説明

画質評価装置及び画質評価方法

【課題】画質評価に用いるテストパターンに適した画質評価を行う。
【解決手段】色分布選択画面において、テストパターンの色分布をユーザが選択することにより(ステップS5)、選択されたテストパターンの色分布に応じて画質評価値を算出する際に用いられる計算方法やパラメータを変更する(ステップS6)。或いは、画像データに基づいてテストパターンの色分布を自動的に判別し(ステップS7)、判別されたテストパターンの色分布に応じて計算方法及びパラメータを変更する(ステップS8)。ステップS6又はステップS8により変更された計算方法及びパラメータを用いて、画質評価値を算出する(ステップS9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像入出力装置の画質評価を行う画質評価装置及び画質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像入力装置や画像出力装置(以下、二つの装置を総称して画像入出力装置という。)により入出力される画像データの画質を定量的に評価する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
画像入力装置とは、自然被写体やプリント物をデジタルデータ化する装置であり、フラットベットスキャナ、フィルムスキャナ、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、DSC(Digital Still Camera)、ビデオカメラ等である。その他同等の処理ができる装置も含む。
【0004】
また、画像出力装置とは、デジタルデータを反射メディア(紙等の印刷物。)や透過メディア(フィルム等。)に印刷/表示するプリンタやディスプレイである。プリンタとしては、銀塩プリンタ、昇華プリンタ、印刷機、レーザープリンタ等を含む。ディスプレイとしては、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ、投影型のディスプレイ等を含む。
【特許文献1】特開2003−16443号公報
【特許文献2】特開2001−128017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、特許文献2に記載された技術は、画質の定量評価における理論的な方法論に終始していた。このため、上記技術が画質評価を行うためのプログラムツールとして実際に実用化された場合、こういったプログラムツールが必ずしもユーザにとって使い勝手の良いものになるとは限らなかった。
【0006】
また、画質評価に用いるテストパターンとして任意の色のテストパターンが入力された場合の対処方法に関する記載はなかった。
【0007】
本発明の課題は、テストパターンに適した画質評価を行うことができる画質評価装置及び画質評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、テストパターンを用いて画像入出力装置の画質評価値を算出する算出手段を備えた画質評価装置において、前記テストパターンの色分布に応じて、前記算出手段において画質評価値を算出する際に用いる計算方法及び/又はパラメータを変更する変更手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画質評価装置において、前記色分布は、グレー領域、前記画像入出力装置の一次色領域、前記画像入出力装置の二次色領域、肌色領域又は空色領域の分布を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画質評価装置において、画質評価の評価項目は、鮮鋭性、ノイズ、階調平滑性を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画質評価装置において、前記テストパターンの色分布を判別する色分布判別手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の画質評価装置において、前記画質評価値をグラフ化して表示手段に表示させるとともに、画質に対する許容限界を前記グラフ上に表示させる表示制御手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画質評価装置において、前記許容限界は、前記テストパターンの色分布及び/又は評価目的に応じて変更可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、テストパターンを用いて画像入出力装置の画質評価値を算出する画質評価方法において、前記テストパターンの色分布に応じて、前記画質評価値を算出する際に用いる計算方法及び/又はパラメータを変更する変更工程を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画質評価方法において、前記色分布は、グレー領域、前記画像入出力装置の一次色領域、前記画像入出力装置の二次色領域、肌色領域又は空色領域の分布を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の画質評価方法において、画質評価の評価項目は、鮮鋭性、ノイズ、階調平滑性を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか一項に記載の画質評価方法において、前記テストパターンの色分布を判別する色分布判別工程を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のいずれか一項に記載の画質評価方法において、前記画質評価値をグラフ化して表示手段に表示させるとともに、画質に対する許容限界を前記グラフ上に表示させることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画質評価方法において、前記許容限界は、前記テストパターンの色分布及び/又は評価目的に応じて変更可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、7に記載の発明によれば、テストパターンの色分布に応じて、画質評価値を算出する際に用いる計算方法及び/又はパラメータを変更するので、テストパターンに適した画質評価を行うことができる。
【0021】
請求項2、8に記載の発明によれば、色分布は、グレー領域、画像入出力装置の一次色領域、画像入出力装置の二次色領域、肌色領域又は空色領域の分布を含むので、画像を構成する原色や画像の主要色に対して画質評価を行うことができる。
【0022】
請求項3、9に記載の発明によれば、鮮鋭性、ノイズ、階調平滑性に対して画質評価を行うことができる。
【0023】
請求項4、10に記載の発明によれば、テストパターンの色分布を判別するので、操作が単純で手間のかからない画質評価を実現することができる。
【0024】
請求項5、11に記載の発明によれば、画質評価値をグラフ化して表示手段に表示させるとともに、画質に対する許容限界をグラフ上に表示させるので、画質に問題のある部分を把握しやすくなる。
【0025】
請求項6、12に記載の発明によれば、テストパターンの色分布及び/又は評価目的に応じて許容限界を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。ただし、図示例に限定されるものではない。
【0027】
図1に、第1の実施の形態における画質評価装置100の内部構成を示す。
図1に示すように、画質評価装置100は、CPU(Central Processing Unit)10、操作部11、表示部12、画像データ入力部13、ROM(Read Only Memory)14、RAM(Random Access Memory)15、記憶部16を備え、各部はバス17によって相互に接続されている。
【0028】
CPU10は、操作部11から入力される各種指示に従って、ROM14に記憶されている各種プログラムの中から指定されたプログラムをRAM15のワークエリアに展開し、上記プログラムとの協働によって各種処理を実行することにより、画質評価装置100を統括的に制御する。特にCPU10は、画像編集プログラムをプラットホームにして画像データの画質評価を定量的に行うための画質評価プログラムを実行し、画像入出力装置の画質評価値を算出し、この実行結果を表示部12に表示する。すなわち、CPU10は、特許請求の範囲における算出手段としての機能を有する。ここで、上記画像編集プログラムは、画像データを扱うためのレタッチソフトや編集ソフト等である。
【0029】
画質評価の評価項目は、少なくとも、「鮮鋭性(MTF(Modulation Transfer Function)、SFR(Spatial Frequency Response)、視覚解像度、限界解像度等の項目を含む。)」、「ノイズ(粒状性と呼ばれることもある。)」、「階調平滑性」を含むものとするが、その他の一般的な評価項目全般に拡張することも可能である。
【0030】
また、CPU10は、テストパターンの色分布を判別する。また、CPU10は、画質評価に用いるテストパターンの色分布に応じて、画質評価値を算出する際に用いる計算方法及びパラメータを変更する。すなわち、CPU10は、特許請求の範囲における色分布判別手段及び変更手段としての機能を有する。
【0031】
