説明

画像配信システム

【課題】特定した個人のみの映像をその映像の入手を希望する特定の人に配信する画像配信システムを提供する。
【解決手段】画像撮影手段11は、複数の人が存在しうる場所に設置され、場所の所定の範囲を撮影する。画像撮影手段により撮影された撮影画像信号が入力され、撮影画像信号に少なくとも1人の人の画像が存在する場合には、画像撮影手段から入力された撮影画像信号から少なくとも1つの人画像信号を検出する人検出手段と、人検出手段から人画像信号が入力され、人画像信号における人の特徴から人画像信号における人の個体を識別する個人識別手段と、個人識別手段からの識別信号が入力され、予め定められた設定識別信号と識別信号が一致しない場合には、撮影画像信号のうち一致しない識別信号における人の画像を人が特定できないように撮影画像信号を処理するマスク処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像配信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
保育園、幼稚園または小学校等に、園児や児童を預ける親が多いが、その場合に自宅や会社などで、預け先の保育園、幼稚園または小学校等での園児や児童の様子を知りたいと思う親も多い。また、自らの家族を介護施設や福祉施設に預ける人も、預け先の介護施設や福祉施設での家族の様子を知りたいと思う人も多い。
このような場合に、保育園等や介護施設等にTVカメラ等の画像撮影装置を設置し、画像検出装置からの画像信号を、インターネット等を通じて、親等の携帯電話に配信するサービス等も利用されている。
【0003】
しかしながら、保育園等や介護施設等の施設内には、数多くの児童等や被介護者等がいるため、自らの家族の画像を特定して受信することは困難である。
施設内に多く存在する人を特定する方法として、TVカメラからの画像と、個々の人に取り付けた速度センサー等の移動量検出手段とを用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2004−96501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の従来技術にあっては、個々の人に速度センサー等の移動量検出手段を取り付けなければならないため、取り付けるための煩わしさや、移動量検出手段が取り付けられることにより、児童や被介護者等の動作の自由度を束縛するという問題がある。
また、保育園等や介護施設等にTVカメラ等の画像検出装置を設置し、画像検出装置からの画像信号を、インターネット等を通じて、親等の携帯電話に配信するサービス等では、TVカメラ等の画像撮影装置で撮影される施設内の複数の人の映像が配信されてしまうため、施設内の人のプライバシーを保護することができない。
【0005】
そこで、速度センサー等の移動量検出手段を個々の人に取り付けず画像情報のみで施設内の個人を特定するとともに、特定した個人のみの映像をその映像の入手を希望する特定の人に配信する画像配信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の画像配信システムは、複数の人が存在しうる場所に設置され、前記場所の所定の範囲を撮影する少なくとも1つの画像撮影手段と、前記画像撮影手段に接続され、前記画像撮影手段により撮影された撮影画像信号が入力され、前記撮影画像信号に少なくとも1人の人の画像が存在する場合には、前記画像撮影手段から入力された前記撮影画像信号から少なくとも1つの人画像信号を検出する人検出手段と、前記人検出手段に接続され、前記人検出手段から少なくとも1つの前記人画像信号が入力され、前記人画像信号における人の特徴から前記人画像信号における人の個体を識別する個人識別手段と、前記個人識別手段に接続され、前記個人識別手段からの識別信号が入力され、予め定められた設定識別信号と前記識別信号が一致しない場合には、前記撮影画像信号のうち前記一致しない識別信号における人の画像を前記人が特定できないように前記撮影画像信号を処理するマスク処理手段と、前記マスク処理手段に接続され、前記マスク処理手段により処理された処理画像をユーザー端末に配信する配信手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
このような構成としたことで、本発明の画像配信システムは、速度センサー等の移動量検出手段を個々の人に取り付けず画像情報のみで施設内の個人を特定するとともに、特定した個人のみの映像をその映像の入手を希望する特定の人に配信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、この発明の実施形態を図1から6図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態の画像配信システムのシステムブロック図である。画像配信システム100は、少なくとも1つの画像撮影手段11と、画像撮影手段11に接続され、画像撮影手段11からの撮影画像信号が入力されるホストコンピュータ10と、ホストコンピュータ10に接続され、ホストコンピュータ10での処理された処理画像が入力されるとともに、この処理画像をユーザー端末1に配信する通信手段5を備えている。
【0009】
