説明

画像表示装置

【課題】画像表示装置がより少ない工程数によって作製され、光利用効率が高い。
【解決手段】光源101からの光は導光素子102へ導かれ、導光素子102内で光が反射を繰り返し、出射光に配置されたカラーフィルタ103へ達し、フィルタ103によって領域ごとに所定の光が出射され、透過型の空間光変調器である液晶素子104、偏光素子105によって画像が形成され、スクリーン面106に表示される。フィルタは、金属膜および非金属積層膜から成る積層膜が積層され、非金属積層膜には空孔によって所定ピッチの微細周期構造が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光利用効率の高い画像表示装置に関し、例えば低消費電力の液晶画像表示装置または小型低消費電力のプロジェクタに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用のコンピュータや携帯電話、ゲーム機などに画像表示装置として透過型液晶を用いた液晶表示装置が多く使用されている。このような携帯型の電子機器では、小型化とバッテリーによって駆動されるため低消費電力化が望まれている。上記した機器などに用いられる画像表示装置は、バックライト光源と、バックライトからの光の透過率を画素ごとに変調する透過型液晶素子と、フルカラー出力を行うためのカラーフィルタを要素として含む。カラーフィルタは液晶の画素表示に応じて、赤、緑、青色を透過する領域が周期的に形成されている。このカラーフィルタは一般的に色素を用いた吸収型のものが利用され、例えば赤色透過領域ではその他の緑、青が吸収されるため、透過利用可能な光量は3分の1以下となり、光利用効率が悪い。よって、従来の吸収型カラーフィルタを用いた画像表示装置は光利用効率が悪く暗い、あるいはそれを補うためにはバックライト光源の光を強くする必要があり、消費電力が大きいといった問題があった。
【0003】
画像表示装置における上記した問題を解決するために、カラーフィルタとして特定の波長域の光は透過し、その他の波長域の光は反射するフィルタを用いた構成が以下のように多数提案されている(特許文献1〜3)。
【0004】
これらの発明では、いずれもカラーフィルタとして、特定の波長を透過し、その他の波長を反射するような領域が形成された反射型のカラーフィルタを有する画像表示装置が示されている。反射した光は、別の反射手段によってカラーフィルタへ再び入射されるような構成をとることで、光の再利用が可能となり、光利用効率が高い、画像表示装置が示されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、コレステリック液晶をカラーフィルタとして用いた構成が示されている。特許文献2、3では、非金属の積層膜、いわゆる誘電体多層膜による反射型カラーフィルタが示されている。
【0006】
しかしながら、異なる透過波長域を有する積層膜は、異なる膜構成を採る必要がある。このように異なる膜構成を有する積層膜を微小な領域に形成することは困難であり、また多くの工程が必要となった。
【0007】
また、光利用効率の問題は投影型画像表示装置、いわゆるプロジェクタに関しても存在する。小型で持ち運びが可能なプロジェクタの開発が盛んであり、プロジェクタにも小型かつ低消費電力化が望まれている。プロジェクタでカラー画像を出力するための方式は主なものとして3種類ある。
【0008】
第一の方法は、カラーホイールと呼ばれる領域ごとに異なる透過波長域を有するカラーフィルタを回転させることで、照射される光を赤、緑、青などに順次切り替え、それと同期して画像を表示することで、擬似的にカラー画像を表示する方法である。これは空間光変調器としてDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を用いたプロジェクタにおいて用いられる。
【0009】
第二の方法は、LED(発光ダイオード)などのように赤、緑、青、それぞれの光源を用い、これらを時分割で順次点灯し、それと同期して画像を順次切り替えて表示することで、擬似的にカラー画像を表示する方法である。
【0010】
第三の方法は、前述した液晶表示装置と同様に、液晶素子などの空間光変調器の画素に合わせて、領域ごとに異なる色を透過する吸収型のカラーフィルタを形成し、カラー画像を出力する方法である。
【0011】
これらの方法では、表示される色と異なる色は使用出来ない、あるいはもともと点灯させないため、明るく小型で光利用効率の高いプロジェクタを達成することが出来なかった。それに対して、第三の方法は前述の発明のように反射型のカラーフィルタを用いることで、光利用効率の高いプロジェクタ構成をとることが可能である。
【0012】
【特許文献1】特許第3078750号公報
【特許文献2】特開平8−292428号公報
【特許文献3】特開平9−258207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述したように、従来の発明で用いられている反射型のカラーフィルタは作製が困難であり、また多くの工程数を必要とした。特に、プロジェクタで用いられる空間光変調器はピッチが細かく、異なる膜構成の積層膜を微小領域に並べて形成することは不可能であった。
【0014】
また、上述のカラーフィルタの問題とは異なるもうひとつの課題として、空間光変調器、特に液晶素子は光を透過することが可能な開口部が限られており、これによる光利用効率の低下が挙げられる。開口部ではない部位には、電極およびスイッチング用のトランジスタ素子などが存在しており、この部位は通常ブラックマトリックスと呼ばれる黒色吸収体によって遮蔽されている。あるいは、ブラックマトリックスに相当する部位が金属などの反射性材料によるパターンとなっているものも提案されている。
【0015】
しかしながら、このようなブラックマトリックスあるいは反射性材料によるパターンは上述のカラーフィルタとは別のプロセスによって形成されるものであり、多数の工程を必要とした。
【0016】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、より少ない工程数によって作製され、光利用効率の高い画像表示装置を提供することにある。
【0017】
すなわち、
請求項1:カラーフィルタを用いた画像表示装置で、光利用効率が高く、従来のものよりも製造が容易なものを提供する。