操作部11は、数字やアルファベット入力キー、各種キーを備えたキーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等のUI(User Interface)に係る装置を備え、キーの押下による押下信号やマウスの操作による操作信号をCPU10へ出力する。
【0032】
表示部12は、LCD、CRT等を備えて構成され、画質評価時の操作手順や処理結果等を表示する。
【0033】
画像データ入力部13は、画像出力装置により出力された反射原稿や透過原稿の画像データを取得するためのフラットベットスキャナ、フィルムスキャナ、マイクロデンシトメータ、CCDカメラ、DSC、ビデオカメラ等の画像入力装置から当該画像データを取得するためのインターフェイス、また、画像入力装置により入力された画像データを記録媒体を介して取得するためのPCカードリーダ、CF(コンパクトフラッシュ(登録商標))カードリーダ、MO(Magneto Optical disk)ドライブ、FDドライブ、CD−ROMドライブ等を備える。或いは、ネットワーク経由で画像データを取得するための各種ネットワークカードが設けられていてもよい。
【0034】
ROM14は、不揮発性の半導体メモリで構成され、CPU10により実行される各種プログラムを格納する。特に、画像編集プログラムや、この画像編集プログラムをプラットホームとして実行可能な画質評価プログラムツール等が格納される。なお、これらのプログラムは、記憶部16に格納されていてもよい。
【0035】
画質評価プログラムツールは、画像入出力装置の画質評価を定量的かつ簡単な操作で行うために、理論的な画質評価方法を具現化したものである。この画質評価プログラムツールは、アプリケーション若しくはアプリケーションをプラットホームとし、画質評価を行うための単機能処理モジュールである。以下の説明では、単機能処理モジュールを例にして説明する。アプリケーションの具体例としては、一般に広く普及しているMS−Excel(登録商標)やAdobe Photoshop(登録商標)等が挙げられる。単機能処理モジュールの具体例としては、MS−Excelをプラットホームとするアドインツールや、Adobe Photoshopをプラットホームとするプラグインモジュール等がある。
【0036】
RAM15は、データが一時的に保存される記憶媒体であり、CPU10が実行するプログラムを展開するためのプログラムエリア、操作部11から入力されるデータやCPU10による各種処理結果等を保存するためのデータエリア等が形成される。
【0037】
記憶部16は、HDD(Hard Disk Drive)を備えて構成され、各種データを記憶する。記憶部16には、テストパターンの色分布をユーザが選択する場合に使用される、画質評価値を算出する際に用いる計算方法及びパラメータが、選択される色分布毎に記憶されている。また、記憶部16には、テストパターンの色分布を自動で判別する場合に使用される色−属性対応テーブル21、パラメータ対応テーブル22が記憶されている。
【0038】
色−属性対応テーブル21には、図2に示すように、テストパターンに用いられる各色に対応する色の属性(明度、色差成分、色相角等の情報)が予め登録されている。例えば、グレーは0<明度<100かつ−5<色差成分<5を満たす色、色1は0°<色相角<45°を満たす色、色2は−100<色差成分1<−50かつ40<色差成分2<100を満たす色であると登録されている。
【0039】
パラメータ対応テーブル22には、図3に示すように、対象となる機器(画像入力装置、画像出力装置)、評価項目、テストパターンの色毎に、画質評価値を算出する際に用いる計算方法及び各パラメータが格納されている。
【0040】
ここで、画像入力装置に対する画質評価の手順について説明する。
まず、画質評価の評価項目(例えば、鮮鋭性、ノイズ、階調平滑性等の各項目。)に応じたテストパターンが、評価対象になっている画像入力装置によって撮影(又はスキャン)され、テストパターンのデジタル画像データが取得される。
【0041】
そして、テストパターンのデジタル画像データが画質評価装置100の画像データ入力部13により取得されると、画像データの画質が定量的に評価される。評価結果は表示部12の表示画面上に表示される。
【0042】
次に、画像出力装置に対する画質評価の手順について説明する。
まず、評価項目に応じたテストパターン(画質評価用デジタルデータ)が、評価対象になっている画像出力装置によりプリント出力或いはディスプレイ表示される。その後、ユーザにより、フラットベッドスキャナやDSC等の画像入力装置を用いて、プリント出力された出力内容或いはディスプレイ表示された表示内容が読み取られ、デジタル画像データが取得される。
【0043】
その後、デジタル画像データが画質評価装置100の画像データ入力部13により取得されると、画像データの画質が定量的に評価される。評価結果は表示部12の表示画面上に表示される。