ここで、画像撮影手段11は、WEBカメラやライブカメラ等のTVカメラであり、園児または児童がいる幼稚園、保育園および小学校等の室内または屋外、並びに被介護者がいる介護施設等の室内または屋外に設置され、これらの場所の所定の範囲を撮影する。また、画像撮影手段11は、これらの場所に複数設置されることもあり、複数設置することで、園児等や被介護者の映像を漏れなく撮影することができる。ユーザー端末1は、携帯電話やPHS(登録商標)(Personal Handyphone System)やパーソナルコンピュータのディスプレイ等である。
【0010】
通信網手段5は、配信手段2、認証手段3および要求受入手段4を備えている。認証手段3は、携帯電話等のユーザー端末1から発信されるIDおよびパスワード等のユーザー情報を受信し、認証手段3に予め登録してあるユーザー情報との一致または不一致を判断する。その結果、一致と判断された場合には、配信手段2および要求受入手段4に許可信号を供給する。配信手段2は、ホストコンピュータ10に接続されており、認証手段3から許可信号が供給された場合または供給されている場合に限り、ホストコンピュータ10で処理された処理画像をユーザー端末1に配信する。
【0011】
本発明の実施形態では複数のユーザーの利用がなされるものであり、それぞれのユーザーは各ユーザー自身の子供や家族等の以外の人の映像の入手をすることができないように設定されている。そのため、ホストコンピュータ10に接続された要求受入手段4に、ユーザー端末1から画像配信の要求があった場合には、認証手段3から認証された特定の園児等や被介護者等の以外の人の映像の入手ができないように、要求受入手段4からホストコンピュータ10には、ユーザーが登録する特定の人についての情報が供給される。
【0012】
画像撮影手段11が、幼稚園等の室内や屋外に複数設置されている場合には、ユーザーは、自己の子供等の画像の配信が受けられるよう、画像の配信を希望する画像撮影手段11をユーザー端末1から選択することができる。この場合、ユーザー端末1から発信される選択信号が要求受入手段11で受信され、この選択信号がホストコンピュータ10に供給される。
【0013】
ホストコンピュータ10は、人検出手段6、個人識別手段7、マスク処理手段8および選択手段9を備えている。選択手段9は、要求受入手段4に接続されており、ユーザー端末1から選択された画像撮影手段11の選択信号に基づき、選択された画像撮影手段11に画像をホストコンピュータ10に供給するよう指令する。選択手段9から画像の撮影の指令がなされた画像撮影手段11は、幼稚園等の室内や屋内の所定の範囲を撮影する。例えば、図2は、幼稚園の屋外の所定の範囲を撮影した撮影画像である。図2に示すように、ユーザーからユーザー端末1により選択された画像撮影手段11には、教諭および複数の園児が撮影されている。
【0014】
人検出手段6は、画像撮影手段11に接続され、画像撮影手段により撮影された撮影画像信号が入力され、入力された撮影画像信号から人画像信号を検出する。例えば、図3は、人検出手段6が図2に示す撮影画像信号から人画信号を検出し、検出された人画像信号の位置に丸印を付けたものである。なお、実際の画像処理では画像として図3のようなものはなく、図3は、本発明の実施形態を説明するためのイメージ図である。本発明の実施形態では、人の顔の映像を人画像信号として認識し、その位置を記憶するものとなっている。
【0015】
個人識別手段7は、人検出手段6に接続され、人検出手段6からの撮影画像信号における人画像信号から人の特徴を検出し、撮影画像信号に含まれる人の個体を識別する。個人識別手段7には、予めユーザーの子供等の顔等の画像信号等が登録されており、人検出手段6により特定された撮影画像信号における人画像信号と、予め登録された子供等の顔等の個体の画像信号との特徴とを比較し、撮影画像信号における人画像信号の個体を特定する。図4は、個人識別手段7が、図3における人画像信号の個体を特定した様子を示すものである。このように個人識別手段7により、それぞれの人画像信号が誰であるのかが特定される。すなわち、人画像信号として特定された画像情報が、「Aさん」、「Bちゃん」、「Cちゃん」など、いずれの個体なのかが特定される。なお、実際の画像処理では画像として図4のようなものはなく、図4は、本発明の実施形態を説明するためのイメージ図である。本実施の形態では、個体の特徴として、顔の映像信号が用いられており、顔の形状により個体が特定されている。
【0016】
マスク処理手段8は、個人識別手段7に接続され、個人識別手段7からの少なくとも1つの識別信号が入力され、予め定められた設定識別信号と識別信号とを比較し、予め定められた設定識別信号と識別信号とが一致しない場合には、画像撮影手段11から入力された撮影画像信号のうち一致しない識別信号における人画像信号を人の個体が特定できないように撮影画像信号を処理する。
【0017】
ここで、本実施の形態において上述の予め定められた設定識別信号は、ユーザーから映像配信の要求において、認証手段3の認証により特定される個体に関するものである。すなわち、ユーザー端末1よりユーザーから映像の配信を要求受入手段4が受けると、認証手段3により配信の要求をしたユーザーが特定され、認証手段3は、ユーザーへの配信を許可した特定の個人に関する情報として特定されるものが設定識別信号である。この設定識別信号が、要求受入手段、要求受入手段4から、ホストコンピュータ10のマスク処理手段8に送信され、マスク処理手段8では、かかる設定識別信号と一致しない識別信号における人画像信号を人の個体が特定できないように撮影画像信号が処理される。
【0018】