【0018】
請求項2:小型の画像表示装置で像を拡大投影し、大画面の画像を映し出す投影型の画像表示装置で、光利用効率が高く、従来のものよりも製造が容易なものを提供する。
【0019】
請求項3:投影型の画像表示装置において、微小なミラーアレイから成るデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や反射型の液晶素子など、反射型デバイスを空間光変調器として用いられるとき、あるいはその他の構成によって特定の制限が存在するときには、カラーフィルタと空間光変調器の間にある程度距離を離して配置させる必要がある。カラーフィルタは、所定の領域では所定の色が透過するようになっているが、空間光変調器まで距離が長いときには、その領域がぼけてしまい、空間光変調器の面上では色が混じり合い、色再現性およびコントラストが低下する問題がある。このような問題を解決し、カラーフィルタと空間光変調器が離れた位置に配置された構成であっても、色再現性が良く、コントラストが低下しない画像表示装置を提供する。
【0020】
請求項4:低コストで小型でありながら光利用効率が高く、明るいあるいは低消費電力の画像表示装置を提供する。
【0021】
請求項5、6:低消費電力で、光利用効率がより高い画像表示装置を提供する。
【0022】
請求項7:より作製が容易な画像表示装置を提供する。
【0023】
請求項8:複数の特定の波長域に対して光利用効率が高いカラー画像表示装置を提供する。
【0024】
請求項9:より作製が容易で、作製誤差の少ない画像表示装置を提供する。
【0025】
請求項10:光利用効率が高い、3原色の合成によるフルカラー画像表示装置を提供する。
【0026】
請求項11:光利用効率が高いフルカラーの画像表示装置を提供する。
【0027】
請求項12:空間光変調器として液晶などの偏光依存性を有するものを用いる際に、より光利用効率が高く、信頼性が高く、製造が容易な画像表示装置を提供する。
【0028】
請求項13:より光利用効率が高い画像表示装置を提供する。
【0029】
請求項14、20:画像表示装置は一般的に、空間光変調器へ入射する光のうち取り込むことが可能な入射角度に制限がある。この制限角度外の角度で空間光変調器へ入射した光は、損失となる、あるいはノイズ光の原因などになるため、光利用効率が低下し、コントラストが低下するなどを招く。このような問題を解決し、光利用効率が高い画像表示装置を提供する。
【0030】
請求項15:より低コストで、小型の画像表示装置を提供する。
【0031】
請求項16:空間光変調器として液晶などの偏光依存性を有するものを用いる際に、より光利用効率が高い画像表示装置を提供する。
【0032】
請求項17:請求項16の画像表示装置に対して、より光利用効率が高い画像表示装置を提供する。
【0033】
請求項18:より光利用効率が高い画像表示装置を提供する。
【0034】
請求項19:より製造が容易な画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、複数色の波長域を有する光源と、光源からの光を導光する導光素子と、導光素子表面に配置され、導光素子からの光を領域ごとに異なる色光に分けて出射するカラーフィルタと、複数の画素構造を有する空間光変調器とからなる画像表示装置であって、前記カラーフィルタは、複数の材料を積層した積層膜と、前記積層膜のうち少なくとも一部の層に形成され、光源の波長以下の周期を有する微細周期構造とからなり、前記複数の画素構造に応じて異なる色光を出射する領域が複数形成され、出射する色光に応じて前記微細周期構造の底部または幅またはその両方が異なっていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
請求項1:空間光変調器に用いられるカラーフィルタとして、領域ごとに特定の波長を透過し、前記特定の波長とは異なる波長を主に反射するカラーフィルタを用いることによって、光利用効率を高めることが可能である。また、カラーフィルタとして、基板上に積層膜構造が形成され、少なくともその一部に微細な周期構造が形成されたものを用いる。これによって、一括のプロセスにより反射型のカラーフィルタを形成することが可能となり、量産性に優れた、光利用効率が高い画像表示装置を実現できる。
【0037】
請求項2:さらに、空間光変調器によって表示される画像を、投影光学系によってスクリーン上によって拡大投影することで、小型の装置によって大きな画像を作り出すことが可能となる。
【0038】
請求項3:カラーフィルタと、空間光変調器の間に結像系が配置され、カラーフィルタと空間光変調器の面が共役の関係であるので、カラーフィルタの像が空間光変調器の面上で結像され、色の混じりが無い、画像表示装置を実現できる。
【0039】
請求項4:空間光変調器として透過型の液晶素子を含むものを用いることによって、カラーフィルタ直後に空間光変調器を配置することが可能になり、小型の画像表示とすることが出来る。また、液晶素子は空間光変調器の中でももっとも低価格であるため、より低コストの画像表示装置とすることが出来る。
【0040】
請求項5:LED光源は波長幅が狭いため、カラーフィルタの透過波長域に対してより効率的に光を透過させることが可能である。また、LED光源はランプ光源などと比べ、消費電力が少ないことからも、特にバッテリー駆動で動作させる小型プロジェクタに適している。
【0041】
請求項6:レーザー光源はLED光源に比べさらに波長幅が短いため、前述と同様の理由により、効率的に光を利用することが可能である。特にLD光源はLED光源よりも、より消費電力が少ないため、小型プロジェクタに適している。LD光源は発振波長が限られているため、LD光源では得られない波長域の光に対してはLED光源を使うなど、混ぜて使うことも効果的である。
【0042】
請求項7:カラーフィルタを構成する積層膜の一部に金属膜を用いることによって、より少ない層数によってカラーフィルタを構成することが可能となる。よって、画像表示装置としても作製がより容易になる。
【0043】
請求項8:カラーフィルタを構成する積層膜に共振構造を用いることによって、所望の波長のみを効率よく透過させることが可能となる。このカラーフィルタを用いた構成によって、複数の波長域に対して光利用効率が高い、画像表示装置とすることが出来る。
【0044】
