,6画素には第2画素が表示されるので、ユーザの左目には第1画像が映り、右目には第2画像が映ることとなる。
【0027】
ここで、上部の第1の底面部212は、シリンドリカルレンズとしての機能を有していない。しかしながら、この第1の底面部212は、あたかもパララックスバリアの開口部のように機能する。具体的には、例えば、第3画素から射出されて第1の底面部212を透過する画像光SL2は、ユーザの左目に届くが右目には届かない。同様に、第4の画素から射出されて第1の底面部212を透過する画像光SR2は、ユーザの右目に届くが左目には届かない。このように、各レンズ部材210は、その中央にある平行平板状の底面部においてパララックスバリアの開口部として機能し、また、両側面の曲面部分においてレンチキュラレンズとして機能し、これによって指向性表示モードを実現している。
【0028】
図6は、非指向性表示モードにおける画像表示装置1000の状態を示す説明図である。非指向性表示モードでは、全ての画素(第1画素〜第6画素)を用いて1つの画像(第3画像)が表示されている。上述した指向性表示モードでは、合成画像を構成する2つの画像が、それぞれ全画素の半分の画素で表示されていた。これに対して、非指向性表示モードでは、全画素を用いて同一の画像が表示される。このように、非指向性表示モードで表示される通常表示用画像は、指向性表示モードで表示される立体表示用画像の2倍の解像度で表示することができる。
【0029】
非指向性表示モードでは、液晶層220の屈折率は、レンズ部材210の屈折率と同じ値(N2)に設定される。その結果、液晶レンズ200は、光学的には1枚の透光性板材とみなせる状態になる。
【0030】
図7は、非指向性表示モードにおいてレンズ部材210を透過する画像光を模式的に示す説明図である。上述したように、非指向性表示モードでは、液晶レンズ200は、1枚の透光性板材とみなすことができる。したがって、第3画素及び第4画素から射出された画像光は、いずれもユーザの両眼に届くこととなる。したがって、ユーザは、液晶表示部100において表示された比較的高い解像度の画像を、その解像度のままの画像として観察することができる。
【0031】
以上説明したように、画像表示装置1000では、液晶層220の屈折率をレンズ部材210の屈折率と同一の値に設定することによって、液晶レンズ200を1枚の透光性板とみなせる状態とし、これによって非指向性表示モードを実現することができる。一方、液晶層220の屈折率をレンズ部材210の屈折率と異なる値に設定することによって、液晶レンズ200をレンズ作用を有する状態とし、これによって指向性表示モードを実現することができる。また、液晶レンズ200において、レンズ部材210は、2つのガラス板材230,240に面接触しているので、液晶層220における液晶量を、いずれかのガラス板材230,240と接触していない構成に比べて減少することができる。それゆえ、画像表示装置1000の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0032】
B.第2の実施例:
図8は、第2の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図である。この液晶レンズ200aは、レンズ部材260の形状において液晶レンズ200(図2)と異なり、他の構成については第1の実施例と同じである。第2の実施例のレンズ部材260は、Y軸方向に伸びたフレネルレンズの中央先端部分を削除して底面部262を設けた形状を有している。第1の底面部262は、上部ガラス板材230と接している。この第2の実施例における液晶レンズ200aも、第1の実施例における液晶レンズ200と同様な効果を有している。
【0033】
C.第3の実施例:
図9は、第3の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図である。この液晶レンズ200bは、レンズ部材270の形状において第1の実施例の液晶レンズ200(図1)と異なり、他の構成については第1の実施例と同じである。なお、図9では、説明の便宜上、ユーザの側から上部ガラス板材230を透過して見た液晶レンズ200bを示している。第3の実施例のレンズ部材270は、小レンズがX−Y平面においてアレイ状に配置されたいわゆるハエの目レンズの先端部分を削除して第1の底面部272を設けた形状を有している。第1の底面部272は、上部ガラス板材230と接している。この第3の実施例における液晶レンズ200bも、第1の実施例における液晶レンズ200とほぼ同様な効果を有している。
【0034】
D.第4の実施例:
図10は、第4の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図である。この液晶レンズ200cは、レンズ部材210及び液晶層220からなる部分が、Z軸方向について逆になっている点において、第1の実施例の液晶レンズ200(図2)と異なり、他の構成については第1の実施例と同じである。この第4の実施例における液晶レンズ200cも、第1の実施例における液晶レンズ200と同様な効果を有している。
【0035】
E.第5の実施例:
図11は、第5の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図である。この液晶レンズ200dは、レンズ部材280の形状と液晶層220の形状とにおいて、第1の実施例の液晶レンズ200(図2)と異なり、他の構成については第1の実施例と同じである。第5の実施例のレンズ部材280は、Y軸方向に伸びた凹レンズの周囲の先端部分を削除して第2の底面部213を設けた形状を有している。換言すると、第1の実施例における液晶層220に相当する部分をレンズ部材280に置き換え、また、第1の実施例におけるレンズ部材210に相当する部分を液晶層220に置き換えた構成となっている。
【0036】
このような構成において、液晶層220を構成する液晶は、印加電圧が所定の電圧V1の場合には屈折率がN2となり、印加電圧が所定の電圧V3の場合には屈折率がN2よりも大きいN3となる。なお、液晶の屈折率がN3となるときの電圧V3は、実験によって定めて設定することができる。本実施例において、第2駆動回路20が印加する電圧は、第1の実施例と異なる。具体的には、第2駆動回路20は、指向性表示モードの場合には電圧V3を印加し、非指向性表示モードの場合には電圧V2を印加する。
【0037】
このような構成とすることで、指向性表示モードの場合には、液晶層220の屈折率はN3となり、周囲のレンズ部材280の屈折率(N2)よりも大きくなる。それゆえ、液晶層220は、その両側面の曲面を有する部分においてシリンドリカルレンズとして機能し、また、上部ガラス板材230と接する上部の底面部282においてパララックスバリアの開口部として機能し、これによって指向性表示モードを実現する。一方、非指向性モードの場合には、液晶層220の屈折率はN2となり、周囲のレンズ部材280の屈折率と同じになる。それゆえ、第1の実施例と同様に、液晶レンズ200dは1枚の透光性板材とみなせる状態となり、指向性表示モードを実現する。このような構成によって、第5の実施例における液晶レンズ200dも、第1の実施例における液晶レンズ200とほぼ同様な効果を有する。
【0038】
F.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0039】
F1.変形例1:
上述した各実施例の画像表示装置1000は、立体ディスプレイの機能を有していたが、本発明は、複数のユーザにそれぞれ異なる2次元画像を表示するディスプレイの機能を有する画像表示装置にも適用可能である。すなわち、第1のユーザに向かう方向を第1の視方向とし、第2のユーザに向かう方向を第2の視方向として、それぞれの視方向ごとに異なる画像を表示するようにしてもよい。このような構成であっても、指向性表示モードにおいては、各ユーザにそれぞれ異なる画像を表示することができると共に、非指向性表示モードでは、指向性表示モードに比べて高い解像度で画像(2次元画像)を表示することができる。
【0040】
F2.変形例2:
上述した各実施例では、レンズ部材は、上部ガラス板材230と下部ガラス板材240とにそれぞれ面接触するように構成されていたが、これに代えて、これら2つのガラス板材230,240のうちいずれか一方のみと面接触し、他方のガラス基板とは点で接触するように構成してもよい。また、2つのガラス板材230,240のうちいずれか一方のみと面接触し、他方には接触しない構成としてもよい。この構成では、各レンズ部材において底面部を設けないようにしても構わない。これらの構成でも、指向性表示モードと非指向性表示モードの双方を実現可能である。以上の実施例及び変形例から理解できるように、レンズ部材は、2つのガラス板材230,240の間において、任意の位置に設置することができる。
【0041】
F3.変形例3:
上述した各実施例では、レンズ部材は、上部ガラス板材230及び下部ガラス板材240とは別に形成された構成であったが、上部ガラス板材230と下部ガラス板材240とのうち、少なくとも一方と一体形成された構成としてもよい。このような構成とすることで、レンズ部材を2つのガラス板材230,240の間において、適切な位置に配置する工程を省くことができ、画像表示装置1000の製造コストの上昇を抑制することが可能となる。
【0042】
F4.変形例4:
上述した各実施例では、屈折率が変化する媒質として液晶を用いていたが、液晶に限らず、屈折率が可変の任意の媒質を用いることができる。具体的には、例えば、PLZT(Plomb Lanthanum Zirconate Titanate)などを用いるようにしてもよい。
【0043】
F5.変形例5:
上述した各実施例では、レンズ部材の形状は、シリンドリカルレンズに近似した形状、または、Y軸方向に伸びたフレネルレンズに近似した形状、或いは、Y軸方向に伸びた凹レンズに近似した形状であったが、これら形状に限らず、任意の形状のレンズを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例としての画像表示装置の外観を示す説明図。
【図2】図1に示す画像表示装置1000の内部構成を模式的に示すブロック図。
【図3】画像表示装置1000が備える制御部の概略構成を示すブロック図。
【図4】指向性表示モードにおける画像表示装置1000の状態を示す説明図。
【図5】指向性表示モードにおいてレンズ部材210を透過する画像光を模式的に示す説明図。
【図6】非指向性表示モードにおける画像表示装置1000の状態を示す説明図。
【図7】非指向性表示モードにおいてレンズ部材210を透過する画像光を模式的に示す説明図。