【0044】
図4に、表示部12に表示されるUI画面の一例を示す。
図4に示すように、UI画面の内部は、縮小画像表示エリアA1、グラフ表示エリアA2、評価条件設定エリアA3により構成される。
【0045】
縮小画像表示エリアA1は、撮影或いは取得されたテストパターンのデジタル画像データの縮小画像を表示するエリアであるが、等倍の(そのままの)画像を表示してもよい。ただし、画面上のスペースが有効に使える縮小画像の方が好ましい。
【0046】
グラフ表示エリアA2は、画質評価結果をグラフで表示するエリアである。グラフの種類やフォーマット(軸、測定点、目盛線、凡例等。)は、ユーザにとって扱い易い形式に変更可能である(図示略。)。画質評価結果は、評価条件に応じて変化する。従って、このグラフ表示エリアA2の表示内容も評価条件に応じて更新される。
【0047】
評価条件設定エリアA3は、画質評価値を算出する際に考慮される評価条件を設定するエリアである。評価条件の内容とUI(ラジオボタン、チェックボックス、テキストボックス、スクロールバー等。)とは、画質評価の評価項目毎に設定されている。
【0048】
UI画面には、さらに、処理モジュールの動作を制御する制御ボタン群が表示されていてもよい。制御ボタンとしては、例えば、処理モジュールの終了ボタン、各パラメータの条件に基づいて画質評価値を算出するためのボタン、処理モジュールの操作方法を知りたい時にヘルプ情報を表示させるためのボタン等が挙げられる。
【0049】
図5(a)、(b)及び(c)に、画像入出力装置の画質評価に用いられるテストパターンの例を示す。テストパターンとして、評価項目毎に適したデザイン、配色のパターンが用意されている。図5(a)は、階調平滑性を評価する際に用いられるグラデーション画像である。グラデーション画像は、色の濃淡が次第に変化している画像である。図5(b)は、ノイズを評価する際に用いられるパッチ画像である。パッチ画像は、ある色における各濃度のパッチを並べた画像である。また、図5(c)は、鮮鋭性を評価する際に用いられる矩形波パターンである。矩形波パターンは、ある色に対して濃い部分と薄い部分とを順に並べ、濃い部分と薄い部分との間隔を次第に狭くしていった画像である。テストパターンのデザインについては、評価目的を達成することが可能であれば、他のデザインのものを使用してもよい。
【0050】
各テストパターンの配色は、それぞれ、評価したい色成分とする。例えば、CMYプリンタの各原色におけるノイズを評価したい場合には、CMYのパッチ画像を用いる。
また、テストパターンの色分布は、グレー領域(W−Bk)と画像入出力装置の一次色領域(プリンタの場合はCMY等)が基本となるが、混色時の影響を評価するためには、二次色領域(プリンタの場合はRGB等)を使用する場合もある。また、階調平滑性に関しては、画像データに含まれる頻度の高い階調成分(例えば、肌色領域、空色領域の階調等)をグラデーション化した画像を用いることにより、実際の画像に近い画質評価が可能となる。なお、画像入力装置と画像出力装置とでは、一次色と二次色の関係が逆になる。
【0051】
次に、テストパターンのL*u*v*データに基づく画質評価値の算出方法の一例を説明する。
画像出力装置のノイズ評価の場合、グレーに対する評価値Q1は下記式(1)を用いて算出される。
【数1】

ここで、σLはテストパターンのL*の標準偏差である。
【0052】
また、カラーに対するノイズ評価の評価値Q2は下記式(2)を用いて算出される。
【数2】

ここで、σL、σu、σvはそれぞれテストパターンのL*、u*、v*の標準偏差である。また、パラメータA、B、CはA=1、B≧0、C≧0であり、よりふさわしくは0.4≦B≦1.2、0≦C≦0.7である。
【0053】
また、画像出力装置の階調平滑性評価の場合、グレーに対する評価値Q3は下記式(3)を用いて算出される。
【数3】

ここで、GLはテストパターンのL*の階調ムラ成分の微分値である。階調ムラ成分とは、画像出力装置により出力され、画像入力装置により撮像されて取得されたグラデーション画像の階調変化カーブから滑らかな仮想の階調変化カーブを作成した場合の両者の差分をいう。図6に、グラデーション画像のL*の階調変化カーブH及び仮想の階調変化カーブIを示す。仮想の階調変化カーブIは、階調変化カーブHの両端とその間の数点(2点が望ましい。)をスプライン補間して、変曲点の少ない滑らかなカーブを作成し、数点の場所を変えながら複数のカーブを作成して全カーブを平均化することにより求める。なお、他の方法を用いて仮想の階調変化カーブIを作成してもよい。また、図7に、L*の階調ムラ成分、すなわち、階調変化カーブHと仮想の階調変化カーブIの差分を示す。
【0054】