請求項9:カラーフィルタとして、金属膜には前記微細周期構造が形成されておらず、少なくとも前記金属膜の上部の膜には前記微細周期構造が形成されている構成をとることにより、微細周期構造の形成過程において、金属膜がエッチングのストッパ層として働く。ストッパ層が存在することによって、カラーフィルタの製造が容易になり、作製誤差も少なくなる。
【0045】
請求項10:カラーフィルタに赤色透過領域、緑色透過領域、青色透過領域を設けることによって、赤、緑、青の3原色を混合したフルカラー画像表示装置が可能となる。
【0046】
請求項11:液晶素子などの空間光変調器では画素ごとに光を有効利用することが可能な開口領域が限られている。この開口領域以外に入射する光を、カラーフィルタに反射領域を形成することで、導光素子へと反射させ、光を再利用することが可能になる。これによって、より光利用効率が高い画像表示装置を実現できる。
【0047】
請求項12:カラーフィルタを構成する微細周期構造として1方向に配列された周期構造とする。これによって、偏光方向によって透過率が異なり、特定の偏光方向のみを主に透過させ、異なる偏光方向を主に反射させることが可能となる。本発明の画像表示装置の構成では、反射された光のうち少なくとも1部を再び再利用することが可能なため、光利用効率が高い画像表示装置を実現できる。
【0048】
また、液晶素子の前に配置された偏光素子によって吸収される光の量が減るため、偏光素子のダメージを避けることが可能となり、より信頼性の高い画像表示装置を実現できる。また、1方向に配列された微細周期構造は干渉露光法などによるパターニングをもとに作製することが可能であり、その他の複雑な形状に比べ生産性に優れている。
【0049】
請求項13:導光素子の、出射面とは異なる他の面が反射面であるので、導光素子内部で多重反射が効率良く行われる。これによって、前述したような光の再利用が効率良く行われることになり、より光利用効率が高い画像表示装置を実現できる。
【0050】
請求項14:導光素子としてテーパーロッド形状を含む構成により、導光素子から出射する光の出射角を制限することが可能となり、空間光変調器へ入射する光の入射角を制限できる。これによって、光利用効率やコントラストが低下しない画像表示装置を実現できる。
【0051】
請求項15:導光素子を製造容易な平板状とすることで製造コストを下げることができる。また、薄い平板状の導光板を用いることにより画像表示装置を小型化することが可能となる。
【0052】
請求項16:導光素子の出射面に反射型偏光素子を備えたことにより、特定の直線偏光の光のみが出射される画像表示装置を実現できる。反射型偏光素子は、特定の直線偏光とは異なる偏光方向の光を反射して導光素子へ戻すため、光の再利用が可能であり、より光利用効率が高い画像表示装置を実現できる。
【0053】
請求項17:請求項16の画像表示装置で、さらに導光素子の内部または端面に位相板を配置する。出射される偏光方向とは異なる偏光の光は反射型偏光素子で反射されるが、反射された光は位相板によって偏光方向が回転され、再び反射型偏光素子へ入射する。このように、位相板を配置することで、偏光方向を変えて再び出射面へ導くことができ、光の再利用がより効率良く行われる。
【0054】
請求項18:導光素子内部または端面に散乱体を配置することによって、導光素子内で光がさまざまな偏光方向で、さまざまな角度に散乱される。このため、前述のような光の再利用が効率よく行われる。また、散乱体を用いることで、導光素子内で様々な角度成分の光を作り出すことが出来、光の均質化をより効率よく行うことが可能となる。
【0055】
請求項19:散乱体の代わりに凹凸形状が形成された回折面によっても光の再利用を効率的に行うことが可能となる。散乱体を用いる際には、別の材料を導光素子に付加する必要があるが、回折面は、導光素子上に凹凸形状を形成するだけで良く、より製造が容易である。
【0056】
請求項20:導光素子とカラーフィルタとの間に、画像表示装置として有効利用可能な光となる出射角度内の光のみを主に透過し、それ以外の光を反射する角度制限積層膜が形成されている。これによって、有効利用可能な光のみを出射することができ、それ以外の光を再利用して有効利用可能な光へと変換することが出来るため、光の利用効率を高めることが可能であり、かつノイズ光が混じることによる画像のコントラスト低下を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。なお、以下の図は模式的に表したもので、正確な寸法を表すものではない。また、図中の矢印は特別な説明がない限り、光の行路を模式的に表している。
【0058】
実施例1:
図1は、本発明の実施例1に係る画像表示装置を示す。図1(a)において、光源101からの光は導光素子102へ導かれる。導光素子102内で光は反射を繰り返し、出射光に配置されたカラーフィルタ103へ達する。カラーフィルタ103によって領域ごとに所定の光が出射され、透過型の空間光変調器である液晶素子104およびその後に配置された偏光素子105によって画像が形成される。形成された画像は拡散板などから成るスクリーン面106によって拡散され、画像として表示される。画素間のクロストークを避けるため、カラーフィルタ103は、液晶素子に密着またはなるべく近接して配置されていることが好ましい。
【0059】
光源に関して;
光源101としては、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザー)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子、あるいはLDを励起光源とした固体レーザー、LDの逓倍波による光、LEDやLDなどを励起光源とした蛍光体、ランプ光源など様々な光源を用いることが出来る。あるいは光源101としてこれらの光源を混ぜて使用することも可能である。
【0060】