【図8】第2の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図。
【図9】第3の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図。
【図10】第4の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図。
【図11】第5の実施例における液晶レンズの概略構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0045】
10…第1駆動回路
11…CPU
12…ユーザインタフェース処理部
13…操作パネル
14…リモコン
15…画像処理部
16…入力インタフェース部
20…第2駆動回路
100…液晶表示部
111…上部偏光板
112…上部ガラス基板
113…カラーフィルタ層
114…液晶層
115…下部ガラス基板
116…下部偏光板
150…バックライト
160…制御部
200,200a〜200d…液晶レンズ
210…レンズ部材
212,262,272,282…第1の底面部(平面部)
213,214…第2の底面部(平面部)
220…液晶層
230…上部ガラス板材
240…下部ガラス板材
260a〜260c,270,280a〜280d…レンズ部材
1000…画像表示装置
FS…画像信号
MS…表示モード信号
SL1,SR1,SL2,SL1…画像光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の視方向には第1の画像を表示し、第2の視方向には第2の画像を表示する指向性表示モードと、前記第1の視方向と前記第2の視方向の双方に同一の画像を表示する非指向性表示モードと、を切り替え可能な画像表示装置であって、
画像を形成して前記画像を表す画像光を射出する画像形成部と、
前記画像形成部の射出側に配置され、表示モードの切り替えのために用いられる光学部材と、
を備え、
前記光学部材は、
透光性を有する2つの板状部材と、
前記2つの板状部材の間に配置された所定の屈折率のレンズ部材と、
前記レンズ部材と前記2つの板状部材との間に充填された屈折率可変媒質と、
前記屈折率可変媒質の屈折率を調整するための屈折率調整部と、
を備え、
前記屈折率調整部は、
(i)前記画像表示装置の表示モードを前記指向性表示モードとするために、前記屈折率可変媒質の屈折率を前記所定の屈折率と異なる屈折率となるように調整することによって、前記光学部材を、レンズ作用を有する第1の使用状態とすると共に、
(ii)前記画像表示装置の表示モードを前記非指向性表示モードとするために、前記屈折率可変媒質の屈折率を前記所定の屈折率と同一となるように調整することによって、前記光学部材を、前記レンズ作用を有さない透光性板材として機能する第2の使用状態とすることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記レンズ部材は、前記2つの板状部材にそれぞれ接触する2つの接触面を有すると共に、前記2つの接触面間の側面部分が曲面で構成され、
前記光学部材は、前記第1の使用状態において、前記側面部分を透過する光について前記レンズ作用が働くと共に、前記2つの接触面をいずれも透過する光について前記レンズ作用が働かないように構成されている画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像表示装置において、
前記屈折率変化媒質は液晶である、画像表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像表示装置において、
前記レンズ部材は、前記2つの板状部材のうち、すくなくとも一方と一体形成されている、画像表示装置。
【請求項5】
第1の視方向には第1の画像を表示し、第2の視方向には第2の画像を表示する指向性表示モードと、前記第1の視方向と前記第2の視方向の双方に同一の画像を表示する非指向性表示モードと、を切り替え可能な画像表示装置において、表示モードの切り替えのために用いられる光学部材であって、
透光性を有する2つの板状部材と、
前記2つの板状部材の間に配置された所定の屈折率のレンズ部材と、
前記レンズ部材と前記2つの板状部材との間に充填された屈折率可変媒質と、
前記屈折率可変媒質の屈折率を調整するための屈折率調整部と、
を備え、
前記屈折率調整部は、
(i)前記画像表示装置の表示モードを前記指向性表示モードとするために、前記屈折率可変媒質の屈折率を前記所定の屈折率と異なる屈折率となるように調整することによって、前記光学部材を、レンズ作用を有する第1の使用状態とすると共に、
(ii)前記画像表示装置の表示モードを前記非指向性表示モードとするために、前記屈折率可変媒質の屈折率を前記所定の屈折率と同一となるように調整することによって、前記光学部材を、前記レンズ作用を有さない透光性板材として機能する第2の使用状態とすることを特徴とする光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−225334(P2008−225334A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66759(P2007−66759)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】