また、カラーに対する階調平滑性評価の評価値Q4は下記式(4)を用いて算出される。
【数4】

ここで、GL、Gu、GvはそれぞれL*、u*、v*の階調ムラ成分の微分値である。また、D、E、FはD>0、E≧0、F≧0であり、よりふさわしくは1.2≦D≦1.6、0.1≦E≦0.9、0≦F≦0.7である。
【0055】
このように、画質評価の評価項目毎に画質評価値の計算方法が異なる。また、画質評価値を算出する際に用いる各パラメータの最適値は、テストパターンの色分布毎に異なる。そのため、画質評価の評価項目、テストパターンの色分布毎に、人の視感と対応した評価値を算出するための画質評価値の計算方法及びパラメータを予め登録しておくことにより、人の視感に近い定量評価結果を得ることができる。
【0056】
次に、ノイズ評価の定量評価値を算出する式(2)のパラメータB、Cの範囲の妥当性について説明する。
パッチ画像のテストパターンに対して主観評価を行い、主観評価により得られた主観評価値と式(2)により算出される定量評価値との相関係数が最大となるように、画像入力装置(スキャナ)毎に各パラメータの最適化を行った。
【0057】
図8(a)に、スキャナ1〜5に対して、スキャナ毎に求められたパラメータB、Cの最適値、標準偏差σ、平均値Ave、Ave−3σ、Ave+3σを示す。この結果により、パラメータB、Cは、0.4≦B≦1.2、0≦C≦0.7の範囲に設定することが妥当であると言える。
【0058】
階調平滑性評価の定量評価値を算出する式(4)のパラメータD、E、Fについても同様に、グラデーション画像のテストパターンに対して主観評価を行った。被験者は9名で、主観評価値は全被験者の評価データの単純平均により導出した。主観評価により得られた主観評価値と式(4)により算出される定量評価値の相関係数が最大となるように、画像入力装置(スキャナ)毎に各パラメータの最適化を行った。
【0059】
図8(b)に、スキャナ1〜5に対して、スキャナ毎に求められたパラメータD、E、Fの最適値、標準偏差σ、平均値Ave、Ave−3σ、Ave+3σを示す。この結果により、パラメータD、E、Fは、1.2≦D≦1.6、0.1≦E≦0.9、0≦F≦0.7の範囲に設定することが妥当であると言える。
【0060】
次に、画質評価装置100の動作について説明する。
図9は、画質評価装置100により実行される画質評価処理を示すフローチャートである。
【0061】
まず、画質評価プログラムツールが起動され(ステップS1)、テストパターンの画像データが取得される(ステップS2)。そして、表示部12に表示されるUI画面(図4参照)の評価条件設定エリアA3において、評価条件が設定される(ステップS3)。
【0062】
次に、テストパターンの色分布の判別が手動で行われるか、自動で行われるかが判断される(ステップS4)。テストパターンの色分布の判別を手動で行うか、自動で行うかは、ユーザの指示により予め設定されている。
【0063】
テストパターンの色分布の判別が手動で行われる場合には(ステップS4;手動)、図10(a)に示すような色分布選択画面において、テストパターンの色分布が選択される(ステップS5)。この色分布選択画面は、評価条件設定エリアA3の一部に設けられている。ユーザは、テストパターンの色分布に応じて、「白−黒」、「色1−色2」等、色分布選択画面上の色を、操作部11から指示することにより選択する。なお、色分布選択画面において色を選択する際のラジオボタンやテキストボックスは、2つ以上を同時に選択できないようにしておく。テストパターンの色分布として「その他」を選択する場合には、画質評価に用いる計算方法やパラメータをそれぞれ入力する。テストパターンの色分布が「その他」であって、入力項目が多い場合には、図10(b)に示すように、計算方法及び各パラメータをテキストファイル(Other_color.txt)に一括して記録し、そのファイルを読み込ませるようにしてもよい。
【0064】
次に、選択されたテストパターンの色分布に応じて画質評価値を算出する際に用いられる計算方法やパラメータが変更される(ステップS6)。
【0065】
ステップS4において、テストパターンの色分布の判別が自動で行われる場合には(ステップS4;自動)、画像データに基づいてテストパターンの色分布が判別される(ステップS7)。
【0066】
図11を参照して、テストパターンの色分布自動判別処理について説明する。
画像データが例えばsRGB色空間のデータの場合、国際規格(IEC61966−2−1)で定められた手順に従って、RGBデータがXYZ色彩データに変換される(ステップS11)。このとき、画像データ全体を使用してもよいし、画像データを数分の1に間引いたデータを使用してもよい。sRGB色空間のデータ以外についても、それぞれ定められた変換マトリクス及びガンマパラメータを用いることで、同様な手順(デガンマ変換及びマトリクス変換)によりXYZ色彩データに変換可能である。