カラーフィルタの透過波長帯は波長幅が限られているため、光を効率的に利用するには、ランプや蛍光体のような広い波長幅を有する光源よりは、LEDのように波長幅が限られている光源、さらにはレーザーのように非常に狭い波長幅を有する光源を用いることが好ましい。また、カラーフィルタは光源の波長域に合わせて設計されることが望ましく、蛍光体による蛍光やランプを光源としたときよりも、LEDやレーザーはより波長域が狭いため、カラーフィルタの設計が容易となる。このような点からも、LEDやレーザーを用いることが好ましい。小型で安価でかつ発光効率が高い点から、低価格、小型の画像表示装置の光源としてはLEDを用いるのがふさわしく、波長域が非常に狭く、より小型で高効率な点から、より低消費電力で小型の画像表示装置としてはレーザー、特にLDを用いるのが良い。LD光源は発振可能な波長が限られているため、LD光源では得られない波長域の光に対してはLED光源を使うなど、混ぜて使うことも効果的である。
【0061】
導光素子に関して;
導光素子102は、図1(a)では中空の構造で、カラーフィルタ103が配置されている出射面以外は周辺がアルミ蒸着されたガラス板107となっている。導光素子としてはこのような中空構造のほか、石英やガラス、透明プラスチックなど、光源の光に対して透過性を有するものであれば様々な材料を用いることが可能である。また、図1(a)に示したように、導光素子は、カラーフィルタ103が配置されている面とは異なる他の面に反射面が形成されていることが望ましい。反射面としては金属の薄膜層が形成された面の他、屈折率の異なる材料が複数積層された、いわゆる多層膜ミラーが形成された面となっているものでも良い。
【0062】
カラーフィルタに関して;
カラーフィルタ103をスクリーン面の表面側から見た模式図を図1(b)に示す。カラーフィルタ103は赤色透過領域201、緑色透過領域202、青色透過領域203が一方向に周期的に形成された構成になっており、これらの周期は液晶素子の画素ピッチと一致して形成されており、3つの画素でカラー画像の1画素となる。図中の点線は液晶素子の画素構造を示している。各色の透過領域は、それぞれ各色の光のみを透過しそれとは異なる他の色は主に反射するようになっている。反射された光は再び導光素子102内へ導かれ複数回反射され、再びカラーフィルタ103へ到達し、各色の透過領域ごとにそれぞれ所定の色の光のみを透過する。これら一連の過程が繰り返されることで、カラーフィルタ103からは領域ごとに決められた所定の色を有する光が出射されることになる。通常の吸収型カラーフィルタでは、このような光の再利用過程が無いため光の利用効率が低いが、本発明の構成ではより光利用効率が高くなる。
【0063】
また、カラーフィルタの赤色透過領域201、緑色透過領域202、青色透過領域203のそれぞれの間には、赤、緑、青の光を反射する反射領域204が形成されていることが望ましい。液晶素子では画素と画素の間に電極やスイッチング用のトランジスタ部などが存在しており、これらの領域には通常、迷光などを防ぐため光が全く透過しないブラックマトリックスなどが形成されている。この領域が液晶素子の開口制限となっており、通常は液晶素子へ入射した光のうち一部しか利用出来ないことになる。本発明の画像表示装置に用いられるカラーフィルタでは、この領域に応じる部分が入射光の多くを反射する反射領域204となっている。これによって、本来は液晶の開口部に入らずブラックマトリックスによって吸収されていた光がカラーフィルタ103の反射領域204によって反射され、再び導光素子102内へ戻される。そして、その光のうち少なくとも一部は再びカラーフィルタ103へ入射され、カラーフィルタの透過波長域に合う波長の光は出射される。このような過程が繰り返されることによって、光の再利用が行われ光の利用効率を上げることが可能となる。
【0064】
カラーフィルタは図1(c)に示すように、六角形などの構造が2次元的な広がりを持って周期的に並んでいても良い。このようなカラーフィルタの色配置は、空間光変調器の画素構造や、人が画像を見たときの見えやすさなどを元に決定される。
【0065】
カラーフィルタの構造に関して;
図2は、カラーフィルタの断面の一部を拡大した図を示す。光学フィルタは、透過性を有する基板301上に金属膜303および非金属積層膜304から成る積層膜302が積層され、非金属積層膜304には空孔によってピッチpの微細周期構造が形成されており、積層膜構造部の幅は、積層膜構造部の幅とピッチとの比を表しているデューティ比aによって規定されている。デューティ比aは0から1の値を取ることが可能であり、0のときは積層膜構造が全く無いことを、1のときは周期構造が形成されていない通常の積層膜構造を表す。このように、デューティ比が変化しているとは、積層膜構造が全く無いものや、周期構造部が形成されていない状態も含む。
【0066】
微細周期構造は積層膜構造の全てに形成されている必要は無く、一部に形成されていれば良い。図2(a)では、金属膜303には微細周期構造が形成されておらず、その他の積層膜には微細周期構造が形成されている。
【0067】
微細周期構造は、入射光の波長よりも大きいピッチで形成されていると、回折光を強く生じるため、画像表示装置で使用される波長のうち最も短い波長よりも細かいピッチで形成されていることが望まれる。
【0068】
図2(b)は、積層膜構造302の具体的な膜構成の設計例を示す。図2(b)の膜構成は共振構造となっており、金属膜303による下層部反射膜11と、第二層目の膜によって構成されるスペーサー層12、および第三層目から第九層目までで構成される上層部反射膜13から構成される。ここで、下層部、上層部とは、基板に近い側を下層部、基板から遠い側を上層部と便宜的に呼んだものである。
【0069】
第三層目から第九層目までは、屈折率の異なる2種類の非金属材料を等周期で積層したいわゆる誘電体反射層の構成となっており、高屈折率材料としてTa2O5(波長550nmで屈折率2.183)、低屈折率材料としてSiO2(波長550nmで屈折率1.473)を用いて設計を行った。
【0070】
金属膜の材料としては、図2(b)に示す、Agの他にAl、Cu、Ni、Auなど多種の金属を用いることが出来る。あるいは、これら金属の合金、合成材料を用いることも可能である。金属としては、画像表示装置に使用される光の波長範囲で、反射率が高く、かつ吸収が少ないものが望ましい。例えば、赤、緑、青の光を使用したフルカラーの画像表示装置であれば、可視光全域で反射率が高く、かつ吸収係数もAlなどに比べ小さいAgを用いることが望ましい。
【0071】
非金属膜としては、様々なガラス材料、金属化合物、半導体材料、ポリマーなどを用いることが可能である。特にガラスや、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物などが熱的、機械的に安定で透過率も高いためより良い。また、フィルタの作製工程において、後述するようなドライエッチング工程が含まれるときは、積層膜材料としてドライエッチング時のエッチングレートが略等しい材料を用いることがより良い。