図5は、マスク処理手段8が、図4の撮影画像信号を処理した例である。この例では、ユーザー端末1より映像の配信を供給したユーザーは、園児「Dちゃん」の親等であり、園児「Dちゃん」にかかる情報が設定識別信号とされ、園児「Dちゃん」以外の人画像信号は、個人が特定できないように処理されている。ここで、園児「Dちゃん」以外に保育士「Aさん」の人画像信号はマスク処理されていないが、図4の例では、では保育士「Aさん」は、共有情報として設定されており、その人画像信号はマスク処理されないこととなっている。なお、図5におけるマスク処理は、いわゆるモザイク処理がなされている。
また、図6は、図5のマスク処理後の処理信号が配信されたユーザ端末1を示すものである。このように、本実施の形態では、ユーザー端末1として携帯電話が用いられているが、携帯電話に限られず、PHS(登録商標)(Personal Handyphone System)やパーソナルコンピュータのディスプレイ等であってよい。
【0019】
本発明の実施の形態では、人検出手段6において「人画像信号の検出」、個人検出手段7において「識別信号の検出」がなされているが、これらの検出においては、例えば、小杉 信、「シーンの中の顔の探索と認識」、信学技報、PRU91−104、p49〜56、1992に示されている技術を用いて行うことができる。即ち、切り出された顔画像をモザイク化してベクトル表現することで顔特徴量を抽出することにより、これらの検出を行うことができる。
【0020】
このようにすることにより、速度センサー等の移動量検出手段を個々の人に取り付けず画像情報のみで施設内の個人を特定するとともに、特定した個人のみの映像をその映像の入手を希望する特定の人に配信する画像配信システムを提供するものである。また、個人識別を自動的に行い、選択して画像を配信することで、従来できなかった個人に関わる映像を配信することができるようになる。これにより、幼稚園、介護施設など、これまでWEBカメラを設置できなかった場所にも配置できるようになり、家族や保護者の見守りたい、様子を知りたいという要求を満足できるようになる。
【0021】
本実施の形態では、人の個体を識別する場合に、顔の特徴を利用したが、顔でなく、身長、手足の長さなどの特徴、画像で測定しうる特徴を用いてもよい。また、顔の特徴と、身長または手足の長さなどの特徴とを併せて人の個体を識別してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における画像配信システムのシステムブロック図。
【図2】画像撮影手段が幼稚園の屋外の所定の範囲を撮影した撮影画像を説明する図。
【図3】図2に示す撮影画像信号から人検出手段が検出した人画像信号を説明する図。
【図4】図3に示す人画像信号から個人識別手段が個体を特定した識別信号を説明する図。
【図5】図4に示す撮影画像信号をマスク処理手段が処理した処理画像を説明する図。
【図6】図5のマスク処理後の処理画像が配信されたユーザ端末を説明する図。
【符号の説明】
【0023】
1 ユーザー端末(携帯電話)
2 配信手段
3 認証手段
4 要求受入手段
5 通信網手段
6 人検出手段
7 個人識別手段
8 マスク処理手段
9 選択手段
10 ホストコンピュータ
11 画像撮影手段
100 画像配信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の人が存在しうる場所に設置され、前記場所の所定の範囲を撮影する少なくとも1つの画像撮影手段と、
前記画像撮影手段に接続され、前記画像撮影手段により撮影された撮影画像信号が入力され、前記撮影画像信号に少なくとも1人の人の画像が存在する場合には、前記画像撮影手段から入力された前記撮影画像信号から少なくとも1つの人画像信号を検出する人検出手段と、
前記人検出手段に接続され、前記人検出手段から少なくとも1つの前記人画像信号が入力され、前記人画像信号における人の特徴から前記人画像信号における人の個体を識別する個人識別手段と、
前記個人識別手段に接続され、前記個人識別手段からの少なくとも1つの識別信号が入力され、予め定められた設定識別信号と前記識別信号とを比較し、予め定められた設定識別信号と前記識別信号とが一致しない場合には、前記撮影画像信号のうち前記一致しない識別信号における人画像信号を前記人の個体が特定できないように前記撮影画像信号を処理するマスク処理手段と、
前記マスク処理手段に接続され、前記マスク処理手段により処理された処理画像をユーザー端末に配信する配信手段とを備える画像配信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像配信システムにおいて、前記配信手段に接続され、ユーザー端末からのユーザー情報を受信し、前記ユーザー情報が予め定められたユーザー情報と一致した場合に、前記処理画像の配信を許可する認証手段を備えている画像配信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像配信システムにおいて、前記マスク手段に接続され、ユーザー端末からの所定の人の画像の配信の要求を受ける要求受入手段を備え、前記所定の人を前記マスク手段における前記予め定められた設定識別信号とする画像配信システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−159221(P2009−159221A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334032(P2007−334032)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】