【0067】
次に、XYZ色彩データは、CIEやJIS等の規格に従って、L*u*v*、L*a*b*等の均等色色彩データに変換される(ステップS12)。このとき、白点の設定は、ツール上の設定エリアや設定ファイル等で行うこととする。例えば、「画像データの白色部を白とする」、「(X,Y,Z)=(…,…,…)を白とする」等の設定方法がある。若しくは、予め指定した方法で自動的に処理することとしてもよい。
【0068】
次に、均等色色彩データのヒストグラムが作成される(ステップS13)。図12(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、階調平滑性評価用パターン(グラデーション画像)の明度、色差成分1、色差成分2のヒストグラムである。また、図12(d)、(e)及び(f)は、それぞれ、ノイズ評価用パターン(パッチ画像)の明度、色差成分1、色差成分2のヒストグラムである。また、図12(g)、(h)及び(i)は、それぞれ、鮮鋭性評価用パターン(矩形波パターン)の明度、色差成分1、色差成分2のヒストグラムである。図12(a)〜(i)に示すように、テストパターンによってヒストグラムの形状が異なる。
【0069】
次に、ヒストグラムに基づいて、テストパターンに含まれる色分布が判別される(ステップS14)。具体的には、記憶部16に記憶されている色−属性対応テーブル21(図2参照)が参照され、明度、色差成分、色相角等の属性情報に基づいて、色が判別される。
【0070】
図9に戻り、判別されたテストパターンの色分布に応じて計算方法及びパラメータが変更される(ステップS8)。具体的には、記憶部16に記憶されているパラメータ対応テーブル22(図3参照)に基づいて、判別されたテストパターンの色分布に対応する評価項目、画質評価値を算出する際に用いる計算方法及びパラメータが特定される。
【0071】
なお、図11のステップS14において、テストパターンの色が、図2の色−属性対応テーブル21に示す各色に対応する属性に合致しない場合には、B1〜B4のいずれかの方法を用いることができる。
B1.予め指定されている色のデータを用いる。
B2.「この色分布に対応するデータは登録されておりません」というアラートを返す。
B3.属性との合致度が最も高い色のデータを用いる。
B4.属性との合致度を重みとして、合致度が高い複数の属性に対応する色をそれぞれ特定し、各色に対応するデータに基づいて、線形的に若しくは非線形的に補間し、新たなデータを作成する。
【0072】
ノイズや鮮鋭性評価用パターンの場合には、色差成分はほぼ一点に集中しているので、その点と登録されている各属性で表される領域との距離を計算し、最も距離が近い属性に対応する色のパラメータを使用することも可能である。
【0073】
階調平滑性評価用パターンの場合には、色差成分のヒストグラムは幅をもって分布していることが多い。色差成分が部分的に1つの属性と合致する場合には、その属性を使用する。2つ以上の属性と合致する場合には、最も合致度が高い属性に対応する色のパラメータを使用してもよいし、各属性の合致度を重みとして各パラメータを線形的に若しくは非線形的に補間し、新しいパラメータとしてもよい。全く合致するものがない場合には、ヒストグラムの色差成分の分布と各属性の示す領域との距離を計算し、最も距離が短いもの、又は距離を重みとして各パラメータを線形的に若しくは非線形的に補間し、新しいパラメータとしてもよい。
【0074】
ステップS6又はステップS8により変更された計算方法及びパラメータを用いて、画質評価値が算出される(ステップS9)。例えば、式(1)〜(4)等を用いて画質評価値が算出される。
【0075】
次に、画質評価結果が表示部12に表示される(ステップS10)。画質評価結果は、グラフとして表現され、グラフ表示エリアA2に表示される。
以上で、画質評価処理が終了する。
【0076】
第1の実施の形態における画質評価装置100によれば、画質評価に用いるテストパターンの色分布に応じて、画質評価値を算出する際に用いる計算方法及びパラメータを変更するので、テストパターンに適した画質評価を行うことができる。
【0077】
また、テストパターンの色分布として、グレー領域、画像入出力装置の一次色領域、画像入出力装置の二次色領域、肌色領域又は空色領域の分布を含むので、画像を構成する原色や画像の主要色に対して画質評価を行うことができる。また、新たに計算方法及びパラメータを登録したり、登録されている色に基づいてテストパターンの色分布に合わせたデータを作成したりすることにより、上記の色分布以外の色のテストパターンにも対応可能である。
【0078】