【0072】
基板には一般的にガラスが用いられるが、化合物半導体、金属酸化物、ポリマーなど様々なものを用いることが可能である。基板としてはフィルタとして使用するときの波長に対して透過性が高いものが良い。また、表面媒質は空気としたが、表面媒質も透過性を有する基板となっていても良い。このときは、すなわち基板の間に微細構造が形成された積層膜が挟み込まれた構成である。
【0073】
ピッチpが0.3μmのときの図2(a)、(b)に示す構造に対して、厳密結合波解析(以後、RCWA法と略す)によって、分光透過率および分光反射率を計算した結果を、それぞれ図3(a)、(b)に示す。ここで、透過率(または反射率)は1のとき全ての光が透過(または反射)、0のとき透過光(または反射光)が全く無い状態を表す。計算は、光がフィルタに垂直に入射したときで、光の偏光方向が周期構造に平行な電場振動を持つ光(以後TE偏光と呼ぶ)に対して行った。TE偏光およびそれと直交する偏光方向(以後TM偏光と呼ぶ)それぞれの光の電場振動方向は図2(a)の矢印で示されている。
【0074】
図3の実線はデューティ比aが1のとき、点線はaが0.4のとき、一点鎖線はaが0.2のとき、二点鎖線はaが0のときの分光透過率および分光反射率である。赤、緑、青色に対応する光の波長域は、それぞれ、およそ450nm〜500nm、500nm〜550nm、600nm〜700nm程度であるため、aが1のとき(すなわち微細構造が形成されていない積層膜)は、赤色を透過し他の色を反射する赤色透過領域となっており、aが0.4のときは緑色を透過し他の色を反射する緑色透過領域、aが0.2のときは青色を透過し他の色を反射する青色透過領域、aが0のとき(すなわち積層膜構造302のうち非金属積層膜304が全く無いとき)は全ての色で反射率の高い反射領域とすることが出来る。このように、積層膜構成として共振構造を用い、少なくともスペーサー層の一部には微細周期構造が形成されることによって、特定の波長域で強い透過帯域を持つバンドパスフィルタとすることが可能である。また、この積層膜構造の少なくとも一部に微細周期構造が形成されることによって、その微細周期構造のデューティ比を領域ごとに変えることによって、透過帯域を領域ごとに変えることが可能である。また、図3(b)からわかるように、このカラーフィルタは透過波長域以外の光を高い反射率で反射する。
【0075】
本発明の画像表示装置では、このようなカラーフィルタを用いることによって、前述したような光の再利用過程が効率良く行われることになる。
【0076】
図2(a)に示した構造を持つカラーフィルタの作製方法を図4で説明する。図4では各工程後の作製された構造断面図を模式的に表している。
【0077】
1.基板401上に金属膜を含む積層膜402を形成する。薄膜の形成には蒸着やスパッタリングといった物理的気相成長法(PVD)や、気相に熱や光を当てて化学反応を起こすことによって基板上に膜を形成させる化学的気相成長法(CVD)などによって形成することが出来る。あるいは、液体の原料を用いてスピンコートやディッピングなどによって塗布し、その後ベーク処理などの後処理をすることによって、成膜することも可能である。このような成膜過程を複数回繰り返すことで積層膜が形成される。また、これらの成膜手法を複数用いて積層膜を形成しても良い。
【0078】
2.積層膜構造上にレジストを塗布し、レジスト上に露光法によって微細構造をパターニングし、レジストパターン膜403を作製する。露光法としては、いわゆるステッパーとして知られるような、マスクを通して紫外光を基板上に照射する投影露光機や、電子線を走査することによって露光するEB露光機、あるいは紫外レーザーからの光を干渉させて露光する干渉露光機などを用いることが出来る。または、予めこのような露光装置を用いて作製した微細転写型を用い、転写型をレジストに密着させることでパターニングを行う、いわゆるナノインプリント法を用いることも可能である。ナノインプリント法では、複雑で微細なパターンを容易に転写することが可能であるため、より好ましい。
【0079】
3.レジストパターン膜403に対して、リフトオフを行うことによって金属パターン膜404を形成させる。リフトオフ工程とは、レジスト上に金属膜を成膜し、その後レジストを溶解して除去することで、レジストパターンの反転パターンを持つ金属膜を形成する手法である。
【0080】
4.積層膜402上に形成された金属パターン膜404をマスクとしてエッチングを行い、積層膜402をパターニングし、微細構造が形成された積層膜405とする。このときエッチングとしてはプラズマによるドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングではプラズマ条件によって高い垂直性(異方性)でエッチングを行うことが可能であるため、金属パターン膜404のパターンをより良い精度、高い均質性で積層膜構造に転写することが出来る。また、ドライエッチングでは、AgとTa2O5およびSiO2ではエッチングレートが大きく異なるため、Ta2O5およびSiO2の膜部のみに微細構造が形成される。本実施例では、AgおよびTa2O5、SiO2を用いて説明しているが、一般的にドライエッチングをする際にはTa2O5やSiO2のような非金属材料とAgのような金属材料では、エッチングレートが大きく異なることが多い。よって、スペーサー層に非金属材料を用いる際には、ドライエッチングのストッパ層として下層部反射層として金属を用いることが良い。このようなストッパ層があることによって、微細構造の形成が容易となり、またエッチング時間の過多や過少による製造誤差の影響を大幅に低減することが出来る。
【0081】
5.金属パターン膜404を除去する。金属パターン膜404を除去する際に、積層膜405が影響を受けないことが望まれるため、金属パターン膜404は、積層膜402中に用いられる金属膜の材料とは異なる材料が用いられることが好ましい。406、407、408は、それぞれ赤色透過領域201、緑色透過領域202、青色透過領域203を示し、実際には図1(b)または図1(c)に示すように、これらが周期的に並んだ構造となっている。
【0082】