また、自動でテストパターンの色分布を判別する場合には、操作が単純で手間のかからない画質評価を実現することができる。
【0079】
<変形例>
実際の画像データには多くのノイズが含まれるため、図12に示すような理想的なヒストグラムは得られにくい。そこで、少しでもノイズを抑えるために、図11のステップS12に示すXYZ色彩データから均等色色彩データへの変換の途中で、ノイズを低減するローパスフィルタをかけることが望ましい。また、ヒストグラムが狭い幅の分布を持っている場合には、その中央値や平均値等で代表させることも可能である。ヒストグラムの幅の閾値は、ノイズの統計的分布から導出する。
【0080】
[第2の実施の形態]
次に、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態に示す画質評価装置は、第1の実施の形態に示した画質評価装置100と同様の構成であるため、同一の構成部分については同一の符号を付し、その構成については図示及び説明を省略する。以下、第2の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0081】
記憶部16には、画質に対する許容限界が記憶されている。許容限界とは、人がある指針で問題ない画質であると判断する閾値である。この指針は、評価目的に応じて変わる可能性がある。また、評価目的は、対象ユーザや評価対象となる画像入出力装置によって異なる。例えば、一般ユーザ用とセミプロ用、写真プリント用と電子写真用では、求められる画質は変わる。そのため、対象ユーザ毎、画像入出力装置毎に許容限界を設定可能としてもよい。許容限界のデータは、UIを通じて1つ1つ入力してもよいし、1つのファイルに各データを記録し、このファイルを入力してもよい。また、許容限界は、画質評価に用いられるテストパターンの色分布に応じて変わることが想定されるため、テストパターンの色分布毎に作成した許容限界のデータを予め登録しておくことが望ましい。
【0082】
CPU10は、画質評価値をグラフ化して表示部12に表示させるとともに、テストパターンの色分布や評価目的に応じて、画質に対する許容限界をグラフ上に表示させる。すなわち、CPU10は、特許請求の範囲における表示制御手段としての機能を有する。
【0083】
図13(a)及び(b)に、表示部12の表示画面上に画質評価結果とともに許容限界を表示した例を示す。図13(a)は、階調平滑性の評価値J1とともに、階調平滑性に対する許容限界K1を表示した例である。また、図13(b)は、ノイズの評価値J2とともに、ノイズに対する許容限界K2を表示した例である。
【0084】
また、図14に示すように、階調平滑性の評価値J3と許容限界K3との大小関係をわかりやすくするために、評価値J3のうち、許容限界K3を超えている部分の色又は線種を変えることとしてもよい。また、評価値J3に許容限界K3を超えている部分がある場合には、アラートを出したり、警告音を発したりして、ユーザによりわかりやすく状況を伝えるようにしてもよい。
【0085】
第2の実施の形態における画質評価装置によれば、画質評価値をグラフ化して表示部12に表示させるとともに、画質に対する許容限界をグラフ上に表示させるので、画質に問題のある部分を把握しやすくなる。
【0086】
また、テストパターンの色分布及び/又は評価目的毎に許容限界のデータが予め登録してある場合には、テストパターンの色分布及び/又は評価目的に応じて許容限界を変更することができる。
【0087】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る画質評価装置及び画質評価方法一例を示すものであり、これに限定されるものではない。上記各実施の形態における画質評価装置の詳細については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1の実施の形態における画質評価装置100の内部構成を示すブロック図である。
【図2】色−属性対応テーブル21を示す図である。
【図3】パラメータ対応テーブル22を示す図である。
【図4】表示部12に表示されるUI画面の一例を示す図である。
【図5】(a)は、階調平滑性を評価するためのテストパターンの例である。(b)は、ノイズを評価するためのテストパターンの例である。(c)は、鮮鋭性を評価するためのテストパターンの例である。
【図6】グラデーション画像のL*の階調変化カーブH及び仮想の階調変化カーブIを示すグラフである。
【図7】L*の階調ムラ成分を示すグラフである。
【図8】(a)は、スキャナ毎に求められたパラメータB、Cの最適値、標準偏差σ、平均値Ave、Ave−3σ、Ave+3σを示す図表である。(b)は、スキャナ毎に求められたパラメータD、E、Fの最適値、標準偏差σ、平均値Ave、Ave−3σ、Ave+3σを示す図表である。