以上のようにして、図2(a)に示した構造が作製される。この方法では、積層膜としては同一の構成を用い、パターニングは一括で行われるため、生産性に優れている。ここでは省略したが反射層204が含まれていても同様に一括のパターニングによって作製可能である。
【0083】
図2では微細周期構造として、1方向に配列された周期構造を示した。このような1方向に配列された微細周期構造では、構造複屈折と呼ばれる偏光異方性が誘起されるため、本実施例のフィルタでは偏光方向によって透過あるいは反射分光特性が異なることになる。
【0084】
ピッチpが0.3μm、デューティ比aが0.4のときの図2(a)、(b)に示した構造のTE偏光とTM偏光の分光透過率および反射率をそれぞれ図5(a)、(b)に示す。実線がTE偏光の分光透過率、点線がTM偏光の分光透過率である。このように、TM偏光では全体的に透過率が低く、反射率が高くなる。反射された光は再び導光素子で多重反射した後にカラーフィルタへ入射するため、反射された光のうち少なくとも一部は再利用可能となる。これによって光利用効率がより高くなる。また、液晶素子の前に配置された偏光素子としては一般的に高分子を延伸した偏光フィルムが用いられるが、偏光素子における光の吸収も低下する。プロジェクタのように強い光のもとで試用すると、偏光フィルムは多量の光を吸収することによって熱が発生し、その熱によってダメージを受ける問題がある。本発明の方式では、偏光素子の光吸収も低下するため、そのような問題がない。
【0085】
また、1方向に配列された周期構造では、図4に示したパターニング工程において、2本の光を異なる角度で基板に入射し、2光束から形成される干渉縞によって露光を行う、干渉露光法を用いることが出来る。干渉露光法では、等しいピッチの構造を広い範囲にわたって短時間に形成することが可能であるため、生産性に優れた手法である。
【0086】
微細周期構造として同様に2次元的な広がりを持った周期構造を取ることも可能である。この場合、偏光方向による透過率の依存性を無くす、または低減することが可能であり、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)のように偏光依存性の無い空間光変調器に対して用いるときに有効である。
【0087】
実施例2:
図1ではカラーフィルタとして、赤、青、緑を透過する領域がそれぞれ形成されている例を示したが、透過色としては他の色構成でも良い。例えば、シアン、マゼンタ、イエローを透過する構成も可能である。このようなカラーフィルタの断面図の一部を拡大した図を図6(a)に示す。カラーフィルタは基板301上に、屈折率の異なる2種類の非金属材料が積層された非金属積層膜501が形成された構造となっている。積層膜の構成例を図6(b)に示す。高屈折率材料としてAl2O3(波長550nmで屈折率1.771)、低屈折率材料としてSiO2を用いた。
【0088】
ピッチpが0.3μmのときの図6(a)、(b)に示した構造に対して、垂直にTE偏光の光が入射したときの、分光透過率および分光反射率を計算した結果を、それぞれ図7(a)、(b)に示す。図7の実線はデューティ比aが1のとき、点線はaが0.4のとき、一点鎖線はaが0.2のとき分光透過率および分光反射率である。aが1のときはシアン色を透過し赤色を反射する領域、aが0.4のときはマゼンタ色を透過し緑色を反射する領域、aが0.2のときはイエロー色を透過し青色を反射する領域となっている。このような領域を複数並べたフィルタを図1のカラーフィルタ103に用いることによって、シアン、マゼンタ、イエローをカラーフィルタとする画像表示装置とすることが出来る。
【0089】
図6(a)、(b)に示したように積層膜構成は全てが非金属膜から成る構成を取ることも可能である。図2(b)と図6(b)を比べてわかるように、金属膜を含んだ積層膜構成では、層数をより少なくすることが可能である。また、非金属膜のみから成る構成では図1(b)に示したような可視光全域を反射するような反射領域204を形成することは難しく、この点からも図2(a)に示した構造のように積層膜中に金属膜が含まれた構成のほうが好ましい。
【0090】
実施例3(プロジェクタに関して):
図1(a)の構成はそのまま液晶表示装置として利用することが可能であるほか、液晶素子としてよりサイズの小さい素子を用い、液晶素子に形成された画像を拡大光学系によって拡大投影する投影型画像表示装置、いわゆるプロジェクタとして用いることも可能である。このときは、図8に示すように、液晶素子104の後に投影レンズ群601を配置し、投影レンズ群601によってスクリーン面602に液晶表示装置の像が結像するようにすれば良い。投影レンズ群601にはズーム用やピント調整用の可動部が含まれていることが好ましい。
【0091】
また、空間光変調器として透過型液晶素子の他に、反射型液晶素子やDMDを用いることも可能である。反射型液晶素子を用いたプロジェクタの実施例を図9に示す。カラーフィルタ103と反射型液晶素子603は、結像レンズ604によって共役の関係となっている。反射型液晶素子603を通った光は、偏光ビームスプリッタで特定の偏光方向のみが投影レンズ群601へと導かれスクリーン602上に画像が形成される。このように、導光素子と空間光変調器の間に距離がある場合にも、その間に結像光学系を配置し、カラーフィルタ面と空間光変調器の面を共役の関係とすることで、光利用効率が高い画像表示装置を実現できる。
【0092】
しかし、図9に示されるように、反射型の空間光変調器では余分な光学素子が必要になり、あるいは余分なスペースが必要になるため、画像表示装置の小型化には透過型の空間光変調素子を用いることが好ましい。透過型空間光変調素子としては液晶を用いたものの他に、電気光学結晶材料を用いたもの、磁気光学結晶材料を用いたものなどがあるが、一般的に液晶素子が最もコストが安く、液晶素子を用いるのが最も良い。
【0093】
実施例4(導光素子の構成に関して):
本発明を構成する導光素子の他の実施例を説明する。実際の画像表示装置では、図8と同様に、液晶素子104、偏光素子105、投影レンズ群601なども用いられるが、以下では簡単のためこれらを図から省略した。
【0094】
導光素子としては図10に示すようなテーパーロッド型の導光素子701が用いられることが好ましい。テーパーロッド型の導光素子では、図10の矢印で示されるように、光反射を繰り返して出射面側へ進むにつれ、出射角度が制限される。投影型の画像表示装置では、一般的に光源からの光のうち取り込むことが可能な角度に制限があるため、光源からの光が所定の角度範囲内となっていることが好ましい。これは導光素子としてテーパーロッド型の構造を含んだ構造をとることによって実現できる。
【0095】
他の実施形態を図11(a)に示す。導光素子として板状導光板801を用いている。さらに導光板801の底面(出射面に対する面)には散乱体802および散乱体の下部に金属膜803が形成されている。板状導光板801は、光源101からの光が入射する入射面と、カラーフィルタ103が配置されている出射面、散乱体802が形成されている底面以外は反射面となっている。散乱体802としては、ランダムに形成された微小凹凸構造や、高分子材料、あるいは微粒子が分散された透明体などを用いることが出来る。散乱体は入射してきた光をある角度特性で様々な方向に散乱させる機能を有している。導光板801を導光し、カラーフィルタ103へ達した光は、領域ごとに特定の波長域の光を透過し、それ以外の光は反射する。反射された光は散乱体802によって様々な方向へ進む光となり、再びカラーフィルタ103へ入射する。このように散乱体が存在することによって、多重反射プロセスがスムーズに進み、少ない反射回数で領域ごとに異なる波長を有する光を透過せしめることが可能となる。また、散乱体802を含むことで光の均質化もより良く行われる。ここでは、散乱体802が導光素子の底面に形成された構造を示したが、導光素子内部に散乱体が含まれていても良く、あるいは導光素子自体が散乱体で形成されていても良い。
【0096】
また、板状導光板801は、テーパーロッド型の形状などに対して薄肉化が容易であり、画像表示装置をより小型化することが出来る。
【0097】
ここでは、散乱体が光の角度を様々に変化させる機能を有したものとして用いられている。光の角度を変化させるものとしては散乱体以外に、図11(b)に示すように回折面804を用いることが出来る。回折面は微細な凹凸形状から成るものであり、凹凸材料の屈折率、深さ、周期などによって様々な回折を起こすものである。回折構造は場所によって変調されており、入射光に対して様々な回折角で回折を起こすようになっていることが好ましい。回折面は、微細凹凸形状上に金属膜が蒸着されて反射型の回折面となったものでも良いし、透明物質に微細凹凸が形成された透過型のものを用いることも可能である。
【0098】
実施例5:
空間光変調器として液晶を用いる際には、空間光変調器へ入射する光としては特定の偏光方向を向いている必要がある。このため、通常は液晶素子の手前に偏光素子が配置され、前記特定の偏光方向とは異なる偏光方向を有する光は吸収または反射または偏向され、このような光は画像表示に利用することが出来なかった。これに対して、導光素子内部または端面に反射型の偏光素子を配置することで光利用効率をより高めることが可能である。実施例を図12(a)に示す。ここで、901は反射型偏光素子であり、導光素子801内部で多重反射した光のうち特定の偏光方向の光のみが透過する。透過した光はさらにカラーフィルタ103によって領域ごとに特定の波長の光のみが取り出されることになる。反射型偏光素子901またはカラーフィルタ103によって反射された光は再び導光素子801へ入射され、多重反射する。このようにして、不必要な偏光状態の光も再利用することが可能となり、光利用効率をより高めることが出来るようになる。
【0099】
反射型の偏光素子としては波長よりも細かい微細周期を持つ金属周期構造から成る、いわゆるワイヤーグリッド偏光子を用いることが出来る。
【0100】
導光素子内部または端面にはさらに位相板902を加えることが出来る。位相板902は通過した光の偏光方向を所定の割合で回転することが可能な位相板である。これによって光の偏光方向を変えながら導光素子中で多重反射させることが可能になり、上記の特定の偏光方向の条件を少ない反射回数で満たしやすくなり、出射光の効率をより高めることが可能である。
【0101】
さらに、導光素子出射面と前記カラーフィルタとの間に、特定の角度内の光を透過し前記特定の角度外の光の少なくとも一部を反射する角度制限積層膜構造が形成されていても良い。
【0102】
このような積層膜を有した装置の実施例を図12(b)に示す。図12(b)では、導光素子出射面とカラーフィルタ103との間に反射型偏光素子901が配置されており、さらに角度制限積層膜903が配置されている。角度制限積層膜903は、入射した光のうち特定の入射角度内の光は透過し、それ以外の光は反射する。反射した光は再び導光素子801へ入射し、多重反射を経て再び角度制限積層膜903へと入射される。前述したように、空間光変調器へ入射する光のうち、画像表示に有効利用可能な光の入射角度範囲は限られており、入射角度範囲外の光は無駄となり、また画像のコントラストを低下させるノイズ光となる。角度制限積層膜903は有効利用可能な光の入射角度内となるように、角度制限がなされている。これによって、光の利用効率を高めることが可能であり、かつ画像のコントラスト低下を防ぐことが出来る。
【0103】
角度制限積層膜903の具体的な膜構成設計例を図13に示す。図13(a)はTa2O5材料とSiO2材料が交互に積層された構造になっている。図13(a)に示した積層膜に光が入射したときの分光透過率および分光反射率の入射角度依存性を図13(b)に示す。図13(b)では、赤、緑、青の色に対応する代表波長として、それぞれ波長640nm、530nm、460nmを選んで表示している。このように、入射角度がおよそ20度以内の光のみを透過し、それ以外の光を反射して導光素子801へ戻すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施例1に係る画像表示装置を示す。
【図2】実施例1のカラーフィルタの断面を示す。
【図3】図2のカラーフィルタの分光透過率および分光反射率を示す。
【図4】図2のカラーフィルタの作製方法を示す。
【図5】図2のカラーフィルタにおける、TE偏光とTM偏光の分光透過率および分光反射率を示す。
【図6】実施例2のカラーフィルタの断面を示す。
【図7】図6のカラーフィルタにおける、分光透過率および分光反射率を示す。
【図8】実施例3に係るプロジェクタを示す。
【図9】実施例3に係る、反射型液晶素子を用いたプロジェクタを示す。