【図9】画質評価装置100により実行される画質評価処理を示すフローチャートである。
【図10】(a)は、色分布選択画面の例である。(b)は、色分布選択画面の他の一例である。
【図11】テストパターンの色分布自動判別処理を示すフローチャートである。
【図12】各テストパターンの均等色色彩データのヒストグラムである。
【図13】(a)は、階調平滑性の評価値J1と階調平滑性に対する許容限界K1を表示した例である。(b)は、ノイズの評価値J2とノイズに対する許容限界K2を表示した例である。
【図14】階調平滑性の評価値J3と階調平滑性に対する許容限界K3を表示した例である。
【符号の説明】
【0089】
100 画質評価装置
10 CPU
11 操作部
12 表示部
13 画像データ入力部
14 ROM
15 RAM
16 記憶部
17 バス
21 色−属性対応テーブル
22 パラメータ対応テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストパターンを用いて画像入出力装置の画質評価値を算出する算出手段を備えた画質評価装置において、
前記テストパターンの色分布に応じて、前記算出手段において画質評価値を算出する際に用いる計算方法及び/又はパラメータを変更する変更手段を備えたことを特徴とする画質評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画質評価装置において、
前記色分布は、グレー領域、前記画像入出力装置の一次色領域、前記画像入出力装置の二次色領域、肌色領域又は空色領域の分布を含むことを特徴とする画質評価装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画質評価装置において、
画質評価の評価項目は、鮮鋭性、ノイズ、階調平滑性を含むことを特徴とする画質評価装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画質評価装置において、
前記テストパターンの色分布を判別する色分布判別手段を備えたことを特徴とする画質評価装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の画質評価装置において、
前記画質評価値をグラフ化して表示手段に表示させるとともに、画質に対する許容限界を前記グラフ上に表示させる表示制御手段を備えたことを特徴とする画質評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画質評価装置において、
前記許容限界は、前記テストパターンの色分布及び/又は評価目的に応じて変更可能であることを特徴とする画質評価装置。
【請求項7】
テストパターンを用いて画像入出力装置の画質評価値を算出する画質評価方法において、
前記テストパターンの色分布に応じて、前記画質評価値を算出する際に用いる計算方法及び/又はパラメータを変更する変更工程を含むことを特徴とする画質評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画質評価方法において、
前記色分布は、グレー領域、前記画像入出力装置の一次色領域、前記画像入出力装置の二次色領域、肌色領域又は空色領域の分布を含むことを特徴とする画質評価方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の画質評価方法において、
画質評価の評価項目は、鮮鋭性、ノイズ、階調平滑性を含むことを特徴とする画質評価方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の画質評価方法において、
前記テストパターンの色分布を判別する色分布判別工程を含むことを特徴とする画質評価方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載の画質評価方法において、
前記画質評価値をグラフ化して表示手段に表示させるとともに、画質に対する許容限界を前記グラフ上に表示させることを特徴とする画質評価方法。
【請求項12】
請求項11に記載の画質評価方法において、
前記許容限界は、前記テストパターンの色分布及び/又は評価目的に応じて変更可能であることを特徴とする画質評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−140873(P2006−140873A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330170(P2004−330170)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】