【図10】実施例4に係る導光素子を示す。
【図11】実施例4に係る他の導光素子を示す。
【図12】実施例5の画像表示装置を示す。
【図13】角度制限積層膜の膜構成例と、分光透過率および分光反射率の入射角度依存性を示す。
【符号の説明】
【0105】
101 光源
102 導光素子
103 カラーフィルタ
104 液晶素子
105 偏光素子
106 スクリーン面
107 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色の波長域を有する光源と、光源からの光を導光する導光素子と、導光素子表面に配置され、導光素子からの光を領域ごとに異なる色光に分けて出射するカラーフィルタと、複数の画素構造を有する空間光変調器とからなる画像表示装置であって、前記カラーフィルタは、複数の材料を積層した積層膜と、前記積層膜のうち少なくとも一部の層に形成され、光源の波長以下の周期を有する微細周期構造とからなり、前記複数の画素構造に応じて異なる色光を出射する領域が複数形成され、出射する色光に応じて前記微細周期構造の底部または幅またはその両方が異なっていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
投影光学系を具備したことを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
導光素子と空間光変調器の間に結像光学系があり、前記結像光学系によって導光素子の出射面と空間光変調器の光変調を行う面が共役の関係となっていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記空間光変調器は、透過型液晶素子および偏光素子からなり、前記透過型液晶素子と前記カラーフィルタが密着あるいは近接して配置されていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記光源の少なくとも一部はLED素子であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記光源の少なくとも一部はレーザー光源であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記カラーフィルタを構成する前記積層膜は金属膜を含んでいることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記カラーフィルタを構成する前記積層膜構造は共振構造を有し、前記共振構造は少なくとも1つの膜からなるスペーサー層と、前記スペーサー層に対して基板から遠い側に配置された上層部反射層および前記スペーサー層に対して基板に近い側に配置された下層部反射層からなり、少なくともスペーサー層の一部には前記微細周期構造が形成されていることを特徴とする請求項1または7記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記スペーサー層は非金属材料から構成され、前記下層部反射層は金属膜で構成され、前記金属膜には前記微細周期構造が形成されておらず、少なくとも前記金属膜の上部の膜には前記微細周期構造が形成されていることを特徴とする請求項8記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記カラーフィルタは、赤色の光を主に透過する赤色透過領域と、緑色の光を主に透過する緑色透過領域と、青色の光を主に透過する青色透過領域とからなることを特徴とする請求項1、7または8記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記赤色透過領域、緑色透過領域、青色透過領域、それぞれの間の少なくとも一部は赤色、緑色、青色の光を反射する反射領域となっていることを特徴とする請求項10記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記周期構造は、1方向に配列された周期構造であることを特徴とする請求項1、8または9記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記導光素子は、光源からの光が出射する出射面に前記カラーフィルタが配置され、異なる他の面には光源の光を反射する反射面となっていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記導光素子は、光源からの光が入射する入射面と、光が出射する出射面が略平行であり、入射面よりも出射面の面積がより大きいテーパーロッド形状を含む形状であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記導光素子は板状であり、光源からの光が入射する入射面が板状導光素子の一面にあり、出射面が板状導光素子の他の一面にあることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項16】
前記導光素子は散乱体を含んでいることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項17】
前記導光素子の少なくとも一部に微小な凹凸形状が形成され、回折面となっていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項18】
前記導光素子の内部または端面に反射型の偏光子を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項19】
前記導光素子の内部または端面に位相板を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項20】
前記導光素子の出射面と前記カラーフィルタとの間に、特定の角度内の光を透過し、前記特定の角度外の光の少なくとも一部を反射する角度制限積層膜構造が形成されていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−96556(P2008−96556A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276079(P2006−276079)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】